(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5997679
(24)【登録日】2016年9月2日
(45)【発行日】2016年9月28日
(54)【発明の名称】コイル部品
(51)【国際特許分類】
H01F 27/29 20060101AFI20160915BHJP
H01F 17/04 20060101ALI20160915BHJP
【FI】
H01F15/10 D
H01F15/10 F
H01F17/04 F
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-226359(P2013-226359)
(22)【出願日】2013年10月31日
(65)【公開番号】特開2015-88639(P2015-88639A)
(43)【公開日】2015年5月7日
【審査請求日】2014年12月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003089
【氏名又は名称】東光株式会社
(72)【発明者】
【氏名】新井 工
(72)【発明者】
【氏名】水越 泰孝
(72)【発明者】
【氏名】大羽賀 健生
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 亮太
【審査官】
池田 安希子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−266954(JP,A)
【文献】
特開2006−135291(JP,A)
【文献】
特開2001−338818(JP,A)
【文献】
特開2002−231533(JP,A)
【文献】
特開平11−026254(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 27/29
H01F 17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻軸の両端に外形が略円形の上鍔と下鍔とを有し、前記巻軸に導線が巻回されたドラム型
コアと、
前記ドラム型コアを貫通孔に収納する外形が角部が面取りされた略四角柱状のリング型コアと、
前記リング型コア外周の対向する側面に配置された一対の金属端子とからなり、
前記リング型コアは、角部に前記導線の端末を前記リング型コアの外周に引き出すための引出溝が設けられ、
前記金属端子は、
リング型コアの側面に配置される側面部と、
前記側面部から前記リング型コアの上面に沿って折り曲げられた上面部と、
前記側面部から前記リング型コアの下面に沿って折り曲げられた下面部と、
前記側面部から前記面取りされた角部に伸びる係止部とを有し、
前記上面部は、
前記貫通孔の中心軸方向へと伸び、
前記貫通孔の中心軸におけるそれらの間のなす角度が90°になるとともに、
前記貫通孔の中心軸に対して回転して前記引出溝を避けた位置に配置された一対の爪を有し、
前記導線の端末は、前記係止部に係止され、
前記爪は前記貫通孔の内周側に折り曲げられて前記上鍔の位置を規制する
ことを特徴とするコイル部品。
【請求項2】
前記リング型コアの下端面に溝が設けられ、
前記下面部に両側縁に立設部が設けられ、
前記立設部は、上側に折り曲げられて断面コの字形状とされて前記溝に嵌め込まれて、
前記立設部の外面が前記溝の内面に当接して、前記下鍔の位置を規制する
請求項1に記載のコイル部品。
【請求項3】
前記係止部の先端はJ字形状に折り曲げられた
請求項1または請求項2に記載のコイル部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコイル部品に関し、ドラム型コアとドラム型コアを収納する貫通孔を有するリングコアとを備えた閉磁路構造のコイル部品に関する。
【背景技術】
【0002】
絶縁被覆された導線を巻回したドラム型コアと、リング型コアとを組み合わせて閉磁路構造としたコイル部品が用いられている。
このようなコイル部品は、コイル部品の特性がばらつかないように、ドラム型コアとリングコアとの間のギャップを一定にする必要があり、種々の発明考案が提案されている。例えば、特許文献1、特許文献2には、4個〜6個の金属端子の先端部をドラム型コアとリング型コアとの間のギャップに挟み込むことにより、ドラム型コアとリング型コアとが接触しないように貫通孔の中心軸に揃えて配置されるようにしたコイル部品が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−224026号公報
【特許文献2】特開2007−234885号公報
【特許文献3】特開2009−266954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記したコイル部品では、4〜6個の端子でドラム型コアの位置を四方の4箇所以上から押さえて貫通孔の中心軸に揃えることができる。しかし、端子が2つしかないコイル部品では、2つの金属端子しかないため、一方向のみしか押さえることができず、ドラム型コアの位置を貫通孔の中心軸に揃えることが難しい。ドラム型コアを押さえるための部材を追加すると、コイル部品の価格が上昇してしまう。また、金属製の部材では渦電流も発生することから、特性劣化の原因となる虞もあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願発明のコイル部品は、巻軸の両端に上鍔と下鍔とを有し、前記巻軸に導線が巻回されたドラム型コアと、前記ドラム型コアを貫通孔に収納するリング型コアと、前記リング型コア外周の対向する側面に配置された一対の金属端子とからなり、前記金属端子は、リング型コアの側面に配置される側面部と、前記側面部から前記リング型コアの上面に沿って折り曲げられた上面部と、前記側面部から前記リング型コアの下面に沿って折り曲げられた下面部とを有し、前記上面部に、前記貫通孔の中心軸方向へと伸びる一対の爪を有し、前記爪は前記貫通孔の内周側に折り曲げられて前記上鍔の位置を規制することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本願発明のコイル部品によれば、2端子しかないコイル部品であっても、部材を追加することなくドラム型コアの位置をリング型コアの貫通孔の中心軸に揃えることができるので、ギャップを一定にして、特性の揃った安価なコイル部品とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図3】本発明のコイル部品の金属端子の展開図である。
【
図4】本発明のコイル部品を詳しく説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明のコイル部品について、図を用いて説明する。
図1は、本発明のコイル部品の斜視図であり、
図1(a)は上方から見た斜視図であり、
図1(b)は下方から見た斜視図である。
図2は分解斜視図である。
図1〜
図2に示すように、コイル部品10は、巻軸21の両端に外形が略円形の鍔22a、22bを有するドラム型コア20と、巻線40と、ドラム型コア20の鍔22a、22bの直径より稍々大きい貫通孔33を有し、外形が略四角柱状で角部が面取りされたリング型コア30と、一対の金属端子50、50、絶縁被覆された導線10とからなる。図において貫通孔33の中心軸をCとする。
【0009】
ドラム型コア20の巻軸21に巻線40が配置され、リング型コア30の角部に設けられた引出溝31からリング型コア30の外周に巻線40の端末41a、41bが引き出されて、ドラム型コア20はリング型コア30の貫通孔33に収納され、巻線40の端末41a、41bは、リング型コア30の外周に配置された一対の金属端子50、50にそれぞれ接続されてる。
【0010】
図3は、金属端子50の展開図であり、
図4は、ドラム型コア20と、リング型コア30と、金属端子50の配置を詳しく説明するための分解斜視図である。
図3において、金属端子50は片方のみのを示している。
図3〜4に示すように金属端子50は、リング型コア30の外周の一側面に配置される側面部51と、側面部51からリング型コア30の上面に沿って折曲げられた上面部54と、リング型コア30の面取りされた角部に方向に伸びる係止部53と、側面部51からリング型コア30の下面に沿って折曲げられた下面部56とを有する。下面部56は基板等へ実装するための実装端子となる。
【0011】
係止部52には、J字形状に折り返された複数の爪53が設けられており、金属端子50、50のそれぞれに端末41a、41bを挟んで仮止している。金属端子50、50と端末41a、41bとは、はんだ付け、はんだディップ、溶接、加熱圧着等により電気的に接続される。
【0012】
上面部54には、中心軸C方向に伸び、平面視でなす角度が90°の位置に爪55a、55bが設けられており、リング型コア30の貫通孔33の内壁へ鉛直方向に折り曲げられる。本実施例においては、金属端子50の側面部51の配置された側面側であって溝31の位置を避けた位置に爪55aを配置したので、金属端子50の側面部51が配置された対向する側面の方向からθ回転している。爪55a、55bはドラム型コア20の上鍔22aとリング型コア30との接触を防ぎ間隙を一定に保つスペーサとして機能するだけなので、非常に小さな大きさで十分である。なお、爪55a、55bは、折曲げの角度を90°にする必要はなく、ギャップが金属端子50の厚さより大きい場合には、爪50a、50bの付勢力を用いてドラム型コアを抑えるようにしてもよい。
【0013】
下面部56には、その両側縁に立設部57、57が設けられ、下面部56に対して直角に折曲げられて断面がコの字形状になっており、リング型コア30の底面には溝32が設けられている。立設部57、57の外幅と溝32の内幅は略等しく(図中wで示す)、このコの字形状部分が、溝32に嵌め込まれるように配置されて、立設部57、57の外面と溝32の内面とが当接する。このとき、底面部56の先端56aは、立設部57の先端側の端面57aより中心軸C側にあるので、下鍔22bの底面側の一部が、金属端子50の下面部56の上面の一部(
図4において斜線で示す)に当接するとともに、金属端子50の立設部57の先端側の端面57aが、下鍔22bの外周(
図4において20aで示す)に当接して、ドラム側コア20の下鍔22bの位置を規制する。
【0014】
上記したコイル部品は、上鍔22aは、四方の4箇所に配置された一対の爪55a、55bで位置を規制され、下鍔22bは、金属端子50の下面部56の上面と立設部の先端側の端面57aとで位置を規制されているので、ドラム型コア20の中心軸を確実にリング型コア30の貫通孔33中心軸Cに位置決めすることができる。
なお、ドラム型コア20とリング型コア30との間には、小さな面積の爪55a、55bが挟み込まれるだけなので、金属端子50に渦電流が発生してコイル部品の特性が劣化はほとんどない。
【符号の説明】
【0015】
10 コイル部品
20 ドラム型コア
30 リング型コア
31 引出し溝
32 溝
33 貫通孔
40 巻線
41a、41b 端末
50 金属端子
51 側面部
52 係止部
54 上面部
53、55a、55b 爪
56 下面部
57 立設部