特許第5997797号(P5997797)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5997797
(24)【登録日】2016年9月2日
(45)【発行日】2016年9月28日
(54)【発明の名称】車両の地図データ処理装置
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/26 20060101AFI20160915BHJP
   G08G 1/00 20060101ALI20160915BHJP
   G09B 29/00 20060101ALI20160915BHJP
【FI】
   G01C21/26 A
   G08G1/00 A
   G09B29/00 Z
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-41601(P2015-41601)
(22)【出願日】2015年3月3日
(65)【公開番号】特開2016-161456(P2016-161456A)
(43)【公開日】2016年9月5日
【審査請求日】2015年8月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】富士重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076233
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 進
(74)【代理人】
【識別番号】100101661
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100135932
【弁理士】
【氏名又は名称】篠浦 治
(72)【発明者】
【氏名】溝口 雅人
【審査官】 高田 基史
(56)【参考文献】
【文献】 特許第3328939(JP,B2)
【文献】 特開2005−147713(JP,A)
【文献】 特開2011−215651(JP,A)
【文献】 特開2012−173266(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/00−21/36
23/00−25/00
G08G 1/00−99/00
G09B 23/00−29/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の走行する道路に係る第1の地図データを保有する地図データベースと、
車両の周辺環境及び車両の走行状態に基づいて、前記道路に係る第2の地図データを算出する地図データ算出部と、
前記地図データベースを更新するための更新用データを、前記第2の地図データの信頼度に基づいて算出する更新用データ算出部と、
前記第1の地図データと前記更新用データとを比較して両者の間の誤差が判定値以上のとき、前記誤差が前記判定値以上となる乖離の回数及び前記信頼度に基づいて、前記第1の地図データを前記更新用データで更新するか否かを判断する更新判断部と、
前記更新判断部の判断結果に応じた前記地図データベースの更新処理を実行するデータ処理部と
を備えることを特徴とする車両の地図データ処理装置。
【請求項2】
前記更新用データ算出部は、複数の前記第2の地図データを前記信頼度で重み付けして平均化処理し、前記更新用データを算出することを特徴とする請求項1記載の車両の地図データ処理装置。
【請求項3】
前記更新判断部は、道路を走行した際の日付けデータから走行回数を算出し、前記乖離が発生した回数の前記走行回数に対する比率を考慮して前記地図データベースの更新を判断することを特徴とする請求項1記載の車両の地図データ処理装置。
【請求項4】
前記地図データベースは、車両外部のサーバー装置によって管理される記憶媒体に記憶されて形成されており、
前記更新用データ算出部は、前記サーバー装置に接続される全ての車両のデータを平均化して前記更新用データを算出することを特徴とする請求項1〜3の何れか一に記載の車両の地図データ処理装置。
【請求項5】
前記データ処理部は、前記地図データベースに道路情報が存在しない領域に一定間隔で補間点を作成することを特徴とする請求項1〜4の何れか一に記載の車両の地図データ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の走行する道路に係る地図データを処理する車両の地図データ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車等の車両においては、地図上に現在位置を表示して目的地までの経路案内等を行うナビゲーション装置に対して、より精密な地図データを有するデータベースを備え、この高精細の地図データを車両の警報制御や走行制御に利用するシステムが提案されている。
【0003】
このため、例えば、特許文献1には、経路案内を行うための地図データベースに加えて、走行制御に利用する詳細地図データベースを備え、車載センサの検出値及び地図データベースのデータから道路形状の詳細なデータを得て、詳細地図データベースに供給する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3328939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1は、車載センサの検出値及び地図データベースのデータから道路形状の詳細なデータを得る技術が開示されているが、詳細地図データベースは、車両の走行制御に利用される性質上、地図データが実際の道路状況・環境から乖離すると、走行制御の精度低下を招く虞があり、常に最新の状態に維持される必要がある。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、走行制御に利用する詳細な地図データベースと実際の道路状況・環境との相違を的確に把握してデータベースを最新の状態に維持し、精密な走行制御を実現することのできる車両の地図データ処理装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様による車両の地図データ処理装置は、車両の走行する道路に係る第1の地図データを保有する地図データベースと、車両の周辺環境及び車両の走行状態に基づいて、前記道路に係る第2の地図データを算出する地図データ算出部と、前記地図データベースを更新するための更新用データを、前記第2の地図データの信頼度に基づいて算出する更新用データ算出部と、前記第1の地図データと前記更新用データとを比較して両者の間の誤差が判定値以上のとき、前記誤差が前記判定値以上となる乖離の回数及び前記信頼度に基づいて、前記第1の地図データを前記更新用データで更新するか否かを判断する更新判断部と、前記更新判断部の判断結果に応じた前記地図データベースの更新処理を実行するデータ処理部とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、走行制御に利用する詳細な地図データベースと実際の道路状況・環境との相違を的確に把握してデータベースを最新の状態に維持することができ、精密な走行制御を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】車両の運転支援システムの構成図
図2】ナビゲーション用の地図データを示す説明図
図3】走行制御用の地図データを示す説明図
図4】地図データベースのデータ処理を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1において、符号1は自動車等の車両(自車両)であり、この自車両1に、運転者の運転操作に対して、運転者の操作を要しない自動運転を含む運転支援制御を実行する運転支援システム2が搭載されている。運転支援システム2には、自車両1の外部環境情報を取得するための各種デバイスや、自車両1の走行状態を検出する各種センサ類が備えられている。
【0011】
本実施の形態においては、運転支援システム2は、外界環境をセンシングするためのデバイスとして、車両1の前方の物体を3次元位置を検出するステレオカメラユニット3、車両1の前側方の物体を検出する側方レーダユニット4、車両1の後方の物体を検出するマイクロ波等による後方レーダユニット5を備え、更に、地図情報を有するナビゲーションユニット6、路車間通信や車車間通信等のインフラ通信によって交通情報を取得する交通情報通信ユニット7を備えている。
【0012】
ステレオカメラユニット3は、例えば、車室内上部のフロントウィンドウ内側のルームミラー近傍に設置される左右2台のカメラ3a.3bで構成されるステレオカメラを主としている。左右2台のカメラ3a,3bは、CCDやCMOS等の撮像素子を有するシャッタ同期のカメラであり、所定の基線長で固定されている。このステレオカメラユニット3には、左右のカメラ3a,3bで撮像した一対の画像をステレオ画像処理して、先行車両等の前方の物体の実空間における3次元位置情報を取得する画像処理部が一体的に備えられている。物体の3次元位置は、ステレオ画像処理によって得られる物体の視差データと画像座標値とから、例えば、ステレオカメラの中央真下の道路面を原点として、車幅方向をX軸、車高方向をY軸、車長方向(距離方向)をZ軸とする3次元空間の座標値に変換される。
【0013】
側方レーダユニット4は、自車両周辺に存在する比較的近距離の物体を検出する近接レーダであり、例えば、フロントバンパの左右コーナー部に設置され、マイクロ波や高帯域のミリ波等のレーダ波を外部に送信して物体からの反射波を受信し、ステレオカメラユニット3の視野外となる自車両の前側方に存在する物体までの距離や方位を測定する。また、後方レーダユニット5は、例えば、リヤバンパの左右コーナー部に設置され、同様にレーダ波を外部に送信して物体からの反射波を受信し、自車両後方から後側方にかけて存在する物体までの距離や方位を測定する。
【0014】
尚、後方物体は、リヤビューカメラを用いた画像認識、或いは画像認識と他のセンシングデバイスとのセンサフュージョンによって検出するようにしても良い。
【0015】
ナビゲーションユニット6は、交差点や信号機等の位置、道路の車線数、道路の曲率半径、制限速度、追い越し禁止区間等の走行環境に係る地図情報を保有し、GPS等によって測位した自車両の地図上の位置をディスプレイに表示する。また、交通情報通信ユニット7は、ステレオカメラユニット3、側方レーダユニット4、後方レーダユニット5からは見通せない(センシングできない)エリアや交差道路等の交通情報を、道路付帯設備を介した路車間通信や他車両との車車間通信によって取得する。
【0016】
尚、交通情報通信ユニット7は、専用の装置としても良いが、ナビゲーションユニット6と一体的に設けるようにしても良い。
【0017】
一方、自車両1の走行状態を検出するセンサ類としては、車速を検出する車速センサ10、ヨーレートを検出するヨーレートセンサ11、操舵角を検出する操舵角センサ12等がある。運転支援システム2は、各ユニット4〜6で取得した自車両1を取り巻く周囲の交通環境と、車速センサ10やヨーレートセンサ11や操舵角センサ12等の各種センサ類で検出した自車両1の走行状態とに基づいて、車両1の運転支援制御を実行する。
【0018】
運転支援システム2による運転支援制御は、運転者の操作を要しない自動運転を含めて、先行車両に対する追い越し、車線維持、高速道路自動合流等を含む適応走行制御、障害物の自動回避制御、標識及び信号検知による一時停止・交差点通過制御、異常発生時の路肩への緊急退避制御等がある。これらの制御は、自車両の周囲環境の認識情報や車両走行状態の検出情報に加えて、地図データ処理装置2aによって管理される地図データベースDBの地図情報を併用して実行される。
【0019】
以下、運転支援システム2における地図情報の管理機能について説明する。運転支援システム2は、地図データベースDB、地図データ算出部20、更新用データ算出部30、更新判断部40、データ処理部50によって構成される地図データ処理装置2aを備えており、地図データベースDBに対して、新規データの作成・追加及び既存データの更新処理を行っている。
【0020】
地図データベースDBは、例えば、主としてナビゲーションユニット6が参照する地図データベースDBLと、この地図データDBLよりも詳細なデータを有する地図データベースDBHとの2つのデータベースで構成されている。地図データベースDBLは、車両走行の経路案内や車両の現在位置を表示するための地図データを保有し、地図データベースDBHは、自動運転を含む運転支援制御を行うための高精細の地図データを保有している。
【0021】
ナビゲーション用の地図データベースDBLは、図2に示すように、現在のノードNkに対して前のノードNk-1と次のノードNk+1とがそれぞれリンクを介して結びつけられていり、各リンクには、信号機、道路標識、建築物等に関する情報が保存されている。一方、走行制御用の高精細の地図データベースDBHは、図3に示すように、ノードNkとノードNk+1との間に、複数のデータ点Pi,Pi+1,Pi+2,…を有している。このデータ点Piには、自車両1が走行する道路の曲率、車線幅、路肩幅等の道路形状データや、道路方位角、道路白線種別、レーン数等の走行制御用データが、後述する信頼度やデータ更新の日付け等の属性データと共に保持されている。
【0022】
地図データ処理装置2aは、地図データベースDBのノード、リンク、データ点を検定して常に最新の状態に維持すると共に、データベース上にデータが存在しない領域についても新規データを作成・追加し、より詳細なデータベースを構築するようにしている。この地図データベースDBのデータ更新及び新規データの追加は、自動運転中や手動運転中等の走行モードによらず実施される。以下では、地図データベースDBのデータ更新及び新規データの追加は、データ点を対象とする場合を主として説明するが、ノードやリンクの場合も同様である。
【0023】
尚、地図データベースDBは、外部のサーバー装置が有する記憶媒体上に形成されるデータベースとしても良く、外部サーバー装置の記憶媒体と運転支援システム2が有する記憶媒体との少なくとも一方に記録されて形成するようにしても良い。また、データベースの更新は、主として制御用の高精細の地図データベースDBHを対象として説明するが、これに限定されるものではなく、工事等によって道路形状が変わった場合等も想定し、表示用の地図データベースDBLも対象となる。
【0024】
地図データ算出部20は、地図データベースDBの地図データを第1の地図データとして、周辺環境の認識結果及び車両の走行状態に基づく第2の地図データを算出する。例えば、自動運転で車線を維持する制御を実行する場合に必要な制御用情報を第2の地図データとして算出する場合、GPSによる緯度・経度の測位情報から特定されるデータ点Piにおける道路曲率、道路方位角、車線幅、白線種別、レーン数、路肩幅等のデータを、ステレオカメラユニット3による車線認識結果、車速センサ10やヨーレートセンサ11等によって検出した走行状態に基づいて算出する。
【0025】
また、地図データベースDBに格納されていない新たな道路や工事等によって既存の道路形状が変更されている場合には、GPSにより取得される緯度、経度、方位角に基づき、ステレオカメラユニット3による周囲環境の認識結果と、車速センサ10やヨーレートセンサ11等の車載センサによる車両の走行状態の検出結果との双方或いはそれぞれを用いて、道路曲率、カント、縦断勾配等の道路形状データを新規データとして算出し、地図データベースDBに追加する。
【0026】
更新用データ算出部30は、地図データ算出部20で算出された地図データから、地図データベースDBの地図データを更新するための更新用データCrを、データの信頼度Rに基づいて算出する。信頼度Rは、ステレオカメラユニット3による外部環境の認識状態、車載センサで検出される車両挙動(ヨーレート変化や横加速度の変化等)、GPS信号の受信状態が安定しており、地図データ算出部20で算出される地図データの前回の値と今回の値の差が小さい場合、最高値Rmax(例えば、Rmax=10)に設定され、認識状態、車両挙動、GPS信号の受信状態に応じて信頼度Rの値が増減される。
【0027】
この信頼度Rに基づく更新用データCrは、例えば、データ点Piの前回の地図データをCi-1、データCi-1の信頼度をRi-1、今回の地図データをCi、データCiの信頼度をRiとすると、以下の(a1)〜(a3)に示すように、信頼度Ri-1,Riの関係に応じて算出される。
【0028】
(a1)Ci-1,Ciの差が設定値よりも小さく、且つRi=Rmaxの場合
以下の(1)式に示すように、今回の地図データCiを更新用データCrとして算出する。この場合、後述するように、地図データベースDBとの差が大きい場合には、データベースを更新することになる。
Cr=Ci …(1)
【0029】
(a2)Ri-1<Riの場合
以下の(2)式に示すように、前回の地図データCi-1と今回の地図データCiとを信頼度Ci-1,Ciを用いて重み付け平均化することにより、更新用データCrを算出する。
Cr=(Ci-1×Ri-1+Ci×Ri)/(Ri-1+Ri) …(2)
【0030】
(a3)Ri-1>Riの場合
今回のデータの信頼度が前回よりも低下した場合には、以下の(3)式に示すように、更新用データCrは、前回のデータCi-1を維持する。
Cr=Ci-1 …(3)
【0031】
尚、地図データベースDBを自車両と無線通信を介して接続される外部のサーバー装置に設置して管理している場合には、更新用データを算出するための地図データは、サーバー装置に接続される全ての車両のデータを平均したデータを用いる。
【0032】
更新判断部40は、地図データベースDBの地図データと更新用データとを比較し、両者の間の誤差が判定値以上のとき、地図データベースDBの地図データを更新用データで更新するか否かを判断する。誤差に対する判定値は、地図データを主体とする制御と環境認識結果を主体とする制御との間で支障を生じない程度の誤差を許容するか否かの閾値として設定され、誤差が判定値以上となる乖離が発生したとき、地図データベースDBの地図データと更新用データとの何れのデータが正しいのかを判断して更新の可否を決定する。
【0033】
更新の可否は、以下の(b1)〜(b3)に示すような条件に対して、地図データベースDBの地図データと更新用データとの乖離の回数N及び信頼度Rに基づいて決定される。
【0034】
(b1)外部環境の認識状態、車両挙動、GPS信号の受信状態の全てが高安定状態
ステレオカメラユニット3による外部環境の認識状態、車載センサで検出される車両挙動(ヨーレート変化や横加速度の変化等)、GPS信号の受信状態が高安定の状態で、且つ、更新用データの前回の値と今回の値と間の差が小さい場合、外部環境の認識や車両走行状態から算出した地図データの方がデータベースの値よりも正しい状態であると判断する。
【0035】
そして、以下の(4)式に示すように、乖離の回数Nと信頼度Rとの積が閾値Dset以上となる条件が成立したとき、地図データベースDBの更新を許可する。閾値Dsetは、例えば、(b1)のシーンにおける信頼度Rが最高値であることを想定した比較的少ない回数で条件が成立するように設定されている。
N×R≧Dset …(4)
【0036】
(b2)外部環境の認識状態、車両挙動、GPS信号の受信状態が中安定
外部環境の認識状態、車両挙動、GPS信号の受信状態の何れかがやや不安定に中安定状態にある場合には、信頼度Rに応じて地図データの重み付け平均を繰り返すことにより更新用データCrの信頼度を高め、(4)式の条件を満足するようになったとき、地図データベースDBの更新を指示する。
【0037】
(b3)外部環境の認識状態、車両挙動、GPS信号の受信状態の何れかが不安定
この場合には、更新用データCrの信頼度が低いため、(4)式の条件を満足せず、地図データベースDBの更新不可とする。
【0038】
(b4)道路の走行頻度
道路を走行した際の日付けについても考慮し、日付けデータから算出される走行頻度(走行回数)が高い道路については、乖離が発生した回数Nの走行回数に対する比率が閾値以上である場合、信頼度が高いものと見なして更新可とする。一方、走行頻度が少ない道路に対しては、外部環境の認識状態、車両挙動、GPS信号の受信状態の全てが安定している場合に、(b1)のシーンに準じて更新を判断する。
【0039】
データ処理部50は、地図データベースDBの更新処理を行うと共に、地図データベースDBにデータが存在しない領域がある場合、新たなデータを作成して追加する処理を行う。地図データベースDBの更新は、更新判断部40の判断結果に応じて、更新が指示されたとき、地図データベースDBの地図データを更新用データで書き換える。また、この地図データの更新処理に準じて、適宜、地図データベースDBに新規の地図データを追加する。
【0040】
新たな地図データの作成及び追加は、外部環境の認識状態、車両挙動、GPS信号の受信状態の全てが安定しており、且つ地図データベースDBに該当する道路情報が存在しない場合に行われる。作成するデータ項目は、更新と同様のデータとし、同一の道路を走行するたびに、更新用データCrの作成と同様の処理を行ってデータを更新する。
【0041】
新規データは、一定間隔で補間点(新規ノード或いはデータ点)を形成するように作成する。この場合、地図データベースDBの道路情報から補間点のデータを推測することが可能な場合においても、補間点により詳細なデータベースの作成が可能であると判断される場合には、補間点を作成する。その際、道路情報が存在しない領域から存在する領域へ連続的に走行した場合は、この区間をリンクとみなす。
【0042】
また、地図作成において、走行回数が少ない、或は前回と走行している車線が違う場合においても、詳細な地図データを作成するため、周辺環境認識により、自車が走行している車線中心及び道路中心に自車両の位置を補正する。
【0043】
次に、地図データベースDBに対するデータ処理のプログラム処理について、図4に示すフローチャートを用いて説明する。尚、ここでは、データ点の更新及び追加を行うものとして説明するが、ノード或いはリンクについても同様である。
【0044】
この処理では、最初のステップS1において、GPSにより自車両の位置を測位する。この車両位置の測位は、例えば、データ点の間隔に相当する一定間隔で行われ、続くステップS2で、ステレオカメラユニット3や車載センサ等による周辺環境の認識結果及び車両の走行状態に基づいて、道路曲率、対車線ヨー角等の地図データを算出し、自車両の位置データ、データ取得日時と共にバッファに記録・保存する。
【0045】
次に、ステップS3において、今回の車両位置の地図データが地図データベースDBの該当するデータ点に存在するか否かを調べる。その結果、地図データベースDBに対応するデータ点がある場合には、ステップS4以降でデータベース更新に係る処理を行い、地図データベースDBには対応するデータ点が存在せず、データベース上で地図データがない場合には、ステップS11以降で新規データの作成及び追加に係る処理を行う。
【0046】
先ず、ステップS4以降のデータベース更新に係る処理について説明する。ステップS4では、同一データ点において、バッファに保存されている地図データ(更新用データ)と、地図データベースDBに格納されている地図データとを比較する。そして、バッファに保存されている地図データとデータベースに格納されている地図データとの誤差が判定値未満で一致している場合には本処理を抜け、誤差が判定値以上となる乖離が発生した場合には、ステップS5へ進む。
【0047】
ステップS5では、ステレオカメラユニット3による外部環境の認識状態、車載センサによる車両挙動、GPS信号の受信状態の全てが高安定である条件が満たされるか否かを調べる。これらの全てが高安定状態にある場合には、自車両側で算出した地図データが正しいと判断してステップS5からステップS9へ進み、今回算出した地図データを更新用データCrとして、この更新用データで地図データベースDBの地図データを更新する。このとき、データの信頼度Rは最高値Rmaxとして、データ更新日も記録する。
【0048】
ステップS5における高安定の条件が満たされない場合、ステップS5からステップS6へ進み、更に、認識状態、車両挙動、GPS信号の受信状態の何れかがやや不安定の中安定状態にある条件が成立するか否かを調べる。そして、認識状態、車両挙動、GPS信号の受信状態が中安定状態にある場合には、ステップS7でバッファに保存されている前回までのデータを、今回のデータを用いて更新し、ステップS8へ進む。このバッファデータの更新は、前述の(2)式で説明したように信頼度に基づく重み付け平均による更新用データCrの算出となり、信頼度と共に更新日を記録する。
【0049】
ステップS8では、バッファに保存されている地図データと地図データベースDBに記憶されている地図データとの誤差が判定値以上に乖離した回数Nと信頼度Rとの積が閾値Dset以上となったか否かを調べる。そして、N×R<Dsetの場合には本処理を抜け、N×R≧Dsetとなった場合、ステップS9で地図データベースDBを更新する。
【0050】
一方、ステップS6における中安定の条件が満たされない場合には、外部環境の認識状態、車両挙動、GPS信号の受信状態の何れかが不安定であると判断する。そして、ステップS10で今回のデータを破棄してデータベースの更新を行わず、本処理を抜ける。
【0051】
次に、ステップS11以降の新規データの作成及び追加に係る処理について説明する。ステップS11では、地図データベースDBに対応するデータ点がない場合に、新規データ点の作成及び追加を許可する条件が成立するか否かを調べる。この新規データ点に対する許可条件は、外部環境の認識状態、車両挙動、GPS信号の受信状態の全てが安定しており、データ更新と同様の条件が成立する場合である。
【0052】
そして、ステップS11において新規データ点の許可条件が成立しない場合には、ステップS12でバッファにデータを保存して本処理を抜け、許可条件が成立する場合、ステップS13で新規データ点を作成して、地図データベースDBにデータを追加する。
【0053】
このように本実施の形態においては、周辺環境の認識結果及び車両の走行状態に基づいて算出された地図データから信頼度に基づいて更新用データを算出し、地図データベースDBの地図データと比較する。そして、両者の間の誤差が判定値以上となる乖離が発生したとき、乖離の回数及び信頼度に基づいて地図データベースDBの地図データと更新用データとの何れのデータが正しいのかを判断して更新の可否を決定する。これにより、走行制御に利用する詳細な地図データベースと実際の道路状況・環境との相違を的確に把握してデータベースを最新の状態に維持し、精密な走行制御を実現することができる。特に、通行の頻度の高い道路では、より精度の高い走行制御を実現することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 自車両
2 運転支援システム
2a 地図データ処理装置
3 ステレオカメラユニット
4 側方レーダユニット
5 後方レーダユニット
6 ナビゲーションユニット
7 交通情報通信ユニット
20 地図データ算出部
30 更新用データ算出部
40 更新判断部
50 データ処理部
DB 地図データベース
Cr 更新用データ
R 信頼度
図1
図2
図3
図4