【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1に開示されている天井下地構造の場合、野縁に対して天井仕上げボードが専用のビスで取り付けられることとなっている。また、天井には、照明器具や空調機器等が建物の構造体から吊りボルト等で吊り下げられ、天井開口部に天井仕上げボード面と同じ高さで取り付けられており、建物の竣工後、通常は作業員が天井点検口から天井裏を覗いて照明器具や空調機器等の点検・修理を行うこととなっているが、劇場・ホールや体育館、工場等のように、天井に沢山の照明器具・空調機器等がある場合には、天井裏に人が歩けるぐらいの高さを取って、キャットウォークという点検・修理専用の狭い通路を設けることとなっている。但し、キャットウォークは、全ての天井面を網羅出来るように設置されているわけではないので、やむを得ず従来型の天井下地材の上を作業員が歩いて点検・修理を行っている場合がある。従来型の天井下地材は、人が野縁の上に乗れるような耐荷重構造となっていないので、吊りボルトと野縁あるいは野縁受けとを結合しているハンガーという金具が開いたり、野縁受けが倒れたりして、天井面がガタガタになったり、最悪の場合には、天井下地材と天井仕上げボードが落下してしまうという事故が発生するおそれがある。
【0005】
そこで、複数の人が乗っても大丈夫なように、予じめ角形鋼を建物の構造体から吊り下げて、一定間隔に並べたぶどう棚という吊天井構造が採用されている。このような吊天井構造であっても、地震等の激しい揺れに対する耐振性が問題となる場合がある。
【0006】
上記のような問題に対処するために、上記特許文献1に開示されているように、建物の構造体から吊りボルトで吊り下げて支持され、隣り合う吊りボルト同士をブレース材(筋交い状の部材)で連結することにより、耐振性を強化することが考えられるが、特許文献1に開示されているものは、ブレース材として、断面C型形状の溝形鋼(チャンネル鋼材)が用いられているため、地震発生時の揺れに対する強度が十分でなく、耐震性の強化に限界があった。また、ブレース材と吊りボルトとの結合部分の構造によっては、十分な耐振性強化が得られない場合が生ずる。
【0007】
ところで、地震発生時には、縦方向(即ち、X方向)と横方向(即ち、Y方向)に同時に揺れるが、ぶどう棚の場合、交差する部材のうち一方の剛性が他方の剛性に比べて弱い構造となっているため、交差する部材の両方に耐震構造(例えば、斜め補強部材を取り付ける構造)とした場合、一方の部材(弱い方の部材)に過度の負荷がかかってしまい、十分な効果が得られない場合が生ずる。
【0008】
本願発明は、上記のような課題を解決するために行われたものであり、天井下地材上を作業員が歩いて点検・修理を行う場合にも、十分な棚強度を維持できるとともに、地震に対する耐震性能に優れた天井下地構造を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)第1の課題解決手段
本願発明では、上記課題を解決するための第1の手段として、所定の間隔で平行に並ぶ金属製角形筒(1),(1)・・と、該金属製角形筒(1),(1)・・に直交して、所定の間隔で平行に並ぶ金属製角形筒(2),(2)・・とからなり、前記金属製角形筒(1),(1)・・あるいは前記金属製角形筒(1),(1)・・に直交する前記金属製角形筒(2),(2)・・を吊りボルト(3),(3)・・を用いて建物の構造物(26)に吊り下げるように構成された天井下地構造であって、前記金属製角形筒(1),(1)・・の上部側に位置して前記金属製角
形筒(1),(1)・・に交差する金属製角形筒からなる補強用の梁部材(7)を設け、該梁部材(7)と前記金属製角
形筒(1),(1)・・を、それら相互の交差部において、当該梁部材(7)の上面(7a)および両側面(7b)、(7c)を抱持する断面コ字状の第1抱持金具(8a)と該第1抱持金具(8a)の両下端部からそれぞれ一体に延設され、前記金属製角形筒(1)の上面(1a)および両側面(1b)、(1c)を抱持する断面コ字状の第2抱持金具(8b)、(8b)とからなる取付金具(8)を用いて結合したことを特徴としている。
【0010】
上記のような構成によると、所定の間隔で平行に並ぶ金属製角形筒(1),(1)・・と、該金属製角形筒(1),(1)・・に直交して、所定の間隔で平行に並ぶ金属製角形筒(2),(2)・・とからなり、前記金属製角形筒(1),(1)・・あるいは金属製角形筒(2),(2)・・を吊りボルト(3),(3)・・を用いて建物の構造物(26)に吊り下げるように構成された天井下地構造において、前記金属製角形筒(1),(1)・・の上部側に位置して前記金属製角
形筒(1),(1)・・に交差する状態で金属製角形筒からなる補強用の梁部材(7)が設けられることになり、しかも、同補強用の梁部材(7)と前記金属製角
形筒(1),(1)・・が、それら相互の交差部において、当該梁部材(7)の上面(7a)および両側面(7b)、(7c)を抱持する断面コ字状の第1抱持金具(8a)と該第1抱持金具(8a)の両下端部からそれぞれ一体に延設され、前記金属製角形筒(1)の上面(1a)および両側面(1b),(1c)を抱持する断面コ字状の第2抱持金具(8b)、(8b)とからなる取付金具(8)により、相互に結合されることになる。
【0011】
その結果、金属製角形筒(2),(2)・・を直交状態で支持する金属製角形筒(1),(1)が、取付金具(8)を介して補強用の梁部材(7)により確実に支持されるようになり、棚強度が有効に向上し、金属製角形筒(1)および梁部材(7)の上を作業員が安心して歩くことができるようになり、地震発生時の左右方向の揺れにも対応することができるようになる。
(2)第2の課題解決手段
本願発明では、上記課題を解決するための第2の手段として、所定の間隔で平行に並ぶ金属製角形筒(1),(1)・・と、該金属製角形筒(1),(1)・・の上部側に位置し、該金属製角形筒(1),(1)・・に交差する状態で所定の間隔で平行に並ぶ金属製角形筒(7),(7)・・とからなり、前記金属製角形筒(1),(1)・・あるいは前記金属製角形筒(1),(1)・・に交差する前記金属製角形筒(7),(7)・・を吊りボルト(3),(3)・・を用いて建物の構造物(26)に吊り下げるように構成した天井下地構造であって、前記金属製角形筒(7)、(7)・・を補強用の梁部材により構成するとともに、該梁部材よりなる金属製角形筒(7)、(7)・・と前記金属製角形筒(1),(1)・・を、それら相互の交差部において、前記金属製角形筒(7)の上面(7a)および両側面(7b)、(7c)を抱持する断面コ字状の第1抱持金具(8a)と該第1抱持金具(8a)の両下端部からそれぞれ一体に延設され、前記金属製角形筒(1)の上面(1a)および両側面(1b)、(1c)を抱持する断面コ字状の第2抱持金具(8b)、(8b)とからなる取付金具(8)を用いて結合したことを特徴としている。
【0012】
上記のような構成によると、所定の間隔で平行に並ぶ金属製角形筒(1),(1)・・と、該金属製角形筒(1),(1)・・の上部側に位置し、該金属製角形筒(1),(1)・・に交差する状態で所定の間隔で平行に並ぶ金属製角形筒(7),(7)・・とからなり、前記金属製角形筒(1),(1)・・あるいは前記金属製角形筒(1),(1)・・に交差する前記金属製角形筒(7),(7)・・を吊りボルト(3),(3)・・を用いて建物の構造物(26)に吊り下げるように構成した天井下地構造において、前記金属製角形筒(7)、(7)・・が補強用の梁部材によって構成されているとともに、該梁部材よりなる金属製角形筒(7)、(7)・・と前記金属製角形筒(1),(1)・・が、それら相互の交差部において、前記金属製角形筒(7)の上面(7a)および両側面(7b)、(7c)を抱持する断面コ字状の第1抱持金具(8a)と該第1抱持金具(8a)の両下端部からそれぞれ一体に延設され、前記金属製角形筒(1)の上面(1a)および両側面(1b)、(1c)を抱持する断面コ字状の第2抱持金具(8b)、(8b)とからなる取付金具(8)によって相互に結合されることになる。
【0013】
その結果、前記金属製角形筒(1),(1)・・が、前記取付金具(8)を介して補強用の梁部材(7),(7)・・により確実に支持されるようになって、ぶどう棚強度が向上し、金属製角形筒(1),(1)・・および梁部材(7),(7)・・の上を作業員が安心して歩くことができるようになり、地震発生時の左右方向の揺れにも対応することができるようになる。
【0014】
また、金属製角形筒(1),(1)・・と直交する部材(第1の課題解決手段における金属製角形筒(2))を省略することが可能となり、低コスト化を図ることができる。
(3)第3の課題解決手段
本願発明では、また、上記課題を解決するための第3の手段として、上記第1の手段を備えた天井下地構造において、前記金属製角
形筒(1),(1)・・および前記金属製角形筒(1),(1)・・に直交する前記金属製角
形筒(2),(2)・・のうちの選ばれたものと前記吊りボルト(3),(3)・・のうちの選ばれたものの上端部あるいは前記建物の構造物(26)とを、金属製角形筒からなる斜め補強部材(20),(20)で連結したことを特徴としている。
【0015】
このような構成の場合、天井下地構造を構成する、金属製角
形筒(1),(1)・・および金属製角
形筒(1),(1)・・に直交する金属製角
形筒(2),(2)・・のうちの選ばれたものと吊りボルト(3),(3)・・のうちの選ばれたものの上端部あるいは建物の構造物(26)とが、金属製角形筒からなる斜め補強部材(20),(20)により連結されるので、地震発生時の左右方向への揺れに対して、より十分に対応することができるようになり、一層耐震性能が向上する。
(4)第4の課題解決手段
本願発明では、さらに、上記課題を解決するための第4の手段として、上記第2の手段を備えた天井下地構造において、前記金属製角
形筒(1),(1)・・および前記金属製角
形筒(1),(1)・・に交差する前記梁部材(7)、(7)・・のうちの選ばれたものと前記吊りボルト(3),(3)・・のうちの選ばれたものの上端部あるいは前記建物の構造物(26)とを、金属製角形筒からなる斜め補強部材(20),(20)で連結したことを特徴としている。
【0016】
このような構成の場合、天井下地構造を構成する、前記金属製角
形筒(1),(1)・・および前記金属製角
形筒(1),(1)・・に交差する前記梁部材(7)、(7)・・のうちの選ばれたものと前記吊りボルト(3),(3)・・のうちの選ばれたものの上端部あるいは建物の構造物(26)とが、金属製角形筒からなる斜め補強部材(20),(20)により連結されるので、地震発生時の左右方向への揺れに対して、より十分に対応することができるようになり、一層耐震性能が向上する。