(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5997975
(24)【登録日】2016年9月2日
(45)【発行日】2016年9月28日
(54)【発明の名称】フロキュレータ
(51)【国際特許分類】
B01D 21/01 20060101AFI20160915BHJP
B01F 3/12 20060101ALI20160915BHJP
B01F 15/00 20060101ALI20160915BHJP
B01F 7/04 20060101ALI20160915BHJP
B01F 7/00 20060101ALI20160915BHJP
【FI】
B01D21/01 D
B01F3/12
B01F15/00 A
B01F7/04 A
B01F7/00 Z
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-185226(P2012-185226)
(22)【出願日】2012年8月24日
(65)【公開番号】特開2014-42864(P2014-42864A)
(43)【公開日】2014年3月13日
【審査請求日】2015年8月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000193508
【氏名又は名称】水道機工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126424
【弁理士】
【氏名又は名称】長島 繁樹
(72)【発明者】
【氏名】矢田 修平
(72)【発明者】
【氏名】吉川 利彦
(72)【発明者】
【氏名】谷田部 芳男
【審査官】
小出 直也
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−017637(JP,A)
【文献】
実開昭63−027718(JP,U)
【文献】
特開2007−229668(JP,A)
【文献】
特開2010−029828(JP,A)
【文献】
特開平10−274237(JP,A)
【文献】
特開2007−247849(JP,A)
【文献】
米国特許第05846413(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 21/00−21/34
B01F 1/00−7/32
B01F 15/00−15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水処理施設で使用され、本体が積層式樹脂材料で成形されている撹拌軸と、固定アームを介して前記撹拌軸に結合している撹拌板を備え、前記撹拌軸が水中軸受で支持されているフロキュレータにおいて、
前記水中軸受が、軸受架台に固定され内周面を有し上下に分割される外装部と、
前記撹拌軸の端部に積層式樹脂材料で成形されている軸フランジ部に連結する内転フランジ部を有する内転部と、
前記内周面に接し硬度が前記内周面より低い材質で成形され前記内転部の外周側に3個以上配設される転動体と、を備える転がり軸受であることを特徴とするフロキュレータ。
【請求項2】
請求項1に記載のフロキュレータにおいて、
積層式樹脂材料が炭素繊維入り積層式樹脂材料であることを特徴とするフロキュレータ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のフロキュレータにおいて、
前記外装部がステンレス鋼又は鋳鋼にて成形され、前記内転部がステンレス鋼又は炭素繊維入り積層樹脂材料にて成形されていることを特徴とするフロキュレータ。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載のフロキュレータにおいて、
水中で駆動装置に最も近い位置に設置される前記転がり軸受に配設される前記転動体の形状は、鍔付き円筒形であることを特徴とするフロキュレータ。
【請求項5】
請求項4に記載のフロキュレータにおいて、
水中で駆動装置に最も近い位置に設置される前記転がり軸受の内周面の幅は、前記鍔付き円筒形の転動体における鍔を除いた円筒形の長さであることを特徴とするフロキュレータ。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載のフロキュレータにおいて、
水中で駆動装置に最も近い位置以外に設置される前記転がり軸受に配設される前記転動体の形状は、円筒形であることを特徴とするフロキュレータ。
【請求項7】
請求項6に記載のフロキュレータにおいて、
水中で駆動装置に最も近い位置以外に設置される前記転がり軸受の前記内周面の幅は、前記円筒形の転動体における円筒形の長さより広いことを特徴とするフロキュレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理施設で使用されるフロキュレータに関する。更に詳しくは、撹拌軸が水中軸受で支持されているフロキュレータに関する。
【背景技術】
【0002】
水処理施設においては、原水中のコロイド状懸濁質の除去を目的とした凝集処理を行っており、凝集処理プロセスのうちフロック形成における撹拌強度を与える装置として、フロック形成池の損失水頭が少なくまた水質変動に応じた撹拌強度変更が容易である機械撹拌式のフロキュレータが広く用いられている。
【0003】
従来、
図6に示す通り、フロキュレータ100は、撹拌軸101と、固定アーム102を介して撹拌軸101に結合している撹拌板103を備え、フロック形成池100Aにおいて、撹拌軸101は1本以上水平に配置され(
図6では、2本配置されている。)、フロック形成に必要な撹拌強度をもって撹拌軸101を回転させるため、撹拌軸101の本体101Aの両端部に連結している撹拌軸受部101Bが、水中軸受104で支持されている。尚、空中である機械室106において、駆動装置107と撹拌軸受部101Bとに連結している駆動軸108は、空中軸受109で支持されている。
【0004】
フロキュレータ100の材質は、従来、撹拌軸101の本体101Aは中空軸であり鋼管等で成形され、中実軸の撹拌軸受部101B及び固定アーム102は鋼材で成形されていたが、軽量化及び耐腐食性の向上等を目的に、撹拌軸101の本体101A、固定アーム102、及び撹拌板103は、積層式樹脂材料で成形されるようになった(下記特許文献1参照)。しかし、撹拌軸受部101Bは未だ鋼材を使用していたので、撹拌軸101の製造時の作業が煩雑で、また撹拌軸101の重力方向の質量が大きくなっていた。更に、撹拌軸受部101Bが鋼材で成形されているので耐腐食性能を保持させるため、従来通り新規製作時及び使用開始後に定期的に防食塗装等の耐腐食処置を行う必要があり、メインテナンスが煩雑であるとの不具合があった。
【0005】
水中軸受104は、設置環境が水中であり、水中及び空中である水張り無し状態での軸受支持力が大きいため、従来、
図7に示す通り、内周面111が撹拌軸受部101Bの周面と接触する滑り軸受110が使用されていた。滑り軸受110は、据付作業の容易性と内周面111の摩耗による定期的交換の容易性から、上部軸受112A及び上部軸受箱113Aと、下部軸受112B及び下部軸受箱113Bとに上下2分割されていた。
【0006】
しかしながら、滑り軸受110で撹拌軸受部101Bを支持すると、フロキュレータ100は設備が大きく撹拌軸101の本体101Aを積層式樹脂材料で成形したとしても、重力方向の質量と撹拌反力との合成力により下部軸受112Bの特定位置に偏磨耗が発生し、数年毎に滑り軸受110を交換する必要があった。
【0007】
更に、滑り軸受110を交換するには、大型の撹拌軸101を持ち上げて下部軸受112Bの抜き差し作業を行う必要があり、交換作業が大掛かりになるとの不具合があった。
【0008】
尚、下部軸受112Bの特定位置に偏磨耗が発生するのを防止し、滑り軸受110の交換作業を容易にするため、撹拌軸101の本体101Aの口径を大きくし反重力方向に浮力を生じさせることが行われている(下記特許文献2参照)。しかし、この場合でも反重力方向の浮力と撹拌反力との合成力により上部軸受112Aの特定位置に偏磨耗が発生し、数年毎に滑り軸受110を交換する必要があった。更に、撹拌軸101の本体101Aの口径を大きくすると重力方向の質量が大きくなり、設置時に水張り無し状態において、滑り軸受110に重力方向の過大な支持力が発生し、また撹拌軸101の本体101Aに自重による極度の曲げ力が作用するため、フロック形成池100Aで水張り無し状態の試運転が出来ないとの不具合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010−029828
【特許文献2】特開2007−229668
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上述の不具合点を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、撹拌軸を支持する水中軸受に発生する偏磨耗の発生を防止し、水中軸受の交換頻度が少ないフロキュレータを提供することである。
【0011】
また、別の目的は、水中軸受の交換作業を容易に行うことができるフロキュレータを提供することである。
【0012】
また、別の目的は、撹拌軸の製造時及び設置時の作業を容易にし、撹拌軸の重量が軽いフロキュレータを提供することである。
【0013】
また、別の目的は、新規製作時及び使用開始後に定期的に防食塗装等の作業を行う必要がなく、メインテナンスが容易なフロキュレータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1に係るフロキュレータは、水処理施設で使用され、本体が積層式樹脂材料で成形されている撹拌軸と、固定アームを介して前記撹拌軸に結合している撹拌板を備え、前記撹拌軸が水中軸受で支持されているフロキュレータにおいて、前記水中軸受が、軸受
架台に固定され内周面を有し上下に分割される外装部と、前記撹拌軸の端部に積層式樹脂材料で成形されている軸フランジ部に連結する内転フランジ部を有する内転部と、前記内周面に接し硬度が前記内周面より低い材質で成形され前記内転部の外周側に3個以上配設される転動体と、を備える転がり軸受であることを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明の請求項2に係るフロキュレータは、請求項1に記載のフロキュレータにおいて、積層式樹脂材料が炭素繊維入り積層式樹脂材料であることを特徴とするものである。
【0016】
また、本発明の請求項3に係るフロキュレータは、請求項1又は2に記載のフロキュレータにおいて、前記外装部がステンレス鋼又は鋳鋼にて成形され、前記内転部がステンレス鋼又は炭素繊維入り積層樹脂材料にて成形されていることを特徴とするものである。
【0017】
また、本発明の請求項4に係るフロキュレータは、請求項1乃至3のいずれかに記載のフロキュレータにおいて、水中で駆動装置に最も近い位置に設置される前記転がり軸受に配設される前記転動体の形状は、鍔付き円筒形であることを特徴とするものである。
【0018】
また、本発明の請求項5に係るフロキュレータは、請求項4に記載のフロキュレータにおいて、水中で駆動装置に最も近い位置に設置される前記転がり軸受の内周面の幅は、前記鍔付き円筒形の転動体における鍔を除いた円筒形の長さであることを特徴とするものである。
【0019】
また、本発明の請求項6に係るフロキュレータは、請求項1乃至5のいずれかに記載のフロキュレータにおいて、水中で駆動装置に最も近い位置以外に設置される前記転がり軸受に配設される前記転動体の形状は、円筒形であることを特徴とするものである。
【0020】
また、本発明の請求項7に係るフロキュレータは、請求項6に記載のフロキュレータにおいて、水中で駆動装置に最も近い位置以外に設置される前記転がり軸受の前記内周面の幅は、前記円筒形の転動体における円筒形の長さより広いことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係るフロキュレータは、撹拌軸の本体が積層式樹脂材料で成形されていると共に撹拌軸の端部に形成されている軸フランジ部が積層式樹脂材料で成形されているので、水中及び水張り無し状態での重力方向の質量を小さくすることができ、その撹拌軸が、内周面を有する外装部と、撹拌軸の端部に形成されている軸フランジ部に連結する内転フランジ部を有する内転部と、内転部の外周側に3個以上配設され内周面に接する転動体と、を備える転がり軸受で支持されているので、転がり軸受けへの作用力が大幅に軽減され、回転動力ロスが減少し、偏摩耗の発生が防止される。よって、転がり軸受の交換頻度を減少することができる。
【0022】
更に、本発明に係るフロキュレータは、撹拌軸の本体が積層式樹脂材料で成形されていると共に撹拌軸の端部に形成されている軸フランジ部が積層式樹脂材料で成形されているので、水中及び水張り無し状態での重力方向の質量を小さくすることができ、フロック形成池における水張り無し状態で自重による撹拌軸の撓みを減少することができ、水張り無し状態での試運転を行うことができる。
【0023】
更に、本発明に係るフロキュレータは、撹拌軸の本体が積層式樹脂材料で成形されていると共に撹拌軸の端部に形成されている軸フランジが積層式樹脂材料で成形されているので、撹拌軸全体が積層式樹脂材料となり、撹拌軸の製造時における作業を容易にすることができる。更に、また撹拌軸の他に固定アームと撹拌板を積層式樹脂材料で成形すると、新規製作時及び使用開始後に定期的に行う防食塗装等の耐腐食処置を省くことができる。
【0024】
更に、本発明に係るフロキュレータは、内周面を有し上下に分割される外装部と、撹拌軸の端部に形成されている軸フランジ部に連結する内転フランジ部を有する内転部と、内周面より硬度が低い材質で成形され内転部の外周側に3個以上配設され内周面に接する転動体とを備える転がり軸受に、撹拌軸が支持されているので、内転部の外周側に配設されている転動体が内周面より先に摩耗し、転がり軸受の交換は、転動体を交換すれば良く、しかも撹拌軸を回転させると内転部も回転するので、上下に分割される外装部の上部を開放することで、撹拌軸を持ち上げることなく内転部の外周側に配設されている転動体を順次交換することができる。
【0025】
更に、本発明に係るフロキュレータは、撹拌軸等に使用される材料として、積層式樹脂材料の代替として樹脂層に適切な量の炭素繊維が含有されている炭素繊維入り積層式樹脂材料が用いられると、強度を増すことができる。
【0026】
更に、本発明に係るフロキュレータは、転がり軸受に使用される材料として、外装部がステンレス鋼又は鋳鋼にて成形され、内転部がステンレス鋼又は炭素繊維入り積層式樹脂材料にて成形されると、転がり軸受の耐久性を向上することができる。
【0027】
更に、本発明に係るフロキュレータは、撹拌軸が支持される水中で駆動装置に最も近い位置に設置される転がり軸受に配設される転動体の形状は、鍔付き円筒形であり、その転がり軸受の外装部の内周面の幅は、鍔付き円筒形における鍔を除いた円筒形の長さと等しいので、水温変化により撹拌軸が軸長方向に伸縮した場合であっても位置ずれが生じるのを防止することができる。
【0028】
更に、本発明に係るフロキュレータは、撹拌軸が支持される水中で駆動装置に最も近い位置以外に設置される転がり軸受に配設される転動体の形状は、円筒形であり、その転がり軸受の外装部の内周面の幅は、円筒形の長さより広いので、水温変化により撹拌軸が軸長方向に伸縮した場合であっても内周面に転動体を一定寸法で常に内接させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図7】(1)は、
図6におけるX3部の拡大側面図であり、(2)は、
図6におけるX3部の拡大断面図
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に図面を参照して、この発明の実施形態に係るフロキュレータについて、例示して説明する。
【0031】
図1は、本発明に係るフロキュレータの概略説明図であり、
図2は、
図1におけるX1部の拡大断面図、即ち、撹拌軸が支持されている状態での転がり軸受の軸長方向の断面図であり、
図3は、
図2におけるY−Yの位置で切断した転がり軸受の断面図であり、
図4は、
図1におけるX2部の部分拡大断面図、即ち、転がり軸受における転動体と内周面との関係を示す断面図、
図5は、
図1におけるX1部の部分拡大断面図、即ち、
図4とは別の位置に設置される転がり軸受における転動体と内周面との関係を示す断面図である。
【0032】
本発明に係るフロキュレータ1は、
図1乃至3に示す通り、フロック形成池2に設置され、撹拌軸10と、固定アーム20と、撹拌板30とを備え、撹拌軸10は転がり軸受40で支持されている。
【0033】
撹拌軸10は、フロック形成池2に水平に設置され、筒状の本体11と、本体11の両端部に形成されている軸フランジ部12とで構成され、後述する水中軸受である転がり軸受40により支持されている。撹拌軸10は、通常複数本が連結され(
図1では、2本連結されている。)、最も駆動装置4寄りに設置されている撹拌軸10の駆動側端部が、空中である機械室3に設置されていて駆動装置4に連動して回転する駆動軸5と、水中であるフロック形成池2で駆動装置4に最も近い位置に設置される第一転がり軸受40Aで連結されて支持されているので、回転するようになっている。尚、6は空中軸受である。撹拌軸10は、本体11及び軸フランジ部12共に通常使用されるガラス繊維を含む繊維で補強された積層式樹脂材料、又はカーボン繊維入り積層式樹脂材料で成形されている。カーボン繊維入り積層式樹脂材料は、通常使用されるガラス繊維を含む繊維で補強された繊維体積率が30乃至60%の積層式樹脂材料の繊維部分の一部をカーボン繊維に置き換えたもので、カーボン繊維が繊維体積率30乃至60%の中の少なくとも5乃至20%含有されているものである。
【0034】
固定アーム20は、後述する撹拌板30を撹拌軸10に結合させる部材であって、軸長手方向に対する断面形状はコの字形状又はL字形状であって、撹拌軸10の回転により撹拌板30と共に回転するようになっている。固定アーム20の材質は、撹拌軸10と同じ通常使用されるガラス繊維を含む繊維で補強された積層式樹脂材料、又はカーボン繊維入り積層式樹脂材料であることが好ましいが、鋼材であっても良い。
【0035】
撹拌板30は、撹拌軸10の回転で固定アーム20と共に回転しフロックを成長させる機能を有するので、回転方向に対し広い面積を有するように形成されており、板厚を薄くしたときでも水の圧力に抗しうるように長手方向に対し直角断面形状がコの字形状又は矩型をしている。撹拌板30の材質は、撹拌軸10と同じ通常使用されるガラス繊維を含む繊維で補強された積層式樹脂材料、又はカーボン繊維入り積層式樹脂材料であることが好ましいが、発泡性樹脂材料をガラス繊維を含む繊維で補強したものであっても良い。
【0036】
転がり軸受40は、
図2及び
図3に示す通り、外装部50と内転部60と転動体70とを備えている。
【0037】
外装部50は、内周側に後述する転動体70と接する内周面51が形成されていて、上部外装体52Aに形成されている上部外装フランジ部53Aと下部外装体52Bに形成されている下部外装フランジ部53Bの位置で、上部外装体52Aと下部外装体52Bとに上下に2分割され、下部外装体52Bに形成されている脚部54で図示されていない軸受架台等に固定されている。外装部50は、内周面51及び外装体52等の要部が、ステンレス鋼又は鋳鋼で成形されている。
【0038】
内転部60は、2枚の同形の円盤状の内転フランジ部61が円筒状の内周連結部62と外周連結部63により左右対称に結合されている。内転フランジ部61は、外側で撹拌軸10の軸フランジ部12と、螺子等にて連結される。内転部60は、ステンレス鋼又は撹拌軸10と同じ炭素繊維入り積層式樹脂材料で成形されている。
【0039】
転動体70は、3個以上(
図3では、4個配設されている。)が円周上等間隔で、外周連結部63の切欠け部64に配設されている。転動体軸部71が内転フランジ部61に固定され、転動体軸部71の外周側に固定されている転動体本体72は、転動体軸部71を中心に回転し、外装部50の内周面51に接するようになっている。転動体本体72は、外装部50の内周面51より硬度が低い材質で成形されているので、転動体本体72が内周面51より先に摩耗するようになっている。
【0040】
水中であるフロック形成池2で駆動装置4に最も近い位置に設置される第一転がり軸受40Aにおける転動体本体72Aの形状は、
図4に示す通り、両端に鍔73を有する鍔付き円筒形であり、この鍔付き円筒形の転動体本体72Aと接する外装部50Aの内周面51Aの幅は、鍔付き円筒形の鍔73を除いた円筒形の部分の長さと同じに設定されている。
【0041】
水中であるフロック形成池2で駆動装置4に最も近い位置以外に設置される第二転がり軸受40Bにおける転動体本体72Bの形状は、
図5に示す通り、鍔がない通常の円筒形であり、この鍔がない円筒形の転動体本体72Bと接する外装部50Bの内周面51Bの幅は、水温変化による伸縮長さと余裕幅が考慮され、円筒形の長さよりも広く設定されている。
【0042】
次に、転がり軸受40の交換方法について説明する。転がり軸受40は、転動体本体72が外装部50の内周面51より硬度が低い材質で成形されているので転動体本体72が先に摩耗し、転がり軸受40の交換は、転動体70を交換すれば良い。
【0043】
転動体70は、内転フランジ部61に固定されている転動体軸部71を外すことで、摩耗している転動体本体72を取り外すことができる。転動体70は、内転部60の外周側に円周上均等に配設されていて、真上の位置にある転動体70は、上下に2分割される上部外装体52Aを開放することで容易に取り外すことができる。
図3の場合、はじめに真上の位置にある転動体70aを交換する。次いで、撹拌軸10を時計回りに90度回転させることで、撹拌軸10に連結している内転部60を90度回転させ、転動体70bを真上の位置に移動させ交換する。同様に、撹拌軸10を回転させ、転動体70c、70dを順次交換する。
【0044】
以上の通り、本発明に係るフロキュレータ1は、撹拌軸10の本体11と端部に形成されている軸フランジ部12が積層式樹脂材料で成形されているので、水中及び水張り無し状態での重力方向の質量を小さくすることが可能となる。固定アーム20、撹拌板30も積層式樹脂材料で成形すると、更に重力方向の質量を小さくすることが可能となる。従って、撹拌軸10を、内周面51を有する外装部50と、撹拌軸10の端部に形成されている軸フランジ部12に連結する内転フランジ部61を有する内転部60と、内転部60の外周側に3個以上配設され内周面51に接する転動体70と、を備える転がり軸受40で支持することが可能となる。重力方向の質量が小さくなるので、転がり軸受け40への作用力が大幅に軽減され、回転動力ロスを少なくすることが可能となり、偏摩耗の発生を防止することが可能となる。よって、転がり軸受40の交換頻度を減少することが可能となる。
【0045】
更に、本発明に係るフロキュレータ1は、撹拌軸10の本体11が積層式樹脂材料で成形されていると共に撹拌軸10の端部に形成されている軸フランジ部12が積層式樹脂材料で成形されているので、撹拌軸10全体が積層式樹脂材料となり、撹拌軸10の製造時の作業を容易にすることが可能となる。更に、固定アーム20と撹拌板30も積層式樹脂材料で成形されていると新規製作時及び使用開始後に定期的に防食塗装等の耐腐食処置を省くことが可能となる。
【0046】
更に、本発明に係るフロキュレータ1は、内周面51を有し上下に分割される外装部50と、撹拌軸10の端部に形成されている軸フランジ部11に連結する内転フランジ部61を有する内転部60と、内周面51より硬度が低い材質で成形され内転部60の外周側に3個以上配設され内周面51に接する転動体70とを備える転がり軸受40に、撹拌軸10が支持されているので、内周面51より硬度が低い転動体本体72が先に摩耗し、転がり軸受40の交換は転動体70のみを交換すれば良い。しかも撹拌軸10を回転させると内転部60も回転し、内転部60の外周側に配設されている転動体70を回転移動することができるので、転がり軸受40の交換時に、上下に分割される上部外装体52Aを開放することで、撹拌軸10を持ち上げることなく内転部60の外周側に配設されている転動体70を全て容易に交換することが可能となる。
【0047】
更に、本発明に係るフロキュレータ1は、撹拌軸10が支持されるフロック形成池2で駆動装置4に最も近い位置に設置される第一転がり軸受40Aに配設される転動体本体72Aの形状は、鍔付き円筒形であり、その第一転がり軸受40Aの外装部50Aの内周面51Aの幅は、鍔付き円筒形の転動体本体72Aにおける鍔73を除いた円筒形の長さに設定されているので、水温変化により撹拌軸10が軸長方向に伸縮した場合であっても位置ずれが生じるのを防止することが可能となる。
【0048】
更に、本発明に係るフロキュレータ1は、撹拌軸10が支持されるフロック形成池2で駆動装置4に最も近い位置以外に設置される第二転がり軸受40Bに配設される転動体本体72Bの形状は、円筒形であり、その第二転がり軸受40Bの外装部50Bの内周面51Bの幅は、円筒形の転動体本体72Bにおける円筒形の長さより水温変化による伸縮長さと余裕幅を考慮した広さに設定されているので、水温変化により撹拌軸10が軸長方向に伸縮した場合であっても内周面51Bに転動体本体72Bを一定寸法で常に内接させることが可能となる。
【符号の説明】
【0049】
1 フロキュレータ
2 フロック形成池
3 機械室
4 駆動装置
5 駆動軸
6 空中軸受
10 撹拌軸
11 本体
12 軸フランジ部
20 固定アーム
30 撹拌板
40 転がり軸受
50 外装部
51 内周面
52 外装体
53 外装フランジ部
54 脚部
60 内転部
61 内転フランジ部
62 内周連結部
63 外周連結部
64 切欠け部
70 転動体
71 転動体軸部
72 転動体本体
73 鍔