(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
油圧ショベルなどの建設機械には、原動機(エンジンや電動モーター)の冷却水やトランスミッションの潤滑油(ミッションオイル)、アクチュエータの作動油などといった様々な流体(液体)が用いられている。このような建設機械を例えば−40℃以下の極寒な地域で使用した場合、一旦原動機を停止するとそれらの流体が凍結し、再起動が困難になることがある。また、ミッションオイルなどの潤滑油が凍結してその潤滑性能が失われた状態で原動機を起動すると、トランスミッションや油圧ポンプ、アクチュエータなどが破損するおそれがある。
【0003】
寒冷下におけるエンジン始動性の向上を図る技術として、例えば以下の特許文献1では油圧ポンプと作動油タンクとを接続する吸込管路にヒーターを設け、エンジンの始動前にその吸込管路内の作動油を暖機しておくことでエンジンの始動性を向上させる技術が提案されている。また、以下の特許文献2には、エンジンや運転室などにプレヒーターを設け、このプレヒーターによってエンジンや運転室などを予熱する技術が提案されている。さらに以下の特許文献3には、車体を駆動するメインの電動モーターと電熱器の両者を駆動することで車体全体の作動油を温める技術が提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前述したような従来の予熱方式では以下に示すような不都合がある。すなわち、前記特許文献1に示す技術では温められる作動油は吸込管路のみの局所に限られるため、−40℃以下の極寒な地域では十分な予熱が困難である。特に、電動式の油圧ショベルには、メインの電動モーターとポンプを接続する箇所にポンプ回転数を増幅するためのトランスミッションが設けられている。
【0006】
このトランスミッションは、その電動モーターによって作動するポンプを使用した強制循環方式を採用しており、ベアリングやギアに直接潤滑油を供給するために複数の細管を備えている。このため、この細管の内部でミッションオイルの粘度が高くなったり凍結したりして供給が不足あるいはストップすると局部的に潤滑不良となってベアリングやギアが焼付き破損するおそれがある。従って、作動油の吸込管路のみならず、このトランスミッションも十分に予熱しておく必要がある。
【0007】
一方、前記特許文献2に示すような技術では、エンジンの冷却水を燃焼式のヒーターで加熱する方式であるため、海抜2000mを超えるような標高が高い地域では、酸素濃度が低く、良好な燃焼が難しい。さらに、前記特許文献3に示すような技術では、ヒーティング機能は十分であるが、メンテナンスなどによってメインの電動モーターを停止した場合には機能しないという不都合がある。
【0008】
そこで、本発明はこれらの課題を解決するために案出されたものであり、その目的は、流体が流れる循環路全体を効率的に予熱できる新規な予熱ユニットを備えた建設機械およびその予熱方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために第1の発明は、流体を循環させる循環路にバイパス路を設け、当該バイパス路に、ヒーターとバイパス用ポンプとからなる予熱ユニットを備えたことを特徴とする建設機械である。このような構成によれば、循環路において流体の循環が停止した状態であってもバイパス路を介して流体を循環させながらその流体を加熱できるため、その循環路全体を効率的に予熱することができる。また、既存の循環路に対して後付けで付設できることから、優れた汎用性を発揮できる。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、前記バイパス路を、前記循環路に設けられた循環ポンプの上流側と下流側間に設け、前記予熱ユニットのバイパス用ポンプは、前記循環路のポンプと同じ方向に流体を循環させることを特徴とする建設機械である。このような構成によれば、循環ポンプが停止した状態であっても循環路のポンプと同じ方向に流体を確実に循環させながらその流体を加熱できるため、その循環路全体を効率的に予熱することができる。
【0011】
第3の発明は、第1の発明において、前記循環路は、作動油タンクとメインポンプ間で潤滑油を循環するようになっており、前記バイパス路を、前記作動油タンクとメインポンプ間の循環路に並列に設け、当該循環路と前記バイパス路で作動油の循環ループを形成することを特徴とする建設機械である。このような構成によれば、作動油タンクとメインポンプ間に形成される大ループの循環路に、バイパス路によって小ループの循環路を形成することができるため、メインポンプが停止した状態であっても少ない熱量で作動油タンク内の作動油をバイパス路を介して予熱しながら循環することができる。
【0012】
第4の発明は、第1または第2の発明において、前記循環路は、トランスミッション用のミッションオイルを循環させる循環路であることを特徴とする建設機械である。このような構成によれば、トランスミッションおよびその循環ポンプが停止した状態であってもその循環路内でミッションオイルを確実に循環させながら加熱できるため、そのトランスミッション全体を効率的に予熱することができる。
【0013】
第5の発明は、第1乃至第3の発明において、前記循環路は、原動機用の冷却水を循環させる循環路であることを特徴とする建設機械である。このような構成によれば、エンジン(内燃機関)や電動モーターなどの原動機およびその循環ポンプが停止した状態であってもその循環路内で冷却水を確実に循環させながら加熱できるため、そのエンジン全体を効率的に予熱することができる。
【0014】
第6の発明は、第3の発明において、前記バイパス路は、前記作動油タンクとサクションタンクとの間を接続することを特徴とする建設機械である。このような構成によれば、作動油タンク内の作動油の循環が停止した状態であっても作動油タンクとサクションタンクとの間で作動油を確実に循環させつつこれら全体を効率的に予熱することができる。
【0015】
第7の発明は、第1乃至第6の発明に関する予熱方法であって、原動機が停止しているときの外気温度と前記流体温度とを計測し、前記外気温度が第1の所定値T1未満でかつ前記流体温度が第2の所定値T2(但し、T1<T2)未満のときは前記予熱ユニットのヒーターによる流体の加熱とバイパス用ポンプによる流体循環を実施し、前記外気温度が前記第1の所定値T1未満でかつ前記流体温度が前記第2の所定値T2以上のときは前記予熱ユニットのバイパス用ポンプによる流体循環のみを実施することを特徴とする建設機械の予熱方法である。このような予熱方法によれば、予熱が必要な場合にのみ流体(油種)を加熱できるため、無駄のない効果的な予熱を実施することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、エンジンが停止してトランスミッションの循環路などにおいてミッションオイルなどの流体の循環が停止した状態であってもバイパス路を介してその流体を循環させながら加熱できるため、その循環路全体を効率的に予熱することができる。また、既存の循環路に対してバイパス路を分岐してそのバイパス路に予熱ユニットを取り付けた構造となっているため、既存の建設機械に対しても容易に後付けで付設できる。さらに、エンジンの停止中における外気温や油温などの変化に応じて予熱ユニットによる流体の循環および加熱を細かく制御したため、無駄な電力消費を抑えつつ効率的な予熱処理を実施することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の実施の形態を添付図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係る建設機械の1つである油圧ショベル100の実施の一形態を示したものである。図示するようにこの油圧ショベル100は、下部走行体10と、この下部走行体10上に旋回自在に設けられた上部旋回体20とから主に構成されている。下部走行体10は、図示しない走行体フレームに互いに平行に位置する一対のクローラ11を有しており、このクローラ11には、それぞれの履帯を駆動して走行するための油圧駆動式の走行モーター12が設けられている。
【0019】
一方、上部旋回体20は、旋回体フレーム40上に設置されたエンジン室22と、このエンジン室22の前方左側に設けられた運転室23と、この運転室23の右側から前方に延びるフロント作業機30と、このフロント作業機30との重量バランスを図るべくエンジン室22の後方に設けられたカウンターウエイト24とから主に構成されている。
【0020】
フロント作業機30は、旋回体フレーム40側から前方に延びるブーム31と、このブーム31の先端に揺動自在に設けられたアーム32と、このアーム32の先端に揺動自在に設けられたバケット33とから主に構成されており、これらブーム31、アーム32、バケット33は、それぞれ油圧で伸縮するブームシリンダー34、アームシリンダー35、バケットシリンダー36によってそれぞれ動作する。そして、これらブームシリンダー34、アームシリンダー35、バケットシリンダー36、走行モーター12などは、エンジン室22内に設けられたメインポンプ50(
図2)から供給される圧油(作動油)によって動作するようになっている。
【0021】
このメインポンプ50は、
図2に示すようにトランスミッション60を介してエンジン70と接続されており、エンジン70の駆動力によって作動油タンク80内の作動油を、サクション配管81
a、サクションタンク82、サクションパイプ83を経て吸い込み、その圧油を前記ブームシリンダー34、アームシリンダー35、バケットシリンダー36、走行モーター12などのアクチュエータに送るようになっている。このメインポンプ50は、1つのトランスミッション60に対して複数設けられており、作動油タンク80内の作動油はサクションタンク82から複数のサクションパイプ83,83…に分流して各メインポンプ50、50…に吸い込まれるようになっている。
【0022】
そして、各メインポンプ50、50…から吐出された高圧の作動油は、前記アクチュエータから戻り配管81bを介して作動油タンク80に戻されるようになっている。すなわち、この作動油タンク80と各メインポンプ50、50…間には、サクション配管81a、サクションタンク82、サクションパイプ83および戻り配管81bによって一方向の大ループの循環路80Aが形成されている。
【0023】
トランスミッション60は、エンジン70の回転駆動を増速あるいは減速して各メインポンプ50、50…に歯車で伝達する変速機であり、作動時は潤滑ポンプ61によって常時潤滑油(ミッションオイル)が供給されるようになっている。
図3は、このトランスミッション60におけるミッションオイルの流れを示した模式図である。図示するように、潤滑ポンプ61から送り出されたミッションオイルは、送油管61を介して分流兼中継ブロック62から各細管62a,62a…に分流して各ベアリングB、B…やギアに供給されてこれらを潤滑するようになっている。さらに、この分流兼中継ブロック62に流れたミッションオイルの一部はそのまま分流ブロック63に流れ、この分流ブロック63から各細管63a,63a…に分流して他の各ベアリングB、B…やギアに供給されてこれらを潤滑するようになっている。
【0024】
また、各ベアリングB、B…やギアに供給されたミッションオイルは、各細管62b、62b…、63b、63b…を介して合流ブロック64,65に流れて合流し、各戻油管64a、65aを介して潤滑ポンプ61側に戻るようになっている。すなわち、ミッションオイルは、送油管61aと、細管62a,62a…、62b、62b…、63a,63a…、63b、63b…および戻油管64a、65aで形成される循環路60A内を循環するようになっている。なお、この戻油管64a、65aには、それぞれサクションフィルター64b、65bが設けられており、ミッションオイル中に鉄粉などの固形物が混入した際にはこれを濾過して分離するようになっている。
【0025】
そして、この循環路60A中において送油管61と戻油管64a、65aとの間には、潤滑ポンプ61を迂回するようにバイパス管66が接続されており、戻油管64a、65aを流れるサクションフィルター64b、65bを出た直後のトランスミッションオイルを接続管66aを介して抜き出して直接送油管61に対して同じ方向に流すようになっている。さらに、このバイパス管66には、バイパス用ポンプ67aと電熱式のヒーター67bとを一体化した予熱ユニット67が設けられており、バイパス用ポンプ67bによってミッションオイルをバイパス管66側に抜き出し、抜き出したミッションオイルをヒーター67bで加熱してから送油管61側に流すようになっている。
【0026】
一方、
図2に示すようにエンジン70にも冷却水が流れる循環路70Aが形成されている。この循環路70Aは、エンジン70内に形成された第1の循環路71aと、エンジン70とラジエータ間に形成された第2の循環路71bとから構成されている。そして、第1の循環路71aに設けられた循環ポンプ72によってエンジン70内で冷却水を循環させると共に、その冷却水の温度が上昇すると、サーモスタット73が作動して第1の循環路71aと第2の循環路71bと連通して第2の循環路71b側に高温となった冷却水を流し、これをラジエータ74および冷却ファン75によって空冷して第1の循環路71a側に戻すようになっている。
【0027】
そして、図示するように、このエンジン70の循環路70Aにも前記トランスミッション60と同様に循環ポンプ72を迂回するようにバイパス管76と予熱ユニット77とが設けられており、この循環路70Aを流れる冷却水を抜き出して加熱し、これを循環路70Aに対して同じ方向に戻すようになっている。なお、この予熱ユニット77もバイパス用ポンプ77aと電熱式のヒーター77bを一体化したものから構成されている。
【0028】
また、同図に示すように、作動油タンク80とサクションタンク82との間も、予熱ユニット84を備えたバイパス管83によってサクションパイプ81aと並行に接続されており、予熱ユニット84のバイパス用ポンプ84aによってサクションタンク82内の作動油を抜き出すと共に、これを電熱式のヒーター84bで加熱して作動油タンク80の中程に直接戻すようになっている。すなわち、このバイパス管83によって大ループである循環路80Aと並行に小ループの循環路が形成されるようになっている。
【0029】
そして、これらの各予熱ユニット67,77,85は、コントローラ(情報処理装置)90によってその作動が自動制御されている。このコントローラ90は、図示しない各種センサー(油温センサー、気温センサ)やエンジンコントーロルユニット(ECU)からの入力信号などに基づいて各予熱ユニット67,77,85を制御するようになっている。
【0030】
図4は、このコントローラ90によるトランスミッション60用の予熱ユニット67に関する制御の流れを示したものである。先ず、このコントローラ90は、最初のステップS100においてエンジン70が停止しているか否かを判断し、停止していないと判断したとき(NO)は、処理を終了するが、エンジン70が停止していると判断したとき(YES)は、次のステップS102に移行する。
【0031】
ステップS102では、温度センサーからの入力値に基づき外気温度が−10℃未満であるか否かを判定し、−10℃未満でない、すなわち−10℃以上でミッションオイルの凍結のおそれがないと判断したとき(NO)は、そのまま処理を終了するが、外気温度が−10℃未満で凍結のおそれがあると判定したとき(YES)は、次のステップS104に移行する。ステップS104では、油温センサーからの入力値に基づきミッションオイルの温度(油温)が30℃未満か否かを判定し、30℃未満であると判断したとき(YES)には、ステップS108に移行して予熱ユニット67のヒーター67aおよびバイパス用ポンプ67bを始動して
図2に示すように循環路60A内のミッションオイルを潤滑ポンプ61の上流側からバイパス管66側に抜き出すと共に、これをヒーター67bで加熱して潤滑ポンプ61の下流側に送り出す。
【0032】
このとき停止中の潤滑ポンプ61ではミッションオイルの流れが停止しているため、潤滑ポンプ61の下流側に送り出されたミッションオイルは、潤滑ポンプ61側へは流れずに
図3に示したように送油管61aから分流兼中継ブロック62および分流ブロック63側へ流れ、各細管62a、62a…、63a、63a…、各ベアリングB、B…およびギア、各細管62b、62b…、63b、63b…を順次通過した後、合流ブロック64、65から戻油管64a、65aに流れ出てサクションフィルタ64b、65bを通過してバイパス管66に抜き出され、再びヒーター67bで加熱されて循環路60A内を循環することになる。これによって、トランスミッション60全体が適温に保温されるため、外気温が例えば−40℃以下の極寒状態になってもミッションオイルが凍結するなどといった不都合を防止することができる。
【0033】
一方、前記ステップS104においてミッションオイルの温度(油温)が30℃未満でない、すなわち30℃以上であると判断したとき(NO)は、次のステップS106に移行して予熱ユニット67のバイパス用ポンプ67bのみを始動して循環路60A内のミッションオイルを潤滑ポンプ61の上流側からバイパス管66側に抜き出して、これを潤滑ポンプ61の下流側に送り出す。これによって、循環路60A内で油温が30℃以上のミッションオイルが循環されてミッションオイル自体の熱でトランスミッション60全体が適温に保温されるため、ヒーター67bによる無駄な加熱を防止して電力消費を抑制することができる。
【0034】
次のステップS110では、潤滑ポンプ61のみによる循環中において外気温の低下などによってその油温が30℃未満になったか否かを判断し、30℃未満になっていないと判断したとき(NO)は、ステップS113に移行するが、30℃未満になったと判断したとき(YES)は、ステップS112に移行してさらに電熱式のヒーター67bを始動(通電)する。これによって、バイパス管66に抜き出されたミッションオイルが加熱されて循環路60Aに流れるため、油温低下によるミッションオイルの凍結をより確実に防止することができる。なお、このヒーター67bの加熱により油温が30℃を大幅に超えたときなどには、このヒーター67bのみを停止するようにしても良い。
【0035】
次のステップS114では、図示しないECUなどからの入力信号に基づいてエンジン70が始動したか否かを判断する。エンジン70が始動していないと判断したとき(NO)は、そのままミッションオイルの循環を継続するが、エンジン70が始動したと判断したとき(YES)は、次のステップS116に移行してヒーター67aおよびバイパス用ポンプ67bを停止して予熱ユニット67によるミッションオイルの循環および加熱を停止して処理を終了する。
【0036】
一方、前記ステップS113においても同様に、図示しないECUなどからの入力信号に基づいてエンジン70が始動したか否かを判断し、エンジン70が始動していないと判断したとき(NO)は、そのままバイパス用ポンプ67bのみによるミッションオイルの循環を継続するが、エンジン70が始動したと判断したとき(YES)は、次のステップS115に移行してバイパス用ポンプ67bを停止することで予熱ユニット67によるミッションオイルの循環を停止して処理を終了する。このように、エンジン70の停止中における外気温や油温などの変化に応じて予熱ユニット67によるミッションオイルの循環および加熱を細かく制御すれば、無駄な電力消費を抑えつつ効率的な予熱処理を実施することができる。
【0037】
そして、他の予熱ユニット77,85においてもこれと同様な制御を行うことにより、作動油や冷却水の凍結を効率良く防止することができる。この場合、各油種の凍結温度に応じてその始動温度を適宜調整すればより効率の良い予熱処理を実施することができる。例えばミッションオイルおよび冷却水の凍結温度が−10℃であるのに対し、作動油の凍結温度が−20℃である場合には、外気温が−10℃になったときは予熱ユニット67と、77だけによる予熱処理を実施し、外気温が−20℃になったときにさらに作動油タンク80側の予熱ユニット85による予熱処理を実施するようにすれば、さらに無駄な電力消費を抑制することが可能となる。
【0038】
このように本発明はエンジン70が停止してトランスミッション60の循環路60Aなどにおいてミッションオイルなどの流体の循環が停止した状態であってもその流体をバイパス路66を介して同じ方向に循環させながら加熱できるため、その循環路60A全体を効率的に予熱することができる。また、既存の循環路60Aに対してバイパス管66を分岐してそのバイパス管66に予熱ユニット67を取り付けた構造となっているため、既存の建設機械に対しても容易に後付けで付設できることから、優れた汎用性を発揮できる。また、前述したように、エンジン70の停止中における外気温や油温などの変化に応じて予熱ユニット67によるミッションオイルの循環および加熱を細かく制御すれば、無駄な電力消費を抑えつつ効率的な予熱処理を実施することができる。
【0039】
図5は、本発明のような予熱ユニットを有しない従来の構成例を示したものである。すなわち、エンジン70の冷却水の予熱は、本発明と同様にその循環路70Aにバイパス管76を付設し、その循環路70Aから冷却水をバイパス管76側に抜き出して加熱するものであるが、その加熱手段は、燃焼式のヒーター78を使用するものであるため、高地のような酸素濃度の低い場所で良好な燃焼が難しい上に、その構成も複雑となる。また、サクションタンク82に複数の棒ヒーター86,86を取り付け、これに通電してサクションタンク82内の作動油を加熱しようとするものであるが、このような構成では、加熱箇所が局所的であり、全体を効率的に予熱するのは困難である。さらに、潤滑油(ミッションオイル)の凍結による焼付きなどを防止する必要があるトランスミッション60ではこれを効率的に予熱することができなかった。
【0040】
なお、本実施の形態では、エンジン70によってトランスミッション60を駆動するような構成としたが、原動機としてこのエンジン70に代えて電動モーターを使用した場合でも同様に適用できることは勿論である。