特許第5997967号(P5997967)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5997967熱源装置及びその熱源装置を備えた温水暖房設備
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5997967
(24)【登録日】2016年9月2日
(45)【発行日】2016年9月28日
(54)【発明の名称】熱源装置及びその熱源装置を備えた温水暖房設備
(51)【国際特許分類】
   F24D 3/00 20060101AFI20160915BHJP
   F24D 3/10 20060101ALI20160915BHJP
【FI】
   F24D3/00 X
   F24D3/10 B
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-173079(P2012-173079)
(22)【出願日】2012年8月3日
(65)【公開番号】特開2014-31965(P2014-31965A)
(43)【公開日】2014年2月20日
【審査請求日】2015年7月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】390002886
【氏名又は名称】株式会社長府製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
(74)【代理人】
【識別番号】100176142
【弁理士】
【氏名又は名称】清井 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100127155
【弁理士】
【氏名又は名称】来田 義弘
(74)【代理人】
【識別番号】100163267
【弁理士】
【氏名又は名称】今中 崇之
(72)【発明者】
【氏名】原田 英司
(72)【発明者】
【氏名】安藤 功
【審査官】 渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】 実公平04−052572(JP,Y2)
【文献】 特開平06−241573(JP,A)
【文献】 特開昭52−139250(JP,A)
【文献】 特開2004−169980(JP,A)
【文献】 特開2003−294256(JP,A)
【文献】 実開平07−026660(JP,U)
【文献】 実開昭56−082407(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24D 3/00− 3/18
F24H 1/00
F24H 4/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部流路を介して放熱器に接続された熱源装置において、
前記外部流路と一体となって循環水が流れる循環回路を形成する内部流路と、
前記内部流路に設けられ、前記循環水を前記循環回路内で流動させる循環ポンプと、
前記循環水を加熱する昇温手段と、
前記内部流路内の前記循環ポンプの下流側にある前記循環水を該内部流路の該循環ポンプの上流側に案内するバイパス管と、
前記循環水が出入りする流出入部を、直接、前記バイパス管に連結し、前記循環回路内の圧力を調整する膨張タンクとを有し、
前記バイパス管の一端部は、前記内部流路の一端部に接続され、該バイパス管の他端部は、該内部流路の他端部に接続され、前記流出入部は、該バイパス管の一端部と他端部の中間にのみ連結され、
前記循環ポンプ及び前記昇温手段を作動し、該昇温手段によって加熱した前記循環水を前記循環回路内と前記バイパス管内で流動させて該循環回路内と該バイパス管内の該循環水の凍結を防止することを特徴とする熱源装置。
【請求項2】
請求項1記載の熱源装置において、前記バイパス管の配管抵抗は、前記膨張タンクの流出入部が該バイパス管に連結された位置Qから上流側が、該位置Qから下流側に比べて大きいことを特徴とする熱源装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の熱源装置において、上面パネルを有し、前記膨張タンク、前記昇温手段、前記循環ポンプ、前記内部流路及び前記バイパス管を収容する筺体を備え、前記膨張タンクは、前記昇温手段及び前記循環ポンプが設けられたスペースの上側に配置され、前記上面パネルを取り外すことで視認される状態になることを特徴とする熱源装置。
【請求項4】
請求項1〜のいずれか1項に記載の熱源装置において、前記バイパス管は、全部又は一部が可撓管であることを特徴とする熱源装置。
【請求項5】
放熱器と流路Aを介して前記放熱器に接続された熱源装置とを備えた温水暖房設備において、
前記熱源装置は、
前記流路Aと一体となって循環水が流れる循環回路を形成する流路Bと、
前記流路Bに設けられ、前記循環水を前記循環回路内で流動させる循環ポンプと、
前記循環水を加熱する昇温手段と、
前記流路B内の前記循環ポンプの下流側にある前記循環水を該流路Bの該循環ポンプの上流側に案内するバイパス管と、
前記循環水が出入りする流出入部を、直接、前記バイパス管に連結し、前記循環回路内の圧力を調整する膨張タンクとを有し、
前記バイパス管の一端部は、前記流路Bの一端部に接続され、該バイパス管の他端部は、該流路Bの他端部に接続され、前記流出入部は、該バイパス管の一端部と他端部の中間にのみ連結され、
前記循環ポンプ及び前記昇温手段を作動し、該昇温手段によって加熱した前記循環水を前記循環回路内と前記バイパス管内で流動させて該循環回路内と該バイパス管内の該循環水の凍結を防止することを特徴とする温水暖房設備。
【請求項6】
請求項記載の温水暖房設備において、前記バイパス管の配管抵抗は、前記膨張タンクの流出入部が該バイパス管に連結された位置Qから上流側が、該位置Qから下流側に比べて大きいことを特徴とする温水暖房設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、循環水を加熱し放熱器に供給する熱源装置とその熱源装置を備えた温水暖房設備に関する。
【背景技術】
【0002】
外部流路を介して放熱器に接続された熱源装置には、外部流路と一体となって密閉式の循環回路を形成する内部流路を備えたものがある。循環回路内を流れる循環水は、熱源装置で加熱された後に放熱器に送られ、放熱器を通過後に熱源装置に戻って再び加熱され放熱器に送られるので、放熱器に対して加熱された循環水が連続的に供給される。
放熱器は、例えば、貯湯タンク内に設けられた熱交換器や、床暖房用の暖房パネルや、床上に立設される暖房パネルであり、循環回路には、放熱器に循環水を送るための循環ポンプが設けられている。
【0003】
ところで、循環水は、温度の上昇によって膨張し、温度の降下によって収縮する。このため、密閉式の循環回路内の圧力は、循環水の温度変化によって変動し、循環回路を形成する管や部材に負荷を与えて損傷をもたらすおそれがある。これを解決するには、循環回路に、循環水の膨張及び収縮を吸収する膨張タンクを設けるのが有効であり、その具体例が特許文献1に記載されている。膨張タンクは、連結管を介して循環回路に接続され、循環水が膨張して循環回路内の圧力が上昇すると循環回路内の循環水が連結管を通って膨張タンク内に流入し、循環水が収縮して循環回路内の圧力が下がると膨張タンク内の循環水が連結管を通って循環回路内に送り出される。従って、循環回路内の圧力は所定の範囲内で保たれることになる。
【0004】
また、循環水は温度が氷点下になると凍結するので、熱源装置を屋外に設置する場合、熱源装置に循環水の凍結を防止する機能を設ける必要がある。循環水の凍結は、循環回路を形成する管や部材の損傷を招くためである。
熱源装置は、例えば、外気が所定の温度以下になったのを検出した際に、循環ポンプの作動と循環水の加熱をする凍結予防運転を行い、加熱された循環水を循環回路内で流動させ、循環水の凍結を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−53833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の熱源装置は、循環回路内の圧力が変わらない場合、膨張タンクに対して循環水が出入りしないので、循環回路内の圧力に変動がない状態で凍結予防運転を行っても、膨張タンク内や連結管内にある循環水の凍結を防ぐことができない。膨張タンク内の循環水については、膨張タンクにヒータを設けることで、凍結を防止することはできるが、膨張タンクに加えて、連結管にもヒータを設けると、熱源装置の製造コストが上昇するので好ましくない。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされるもので、膨張タンクを除き、ヒータを設けることなく、循環水の凍結を防止する熱源装置とその熱源装置を備えた温水暖房設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的に沿う第1の発明に係る熱源装置は、外部流路を介して放熱器に接続された熱源装置において、前記外部流路と一体となって循環水が流れる循環回路を形成する内部流路と、前記内部流路に設けられ、前記循環水を前記循環回路内で流動させる循環ポンプと、前記循環水を加熱する昇温手段と、前記内部流路内の前記循環ポンプの下流側にある前記循環水を該内部流路の該循環ポンプの上流側に案内するバイパス管と、前記循環水が出入りする流出入部を、直接、前記バイパス管に連結し、前記循環回路内の圧力を調整する膨張タンクとを有し、前記バイパス管の一端部は、前記内部流路の一端部に接続され、該バイパス管の他端部は、該内部流路の他端部に接続され、前記流出入部は、該バイパス管の一端部と他端部の中間にのみ連結され、前記循環ポンプ及び前記昇温手段を作動し、該昇温手段によって加熱した前記循環水を前記循環回路内と前記バイパス管内で流動させて該循環回路内と該バイパス管内の該循環水の凍結を防止する。
【0008】
【0009】
第1の発明に係る熱源装置において、前記バイパス管の配管抵抗は、前記膨張タンクの流出入部が該バイパス管に連結された位置Qから上流側が、該位置Qから下流側に比べて大きいのが好ましい。
【0010】
第1の発明に係る熱源装置において、上面パネルを有し、前記膨張タンク、前記昇温手段、前記循環ポンプ、前記内部流路及び前記バイパス管を収容する筺体を備え、前記膨張タンクは、前記昇温手段及び前記循環ポンプが設けられたスペースの上側に配置され、前記上面パネルを取り外すことで視認される状態になるのが好ましい。
【0011】
第1の発明に係る熱源装置において、前記バイパス管は、全部又は一部が可撓管であるのが好ましい。
【0012】
前記目的に沿う第2の発明に係る温水暖房設備は、放熱器と流路Aを介して前記放熱器に接続された熱源装置とを備えた温水暖房設備において、前記熱源装置は、前記流路Aと一体となって循環水が流れる循環回路を形成する流路Bと、前記流路Bに設けられ、前記循環水を前記循環回路内で流動させる循環ポンプと、前記循環水を加熱する昇温手段と、前記流路B内の前記循環ポンプの下流側にある前記循環水を該流路Bの該循環ポンプの上流側に案内するバイパス管と、前記循環水が出入りする流出入部を、直接、前記バイパス管に連結し、前記循環回路内の圧力を調整する膨張タンクとを有し、前記バイパス管の一端部は、前記流路Bの一端部に接続され、該バイパス管の他端部は、該流路Bの他端部に接続され、前記流出入部は、該バイパス管の一端部と他端部の中間にのみ連結され、前記循環ポンプ及び前記昇温手段を作動し、該昇温手段によって加熱した前記循環水を前記循環回路内と前記バイパス管内で流動させて該循環回路内と該バイパス管内の該循環水の凍結を防止する。
【0013】
【0014】
第2の発明に係る温水暖房設備において、前記バイパス管の配管抵抗は、前記膨張タンクの流出入部が該バイパス管に連結された位置Qから上流側が、該位置Qから下流側に比べて大きいのが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
第1の発明に係る熱源装置及び第2の発明に係る温水暖房設備は、内部流路(流路B)内の循環ポンプの下流側にある循環水を内部流路の循環ポンプの上流側に案内するバイパス管と、循環水が出入りする流出入部を、直接、バイパス管に連結し、循環回路内の圧力を調整する膨張タンクとを有し、循環ポンプ及び昇温手段を作動し、昇温手段によって加熱した循環水を循環回路内とバイパス管内で流動させて循環回路内とバイパス管内の循環水の凍結を防止する。従って、膨張タンクとバイパス管の間に、循環ポンプが作動の際に循環水が流動しない管は存在せず、膨張タンクを除いて、ヒータを設けることなく循環水の凍結を防止することができる。
【0016】
第1の発明に係る熱源装置及び第2の発明に係る温水暖房設備、バイパス管の一端部が、内部流路(流路B)の一端部に接続され、バイパス管の他端部が、内部流路の他端部に接続されるので、外部流路(流路A)が閉じられて外部流路内で循環水が流動しない状態で、循環ポンプを作動した際に、バイパス管内の全体及び内部流路内の全体、もしくは、バイパス管内の全体及び内部流路内の大部分で、循環水が流動し凍結を防止可能である。
【0017】
第1の発明に係る熱源装置及び第2の発明に係る温水暖房設備において、膨張タンクの流出入部をバイパス管に連結した位置Qから上流側のバイパス管の配管抵抗が、位置Qから下流側のバイパス管の配管抵抗に比べて大きい場合、膨張タンクによる循環回路内の圧力調整と放熱器での放熱とを安定的に行うことが可能である。これは、実験的検証によって確認されている。
【0018】
第1の発明に係る熱源装置において、筐体内で、膨張タンクが昇温手段及び循環ポンプを設けたスペースの上側に配置され、上面パネルを取り外すことで視認される状態になる場合、膨張タンクの取り外しを容易に行うことができる。
【0019】
第1の発明に係る熱源装置において、バイパス管の全部又は一部が可撓管である場合、膨張タンクをバイパス管に連結した状態で、膨張タンクを移動することができ、膨張タンクの下側にある機器や部材の取り外しや、点検を容易に行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施の形態に係る熱源装置の回路図である。
図2】暖房運転時及び凍結予防運転時における循環水及び熱媒の流れを示す説明図である。
図3】筺体内での膨張タンクの収容状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1に示すように、本発明の一実施の形態に係る熱源装置10は、外部流路11(流路A)を介して放熱器16に接続される装置であって、外部流路11と一体となって循環水が流れる循環回路12を形成する内部流路13(流路B)と、循環水を循環回路12内で流動させる循環ポンプ14と、循環水を加熱する昇温手段15とを備えている。以下、これらについて詳細に説明する。
【0022】
昇温手段15は、図1に示すように、熱媒(例えばフロン410A)が循環する熱媒循環回路17と、この熱媒循環回路17によって接続された膨張弁18、蒸発器19、圧縮機20及び放熱器21とを備えている。
熱交換器である放熱器21は、熱媒循環回路17に接続され、更に、循環水が流れる内部流路13にも接続されている。熱媒循環回路17内を流れる熱媒は、放熱器21を通過の際に凝縮して内部流路13内を流れる循環水に熱を与えて加熱する。なお、熱媒循環回路17を循環する熱媒がCOの場合、熱媒は、超臨界流体の状態で放熱器21に送られ、超臨界流体の状態で放熱器21から送り出されるので、放熱器21を通過の際に凝縮しない。
【0023】
放熱器21を通過した熱媒は、図2に示すように、膨張弁18に向かい、膨張弁18を通過して膨張した後、熱交換器である蒸発器19に送られる。
蒸発器19は、蒸発器19を通過中の熱媒と外気を熱交換する。熱媒は、蒸発器19を通過の際に、外気から熱を吸収し蒸発してガス状となり、蒸発器19から送り出される。なお、蒸発器19の近傍には、図1に示すように、熱媒の蒸発を促進するプロペラファン22が設けられ、プロペラファン22の作動により、蒸発器19に外気が供給される。
【0024】
熱媒循環回路17には、蒸発器19の下流側、かつ、圧縮機20の上流側に、気液混合状態の熱媒から液状の熱媒を取り除くアキュームレータ23が取り付けられている。熱媒は、蒸発器19での蒸発が緩やかに進行すると、ガスと液体が混ざった気液混合状態で蒸発器19から出ることになる。
アキュームレータ23は、アキュームレータ23に気液混合状態の熱媒が流入した際に、気液混合状態の熱媒から液状の熱媒を取り除き、ガス状の熱媒のみが圧縮機20に供給されるようにする。アキュームレータ23に蓄えられた液状の熱媒は、時間の経過と共に蒸発しガス状となって、圧縮機20に供給される。
【0025】
圧縮機20に送られた熱媒は、図2に示すように、圧縮機20により圧縮され高温高圧状態となって、放熱器21に送られ、循環回路12を循環している循環水を加熱する。
圧縮機20は、インバータ制御されており、このインバータの出力値を変えることで運転周波数を調整する。放熱器21に供給される熱媒が内部流路13を流れる循環水を加熱する能力は、圧縮機20の運転周波数が上がると高くなり、圧縮機20の運転周波数が下がると低くなる。
熱媒循環回路17内の熱媒は、圧縮機20が作動することによって、熱媒循環回路17内を流動する。
【0026】
圧縮機20には、図1に示すように、膨張弁18及びプロペラファン22に接続された制御部24が接続されている。圧縮機20は、制御部24から圧縮機20に送信される指令信号に従って、インバータの出力値を変え運転周波数の上げ下げを行う。
制御部24は、例えば、マイクロコンピュータによって構成され、圧縮機20の運転周波数を決定するプログラムをはじめとする種々のプログラムを搭載している。
【0027】
放熱器21に接続された内部流路13は、昇温手段15(即ち、熱媒循環回路17、膨張弁18、蒸発器19、プロペラファン22、圧縮機20、アキュームレータ23及び放熱器21)及び制御部24と共に、筺体25内に収容されている。
内部流路13及び外部流路11は共に有端であり、内部流路13の両端部にはそれぞれ、接続具26、27が取り付けられ、内部流路13の両端部は、外部流路11の両端部にそれぞれ接続されている。内部流路13は、筺体25の外に配置された外部流路11に接続され、外部流路11と一体となって、循環水が循環する循環回路12を形成している。
【0028】
内部流路13には、循環ポンプ14が取り付けられ、循環回路12内の循環水は、循環ポンプ14の作動により循環回路12内を流動する。本実施の形態では、循環回路12内の循環水の流れに沿って、接続具26の上流側に放熱器21があり、放熱器21の上流側に循環ポンプ14があり、循環ポンプ14の上流側に接続具27が配置されている。
外部流路11には、暖房用のパネルとして用いられる放熱器16が設けられ、放熱器21を通過して加熱された循環水は、放熱器16に送られ、放熱器16を通過の際に放熱する。
放熱器16は、床下に設置されることによって床を暖める床暖房用として用いられ、床上に立設されることによって室内の空気を暖める暖房器具として用いられる。
【0029】
内部流路13には、循環ポンプ14の上流側及び放熱器21の下流側に温度センサ28、28aがそれぞれ設けられている。温度センサ28、28aは、循環ポンプ14と共に制御部24に接続されている。制御部24は、放熱器16を通過して温度が低下した循環水の温度を温度センサ28を介して検出し、放熱器21を通過して温度が上昇した循環水の温度を温度センサ28aを介して検出する。
制御部24は、図示しない操作盤からの入力操作によって設定された暖房温度と温度センサ28aの計測温度とを比較した結果を基に、圧縮機20の運転周波数を決定し、温度センサ28aの計測温度を暖房温度に近づける。
【0030】
内部流路13には、外部流路11が閉じられた状態でも循環ポンプ14が循環水を送り続けられるようにするバイパス管29が接続されている。
本実施の形態では、バイパス管29は、一端部29aが、内部流路13の一端部に接続され、他端部29bが、内部流路13の他端部に接続されている。
バイパス管29の内部流路13への接続位置は、これに限定されず、バイパス管29の一端部29aが循環ポンプ14の下流側で内部流路13に接続され、バイパス管29の他端部29bが循環ポンプ14の上流側で内部流路13に接続されて、循環ポンプ14の下流側にある循環水を循環ポンプ14の上流側に案内できればよい。例えば、バイパス管29の一端部29aを循環ポンプ14と放熱器21の間で内部流路13に接続し、バイパス管29の他端部29bを温度センサ28と循環ポンプ14の間で内部流路13に接続することもできる。
【0031】
図1では、記載を省略しているが、外部流路11には外部流路11を閉じて外部流路11内の循環水が流動しないようにする開閉弁が設けられている。この開閉弁を閉じた状態で、循環ポンプ14を作動させると、循環ポンプ14から送り出された循環水は、放熱器21及びバイパス管29を経由して循環ポンプ14に戻るので、循環ポンプ14は循環水を送り続けることができる。
循環ポンプ14は、循環水を送り出せない状態で作動を続けると、温度が上昇して不具合が生じるおそれがある。従って、バイパス管29を設けることによって、循環ポンプ14が外部流路11に循環水を送り出せない状態でも作動を続け循環ポンプ14に不具合が生じるのを防ぐことができる。
【0032】
循環ポンプ14及び圧縮機20は、暖房運転時に作動し、図2に示すように、循環回路12内に循環水を循環させ、熱媒循環回路17内に熱媒を循環させる。このようにすることによって、熱媒循環回路17内を循環する熱媒は放熱器21を通過中の循環水を連続的に加熱し、循環ポンプ14は放熱器21を通過して暖められた循環水を放熱器16に連続的に供給することができる。
暖房運転時は、循環回路12に加えて、バイパス管29にも放熱器21を通過して加熱された循環水が流れることになり、放熱器21を通過した循環水は、バイパス管29の一端部29aから他端部29bに向かって送られる。
【0033】
また、バイパス管29には、図1に示すように、循環回路12内の圧力を調整する膨張タンク30が取り付けられている。
循環水は循環水の温度変化によって体積が増減し、循環水の体積の増減に伴い循環回路12内の圧力が変動する。膨張タンク30は、この循環水の体積の増減を吸収して、循環回路12内の圧力を所定の範囲内で保ち、循環回路12を構成する部材に損傷が生じるのを防止する。
【0034】
膨張タンク30は、循環水が出入りする流出入部30aを備え、この流出入部30aが、直接、バイパス管29に連結されている。即ち、ゴムホース等の連結管を介在せずに、直接、膨張タンク30をバイパス管29に接続している。
循環回路12内の循環水が膨張すると、バイパス管29内の循環水が流出入部30aを介して膨張タンク30内に流入し、循環回路12内の循環水が収縮すると、膨張タンク30内に蓄えられていた循環水が流出入部30aを通ってバイパス管29に送り出されるので、循環回路12及びバイパス管29内の圧力は所定の範囲内で保たれる。
【0035】
膨張タンク30には、ヒータ31が取り付けられ、膨張タンク30内に蓄えられた循環水が外気温度の低下によって凍結するのを回避している。ヒータ31は制御部24に接続され、制御部24から送信される指令信号によって作動を開始する。
制御部24には、外気温度を計測する温度センサ32が接続され、制御部24は、温度センサ32を介して検出した外気温度が所定の温度(本実施の形態では、2℃)以下の際に、ヒータ31を作動させる。
ヒータ31及び温度センサ32は、循環ポンプ14、温度センサ28、28a、バイパス管29及び膨張タンク30と共に筺体25内に配置されている。
【0036】
本実施の形態では、昇温手段15は、主として、熱媒循環回路17、膨張弁18、蒸発器19、プロペラファン22、圧縮機20、アキュームレータ23及び放熱器21によって構成され、熱源装置10は、主として、昇温手段15、内部流路13、循環ポンプ14、制御部24、バイパス管29、膨張タンク30、ヒータ31、筺体25、接続具26、27及び温度センサ28、28a、32によって構成されている。
そして、温水暖房設備40が、主として、熱源装置10、外部流路11及び放熱器16によって構成されている。
【0037】
また、暖房運転が行われていない状態、即ち、昇温手段15によって加熱された循環水が循環回路12及びバイパス管29内で流動していない状態で、外気温度が所定の温度(例えば、0℃)以下になると、循環回路12内及びバイパス管29内の循環水が凍結するおそれが生じる。
そこで、制御部24は、暖房運転を行っていない状態で、温度センサ32によって計測される外気温度が予め定められた温度T1(本実施の形態では、温度T1=2℃)以下であるのを検知した際に、凍結予防運転を開始して、循環回路12内及びバイパス管29内の循環水の凍結を防止する。
【0038】
凍結予防運転は、循環ポンプ14及び昇温手段15を作動することによって行われる。
制御部24は、温度センサ32の計測温度が温度T1以下であるのを検出すると、循環ポンプ14、圧縮機20及びプロペラファン22を作動させて、図2に示すように、循環回路12内及びバイパス管29内の循環水と熱媒循環回路17内の熱媒とを流動させる。
圧縮機20は、凍結予防運転の際、消費電力量を抑制すべく、最小レベルの運転周波数で運転を行う。
【0039】
循環ポンプ14、圧縮機20及びプロペラファン22の作動により、放熱器21によって加熱した循環水が循環回路12内及びバイパス管29内で流動するので、循環回路12及びバイパス管29内の循環水の凍結を防止することができる。
凍結予防運転は、温度センサ28aの検出温度が予め定められた温度T2(本実施の形態では、温度T2=4℃)になるまで続けられる。なお、循環回路12内及びバイパス管29内の循環水の凍結を防止するための方法は、本実施の形態に記載されたものに限定されない。
【0040】
ここで、膨張タンク30は、流出入部30aが、直接、バイパス管29に連結されているので、凍結予防運転中、循環水は、膨張タンク30内に蓄えられているものを除き、バイパス管29又は循環回路12を流動して放熱器21を通過し加熱されることになる。
そして、膨張タンク30内の循環水はヒータ31によって暖められるので、全ての循環水(即ち、膨張タンク30内にある循環水、循環回路12内を流動する循環水及びバイパス管29内を流動する循環水)は、凍結が防止された状態となる。
【0041】
これに対し、仮に、連結管を介して、膨張タンク30が、バイパス管29又は内部流路13に接続されていると、連結管内にある循環水は、凍結予防運転中、その場で留まり(流動せず)、放熱器21によって加熱されず凍結のおそれが生じる。
また、バイパス管29は、一端部29aが、内部流路13の一端部に接続され、他端部29bが、内部流路13の他端部に接続されているので、仮に、外部流路11が閉じられ外部流路11内を循環水が流動できない状態であっても、凍結予防運転により、少なくとも、内部流路13内の全ての循環水とバイパス管29内の全ての循環水の凍結を防ぐことができる。
【0042】
膨張タンク30の流出入部30aがバイパス管29に連結された位置を位置Qとして、バイパス管29の配管抵抗は、バイパス管29内の循環水の流れに沿って、位置Qの上流側が、位置Qの下流側に比べて大きい。
バイパス管29の配管抵抗をこのようにすることにより、暖房運転時に、放熱器21を通過した循環水の多くをバイパス管29に向かわせることなく、放熱器16に向かわせることができ、かつ、膨張タンク30が安定的に循環回路12内の圧力を所定範囲内で保てることが、実験的検討によって確認されている。放熱器21によって加熱された循環水でバイパス管29に流入する量が増加すると、放熱器16による暖房効率が低下するので、暖房運転時は、バイパス管29に流入する循環水の量を少なくするのが望ましい。
【0043】
本実施の形態では、位置Qがバイパス管29の一端部29aと他端部29bの中間に位置し、バイパス管29の一端部29aの内径R1(R1は1mm以上3mm以下)を、バイパス管29の他端部29bの内径R2(R2は3mm以上5mm以下)より細くすることによって、バイパス管29の位置Qの上流側の配管抵抗が、バイパス管29の位置Qの下流側の配管抵抗より大きくなるようにしているが、これに限定されない。例えば、バイパス管29の内径を等しくし、位置Qをバイパス管29の下流側に配置するようにして、バイパス管29の位置Qの上流側の配管抵抗を、バイパス管29の位置Qの下流側の配管抵抗より大きくするようにしてもよい。
【0044】
また、筺体25は、図3に示すように、上面パネル33を備え、筺体25内には、昇温手段15、循環ポンプ14及び内部流路13が設けられたスペースの上側に上部開放型のタンク用容器34が配置されている。
膨張タンク30は、タンク用容器34に納められた状態で、筺体25内に収容されて、昇温手段15、循環ポンプ14及び内部流路13が設けられたスペースの上側に配置されている。膨張タンク30は上面パネル33が取り外されることによって全体が上方から視認可能な状態になるので、上面パネル33を取り外すことで、膨張タンク30の筺体25からの取り出しと、膨張タンク30の筺体25内への設置を容易に行うことができる。
【0045】
なお、図3においては、筺体25内に収容されるアイテムは、膨張タンク30、タンク用容器34及び蒸発器19を除き記載を省略している。
バイパス管29は、一部又は全部が可撓管である(本実施の形態ではゴムホース)ので、バイパス管29を膨張タンク30に取り付けた状態で膨張タンク30を移動することができる。従って、作業者は、膨張タンク30をバイパス管29に接続した状態で膨張タンク30を動かし、膨張タンク30の下側にある機器や部材を取り外したり、点検したりすることが可能である。可撓管は、ゴムホースに限定されず、金属フレキシブル管であってもよい。
【0046】
膨張タンク30は、工場出荷時にバイパス管29に連結され、筺体25内に収容された状態で工場から出荷させる。膨張タンクには、外部流路に取り付けられる外付けタイプもあるが、外付けタイプのものは、温水暖房設備を設置する現場において取り付け作業を行う必要があり、温水暖房設備の設置に要する時間が長くなる。
そして、蒸発器に外気を供給する外気供給口は、一般的に、筺体の側壁部に設けられるが、膨張タンクが、筺体の外側に配置され筺体の側壁部に取り付けられるタイプであると、この外気供給口の形成位置を制限することになり好ましくない。
【0047】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、上記した形態に限定されるものでなく、要旨を逸脱しない条件の変更等は全て本発明の適用範囲である。
例えば、循環水を加熱する昇温手段は、燃焼バーナであってもよい。
また、放熱器は、暖房用のパネルに限定されず、貯湯タンク内に設けられ、貯湯タンク内の水を沸き上げる熱交換器であってもよい。
【符号の説明】
【0048】
10:熱源装置、11:外部流路、12:循環回路、13:内部流路、14:循環ポンプ、15:昇温手段、16:放熱器、17:熱媒循環回路、18:膨張弁、19:蒸発器、20:圧縮機、21:放熱器、22:プロペラファン、23:アキュームレータ、24:制御部、25:筺体、26、27:接続具、28、28a:温度センサ、29:バイパス管、29a:一端部、29b:他端部、30:膨張タンク、30a:流出入部、31:ヒータ、32:温度センサ、33:上面パネル、34:タンク用容器、40:温水暖房設備
図1
図2
図3