(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5997689
(24)【登録日】2016年9月2日
(45)【発行日】2016年9月28日
(54)【発明の名称】内燃機関用点火コイル
(51)【国際特許分類】
F02P 15/00 20060101AFI20160915BHJP
F02P 13/00 20060101ALI20160915BHJP
【FI】
F02P15/00 303B
F02P13/00 301F
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-503524(P2013-503524)
(86)(22)【出願日】2012年3月2日
(86)【国際出願番号】JP2012055474
(87)【国際公開番号】WO2012121177
(87)【国際公開日】20120913
【審査請求日】2014年7月14日
(31)【優先権主張番号】特願2011-48043(P2011-48043)
(32)【優先日】2011年3月4日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立オートモティブシステムズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】特許業務法人開知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 真喜男
(72)【発明者】
【氏名】小林 貴信
(72)【発明者】
【氏名】安蔵 洋一
(72)【発明者】
【氏名】守屋 学次
(72)【発明者】
【氏名】倉橋 真
【審査官】
北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−060188(JP,A)
【文献】
特開平09−158820(JP,A)
【文献】
特開2008−060228(JP,A)
【文献】
特開2007−303401(JP,A)
【文献】
特開2006−242123(JP,A)
【文献】
特開2009−212142(JP,A)
【文献】
特開2007−116062(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02P 15/00
F02P 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高電圧を発生させるコイル部と、
該コイル部を収容するコイルケースと、
点火プラグが取り付けられるプラグホールの開口部を閉塞するために設けられたプラグホールシールと、
前記コイルケースの外側部に設けられた外周壁で区画される空間部と、
該空間部と前記プラグホールとの通気を行うための空気通路とを有する内燃機関用点火コイルであって、
前記空間部は、下側の全面が開放された開口を有し、
前記空間部は、前記プラグホールの開口方向側の端部において、前記プラグホールに一端が連通する前記空気通路の他端部と小孔で接続され、且つ前記プラグホールの開口方向と反対側の端部が前記小孔より大きな通路面積を有する前記下側の全面が開放された開口によって大気側に開放されていることを特徴とした内燃機関用点火コイル。
【請求項2】
請求項1記載の内燃機関用点火コイルにおいて、
前記空間部及び前記空気通路は、前記コイルケースに一体に成形されており、
前記空間部の前記プラグホールの開口方向側の端部を封止する封止部材を備え、当該封止部材によって前記小孔を介して前記プラグホールと前記空間部とを接続する前記空気通路の一部が形成されていることを特徴とする内燃機関用点火コイル。
【請求項3】
請求項1記載の内燃機関用点火コイルにおいて、
前記空気通路は、前記コイルケースに一体に成形されており、
前記空間部は、前記コイルケースに後付けで固定されたサイドケースにより形成されることを特徴とする内燃機関用点火コイル。
【請求項4】
請求項1記載の内燃機関用点火コイルにおいて、
前記空気通路は、前記空間部内の前記プラグホールの軸及び径に垂直な方向の中央1/3内に配置したことを特徴とする内燃機関用点火コイル。
【請求項5】
請求項2記載の内燃機関用点火コイルにおいて、
前記空間部は前記プラグホールの開口方向側の端部に点火プラグのプラグホールへの挿入方向に沿って形成された前記小孔を備え、前記空気通路と前記小孔とを覆う前記封止部材によって両者を接続する水平方向通路が形成され、前記空気通路は点火コイルのプラグホールへの挿入方向に沿って延びその端部において前記プラグホールと接続されていることを特徴とする内燃機関用点火コイル。
【請求項6】
請求項2記載の内燃機関用点火コイルにおいて、
前記空気通路は、前記小孔との接続部に段付きまたはテーパー形状部を有し、前記小孔よりも前記空気通路の断面積を広げたことを特徴とする内燃機関用点火コイル。
【請求項7】
請求項6記載の内燃機関用点火コイルにおいて、
前記空気通路の前記段付きまたはテーパー形状部の中間の水平部に、前記コイルケースにより形成され、前記封止部材に向かって突出する突起形状部が形成されていることを特徴とする内燃機関用点火コイル。
【請求項8】
請求項1記載の内燃機関用点火コイルにおいて、
前記空気通路の前記プラグホールとの接続部周辺に、前記コイルケースに一体により形成され、前記プラグホールの開口方向側に向かった突起形状を備えていることを特徴とする内燃機関用点火コイル。
【請求項9】
請求項1記載の内燃機関用点火コイルにおいて、
前記空間部を形成するための前記外周壁に、当該外周壁から前記空間部の前記開口周囲を覆うように突出する突起を形成していることを特徴とする内燃機関用点火コイル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の点火プラグに火花放電を発生させるために高電圧を供給する内燃機関用点火コイルに係り、特に、プラグホールの防水に好適な内燃機関用点火コイルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の内燃機関用点火コイルにおいては、プラグホール内の温度が変化した時や点火コイル脱着の際に発生するプラグホール内の空気を排出,吸入して脱着し易くするために、プラグホール内と外部大気圧側とは点火コイルの外周とプラグホールシールとの境界に設けられた空気通路で連通している。しかしながら、周囲の温度変化や内燃機関への被水等によりプラグホールの温度が低下し、プラグホール内の圧力が変化して外気と平衡になろうとするために外気を吸い込む負圧が発生し、その負圧により空気通路の大気側開口部を介して外部からプラグホール内に水が浸入することがある。
【0003】
そこで、従来、空気通路に浸入してきた水を貯めるためのプール部(保水室)を設けたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。外部から浸入した水はプール部に保持することで、プラグホールに浸入するのを防止するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−60228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載のものでは、プール部に水が入りにくくするように、水を貯めるためのプール部の手前(大気側)には、小さな空気通路(通気口)が設けられている。この空気通路を小さくすることで、プール部に水が入りにくくなるが、一方では、プール部に一度水が入ってしまうと逆に水が抜けにくい構造となっていた。従って、点火コイルが一時的に完全な水没状態を繰り返すような環境条件下では、プラグホール内への水浸入を抑制した高い防水性を確保できるものと、排水性が低く、プール部に溜まった水がプラグホールに浸入する恐れがあった。
【0006】
本発明の目的は、プラグホール内への水浸入を抑制した高い防水性を確保しつつ、排水性の向上した内燃機関用点火コイルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)上記目的を達成するために、本発明は、高電圧を発生させるコイル部と、該コイル部を収容するコイルケースと、点火プラグが取り付けられるプラグホールの開口部を閉塞するために設けられたプラグホールシールと、前記コイルケースの外側部に設けられた外周壁で区画される空間部と、該空間部と前記プラグホールとの通気を行うための空気通路とを有する内燃機関用点火コイルであって、前記空間部は、
下側の全面が開放された開口を有し、前記空間部は、前記プラグホールの開口方向側の端部において、前記プラグホールに一端が連通する前記空気通路の他端部と小孔で接続され、且つ前記プラグホールの開口方向と反対側の端部が前記小孔より大きな通路面積を有する前記
下側の全面が開放された開口によって大気側に開放されているものである。
【0008】
かかる構成により、プラグホール内への水浸入を抑制した高い防水性を確保しつつ、排水性を向上し得るものとなる。
【0009】
(2)上記(1)において、好ましくは、前記空間部及び前記空気通路は、前記コイルケースに一体に成形されており、前記空間部の
前記プラグホールの開口方向側の端部を封止する封止部材を備え、当該封止部材によって前記小孔を介して前記プラグホールと前記空間部とを接続する前記空気通路の一部が形成されているものである。
【0010】
(3)上記(1)において、好ましくは、前記空気通路は、前記コイルケースに一体に成形されており、前記空間部は、前記コイルケースに後付けで固定されたサイドケースにより形成されるものである。
【0011】
(4)上記(1)において、好ましくは、前記空気通路は、前記空間部内の
前記プラグホールの軸及び径に垂直な方向の中央1/3内に配置したものである。
【0012】
(5)上記(2)において、好ましくは、前記空間部は
前記プラグホールの開口方向側の端部に点火プラグのプラグホールへの挿入方向に沿って形成された前記小孔を備え、前記空気通路と前記小孔とを覆う前記封止部材によって両者を接続する水平方向通路が形成され、前記空気通路は点火コイルのプラグホールへの挿入方向に沿って延びその端部において前記プラグホールと接続されている。
【0013】
(6)上記(2)において、好ましくは、前記空気通路は、前記小孔との接続部に段付きまたはテーパー形状部を有し、前記小孔よりも前記空気通路の断面積を広げたものである。
【0014】
(7)上記(2)において、好ましくは、前記空気通路の前記段付きまたはテーパー形状部の中間の水平部に、前記コイルケースにより形成され、前記封止部材に向かって突出する突起形状部が形成されている。
【0015】
(8)上記(1)において、好ましくは、前記空気通路の前記プラグホールとの接続部周辺に、前記コイルケースに一体により形成され、
前記プラグホールの開口方向側に向かった突起形状を備えている。
【0016】
(9)上記(1)において、好ましくは、前記空間部を形成するための前記外周壁に、当該外周壁から前記空間部の前記開口周囲を覆うように突出する突起を形成している。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、プラグホール内への水浸入を抑制した高い防水性を確保しつつ、排水性を向上し得るものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1の実施形態による内燃機関用点火コイルの構成を示す断面図である。
【
図4】本発明の第2の実施形態による内燃機関用点火コイルの構成を示す断面図である。
【
図5】本発明の第3の実施形態による内燃機関用点火コイルの構成を示す断面図である。
【
図6】本発明の第4の実施形態による内燃機関用点火コイルの構成を示す断面図である。
【
図7】本発明の第5の実施形態による内燃機関用点火コイルの構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
最初に、
図1〜
図3を用いて、本発明の第1の実施形態による内燃機関用点火コイルの構成について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態による内燃機関用点火コイルの構成を示す断面図である。
図2は、
図1の別断面図である。
図3は、
図2のA−A断面図である。
【0020】
図1において、内燃機関用点火コイル1は、内燃機関のシリンダヘッドに形成された各シリンダのプラグホール2に装着されて点火プラグ21に直結し使用される独立点火形の内燃機関用点火コイルである。内燃機関用点火コイル1は、コネクタ16を備えている。コネクタ16の内部の端子を介して、外部のバッテリから内燃機関用点火コイル1の内部のイグナイタ17やコイル部3に電力が供給され、また、外部のエンジンコントロールユニット(ECU)から内燃機関用点火コイル1の内部のイグナイタ17へ点火信号が供給される。
【0021】
点火コイル1は、ECUからの点火信号に応じてスイッチングするイグナイタ17と、コイル部3と、コイルケース4と、プラグホールシール5とを備えている。コイル部3は、一次コイル,二次コイル,積層鉄心等からなり、高電圧を発生する。コイルケース4は、イグナイタ17及びコイル部3を収容するものであり、熱可塑性樹脂からなる。プラグホールシール5は、コイルケース4とプラグホール2との間にプラグホール2の開口部を閉塞するために設けられている。
【0022】
プラグホール2は、内燃機関のシリンダヘッドCHに、各シリンダ毎に形成されている。プラグホール2の下部には、点火プラグ21がねじ込みによりシリンダヘッドCHに取り付けられている。
【0023】
コイルケース4の下部には、金属製の端子19で封止されている。コイルケース4の内部には、コイル部3が挿入される。コイル部3のコイル部の2次ボビンにピン18が固定されており、2次コイルと接続している。ピン18は、例えば、りん青銅からなり、バネ性を有している。コイルケース4の内部にコイル部3が挿入された状態では、ピン18のバネ性より、ピン18の端部は、端子19に接触し、導通している。コイルケース4の内部には、エポキシ樹脂などの絶縁用樹脂8が注入され、イグナイタ17及びコイル部3を封止している。
【0024】
コイルケース4の下部には、プラグホールシール5が取り付けられている。プラグホールシール5は、シリコンゴム等からなる。プラグホールシール5は、図示の下方向に円筒状に延材しており、点火プラグ21の上部の電極端子に挿入される。プラグホールシール5の円筒状の空間の内部には、金属製のスプリング20が挿入され、端子19と点火プラグ21の上部の電極端子とを電気的に導通し、コイル部3で発生した高電圧パルスが点火プラグ21に供給される。
【0025】
図2に示すように、コイルケース4の側部には、取り付け部4TBが一体的に成形されている。一方、シリンダヘッドCHの上部には、取り付け座ZAがシリンダヘッドCHと一体的に成形されている。取り付け部4TBは、取り付け座ZAにボルトBT等により固定され、点火コイル1がシリンダヘッドCHの上部に固定される。
【0026】
コイルケース4の図示に右方向の外側部には、空間部6及び空気通路9が一体的に形成されている。空間部6は、コイルケース4の外側部に設けられた外周壁で区画されている。空間部6と空気通路9とは、それぞれの上部で連通している。すなわち、空間部6は、点火プラグ接続側とは反対側の端部において、空気通路9の上端部と小孔で接続される。ここで、小孔とは、
図3に符号9で示される矩形状の孔のことである。空間部6は、コップを逆さまにしたような下面を「開放された開口(全面が開放されていると型抜きがしやすい)」としている。
図3にて後述するように、空間部6は、空気通路9よりも断面積の大きな通路である。すなわち、空間部6は、点火プラグ接続側の端部が前述の小孔より大きな通路面積を有する開口によって大気側に開放されている。
【0027】
また、プラグホールシール5には、小さな貫通穴5HOが形成されている。さらに、コイルケース4の外表面には、溝部4GRが形成されている。コイルケース4の下部にプラグホールシール5が装着された状態では、溝部4GRの上部は空気通路9に連通し、溝部4GRの下部はプラグホールシール5の貫通穴5HOに連通する。溝部4GRは、例えば、幅0.8mmで深さ0.4mm程度の微小なものであるが、コイルケース4の下部にプラグホールシール5が装着された状態でも、この溝部4GRは溝状態が維持され、空気通路9と貫通穴4HOとを連通可能とするものである。点火コイル1がシリンダヘッドCHの上部に固定された状態では、貫通穴5HOは、プラグホール2に連通する。
【0028】
従って、プラグホール2と外気との間の、通気の経路としては、空間部6,空気通路9,溝部4GR,貫通穴5HO,プラグホール2の順になる。
【0029】
点火コイル1が被水により、一時的に完全な水没状態となった際は、シリンダヘッドCHが冷却され、プラグホール2の温度が低下し、プラグホール内の圧力が変化して外気と平衡になろうとするために外気を吸い込む負圧が発生し、その負圧によりプラグホール2の内部に水が入ろうとするが、前記空間部6はコップを逆さまにしたような形態により、完全な水没状態においても空気を蓄えている。空間部6の容積をプラグホール内の温度変化による容積収縮分よりも大きくしておくことで、空間部6内の水位が上がってきても、プラグホール内と連続する空気通路9の入口(空気通路9の上部)まで上がることはないので、プラグホール内に水が浸入することはないものである。空間部6の容積は、例えば、4ccとしている。一方、プラグホール2の容積は40cc程度であり、この場合のプラグホール内の温度変化による容積収縮分は2cc程度であるため、空間部6の容積は、容積収縮分(2cc)よりも大きくなっている。
【0030】
また、空間部6の下面は「開放された開口(全面が開放されていると型抜きがしやすい)」としたことにより、点火コイル1の周辺の水位が空間部6の下面以下となった際は、空間部6内にプラグホール内の負圧により空間部6に吸い上げられた水を瞬時に排出するため、排水性が向上している。従って、点火コイル1が一時的に完全な水没状態を繰り返すような環境条件下においてもプラグホール内への水浸入を抑制することができる。
【0031】
また、空間部6内に水が溜まったままの状態で車両が動くと、内部の水が空間部6内を移動し、跳ね返るが、
図3に示すように空気通路9を空間部6内の幅方向の中央1/3内に設定することで、跳ね返った水が容易に空気通路9に入らない構造とすることができる。跳ね返った水は、
図3に矢印で示すような経路で跳ね返る。この矢印の経路は、空間部6の下部方向から上部方向に向かう経路である。空間部6の短辺側側壁に水が当たり跳ね返ると、空間部6の中央部から離れた位置に水が飛び散るため、空気通路9を空間部6内の中央1/3内に設定することで、跳ね返った水が容易に空気通路9に入らないようにすることができる。
【0032】
以上説明したように、本実施形態によれば、点火コイルが一時的に完全な水没状態を繰り返すような環境条件下においても、プラグホール内への水浸入を抑制した高い防水性を確保し、さらにコイル側部の空間部の下面を開放された開口(全面が開放されていると型抜きがしやすい)とすることにより、排水性の高い構造とすることができる。
【0033】
次に、
図4を用いて、本発明の第2の実施形態による内燃機関用点火コイルの構成について説明する。
図4は、本発明の第2の実施形態による内燃機関用点火コイルの構成を示す断面図である。なお、
図1〜
図3と同一符号は、同一部分を示している。
【0034】
本実施形態では、点火コイル1Aに用いるコイルケース4Aの形状が、
図2に示したコイルケース4とは以下の点で相違している。すなわち、コイルケース4Aによって、空間部6A及び空気通路9Aを形成するが、空間部6Aの上部には、空気通路入口(小孔)10を設け、空気通路入口10の上部及び空気通路9Aの上部は開口している。この開口部(空間部の点火プラグ接続側とは反対側の端部の開口部)は、弾性材からなる封止部材7により、封止する。さらに、封止部材7の上部を絶縁用樹脂8で注型する。封止部材7によって前述の小孔(空気通路入口10)を介してプラグホールと空間部6Aとを接続する空気通路9Aの一部が形成される。空気通路9Aは空間部6Aより垂直上面方向に、次に水平方向、最後に垂直下面方向に向かって形成している。すなわち、空気通路9Aと小孔(空気通路入口10)とを覆う封止部材7によって両者を接続する水平方向通路が形成される。そして、空気通路9Aは点火コイルのプラグホールへの挿入方向に沿って延びその端部においてプラグホール2と接続されている。そして、他の構成は、
図1〜
図3に示したものと同様である。
【0035】
本実施形態によっても、点火コイルが一時的に完全な水没状態を繰り返すような環境条件下においても、プラグホール内への水浸入を抑制した高い防水性を確保し、さらにコイル側部の空間部の下面を開放された開口(全面が開放されていると型抜きがしやすい)することにより、排水性の高い構造とすることができる。
【0036】
次に、
図5を用いて、本発明の第3の実施形態による内燃機関用点火コイルの構成について説明する。
図5は、本発明の第3の実施形態による内燃機関用点火コイルの構成を示す断面図である。なお、
図1〜
図3と同一符号は、同一部分を示している。
【0037】
本実施形態では、点火コイル1Bに用いるコイルケース4Bの形状が、
図2に示したコイルケース4とは以下の点で相違している。すなわち、コイルケース4Bによって、空間部6は形成するが、コイルケース4Bとは別のサイドケース15をコイルケース4Bに接着等により後付けで密着固定することで、空間部6Bを作り出す。これにより、より大きな容積の空間部6Bを確保することができる。そして、他の構成は、
図1〜
図3に示したものと同様である。
【0038】
本実施形態によっても、点火コイルが一時的に完全な水没状態を繰り返すような環境条件下においても、プラグホール内への水浸入を抑制した高い防水性を確保し、さらにコイル側部の空間部の下面を開放された開口(全面が開放されていると型抜きがしやすい)することにより、排水性の高い構造とすることができる。
【0039】
次に、
図6を用いて、本発明の第4の実施形態による内燃機関用点火コイルの構成について説明する。
図6は、本発明の第4の実施形態による内燃機関用点火コイルの構成を示す断面図である。なお、
図1〜
図4と同一符号は、同一部分を示している。
【0040】
本実施形態では、点火コイル1Cに用いるコイルケース4Cの形状が、
図2に示したコイルケース4とは以下の点で相違している。すなわち、コイルケース4Cによって、空間部6C及び空気通路9Cを形成するが、空間部6Cの上部には、空気通路入口(小孔)10を設け、空気通路入口10の上部及び空気通路9Cの上部は開口している。また、空気通路入口10を段付きとし、仮に空気通路入口10に水滴が付着している状態で、プラグホール内に負圧が発生した場合、水滴は空気通路入口10より上昇するが、上昇するにつれて空気通路断面積が拡大するので水滴の厚さが薄くなり、最終的には水滴が落下する。なお、空気通路入口10の形状としては、図示の段付き形状の他に、テーパー形状の形状部とすることもできる。
【0041】
また、空気通路の中間の水平部にはコイルケース4Cによって形成され、上面に向かった突起形状部11とすることにより、一段高い防波堤のような役割を成し、水が乗り越えにくい構造となる。なお、突起形状部11は、封止部材7に向かって突出している。
【0042】
上述の開口部は、弾性材からなる封止部材7により、封止する。さらに、封止部材7の上部を絶縁用樹脂8で注型する。空気通路9Bは空間部6Bより垂直上面方向に、次に水平方向、最後に垂直下面方向に向かって形成している。
【0043】
また、空気通路9Cの下部の出口12の周辺に突起形状部13を設けることにより、貯水できる領域を作り、空気通路の出口12に水が入りにくい構造としている。突起形状部13は、空気通路9Cのプラグホールとの接続部周辺に備えられ、コイルケースに一体により形成されている。また、突起形状部13は、点火プラグ接続側とは反対側に向かって突出している。そして、他の構成は、
図1〜
図3に示したものと同様である。
【0044】
本実施形態によっても、点火コイルが一時的に完全な水没状態を繰り返すような環境条件下においても、プラグホール内への水浸入を抑制した高い防水性を確保し、さらにコイル側部の空間部の下面を開放された開口(全面が開放されていると型抜きがしやすい)口することにより、排水性の高い構造とすることができる。
【0045】
次に、
図7を用いて、本発明の第5の実施形態による内燃機関用点火コイルの構成について説明する。
図7は、本発明の第5の実施形態による内燃機関用点火コイルの構成を示す断面図である。なお、
図1〜
図4と同一符号は、同一部分を示している。
【0046】
本実施形態では、点火コイル1Dに用いるコイルケース4Dの形状が、
図4に示したコイルケース4Aとは以下の点で相違している。すなわち、コイルケース4Dの空間部6Aを形成する外周壁に直角方向の突起14を形成している。突起14は、空間部6Aを形成するための外周壁に、当該外周壁から空間部6Aの開口周囲を覆うように突出している。この突起14により、高圧洗車時のような水圧の高い水が点火コイル1Dにかかった場合においても、空間部6Aの下面側に水が集中することがないので、開口している下面側からの水の浸入を抑制することができる。なお、突起14の高さは外周壁に設置することが出来る任意の高さで良いものとする。
【0047】
本実施形態によっても、点火コイルが一時的に完全な水没状態を繰り返すような環境条件下においても、プラグホール内への水浸入を抑制した高い防水性を確保し、さらにコイル側部の空間部の下面を開放された開口(全面が開放されていると型抜きがしやすい)することにより、排水性の高い構造とすることができる。
【0048】
なお、本発明は、コイル部をプラグホール上部に配置する形態のいわゆるプラグトップ型の点火コイル及びコイル部をプラグホール内に配置する形態のいわゆるプラグホール型の点火コイルの双方を指すものである。
【符号の説明】
【0049】
1…内燃機関用点火コイル
2…プラグホール
3…コイル部
4…コイルケース
5…プラグホールシール
6…空間部
7…封止部材
8…絶縁用樹脂
9…空気通路
10…空気通路入口
11…空気通路水平部突起
12…空気通路出口
13…空気通路出口付近突起
14…外周壁直角方向突起
15…サイドケース
16…コネクタ
17…イグナイタ
18…ピン
19…端子
20…スプリング
21…点火プラグ