(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記外れ値抽出部は、取引ごとの取引枚数を対数変換し、前記対数変換した取引枚数の平均と標準偏差に基づいて外れ値を判断し、前記外れ値を有する取引を抽出する請求項1〜5のいずれか一項に記載の需要予測装置。
前記突発取引を除いた一期間の取引を用いて予測した過去の需要予測と、当該需要予測を行った期間の需要実績とを比較して取引傾向を抽出する傾向抽出部と、前記取引傾向に基づいて需要予測の補正を行う傾向反映部と、をさらに備える、請求項1〜6のいずれか一項に記載の需要予測装置。
前記傾向抽出部は、前記過去の需要予測よりも前記需要実績が、所定の割合で偏って上回っている、または下回っている場合に、前記過去の需要予測と前記需要実績の乖離度合を前記取引傾向として抽出する、請求項7に記載の需要予測装置。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0026】
<1.需要予測システムの構成>
本発明は、一例として以下で説明するように、多様な形態で実施され得る。また、本発明の実施形態に係る需要予測装置20は、
A.過去の一期間の取引を統計処理し、統計上の外れ値を有する取引を突発取引として抽出する外れ値抽出部230と、
B.前記突発取引を除いた前記一期間の取引を用いて需要予測を行う需要予測部250と、
を備える。
【0027】
以下では、まず、このような需要予測装置20を含む需要予測システムの基本構成について、
図1を参照して説明する。
【0028】
図1は、本発明に係る需要予測システムの構成を示した説明図である。
図1に示すように、本発明に係る需要予測システムは、金融機関ホスト10と、専用網12と、自動取引装置中央管理部14と、需要予測装置20と、自動取引装置30と、端末管理部32と、を備える。
【0029】
自動取引装置30は、金融機関の顧客自身の操作によって自動的に入出金などの取引を行うことができる。自動取引装置30は、金融機関の支店、コンビニエンスストア、駅構内、デパート、ホテル、オフィスビルなどの多様な施設に設置される。例えば、
図1に示すように、金融機関のA支店16には自動取引装置30A〜30Nが設置され、また、金融機関ホスト10や自動取引装置中央管理部14との通信、および自動取引装置30A〜30Nの管理を行う端末管理部32が設置されている。同様に、A支店16とは別のB支店18においても、複数の自動取引装置30と端末管理部32が設置されている(図示せず)。
【0030】
専用網12は、金融機関が有する専用ネットワークであり、例えば、IP−VPN(Internet Protocol−Virtual Private Network)により構成される。金融機関ホスト10や自動取引装置中央管理部14は、この専用網12を介して自動取引装置30と通信をすることができる。
【0031】
金融機関ホスト10は、専用網12を介して自動取引装置30と通信を行うことにより、自動取引装置30の各種取引を制御する。例えば、金融機関ホスト10は、自動取引装置30を操作する顧客の認証を行ったり、自動取引装置30において、顧客の操作により指示された入出金、および振込などの取引の処理を実行したりする。また、金融機関ホスト10は、口座番号、暗証番号、氏名、住所、年齢、生年月日、電話番号、職業、家族構成、年収、および預金残高などの顧客情報を口座の元帳として管理する。
【0032】
自動取引装置中央管理部14は、専用網12を介して自動取引装置30と通信を行うことにより、各自動取引装置30の稼働状況を監視する。例えば、自動取引装置中央管理部14は、自動取引装置30内に残っている現金の量、取引の状況、エラー(現金切れや紙幣詰まりなど)の有無などを監視している。また、需要予測装置20によって予測された現金の需要と、自動取引装置30内に残っている現金量などから、自動取引装置30内の現金が無くなる日を予測し、事前に補充を行えるような「現金装填の計画」を立てて、指示をする。
【0033】
需要予測装置20は、各自動取引装置30の未来における現金需要を予測する予測装置である。自動取引装置30では、例えば、出金取引により現金が流出するため、適切なタイミングで自動取引装置30に現金を装填する必要がある。このため、需要予測装置20は、過去の取引実績に基づいて未来の現金需要を予測している。
【0034】
また、特許文献3で開示されているように、給与振込日付近などの特殊な要因で現金需要が大幅に増大するような日付のデータは需要予測に影響を与えるため、需要予測装置20は、当該日付のデータを区別して需要予測を行ってもよい。さらに、停電や現金装填時の枚数カウントミスのようなシステムの異常が発生した場合には、需要予測装置20は、当該異常が発生した日付のデータを異常データとして排除して需要予測を行ってもよい。
【0035】
なお、現金の流出量は支店ごとに異なるので、需要予測装置20は、支店ごとに現金の需要を予測してもよい。また、同一支店内の自動取引装置30であっても現金の流出量は異なる。例えば、支店の入口に近い自動取引装置30の流出量は、入口から遠い自動取引装置30の流出量よりも多くなる傾向がある。このため、需要予測装置20は、自動取引装置30ごとに現金需要を予測してもよい。
【0036】
また、需要予測装置20が現金需要の予測に用いる過去の取引実績は、当該予測を行う自動取引装置30の取引実績を用いるのが望ましい。ただし、需要予測装置20が支店ごとに現金需要を予測する場合には、当該予測を行う支店内のすべての自動取引装置30の全取引実績を用いてもよい。
【0037】
以上、
図1を参照して本発明に係る需要予測システムについて説明した。係る需要予測システムによれば、過去の取引実績に基づいて未来の現金需要を予測することができる。
【0038】
しかし、自動取引装置30の取引では、まれに通常は発生し得ない高額な取引が発生する場合がある。例えば、通常は数万円から数十万円の取引が行われる自動取引装置30であっても、数百万円の取引が発生する場合がある。これにより、当該取引の発生した日付の取引実績額が、他の日付の取引実績額よりも大幅に大きくなる。ここで、需要予測装置20は、過去の取引実績を基に未来の現金需要の予測を行うため、このような突発的に高額な取引があると、現金需要の予測はより多く算出されてしまう。しかし、このような突発的な取引は再現しないので、結果的に、突発的な高額取引が発生すると、需要予測装置20の現金需要の予測精度は低下することになる。
【0039】
そこで、本発明に係る需要予測装置20は、上記問題に着目して創作されるに至った。本発明に係る需要予測装置20は、突発的に高額取引が発生しても、当該取引を突発取引として抽出し、排除して現金需要の予測をおこなうことができるため、現金需要の予測精度を向上させることが可能である。以下、このような本発明に係る需要予測装置20の具体的な実施形態について詳細に説明する。
【0040】
<2.第1の実施形態>
[需要予測装置20Aの構成]
まず、
図2を参照して、第1の実施形態に係る需要予測装置20Aの内部構成について具体的に説明する。
図2は、本実施形態に係る需要予測装置20Aの内部構成を示したブロック図である。
【0041】
図2に示すように、本実施形態に係る需要予測装置20Aは、外れ値抽出部230と、外れ値抽出パラメータ記憶部235と、規則性判断部240と、規則性判断パラメータ記憶部245と、需要予測部250と、需要予測パラメータ記憶部255と、を備える。
【0042】
(外れ値抽出部、外れ値抽出パラメータ記憶部)
外れ値抽出部230は、過去の取引実績である取引データを取得し、外れ値抽出パラメータ記憶部235に記憶された外れ値抽出パラメータに基づき、外れ値を有する突発取引を抽出する。ここで、外れ値抽出部230と外れ値抽出パラメータ記憶部235の詳細な説明に先立ち、
図3を参照して過去の取引実績である取引データの具体例を説明する。
【0043】
図3は、過去の取引実績である取引データの具体例の一例を示した説明図である。
図3に示すように、取引データは、自動取引装置30を識別する装置IDと、取引IDと、取引が発生した年月日と、時刻と、各紙幣の流出枚数を含む。
【0044】
また、
図3において、装置IDは「10000101」であるので、
図3に示した取引データは、装置IDが「10000101」である自動取引装置30の過去の取引実績を示している。
図3に示した取引データによれば、取引IDが「AB15000001」である取引は、2011年12月1日の9時11分15秒に発生し、万券が3枚出金されたことを示す。また、取引IDが「AB15000002」である取引は、2011年12月1日の9時11分58秒に発生し、万券が1枚、千券が10枚出金されたことを示す。さらに、取引IDが「AB15000003」である取引は、2011年12月1日の9時13分21秒に発生し、流出枚数が負数であるので、万券が5枚入金されたことを示す。
【0045】
外れ値抽出部230は、上述した
図3に示すような取引データを統計処理することで、外れ値を検出し、当該外れ値を有する取引を突発取引として抽出する。また、外れ値抽出パラメータ記憶部235は、外れ値抽出部230が行う統計処理の方法や、外れ値を検出するための閾値を決定するためのパラメータなどを記憶する。
【0046】
外れ値抽出部230が取引データを統計処理する期間は過去の一期間であってよい。具体的には、4月、6月および12月は他の月よりも出金取引が増え、1月および7月は入金取引が増えるといった各取引が持つ季節性の影響を除くため、1年間以上の期間を用いることが望ましい。例えば、外れ値抽出部230は、直近の3年分の取引データを統計処理するようにしてもよい。
【0047】
ここで、
図4を参照して、外れ値抽出部230の外れ値抽出方法の具体例を説明する。
図4は、過去の一期間の万券の流出枚数をヒストグラムにした具体例の一例を示したグラフ図である。
図4に示すように、過去の一期間について万券の流出枚数を取引枚数として5枚ずつの区間で横軸にとり、取引件数を度数にして縦軸にとっている。ここで、取引枚数が正数である取引は、出金取引であり、取引枚数が負数である取引は、入金取引である。また、
図4に示すように、出金取引と入金取引のそれぞれについて、対数正規分布の近似曲線が実線で引かれており、取引データのヒストグラムは、出金取引と入金取引のそれぞれについて対数正規分布で近似できることが示されている。
【0048】
外れ値抽出において、まず、外れ値抽出部230は、過去の一期間の取引データを出金取引と入金取引に分け、それぞれの取引について外れ値を判断する閾値を設定し、外れ値を有する突発取引を抽出する。以下では、主として出金取引の外れ値抽出について説明するが、入金取引についても、取引データが負数であるので対数変換を行う際に取引枚数の絶対値を用いる以外は実質的に同一の外れ値抽出が行われる。
図4に示したように、出金取引は対数正規分布で近似できるため、外れ値抽出部230は、数式1〜3を用いて、取引枚数xを対数変換したyの平均μおよび標準偏差σを算出する。
【0050】
次に、外れ値抽出部230は、過去の一期間の各取引について取引枚数xを対数変換したyが閾値μ+mσを超えているかどうかを判断する。取引枚数xを対数変換したyが閾値μ+mσを超えている場合、外れ値抽出部230は、当該取引枚数xを有する取引を突発取引として抽出する。ここで、mは外れ値を検出するための所定の実数であり、例えば、mは2または3であるとしてもよい。
【0051】
さらに、外れ値抽出部230は、入金取引についても、出金取引と同様に上記で説明した外れ値抽出方法を用いて外れ値を有する突発取引を抽出する。同様に、外れ値抽出部230は、千券の流出枚数についても入金取引および出金取引の両取引にて突発取引を抽出することができる。
【0052】
以上で説明したように、外れ値抽出部230は、外れ値抽出パラメータ記憶部235に記憶された外れ値抽出パラメータに基づき、外れ値を有する突発取引を抽出することができる。なお、上記実施形態では、取引枚数のヒストグラムが対数正規分布で近似できるとして、外れ値検出を平均と標準偏差に基づいて行ったが、本発明は係る例に限定されない。例えば、外れ値抽出部230は、取引枚数のヒストグラムを正規分布やポアソン分布に近似して外れ値を検出してもよく、また平均と標準偏差を用いずに、平均からの乖離度合に基づいて外れ値を検出してもよい。さらに、外れ値抽出部230は、クラスタリングに基づく外れ値検出や密度比推定に基づく外れ値検出などの他の外れ値検出方法を用いて外れ値を有する突発取引を抽出してもよい。
【0053】
(規則性判断部、規則性判断パラメータ記憶部)
規則性判断部240は、外れ値抽出部230によって抽出された外れ値を有する突発取引について、突発取引の取引発生日間に規則性があるか否かを判断し、規則性がある場合は当該取引を突発取引から除外する。また、規則性判断パラメータ記憶部245は、規則性判断部240が突発取引の取引発生日間に規則性があるか否かを判断するための規則性の定義および判断基準となるパラメータなどを記憶する。
【0054】
外れ値抽出部230によって突発取引として抽出されるような高額取引であっても、当該取引が一定の規則性を持って再現する場合は、現金需要の予測の取引データとして用いた方が予測精度を向上させることができる。そこで、規則性判断部240は、例えば、取引発生日の共通属性、周期および頻度などに着目して突発取引の取引発生日間の規則性の有無を判断する。
【0055】
ここで、規則性判断部240は、突発取引が毎月同日およびその前後日のいずれかで発生する場合に、規則性があると判断してもよい。例えば、突発取引が「6月15日」に発生し、その後、「7月14−16日」のいずれかで突発取引が再度発生した場合、規則性判断部240は、前述の突発取引が規則性を有すると判断してもよい。ここで、突発取引が発生する月が連続していなくても、規則性判断部240は、前述の突発取引が規則性を有すると判断してもよい。上記の例では、突発取引が「6月15日」に発生した後、「8月14−16日」のいずれかで突発取引が再度発生した場合でも、規則性判断部240は、前述の突発取引は規則性を有すると判断してもよい。また、本発明は、突発取引が毎月同日およびその前後日のいずれかに発生している場合に、規則性があると判断する上記の例に限定されない。例えば、規則性判断部240は、突発取引が毎月同日およびその前後2日の計5日間「7月13日〜7月17日」のいずれかで発生している場合に、規則性があると判断してもよい。
【0056】
また、規則性判断部240は、突発取引が一定の周期で発生する場合に、規則性があると判断してもよい。例えば、突発取引が「6月15日」に発生し、その後、「6月25日」、および「7月5日」に突発取引が再度発生した場合、突発取引が10日周期で発生しているため、規則性判断部240は、前述の突発取引が規則性を有すると判断してもよい。
【0057】
なお、規則性判断部240は、突発取引が特定の曜日に発生する場合に、規則性があると判断してもよい。例えば、ある年の「6月8日」が金曜日であった場合、「6月15日」、「6月22日」、および「6月29日」が金曜日である。ここで、突発取引が「6月8日」、「6月15日」、および「6月29日」に発生した場合、突発取引が金曜日という特定の曜日に発生しているため、規則性判断部240は、前述の突発取引が規則性を有すると判断してもよい。
【0058】
さらに、規則性判断部240は、突発取引が一定の頻度で発生している場合に、規則性があると判断してもよい。例えば、突発取引が「6月10日」、「6月15日」、「6月17日」、「6月20日」、「6月25日」、および「6月27日」に発生した場合、突発取引が10日間で3回という一定の頻度で発生しているので、規則性判断部240は、前述の突発取引が規則性を有すると判断してもよい。ここで、上記の例では、突発取引が一定の頻度で発生している場合に、規則性判断部240は規則性があると判断したが、本発明は係る例に限定されない。突発取引が閾値以上の頻度で発生している場合にも、規則性判断部240は、前述の突発取引が規則性を有すると判断してもよい。ここで、規則性判断部240が規則性を有すると判断する頻度の閾値は、規則性判断パラメータ記憶部245に記憶させておくことができる。また、規則性判断部240は、同日に突発取引が複数回発生した場合には、それぞれ突発取引を別個にカウントしてもよい。
【0059】
なお、上記の例において、規則性判断部240が規則性を有すると判断する突発取引の繰り返し回数は2または3回としたが、本発明は係る回数に限定されない。規則性判断部240が規則性を有すると判断する繰り返し回数は、4回でもよいし、5回でもよく、適切な繰り返し回数の閾値を規則性判断パラメータ記憶部245に記憶させておくことができる。
【0060】
規則性判断部240は、取引発生日間に規則性があると判断された取引のすべてを、突発取引から除外する。除外された取引は、通常の取引と同様に後述する需要予測部250において、現金需要の予測のための取引データとして用いられてもよい。また、規則性判断部240は、取引発生日間に規則性があると判断した取引を規則性取引とし、突発取引および該規則性取引を除いた取引データから算出された現金需要の予測に、規則性取引に基づいた補正をかけるようにしてもよい。
【0061】
(需要予測部、需要予測パラメータ記憶部)
需要予測部250は、突発取引を排除した過去の取引実績を取引データとして、需要予測パラメータ記憶部255に記憶された需要予測パラメータに基づき、当該取引実績を有する自動取引装置の未来の現金需要を予測する。また、需要予測パラメータ記憶部255は、現金需要の予測方法および現金需要の予測に用いるパラメータなどを記憶する。
【0062】
ここで、需要予測部250の現金需要の予測方法は、公知の多様な方法を採用することができる。例えば、需要予測部250は、過去の取引実績を平均化することで現金需要を予測してもよいが、本発明は係る例に限定されるものではない。
【0063】
[需要予測装置20Aの動作]
以上、本実施形態に係る需要予測装置20Aの構成について説明した。続いて、本実施形態に係る需要予測装置20Aの動作の具体例について
図5を参照して説明する。
【0064】
図5は、本実施形態に係る需要予測装置20Aの動作を示すフローチャート図である。
図5に示すように、需要予測装置20Aは、取引種と、金種のループを含むS300〜S340の処理を実行する。
【0065】
具体的には、まず、需要予測装置20Aは、現金需要を予測する対象となる自動取引装置30の取引データを取得する(S300)。次に、外れ値抽出部230は、過去の一期間の取引データのうち、取引枚数のデータを取得し、取引枚数のヒストグラムが対数正規分布に近似できると仮定して、平均と標準偏差を算出する(S310)。さらに、外れ値抽出部230は、算出した平均と標準偏差に基づいて閾値を決定し、当該閾値を超えた外れ値を有する取引を突発取引として抽出する(S320)。
【0066】
続いて、規則性判断部240は、外れ値抽出部230が抽出した突発取引について、取引発生日間の規則性の有無を判断し、規則性がある取引は、突発取引から除外し通常の取引とする(S330)。外れ値抽出部230および規則性判断部240は、以上のS310−S330の処理を出金取引および入金取引のそれぞれについてループして実行する。
【0067】
上記S310−S330により、需要予測装置20Aは突発取引が排除された出金取引および入金取引の取引データを算出することができる。需要予測部250は、当該取引データに基づいて現金需要を予測する(S340)。ここで、需要予測装置20Aは、S310−S340の処理を万券および千券の各金種に実行することにより、当該自動取引装置の未来の現金需要を予測することができる。
【0068】
以上説明したように、本実施形態に係る需要予測装置20Aは、突発的に高額な取引が発生しても、当該取引を突発取引として排除して現金需要の予測を行うことができ、現金需要の予測精度を向上させることができる。また、取引発生日に規則性があり、突発取引に再現性が見られる場合には、規則性の有無を判断することにより当該規則性のある取引を突発取引から除外することができるため、現金需要の予測の精度をさらに向上させることが可能である。
【0069】
[第1の実施形態の変形例]
続いて、第1の実施形態の変形例について、以下で説明を行う。第1の実施形態の変形例では、需要予測装置20Aは、外れ値抽出を取引枚数ではなく1日の取引回数で行い、外れ値となる取引回数を有する日を異常日として、当該異常日の取引データを現金需要の予測に用いる取引データから排除することができる。
【0070】
具体的には、外れ値抽出部230は、取引ごとの取引枚数ではなく、1日の取引回数が対数正規分布に近似されると仮定し、平均μ’と標準偏差σ’を算出する。次に、外れ値抽出部230は、μ’+m’σ’を閾値として、μ’+m’σ’を超える取引回数である日を異常日として抽出する。ここで、m’は外れ値を検出するための所定の実数である。また、規則性判断部240は、異常日間で規則性があるか否かを、突発取引の取引発生日間の規則性を判断した方法と同様の方法で判断し、異常日間で規則性を有する場合は、当該規則性を有する日すべてを異常日から除外する。さらに、需要予測部250は、異常日の取引データを排除した取引データに基づいて、現金需要の予測を実行する。
【0071】
なお、本第1の実施形態の変形例は、単独で実施することもできるが、第1の実施形態と組み合わせて実施してもよい。係る場合、現金需要の予測精度をさらに向上させることができる。
【0072】
<3.第2の実施形態>
以上、現金需要の予測精度を向上させることが可能な第1の実施形態について、詳細に説明した。ただし、第1の実施形態では、長期間の過去の取引実績に基づいて現金需要を予測するため、例えば、自動取引装置30が設置された支店の近くに観光スポットやオフィスビルができるなどして急激に現金需要が増えた場合には、すぐに該現金需要の傾向変化を需要予測に反映させることはできない。
【0073】
一方、急激な現金需要を需要予測に反映させるために、直近の過去の短期間の取引実績に基づいて需要予測装置20に現金需要の予測を行わせた場合は、長期間の取引実績を用いなければ抽出できない月ごとの特性を需要予測に反映することができない。例えば、4月、6月および12月は他の月よりも現金需要が増え、1月および7月は入金が増えるといった季節性の影響を需要予測に反映させるためには、望ましくは1年間以上の期間の取引実績に基づいて現金需要の予測を行う必要がある。
【0074】
そこで、本発明の第2の実施形態は、第1の実施形態が解決する課題に加えて、上記問題に着目して創作されるに至った。本実施形態に係る需要予測装置20Bは、まず、過去の長期間の取引実績に基づいて現金の需要予測を行い、さらに直近の過去の現金需要の傾向変化に基づいて需要予測を補正する。これにより、需要予測装置20Bは長期間の季節性の影響に加えて、急激な現金需要の傾向変化にも対応した現金需要の予測を行うことが可能である。以下では、このような第2の実施形態の需要予測装置20Bについて、詳細に説明を行う。
【0075】
[需要予測装置20Bの構成]
まず、
図6を参照して、第2の実施形態に係る需要予測装置20Bの内部構成について具体的に説明する。
図6は、本実施形態に係る需要予測装置20Bの内部構成を示したブロック図である。
【0076】
図6に示すように、本実施形態に係る需要予測装置20Bは、外れ値抽出部230と、外れ値抽出パラメータ記憶部235と、規則性判断部240と、規則性判断パラメータ記憶部245と、需要予測部250と、需要予測パラメータ記憶部255と、傾向抽出部260と、傾向抽出パラメータ記憶部265と、傾向反映部270と、を備える。
【0077】
外れ値抽出部230と、外れ値抽出パラメータ記憶部235と、規則性判断部240と、規則性判断パラメータ記憶部245と、需要予測部250と、需要予測パラメータ記憶部255については、第1の実施形態の構成と同一、または実質的に同一であるので、ここでの詳細な説明は省略する。以下では、第2の実施形態で特記すべき傾向抽出部260、傾向抽出パラメータ記憶部265、および傾向反映部270について具体的に説明する。
【0078】
傾向抽出部260は、突発取引を排除した取引データに基づいて予測した現金の需要予測と当該予測期間の実際の取引実績とを比較し、傾向抽出パラメータ記憶部265に記憶された傾向抽出パラメータに基づき、現金需要の傾向変化を取引傾向として抽出する。また、傾向抽出パラメータ記憶部265は、取引傾向を抽出するための取引傾向の判断アルゴリズムや判断閾値を記憶する。
【0079】
具体的には、傾向抽出部260は、直近の過去の1週間〜3ヶ月程度の期間において、突発取引を排除した過去の取引データから予測した需要予測と、当該期間の実際の取引実績から突発取引を排除した取引実績とを比較する。また、傾向抽出部260は、需要予測に対して取引実績が上回っていた日と下回っていた日の日数を算出し、比較する。傾向抽出部260は、取引実績が上回っていた日と下回っていた日の日数のどちらか一方が所定の割合より多く、かつ需要予測に対する取引実績の乖離度合が閾値を超えている場合に、現金需要の傾向変化があったと判断し、取引傾向を抽出する。
【0080】
例えば、傾向抽出部260は、需要予測に対して取引実績が上回っていた日の日数が下回っている日の日数の2倍存在し、かつ、取引実績が上回っていた日の現金需要の平均が、需要予測の平均に対して1.2倍であった場合、「取引実績が需要予測を1.2倍上回った」ことを取引傾向として抽出する。
【0081】
取引傾向を算出する期間が短いと、突発取引があった場合に、突発取引の影響を受けやすくなり、傾向抽出部260により抽出された取引傾向の精度が低下する。一方、本実施形態に係る需要予測装置20Bは、外れ値抽出部230によって突発取引が排除された取引実績および需要予測から取引傾向を算出するので、取引傾向を算出する期間が短くとも、精度の高い取引傾向を算出することができる。そのため、急激に現金需要の傾向が変化しても、需要予測装置20Bは迅速に需要予測を補正することができる。
【0082】
傾向反映部270は、傾向抽出部260によって抽出された取引傾向に基づいて、需要予測部250が予測した未来の現金の需要予測を補正する。傾向反映部270は、傾向抽出部260によって抽出された取引傾向によって、現金の需要予測を補正する場合に、当該取引傾向を抽出した期間の長さによって補正量を減少させてもよい。すなわち、傾向抽出部260によって抽出された取引傾向は、取引傾向を抽出した期間が短い程、信頼性が低くなる。したがって、傾向反映部270は、取引傾向を抽出した期間が短く信頼性が低い場合は、過補正にならないように抽出した取引傾向に対して需要予測に補正する際の補正量を減少させてもよい。また、傾向反映部270は、需要予測を補正する補正量に上限を設けてもよい。
【0083】
[需要予測装置20Bの動作]
以上、本実施形態に係る需要予測装置20Bの構成について説明した。続いて、本実施形態に係る20Bの動作の具体例について
図7を参照して説明する。
【0084】
図7は、本実施形態に係る需要予測装置20Bの動作を示すフローチャート図である。
図7に示すように、需要予測装置20Bは、第1の実施形態と同様に、取引種と、金種のループを含み、S300〜S370の処理を実行する。S300〜S340までの処理は第1の実施形態と同一、または実質的に同一であるのでここでの詳細な説明は省略し、本実施形態で特筆すべきS350以降の処理について、詳細に説明する。
【0085】
具体的には、S340の処理にて、対象の金種について需要予測部250により需要予測を行った後、傾向抽出部260は、突発取引を除いた取引データから予測した過去の期間の需要予測を取得する(S350)。次に、傾向抽出部260は、当該過去の期間の突発取引を排除した取引実績を取得し、需要予測と取引実績とを比較し、取引傾向を抽出する(S360)。さらに、傾向反映部270は、傾向抽出部260が抽出した取引傾向に基づいて、S340で需要予測部250が予測した未来の現金需要の予測を補正する(S370)。
【0086】
ここで、第1の実施形態に係る需要予測装置20Aの処理ではS310〜S340を万券および千券の金種によるループとし、各金種にてそれぞれ現金の需要予測を行っていたが、第2の実施形態に係る需要予測装置20Bの処理では、S310〜S370を万券および千券の金種によるループとして、各金種についてそれぞれ現金の需要予測と取引傾向に基づいた補正を行っている。
【0087】
以上説明したように、本実施形態に係る需要予測装置20Bは、第1の実施形態の効果に加えて、過去の需要予測と取引実績を比較し抽出した傾向変化に基づいて、需要予測を補正することにより、急激な現金需要の傾向変化にも対応した現金需要の予測を行うことが可能である。
【0088】
<4.ハードウェア構成>
以上、本発明の実施形態について、具体的に説明を行った。上述した外れ値を有する突発取引の抽出、突発取引の発生日の規則性判断、需要予測、および取引傾向の抽出のような情報処理は、ソフトウェアと以下で説明する需要予測装置20のハードウェアとの協働により実現される。
【0089】
図8は、需要予測装置20のハードウェア構成を示すブロック図である。需要予測装置20は、CPU(Central Processing Unit)201と、ROM(Read Only Memory)203と、RAM(Random Access Memory)205と、内部バス207と、を備える。また、需要予測装置20は、入出力インターフェース209と、表示部211と、入力部213と、音声出力部215と、HDD(Hard Disk Drive)217と、ドライブ219と、ネットワークインターフェース221と、外部インターフェース223と、を備える。
【0090】
CPU201は、演算処理装置および制御装置として機能し、各種プログラムに従って需要予測装置20内の動作全般を制御する。また、CPU201は、マイクロプロセッサであってもよい。なお、CPU201は、外れ値抽出部230、規則性判断部240、需要予測部250、傾向抽出部260、および傾向反映部270に対応し、各部の機能を実現する。
【0091】
ROM203は、CPU201が使用するプログラムや演算パラメータ等を記憶する。RAM205は、CPU201の実行において使用するプログラムや、その実行において適宜変化するパラメータ等を一時記憶する。これらは内部バス207により相互に接続され、さらに入出力インターフェース209を介して後述する表示部211と、入力部213、音声出力部215、HDD217、ドライブ219、ネットワークインターフェース221、および外部インターフェース223と接続される。
【0092】
表示部211は、例えば、液晶ディスプレイ(LCD)装置、OLED(Organic Light Emitting Diode)装置およびCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ装置などの表示装置を含む。また、音声出力部215は、例えば、スピーカおよびヘッドフォンなどの音声出力装置を含み、音声データ等を音声に変換して出力する。
【0093】
入力部213は、マウス、キーボード、タッチパネル、ボタン、マイクロフォン、スイッチおよびレバーなどユーザが情報を入力するための入力手段と、ユーザによる入力に基づいて入力信号を生成しCPU201に出力する入力制御回路などから構成されている。需要予測装置20のユーザは、該入力部213を操作することにより、需要予測装置20に対して各種のデータを入力したり、処理動作を指示したりすることができる。
【0094】
HDD217は、本実施形態に係る需要予測装置20の記憶部の一例として構成されたデータ格納用の装置である。HDD217は、記憶媒体、記憶媒体にデータを記録する記録装置、記憶媒体からデータを読み出す読出装置、および記憶媒体に記憶されたデータを削除する削除装置を含む。該HDD217は、CPU201が実行するプログラムや各種データを格納する。なお、HDD217は、外れ値抽出パラメータ記憶部235、規則性判断パラメータ記憶部245、需要予測パラメータ記憶部255、および傾向抽出パラメータ記憶部265に対応し、各部の機能を実現する。
【0095】
ドライブ219は、記憶媒体用リーダライタであり、需要予測装置20に内蔵、あるいは外付けされる。ドライブ219は、装着されている磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、または半導体メモリ等のリムーバブル記憶媒体に記憶されている情報を読み出してRAM203に出力する。またドライブ212は、リムーバブル記憶媒体に情報を書き込むこともできる。
【0096】
ネットワークインターフェース221は、例えば、専用網12に接続するための通信デバイス等で構成された通信インターフェースである。また、ネットワークインターフェース221は、有線LAN(Local Area Network)または無線LAN対応通信装置であってもよいし、有線による通信を行うワイヤー通信装置であってもよい。
【0097】
外部インターフェース223は、例えば、USB(Universal Serial Bus)ポート、IEEE1394ポート、SCSI(Small Computer System Interface)、RS−232Cポート、または光オーディオ端子等のような外部接続機器を接続するための接続ポートで構成された接続インターフェースである。
【0098】
<5.まとめ>
以上説明したように、本発明に係る需要予測装置20は、突発的に高額取引が発生しても、当該取引を突発取引として抽出し排除して、現金需要の予測をおこなうことができるため、予測の精度を向上させることが可能である。また、取引データから突発取引を排除した上で、基づいた過去の需要予測と当該期間の取引実績を比較し、抽出した現金需要の傾向変化に基づいた補正を需要予測に施すことにより、急激な現金需要の傾向変化にも対応した現金需要の予測を行うことが可能である。
【0099】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0100】
また、本発明に係る需要予測装置20に内蔵されるようなCPU201、ROM203およびRAM205などのハードウェアを上述した需要予測装置20の各構成と同等の機能を発揮させるためのコンピュータプログラムも作成可能である。また、該コンピュータプログラムを記憶させた記憶媒体も提供される。