(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のリニアアクチュエータは、横荷重を支持するシャフト(22)、ケース(3)に永久磁石(23)、コイル(11)がそれぞれ固定されているため、シャフト(22)、ケース(3)の歪みが永久磁石(23)、コイル(11)に伝わりやすく、永久磁石(23)、コイル(11)が損傷する可能性があった。
【0005】
特許文献2に記載のリニアアクチュエータは、横荷重を支持する筒状ロッド(3)と外側ヨーク(5)の間に空隙が設けられているため、コイル(11)に発生する熱が空隙によって筒状ロッド(3)から外側ヨーク(5)へと伝わりにくく、コイル(11)の放熱が十分に行われない可能性があった。
【0006】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、横荷重によるコイル及び永久磁石の損傷を防止するとともに、コイルの放熱が十分に行われるリニアアクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
アウターチューブと当該アウターチューブの内側に設けられるインナーチューブとが軸方向に相対変位するリニアアクチュエータであって、
アウターチューブの内側に設けられ、
アウターチューブの端部に一端が固定されるロッドと、ロッド
内に軸方向に並んで保持される複数の永久磁石と、
インナーチューブの内側に設けられ
て当該インナーチューブと共にアウターチューブに対して相対変位し、永久磁石に対向するコイルを保持する筒状のコイルホルダと、を備え、
アウターチューブは、コイルホルダのまわりで軸方向に延びる円筒面状の第1リニアガイド部を有し、
インナーチューブは、第1リニアガイド部に隙間なく対峙して摺動自在に嵌合する円筒面状の第2リニアガイド部を有
し、第1リニアガイド部は、インナーチューブの外周面に隙間なく対峙して摺動する第1軸受の軸受面と、アウターチューブの内周面と、によって構成され、
第2リニアガイド部は、アウターチューブの内周面に隙間なく対峙して摺動する第2軸受の軸受面と、インナーチューブの外周面と、によって構成され、アウターチューブは、第2軸受が摺動する内周面に形成され第1軸受を収容する溝を有し、インナーチューブは、第1軸受が摺動する外周面に形成され第2軸受を収容する溝を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、リニアアクチュエータの伸縮時に、第1チューブと第2チューブに働く横荷重を第1、第2リニアガイド部の摺接部が支持することより、第1チューブの内側に設けられるロッドと第2チューブの内側に設けられるコイルホルダに応力が生じることを抑えられ、コイル及び永久磁石が損傷することを防止できる。
【0009】
コイルホルダのまわりにおいて、第1チューブの第1リニアガイド部と第2チューブの第2リニアガイド部が隙間なく摺動自在に嵌合するため、コイルの熱がコイルホルダ、第1チューブ、第2チューブを伝わる伝熱経路が構成され、コイルの放熱が十分に行われる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1及び
図2を参照して、本発明の実施形態によるリニアアクチュエータ100について説明する。
【0012】
リニアアクチュエータ100は、例えば、自動車や鉄道車両、建築物等における振動を抑制する制振用アクチュエータとして使用される。
【0013】
リニアアクチュエータ100は、第1チューブ10と、第1チューブ10の内側に摺動自在に挿入される第2チューブ20と、第1チューブ10の端部に固定され、永久磁石31を保持するロッド30と、第2チューブ20内に嵌合するように設けられ、永久磁石31と対向するコイル41を保持するコイルホルダ40と、を備える。リニアアクチュエータ100は、第1チューブ10に設けられた連結部1及び第2チューブ20に設けられた連結軸2を介して、相対移動する2つの部材間に配設される。
【0014】
リニアアクチュエータ100では、コイル41に流れる電流に応じてロッド30を軸方向に駆動する推力(電磁力)が発生し、この推力に基づいて第1チューブ10及び第2チューブ20が相対変位する。これにより、リニアアクチュエータ100は、
図1に示す最大収縮位置と
図2に示す最大伸長位置との間で伸縮する。
【0015】
第1チューブ10は、両端が開口する円筒状のアウターチューブ11と、アウターチューブ11の一端に取り付けられるキャップ12と、を備える。第1チューブ10の一端はキャップ12により閉塞され、第1チューブ10の他端は開口端として形成される。キャップ12の外側面には、連結部1が固定されている。
【0016】
第2チューブ20は、円筒状のベース部21と、ベース部21の一端側に固定されるインナーチューブ22と、ベース部21の他端側に固定されるガイドチューブ23と、を備える。
【0017】
ベース部21は、両端が開口する筒状部材である。ベース部21の外周には、径方向に突出する一対の連結軸2が固定されている。これら連結軸2は、相対向する位置に設けられる。第2チューブ20は連結軸2を介して相対移動する2つの部材の一方に連結され、第1チューブ10は連結部1を介して相対移動する2つの部材の他方に連結される。
【0018】
アウターチューブ11及びインナーチューブ22は、両端が開口する筒状部材である。インナーチューブ22は、ベース部21に設置された状態で、アウターチューブ11の内側に摺動自在に挿入される。インナーチューブ22は、その一端がベース部21の内周面21Aに嵌合して固定され、ベース部21に片持ち支持される。
【0019】
リニアアクチュエータ100は、第1チューブ10と第2チューブ20を軸方向について相対変位可能に支持する第1、第2リニアガイド部19、29を備える。
【0020】
インナーチューブ22挿入側のアウターチューブ11の開口端の内周には、第1軸受13が設けられる。第1軸受13の軸受面(内周面)13Aがインナーチューブ22の外周面22Aに摺接する。第1リニアガイド部19は、アウターチューブ11の内周面11Aと、第1軸受13の軸受面13Aとから構成される。
【0021】
インナーチューブ22の自由端の外周には、第2軸受24が設けられる。第2軸受24の軸受面(外周面)24Aがアウターチューブ11の内周面11Aに摺接する。第2リニアガイド部29は、インナーチューブ22の外周面22Aと、第2軸受24の軸受面24Aとから構成される。
【0022】
リニアアクチュエータ100の伸縮時に、第1、第2リニアガイド部19、29において、第1軸受13の軸受面13Aがインナーチューブ22の外周面22Aに摺接するとともに、第2軸受24の軸受面24Aがアウターチューブ11の内周面11Aに摺接することにより、アウターチューブ11とインナーチューブ22が滑らかに摺動する。アウターチューブ11の内周面11Aとインナーチューブ22の外周面22Aは、第1軸受13及び第2軸受24を介して互いに隙間なく対峙する。第1軸受13、第2軸受24は、環状のスライド材である。
【0023】
なお、上述した構成に限らず、第1軸受13がアウターチューブ11の内周の全域に延びるように設けられ、第2軸受24を廃止する構成としてもよい。また、第2軸受24がインナーチューブ22の外周面の全域に延びるように設けられ、第1軸受13を廃止する構成としてもよい。
【0024】
コイルホルダ40のまわりにインナーチューブ22が設けられ、インナーチューブ22に対してアウターチューブ11が軸方向に移動する。アウターチューブ11の第1リニアガイド部19とインナーチューブ22の第2リニアガイド部29がコイルホルダ40のまわりにて互いに隙間なく対峙して摺動自在に嵌合することにより、コイルホルダ40とインナーチューブ22及びアウターチューブ11がコイル41の熱をリニアアクチュエータ100の外部へと伝える伝熱経路を構成する。
【0025】
ガイドチューブ23は、両端が開口する筒状部材である。ガイドチューブ23内には、ロッド30の先端に固定されるロッドガイド50が摺動自在に設けられる。
【0026】
ロッド30は、中空部30Aを有する棒状部材である。ロッド30の一端は、第1チューブ10の端部を構成するキャップ12に固定される。また、ロッド30の他端には、前述したロッドガイド50が固定されている。ロッド30の先端にロッドガイド50を設けることで、リニアアクチュエータ100の伸縮時にロッド30の先端部分が径方向に振れることを防止することができる。
【0027】
ロッド30の中空部30Aには、複数の永久磁石31が軸方向に並んで保持される。永久磁石31は、円柱状に形成されており、軸方向にN極とS極が現れるように着磁されている。隣り合う永久磁石31は、同極同士が対向するように配置される。また、隣り合う永久磁石31の間には継鉄32が設けられる。なお、継鉄32は必ずしも設ける必要はなく、各永久磁石31を直接隣接するようにしてもよい。
【0028】
コイルホルダ40は、大径部42と小径部43を有する筒状部材である。大径部42の外径は、小径部43の外径より大きく形成される。大径部42の外周面42Aがベース部21の内周面21Bに嵌合して固定されることにより、コイルホルダ40がベース部21に片持ち支持される。ベース部21の内周面21Bの内径は、ベース部21の内周面21Aの内径より大きく形成される。
【0029】
コイルホルダ40のまわりに環状隙間8が設けられる。環状隙間8は、インナーチューブ22の内周面22Bとコイルホルダ40の小径部43の外周面43Bの間に設けられる。こうして、コイルホルダ40の外周とインナーチューブ22の内周とが互いに離して設けられることにより、リニアアクチュエータ100に横荷重を受けてアウターチューブ11及びインナーチューブ22が撓んでも、コイルホルダ40に応力が生じることを抑えられる。
【0030】
コイルホルダ40は、ロッド30を軸方向に挿通させる挿通孔44を有している。挿通孔44を構成する小径部43の内周面には環状凹部43Aが形成されており、この環状凹部43A内には複数のコイル41が固定されている。複数のコイル41は、永久磁石31に対向するように、軸方向に沿って並設されている。
【0031】
コイル41に通電される電流は、リニアアクチュエータ100の外部等に設置されるコントローラによって制御される。コントローラは、図示しない位置センサにより検出されるコイル41と永久磁石31との相対位置情報に基づいて、コイル41に通電する電流の大きさと方向を制御する。これにより、リニアアクチュエータ100が発生する推力と推力発生方向(伸縮方向)が調整される。
【0032】
なお、位置センサは、磁界の強度に応じたホール電圧を発生するホール素子であって、コイルホルダ40の大径部42内に埋め込まれている。
【0033】
リニアアクチュエータ100では、コイル41に所定方向の電流が通電されると、ロッド30を
図1において右方向に駆動する推力が発生する。ロッド30が右方向に駆動されると、第1チューブ10のアウターチューブ11が第2チューブ20のインナーチューブ22に対して摺動しながら右方向に移動して、リニアアクチュエータ100が伸長する。
【0034】
ガイドチューブ23の固定端には内側に突出する突出部23Aが形成されており、リニアアクチュエータ100が最大伸長位置(
図2参照)まで伸長すると、ロッドガイド50が突出部23Aの左側面に当接し、それ以上のロッド30の移動が規制される。このように、ロッドガイド50はストッパとして機能する。
【0035】
一方、コイル41に伸長時とは逆方向の電流が通電されると、ロッド30を
図2において左方向に駆動する推力が発生する。ロッド30が左方向に駆動されると、第1チューブ10のアウターチューブ11が第2チューブ20のインナーチューブ22に対して摺動しながら左方向に移動して、リニアアクチュエータ100が収縮する。
【0036】
リニアアクチュエータ100が最大収縮位置(
図1参照)まで収縮すると、アウターチューブ11の開口端がベース部21の右端部に当接し、それ以上のロッド30の移動が規制される。このように、アウターチューブ11の開口端はストッパとして機能する。
【0037】
リニアアクチュエータ100には、
図1に示すように、コイルホルダ40の一端と第1チューブ10のキャップ12の間の空間として第1室61が画成されており、コイルホルダ40の他端とガイドチューブ23内に配設されるロッドガイド50の間の空間として第2室62が画成されている。
【0038】
第1室61と第2室62とは、コイルホルダ40の挿通孔44を介して連通している。つまり、第1室61と第2室62とは、挿通孔44を構成するコイルホルダ40の内周とロッド30の外周面30Bとの間に形成される環状隙間63を通じて連通している。
【0039】
リニアアクチュエータ100の伸縮時に、第1、第2リニアガイド部19、29が互いに摺接することによって、第1チューブ10と第2チューブ20が軸方向に相対変位可能に支持される。第1チューブ10と第2チューブ20に働く横荷重が第1、第2リニアガイド部19、29の摺接部によって支持されることにより、第1チューブ10の内側に別部材として設けられる
ロッド30に応力が生じることを抑えられるとともに、第2チューブ20の内側に別部材として設けられる
コイルホルダ40に応力が生じることを抑えられる。
【0040】
コイルホルダ40の大径部42がベース部21を介してインナーチューブ22に連結され、コイルホルダ40の小径部43とインナーチューブ22の間に環状隙間8が設けられるため、横荷重によってアウターチューブ11及びインナーチューブ22が撓んでも、これらの歪みがコイルホルダ40に伝わることを抑えられる。これにより、コイルホルダ40に保持されるコイル41が損傷することを防止できる。
【0041】
ロッド30の一端がキャップ12を介してアウターチューブ11の端部に連結され、ロッド30の外周面30Bとコイルホルダ40の内周(挿通孔44)の間に環状隙間63が設けられるため、横荷重によってアウターチューブ11及びインナーチューブ22が撓んでも、これらの歪みがロッド30に伝わることを抑えられる。これにより、ロッド30に保持される永久磁石31が損傷することを防止できる。
【0042】
リニアアクチュエータ100の伸縮時に、コイル41に生じる熱は、コイルホルダ40、インナーチューブ22、アウターチューブ11へと伝わり、インナーチューブ22及びアウターチューブ11から外気へと逃がされる。
【0043】
上記の伝熱経路において、環状隙間8がコイルホルダ40とインナーチューブ22の間に設けられる空隙となるものの、環状隙間8の開口幅を小さく形成することにより、金属製のコイルホルダ40から金属製のインナーチューブ22への伝熱が十分に行われる。
【0044】
上記の伝熱経路において、アウターチューブ11の内周面11Aにインナーチューブ22の外周面22Aが互いに隙間なく対峙して摺動自在に嵌合し、アウターチューブ11とインナーチューブ22の間に空隙(環状隙間)が設けられないため、コイル41に生じる熱が、金属製のインナーチューブ22から金属製のアウターチューブ11へと直接伝わり、コイル41の放熱が促される。
【0045】
コイルホルダ40が連結されるインナーチューブ22の外側に、ロッド30が連結されるアウターチューブ11が配置されるため、リニアアクチュエータ100が伸長するのに伴ってインナーチューブ22の一部がアウターチューブ11の開口端からリニアアクチュエータ100の外部に露出し、外気への放熱が促される。
【0046】
なお、これに対して、コイルホルダが連結される第2筒状部材(インナーチューブ22に相当する)の内側に、ロッドが連結される第1筒状部材(アウターチューブ11に相当する)が配置される構造とした場合には、リニアアクチュエータが伸長するのに伴ってコイルホルダと第2筒状部材の間に空隙が設けられ、コイルの放熱性が損なわれる。
【0047】
上記した本実施形態によるリニアアクチュエータ100によれば、以下の効果を得ることができる。
【0048】
リニアアクチュエータ100では、第2チューブ20は、コイルホルダ40のまわりで軸方向に延びる円筒面状の第2リニアガイド部29を有し、第1チューブ10は、第2リニアガイド部29に隙間なく対峙して摺動自在に嵌合する円筒面状の第1リニアガイド部19を有するため、リニアアクチュエータ100に働く横荷重を第1、第2リニアガイド部19、29の摺接部が支持することより、第1チューブ10、第2チューブ20の内側にそれぞれ別部材として設けられるロッド30及びコイルホルダ40に応力が生じることを抑えられ、コイル41及び永久磁石31が損傷することを防止できる。そして、コイル41の熱がコイルホルダ40、第1チューブ10、第2チューブ20を介して伝わる伝熱経路が構成され、コイル41の放熱が十分に行われる。
【0049】
また、インナーチューブ22(第2チューブ20)の外側にアウターチューブ11(第1チューブ10)が配置され、第1リニアガイド部19は、アウターチューブ11の内周面11Aにより構成され、第2リニアガイド部29は、インナーチューブ22の外周面22Aにより構成されるため、リニアアクチュエータ100が伸長するのに伴ってインナーチューブ22の外周面22Aの一部がアウターチューブ11の開口端からリニアアクチュエータ100の外部に露出し、外気への放熱が促され、コイル41の放熱が十分に行われる。
【0050】
また、リニアアクチュエータ100では、第1リニアガイド部19は、インナーチューブ22の外周面22Aに摺接する第1軸受13の軸受面13Aを含み、第2リニアガイド部29は、アウターチューブ11の内周面11Aに摺接する第2軸受24の軸受面24Aを含むため、インナーチューブ22とアウターチューブ11とが滑らかに摺動する。
【0051】
また、リニアアクチュエータ100では、インナーチューブ22の内周とコイルホルダ40の外周の間に環状隙間8が設けられるため、アウターチューブ11及びインナーチューブ22が横荷重を受けて撓んでも、コイルホルダ40に応力が生じることを抑えられ、コイルホルダ40に保持されるコイル41が損傷することを防止できる。
【0052】
本発明は上記の実施形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【0053】
なお、上述した構成に限らず、リニアアクチュエータ100では、インナーチューブ22の内周とコイルホルダ40の外周の間に設けられる環状隙間8を廃止し、インナーチューブ22の内周とコイルホルダ40の外周とが隙間なく嵌合する構造としてもよい。
【0054】
この場合には、コイル41の熱がコイルホルダ40から空隙(環状隙間8)を介さずにインナーチューブ22へと直接伝わるため、コイル41の放熱が促される。また、アウターチューブ11及びインナーチューブ22が横荷重を受けて撓んでも、アウターチューブ11及びインナーチューブ22の剛性によってコイルホルダ40に応力が生じることを抑えられ、コイルホルダ40に保持されるコイル41が損傷することを防止できる。
【0055】
また、前記実施形態では、ロッド30が連結される第1チューブ10(アウターチューブ11)の内周に、コイルホルダ40が連結される第2チューブ20(インナーチューブ22)の
内周が摺動自在に嵌合する構成としたが、逆に、第2チューブ20の外周に、第1チューブ10の
外周が摺動自在に嵌合する構成としてもよい。