特許第5997990号(P5997990)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5997990電子部品用実装装置および電子部品用実装装置の使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5997990
(24)【登録日】2016年9月2日
(45)【発行日】2016年9月28日
(54)【発明の名称】電子部品用実装装置および電子部品用実装装置の使用方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 13/04 20060101AFI20160915BHJP
【FI】
   H05K13/04 Z
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-201176(P2012-201176)
(22)【出願日】2012年9月13日
(65)【公開番号】特開2014-56952(P2014-56952A)
(43)【公開日】2014年3月27日
【審査請求日】2015年4月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 巧
【審査官】 中田 誠二郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−017328(JP,A)
【文献】 特開2012−238714(JP,A)
【文献】 特開2004−281958(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方に向けて突出する突子と、
電子部品を吸着する吸着ノズルを水平方向と上下方向とに移動させる部品移動部と、
前記吸着ノズルの軸線とは直交しかつ吸着ノズルと一体に移動する被測定面を前記突子に上方から当接させた状態で高さを測定する高さ測定部と、
前記高さ測定部による高さの測定を前記被測定面の複数の被測定点において行って得た複数の高さデータに基づいて前記吸着ノズルの部品吸着面の傾斜角度が予め定めた角度より小さいか否かを判定する判定部とを備え
前記被測定面は、前記吸着ノズルの部品吸着面、前記吸着ノズルの部品吸着面に吸着された板状部材または電子部品の下面によって構成され、
前記板状部材または電子部品の下面は、前記部品吸着面より広く形成されていることを特徴とする電子部品用実装装置。
【請求項2】
上方に向けて突出する突子と、
電子部品を吸着する吸着ノズルを水平方向と上下方向とに移動させる部品移動部と、
前記吸着ノズルの軸線とは直交しかつ吸着ノズルと一体に移動する被測定面を前記突子に上方から当接させた状態で高さを測定する高さ測定部と、
前記高さ測定部による高さの測定を前記被測定面の複数の被測定点において行って得た複数の高さデータに基づいて前記吸着ノズルの部品吸着面の傾斜角度が予め定めた角度より小さいか否かを判定する判定部とを備え、
前記突子の上端の高さは、前記電子部品が実装される基板の実装面の高さと等しくなるように形成されていることを特徴とする電子部品用実装装置。
【請求項3】
請求項1記載の電子部品用実装装置において、
前記突子の上端の高さは、前記電子部品が実装される基板の実装面の高さと等しくなるように形成されていることを特徴とする電子部品用実装装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のうちいずれか一つに記載の電子部品用実装装置において、
前記突子は、前記電子部品が基板に実装される実装位置の近傍に配置されていることを特徴とする電子部品用実装装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のうちいずれか一つに記載の電子部品用実装装置において、
前記突子は、前記被測定面が前記部品移動部による駆動で押し付けられた状態において弾性変形することがない十分な剛性を有し、
前記突子の上面は、上方に向けて凸になる球面であることを特徴とする電子部品用実装装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のうちいずれか一つに記載の電子部品用実装装置の使用方法であって、前記高さ測定部による測定は、メンテナンス時、実装用基板や電子部品の準備時を含む実装中断時、または実装中の部品、基板入替に起因する待機時、予め設定した使用回数に達した時に実装を中断して実施されることを特徴とする電子部品用実装装置の使用方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸着ノズルの傾斜による不良を判定する判定部を備えた電子部品用実装装置およびこの電子部品用実装装置の使用方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、吸着ノズルが傾斜していることを検出可能な実装装置としては、例えば特許文献1に記載されているものがある。
特許文献1に開示されている実装装置は、吸着ノズルに吸着された電子部品をカメラで撮像して認識し、画像データから得られた位置情報に基づいて吸着ノズルの傾きを算出する。そして、この実装装置は、吸着ノズルの傾斜が補正されるように電子部品を実装する。このため、この特許文献1に記載されている実装装置によれば、吸着ノズルが傾斜している場合であっても、実装時に電子部品が基板に接触する位置を補正することは可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−286200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されている実装装置では、傾斜した吸着ノズルを使用して電子部品を実装することが原因で後述する不具合が生じるおそれがある。この不具合とは、たとえば図8(A)〜(C)や図9(A)〜(C)に示すような不具合である。図8および図9において、符号1で示すものは吸着ノズル、2は電子部品、3は実装用基板を示す。図8(A)〜(B)に示すように、傾斜した吸着ノズル1に吸着された電子部品2が基板3に接触すると、同図(C)に示すように、電子部品2が傾斜した吸着ノズル1と略水平な基板3とに挟まれ、これら両者に対してスリップして水平方向に移動してしまうおそれがある。この場合は、電子部品2の実装位置が変わってしまう。
【0005】
また、図9(A)〜(B)に示すように、傾斜した吸着ノズル1に吸着された電子部品2の一端部が基板3に衝突してしまい、この衝突部分に生じる衝撃によって電子部品2の前記一端部が破損するおそれがある。
さらに、図9(C)に示すように、実装時に電子部品2が前記衝撃によって吸着ノズル1の吸着面1aから離れ、基板3に倣うように実装位置に載せられることがある。この場合は、吸着ノズル1が電子部品2の中央から離れた部分を押すから、電子部品2を基板2に押し付ける荷重の分布が均等ではなくなってしまう。このように前記荷重が電子部品2に偏って加えられると、電子部品2の電極(図示せず)と基板3との接触部分が接触不良を起こし易くなる。
【0006】
本発明はこのような問題を解消するためになされたもので、傾斜した吸着ノズルによって電子部品が基板に実装されることを確実に防ぐことが可能な電子部品用実装装置および電子部品用実装装置の使用方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために、本発明に係る電子部品用実装装置は、上方に向けて突出する突子と、電子部品を吸着する吸着ノズルを水平方向と上下方向とに移動させる部品移動部と、前記吸着ノズルの軸線とは直交しかつ吸着ノズルと一体に移動する被測定面を前記突子に上方から当接させた状態で高さを測定する高さ測定部と、前記高さ測定部による高さの測定を前記被測定面の複数の被測定点において行って得た複数の高さデータに基づいて前記吸着ノズルの部品吸着面の傾斜角度が予め定めた角度より小さいか否かを判定する判定部とを備え、前記被測定面は、前記吸着ノズルの部品吸着面、前記吸着ノズルの部品吸着面に吸着された板状部材または電子部品の下面によって構成され、前記板状部材または電子部品の下面は、前記部品吸着面より広く形成されていることを特徴とするものである。
【0008】
また、本発明に係る電子部品用実装装置は、上方に向けて突出する突子と、電子部品を吸着する吸着ノズルを水平方向と上下方向とに移動させる部品移動部と、前記吸着ノズルの軸線とは直交しかつ吸着ノズルと一体に移動する被測定面を前記突子に上方から当接させた状態で高さを測定する高さ測定部と、前記高さ測定部による高さの測定を前記被測定面の複数の被測定点において行って得た複数の高さデータに基づいて前記吸着ノズルの部品吸着面の傾斜角度が予め定めた角度より小さいか否かを判定する判定部とを備え、前記突子の上端の高さは、前記電子部品が実装される基板の実装面の高さと等しくなるように形成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明は、前記発明において、前記突子の上端の高さは、前記電子部品が実装される基板の実装面の高さと等しくなるように形成されていることを特徴とする。
【0010】
本発明は、前記発明において、前記突子は、前記電子部品が基板に実装される実装位置の近傍に配置されていることを特徴とする。
【0011】
本発明は、前記発明において、前記突子は、前記被測定面が前記部品移動部による駆動で押し付けられた状態において弾性変形することがない十分な剛性を有し、前記突子の上面は、上方に向けて凸になる球面であることを特徴とする。
【0012】
本発明は、前記発明に係る電子部品用実装装置の使用方法であって、前記高さ測定部による測定は、メンテナンス時、実装用基板や電子部品の準備時を含む実装中断時、または実装中の部品、基板入替に起因する待機時、予め設定した使用回数に達した時に実装を中断して実施されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、吸着面が予め定めた角度以上に大きく傾斜した吸着ノズルを判別することができる。このため、本発明に係る電子部品用実装装置によれば、不良発生のおそれがある吸着ノズルを交換したり、この吸着ノズルを使用しない実装形態に切り換えることができるから、部品吸着面の傾斜角度が予め定めた角度より小さい(正常の範囲内にある)吸着ノズルを使用して実装を行うことができる。
したがって、本発明によれば、電子部品の実装位置の精度を高く保つことができるとともに、実装時に電子部品が破損したり、電子部品と基板との接触部分が接触不良を起こすことを確実に防ぐことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1の実施の形態による電子部品用実装装置の構成を示すブロック図である。
図2】吸着ノズルと突子の側面図で、同図(A)は高さ測定を行っている状態を示し、同図(B)は吸着ノズルが突子の上方に離間している状態を示す。
図3】板状部材を吸着した吸着ノズルと突子の側面図で、同図(A)は高さ測定を行っている状態を示し、同図(B)は吸着ノズルが突子の上方に離間している状態を示す。
図4】部品吸着面の被測定点の位置を説明するための平面図である。
図5】板状部材または電子部品の下面の被測定点の位置を説明するための平面図である。
図6】本発明に係る電子部品用実装装置の動作を説明するためのフローチャートである。
図7】第2の実施の形態による吸着ノズルと突子の側面図である。
図8】傾斜した吸着ノズルと電子部品の実装時の状態を示す側面図で、同図(A)は実装前の状態を示し、同図(B)は電子部品が基板に接触した状態を示し、同図(C)は電子部品がスリップした状態を示す。
図9】傾斜した吸着ノズルと電子部品の実装時の状態を示す側面図で、同図(A)は実装前の状態を示し、同図(B)は電子部品が基板に衝突した状態を示し、同図(C)は電子部品が吸着ノズルから離れて実装された状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1の実施の形態)
以下、本発明に係る電子部品用実装装置および電子部品用実装装置の使用方法の一実施の形態を図1図6によって詳細に説明する。これらの図において、前記図8および図9によって説明したものと同一もしくは同等の部材については、同一符号を付し詳細な説明を適宜省略する。
図1に示す電子部品用実装装置11は、基台部12に設けられた電子部品供給部13から電子部品2を部品移動部14によって基板搬送部15の基板3に実装するものである。前記電子部品供給部13は、例えばフリップチップ(パッケージ)などの電子部品2を供給できるものが用いられている。前記基板搬送部15は、詳細には図示していないが、コンベアによって基板3を搬送するものが用いられている。
【0016】
前記部品移動部14は、ヘッドユニット16をX方向移動装置17とY方向移動装置18とによって水平な2次元方向に移動させる構成のものである。前記ヘッドユニット16には、前記吸着ノズル1を支持する複数の吸着ヘッド19と、各吸着ノズル1を上下方向の軸線回りに回転させる回転装置20とが設けられている。各吸着ヘッド19には、吸着ノズル1を昇降させるための昇降装置21がそれぞれ設けられている。
【0017】
前記昇降装置21は、実装時に電子部品2を基板3に押し付ける荷重を制御する荷重制御機構(図示せず)を備えている。この荷重制御機構は、実装時に吸着ノズル1が下降する行程で電子部品2が基板3に接触したときの反力を検出し、この反力の大きさに基づいて吸着ノズル1に付与する荷重を増減させることができるものが用いられている。この荷重制御機構によれば、電子部品2が基板3に接触したか否かを判定することができる。
【0018】
吸着ノズル1の下端には、図2に示すように、平坦な部品吸着面1aが形成されている。この実施の形態による吸着ノズル1の部品吸着面1aは、吸着ノズル1の軸線C(図2参照)とは直交しており、図4に示すように、平面視において空気吸引口22を囲む円環状に形成されている。なお、部品吸着面1aや空気吸引口22の形状は、図4に示す形状に限定されることはなく、適宜変更することができる。前記部品吸着面1aは、本発明でいう「被測定面」を構成するものである。
【0019】
前記基台部12には、前記吸着ノズル1の下面(部品吸着面1a)の傾斜を検出するための突子23と、この電子部品用実装装置1の各種の装置の動作を制御するための制御装置24とが設けられている。
前記突子23は、図2に示すように、上下方向に延びる円柱状に形成されており、前記基台部12のベースプレート25や、前記基板搬送部15のコンベアフレーム(図示せず)などに固定されている。
【0020】
この実施の形態による前記突子23は、金属によって形成されており、前記吸着ノズル1が前記昇降装置21によって下降されて押し付けられた状態においても、弾性変形することがない十分な剛性を有している。
この突子23の上端部は、半球状に形成されている。すなわち、この突子23の上面23aは、上方に向けて凸になる球面である。
【0021】
この突子23の上端の高さは、前記基板搬送部15上に載せられた基板3の実装面の高さと等しくなるように形成されている。
また、この突子23は、前記電子部品2が基板3に実装される実装位置の近傍に配置されている。この実施の形態による突子23は、前記コンベアと隣接するように位置付けられている。
【0022】
前記制御装置24は、図1に示すように、実装部31と、高さ測定部32と、判定部33と、記憶部34とを有し、表示装置35が接続されている。この表示装置35は、実装装置1の運転状況の表示や各種のエラー表示などを行うためのものである。
前記実装部31は、前記電子部品供給部13と、前記基板搬送部15と、前記部品移動部14などの動作を制御する。
【0023】
前記高さ測定部32は、吸着ノズル1の高さを測定するためのものである。この実施の形態による高さ測定部32は、図2(A)に示すように、吸着ノズル1の部品吸着面1aを前記突子23に上方から当接させたり、図3(A)に示すように、前記部品吸着面1aに吸着された板状部材36や電子部品2などを前記突子23に上方から当接させた状態で吸着ノズル1の高さを測定する。前記板状部材36と電子部品2の下面は、吸着ノズル1の部品吸着面1aより広く形成されている。
【0024】
前記板状部材36は、表裏両面の平面度が高く、かつ厚みが高い精度で形成されたガラス板または金属板を使用することができる。この実施の形態においては、前記部品吸着面1aと、板状部材36の下面と、前記電子部品2の下面とによって、本発明でいう「被測定面」が構成されている。突子23の上面23aは球面であり、この突子23と部品吸着面1a、板状部材36あるいは電子部品2の下面との接触は点接触になる。このため、前記測定時には部品吸着面1a、板状部材36あるいは電子部品2の下面の1箇所の高さが測定される。
【0025】
前記高さの測定を行うにあたっては、部品吸着面1aや、板状部材36の下面あるいは電子部品2の下面が突子23に当接した瞬間の高さを測定する他に、吸着ノズル1が予め定めた荷重で突子23を押す状態で行うことができる。この予め定めた荷重は、実際に電子部品2を基板3に実装する場合と同等の結果が得られるように、実装時に電子部品2を基板3に押し付けるときの実装荷重とすることができる。
【0026】
前記被測定面(部品吸着面1aや板状部材36、電子部品2の下面)が突子23に当接している状態の吸着ノズル1の高さは、基台部12の予め定めた基準位置と例えば吸着ノズル1の部品吸着面1aとの距離として求めることができる。吸着ノズル1が突子23に当接したか否かを判定したり、吸着ノズル1が突子23を所定の荷重で押すように荷重を付加するためには、前記昇降装置21の前記荷重制御機構を用いて行うことができる。
【0027】
この高さ測定部32による高さ測定は、一つの被測定面において複数の被測定点について行われる。複数の被測定点の位置や、各被測定点の測定順序は、データとして記憶部34に保存され、高さ測定部32によって必要に応じて記憶部34から読み出される。
【0028】
吸着ノズル1の部品吸着面1aを突子23に当接させて高さ測定を行う場合は、例えば図4(A)〜(D)に示すように、吸着ノズル1を水平な2方向(X方向とY方向)に移動させて4箇所の被測定点P1〜P4について行うことができる。図4(A)〜(D)は、突子23と部品吸着面1aとを上方から見た状態を模式的に表現した平面図で、X方向とY方向の座標が分かるように描いてある。図4(A)〜(D)においては、吸着ノズル1の軸線Cの位置を点Cとして描いてある。
【0029】
被測定点P1は、図4(A)に示すように、吸着ノズル1の軸線Cの位置を座標(X1,Y1)に位置付けて吸着ノズル1を突子23に当接させたときの接触点の位置である。被測定点P1は、図4(A)において部品吸着面1aの右上側に位置している。
被測定点P2は、図4(B)に示すように、吸着ノズル1の軸線Cの位置を座標(X2,Y1)に位置付けて吸着ノズル1を突子23に当接させたときの接触点の位置である。被測定点P2は、図4(B)において部品吸着面1aの左上側に位置している。
【0030】
被測定点P3は、図4(C)に示すように、吸着ノズル1の軸線Cの位置を座標(X2,Y2)に位置付けて吸着ノズル1を突子23に当接させたときの接触点の位置である。被測定点P3は、図4(C)において部品吸着面1aの左下側に位置している。
被測定点P4は、図4(D)に示すように、吸着ノズル1の軸線Cの位置を座標(X1,Y2)に位置付けて吸着ノズル1を突子23に当接させたときの接触点の位置である。被測定点P4は、図4(D)において部品吸着面1aの右下側に位置している。
これらの被測定点P1〜P4について測定して得られた4つの高さデータは、前記記憶部34に保存される。
【0031】
吸着ノズル1に板状部材36や電子部品2を吸着させて高さを測定する場合であっても、複数の被測定点について高さを測定する。
この高さ測定は、例えば図5(A)〜(D)に示すように、4箇所の被測定点Q1〜Q4について行うことができる。図5(A)〜(D)は、突子23と板状部材36とを上方から見た状態を模式的に表現した平面図で、X方向とY方向の座標が分かるように描いてある。
【0032】
被測定点Q1は、図5(A)に示すように、吸着ノズル1の軸線Cの位置を座標(X3,Y3)に位置付けて板状部材36を突子23に当接させたときの接触点の位置である。被測定点Q1は、図5(A)において板状部材36の右上側に位置している。
被測定点Q2は、図5(B)に示すように、吸着ノズル1の軸線Cの位置を座標(X6,Y3)に位置付けて板状部材36を突子23に当接させたときの接触点の位置である。被測定点Q2は、図5(B)において板状部材36の左上側に位置している。
【0033】
被測定点Q3は、図5(C)に示すように、吸着ノズル1の軸線Cの位置を座標(X6,Y6)に位置付けて板状部材36を突子23に当接させたときの接触点の位置である。被測定点Q3は、図5(C)において板状部材36の左下側に位置している。
被測定点Q4は、図5(D)に示すように、吸着ノズル1の軸線Cの位置を座標(X3,Y6)に位置付けて板状部材36を突子23に当接させたときの接触点の位置である。被測定点Q4は、図5(D)において板状部材36の右下側に位置している。
これらの被測定点Q1〜Q4について測定して得られた4つの高さデータも前記記憶部34に保存される。
【0034】
この高さ測定部32による高さの測定は、予め定めた時期に実施される。高さ測定を実施する時期としては、吸着ノズル1の交換作業を含むメンテナンス時、実装精度の異常が検出されたとき、実装用基板3の搬出、搬入が行われているとき、電子部品供給部13において準備をしているとき、所定数の基板3に実装を行ったとき、所定数の電子部品2を実装したときなどである。
高さ測定は、全ての吸着ヘッド19について行う他に、予め定めた吸着ヘッド19のみあるいは予め定めた吸着ノズル1のみについて行うことができる。また、高さ測定は、各吸着ヘッド19に高さ測定の実施順序を予め決めておき、この順序通りに行うこともできる。
【0035】
制御装置24の判定部33は、前記高さ測定部32による高さの測定を複数の被測定点について行って得た前記複数の高さデータに基づいて前記吸着ノズル1の部品吸着面1aの傾斜角度が予め定めた角度より小さいか否かを判定する。この判定は、例えば以下のように行うことができる。例えば、被測定点P1〜P4あるいは被測定点Q1〜Q4について測定した4つの高さデータの最大値と最小値との差を求め、この差を予め定めた閾値と比較する。この閾値は、前記部品吸着面1aの傾斜角度が正常の範囲にあるときの前記最大値と最小値との差の値である。判定部33は、高さデータの最大値と最小値との差が前記閾値以上である場合は不良であると判定し、前記差が前記閾値より小さい場合は良、すなわち部品吸着面1aが正常の範囲にあると判定する。
【0036】
部品吸着面1aの傾斜角度が不良であると判定部33が判定した場合は、表示装置35が吸着ノズル1の異常を示す表示を行う。なお、吸着ノズル1を自動で交換できる機能を有する場合は、異常と判定された吸着ノズル1を新たな吸着ノズル1に交換することができる。また、異常と判定された吸着ノズル1を有する吸着ヘッド19を使用することを止め、それ以降の実装は他の吸着ヘッド19で代用することもできる。
【0037】
次に、前記部品吸着面1aの傾斜角度の良否を判定する方法を図6に示すフローチャートによって説明する。この判定を行うにあたっては、部品吸着面1aや、前記板状部材36あるいは電子部品2の下面に設定された複数の被測定点についてそれぞれ高さを測定する。
【0038】
高さを測定するためには、先ず、図6に示すフローチャートのステップS1において、制御装置24が部品移動部14の動作を制御して吸着ノズル1を所定の位置に移動させる。この所定の位置とは、水平方向の位置と、上下方向の位置とがある。水平方向の所定の位置とは、吸着ノズル1の部品吸着面1aあるいは部品吸着面1aに吸着された板状部材36や電子部品2の下面からなる被測定面の目標とする被測定点が上方から見て突子23の上端と重なる位置である。目標とする被測定点の位置と、各被測定点の測定順序は、高さ測定部32が記憶部34から該当するデータを読み出して設定する。上下方向の所定の位置とは、図2(B)および図3(B)に示すように、前記被測定面が突子23から上方に所定の距離Zだけ離間した座標Z1となる位置である。
【0039】
次に、ステップS2において、昇降装置21が吸着ノズル1を下降させ、被測定点が突子23に接触したときに吸着ノズル1の下降を停止させる。そして、ステップS3において、高さ測定部32が前記接触時の被測定面の上下方向の座標Z2{図2(A)および図3(A)参照}を検出し、座標Z2の高さを高さデータとして記憶部34に保存する。この高さ検出は、ステップS4に示すように、全ての被測定点の高さが検出されるまで実施される。全ての被測定点について高さ測定が終了した後は、ステップS5において、判定部33が部品吸着面1aの傾斜角度が予め定めた角度より小さいか否かを判定する。
【0040】
この判定の結果、前記傾斜角度が予め定めた角度より小さい場合は、表示装置35によって良好である旨の表示を行うか、特に何も実施することなくこの制御が終了される。前記判定の結果、前記傾斜角度が予め定めた角度以上である場合は、ステップS6においてエラー処理が行われる。このステップS6においては、表示装置35が吸着ノズル1の異常を示す文字あるいは絵柄を表示する。部品吸着面1aの傾斜角度は、吸着ノズル1を交換するだけで変わることがある。このため、このときには該当する吸着ノズル1を他の吸着ノズル1と交換してもよい。また、該当する吸着ノズル1を有する吸着ヘッド19を無効化し、他の吸着ヘッド19によって代用することもできる。
【0041】
このように構成された電子部品用実装装置11によれば、部品吸着面1aが予め定めた角度以上に大きく傾斜した吸着ノズル1を判別することができる。このため、この電子部品用実装装置においては、不良発生のおそれがある吸着ノズル1を交換したり、この吸着ノズル1を使用しない実装形態に切り換えることができるから、部品吸着面の傾斜角度が予め定めた角度より小さい(正常の範囲内にある)吸着ノズル1を使用して実装を行うことができる。
したがって、この実施の形態によれば、電子部品2の実装位置の精度を高く保つことができるとともに、実装時に電子部品2が破損したり、電子部品2と基板3との接触部分が接触不良を起こすことを確実に防ぐことが可能になる。
【0042】
部品吸着面1aの傾斜角度は、レーザー光を使用した測距装置(図示せず)を用いても測定可能である。しかし、この測距装置を使用する場合は、レーザ光を上方へ照射させなければならないから、何らかの遮蔽を設けなければならない。また、この種の測距装置で吸着ノズル1の定点を正確に測定できるようにするためには、測距装置とこれを支持する構造を強固に形成しなければならない。このような構造を採ると、基台部12上の占有スペースが広く必要になるから他の装置を設置するうえで制約が多くなるし、製造コストも高くなってしまう。この実施の形態によれば、部品移動部14の昇降装置21を利用して被測定面の高さを測定しているから、前記測距装置を使用する場合と較べて基台部12上のスペースを占有することはないし、安価な突子23が必要になるだけでコストアップも最小限に抑えることができる。
【0043】
この実施の形態による電子部品用実装装置は、高さ測定を行うときに吸着ノズル1の部品吸着面1aに吸着された板状部材36または電子部品2の下面を被測定面とすることができるものである。板状部材36または電子部品2の下面は、吸着ノズル1の部品吸着面1aより広い。このため、この実施形態を採ることにより、測定エリアを拡大することができるから、傾斜の測定の精度を向上させることができる。また、電子部品2の下面を被測定面とすることによって、実際の実装状態に似せて傾斜の有無を判定することができるから、不良発生の確率を更に低減できる。
【0044】
この実施の形態による前記突子23の上端の高さは、前記電子部品2が実装される基板3の実装面の高さと等しくなるように形成されている。
このため、この実施の形態によれば、実際の実装高さと同じ高さで傾斜の有無を判定できるから、不良の発生をより一層確実に防止することができる。
【0045】
この実施の形態による前記突子23は、前記電子部品2が基板3に実装される実装位置の近傍に配置されている。
このため、この実施の形態によれば、実際の実装位置の近傍で傾斜の有無を判定することができるから、不良の発生をより一層確実に防止することができる。
【0046】
この実施の形態による前記突子23は、前記被測定面が前記部品移動部14による駆動で押し付けられた状態において弾性変形することがない十分な剛性を有している。前記突子23の上面23aは、上方に向けて凸になる球面である。
このため、この実施の形態によれば、前記吸着ノズル1の下降を前記突子23によって確実に規制でき、突子23は被測定面に点接触によって接触するから、被測定面の高さを高い精度で測定することができる。
【0047】
この実施の形態による高さ測定部32による測定は、メンテナンス時、実装用基板3や電子部品2の準備時を含む実装中断時または実装中の部品、基板入替に起因する待機時、予め設定した使用回数に達した時に実装を中断して実施することができる。
このため、前記被測定面の高さを測定するために実装動作が中断されることがない。したがって、この実施の形態によれば、高さを測定するために吸着ノズル1を使用するにもかかわらず、生産性が高い電子部品用実装装置を提供することができる。
【0048】
(第2の実施の形態)
被測定面と突子の接触を検出するためには、図7に示すように、突子23側に設けた接触検知機構を用いて行うことができる。図7において、前記図1図6によって説明したものと同一もしくは同等の部材については、同一符号を付し詳細な説明を適宜省略する。
図7に示す突子23は、接触検知機構41を介して基台部12のベースプレートに支持されている。接触検知機構41としては、詳細には図示してはいないが、ロードセルやタッチセンサーなどを用いることができる。
この実施の形態を採る場合であっても、上述した第1の実施の形態を採るときと同等の効果が得られる。
【符号の説明】
【0049】
1…吸着ノズル、1a…部品吸着面、2…電子部品、3…基板、11…電子部品用実装装置、12…基台部、14…部品移動部、23…突子、32…高さ測定部、33…判定部、36…板状部材、41…接触検知機構、P1〜P4,Q1〜Q4…被測定点。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9