特許第5997935号(P5997935)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5997935
(24)【登録日】2016年9月2日
(45)【発行日】2016年9月28日
(54)【発明の名称】角形鋼用吊り金具
(51)【国際特許分類】
   E04B 9/18 20060101AFI20160915BHJP
【FI】
   E04B5/58 B
   E04B5/58 S
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-119386(P2012-119386)
(22)【出願日】2012年5月25日
(65)【公開番号】特開2013-245465(P2013-245465A)
(43)【公開日】2013年12月9日
【審査請求日】2015年3月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】594062260
【氏名又は名称】株式会社佐藤型鋼製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100092875
【弁理士】
【氏名又は名称】白川 孝治
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 公章
【審査官】 兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−299124(JP,A)
【文献】 特開2010−189958(JP,A)
【文献】 特開2009−074305(JP,A)
【文献】 特開平06−073833(JP,A)
【文献】 特開2012−012887(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 9/06−9/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面四角形状の角形鋼に対して直交する方向からその上下両面および一側面に接するように嵌め合わされる断面コ字状の嵌挿部と該嵌挿部の前記角形鋼の上下両面に接している上下両端部からそれぞれ所定の長さ一体に延設され、天井下地を吊り下げる吊りボルトの上端部が取り付けられる上下一対のボルト支持部を備えた吊り金具本体と、該吊り金具本体における前記上下一対のボルト支持部間にあって、前記上下一対のボルト支持部間を上下に貫通する吊りボルトを外側から覆う状態で前記角形鋼の他の一側面に対して取り付けられる吊り金具補強板を備えてなる角形鋼用吊り金具であって、前記吊り金具補強板を、前記角形鋼の他の一側面に取り付けられる左右一対の取り付け部と、該左右一対の取り付け部間にあって内側にボルトを挿通させる凹溝部とから構成し、該凹溝部および該凹溝部左右の取り付け部の前記上下一対のボルト支持部に対応する部分の上下寸法を前記角型鋼の上下寸法と同一の寸法に形成することによって、前記上下一対のボルト支持部間の支承部材として機能させ、前記上下一対のボルト支持部間を上下に貫通する前記吊りボルトの前記上下一対のボルト支持部の上下両面側部分に螺合したナットで前記上下一対のボルト支持部同士を前記吊り金具補強板の前記凹溝部および前記凹溝部左右の取り付け部の前記上下一対のボルト支持部に対応する部分を挟んで相互に連結することにより前記吊り金具本体に対して前記吊り金具補強板を一体化し、該吊り金具補強板が一体化された吊金具本体を介して前記角鋼に対して前記吊りボルトを連結するようにしたことを特徴とする角鋼用吊り金具。
【請求項2】
前記吊り金具補強板の左右一対の取り付け部には、前記吊り金具本体嵌挿部の両側において前記角形鋼の上下両面に取り付けられる剛性強化片を一体に延設したことを特徴とする請求項1記載の角形鋼用吊り金具。
【請求項3】
前記吊りボルトの上端部側の前記吊り金具本体の下部位置には、前記天井下地に下端部を取り付けられた斜め補強部材の上端部を取り付ける固定金具が設けられていることを特徴とする請求項1および2のいずれか一項記載の角形鋼用吊り金具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、角形鋼用吊り金具に関し、さらに詳しくは天井下地等を吊り下げるために用いられる角形鋼用吊り金具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
天井下地等を吊り下げるために用いられる吊り具としては、C形鋼のリップ部に引っかけて使用されるものが従来から多用されてきている。この吊金具の下端には、吊りボルトを取り付けるための支持部が形成されている。この場合、C形鋼がリップ部を有しているので、吊り金具の上端に形成された鉤状の係止部をリップ部に引っかけるだけでよく、しかも、吊りボルトを下げる位置を作用方向に自由に調節できるという利点もある。
【0003】
ところで、近年、C形鋼に代えて角形鋼(例えば、コーナ部で両端をかしめた角形鋼)が多用されるようになってきている。この角形鋼は、C形鋼に比べて捩れに対して強く、閉鎖断面なので強度が飛躍的に高まるし、軽量化や精度(例えば、平坦度)、コスト面でも有利となる。ところが、角形鋼の場合、吊り金具を引っかける部分がないので、C形鋼用のものをそのまま使用することは不可能である。
【0004】
この種の吊り金具としては、角形鋼を抱持する抱持部をそれぞれ有する一対のハンガーにより構成されるものも既に提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、構造が簡単で、組みつけ作業性にも優れた角形鋼用吊り金具として、断面四角形形状の角形鋼に対して直交する方向から嵌め合わせられる断面コ字状の嵌挿部と該嵌挿部の一端に一体に屈曲形成され且つ吊りボルトが取り付けられる支持部によって構成したものが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−200609号公報
【特許文献2】特開2010−189958号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、上記特許文献1に開示されているハンガー装置の場合、抱持部をそれぞれ有する一対のハンガーにより構成されるところから、部品点数が多くなるとともに、組みつけ作業が複雑化し、コスト面でも不利となるという不具合がある。
【0008】
また、上記特許文献2に開示されている角形鋼用吊金具の場合、近年耐振性を向上させる目的から、吊りボルトの上端部と吊りボルトにより吊り下げられている天井下地との間に斜め補強部材を介設する試みがなされているが、このような構造とすると、地震発生時に斜め補強部材に沿って引張力と圧縮力とが掛かり、吊り金具が角形鋼から外れてしまうおそれがあり、使用に耐えないという問題が発生するおそれがある。
【0009】
本願発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、地震発生時等に引張力と圧縮力とが衝撃的に掛かっても外れるようなことがない、耐震性に優れた角形鋼用の吊り金具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)第1の課題解決手段
本願発明では、上記課題を解決するための第1の手段として、断面四角形状の角形鋼に対して直交する方向からその上下両面および一側面に接するように嵌め合わされる断面コ字状の嵌挿部と該嵌挿部の前記角形鋼の上下両面に接している上下両端部からそれぞれ所定の長さ一体に延設され、天井下地を吊り下げる吊りボルトの上端部が取り付けられる上下一対のボルト支持部を備えた吊り金具本体と、該吊り金具本体における前記上下一対のボルト支持部間にあって、前記上下一対のボルト支持部間を上下に貫通する吊りボルトを外側から覆う状態で前記角形鋼の他の一側面に対して取り付けられる吊り金具補強板を備えてなる角形鋼用吊り金具であって、前記吊り金具補強板を、前記角形鋼の他の一側面に取り付けられる左右一対の取り付け部と、該左右一対の取り付け部間にあって内側にボルトを挿通させる凹溝部とから構成し、該凹溝部および該凹溝部左右の取り付け部の前記上下一対のボルト支持部に対応する部分の上下寸法を前記角型鋼の上下寸法と同一の寸法に形成することによって、前記上下一対のボルト支持部間の支承部材として機能させ、前記上下一対のボルト支持部間を上下に貫通する前記吊りボルトの前記上下一対のボルト支持部の上下両面側部分に螺合したナットで前記上下一対のボルト支持部同士を前記吊り金具補強板の前記凹溝部および前記凹溝部左右の取り付け部の前記上下一対のボルト支持部に対応する部分を挟んで相互に連結することにより前記吊り金具本体に対して前記吊り金具補強板を一体化し、該吊り金具補強板が一体化された吊金具本体を介して前記角鋼に対して前記吊りボルトを連結するようにしている。
【0011】
上記のように構成したことにより、断面四角形状の角形鋼に対して直交する方向から断面コ字状の嵌挿部を嵌め合わせるだけで、容易に吊り金具本体をセットすることができるとともに、吊り金具補強板の存在により吊りボルトの取り付け状態が強固になることから、地震発生時等に引張力と圧縮力とが衝撃的に掛かっても外れるようなことがなくなる。
【0012】
特に、上記の構成では、当該吊り金具補強板が、上記断面コ字状の嵌挿部を備えた吊り金具本体の上下一対のボルト支持部間を上下に貫通する吊りボルトを外側から覆う状態で角形鋼の他の一側面に対して取り付けられるようになっており、より具体的には、上記角形鋼の他の一側面に対して取り付けられる左右一対の取り付け部と、該左右一対の取り付け部間にあって内側にボルトを挿通させる凹溝部とから構成し、さらに、該凹溝部および該凹溝部左右の取り付け部の前記上下一対のボルト支持部に対応する部分の上下寸法を前記角鋼の上下寸法と同一の寸法に形成することによって、前記上下一対のボルト支持部間の支承部材として機能させ、前記上下一対のボルト支持部間を上下に貫通する上記吊りボルトの前記上下一対のボルト支持部の上下両面側部分に螺合したナットで前記上下一対のボルト支持部同士を前記凹溝部および前記凹溝部左右の取り付け部の前記上下一対のボルト支持部に対応する部分を挟んで相互に連結することにより、前記吊り金具本体に対して前記吊り金具補強板を確実に一体化し、該吊り金具補強板が一体化された吊金具本体を介して、前記角形鋼に対して吊りボルトが連結されるようになっている。
【0013】
したがって、上記断面コ字状の嵌挿部を備えた吊り金具本体の上下一対のボルト支持部は、その上下寸法を前記角鋼の上下寸法と同様の寸法に形成することによって、前記吊り金具本体の上下一対のボルト支持部間の支承部材として機能する吊り金具補強板の凹溝部および該凹溝部左右の取り付け部の前記上下一対のボルト支持部に対応する部分によって確実に支承される形で、同凹溝部および同凹溝部左右の取り付け部の前記上下一対のボルト支持部に対応する部分を介して相互に連結一体化されることになる。
【0014】
その結果、前記吊り金具補強板が前記左右一対の取り付け部を介して前記角形鋼の他の一側面に取り付けられていることとも相俟って、前記吊り金具本体の上下一対のボルト支持部のボルト支持力が有効に向上し、より安定した支持状態が実現される。
【0015】
(2)第2の課題解決手段
本願発明では、さらに、上記課題を解決するための第2の手段として、上記第1の手段を備えた角形鋼用吊り金具において、前記吊り金具補強板の前記上下一対のボルト支持部に対応する部分を除く左右一対の取り付け部には、前記吊り金具本体嵌挿部の両側において前記角形鋼の上下両面に取り付けられる剛性強化片が一体に延設されている。
【0016】
このように構成した場合、吊りボルト補強板の角形鋼に対する取り付け強度が向上することから、吊り金具本体の吊りボルト支持力も向上し、吊りボルトと角形鋼との結合構造も強化されることになる。
【0017】
(3)第3の課題解決手段
本願発明では、さらに、上記課題を解決するための第3の手段として、上記第1又は第2の手段を備えた角形鋼用吊り金具において、前記吊りボルトの上端部側の吊り金具本体の下部位置には、前記天井下地に下端部を取り付けられた斜め補強部材の上端部を取り付ける固定金具が設けられている。
【0018】
このように構成した場合、吊りボルト上端側への斜め補強部材上端側の取り付けが可能となり、天井下地における耐震性が向上することとなる。
【発明の効果】
【0019】
以上の結果、本願発明によると、吊りボルトの角形鋼に対する連結強度が向上し、地震発生時の引張力、圧縮力に対しても耐えうる耐震性の高い天井下地の吊り下げ構造を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本願発明の第1の実施の形態にかかる角形鋼用吊り金具の組付状態を示す斜視図である。
図2】本願発明の第1の実施の形態にかかる角形鋼用吊り金具を示す斜視図であり、(イ)は吊り金具本体を示し、(ロ)は補強板を示している。
図3】本願発明の第1の実施の形態にかかる角形鋼用吊金具の使用例である天井下地を示す斜視図である。
図4】本願発明の第2の実施の形態にかかる角形鋼用吊り金具の組付状態を示す斜視図である。
図5】本願発明の第2の実施の形態にかかる角形鋼用吊り金具における補強板を示す斜視図である。
図6】本願発明の第2の実施の形態にかかる角形鋼用吊り金具における補強板の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付の図面を参照して、本願発明の幾つかの実施の形態について説明する。
【0022】
第1の実施の形態
図1図3には、本願発明の第1の実施の形態にかかる角形鋼用吊り金具が示されている。
【0023】
この角形鋼用吊り金具Xは、図1図3に示されるように、断面四角形状の角形鋼Yに対して直交する方向から嵌め合わせられる断面コ字状の嵌挿部11と、該嵌挿部11の上下両端部から水平に一体に延設され且つ天井下地Z(図3参照)を吊り下げる吊りボルト3の上端部が取り付けられる上下一対のボルト支持部12,12とを備えた吊り金具本体X1と、該吊り金具本体X1における上下一対のボルト支持部12,12間にあって前記吊りボルト3を外側から覆うようにして前記角形鋼Yの他の一側面に取り付けられる吊り金具補強板X2によって構成されている。
【0024】
前記吊り金具本体X1は、前記断面コ字状の嵌挿部11を連結している背面部13を前記角形鋼Yにおける反吊りボルト側側面にビス止めすることにより取り付けられている。
【0025】
なお、符号14は前記嵌挿部11の背面部13および吊り金具補強板X2に形成されたビス穴、15は前記吊り金具補強板X2を角形鋼Yに固定するためのビス、16は前記吊りボルト3を前記ボルト支持部12に取り付けるためのナット、12aは前記吊りボルト3の上端部を挿通する挿通穴である。
【0026】
前記天井下地Zは、図3に示すように、所定間隔で平行に並ぶ多数の中空な金属製角形筒1,1・・と該金属製角形筒1,1・・の下側において該金属製角形筒1,1・・に直交して所定間隔で平行に並ぶ多数の中空な金属製角形筒からなる金属製部材2,2・・とからなり、前記金属製角形筒1,1・・のうちの選ばれたものを前記吊りボルト3,3・・を用いて建物の構造物から吊り下げるように構成されている。
【0027】
前記吊りボルト3の下端部は、前記金属製角形筒1,1・・のうちの選ばれたものに対して所定の支持金具を介して取り付けられている。そして、本実施の形態においては、前記金属製角形筒1,1・・のうちの選ばれたものと前記吊りボルト3,3・・のうちの選ばれたものの上端部とは、チャンネル形状の斜め補強部材20で連結されている。また、この斜め補強部材20の下端部は、前記金属製角形筒1,1・・のうちの選ばれたものに対して下部固定金具21を介して取り付けられている。
【0028】
なお、符号4は前記金属製角形筒1,1・・の端部を支持する断面コ字状の支持部材、5は前記金属製部材2,2・・の下面に取り付けられた天井板、6は前記金属製角形筒1,1・・に直交するチャンネルである。
【0029】
前記斜め補強部材20の上端部と前記吊りボルト3の上端部とは、図1に示すように、前記斜め補強部材20の上端部に対してビス22a.22aを用いて取り付けられた板状の取付手段22Aと前記吊りボルト3の上端部において該吊りボルト3を挟持するようにボルト22b,22bを用いて固定された2枚の板状部材22c,22cとからなる結合手段22Bとによって構成された上部固定金具22を介して結合されている。
【0030】
そして、前記結合手段22Bを構成する板状部材22c,22cの一端側には、前記取付手段22Aが前記ボルト22b,22bの一つを用いて挟持固定されることとなっている。なお、符号22dはボルト22bの他端側に螺着されるナットである。
【0031】
前記角形鋼用吊り金具Xを構成する前記吊り金具補強板X2は、図2の(ロ)に示されるように、全体として断面ハット型に成形され、その中央部には、前記吊りボルト3の上端部を挿通させるための断面コ字状の凹溝部17が形成されている。この断面コ字状の凹溝部17は、その内側(角型鋼Y側)に吊りボルト3挿通用の凹溝を有し、図1のような角形鋼Yの側面への取り付け状態において、前記吊りボルト3の上端部が上下方向に挿通され、同吊りボルト3を覆った状態(嵌合した状態)で左右両側の取り付け部を介して、角型鋼Yの側面に固定される。
【0032】
すなわち、同断面コ字状の凹溝部17の左右両側には、図1図2(ロ)に示すように、それぞれビス穴14、14を備えた平板構造の取り付け部が設けられており、前記吊り金具補強板X2は、前記吊り金具本体X1の上下一対のボルト支持部12、12間において、当該左右両側の取り付け部のビス穴14、14・・を介して前記角型鋼Yの側面にビス15、15・・を螺合することにより、前記角型鋼Yの嵌挿部側面と反対側の他の一側面に一体に取り付けられて固定されている。
【0033】
そして、この実施の形態の場合、その場合において、前記凹溝部17および該凹溝部17左右の取り付け部の上下寸法(吊り金具補強板X2全体の上下方向の寸法)は、図2の(ロ)に示されるようにそれぞれ同一であり、この上下寸法は、また図1に示されるように前記角型鋼Yの上下寸法と同一の寸法に形成されており、同凹溝部17および同凹溝部17左右取り付け部の一部は上記吊り金具本体X1嵌挿部11の上下一対の支持部12、12の延設部間の支承部材として機能するようになっている。
【0034】
したがって、前記吊り金具本体X1の上下一対のボルト支持部12、12間を上下に貫通する上記吊りボルト3の上記上下一対のボルト支持部12、12の上下両面側部分に螺合したナット16、16により、前記吊り金具本体X1嵌挿部11の上下一対のボルト支持部12、12同士を上記吊り金具補強板X2の凹溝部17および該凹溝部17左右の取り付け部の前記上下一対のボルト支持部に対応する部分を挟んで相互に連結すると、前記吊り金具本体X1に対して前記吊り金具補強板X2を確実に一体化することができ、該角形鋼Yに対して取り付けられている吊り金具補強板X2が一体化された高強度の吊金具本体X1を介して、上記角形鋼Yに対して吊りボルト3が連結されるようになっている。
【0035】
上記のように構成したことにより、断面四角形状の角形鋼Yに対して直交する方向から断面コ字状の嵌挿部1を嵌め合わせるだけで、容易に吊金具Xをセットすることができるとともに、吊り金具補強板X2の存在により吊りボルト3の取り付け状態が強固になることから、地震発生時等に引張力と圧縮力とが衝撃的に掛かっても、外れるようなことがなくなる。
【0036】
特に、この実施の形態の構成では、上述のように、前記吊り金具補強板X2が、前記断面コ字状の嵌挿部11を備えた吊り金具本体X1の上下一対のボルト支持部12、12間を上下に貫通する吊りボルト3を外側から覆う状態で角形鋼Yの他の一側面に対して取り付けられるようになっているだけでなく、前記角形鋼Yの他の一側面に対して取り付けられるビス穴14,14を有した左右一対の平板上の取り付け部と、該左右一対の平板上の取り付け部間にあって内側の凹溝に吊りボルト3を挿通させる凹溝部17とから構成し、少なくとも該凹溝部17および該凹溝部17左右一対の取り付け部の前記上下一対のボルト支持部12、12に対応する部分の上下寸法を前記角型鋼Yの上下寸法と同一の寸法に形成することによって、前記吊り金具本体X1嵌挿部11の上下一対の支持部12、12間の支承部材として機能させるようにしており、前記吊り金具本体X1嵌挿部11の上下一対のボルト支持部12、12間を上下に貫通する前記吊りボルト3の上記上下一対のボルト支持部12、12の上下両面側部分に螺合したナット16、16を用いて、前記吊り金具本体X1嵌挿部11の上下一対のボルト支持部12、12同士を前記吊り金具補強板X2の凹溝部17および該凹溝部17左右取り付け部の前記上下一対のボルト支持部12、12に対応する部分を挟んで相互に連結することにより、前記吊り金具本体X1に対して前記吊り金具補強板X2を確実に一体化し、該吊り金具補強板X2が一体化された吊金具本体X1を介して、前記角形鋼Yに対して吊りボルト3を連結するようにしている。
【0037】
したがって、前記断面コ字状の嵌挿部11を備えた吊り金具本体X1の上下一対のボルト支持部12、12は、その上下寸法を上記角型鋼Yの上下寸法と同一の寸法に形成することによって、上記吊り金具本体X1の上下一対のボルト支持部12、12間の支承部材として機能する吊り金具補強板X2の凹溝部17および該凹溝部17左右取り付け部の上下一対のボルト支持部に対応する部分によって確実に支承された形で、同凹溝部17および同凹溝部17左右取り付け部を介して相互に連結一体化されることになる。
【0038】
その結果、前記吊り金具補強板X2が上記左右一対の取り付け部を介して前記角形鋼Yの他の一側面に取り付けられていることとも相俟って、前記吊り金具本体X1の上下一対のボルト支持部12、12のボルト支持力が有効に向上し、より安定した支持状態が実現される。
【0039】
しかも、同構成では、さらに吊りボルト3の上端部に、天井下地Zに下端部を取り付けられた斜め補強部材20の上端部を取り付けることもできるので、天井下地Zにおける耐震性が大幅に向上することとなる。
【0040】
この吊り金具Xは、図3に示すように、工場の電気又は設備のメンテナンスのために人が上に乗って尚且つ天井下地を吊り下げた荷重が持てるように考案された「ぶどう棚」と呼ばれる下地組に好適に使用される。
【0041】
第2の実施の形態
次に図4図6には、本願発明の第2の実施の形態にかかる角形鋼用吊り金具が示されている。
【0042】
この実施の形態の場合、上述した第1の実施の形態における角形鋼用吊り金具Xにおける吊り金具補強板X2の左右両側に設けられたビス穴14、14を有する平板状の取り付け部の前記吊り金具本体X1の上下一対のボルト支持部12、12に対応する部分を除く上下両端部に、前記断面コ字状をなす吊り金具本体X1の嵌挿部11の両側において、前記角形鋼Yの上下両面に取り付けられる剛性強化片18,18および19,19が角形鋼Y側に直角に屈曲して一体に延設されている。
【0043】
これら剛性強化片18,18および19,19部分は、前記ビス穴14,14を有する平板上の取り付け部の場合と同様に、前記角形鋼Yの上面および下面に対してビス15を用いて固定される。
【0044】
このように構成すると、上記第1の実施の形態の構成および作用に加えて、さらに吊り金具補強板X2と角形鋼Yとの結合強度が高まり、吊り金具補強板X2による吊り金具本体X1の補強機能も向上するので、吊りボルト3と角形鋼Yとの結合構造がより一層強化されることとなり、上下および左右方向からの振動にも耐えられる耐震構造が得られる。
【0045】
なお、符号18aおよび19aは剛性強化片18および19に形成されたビス穴である。
【0046】
変形例
図6には、前記第2の実施の形態の吊り金具補強板X2の変形例が示されている。
【0047】
この場合、前記剛性強化片18,18および19,19は、前記第2実施形態の場合と同様に、角型鋼Y側に直角に屈曲して一体に延設されてはいるが、角形鋼Yに対して固定されてはいない。
【0048】
このように構成しても、吊りボルト3と角形鋼Yとの結合構造は、前記第2の実施の形態におけると同様な強度が期待できる。
【0049】
その他の構成および作用効果は、前記第1の実施の形態におけると同様なので説明を省略する。
【0050】
その他の実施の形態
本願発明は、上記各実施の形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において、適宜設計変更可能なことは勿論である。
【符号の説明】
【0051】
3は吊りボルト
11は嵌挿部
11aは一端
12は支持部
18,19は剛性強化片
Xは吊り金具
X1は吊り金具本体
X2は補強板
Yは角形鋼
Zは天井下地
図1
図2
図3
図4
図5
図6