特許第5997979号(P5997979)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日立オートモティブシステムズ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5997979-防振装置 図000002
  • 特許5997979-防振装置 図000003
  • 特許5997979-防振装置 図000004
  • 特許5997979-防振装置 図000005
  • 特許5997979-防振装置 図000006
  • 特許5997979-防振装置 図000007
  • 特許5997979-防振装置 図000008
  • 特許5997979-防振装置 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5997979
(24)【登録日】2016年9月2日
(45)【発行日】2016年9月28日
(54)【発明の名称】防振装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/08 20060101AFI20160915BHJP
   F16F 1/36 20060101ALI20160915BHJP
   F16F 3/087 20060101ALI20160915BHJP
【FI】
   F16F15/08 V
   F16F1/36 K
   F16F3/087
【請求項の数】1
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-189995(P2012-189995)
(22)【出願日】2012年8月30日
(65)【公開番号】特開2014-47822(P2014-47822A)
(43)【公開日】2014年3月17日
【審査請求日】2015年6月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立オートモティブシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079441
【弁理士】
【氏名又は名称】広瀬 和彦
(72)【発明者】
【氏名】原田 脩史
(72)【発明者】
【氏名】松村 定知
【審査官】 鎌田 哲生
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/041749(WO,A1)
【文献】 特開2013−245776(JP,A)
【文献】 実公昭50−023771(JP,Y1)
【文献】 実開昭52−075104(JP,U)
【文献】 特開2005−265158(JP,A)
【文献】 特開平04−357342(JP,A)
【文献】 実開昭59−086441(JP,U)
【文献】 特開2012−087871(JP,A)
【文献】 特開2007−285409(JP,A)
【文献】 米国特許第4575114(US,A)
【文献】 特開平04−272527(JP,A)
【文献】 実開平05−061536(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/08
F16F 1/36 − 1/393
F16F 3/087
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制振すべき第1部材と第2部材との間に配される防振装置であって、
前記第1部材に一側が取り付けられる筒状の第1ゴム部材と、
前記第2部材に一側が取り付けられ、前記第1ゴム部材とは弾性定数が異なる特性を有する筒状の第2ゴム部材とを備え、
前記第1ゴム部材および前記第2ゴム部材のそれぞれ他側は凹凸嵌合部を有し、
前記第1ゴム部材、前記第2ゴム部材の軸中心側には支持部材が挿通され
前記第1ゴム部材および前記第2ゴム部材の凹凸嵌合部間に、金属材料または樹脂材料からなる部材が嵌合されていることを特徴とする防振装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンプレッサ等に好適に用いられる防振装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等のサスペンション装置には、左,右の前輪と左,右の後輪にそれぞれ設けたエアサスペンションを、コンプレッサから吐出される圧縮空気を用いて拡縮させることにより、車載重量の変化、運転者の好み等に応じて車高を適宜に調整することができるエアサスペンション装置が知られている。このエアサスペンション装置には、コンプレッサの作動時の振動が車体に伝達するのを抑制する防振装置が設けられている。
【0003】
このエアサスペンション装置に設けられている従来の防振装置は、ゴム部材やコイルばねをコンプレッサと車体との間に設置することにより、コンプレッサ等の振動源から車体に振動が伝達するのを抑制している。
【0004】
ここで、コンプレッサの作動時における振動周波数帯域で、防振効果を得るためには、当該振動周波数帯域よりも低い周波数帯域に共振点をもつ防振ゴムを用いるのが良い。これは、防振ゴムのゴム硬度を下げる(軟らかいゴムを用いる)か、防振ゴムを複雑な形状に加工することにより実現することが可能である。しかし、軟らかいゴムは、耐久性が低くなるので実際には耐久性を考慮したゴム硬度が高い(硬い)防振ゴムを使用しなければならない。また、防振ゴムを複雑な形状に加工することは、手間を有しコストが嵩むことになる。
【0005】
また、防振装置として、高い防振性能や耐久性を有するコイルばねを用いることが考えられる。しかし、コイルばねでは、コンプレッサ側の振動を減衰することができないので、コンプレッサに接続されたパイプ等に振動が伝達して当該パイプ等が劣化しやすくなるという問題がある。
【0006】
そこで、特許文献1には、筒状のゴム部材とコイルばねを直列に接続することにより、高い防振性能と耐久性を両立した防振装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−106927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特許文献1による従来技術では、上,下方向の振動については、防振効果を得ることができるが、水平方向の振動については、上,下方向の防振効果に比べて充分な防振効果を得ることができないという問題がある。
【0009】
本発明は、上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、上,下方向と水平方向の両方向に充分な防振効果を得ることができる防振装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するため、本発明は、制振すべき第1部材と第2部材との間に配される防振装置であって、前記第1部材に一側が取り付けられる筒状の第1ゴム部材と、前記第2部材に一側が取り付けられ、前記第1ゴム部材とは弾性定数が異なる特性を有する筒状の第2ゴム部材とを備え、前記第1ゴム部材および前記第2ゴム部材のそれぞれ他側は凹凸嵌合部を有し、前記第1ゴム部材、前記第2ゴム部材の軸中心側には支持部材が挿通され、前記第1ゴム部材および前記第2ゴム部材の凹凸嵌合部間に、金属材料または樹脂材料からなる部材が嵌合されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、上,下方向と水平方向の両方向に充分な防振効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1の実施の形態による防振装置を第1部材と第2部材との間に設けた概略図である。
図2】防振装置を単体で示す断面図である。
図3】防振装置の物理モデル図である。
図4】比較例による防振装置、および第1の実施の形態による防振装置の振動伝達率の周波数特性を示す特性線図である。
図5】本発明の第2の実施の形態による防振装置を単体で示す断面図である。
図6】防振装置の物理モデル図である。
図7】比較例による防振装置および第1,第2の実施の形態による防振装置の振動伝達率の周波数特性を示す特性線図である。
図8】本発明の変形例による防振装置を単体で示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、以下に説明する複数の発明を包含する発明群に属する発明であり、以下に、その発明群の実施の形態として、第1,第2の実施の形態および変形例について説明するが、そのうち、第2の実施の形態と変形例とが、本出願人が特許請求の範囲に記載した発明に対応するものである。
以下、本発明の実施の形態による防振装置を、添付図面に従って詳細に説明する。
【0014】
図1ないし図4は、本発明の第1の実施の形態を示している。図1に示す第1部材1は、例えば自動車のエアサスペンション装置用のコンプレッサで、該コンプレッサは、図示しないエアサスペンションに圧縮空気を給排することにより、車高を適宜に調整することができるものである。そして、コンプレッサ(第1部材1)には、例えば平板状の取付ブラケット2が設けられており、この取付ブラケット2には、厚さ方向に貫通した取付穴2Aが設けられている。この取付穴2Aを用いて、取付ブラケット2には、後述する防振装置5が取付けられている。
【0015】
また、第2部材3は、例えば車体側に設けられた取付部材で、該取付部材(第2部材3)には、取付ブラケット2と同様に取付穴4Aを有する取付ブラケット4が設けられており、この取付穴4Aを用いて、取付ブラケット4には、後述する防振装置5が取付けられている。
【0016】
これにより、第1部材1は、防振装置5を介して第2部材3に取付けられている。ここで、第1部材1と第2部材3とは、互いに制振すべき部材であって、本実施の形態の場合は、第1部材1と第2部材3のうち第1部材1をコンプレッサとし、第2部材3を車体側の取付部材とした場合を例示している。しかし、これに限らず第1部材1を取付部材とし、第2部材3をコンプレッサとしてもよい。
【0017】
次に、本実施の形態に用いられる防振装置5について説明する。
【0018】
第1部材1と第2部材3との間に配される防振装置5は、振動源である第1部材1の振動を第2部材3に伝達するのを抑制する場合と、第2部材3側の振動を第1部材1に伝達するのを抑制するためのものである。このため、図3に示すように、防振装置5は、第1部材1と第2部材3との間の振動伝達経路の途中に設けられている。この防振装置5は、図2に示すように第1ゴム部材6と、第2ゴム部材7と、支持部材9とにより構成されている。
【0019】
第1部材1に振動伝達経路の一側が取付けられる第1ゴム部材6は、例えばゴム、合成樹脂等の弾性体からなり、筒状に形成されている。なお、第1ゴム部材6は、例えば円筒状、楕円筒状、角筒状等により形成されている。この場合、振動による応力を分散させるためには、円筒状が好ましい。
【0020】
第1ゴム部材6の上面6Aは、平坦な平面として形成され、第1ゴム部材6の外側面6Bには、円環状の溝部6Cが形成され、この溝部6Cに第1部材1に設けられた取付ブラケット2の取付穴2Aの周囲部分が嵌合状態で固着されている。第1部材1の垂直方向(上,下方向)および水平方向の振動は、溝部6Cを通じて第1ゴム部材6に伝わる。このため、溝部6Cが第1ゴム部材6の振動伝達経路の一側になっている。
【0021】
一方、第1ゴム部材6の下面6Dは、第2ゴム部材7との嵌合面となって振動伝達経路の他側を構成する。この下面6Dの中央部には、断面凸状の凸部6Eが形成されている。また、第1ゴム部材6の軸中心側には、後述するボルト9Aの軸部が挿通する貫通孔6Fが上,下方向に貫通している。
【0022】
第2部材3に一側が取付けられる第2ゴム部材7は、第1ゴム部材6と同様に弾性体からなり、例えば円筒状、楕円筒状、角筒状等により形成されている。この場合、振動による応力を分散させるためには、円筒状が好ましい。
【0023】
そして、第2ゴム部材7は、第1ゴム部材6とは弾性定数が異なる特性を有している。本実施の形態では、第2ゴム部材7は、第1ゴム部材6よりも弾性定数(弾性率)が小さいものとしている。即ち、第2ゴム部材7は、第1ゴム部材6よりも軟らかいゴム部材として構成されている。
【0024】
第2ゴム部材7の下面7Aは、平坦な平面として形成され、第2ゴム部材7の外側面7Bには、円環状の溝部7Cが形成され、この溝部7Cに第2部材3に設けられた取付ブラケット4の取付穴4Aの周囲部分が嵌合状態で固着されている。第2部材3の垂直方向および水平方向の振動は、溝部7Cを通じて第2ゴム部材7に伝わる。このため、溝部7Cが、第2ゴム部材7の振動伝達経路の一側になっている。
【0025】
一方、第2ゴム部材7の上面7Dは、第1ゴム部材6との嵌合面となって振動伝達経路の他側を構成する。この上面7Dの中央部には、断面凹状の凹部7Eが形成され、該凹部7Eは、第1ゴム部材6の凸部6Eと嵌合するものである。そして、第1ゴム部材6の下面6Dおよび凸部6Eと第2ゴム部材7の上面7Dおよび凹部7Eとにより、第1ゴム部材6と第2ゴム部材7との嵌合部は、凹凸嵌合部8として構成され、第1ゴム部材6と第2ゴム部材7とは、凹凸嵌合部8で隙間なく当接して接着または溶着されて一体となっている。
【0026】
このように、防振装置5は、第1部材1と第2部材3との間で、第1ゴム部材6と第2ゴム部材7とを上,下方向で積重ねた構造をなしている。即ち、第1ゴム部材6と第2ゴム部材7とは、第1部材1と第2部材3との間で振動伝達経路に直列に接続されている。また、第2ゴム部材7の軸中心側には、第1ゴム部材6の貫通孔6Fと同軸上に後述するボルト9Aの軸部が挿通する貫通孔7Fが上,下方向に貫通している。
【0027】
第1ゴム部材6の貫通孔6Fと第2ゴム部材7の貫通孔7Fに挿通する支持部材9は、第1ゴム部材6と第2ゴム部材7との伸びを拘束するためのものである。そして、支持部材9は、ボルト9Aと、ナット9Bと、ワッシャ9C,9Dとにより構成されている。
【0028】
図2に示すように、支持部材9は、ワッシャ9Cを第1ゴム部材6の上面6A上で貫通孔6Fと同軸上に配置し、ワッシャ9Dを第2ゴム部材7の下面7A上で貫通孔7Fと同軸上に配置した状態でボルト9Aを第2ゴム部材7側から貫通孔7Fと、貫通孔6Fに挿通してナット9Bにより固定する構成としている。
【0029】
本実施の形態による防振装置5は、上述のような構成を有するもので、次に防振装置5による防振機能について説明する。
【0030】
まず、第1ゴム部材6と第2ゴム部材7とを比較すると、第1ゴム部材6は、第2ゴム部材7よりも弾性率を大きくしている。即ち、第1ゴム部材6は、第2ゴム部材7よりも硬いゴム材であり、第2ゴム部材7は、第1ゴム部材6よりも軟らかいゴム材である。防振装置5は、第1部材1と第2部材3との間に、それぞれ弾性率の異なる第1ゴム部材6と第2ゴム部材7とが直列に繋がる構成となっている(図3参照)。このため、防振装置5は、弾性率の大きい第1ゴム部材6の防振効果を得つつ、弾性率の小さい第2ゴム部材7によって共振点(共振周波数)を低くすることができる。
【0031】
このような防振作用について検討するために、本実施の形態による防振装置5と、比較例による防振装置とについて、加振側(例えばコンプレッサからなる第1部材1)から作用する周波数と振動伝達率との関係について解析を行った。その結果を図4に示す。図4において、横軸は、コンプレッサ(第1部材1)が作動したときの振動に伴う周波数を示し、縦軸は、その振動が取付部材(第2部材3)に伝達する割合を示す振動伝達率を示している。同図において、振動伝達率が1(100%)のときには、防振効果は0%である。
【0032】
なお、比較例による防振装置は、第1ゴム部材6と第2ゴム部材7とを同じ弾性率のゴム材を用いて一体化して形成したものである。また、図4中には、第1ゴム部材6および第2ゴム部材7に関する振動伝達率の特性も併せて記載してある。比較例による防振装置の特性線の頂点A、第1ゴム部材6の特性線の頂点B、第2ゴム部材7の特性線の頂点C、本実施の形態の特性線の頂点Dは、それぞれの共振点を示している。
【0033】
比較例の場合、使用周波数帯域の高周波数側で所望の防振効果を得るために、弾性率を大きくしてあるが、これに伴って共振点Aが使用周波数帯域の範囲内に位置している。このため、比較例では、共振点Aの周辺周波数では、防振効果が得られない。
【0034】
これに対し、本実施の形態による防振装置5は、それぞれ弾性率が異なる第1ゴム部材6と第2ゴム部材7とを接合することによって形成されている。
【0035】
図4に示すように、第1ゴム部材6は、弾性率の大きいゴム材を用いたから、共振点Bよりも高周波数側では、周波数に対する振動伝達率の変化(傾き)が大きく、振動の周波数が高くなるに従って振動伝達率が低下し易い傾向がある。
【0036】
第2ゴム部材7は、弾性率の小さいゴム材を用いたから、第1ゴム部材6に比べて、共振点Cよりも高周波数側では、周波数に対する振動伝達率の変化(傾き)が小さく、振動の周波数が高くなっても振動伝達率が低下し難い傾向がある。一方、第2ゴム部材7の共振点Cは、第1ゴム部材6の共振点Bよりも低くなっている。
【0037】
この結果、本実施の形態による防振装置5の共振点Dは、比較例の共振点Aよりも低く、使用周波数帯域よりも低周波数側に外れている。これに加えて、本実施の形態では、比較例に比べて、使用周波数帯域の全体に亘って振動伝達率が低下している。このように、本実施の形態による防振装置5では、コンプレッサ(第1部材1)の作動時に、安定した防振効果を得ることができる。
【0038】
また、第1ゴム部材6と第2ゴム部材7との接合部分は、第1ゴム部材6の下面6Dおよび凸部6Eと、第2ゴム部材7の上面7Dおよび凹部7Eとが嵌合した凹凸嵌合部8となっている。これにより、第1ゴム部材6と第2ゴム部材7とは、中心軸(ボルト9Aの軸)の法線方向と、中心軸方向の2方向の接触面を有する構成となっている。従って、中心軸の法線方向(水平方向)と、中心軸方向(垂直方向)の両方向で、図3に示すような第1ゴム部材6と第2ゴム部材7とが直列に繋がる構成とみなすことができる。このため、垂直方向に限らず、水平方向の振動についても高い防振効果を得ることができる。
【0039】
かくして、第1の実施の形態によれば、弾性定数がそれぞれ異なる第1ゴム部材6と第2ゴム部材7とを嵌合することにより、共振点を下げることができ、また高周波数側で振動伝達率を低下させて高い振動絶縁効果を得ることができる。
【0040】
また、防振装置5は、第1ゴム部材6と第2ゴム部材7との接合部分を、凹凸状に構成することにより、第1ゴム部材6と第2ゴム部材7とは、垂直方向と水平方向との両方向でそれぞれ当接している。従って、防振装置5は、第1部材1と第2部材3との間で、垂直方向(軸方向)のみならず水平方向(軸の法線方向)にも垂直方向と同様の防振絶縁効果を得ることができる。
【0041】
さらに、防振装置5は、異なる特性を有するゴム材を直列に接合するという単純な構造であり部品点数も少ないので、コストを低減することができると共に、組立が容易である。また、車体とコンプレッサとの間の狭隘なスペースにも簡単に設置することができる。
【0042】
次に、図5ないし図7は、本発明の第2の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、第1ゴム部材と第2ゴム部材との間に円管を設ける構成としたことにある。なお、本実施の形態では、上述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0043】
第2の実施の形態による防振装置11は、第1ゴム部材6と、第2ゴム部材7と、支持部材9と、後述する円管12とにより構成されている。
【0044】
第1ゴム部材6と第2ゴム部材7との間に設けられた円管12は、例えば金属材料からなる円盤状の薄板材の中央部を下向きに突出させて皿状に形成したものであり、その外径寸法は、第1ゴム部材6および第2ゴム部材7の外径寸法と同様に形成されている。具体的には、図5に示すように、円管12は、円環状の平板部12Aと、該平板部12Aから下向きに突出する突出部12Bとにより構成されている。
【0045】
そして、平板部12Aの上面12A1は、第1ゴム部材6の下面6Dと当接し、突出部12Bの内面12B1は、第1ゴム部材6の凸部6Eと当接する。一方、平板部12Aの下面12A2は、第2ゴム部材7の上面7Dと当接し、突出部12Bの外面12B2は、第2ゴム部材7の凹部7Eと当接する構成となっている。また、突出部12Bの中央部には、第1ゴム部材6の貫通孔6Fと第2ゴム部材7の貫通孔7Fと同軸上に貫通孔12Cが穿設されている。
【0046】
ここで、上述した第1の実施の形態では、防振装置5を第1ゴム部材6と第2ゴム部材7とを直接、接着または溶着させる構成とした。しかし、一般的にゴム同士の接着および溶着は困難である。そこで、本実施の形態においては、金属材料からなる円管12を、第1ゴム部材6と第2ゴム部材7との間、即ち凹凸嵌合部8に嵌合することにより、簡単に第1ゴム部材6と円管12との接着および第2ゴム部材7と円管12との接着を行うことができる。即ち、円管12は、第1ゴム部材6と第2ゴム部材7とを接合するための接合部材を構成している。これにより、防振装置11は、第1ゴム部材6と第2ゴム部材7とが円管12を介して一体とする構成となっている。
【0047】
このように、防振装置11は、防振対象である第1部材1の下側にそれぞれ弾性定数の異なる第1ゴム部材6と第2ゴム部材7とが円管12を介して直列に繋がる構成としている(図5参照)。
【0048】
そして、ボルト9Aを第2ゴム部材7の貫通孔7F、円管12の貫通孔12C、第1ゴム部材6の貫通孔6Fに挿通して、ワッシャ9C,9Dと共にナット9Bで固定する。
【0049】
この状態で、防振装置11は、第1部材1と第2部材3との間に設置される。このとき、支持部材9のボルト9Aは、振動の伝達経路である第1ゴム部材6に取付けられた取付ブラケット2と第2ゴム部材7に取付けられた取付ブラケット4との間に挿通しているので、第1ゴム部材6と第2ゴム部材7との伸びを拘束することができる。
【0050】
かくして、このように構成される第2の実施の形態においても、前述した第1の実施の形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0051】
特に、本実施の形態の場合には、金属材料からなる円管12によりゴム材料の嵌合機能を高めることができるので、簡単に第1ゴム部材6と第2ゴム部材7とを一体とすることができる。
【0052】
図7は、比較例による防振装置と、第1の実施の形態による防振装置5と、第2の実施の形態による防振装置11とについて、振動の周波数に対する振動伝達率の解析結果を示している。図7において、横軸は、コンプレッサ(第1部材1)が作動したときの振動に伴う周波数を示し、縦軸は、その振動が取付部材(第2部材3)に伝達する割合を示す振動伝達率を示している。なお、比較例による防振装置は、第1ゴム部材6と第2ゴム部材7とを同じゴム材を用いて一体化して形成したものである。また、比較例による防振装置の特性線の頂点A、防振装置5の特性線の頂点D、防振装置11の特性線の頂点Eは、それぞれの部材の共振点を示している。
【0053】
それぞれ異なる弾性率を有する第1ゴム部材6と第2ゴム部材7とを金属製の円管12を介して嵌合(接合)した防振装置11は、比較例による防振装置の共振点Aと比べて、共振周波数が使用周波数帯域から外れて低くなっており、また高周波数側での振動伝達率が下がっていることが分かる。これにより、防振装置11は、コンプレッサ(第1部材1)の作動時に、安定した防振効果を得ることができる。
【0054】
また、円管12は、マスダンパとしての作用も得ることができる。このため、第2の実施の形態による防振装置11では、第1の実施の形態による防振装置5に比べて高周波数側での振動伝達率をさらに低下させることができる。
【0055】
なお、本実施の形態では、金属材料からなる円管12を、第1ゴム部材6および第2ゴム部材7の凹凸嵌合部8間に嵌合させる構成を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば図8に示す変形例のように円管21をプラスチック等の樹脂材料からなる部材として構成してもよい。
【0056】
また、上述した第1の実施の形態で、第1ゴム部材6の貫通孔6Fおよび第2ゴム部材7の貫通孔7Fとボルト9Aの軸部との接触を防ぐために、ボルト9Aの軸部と貫通孔6Fおよび貫通孔7Fとの間に円筒状のカラー(図示せず)を設けてもよい。このカラーの長さ寸法は、第1ゴム部材6および第2ゴム部材7とボルト9Aの軸部が接触しない程度に短くしてもよく、また第1ゴム部材6の貫通孔6F側と、第2ゴム部材7の貫通孔7F側とに分割してそれぞれ設けてもよい。このことは、第2の実施の形態および変形例についても同様である。
【0057】
また、上述した第1の実施の形態では、ボルト9Aを第2ゴム部材7の貫通孔7F側から挿入して、第1ゴム部材6の上面6Aでナット9Bにより固定する構成を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、ボルト9Aを第1ゴム部材6の貫通孔6F側から挿入して、第2ゴム部材7の下面7Aでナット9Bにより固定する構成としてもよい。このことは、第2の実施の形態および変形例についても同様である。
【0058】
また、上述した第1の実施の形態では、第1ゴム部材6を第2ゴム部材7よりも硬いゴム材とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、第1ゴム部材6を第2ゴム部材7よりも軟らかいゴム材としてもよい。このことは、第2の実施の形態および変形例についても同様である。
【0059】
また、上述した第1の実施の形態では、第1ゴム部材6と第2ゴム部材7との接合部分である凹凸嵌合部8を、第1ゴム部材6の凸部6Eと第2ゴム部材7の凹部7Eとにより構成した場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、第1ゴム部材に凹部を形成し、第2ゴム部材に凸部を形成して凹凸嵌合部を構成してもよい。このことは、第2の実施の形態および変形例についても同様である。
【0060】
さらに、凹凸嵌合部8は、第1ゴム部材6の下面6Dの中央部に形成された凸部6Eと、第2ゴム部材7の上面7Dの中央部に形成された凹部7Eとにより構成した場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば第1ゴム部材の下面に複数の凸部を形成し、この凸部に対応する位置で第2ゴム部材の上面に複数の凹部を形成する構成としてもよい。即ち、第1ゴム部材と第2ゴム部材とは、上,下方向と水平方向との両方向で当接して嵌合していればよい。このことは、第2の実施の形態および変形例についても同様である。
【0061】
また、上述した第1の実施の形態では、第1ゴム部材6の溝部6Cで取付ブラケット2を接合させ、第2ゴム部材7の溝部7Cで取付ブラケット4を接合させる場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、上,下方向と水平方向との2方向の振動が伝達可能であれば、このような接合手段に限らず、任意の接合手段を採用可能である。
【0062】
また、図4中の第1ゴム部材6と、第2ゴム部材7の振動伝達率の周波数特性は、一例を示したものであり、本発明はこれに限らない。即ち、第1ゴム部材と第2ゴム部材を用いることにより、共振周波数が使用周波数帯域よりも低下し、かつ共振周波数よりも高周波数側の振動伝達率が低下するのであれば、第1ゴム部材と第2ゴム部材は、互いに異なる各種の弾性率のゴム材を用いることができる。
【0063】
また、上述した第1の実施の形態では、防振装置5を車両のエアサスペンション装置用のコンプレッサ(第1部材1)に取付ける場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば防振装置5を洗濯機の脱水作動時における防振対策等、機械の運転により生じる振動が基礎等に伝達するのを抑制する場合にも広く適用することができる。このことは、第2の実施の形態および変形例についても同様である。
【符号の説明】
【0064】
1 第1部材
3 第2部材
5,11 防振装置
6 第1ゴム部材
7 第2ゴム部材
8 凹凸嵌合部
9 支持部材
12,21 円管
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8