(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ビアホール及びトレンチの少なくとも一方が形成された被処理基板を下記の無電解めっき液に浸漬した状態で、前記被処理基板に対して無電解めっきを行うことにより、前記ビアホール内及び前記トレンチ内の少なくとも一方にめっき金属を埋め込む配線基板の製造方法であって、
前記被処理基板の下方へ前記無電解めっき液を供給する工程と、
前記被処理基板の下方に供給された前記無電解めっき液内へ酸素含有気体を散気する工程と、
前記無電解めっき液を前記被処理基板の上方からオーバーフローさせる工程と
を少なくとも備え、
前記無電解めっきを開始する前に、所定時間、前記酸素含有気体を散気する工程を行わないことを特徴とする配線基板の製造方法。
無電解めっき液:少なくとも、水溶性金属塩と、還元剤と、錯化剤とを含有するとともに、下記一般式(I)乃至(V)の何れかで表される少なくとも1種の硫黄系有機化合物からなるレベラーを含有する。
R1−(S)n−R2 (I)
R1−L1−(S)n−R2 (II)
R1−L1−(S)n−L2−R2 (III)
R1−(S)n−L3 (IV)
R1−L1−(S)n−L3 (V)
[一般式(I)乃至(V)中、nは、1以上の整数、
R1、R2は、それぞれ独立に炭素原子、酸素原子、リン原子、硫黄原子、窒素原子をそれぞれ任意の数含む脂肪族環状基または芳香族環状基、または該環状基に任意の1種類以上の置換基が1つ以上結合した環状基、
L1、L2は、それぞれ独立に直鎖または分岐したアルキル鎖、アルキルアミノ鎖、アルキレン鎖、アルコキシ鎖からなる群の何れか1つであり、
L3は、アルキル基、アルキレン基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルキレンアミノ基、ヒドロキシル基、アルキルヒドロキシル基、アルキレンヒドロキシル基、カルボキシル基、アルキルカルボキシル基、アルキレンカルボキシル基、アルキルアミノカルボキシル基、アルキレンアミノカルボキシル基、ニトロ基、アルキルニトロ基、ニトリル基、アルキルニトリル基、アミド基、アルキルアミド基、カルボニル基、アルキルカルボニル基、スルホン酸基、アルキルスルホン酸基、ホスホン酸基、アルキルホスホン酸基、スルファニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基からなる群の何れか1つである。]
前記無電解めっきは、前記無電解めっき液が充填されためっき槽と、前記被処理基板の下方へ前記無電解めっき液を供給するめっき液供給手段と、前記無電解めっき液内へ酸素含有気体を散気する散気手段と、前記無電解めっき液を前記被処理基板の上方からオーバーフローさせるオーバーフロー槽とを少なくとも備える無電解めっき装置により行われることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の配線基板の製造方法。
ビアホール及びトレンチの少なくとも一方が形成された被処理基板を下記の無電解めっき液に浸漬した状態で、前記被処理基板に対して無電解めっきを行うことにより、前記ビアホール内及び前記トレンチ内の少なくとも一方にめっき金属を埋め込む配線基板の製造方法であって、
前記被処理基板の下方へ前記無電解めっき液を供給する工程と、
前記被処理基板の下方に供給された前記無電解めっき液内へ酸素含有気体を散気する工程と、
前記無電解めっき液を前記被処理基板の上方からオーバーフローさせる工程と
を少なくとも備え、
前記無電解めっきは、前記無電解めっき液が充填されためっき槽と、前記被処理基板の下方へ前記無電解めっき液を供給するめっき液供給手段と、前記無電解めっき液内へ酸素含有気体を散気する散気手段と、前記無電解めっき液を前記被処理基板の上方からオーバーフローさせるオーバーフロー槽とを少なくとも備える無電解めっき装置により行われ、
前記無電解めっき装置が、前記めっき槽内の前記無電解めっき液の流れを調整する整流手段を備えることを特徴とする配線基板の製造方法。
無電解めっき液:少なくとも、水溶性金属塩と、還元剤と、錯化剤とを含有するとともに、下記一般式(I)乃至(V)の何れかで表される少なくとも1種の硫黄系有機化合物からなるレベラーを含有する。
R1−(S)n−R2 (I)
R1−L1−(S)n−R2 (II)
R1−L1−(S)n−L2−R2 (III)
R1−(S)n−L3 (IV)
R1−L1−(S)n−L3 (V)
[一般式(I)乃至(V)中、nは、1以上の整数、
R1、R2は、それぞれ独立に炭素原子、酸素原子、リン原子、硫黄原子、窒素原子をそれぞれ任意の数含む脂肪族環状基または芳香族環状基、または該環状基に任意の1種類以上の置換基が1つ以上結合した環状基、
L1、L2は、それぞれ独立に直鎖または分岐したアルキル鎖、アルキルアミノ鎖、アルキレン鎖、アルコキシ鎖からなる群の何れか1つであり、
L3は、アルキル基、アルキレン基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルキレンアミノ基、ヒドロキシル基、アルキルヒドロキシル基、アルキレンヒドロキシル基、カルボキシル基、アルキルカルボキシル基、アルキレンカルボキシル基、アルキルアミノカルボキシル基、アルキレンアミノカルボキシル基、ニトロ基、アルキルニトロ基、ニトリル基、アルキルニトリル基、アミド基、アルキルアミド基、カルボニル基、アルキルカルボニル基、スルホン酸基、アルキルスルホン酸基、ホスホン酸基、アルキルホスホン酸基、スルファニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基からなる群の何れか1つである。]
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0019】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係るプリント配線基板を示す断面図である。
【0020】
図1に示すように、本実施形態のプリント配線基板1は、第1樹脂層2と、第1樹脂層2上に設けられた導体回路3と、第1樹脂層2上において、導体回路3を覆うように設けられた第2樹脂層4と、第2樹脂層4に形成されたビアホール5及びトレンチ6と、ビアホール5及びトレンチ6に設けられた金属層7とを備えている。
【0021】
第1樹脂層2は、プリント配線基板1のベース基板としての役割を有するものであり、電気的絶縁性を有する樹脂材料により形成されている。第1樹脂層2を形成する材料としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ビスマレイミド―トリアジン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、液晶ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂等が挙げられる。
【0022】
また、連続多孔質ポリテトラフルオロエチレン樹脂等の三次元網目状フッ素系樹脂基材にエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を含浸させた樹脂−樹脂複合材料からなる板材等を使用してもよい。
【0023】
導体回路3は、プリント配線基板1の配線パターンを形成する金属回路であり、第1樹脂層2上に貼り付け、または第1樹脂層2に対してめっき処理を施すことにより形成されている。
【0024】
導体回路3は、例えば、銅、アルミニウム、鉄、ニッケル、クロム、モリブデン等の金属箔、あるいはこれらの合金箔(例えば、アルミニウム青銅、リン青銅、黄青銅等の銅合金や、ステンレス、アンバー、ニッケル合金、スズ合金等)により構成されている。
【0025】
なお、導体回路3として、これらの金属箔等を単層あるいは複数層に積層したものを使用することができ、特に、めっき密着性及び導電性を向上させて、コストを低下させるとの観点から、銅又は銅合金を使用することが好ましい。
【0026】
第2樹脂層4は、第1樹脂層2の表面上に形成された導体回路3を保護する役割を有するものである。この第2樹脂層4を形成する材料としては、上述の第1樹脂層2を形成する材料と同様の材料を使用することができる。
【0027】
なお、無電解めっき処理時に、めっき液に対する有害物質が溶出せず、界面剥離を発生させない等の、めっき処理工程に対する耐性を有するとともに、導体回路3との密着性、及び第1及び第2樹脂層2,4の密着性を向上させて、冷熱サイクル等の試験における剥離やクラック等の発生を回避するとの観点から、第1及び第2樹脂層2,4として、エポキシ樹脂を使用することが好ましい。
【0028】
金属層7は、めっき処理(無電解めっき処理)によって、ビアホール5内及びトレンチ6内にめっき用の金属を埋め込むことにより形成される。この金属層7を形成する金属としては、例えば、銅やニッケル等が挙げられる。
【0029】
次に、図面を参照して、本実施形態の無電解めっき装置を説明する。
図2は、本発明の第1の実施形態に係る無電解めっき装置を示す図である。
【0030】
無電解めっき装置10は、基板に対してめっき処理(無電解めっき処理)を行うことにより、ビアホール5内及びトレンチ6内にめっき金属を埋め込み、プリント配線基板1の回路を構成する金属層7を形成するための装置である。
【0031】
この無電解めっき装置10は、めっき液20が充填されためっき槽11と、めっき槽11内にめっき液20を供給するめっき液供給手段12と、めっき槽11内において、被処理基板30の下方のめっき液20内へ酸素含有気体(即ち、気泡)を散気する散気手段13と、めっき槽11からオーバーフローしためっき液20を貯留するオーバーフロー槽14とを備えている。
【0032】
めっき槽11は、略矩形状の開口11aを上面に有する略直方体形状の容器であり、その内部には、めっき液20が充填されている。そして、
図1に示すように、めっき処理を行う際に、被処理基板30の全体が、めっき槽11の内部に充填されためっき液20に浸漬される構成となっている。
【0033】
なお、
図1に示すように、被処理基板30は、めっき槽11の上方に設けられた治具21により把持された状態で、その全体がめっき液20に浸漬される構成となっている。
【0034】
この治具21は、被処理基板30の外形よりも大きい枠と、枠の上辺及び下辺に設けられ、被処理基板30の端部を把持するクランプを有し、上下方向及び水平方向に移動可能な搬送装置(不図示)に接続されている。
【0035】
また、被処理基板30は、略垂直状態でめっき液20中に浸漬され、被処理基板30の表面と、めっき槽11の壁面が略平行となるように把持される。
【0036】
液供給手段12は、めっき槽11内において、被処理基板30の下方に設けられている。この液供給手段12は、例えば、複数の液噴出孔を有し、互いに水平に配置され、全長が被処理基板30の水平方向の幅よりも長く、かつ、被処理基板30からの距離が等距離となる位置に配置された2本の管部材により構成されている。従って、2本の管部材は、被処理基板30の表裏面のどちらにおいても液流の効果を高めることができる。
【0037】
散気手段13は、めっき槽11内において、被処理基板30の下方に設けられている。この散気手段13は、
図1に示すように、上述の液供給手段12に隣接して配置されるとともに、酸素含有気体を散気手段13に供給するためのエアポンプ15に接続されている。
【0038】
この散気手段13は、例えば、多孔性セラミックス材料により形成された2本の管部材により構成されている。この2本の管部材は、互いに水平に配置され、かつ、被処理基板30からの距離が等距離となる位置に配置されており、被処理基板30の表面に対して、十分な酸素含有気体を供給することができるように構成されている。そして、上述のエアポンプ15から、散気手段13の内部に酸素含有気体が供給されると、多孔性セラミックス材料により形成された多孔体を通じて、酸素含有気体がめっき液20中へ散気される構成となっている。
【0039】
なお、散気手段は、長時間、気体の圧力が加わるため、例えば、フッ素樹脂等の樹脂により形成すると、めっき液中で破損する場合があるが、本実施形態においては、フッ素樹脂に比し、硬度及び耐摩耗性に優れた多孔性セラミックス材料により形成されているため、めっき液20中における散気手段13の破損を防止することができる。また、多孔体に形成された孔に汚れ等が付着した場合には、洗浄することにより、散気手段13を繰り返し、使用することができる。
【0040】
また、トレンチ6やビアホール5の内部への気泡の入り込みを防止するとともに、めっき液20中の溶存酸素量を増加させるとの観点から、酸素含有気体の気泡径は、5〜50μmであることが好ましい。
【0041】
また、本実施形態においては、還元反応の進行に起因するめっき液20の分解を防止するとともに、トレンチ6及びビアホール5におけるめっきの析出反応を確実に開始させるとの観点から、無電解めっきを開始(即ち、めっき液20中への被処理基板30全体の浸漬が完了する)する前に、所定時間(例えば、1〜2分間)、散気手段13による散気処理を行わないことが好ましい。
【0042】
また、めっき液20中の溶存酸素量の増加に起因して、トレンチ6の内部及びビアホール5の内部におけるめっきの析出が抑制されるという不都合を回避するとともに、めっき液20中の溶存酸素量の低下に起因して、トレンチ6外やビアホール5外の部分においてめっきが析出するという不都合を確実に防止するとの観点から、めっき液20に対する酸素含有気体の供給速度は、めっき液1Lあたり0.1〜1.0L/分が好ましい。
【0043】
オーバーフロー槽14は、めっき槽11に隣接して設けられ、めっき槽11の上端における開口11aを挟んで、相対向する両側部分(即ち、平面視において、略矩形状をなすめっき槽11の4つの側壁部のうち、相対向する2つの側壁部の上端部)に配置されている。
【0044】
そして、めっき槽11に充填されためっき液20は、めっき槽11に形成された流出口11bを通じて、オーバーフロー槽14へオーバーフローし、オーバーフロー槽14の内部に貯留される構成となっている。
【0045】
また、
図1に示すように、無電解めっき装置10は、めっき槽11、及びオーバーフロー槽14に接続され、オーバーフロー槽14の内部に貯留されためっき液を、めっき槽11に導入するための循環路16と、循環路16に設けられたポンプ17、温度調節手段18、及びフィルター19とを備えている。
【0046】
そして、オーバーフロー槽14に貯留されためっき液20は、ポンプ17により、循環路16へと導かれ、温度調整手段18による温度調節、及び、フィルター19による異物等の除去が行われた後、循環路16により循環されて、めっき槽11内に導入される。このような構成により、めっき槽11の内部において、めっき液20の強い上昇液流(即ち、めっき槽11の下部から上部へ向かう強い液流)が形成される構成となっている。
【0047】
なお、めっき槽11の下部には、排出口24が形成されており、排出口24から排出されためっき液20は、上述の循環路16に接続された排出路23を介して、循環路16へと導かれ、上述のオーバーフロー槽14の内部に貯留されためっき液20と同様に、温度調節手段18による温度調節、及び、フィルター19による異物等の除去が行われた後、循環路16により循環されて、めっき槽11内に導入される。このような構成により、めっき槽11の底部に蓄積する異物を取り除くことが可能になる。
【0048】
次に、本実施形態のプリント配線基板の製造方法について一例を挙げて説明する。
図3、
図4は、本発明の第1の実施形態に係るプリント配線基板の製造方法を説明するための断面図である。なお、本実施形態の製造方法は、導体回路形成工程、第2樹脂層形成工程、保護層形成工程、ビアホール・トレンチ形成工程、めっき前処理工程、触媒付与工程、保護層剥離工程、及びめっき処理工程を備える。
【0049】
<導体回路形成工程>
まず、例えば、エポキシ樹脂からなる第1樹脂層2の表面上に、例えば、銅泊(厚さ:数μm〜25μm)を貼着して、第1樹脂層2の表面上に銅張積層板を形成する。次いで、この銅張積層板を、フォトリソグラフィやスクリーン印刷などの方法によりパターニングして、
図3(a)に示すように、第1樹脂層2の表面上に導体回路3を形成する。
【0050】
なお、上述した銅張積層板は、第1樹脂層2に対して、銅箔をめっき処理することにより形成してもよい。
【0051】
<第2樹脂層形成工程>
次に、例えば、エポキシ樹脂(厚さ:20μm〜100μm)を、導体回路3を覆うように第1樹脂層2上に形成し、このエポキシ樹脂に対して加熱・加圧処理(例えば、温度:100〜300℃、圧力:5〜60kg/cm
2)を行うことにより、
図3(b)に示すように、第1樹脂層2上に導体回路3を覆うようにエポキシ樹脂からなる第2樹脂層4を形成する。
【0052】
なお、接着剤層(不図示)を介して、第1樹脂層2上に第2樹脂層4を貼り合わせることにより、第2樹脂層4を積層してもよい。
【0053】
<保護層形成工程>
次に、例えば、ポリイミド樹脂(厚さ:0.1μm〜10μm)を、第2樹脂層4上に塗布後、このポリイミド樹脂に対して加熱処理を行うことにより、
図3(c)に示すように、第2樹脂層4上にポリイミド樹脂からなる保護層8を形成する。
【0054】
なお、第2樹脂層4上に保護層8を積層する際に、まず、第2樹脂層4上に接着剤層(不図示)を積層させた後、この接着剤層を介して、第2樹脂層4上に保護層8を積層してもよい。この場合、接着剤層として、例えば、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリウレタン樹脂等からなる耐熱性の接着シート等を使用することができ、この接着シートを加熱により融着させて、接着剤層を形成する。また、接着剤層の融着条件としては、特に限定されず、接着シート等を形成する樹脂に応じて、適宜、変更することができる。例えば、30秒〜2分の間、100〜190℃程度に加熱することにより、接着シートを融着させて、接着剤層を形成することができる。
【0055】
この保護層8は、後述する触媒付与工程において、第2樹脂層4に形成されたビアホール5及びトレンチ6のみに触媒を付着させ、第2樹脂層4の表面4a(
図1、
図3(c)参照)への触媒の付着を防止するためのものである。
【0056】
また、この保護層8は、絶縁性、及び撥水性を有するとともに、後述する保護層剥離工程において使用される剥離液に溶解する樹脂により形成される。保護層8を形成する樹脂としては、例えば、ポリイミド樹脂、ケイ素樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等のアルカリ可溶性樹脂や、アクリル樹脂、フェノール樹脂、ABS樹脂、ポリイソブチレン樹脂等のアルコール溶解性樹脂等が挙げられる。
【0057】
また、保護層8の厚みは、0.1μm〜10μmが好ましい。これは、保護層8の厚みが0.1μm未満の場合は、後述する触媒付与工程において、ビアホール5及びトレンチ6のみに触媒を付着させ、第2樹脂層4の表面4aへ触媒が付着することを防止する機能が低下する場合が有るためである。また、保護層8の厚みが10μmよりも大きい場合は、保護層8に形成されるトレンチ6の深さが大きくなるため、トレンチ幅が狭いプリント配線基板1において、トレンチ6の形成が困難となる場合があるためである。
【0058】
<ビアホール・トレンチ形成工程>
次に、
図3(d)に示すように、第2樹脂層4上に形成された保護層8に貫通孔9を形成するとともに、この貫通孔9を介して、保護層8が積層された第2樹脂層4に、ビアホール5、及びトレンチ6を形成する。
【0059】
このビアホール5、トレンチ6、及び貫通孔9を形成する方法としては、特に限定されず、例えば、エッチング処理やレーザ処理等を挙げることができる。このうち、微細な形状を有するビアホール5等を迅速に形成し、エッチング処理における露光・現像による位置ずれや現像不良等の不都合を防止し、更に、配線基板の小型化・薄型化、さらに微細化に対応して、信頼性の高い配線パターンを形成するとの観点から、レーザ処理によりビアホール5等を形成することが好ましい。
【0060】
また、このレーザ処理によりビアホール5等を形成する場合、レーザとしては、例えば、CO
2レーザ、YAGレーザ、エキシマレーザ等の一般的なレーザを使用することができる。また、アルゴンレーザ、ヘリウム−ネオンレーザ等の気体レーザ、サファイアレーザ等の固体レーザ、色素レーザ、半導体レーザ、自由電子レーザ等を使用してもよい。このうち、特に、より一層微細な形状を有するビアホール5等を形成するとの観点から、YAGレーザやエキシマレーザ等を使用することが好ましい。
【0061】
また、ビアホール5やトレンチ6のアスペクト比、直径の大きさ、深さ等は、プリント配線基板1の種類等に応じて、適宜、変更することができる。例えば、ビアホール5の直径は10〜200μm、ビアホール5の深さは2〜20μm、トレンチ6の幅は1〜500μm、トレンチ6の深さは2〜20μmに設定することができる。
【0062】
<めっき前処理工程>
次いで、上述のビアホール5、及びトレンチ6が形成された基板に対して、所定のめっき前処理を行う。より具体的には、例えば、清浄溶液(酸性溶液や中性液)中に65℃で5分間、基板を浸漬させて、基板表面、ビアホール5、及びトレンチ6におけるゴミ等を除去する。この清浄処理によって、ビアホール5やトレンチ6の内部を清浄して、後工程において形成されるめっき皮膜の密着性等を向上させる。
【0063】
なお、ビアホール5の底部において露出した導体回路3の表面に対して活性化処理を行ってもよい。この活性化処理は、例えば、硫酸や塩酸の10%溶液からなる酸性溶液等を用いて、酸性の溶液中に基板を5〜10秒間浸漬させて行う。このように、基板を酸性溶液に浸漬することによって、活性化領域である導体回路3の表面に残存したアルカリ物質を中和し、薄い酸化膜を溶解させることができる。
【0064】
<触媒付与工程>
次に、
図4(a)に示すように、第2樹脂層4に触媒22を付与して、第2樹脂層4に形成されたビアホール5及びトレンチ6に触媒22を付着させる。
【0065】
本工程は、例えば、2価のパラジウムイオン(Pd
2+)を含有した触媒液を用いて行うことができる。また、この場合の触媒液としては、例えば、Pd濃度が100〜300mg/lの塩化パラジウム(PdCl
2・2H
2O)と、Sn濃度が10〜20g/lの塩化第一スズ(SnCl
2・2H
2O)と、150〜250ml/lの塩酸(HCl)とを含有する混合液を使用することができる。
【0066】
触媒22の付与は、まず、
図3(d)に示す基板を、触媒液中に、例えば、温度30〜40℃の条件で1〜3分間、浸漬させて、Pd−Snコロイドを基板の表面に吸着させる。次に、常温条件下で、50〜100ml/lの硫酸又は塩酸からなるアクセレータ(促進剤)に基板を浸漬させて、触媒の活性化を行う。この活性化処理により、錯化合物のスズが除去されて、パラジウム吸着粒子となり、最終的にパラジウム触媒として、無電解めっき処理による金属めっきの析出を促進させるようになる。
【0067】
なお、触媒22として、銅イオン(Cu
2+)を含有した触媒液を用いて行ってもよい。また、スズを含有しない酸性コロイドタイプ、またはアルカリイオンタイプの触媒液を用いることもできる。また、上述のアクセレータとして、水酸化ナトリウムやアンモニア溶液を使用してもよい。
【0068】
また、コンディショナー液やプレディップ液を用いて、ビアホール5及びトレンチ6における第2樹脂層4と金属層7との密着性を強固にする前処理を施してもよい。また、例えば、基板に対して、触媒液をスプレー方式により噴射して接触させることにより、触媒を付与する構成としてもよい。
【0069】
<保護層剥離工程>
次いで、剥離液を使用して、
図4(b)に示すように、第2樹脂層4の表面4a上に形成された保護層8の剥離を行う。より具体的には、剥離液中に、
図4(a)に示す触媒22が付与された基板を浸漬させて、保護層8を剥離液に溶解させることにより、第2樹脂層4の表面4a上に形成された保護層8を剥離する。
【0070】
使用する剥離液としては、剥離される保護層8を形成する樹脂の種類に応じて、適宜、変更することができる。例えば、上述のポリイミド樹脂やケイ素樹脂等のアルカリ水溶液に可溶な樹脂により保護層8を形成した場合は、剥離液として、水酸化ナトリウム水溶液や水酸化カリウム水溶液等の水酸化アルカリ金属水溶液が使用できる。また、上述のアクリル樹脂、フェノール樹脂等のアルコール溶液に可溶な樹脂により保護層8を形成した場合は、剥離液として、イソプロピルアルコール等のアルコール溶液が使用できる。
【0071】
また、ビアホール5及びトレンチ6に付着した触媒22の除去を防止して、後述するめっき処理におけるめっきの未析を防止するとの観点から、本工程においては、剥離液中に基板(即ち、保護層8)を浸漬させて、保護層8を剥離する方法が採用される。
【0072】
なお、剥離液への保護層8の浸漬時間は、保護層8を形成する樹脂や剥離液の濃度等に応じて、適宜、変更することができる。例えば、ポリイミド樹脂により形成された保護層8を、濃度が0.4mol/lである水酸化ナトリウム水溶液を使用して剥離する場合、浸漬時間を30秒以上120秒以下に設定することができる。このように、使用する剥離液の濃度に対応させて浸漬時間を設定することにより、ビアホール5及びトレンチ6に付着した触媒22の除去を確実に防止して、保護層8の剥離を行うことが可能になる。
【0073】
なお、ビアホール5及びトレンチ6のみに触媒22を付着させ、トレンチ6外やビアホール5外の部分への触媒22の付着を防止するために、上述の保護層8の代わりに、第2樹脂層4上にマスキングテープを貼り付け、触媒付与工程後、このマスキングテープを剥離する方法を採用してもよい。
【0074】
<めっき処理工程>
次いで、
図4(b)に示す触媒22が付与された基板(即ち、被処理基板30)に対して、めっき処理(無電解めっき処理)を行い、触媒22が付着したビアホール5内及びトレンチ6内にめっき金属を埋め込むことにより、プリント配線基板1の回路を構成する金属層7を形成する。
【0075】
ここで、本工程において使用される無電解めっき液は、水溶性第二銅(合金)塩や水溶性ニッケル(合金)塩等の水溶性金属塩を主成分として、ホルムアルデヒドやパラホルムアルデヒド、グリオキシル酸またはその塩、次亜リン酸またはその塩、ジメチルアミノボラン等の1種以上の還元剤と、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウムや酒石酸ナトリウムカリウム等の錯化剤を含有するとともに、少なくとも1種の硫黄系有機化合物をレベラーとして含有している。
【0076】
また、無電解めっき液は、主成分として、水溶性第二銅塩や水溶性ニッケル塩等の水溶性金属塩を含有している。水溶性金属塩として水溶性第二銅塩または水溶性ニッケル塩を含有させることによって、それぞれ無電解銅めっき液または無電解ニッケルめっき液を生成する。
【0077】
水溶性第二銅塩としては、例えば、硫酸銅、塩化銅、硝酸銅、酢酸銅、EDTA銅等を用いることができ、これらの水溶性第二銅塩を少なくとも1種含み、または任意の割合で2種以上を含有させてもよい。この水溶性第二銅塩の濃度としては、0.001mol/L〜0.2mol/Lが好ましい。なお、金属イオン源として銅を含有させる場合、水溶性第二銅塩を含有させることに限られず、他の金属塩を含有させて無電解銅合金めっき液を生成するようにしてもよい。
【0078】
水溶性ニッケル塩としては、例えば、塩化ニッケル、硫酸ニッケル、硝酸ニッケル、酢酸ニッケル、次亜リン酸ニッケル等の有機ニッケル塩等を用いることができ、これらの水溶性ニッケル塩を少なくとも1種含み、または任意の割合で2種以上を含有させてもよい。この水溶性ニッケル塩の濃度としては、0.001mol/L〜0.2mol/Lが好ましい。なお、金属イオン源としてニッケルを含有させる場合、水溶性ニッケル塩を含有させることに限られず、他の金属塩を含有させて無電解ニッケル合金めっき液を生成するようにしてもよい。
【0079】
還元剤としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、グリオキシル酸またはその塩、次亜リン酸またはその塩、ジメチルアミノボラン等の公知の還元剤を用いることができ、これらの還元剤を少なくとも1種含み、または任意の割合で2種以上を含有させてもよい。この還元剤の濃度としては、0.01mol/L〜0.5mol/Lが好ましい。
【0080】
錯化剤としては、ポリアミン、ポリアルカノールアミン、ポリアミノポリカルボン酸またはその塩、カルボン酸またはその塩、オキシカルボン酸またはその塩、アミノ酸またはその塩等を用いることができ、これらの錯化剤を少なくとも1種含み、または任意の割合で2種以上を含有させてもよい。この錯化剤を無電解めっき液に含有させることにより、アルカリ性のめっき液中においても、上述した銅イオンやニッケルイオン等の金属イオンを安定して保持させる。
【0081】
より具体的に、ポリアミンとしては、エチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、ヘキサメチレンテトラミン、ペンタエチレンヘキサミン等が挙げられる。また、ポリアルカノールアミンとしては、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン等が挙げられる。また、ポリアミノポリカルボン酸としては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ニトリロ三酢酸ジエチレントリアミン五酢酸等、またはこれらの塩が挙げられる。また、オキシカルボン酸としては、クエン酸、酒石酸、グルコン酸、りんご酸等、またはこれらの塩が挙げられる。また、アミノ酸としては、グリシン、グルタミン酸等、またはこれらの塩が挙げられる。
【0082】
そして、本実施形態に係る無電解めっき液に含有される錯化剤としては、特に、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム(EDTA−4Na)、酒石酸ナトリウムカリウム(ロッセル塩)、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸三ナトリウム(HEDTA)等を好適に用いることができる。その錯化剤の濃度としては、0.01mol/L〜1mol/L含有させることが好ましく、錯化剤の合計濃度が水溶性金属塩の1〜5倍のモル量となるように含有させることが好ましい。
【0083】
本実施形態に係る無電解めっき液では、レベラーとして、少なくとも1種の硫黄系有機化合物を含有することを特徴としている。本実施形態に係る無電解めっき液に含有されている硫黄系有機化合物は、炭素原子、酸素原子、リン原子、硫黄原子、窒素原子をそれぞれ任意の数含む脂肪族環状基または芳香族環状基、またはこれらの環状基に任意の1種類以上の置換基が1つ以上結合した環状基を、少なくとも1つ含む化合物である。
【0084】
具体的に、本実施の形態に含有される硫黄系有機化合物は、下記一般式(I)乃至(V)の何れかで表される少なくとも1種の化合物である。
R
1−(S)
n−R
2 (I)
R
1−L
1−(S)
n−R
2 (II)
R
1−L
1−(S)
n−L
2−R
2 (III)
R
1−(S)
n−L
3 (IV)
R
1−L
1−(S)
n−L
3 (V)
ここで、上記一般式(I)〜(V)において、nは、1以上の整数であり、R
1、R
2は、それぞれ独立に炭素原子、酸素原子、リン原子、硫黄原子、窒素原子をそれぞれ任意の数含む脂肪族環状基または芳香族環状基、または該環状基に任意の1種類以上の置換基が1つ以上結合した環状基であり、L
1、L
2は、それぞれ独立に直鎖または分岐したアルキル鎖、アルキルアミノ鎖、アルキレン鎖、アルコキシ鎖からなる群の何れか1つであり、L
3は、アルキル基、アルキレン基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルキレンアミノ基、ヒドロキシル基、アルキルヒドロキシル基、アルキレンヒドロキシル基、カルボキシル基、アルキルカルボキシル基、アルキレンカルボキシル基、アルキルアミノカルボキシル基、アルキレンアミノカルボキシル基、ニトロ基、アルキルニトロ基、ニトリル基、アルキルニトリル基、アミド基、アルキルアミド基、カルボニル基、アルキルカルボニル基、スルホン酸基、アルキルスルホン酸基、ホスホン酸基、アルキルホスホン酸基、スルファニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基からなる群の何れか1つである。
【0085】
上記一般式(I)〜(V)中のR
1、R
2における置換基としては、アルキル基、アルキレン基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルキレンアミノ基、ヒドロキシル基、アルキルヒドロキシル基、アルキレンヒドロキシル基、カルボキシル基、アルキルカルボキシル基、アルキレンカルボキシル基、アルキルアミノカルボキシル基、アルキレンアミノカルボキシル基、ニトロ基、アルキルニトロ基、ニトリル基、アルキルニトリル基、アミド基、アルキルアミド基、カルボニル基、アルキルカルボニル基、スルホン酸基、アルキルスルホン酸基、ホスホン酸基、アルキルホスホン酸基、スルファニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基等が挙げられる。
【0086】
また、上記環状基としては、フェニル基、ナフチル基、フルフリル基、ピリジル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ピリミジル基、イミダゾリル基、チオフェニル基等が挙げられる。
【0087】
そして、このような硫黄系有機化合物としては、特に限定されるものではないが、その一例として、2,2’−ジピリジルジスルフィド、2,2’−ジベンゾチアゾリルジスルフィド、3,3’,5、5’−テトラクロロジフェニルジスルフィド、2,2’−ジチオビス(5−ニトロピリジン)、2,2’−ジチオジ安息香酸、2,2’−ジチオジアニリン、5,5’−ジチオビス(2−ニトロ安息香酸)、4,4’−ビス(2−アミノ−6−メチルピリミジル)ジスルフィド、4,4’−ジピリジルスルフィド、6,6’−ジチオジニコチン酸、2,2’−ジチオジサリチル酸、ジフルフリルスルフィド、ビス(6−ヒドロキシ−2−ナフチル)ジスルフィド、フルフリルメチルジスルフィド、ビス(2−ベンズアミドフェニル)ジスルフィド、ビス(3−ヒドロキシフェニル)ジスルフィド、ジエチルジチオカルバミン酸2−ベンゾチアゾリル、5,5’-チオジサリチル酸、5,5’−ジチオジサリチル酸、(4−ピリジルチオ)酢酸、3−(2−ベンゾチアゾリルチオ)プロピオン酸、4−(2−ベンゾチアゾリルチオ)ホルモリン等が挙げられる。特に、2,2’−ジピリジルジスルフィド、6,6’−ジチオジニコチン酸、2,2’−ジチオジ安息香酸、ビス(6−ヒドロキシ−2−ナフチル)ジスルフィド等は、トレンチやビアホール等に対してより良好にめっき金属を埋め込むことができ、また使用可能な濃度範囲も広く、経時変化が起こりにくく、分解物の影響が少ない等の観点から、好適に利用することができる。
【0088】
この硫黄系有機化合物は、0.001mg/L〜500mg/Lの濃度範囲で含有させることが好ましく、より好ましくは、0.05mg/〜50mg/Lの濃度範囲で含有させる。濃度が薄い場合には、レベラーとしての効果を十分に発揮させることができず、濃度が濃い場合には、レベラーとしての効果が強く現れ過ぎてしまい、めっきの析出を阻害する、及び基板表面においても、トレンチやビアホール内においても、めっき皮膜の膜厚が非常に薄くなってしまい、トレンチやビアホール内に十分なめっき金属を埋め込むことができなくなる。その結果として、欠陥の多いプリント配線基板が形成されてしまう。したがって、本実施の形態に係る無電解めっき液中においては、硫黄系有機化合物を、0.05mg/L〜50mg/Lの濃度範囲で含有させることが好ましく、この範囲で含有させることにより、レベラーとしての効果を十分に発揮させるとともに、良好にトレンチやビアホール内にめっき金属を埋め込むことができる。
【0089】
このような硫黄系有機化合物の硫黄分子は、金属と強い相互作用を形成し、硫黄分子が金属表面に接すると強く吸着するという性質を有している。そして、この硫黄系有機化合物は、金属イオンと共にめっき液中を拡散し、触媒中に供給されるが、基板表面に比べ、めっき液の流れの弱いトレンチやビアホール等の内部への供給量は、基板表面への供給量に比べて少なくなる。したがって、トレンチ等の底部に近づくほど、硫黄系有機化合物の供給量は少なくなるため、無電解めっき反応の抑制作用は小さくなり、結果として、ボトムアップ堆積が進行し、トレンチ等の内部にボイド等の欠陥を生じさせることなくめっき金属を埋め込むことが可能となる。
【0090】
また、本実施形態に係る、環状基を有する硫黄系有機化合物を含有した無電解めっき液によれば、長時間、ボイドやシーム等の欠陥の発生を抑制し、トレンチ等に対して良好なめっき埋め込み性を発揮させることができる。
【0091】
具体的に説明すると、例えば、無電解銅めっき等においては、めっき液中に含有させた還元剤の還元力はpHが上昇するにつれて高くなることから、使用する無電解めっき液のpHをpH10〜14の高アルカリに設定することが好ましい。高アルカリのめっき液中においては、従来の無電解めっき液に用いられている硫黄系有機化合物では、スルホン基やカルボキシル基等の電子吸引基が導入されているのでチオールアニオンが安定化され、ジスルフィド結合が切断されやすくなり、不安定な状態となって自己分解を起こし、長時間、安定した状態を維持することができない。その結果として、ボイドやシームといった欠陥の発生を長時間に亘って抑制することができなかった。
【0092】
一方、本実施形態に係る無電解めっき液によれば、電子供与基である環状基を有した硫黄系有機化合物を含有させていることから、ジスルフィド結合が切断されにくく、高アルカリの条件下においても自己分解反応を抑制させることが可能となり、長時間に亘って安定した状態・性能を維持させることができるとともに、ボイドやシーム等の欠陥を発生させることなく、良好なめっき皮膜を形成することができる。
【0093】
さらに、吸着性の高い環状基を有した硫黄系有機化合物を含有させることで、レベラーの析出速度への影響に対する流速依存性が大きくなり、レベラーとしての効果を高めることが可能となり、より良好に、大きなトレンチやビアホールに対しても欠陥を生じさせることなく、めっき金属を埋めることができるとともに、凹凸のない滑らかな表面を有するめっき皮膜を形成させることができる。
【0094】
本実施形態に係る無電解めっき液においては、上述した水溶性第二銅塩や水溶性ニッケル塩等の金属イオン源と、その金属イオンの還元剤と、金属イオン源を安定して保持する錯化剤と、レベラーとして用いる硫黄系有機化合物のほかに、さらに、界面活性剤、めっき析出促進剤等を含有させることができ、また安定剤・皮膜物性改善剤等の添加剤を含有させることもできる。以下、これらの化合物について詳述するが、本実施の形態に係る無電解めっき液に含有される化合物は、下記の列挙する化合物に限定されるものではない。
【0095】
界面活性剤としては、ポリオキシアルキレングリコール、ポリオキシアルキレングリコール、アルキルエーテル、ポリオキシアルキレングリコール共重合体、ポリオキシアルキレングリコールアルキルエーテル共重合体等を用いることができ、これらの界面活性剤を少なくとも1種含み、または任意の割合で2種以上を含有させてもよい。この界面活性剤の濃度としては、0.1mg/L〜10000mg/Lが好ましい。
【0096】
界面活性剤の効果としては、反応により発生する水素ガスをトレンチやビアホールから離れやすくする効果がある。さらに、以下のような効果も得られる。
【0097】
即ち、本実施の形態に係る無電解めっき液に含有される硫黄系有機化合物は、めっき液中において分子同士が凝集する傾向があり、めっき処理によって形成されためっき皮膜の表面に凹凸等のムラが生じる、及びトレンチやビアホール等の内部にボイド等の空隙を形成させてしまい、埋め込み不良が発生する。そこで、上記で列挙した界面活性剤等をめっき液中に含有させることによって、硫黄系有機化合物分子の分散を促進させることが可能となり、トレンチ等の内部にボイドやシーム等の欠陥の発生を抑制させることができる。
【0098】
めっき析出促進剤としては、ポリアミン、ポリアルカノールアミン、ポリアミノポリカルボン酸またはその塩、塩化物イオン、硝酸イオン、8−ヒドロキシ−7−ヨード−5−キノリンスルホン酸等を用いることができ、これらの促進剤を1種、または任意の割合で2種以上を含有させてもよい。
【0099】
より具体的に、ポリアミンとしては、エチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、ヘキサメチレンテトラミン、ペンタエチレンヘキサミン等が挙げられる。また、ポリアルカノールアミンとしては、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン等が挙げられる。ポリアミノポリカルボン酸としては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ニトリロ三酢酸ジエチレントリアミン五酢酸等が挙げられる。これらのめっき金属の析出促進剤を含有させることによって、トレンチやビアホール等の底部からのめっき成長効果(ボトムアップ効果)を促進させることができ、十分なめっき速度でボイドやシーム等の欠陥のないめっき皮膜を効率的に形成させることができる。
【0100】
また、本実施の形態に係る無電解めっきにおいては、安定剤・皮膜物性改善剤などの添加剤を含有させることができる。この安定剤・皮膜物性改善剤としては、2,2’−ビピリジル、1,10−フェナントロリン等の公知の化合物を少なくとも1種、または任意の割合で2種以上を含有させることができる。
【0101】
また、めっき液20には、必要に応じて、界面活性剤、めっき析出促進剤等を含有させることができる。また、2,2’−ビピリジル、1,10−フェナントロリン等の公知の安定剤・皮膜物性改善剤等の添加剤を含有させることもできる。
【0102】
また、めっき処理時間は、特に限定されず、ビアホール5、及びトレンチ6の大きさ等に応じて、適宜、変更することができる。例えば、30〜600分間、触媒が付与された基板をめっき液20中に浸漬させる。
【0103】
また、めっき処理温度は、銅イオン等の金属イオンの還元反応が生じる温度であれば、特に限定はされないが、効率良く還元反応を生じさせるとの観点から、めっき液20の温度を20〜90℃に設定することが好ましく、50〜70℃に設定することがより好ましい。
【0104】
また、めっき液20のpHは、特に限定されないが、pHを10〜14に設定することが好ましい。めっき液20のpHを、このように高アルカリ条件の範囲に設定することにより、銅イオン等の金属イオンの還元反応が効率的に進行し、金属めっき皮膜の析出速度が向上する。なお、めっき液20には、pHを10〜14の範囲に維持させるために、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化テトラメチルアンモニウム等のpH調整剤を含有させることができる。これらのpH調整剤は、水で希釈して、適宜、めっき液20に添加する。
【0105】
また、無電解めっき処理を行うに際には、めっき液20の攪拌を十分に行って、ビアホール5やトレンチ6にイオンが十分に供給されるようにすることが好ましい。めっき液20の攪拌方法としては、空気攪拌やポンプ循環等による方法を採用することができる。
【0106】
そして、本実施形態においては、上述の無電解めっき装置10を使用して、このような無電解めっき処理を行うことにより、ビアホール5に形成された金属層7が、当該ビアホール5を介して、導体回路3に接続されるとともに、トレンチ6に形成された金属層7により、配線パターンが形成され、
図1に示すプリント配線基板1が製造される。
【0107】
この際、本実施形態においては、上述のごとく、めっき液供給手段12により、被処理基板30の下方へめっき液20を供給し、散気手段13により、被処理基板30の下方に供給されためっき液20内へ酸素含有気体を散気する構成としている。また、めっき槽11の上端部にオーバーフロー槽14を設置し、めっき槽11内のめっき液20を被処理基板30の上方からオーバーフローさせる構成としている。
【0108】
従って、めっき槽11の内部において、めっき液20のより強い上昇液流が発生するため、めっき液20中の気泡(即ち、酸素含有気体)が被処理基板30の表面全体に行き渡り、被処理基板30の表面の溶存酸素量が多くなる。その結果、めっき槽11の内部(即ち、めっき浴)が酸化雰囲気となるため、被処理基板30のトレンチ6外及びビアホール5外の部分におけるめっきの異常析出を防止することが可能になり、結果として、めっきの異常析出に起因する断線や導体回路3のショート等の不都合の発生を防止することが可能になる。
【0109】
また、トレンチ6の内部及びビアホール5の内部には、気泡が入り込みにくいため、気泡の量が少なく(即ち、溶存酸素量が少なく)、還元雰囲気となる。従って、めっき反応が促進されるため、トレンチ6の内部及びビアホール5の内部のめっきの埋まり性が良好となる。
【0110】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。なお、上記第1の実施形態と同様の構成部分については同一の符号を付してその説明を省略する。また、配線基板の製造方法については、上述の第1の実施形態の場合と同様であるため、ここでは詳しい説明を省略する。
図5は、本発明の第2の実施形態に係る無電解めっき装置を示す図である。
【0111】
本実施形態の無電解めっき装置40においては、
図5に示すように、めっき槽11内のめっき液20の流れを調整するための整流手段41が設けられている点に特徴がある。
【0112】
この整流手段41は、
図5に示すように、めっき槽11内において、被処理基板30の下方に設けられた散気手段13と、めっき槽11の底部に設けられた液供給手段12との間に設けられている。即ち、本実施形態においては、めっき槽11の下方から、液供給手段12、整流手段41、散気手段13、及び被処理基板30の順で配置される構成となっている。また、液供給手段12は、水平に配置された1本の管部材により構成されている。
【0113】
この整流手段41としては、例えば、めっき液20が通過する多数の孔が形成された板状体を使用することができ、本実施形態においては、整流手段41の水平面41aの大きさが、めっき槽11の内部を隙間なく仕切ることができる大きさに設定されている。
【0114】
そして、本実施形態においては、このような整流手段41を設けることにより、めっき槽11の内部におけるめっき液20の流量や流速を均一にすることが可能になるため、めっき液20中の気泡が被処理基板30の表面全体に、より一層行き渡り、被処理基板30の表面の溶存酸素量が、より一層多くなる。その結果、被処理基板30のトレンチ6外及びビアホール5外の部分におけるめっきの異常析出を確実に防止することが可能になる。
【0115】
また、整流手段41を設けることにより、めっき槽11の内部におけるめっき液20の流量や流速を均一にすることが可能になるため、めっき液20の圧力を均一化することが可能になる。従って、めっき液20の圧力が高い領域において、被処理基板30が揺動して破損することを防止することができる。
【0116】
なお、本実施形態においては、オーバーフロー槽14は、めっき槽11と同様に、略矩形状の開口14aを上面に有する略直方体形状の容器であり、めっき槽11全体を内部に収容する構成となっている。そして、本実施形態においては、めっき槽11には、上述の第1の実施形態において説明した流出口11bが形成されておらず、めっき槽11の開口11aを介して、めっき液20がオーバーフロー槽14へオーバーフローし、オーバーフロー槽14の内部に貯留される構成となっている。
【0117】
また、
図5に示すように、散気手段13が、多孔性セラミックス材料により形成された4本の管部材により構成されている。この4本の管部材は、互いに水平に配置され、複数の被処理基板30の表面に対して、十分な酸素含有気体を供給することができるように構成されている。
【0118】
更に、本実施形態においては、上述の治具21の代わりに、複数の被処理基板30を支持した状態で収容することが可能な支持部材42が設けられている。この支持部材42は、
図5に示すように、例えば、5つの被処理基板30を略垂直状態で収容できる内部空間を有する略直方体形状の容器であり、各被処理基板30を挿入するガイド溝(不図示)を有する。そして、各被処理基板30は、互いに略平行な状態で、支持部材42に支持される構成となっている。なお、支持部材42は、搬送装置(不図示)に接続されており、めっき槽11内外において、上下方向及び水平方向に移動することが可能である。
【実施例】
【0119】
以下に、本発明を実施例に基づいて説明する。なお、本発明は、これらの実施例に限定されるものではなく、これらの実施例を本発明の趣旨に基づいて変形、変更することが可能であり、それらを本発明の範囲から除外するものではない。
【0120】
(実施例1)
一般的な絶縁樹脂(味の素ファインテクノ(株)製、商品名:ABF−GX13)を積層し、表面にレジスト(保護層)を被覆した基板に、ビアホール形成に用いるレーザ加工機(日立ビアメカニクス(株)製、商品名:LC−L)を使用してレジストごと加工し、幅10μm、深さ10μmのトレンチ(回路)を形成した。
【0121】
次に、触媒付与プロセス(上村工業(株)製、スルカッププロセス:クリーナーコンディショナーACL−009、プレディップPED−104、キャタリストAT−105、アクセレレータAL−106)により触媒(シード層)を付与し、水酸化ナトリウム水溶液を用いてレジストを剥離した。
【0122】
その後、第1の実施形態の無電解めっき装置と、下記の組成に調製した無電解銅めっき液を用いて、めっき液供給手段によるめっき液の供給を行うとともに、酸素含有気体を散気しながら70℃の温度条件で、2時間、無電解めっき処理を行った。なお、めっき液に対する酸素含有気体の供給速度を、めっき液1Lあたり0.2L/分に設定して、散気を行った。また、無電解めっきを開始する前に、2分間、酸素含有気体の散気を停止した。
【0123】
そして、めっき処理後、トレンチの断面を金属顕微鏡により観察し、トレンチ外の部分におけるめっき析出の有無、及びトレンチにおける金属層の充填性(埋まり性)を観察した。なお、トレンチにおける金属層の充填性については、断面観察において、ボイドやシームが確認されない場合を良好とした。以上の結果を表1に示すとともに、得られた金属顕微鏡写真を
図6に示す。
【0124】
<無電解銅めっき液組成(実施例1)>
硫酸銅:0.04mol/L
EDTA:0.1mol/L
水酸化ナトリウム:4g/L
ホルムアルデヒド:4g/L
2,2’−ビピリジル:2mg/L
ポリエチレングリコール(分子量1000):1000mg/L
2,2’−ジピリジルジスルフィド:5mg/L
(実施例2)
一般的な絶縁樹脂(味の素ファインテクノ(株)製、商品名:ABF−GX13)を積層し、表面にマスキングテープ(保護層)を貼り付けた基板に、ビアホール形成に用いるレーザ加工機(日立ビアメカニクス(株)製、商品名:LC−L)を使用してマスキングテープごと加工し、幅10μm、深さ10μmのトレンチ(回路)を形成した。
【0125】
次に、触媒付与プロセス(上村工業(株)製、スルカッププロセス:クリーナーコンディショナーACL−009、プレディップPED−104、キャタリストAT−105、アクセレレータAL−106)により触媒(シード層)を付与し、マスキングテープを剥離した。
【0126】
その後、第2の実施形態の無電解めっき装置と、実施例1において使用した無電解銅めっき液を用いて、めっき液供給手段によるめっき液の供給を行うとともに、酸素含有気体を散気しながら70℃の温度条件で、2時間、無電解めっき処理を行った。なお、めっき液に対する酸素含有気体の供給速度を、めっき液1Lあたり0.6L/分に設定して、散気を行った。また、無電解めっきを開始する前に、2分間、酸素含有気体の散気を停止した。
【0127】
そして、めっき処理後、トレンチの断面を観察し、トレンチ外の部分におけるめっき析出の有無、及びトレンチにおける金属層の充填性(埋まり性)を観察した。以上の結果を表1に示す。
【0128】
(実施例3)
めっき液に対する酸素含有気体の供給速度を、めっき液1Lあたり0.9L/分に設定して散気を行ったこと以外は、上述の実施例1と同様にして、無電解めっき処理を行った。そして、実施例1と同様にして、トレンチ外の部分におけるめっき析出の有無、及びトレンチにおける金属層の充填性(埋まり性)を観察した。以上の結果を表1に示す。
【0129】
(比較例1)
無電解めっき処理を行う際に、酸素含有気体を散気しなかったこと以外は、上述の実施例1と同様にして、無電解めっき処理を行った。そして、実施例1と同様にして、トレンチ外の部分におけるめっき析出の有無、及びトレンチにおける金属層の充填性(埋まり性)を観察した。以上の結果を表1に示す。
【0130】
(比較例2)
下記の組成に調製した無電解銅めっき液を用いるとともに、めっき液に対する酸素含有気体の供給速度を、めっき液1Lあたり0.2L/分に設定して散気を行ったこと以外は、上述の実施例2と同様にして、無電解めっき処理を行った。そして、実施例1と同様にして、トレンチ外の部分におけるめっき析出の有無、及びトレンチにおける金属層の充填性(埋まり性)を観察した。以上の結果を表1に示すとともに、得られた金属顕微鏡写真を
図7に示す。
【0131】
<無電解銅めっき液組成(比較例2)>
硫酸銅:0.04mol/L
EDTA:0.1mol/L
水酸化ナトリウム:4g/L
ホルムアルデヒド:4g/L
ポリエチレングリコール(分子量1000):1000mg/L
【0132】
【表1】
【0133】
表1に示すように、比較例1〜2と異なり、実施例1〜実施例3においては、トレンチ外の表面にめっきが析出しておらず、トレンチに金属層が良好に充填されていることが確認できた。
【0134】
以上より、実施例1〜実施例3の方法により、トレンチ外の表面おいて、めっきの異常析出の発生を確実に防止できることが判った。