(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5997753
(24)【登録日】2016年9月2日
(45)【発行日】2016年9月28日
(54)【発明の名称】調理器具
(51)【国際特許分類】
A47J 17/02 20060101AFI20160915BHJP
B26B 3/00 20060101ALI20160915BHJP
【FI】
A47J17/02
B26B3/00 A
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-234686(P2014-234686)
(22)【出願日】2014年11月19日
(65)【公開番号】特開2016-96910(P2016-96910A)
(43)【公開日】2016年5月30日
【審査請求日】2016年2月29日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】302045602
【氏名又は名称】株式会社レーベン販売
(74)【代理人】
【識別番号】110000198
【氏名又は名称】特許業務法人湘洋内外特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高部 篤
【審査官】
豊島 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−111261(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3006508(JP,U)
【文献】
特許第5613355(JP,B1)
【文献】
実公平03−018159(JP,Y2)
【文献】
実公昭29−015369(JP,Y1)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0263212(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0085249(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 17/02
B26B 3/00
B26D 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
切削された食材が通過するための細長い貫通孔を有する細長い形状の刃部材と、前記刃部材の長手方向の両端部を支持する挟持部と、を有し、
前記刃部材は、
前記挟持部に支持されている両端の部分から、それぞれ、略直角に前方に延びた二つの段差部と、
当該両段差部を連結する上段部とを有し、
刃は、
一方の前記段差部から前記上段部に切り替わる部分から他方の前記段差部から前記上段部に切り替わる部分に渡って、前記貫通孔の側に設けられている
ことを特徴とする調理器具。
【請求項2】
請求項1に記載の調理器具であって、
前記刃部材は、段違い状に略平行な上段部及び下段部を有し、
前記上段部は、下段部よりも前方にせり出している
ことを特徴とする調理器具。
【請求項3】
請求項2に記載の調理器具であって、
前記刃部材は、さらに、下段部に刃を備えている
ことを特徴とする調理器具。
【請求項4】
請求項1から3の何れか一項に記載の調理器具であって、
前記刃は、平面上の刃、立刃、又は波刃の何れかである
ことを特徴とする調理器具。
【請求項5】
請求項4に記載の調理器具であって、
前記立刃は、立刃が交互に並ぶように立刃列を複数配置したものである
ことを特徴とする調理器具。
【請求項6】
請求項3に記載の調理器具であって、
前記上段部の刃は平面上の刃であり、前記下段部の刃は立刃である
ことを特徴とする調理器具。
【請求項7】
請求項6に記載の調理器具であって、
前記下段部の立刃が、全体で最も前方にせり出している
ことを特徴とする調理器具。
【請求項8】
請求項1から7の何れか一項に記載の調理器具であって、
平面状の刃を有する前記刃部材と、立刃を有する別の刃部材とが、外側に前記刃を向けた状態で対向して支持されている
ことを特徴とする調理器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調理器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、野菜や果物等の皮をむくための、手動の皮むき器(ピーラー)が知られている。このような皮むき器は、材料に沿わせるだけで皮を薄くそぎ落とすことが可能な形状の刃を備えており、誰でも簡便かつ安全に、皮をむくことが可能である。
【0003】
このような皮むき器は一般的に、略Y字形状の部材に刃が挟持固定されている場合が殆どである。しかしながら、従来このような構造の皮むき器では刃の挟持部が刃よりも前方に位置していた。すると、平面状の食品等に対して使用する際に、出っ張った挟持部が対象物に対する刃のあたりを妨げ、上手く削げない可能性があった(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−104400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明は、どのような対象物の形状にも対応が可能な調理器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の調理器具は、挟持部と、当該挟持部に支持された刃を備える刃部材と、を有し、前記刃は、前記挟持部よりも前方にせり出していることを特徴とする。
【0007】
また、前記刃部材は、段違い状に略平行な上段及び下段を有し、前記上段は、下段よりも前方にせり出していてもよい。
【0008】
また、前記刃部材は、上段に刃を備えていてもよい。
【0009】
また、前記刃部材は、さらに、下段に刃を備えていてもよい。
【0010】
また、前記刃は、平面上の刃、立刃、又は波刃の何れかであってもよい。
【0011】
また、前記立刃は、立刃が交互に並ぶように立刃列を複数配置したものであってもよい。
【0012】
また、前記上段の刃は平面上の刃であり、前記下段の刃は立刃であってもよい。
【0013】
また、前記下段の立刃が、全体で最も前方にせり出していてもよい。
【0014】
また、平面状の刃を有する前記刃部材と、立刃を有する前記刃部材とが、外側に前記刃を向けた状態で対向して支持されていてもよい。
【0015】
また、前記上段及び下段は、前方或いは後方に湾曲していてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、どのような対象物の形状にも対応が可能な調理器具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第一の実施形態に係る調理器具10の斜視図である。
【
図2】調理器具10の(a)正面図、(b)側面図である。
【
図4】調理器具10の使用法を説明するための説明図である。
【
図5】本発明の第二の実施形態に係る調理器具20の斜視図である。
【
図7】本発明の第三の実施形態に係る調理器具30の斜視図である。
【
図8】本発明の第四の実施形態に係る調理器具40の斜視図である。
【
図10】本発明の変形例1に係る調理器具10aの斜視図である。
【
図11】本発明の変形例2に係る調理器具10bの斜視図である。
【
図12】(a)本発明の変形例3に係る調理器具10cの斜視図である。(b)調理器具10cを使用した対象物の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態について、以下、図に基づいて説明する。
【0019】
<第一の実施形態>
図1は、本発明の第一の実施形態に係る調理器具10の斜視図である。
図2は、調理器具10の正面図及び側面図である。
【0020】
図1に示すように、本発明の一態様に係る調理器具10は、Y字部材11と、刃部材15と、を有している。
【0021】
調理器具10のY字部材11は、挟持部12及び把持部13を構成している。なお、
図2(b)に示すように、Y字部材11は把持部13から挟持部12にかけて波状に湾曲しており、把持部13を握った際に中央の凹みである指当て13aに人差し指或いは親指をあてがうことで、対象物に力が伝わり易いようになっている。なお、Y字部材11は、例えば樹脂材料で形成されている。これは具体的には、ABS樹脂やポリプロピレン樹脂等のプラスチック樹脂等を、一体成型することによって構成することができる。なお、Y字部材11はステンレスの板で形成するなどでもよく、ここで示す形状に限定するものではない。
【0022】
Y字部材11の挟持部12は、把持部13の先端から二股に延びた棒状に形成されている。挟持部12には、両端に形成される軸部材19を介して刃部材15が挟まれており、揺動可能に支持されている。なおここでいう揺動とは、刃部材15が挟持部12との接合部分(軸部材19)を回転中心として、所定の角度だけ僅かに回動可能としたものである。このような動きにより、対象物に刃をあたり良く沿わせることができる。
【0023】
刃部材15は、略長方形状の上段16aと下段16bとを有しており、上段16aには鋸状の刃17が形成されている。なお、上段16aと下段16bとは長手方向両端に形成される連結部16cで一体に繋がっており、連結部16cはその断面が階段状或いは略S字状である。これにより各段は、上段16a平面が前方(前方(対象物に当てる側)に、下段16b平面が後方に位置するような、段違い状の略平行に保持される。さらに、刃部材15には、上段16a及び下段16bを連結部16c及びY字部材11よりも前方にせり出すよう形成するための段差16dが設けられている。よって刃17は、調理器具10全体に対し最も前方に位置していることになる。
【0024】
図3に、刃部材15の断面図を、
図4に、調理器具10の使用法を説明するための説明図を示す。図示するように、刃部材15を対象物の接触面Aに当てた場合、上段16a及び下段16bがY字部材11の挟持部12よりも前方にせり出しているため、刃部材15のみを対象物の接触面に接触させることができる。また、刃17は、連結部16cよりも前方にせり出しているため、連結部16cに当たりを妨げられて接触面Aから浮くことがない。よって、
図4に示すように接触面Aが挟持部12間よりも幅広い平面の場合でも、均一、かつ深い切削が可能となり、対象物を端から順に削り取ってゆくことができる。
【0025】
なお、刃17は、鋸状ではなくともよく、平面状の平刃や波刃等であってもよい。また、刃部材は、刃物に利用可能な素材であればどのような材料を用いても良い。本例では例えば、ステンレス鋼や炭素鋼などの刃物鋼、セラミック等が挙げられる。一般にステンレス鋼や炭素鋼などの刃物鋼は打ち抜き、プレス成形し、焼入れ後、刃付け加工する。プレス成形時に刃部材15を断面で湾曲させるなどをしても良い。また、刃幅はどの程度で合ってもよいが、幅を狭くすることでより小さな力で使用することが可能となる。また、切れ味が落ちた刃であっても利用し易く安全である。また、上段16a及び下段16bの狭さは、用途に合わせて厚さを適宜決定するものとできる。また、上段16a及び下段16bの断面はここでは平面状を示すが、湾曲をしていても良い。
【0026】
<第二の実施形態>
次に、本発明の第二の実施形態について説明する。
図5は、本発明の第二の実施形態に係る調理器具20の斜視図である。本実施形態に係る調理器具20は、上段16aが刃27を、下段16bが刃22を備えている点で、上記実施形態とは異なる。なお、上記実施形態と同様の構成には同様の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0027】
調理器具20は、上段16aに刃27を、下段16bに刃22を有している。
図5に示すように、上段16aに形成される刃27はストレート状の平刃である。一方で刃22は、長方形状の板片である刃板21に対して略垂直に立つ複数の鎌形形状の立刃23を備えている。なお、立刃23は、刃板21の長辺に斜めに複数の切り欠きを入れ、当該各切り欠き部分を前方に立たせることによって形成することができる。また、立刃23は、上段16aよりも前方に位置するだけの長さを有していることが望ましい。よって立刃23は、調理器具20全体に対し最も前方に位置している。
【0028】
さらにここでは下段16bは二列の刃22を備えており、各列の立刃群は、一列目の立刃群の立刃23の位置と、二列目の立刃群の立刃23の位置とが互いにずれて配置されている。このような二枚刃構造では、一枚刃の場合と比べて切込み幅を半分にすることができる。なお、必ずしも二列でなくとも、一列でもよく、さらに複数の列の立刃群を有する構成としてもよい。また、立刃を上下に互い違いに設けても良い。目的の幅の筋状に切り込みが入れば良く、交互に立刃間隔を変えるなどにより、筋状の切り込み幅を変化させても良い。
【0029】
図6に、調理器具20の使用法を説明するための説明図を示す。図示するように、刃17及び刃22は、上段16a及び下段16bがY字部材11の挟持部12よりも前方にせり出しているため、挟持部12に当たりを妨げられることはない。また、立刃23は上段16aや連結部16cよりも前方にせり出しているため、接触面Aに対して深く進入することが可能である。このような立刃23によって切り込みが入れられた対象物は、その後、刃27によって削ぎ落され、千切り状となって後方側に排出される。
【0030】
また、立刃は必ずしも鎌形形状の刃でなくともよく、例えば三角刃等であってもよい。
【0031】
<第三の実施形態>
次に、本発明の第三の実施形態について説明する。
図7は、本発明の第三の実施形態に係る調理器具30の斜視図である。本実施形態に係る調理器具30は、三角柱形状の刃部材35を備えている点で、上記実施形態とは異なる。
【0032】
刃部材35は、三角柱形状の部材であり、長手方向の両端(三角柱の上面及び底面)が、図示しない軸部材を介して挟持部12に揺動可能に支持されている。また刃部材35は、その前方側面に二段に形成された二枚刃の刃22を有している。なお、刃22が形成される当該側面は、Y字部材11の挟持部12よりも前方にせり出すよう、挟持部12に支持されている。これにより刃部材35は、挟持部12に接触面Aへの当たりを妨げられることなく、より深く切り込みを入れることができる。
【0033】
しかしながら、必ずしも刃22が形成される側面が挟持部12よりも前方にせり出していなくともよい。刃22が挟持部12よりも高ければ、平面状の接触面Aに切り込みを入れることは可能である。
【0034】
<第四の実施形態>
次に、本発明の第四の実施形態について説明する。
図8は、本発明の第四の実施形態に係る調理器具40の斜視図、
図9は、調理器具40の側面図である。本実施形態に係る調理器具40は、刃部材15と刃部材35とを両方有している点で、上記実施形態とは異なる。
【0035】
調理器具40は、Y字部材41と、刃部材15と、刃部材35とを有している。Y字部材41の挟持部42には、刃部材15と刃部材35とが外側に刃を向けた状態で、外表に対向するよう支持されている。即ち、Y字部材41の一方の面を対象物に向ければ刃部材15を、他方の面を対象物に向ければ刃部材35を使用することができる。よってY字部材41は、使用者が把持部43を握る際に両面が使用し易いよう、
図9に示すような棒状の部材となっている。
【0036】
なお、上記実施形態と同様に、刃部材15及び刃部材35は、刃17及び刃22がY字部材41よりも前方(ここでは、各刃の向く側)にせり出すように、挟持部42に支持されている。よって、接触面Aが挟持部42間よりも幅広い平面の場合でも、挟持部42に当たりを妨げられることはない。
【0037】
次に、このような調理器具40によってみじん切りを行う際の例について説明する。使用者はまず、刃部材35を接触面に当て、刃22を略垂直に挿し込んで第一方向に引いて切り込みを入れる。次に、刃部材35を略90度回転させて、同面に対して同じ操作を繰り返す。これにより、上記第一方向に対して略垂直な第二方向に切り込みが入るため、対象物には格子状の切り込みが形成される。
【0038】
次に、刃部材15を接触面に当て、先ほど形成した格子状の切り込みを削り取る。すると、格子状の切り込みはそれぞれ対象物から切り離されて離散し、簡便に調理材料のみじん切りを得ることができる。なお、形成される切り込みの大きさや深さ、削り取りの厚さは、刃部材の形状により自由に設計することができる。
【0039】
以上、本発明の実施形態について説明した。なお、上記の実施形態は、本発明の要旨を例示することを意図し、本発明を限定するものではない。本発明の技術的思想の範囲内でさらなる様々な変形が可能である。以下、本発明の変形例について説明する。
【0040】
<変形例1>
図10に、本発明の変形例1に係る調理器具10aの斜視図を示す。調理器具10aは、前方に湾曲させた上段110a及び下段110bを備えるものである。このような構造によれば、当たりを妨げられることなく、刃17aの中央部分に最も深い切削を行わせることができる。従って、対象物のどの位置からでも切削を開始することができる。また、対象物がどのような形状であったとしても、自由に切削することが可能となる。
【0041】
また、調理器具10aは、Y字部材11の挟持部12が、ここでは、湾曲させた上段110a及び下段110b状に位置し、略T字状を示している。なお、例えば指の腹で押すことで、刃に有効に力を掛ける事が可能である。
【0042】
<変形例2>
図11に、本発明の変形例2に係る調理器具10bの斜視図を示す。調理器具10bは、上段110a及び下段110bを後方に湾曲させた上段120a及び120bを備えるものである。このような構造によれば、球面を有する対象物に対して、当たりを妨げられることなく、その曲面に刃17bを沿わせて切削が可能である。
【0043】
<変形例3>
図12(a)に、本発明の変形例3に係る調理器具10cの斜視図を示す。調理器具10cは、上段120a及び120bを後方に湾曲させた上段130a及び130bを備えるものである。また、上段130aの刃17cは後方への湾曲に沿って波打たせた波刃である。このような構造によれば、当たりを妨げられることなく、対象物の局面に刃17cを沿わせた切削が可能である。また、波刃により削り面が波型となるため、対象物の切り口断面は、
図12(b)に示すような形状となる。これにより、皮むきと同時に凹みをもたせた飾り切りが可能となる。
【0044】
なお、刃を有する面には、取扱時に不意に刺さるのを防ぐためのカバーを設けてもよい。
【0045】
また、各実施形態及び変形例の刃は、自由に組み合わせることが可能である。例えば、立刃を有する上段又は下段を湾曲させても良い。また、中央が湾曲しない波刃としても良い。
【符号の説明】
【0046】
10・10a・10b・20・30・40:調理器具、11・41:Y字部材、12・42:挟持部、13・43:把持部、15・25・35:刃部材、16a・110a・120a・120c:上段、16b・110b・120b・130b:下段、16c:連結部、16d:段差、17・17a・17b・17c・22:刃、19:軸部材、21:刃板、23:立刃。