(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5997964
(24)【登録日】2016年9月2日
(45)【発行日】2016年9月28日
(54)【発明の名称】リードフレーム
(51)【国際特許分類】
H01L 23/50 20060101AFI20160915BHJP
【FI】
H01L23/50 R
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-172500(P2012-172500)
(22)【出願日】2012年8月3日
(65)【公開番号】特開2014-33061(P2014-33061A)
(43)【公開日】2014年2月20日
【審査請求日】2015年7月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000144038
【氏名又は名称】株式会社三井ハイテック
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
(72)【発明者】
【氏名】石橋 貴弘
【審査官】
小山 和俊
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−192509(JP,A)
【文献】
特開2007−281182(JP,A)
【文献】
特開2001−185671(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイパッドの周囲にインナーリードを備え、
前記インナーリードが外部電極部とハーフエッチングにより薄肉形成されたリード部とを有し、
前記リード部におけるボンディングエリア(A)の裏面には、前記リード部の両側から連続して実装面側に突出している突出部が形成され、前記リード部の中心線にそって窪みが形成されており、
前記リード部における前記ボンディングエリア(A)以外のその他のエリア(B)の裏面には、前記リード部の中心線に沿って実装面側に突出している突出部が形成され、前記リード部の幅方向の両側に沿って窪みが形成されていることを特徴とするリードフレーム。
【請求項2】
ダイパッドの周囲にインナーリードを備え、
前記インナーリードが外部電極部とハーフエッチングにより薄肉形成されたリード部とを有し、
前記リード部におけるボンディングエリア(A)の裏面には、前記リード部の両側から前記リード部の中心線に交わる方向に連続して実装面側に突出している突出部が形成され、
前記リード部における前記ボンディングエリア(A)以外のその他のエリア(B)の裏面には、前記リード部の両側から連続して実装面側に突出している突出部が形成されていることを特徴とするリードフレーム。
【請求項3】
ダイパッドの周囲にインナーリードを備え、
前記インナーリードが外部電極部とハーフエッチングにより薄肉形成されたリード部とを有し、
前記リード部におけるボンディングエリア(A)の裏面には、前記リード部の両側から前記リード部の中心線に交わる方向に連続して実装面側に突出している突出部が形成され、
前記リード部における前記ボンディングエリア(A)以外のその他のエリア(B)の裏面には、前記リード部の中心線に沿って実装面側に突出している突出部が形成されていることを特徴とするリードフレーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リードフレームに関し、詳しくは半導体の一形態であるQFN型パッケージに供されるリードフレームに関するものである。
【背景技術】
【0002】
リードフレームを製造するにあたっては、所定素材からなる薄い金属板をリードフレーム用材とし、これをエッチング手法を用いて加工しており、半導体チップが載置されるダイパッド部、このダイパッド部を囲むように配置されるインナーリード、このインナーリードに連続する電極端子部などを得るために、所定の形成パターンでレジスト剤を前記用材に施し、この後エッチング液によって不要部分を除去してリードフレームが得られている。
【0003】
昨今、リードフレームが超多ピンの半導体装置に対応できるようにとの要望を受けて、インナーリードのピッチを詰めてインナーリードの本数が多くなるようにとの試みがなされている。
【0004】
このようにインナーリードのピッチが小さいリードフレームを製造する場合には、用材のインナーリード形成部に対して、上下にパターン形成用のレジスト剤を施し、これをエッチングしてインナーリードを得るようにしている。
【0005】
そして、インナーリードの上面においては、ボンディングエリア(後工程において、半導体チップの電極とボンディングワイヤを接続するインナーリードの先端近傍の領域)を確保するために、ある程度のリード幅が必要であることから、リードフレーム裏面側からエッチングが速く進むように処理されている。
【0006】
上記半導体装置に用いるリードフレームのインナーリードを
図3(a)、(b)に示す。
【0007】
上述したように、リードフレーム裏面側からエッチングを入れるために、
図3(a)に示すように、インナーリード10のボンディングエリアを形成するリード部11の厚みが小さくなるとインナーリード10の剛性が低下し、ワイヤボンディング時にインナーリード10が曲がり、ボンディング不良を生じるという問題があった。(以下、上記した問題を「曲がり」と総称することとする)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003-188331
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特開2003-188331公報の構成によれば、
図3(b)に示すように、インナーリード10のリード部11の下面には裏面側に突出する盛り上がり12が形成されている。この盛り上がり12を形成することで、インナーリードの剛性を維持し、ワイヤボンディング時のインナーリードの曲がりを防止することができる。
【0010】
しかしながら、裏面側に盛り上がりが形成されたリード部11のボンディングエリアに正確にワイヤボンディングを行わないと、ワイヤが横にずれてしまい、ワイヤボンディング時にインナーリード10が横に反れたり、ねじれて転んだりし、ボンディング不良を生じるという問題があった。(以下、上記した問題を「転び」と総称することとする)
【0011】
本発明は、多ピン・狭ピッチに起因する「曲がり」の問題を解決しつつ、「転び」によるボンディング不良の発生を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するべく、請求項1の発明に係わるリードフレームは、ダイパッドの周囲にインナーリードを備え、
前記インナーリードが
外部電極部とハーフエッチングにより薄肉形成されたリード部とを有し、
前記リード部
におけるボンディングエリア(A)の裏面に
は、前記リード部の両側から連続して実装面側に突出し
ている突出部
が形成
され、前記リード部の中心線にそって窪みが形成されており、
前記リード部における前記ボンディングエリア(A)以外のその他のエリア(B)の裏面に
は、前記リード部の中心線に沿って実装面側に突出し
ている突出部が形成され
、前記リード部の幅方向の両側に沿って窪みが形成されている
。
【0013】
請求項2の発明に係わるリードフレームは、
ダイパッドの周囲にインナーリードを備え、
前記インナーリードが外部電極部とハーフエッチングにより薄肉形成されたリード部とを有し、
前記リード部におけるボンディングエリア(A)の裏面には、前記リード部の両側から前記リード部の中心線に交わる方向に連続して実装面側に突出している突出部が形成され、
前記リード部における前記ボンディングエリア(A)以外のその他のエリア(B)の裏面には、前記リード部の両側から連続して実装面側に突出している突出部が形成されている。
【0014】
請求項3の発明に係わるリードフレームは、
ダイパッドの周囲にインナーリードを備え、
前記インナーリードが外部電極部とハーフエッチングにより薄肉形成されたリード部とを有し、
前記リード部におけるボンディングエリア(A)の裏面には、前記リード部の両側から前記リード部の中心線に交わる方向に連続して実装面側に突出している突出部が形成され、
前記リード部における前記ボンディングエリア(A)以外のその他のエリア(B)の裏面には、前記リード部の中心線に沿って実装面側に突出している突出部が形成されている。
【0015】
【0016】
【発明の効果】
【0017】
インナーリードのエリア内において、ボンディングエリア(A)とその他のエリア(B)のリード裏面側の形状を異ならせる事で、インナーリードの「曲がり」と「転び」を防止し、ワイヤボンディング性を向上させることができる。
【0018】
さらに、インナーリードの剛性が増すことから、今後の更なるパッケージの薄型化、リードフレームの板厚の薄化の対応が可能になる。また、金ワイヤーだけでなく、銅ワイヤーを使用したワイヤボンディングも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】(a)は本発明のリードフレームを用いたQFN型パッケージの断面側面図、(b)は本発明のリードフレームを用いたQFN型パッケージの全体底面図。
【
図2】(a)は本発明に係るリードフレームを示す要部底面図、(b)は本発明に係るリードフレームの要部拡大図。
【
図3】(a)は従来のQFN型パッケージにおけるリードフレームの要部拡大図、(b)は(a)をA−A方向からみた側面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明のリードフレームおよびこれを用いた半導体装置を具体化した実施の形態につき添付した図面を参照しつつ具体的に説明する。
【0021】
図1は、本発明に係るリードフレームを適用した半導体装置であるQFN型パッケージの一例であり、このQFN型パッケージは、矩形平面形状に呈する封止体1を有し、この封止体1における実装面の中央域にはダイパッド2が露呈しており、さらに上記ダイパッド2の周囲には、所定個数の外部電極部3が所定位置に配置されつつ露呈している。
【0022】
上記QFN型パッケージを構成する、本発明に係るリードフレームは矩形状のダイパッド2と、該ダイパッド2の四方に形成された複数のインナーリード4とを具備しており、上記QFN型パッケージはダイパッド2に半導体チップ6を搭載し、該半導体チップ6の各電極とインナーリード4とをボンディングワイヤ7を介して接続したのち、樹脂封止して封止体1を型成形することによって製造されている。
【0023】
ここで、本発明に係るリードフレームは、上述した如くダイパッド2とインナーリード4とを具備しており、上記ダイパッド2は、矩形状を呈する全周に亘り、各辺から突出する薄肉のフランジ2aを有し、このフランジ2aはダイパッド2における半導体チップ6の搭載面と面一に形成されている。
【0024】
一方、上記リードフレームのインナーリード4は、外部電極部3と一体に形成された薄肉のリード部5とを有している。
【0025】
なお、上記インナーリード4のリード部5と上記ダイパッド2のフランジ2aとは、図中の下方側(QFN型パッケージで言えば、封止体の実装面側)からハーフエッチングによって薄肉形成されている。
【0026】
因みに、上記リードフレームは、図示していないサイドレール、タイバー、サポートバー等を備え、QFN型パッケージの製造途中においては、これらの部材によってダイパッドおよびインナーリードが支持されることは、従前からのリードフレームの構成と何ら変わるところはない。
【0027】
以下では、本発明の特徴である上記リードフレームのリード部5について詳細に説明する。
【0028】
リード部5は上述するように、外部電極
部3と一体に形成され、かつ薄肉に形成されている。
図2(a)に示すように、リード部5は半導体チップ6の各電極とボンディングワイヤ7によって電気的に接続されるボンディングエリアAと、その他のエリアBからなり、このリード部5の裏面側からリードフレーム板厚の10〜30パーセント(好ましくは15〜25パーセント)程度突出する突出部8を形成することで、インナーリード4の「曲がり」と「転び」を防止することを特徴としている。
【0029】
すなわち
図2(b)に示すように、ボンディングエリアAの裏面に実装面側に突出する転び防止形状の突出部8a、8bを形成し、その他のエリアBの裏面には実装面側に突出する曲がり防止形状の突出部8c、8dを形成する。
【0030】
このリード部5の形成方法は、リード部5をエッチングで薄肉形成する際に、裏面側に微細なレジストパターンを残しておくことで容易に突出部8を形成することができる。また、レジストパターンが施されていない箇所は、エッチングによってリードフレームが浸食され窪み9が形成される。このようにして、突出部8と窪み9を備えたリード部5が形成される。
【0031】
本発明による第1の実施の形態のリードフレームは、
図2(a)に示すように、突出部8がリード5幅方向の両側から連続して突出し、インナーリード4(リード部5)の中
心線Sに沿って窪み9が形成されている。
図2(b)で説明すると、ボンディングエリアAとその他のエリアB両方に同一の形状の突出部8a、8cと窪み9a、9cが形成される。このように突出部8aをリード5の両側から連続して突出させ、中央に窪み9aを形成することで、ボンディングエリアAでのインナーリード4の転びを防止することができる。また、その他のエリアBで突出部8cをリード5cの両側から連続して突出させ、リード5cの中心線Sに沿って窪み9cを形成することで、その他のエリアBでのインナーリード4の曲がりを防止することができる。
【0032】
次に、本発明による第2の実施の形態のリードフレームについて説明する。この例では、
図2(b)に示すように、ボンディングエリアAには突出部8aがリード5の両側から連続して突出し、インナーリード4(リード部5a)の中
心線Sに沿って窪み9aが形成されている。その他のエリアBにはリード5dの中心線Sに沿って突出部8dが形成され、リード5d幅方向の両側に中心線Sに沿って窪み9dが形成されている。かかる構成によれば、ボンディングエリアAでインナーリード4の転びを防止し、その他のエリアBでインナーリード4の曲がりを防止することができる。
【0033】
次に、本発明による第3の実施の形態のリードフレームについて説明する。この例では、
図2(b)に示すように、ボンディングエリアAには突出部8bがリード5bの両側からリード5bの中心線Sと交わる方向に亘って連続して突出している。その他のエリアBには突出部8cをリード
5cの両側から連続して突出し、リード部5cの中心線Sに沿って窪み9cが形成されている。かかる構成によれば、ボンディングエリアAでインナーリード4の転びを防止し、その他のエリアBでインナーリード4の曲がりを防止することができる。
【0034】
次に、本発明による第4の実施の形態のリードフレームについて説明する。この例では、
図2(b)に示すように、ボンディングエリアAには突出部8bがリード5bの両側からリード5bの中心線Sと交わる方向に亘って連続して突出し、その他のエリアBには突出部8dをリード5dの中心線Sに沿って突出し、リード5dの両側にリード5dの中心線Sに沿って窪み9dが形成されている。かかる構成によれば、ボンディングエリアAでインナーリード4の転びを防止し、その他のエリアBでインナーリード4の曲がりを防止することができる。
【符号の説明】
【0035】
S:中心線、1:封止体、2:ダイパッド、3:
外部電極部、4:インナーリード、5:リード部、5a:リード部、5b:リード部、5c:リード部、5d:リード部、6:半導体チップ、7:ボンディングワイヤ、8:突出部、8a:突出部、8b:突出部、8c:突出部、8d:突出部、9:窪み、9a:窪み、9b:窪み、9c:窪み、9d:窪み、10:インナーリード、11:リード部、12:盛り上がり