【実施例1】
【0021】
本発明は、強い力で安定したハンドル回転が求められる両軸受けリールに適用して優れた効果を奏するものであると共に、比較的小さな魚釣りに適するスピニングリールに適用しても優れた効果を奏するものであるが、以下に記載する実施例は、両軸受けリール1の一つの形態であるレバードラグ式リール1について記載する。レバードラグ式リール1は、
図8に示すように、その下側部に設けた金属製の取付け脚2を釣竿60の上側部に形成した取付け部61に装着して取り付けられ、その取り付け状態において、多くの使用状態として採用される右側ハンドル操作の場合について説明する。
【0022】
本発明に係るレバードラグ式リール1は、
図8に示すように、釣竿60の竿先に向かって右側に、釣糸62をスプール15に巻き取り操作するハンドル12及びドラグ機構13のドラグ力を調整するドラグレバー14が配置され、操作者のハンドル側の手(右手RH)でハンドル12を操作し、レバードラグ式リール1の反ハンドル側となる左側面に沿わせた操作者の反ハンドル側の手(左手LH)によって、釣竿60を下方から支えると共に左手LHの親指LH1によって、ドラグレバー14を操作可能とする小型のレバードラグ式リール1を構成している。
【0023】
このレバードラグ式リール1は、ジグと称される錘式のルアーを使用し、釣り竿から釣糸62を略真下へ向けて例えば海中50m乃至それ以上の深さまで垂らして比較的大きな魚を狙うジギング釣りとして好適なものである。
【0024】
以下、本発明に係るレバードラグ式リール1の構成について更に詳細に記載する。以下の説明において、レバードラグ式リール1の取付け脚2を釣竿60の上側部に形成した取付け部61に装着した状態において、レバードラグ式リール1を後方から釣竿60の竿先に向かって見た状態で、右側及び左側と呼称して説明することとする。
【0025】
本発明に係るレバードラグ式リール1は、リール本体11と、リール本体11に支持されたスプール軸16に回転自在に支持されたスプール15と、スプール15の釣り糸繰り出し方向回転のドラグ力を調整するドラグ機構13と、ドラグ機構13を介してスプール15を回転駆動する歯車装置GAと、歯車装置GAを回転駆動するハンドル軸を回転させるためのハンドル12と、ドラグ機構13のドラグ力を調整するドラグレバー14を備えている。また、ドラグ機構13は、ドラグ力の強弱調整範囲をプリセットするドラグ調整装置50を備えている。
【0026】
金属製のリール本体11は、円形状のスプール15の左側面を覆う側面視円形状の左側の第1側板11Aと、円形状のスプール15の右側面を覆う側面視円形状の右側の第2側板11Bが、複数の連結部11Cにて連結された状態で対向配置された構成を主体部とし、これに第1側板11Aの外側を覆うように第1側板11Aにネジ11Hで固定された側面視円形状の金属製の第1側板カバー11Dと、第2側板11Bの外側を覆うように第2側板11Bにネジ11Gで固定された金属製の第2側板カバー11Eを備えて構成である。ネジ11Hは、操作者の左手LHの手のひらが接触しないように、第1側板カバー11Dの外表面から突出しないように窪みに配置されている。
【0027】
第1側板カバー11Dの左側面は、操作者の左手LHの手のひらが沿い易いように、周縁部から中央部に向けて左外方へ大きな曲率で突出した曲面11D1をなし、略球面状に膨らんだ丸み形状を呈している。第2側板カバー11Eは、円形状のスプール15の右側面を覆う側面視円形状部分と、金属製のハンドル取り付け部12Tに連結された金属製のメインギア22を収容する部分とを一体形成した金属製の第2側板内カバー11E1と、ハンドル取り付け部12Tを収容する金属製の第2側板外カバー11E2とで構成している。第2側板内カバー11E1がネジ11Gで第2側板11Bに固定されており、第2側板内カバー11E1と第2側板外カバー11E2は、ハンドル取り付け部12Tがメインギア22と連結される部分で連通する状態にネジ11Jで結合されている。なお、第2側板内カバー11E1内のメインギア22を覆うために、ギアカバー11E3を備えており、ギアカバー11E3は、外側端が第2側板内カバー11E1に連接し内側端がネジ11Kで第2側板11Bに取り付けられた構成である。
【0028】
リール本体11には、スプール軸16の左右両側部が、第1側板11Aの一部である第1側板カバー11Dに設けた軸支持部11D2と、第2側板11Bの一部である第2側板カバー11Eに設けた軸支持部11D3に支持されており、それによって、リール本体11に対して金属製のスプール軸16が、回転不能且つスプール軸16の軸方向へ移動可能(左右移動可能)である。実施例では、第2側板カバー11Eの外面部(具体的には第2側板内カバー11E1の外面部)に、スプール軸16と同軸に膨出形成した膨出部11E1Bが形成されており、膨出部11E1Bを貫通してスプール軸16が、その軸方向に移動可能且つ回転不能に延出するように、膨出部11E1Bに軸支持部11D3が形成されている。軸支持部11D2の一部には、スプール軸16から突出した回り止めピン16Pが嵌まり込む溝11D21が形成されており、回り止めピン16Pが溝11D21に嵌まり込んだ状態で、スプール軸16が回転不能且つ軸方向へ移動可能(左右移動可能)である。
【0029】
釣り糸62を巻き取る金属製のスプール15は、釣り糸62を巻き取る円筒状の小径の糸巻き胴部15Aと、糸巻き胴部15Aの左右両側に設けた円形状の大径のフランジ部15B、15Cを一体形成している。スプール15は、左右両側部が軸受け17A、17Bを介してスプール軸16対して遊転可能に支持されている。この状態で、左側のフランジ部15Bは、リール本体11の第1側板11Aの内側に入り込んだ状態で配置され、右側のフランジ部15Cは、リール本体11の第2側板11Bの内側に入り込んだ状態で配置される。
【0030】
軸受け17Aは、スプール15の左側の第1凹部に装着されており、スプール軸16に取付けたワッシャ16Wと軸受け17Aとに付勢力が働く4枚の皿バネからなる第1付勢部材27によって、
図7で右方向となる内方へ付勢され、スプール15の第1凹部に押し圧されている。軸受け17Bは、スプール15の右側の第2凹部に装着されており、後述の軸受け25との間のスプール軸16の周囲に配置したコイルバネからなる第2付勢部材28によって、スプール軸16の内方(
図7で左方)に付勢されている。この第2付勢部材28によって、ドラグフリー状態において、第2摩擦板13Bから第1摩擦板13Aが離間するように、スプール15をスプール軸16の内方(
図7で左方)に付勢する。
【0031】
スプール15は、リール本体11に回転自在に取り付けたハンドル12の回転操作によって、釣り糸62がスプール15に巻き取られる。スプール15は、2号撚り糸(PEラインと称する)の釣糸62を略600mの長さまで安定に巻回できるように、糸巻き胴部15A及び左右両側のフランジ部15B、15Cが形成されている。
【0032】
ハンドル12は、板状の金属製のハンドルアーム12Bと、ハンドルノブとして若干の弾力を有するゴムや合成樹脂などで形成した握り部12Dを備えており、ハンドル取り付け部12Tにてリール本体11に回転自在に取付けられている。具体的には、ハンドル取り付け部12Tは、第2側板カバー11E内(図示では第2側板外カバー11E2内)に設けた軸受け18A、18Bによって、スプール軸16の軸線16Sに平行な軸線12ASでもって金属製のハンドル軸12Aが回転自在に支持され、第2側板カバー11Eを貫通したハンドル軸12Aの外側端部(図示では右側端部)に、ネジ19によってハンドルアーム12Bの基部が固定され、ハンドルアーム12Bの先端部に握り部12Dをハンドルノブ支持軸部12Eによって回転自在に支持している。ハンドルノブ支持軸部12Eは、ハンドルアーム12Bに略直角に交差するように、ハンドルアーム12Bの先端部に固定したハンドルノブ軸12Cに、軸受け20A、20Bを介して握り部12Dと一体の筒部12D1が回転自在に支持された構成である。これによって、握り部12Dを操作者の右手によって握持した状態で、スプール15へ釣り糸62の巻き取りを行なう場合、ハンドル軸12Aを中心として握り部12Dを釣り糸巻き取り方向(レバードラグ式リール1の右側面視で時計方向)に回転させることに伴って、ハンドルノブ軸12Cを中心として握り部12Dが回転するため、スプール15へ釣り糸62の巻き取りを連続して行なうことができる。
【0033】
ハンドル12は、スプール15へ釣り糸62を巻き取る方向(
図3及び
図4に矢印Yで示す正方向回転という)へは回転できるがその逆方向回転はできないようにするために、第2側板カバー11E内(具体的には第2側板外カバー11E2内)において、軸受け18A、18B間にワンウェイクラッチ21が設けられている。ワンウェイクラッチ21は周知の構成であり、第2側板カバー11E側のアウターハウジングと、ハンドル軸12A側のインナーハウジングとの間に介在したローラの作用によって、ハンドル軸12Aが前記正回転方向のみ許容される周知の仕組みである。このため、ハンドル12の正方向回転によってハンドル軸12Aが正方向回転し、後述のドラグ機構13を介してスプール15が釣り糸62を巻き取る方向へ回転する。一方、釣り糸62の繰り出しによってスプール15が繰り出し方向回転(釣り糸62を巻き取る方向とは逆方向の回転)する場合、その回転が後述のドラグ機構13及びメインギア22等を介してハンドル軸12Aへ伝達されるが、ワンウェイクラッチ21の作用によってハンドル軸12Aは回転せず、従ってハンドル12も逆方向回転(釣り糸62を巻き取る方向Y方向とは逆方向の回転)しないように動作する。
【0034】
ハンドル12の正方向回転をスプール15へ伝達するために、ハンドル軸12Aの左端部に固定したメインギア22に噛み合うように金属製のピニオンギア23を備えている。軸受け24は、周知のボールベアリング型式の軸受けであり、その外輪が第2側板カバー11E内の凹部に装着され内輪がピニオンギア23の外周の外側端部に装着されており、それによって、ピニオンギア23が第2側板カバー11E内に回転自在に支持され、ピニオンギア23は、スプール軸16に対しては回転自在且つスプール軸16が軸方向移動自在なるように装着されている。この状態で、スプール軸16の軸方向移動は許容するが、メインギア22の回転に伴ってピニオンギア23が回転する関係である。また、ピニオンギア23の内側端部には、後述のドラグ機構13の第2摩擦板13Bと一体の取付け板13B1の内周部分が嵌合し、ピニオンギア23と第2摩擦板13Bが一体化されている。
【0035】
ドラグ機構13は、回転しないスプール軸16に回転自在に装着されたスプール15に釣り糸62を巻き取る場合、巻き取り操作するハンドルの回転をスプール15に伝達するための回転伝達力の強弱を調整すると共に、スプール15の釣り糸繰り出し方向回転に制動力を加え、この制動力を調整し、また変更するためのものである。
【0036】
このためドラグ機構13は、ドラグ力の強弱を揺動動作にて調整する金属製のドラグレバー14と、スプール15と共に回転するようにスプール15の一側面であるハンドル側(図示では竿先方向に向かって右側)の円形状のフランジ部15Cの側面に固定した円板状の第1摩擦板13Aと、第1摩擦板13Aに当接可能に対峙しハンドル12の回転に伴って回転する円板状の第2摩擦板13Bと、スプール軸16に対してスプール15をスプール軸16の軸方向(ハンドル側となる図示では右側)に向けて付勢する4枚の皿バネからなる第1付勢部材27と、ドラグフリー状態で第2摩擦板13Bから第1摩擦板13Aが離間するようにスプール15をスプール軸16の軸方向(反ハンドル側となる図示では左側)に付勢するコイルバネからなる第2付勢部材28と、ドラグレバー14の揺動動作にてスプール軸16の軸方向移動を制御するカム機構30と、ドラグレバー14の揺動によるドラグ力の強弱調整範囲を予め所定の範囲に設定する(プリセットという)ドラグ調整装置50とを備えている。これによって、ドラグレバー14の揺動動作にて第1摩擦板13Aと第2摩擦板13Bとの摩擦係合力(ドラグ力)の強弱が調整され、スプール15の釣り糸繰り出し方向回転に加える制動力が調整される。
【0037】
なお、第1付勢部材27の付勢力(バネ力)は、第2付勢部材28の付勢力(バネ力)よりも大きく設定されている。また、第1付勢部材27と第2付勢部材28によって、スプール15の自由回転時のガタツキを防止している。
【0038】
第2摩擦板13Bは、スプール軸16に対して、ピニオンギア23の回転に伴って回転するが、スプール軸16が軸方向へ移動しても移動しないように移動不能且つ回転可能である。このため、第2摩擦板13Bは、軸受け25を介してスプール軸16に遊転可能に支持され且つスプール軸16の移動自在に支持される。この軸受け25は、周知のボールベアリング型式であり、その外輪が第2摩擦板13Bの凹部に装着され、内輪がスプール軸16に遊嵌されている。これによってスプール軸16に対して、ピニオンギア23と共に第2摩擦板13Bが回転自在であり、且つスプール軸16はその軸方向移動自在である。
【0039】
第2側板カバー11Eの外面部(具体的には第2側板内カバー11E1の外面部)に、スプール軸16と同軸に膨出形成した膨出部11E1Bは、スプール軸16のピニオンギア23よりもハンドル12側へ延出する部分を取り囲んで二段階に膨出形成されており、その二段階の二段目を貫通してスプール軸16がその軸方向に移動可能に延出するように、軸受け部11D3で支持されている。
【0040】
ドラグレバー14は、第2側板カバー11Eの外面部(具体的には第2側板内カバー11E1の外面部)の膨出部11E1Bに揺動自在(回動自在ともいう)に支持されている。具体的には、ドラグレバー14の基部に形成した円筒状の支持部14Aが、膨出部11E1Bの一段目の円筒状外面に揺動自在(回動自在ともいう)に組み合わされ、支持部14Aの内周の一部に形成した環状の係止部14Bが、膨出部11E1Bの二段目の外周面に取り付けたC形リングまたはE形リングの抜け止め部材141によって抜け止め保持されている。この状態でドラグレバー14は、第2側板内カバー11E1に対してスプール軸16を中心として揺動自在(回動自在ともいう)に保持される。なお、ドラグレバー14の揺動(回動ともいう)範囲は、略130度である。
【0041】
カム機構30は、ドラグレバー14側の第1カム31と、第1カム31に噛み合うリール本体11側の第2カム32とで構成される。第1カム31は、環状の係止部141の外側面に沿って配置され、筒状の膨出部11E1Bを取り囲むように円筒状の支持部14Aの内側に回り止め状態に取り付けた傾斜カムである。第1カム31は傾斜カムと称するように、ハンドル12側へ向けて徐々に高く傾斜した円弧状のカム面31Aを形成している。製作のし易さ、取り付けのし易さ、ドラグ動作の安定化のために、第1カム31は
図9に示すように円形状リングをなし、カム面31Aは、スプール15の軸線16Sを中心とした半径方向の対称位置に形成された対称カム面31Aの構成であり、この対称のカム面31Aは、ハンドル12側から見て反時計回りに傾斜が徐々に強くなる(ハンドル12側へ近づくように高くなる)形状である。これによって第1カム31は、スプール軸16を中心としてドラグレバー14と共に揺動(回動)する。なお、第1カム31は、支持部14Aの内側に支持部14Aと一体形成でもよい。
【0042】
第2カム32は、第1カム31に対向配置したリール本体側カムであり、第1カム31のカム面31Aと相互摺動するカム部32Aを備えている。膨出部11E1Bの二段目の外周は、図示の六角形のような多角形部11E1B6を備え、第2カム32は、
図10に示すように、この多角形部11E1B6に嵌合する内周面32B1とドラグレバー14の支持部14Aの先端部分の円形状の内周面に沿う円形状の外周面とを形成した環状のカム体32Bと、カム体32Bのスプール軸16を中心とした半径方向の180度対称位置で外方へ突出するように取付けた棒状の突起カム形態のカム部32Aとで構成されている。
【0043】
カム機構30として、第1カム31と第2カム32のいずれか一方が傾斜カム形態であり、他方が突起カム形態である技術は、例えば、特開平11−155442号公報で公知であるため、この基本的な技術のみは新規技術ではないが、安定動作を達成するための構成については、本発明によって新規に得られたものである。
【0044】
これによって、第2カム32は、膨出部11E1Bの多角形部11E1B6に回転不能状態で且つスプール軸16の軸方向へ移動可能状態であり、ドラグレバー14は、スプール軸16の軸方向へ移動不能状態であって第2カム32に対して揺動(回動)自在である。
【0045】
第1カム31のカム面の具体的な構成を
図9の(イ)〜(ハ)に示す。
図9の(イ)は第1カム31の側面図、
図9の(ロ)は第1カム31の平面図、
図9の(ハ)は第1カム31のカム面31Aの展開図である。これらの図において、スプール軸16の軸線16Sを中心とした半径方向の180度対称位置であるP及びQの範囲に、同じ形状でカム面31Aが形成されている。Aの範囲が平坦カム面であり、Bの範囲がきつい傾斜の第1傾斜カム面であり、Cの範囲が緩い傾斜の第2傾斜カム面であり、Dの範囲が更に緩い傾斜の第3傾斜カム面である。第2カム32のカム部は、
図10の(イ)(ロ)に示すように、第2カム32の180度対称位置に設けた突起カム形態のカム部32Aが、P及びQの範囲でカム面31Aと相互摺動する。
【0046】
ドラグレバー14を手動操作することによって、ドラグ機構13の摩擦係合力(ドラグ力)の強弱を調整するが、その場合のドラグ力の強弱調整範囲の初期設定は、ドラグ調整装置50によって行なわれる。ドラグ調整装置50は、ドラグレバー14を揺動自在(回動自在ともいう)に支持する膨出部11E1Bの先端の多角形部11EB6よりも、ハンドル12側へ延出するスプール軸16の先端部分に形成した雄ネジ16Aと、この雄ネジ16Aに螺合する雌ネジ51Aを内側に形成した有底円筒状をなし第2カム32に相対回転可能に当接したドラグ調整部材51を備えている。
【0047】
ハンドル12側から見て、ドラグ調整部材51を時計回りに回動させることにより第2付勢部材28が圧縮されつつ、雌ネジ51Aと雄ネジ16Aの螺合長さが長くなり、スプール軸16がスプール15を伴ってハンドル12側(
図7で右側)へ僅かに移動し、ドラグ力が僅かに強くなるドラグ力強設定状態となる。また、ハンドル12側から見て、ドラグ調整部材51を反時計回りに回動させることにより第2付勢部材28の圧縮が弱まり、雌ネジ51Aと雄ネジ16Aの螺合長さが短くなり、スプール軸16がスプール15を伴ってハンドル12側から離れる方向(
図7で左側)へ僅かに移動し、ドラグ力が僅かに弱くなるドラグ力弱設定状態となる。このようにドラグ調整装置50によって、ドラグ力の強弱調整範囲の初期設定がなされる。
【0048】
ドラグ調整装置50にて一つの調整範囲に設定した場合、
図7のスプール軸16の軸線16Sより上半分は、第1摩擦板13Aと第2摩擦板13Bの当接力が強い状態、即ちドラグ機構13による強ドラグ状態を示すものであり、
図7のスプール軸16の軸線16Sより下半分が、第1摩擦板13Aと第2摩擦板13Bが離間した状態、即ちドラグ機構13によるドラグ力がゼロ状態のフリー状態を示すものである。
【0049】
第1摩擦板13Aと第2摩擦板13Bとの当接力の強弱が調整されることにより、ドラグ力が調整されるため、この動作を安定させるために、第1摩擦板13Aは耐熱性と耐磨耗性を備えたコルク、合成樹脂等で構成された僅かに弾性を備えたドーナツ状ディスクである。また、第2摩擦板13Bはステンレス等の金属製の円盤状である。
【0050】
ドラグレバー14の揺動によってドラグ力を調整する場合について説明する。ドラグレバー14をドラグフリーの状態とするためには、ドラグレバー14を
図8のR方向(手前側、反時計回り)いっぱいまで(スタート位置まで)揺動(回動)する。これによって、第2カム32の180度対称位置に設けたそれぞれのカム部32Aが、第1カム31のカム面31Aの180度対称位置に設けたそれぞれのAの範囲(ドラグレバー14の揺動(回動)角度が10度の範囲)に位置し、第2付勢部材28の付勢によってスプール軸16がスプール15を伴って
図7の左方向へ移動させるため、それによって第1摩擦板13Aが
図7の左方向へ移動し、第1摩擦板13Aが第2摩擦板13Bから離れた状態となる。これは、釣糸62を竿先方向へ引っ張る作用に対してドラグ力は掛からないゼロの状態である。即ち、スプール15の釣り糸繰り出し方向回転に対して、ドラグ機構13によるドラグ力が掛からない状態となり、スプール15が自由回転状態となるため、キャスティングを行なえる状態となる。
【0051】
このAの状態からドラグレバー14を
図8のF方向(前方、時計回り)へ揺動(回動)することにより生じる相対運動によって、第2カム32の180度対称位置に設けたそれぞれのカム部32Aが、第1カム31のカム面31AのAの範囲からカム面31AのBの範囲へ移行し、180度対称位置に設けたそれぞれのBの範囲(ドラグレバー14の揺動(回動)角度が20度の範囲)のカム面を第2カム32のカム部32Aが登ることにより、第2カム32が
図7の右方向へ移動し、それに伴ってドラグ調整部材51が
図7の右方向へ移動するため、ドラグ調整部材51によってスプール軸16が第2付勢部材28の付勢に抗してハンドル12側(
図7で右側)へ引き寄せられて移動し、それに伴ってスプール15も第1付勢部材27を介して同じ方向へ移動する。このため、それぞれのカム部32Aがカム面31AのBの範囲の略中間位置から第1摩擦板13Aが第2摩擦板13Bに当接し、ドラグ力が掛かり始める状態となり、且つ、ハンドル12の回転によってスプール15が釣り糸62を巻き取り方向へ回転可能となる。
【0052】
この当接が始まった状態から更にドラグレバー14を
図8のF方向(前方、時計回り)へ揺動(回動)することにより、第2カム32の180度対称位置に設けたそれぞれのカム部32Aが第1カム31のカム面31AのCの範囲へ移行し、180度対称位置に設けたそれぞれのCの範囲(ドラグレバー14の揺動(回動)角度が70度の範囲)のカム面を第2カム32のカム部32Aが登ることにより、第2カム32が
図7の右方向へ移動し、それに伴ってドラグ調整部材51が
図7の右方向へ移動するため、上記同様にドラグ調整部材51によってスプール軸16及びスプール15がハンドル12側(
図7で右側)へ引き寄せられて移動し、第1摩擦板13Aが第2摩擦板13Bに当接する当接力が徐々に強くなる。即ち、ドラグ力が徐々に強くなる。
【0053】
Bの範囲のカム面の傾斜をCの範囲のカム面の傾斜よりも強くしているのは、Aの範囲のドラグフリーの状態から速やかにドラグ作用開始状態へ移行できるようにするためであり、Bの範囲のカム面の傾斜の中間位置からドラグ作用が開始し、それ以降はCの範囲のカム面の傾斜に沿ってドラグ力が徐々に強くなるようにしている。
【0054】
Cの範囲を越えてドラグレバー14を
図8のF方向(前方、時計回り)へ揺動(回動)することにより、第2カム32のカム部32Aが第1カム31のカム面31AのCの範囲からDの範囲へ移行し、Dの範囲(ドラグレバー14の揺動(回動)角度が30度の範囲)のカム面を第2カム32のカム部32Aが登ることにより、第2カム32が
図7の右方向へ移動し、それに伴ってドラグ調整部材51が
図7の右方向へ移動するため、上記同様にドラグ調整部材51によってスプール軸16及びスプール15がハンドル12側(
図7で右側)へ引き寄せられて移動し、第1摩擦板13Aが第2摩擦板13Bに当接する当接力が更に強くなる。Dの範囲の最終部がドラグレバー14の揺動(回動)動作の終点であり、このときドラグ力が最大となる。
【0055】
また、ドラグレバー14を
図8のR方向(手前側、反時計回り)へ揺動(回動)することによって、第2カム32のカム部32Aが第1カム31のDの範囲、Cの範囲、Bの範囲を順次経ることに伴って、第1摩擦板13Aが
図7の左方向へ移動してドラグ力が徐々に弱まる。
【0056】
上記のように、ドラグレバー14のF方向(前方、時計回り)、R方向(手前側、反時計回り)への揺動(回動)動作によって、ドラグ力の強弱を調整できるため、実釣中のハンドル12の操作並びにドラグレバー14の操作を適宜行なうことにより、実釣効果を得ることができる。
【0057】
そして、第2カム32の180度対称位置に設けたそれぞれのカム部32Aが、第1カム31の180度対称位置に設けたそれぞれのAの範囲に位置したとき、上記のように、第1摩擦板13Aが
図7の左方向へ移動して、第1摩擦板13Aが第2摩擦板13Bから離れた状態となるため、釣糸62を竿先方向へ引っ張る作用に対してドラグ力は掛からないゼロの状態である。
【0058】
上記の記載から明らかなように、第2カム32のカム部32Aが第1カム31のAの範囲に位置した状態では、スプール15は、ドラグ機構13との連繋やハンドル取り付け部12Tを含むハンドル12側との連繋も外れた状態であるため、スプール15の釣り糸繰り出し方向回転に対して殆んど抵抗がない状態となる。この状態で、キャスティングを行なう、即ち、ジグと称される錘式のルアーを使用した釣り糸62を釣り竿60から略真下へ向けて、例えば海中50m乃至それ以上の深さまで垂らした後、ドラグレバー14を
図8のF方向(前方、時計回り)へ揺動(回動)することにより、上記のように、ドラグ機構13が作動してドラグが掛かる。このため、ドラグレバー14のF方向(前方、時計回り)及びR方向(手前側、反時計回り)への揺動(回動)動作と、ハンドル12の回転操作とを適宜行うことによって、釣り糸62を所望の状態に繰り出した状態にて実釣動作を行なうことができる。
【0059】
レバードラグ式リール1は、
図8に示すように、その下側部に設けた金属製の取付け脚2を釣竿60の上側部に形成した取付け部61に装着して取り付けられ、その取り付け状態において、レバードラグ式リール1の左側面に沿わせた操作者の左手LHの中指や薬指などによって釣竿60を下方から支えると共に、その左手LHによってレバードラグ式リール1を握持し、左手LHの親指LH1によってドラグレバー14を操作可能とし、操作者の右手RHでハンドル12を操作可能とする構成である。また、左手LHの親指LH1は、ドラグレバー14から離した状態で、釣り糸62がスプール15へ略均等状態に巻き取られるように釣り糸62を案内するように操作することができる。
【0060】
本発明は、ハンドル12に特徴がある。即ち、
図1〜
図6、
図7、
図11〜
図13に示すように、ハンドルノブ(握り部)12Dは、両端間の中間部がハンドルノブ支持軸部12Eの先端にハンドルノブ支持軸部12Eと交差状態を保ちつつ回転自在に結合された棒状体を構成し、ハンドルノブ支持軸部12Eは、ハンドルノブ(握り部)12Dを握持する右手RHの親指RH1と人差し指RH2にて挟み持つことが可能な大きさと長さを備え、ハンドルノブ支持軸部12Eのハンドルアーム12Bに近接する部分の外周に、釣り糸巻き取り回転中常時ハンドルアーム12Bの先端12B1の弧状部よりも外方へ張り出す大きさに拡大する環状の指移動阻止部12Hを形成している。ハンドルアーム12Bの先端12B1と指移動阻止部12Hの関係は、
図1、
図3乃至
図5から明らかなように、ハンドルノブ支持軸部12Eの軸線12ES方向において、指移動阻止部12Hの投影範囲にハンドルアーム12Bの円弧状の先端12B1が入る大きさ(軸線12ES方向に見た場合、指移動阻止部12Hの領域内に先端12B1が入る状態)となるように、ハンドルアーム12Bの先端12B1の半径よりも指移動阻止部12Hの半径が大である。更にハンドル12は、ハンドルノブ支持軸部12Eが取り付けられた側のハンドルアーム12Bの面の端縁のうち、釣り糸巻き取り回転方向の後ろ側となる端縁に、ハンドルノブ(握り部)12Dから遠ざかる方向へ傾斜する傾斜面12Jを有する指受け部12Kを膨出形成している。
【0061】
また、ハンドルノブ支持軸部12Eの外形は断面が円形状であり、指移動阻止部12Hは、ハンドルノブ支持軸部12Eが取り付けられるハンドルアーム12Bの先端部12B1よりも外側へ1mm以上張り出す大きさの外径でもって円形状に形成されている。更に、
図3乃至
図5に示すように、指受け部12Kは、ハンドルノブ支持軸部12Eの軸線12ES方向におけるハンドルアーム12Bに対する指移動阻止部12Hの投影範囲に指受け部12Kの一端が掛かる状態で、ハンドル軸12Aの方向へ寄った位置に形成されている。
【0062】
更に、ハンドルノブ支持軸部12Eの外形は断面が円形状または長円形状であり、指移動阻止部12Hは、ハンドルノブ(握り部)12Dを握持する手の親指と人差し指にて挟み持つ部分12E0の外径の1.3〜2.5倍に徐々に拡大する形状であり、指受け部12Kはハンドルアームの端縁から連続して弧状に膨出すように形成され、この弧状全体が傾斜角30度〜45度の傾斜面12Jをなすように折り曲げられている。
【0063】
以下に本発明を更に詳細に記載する。ハンドル軸12Aの軸線12AS及びハンドルノブ支持軸部12Eの軸線12ESは、スプール軸16の軸線16Sに平行であり、ハンドルアーム12Bの軸線12BSはハンドル軸12Aの軸線12ASに直角である。ハンドルアーム12Bの先端部に、ハンドルアーム12Bの軸線12BSと直角状態の軸線12ES上にハンドルノブ支持軸部12Eが取付けられ、ハンドルノブ支持軸部12Eの基部にハンドルノブ(握り部)12Dが回転自在に取付けられている。手のひらで握持するハンドルノブ(握り部)12Dは、その外形の横断面形状が、円形状、または楕円形や卵形等の長円形状、またはこれらに類する形状をなす棒状体を構成しており、その棒状体の長さ方向の両端間の中間部がハンドルノブ支持軸部12Eの基部に、ハンドルノブ支持軸部12Eと交差状態を保ちつつ回転自在に結合された構成である。
【0064】
ハンドルノブ(握り部)12Dは、
図1等に示すように、全体が棒状体をなし、その棒状体は、軸線12DSの周りに円形状外形をなす下半部12D3と、軸線12DSを中心軸として下半部12D3から徐々に縮径する円形状外形をなす上半部12D4を有し、上半部12D4の一部分をハンドルノブ支持軸部12Eの平坦な取り付け面12D5とするために、ハンドルノブ支持軸部12Eの軸線12ESに直角をなす平坦な取り付け面12D5を上半部12D4に形成している。ハンドルノブ(握り部)12Dを手のひらで握持した状態で釣り糸巻き取り回転操作をするのに適するようにするために、ハンドルノブ(握り部)12Dは、取り付け面12D5がハンドルノブ支持軸部12Eの軸線12ESに直角に交差した状態に取付けられる。この取付け状態において、ハンドルノブ(握り部)12Dは、下半部12D3の重量によって下半部12D3が常時下側に位置する状態をとるため、ハンドル12が360度の如何なる位置にあっても、ハンドルノブ(握り部)12Dを手のひらで握持し易くなる。この下半部12D3が下側に位置する状態において、
図1に示すようにハンドルノブ(握り部)12Dの軸線12DSは、半部12D3がハンドルアーム12Bから遠ざかるように、取り付け面12D5に平行な軸線12DT(軸線12ESに直角な軸線12DT)となす角度θ1が10度〜15度である。
【0065】
この一つの好ましい実施例として、
図1に示すように、下半部12D3の直径が30mmであり、そこから外形接線の角度が5度となる角度をなすように、徐々に縮径する円形状外形をなす上半部12D4を有し、θ1が12度でもって、ハンドルノブ(握り部)12Dがハンドルノブ支持軸部12Eと結合されている。これによって、手のひらでハンドルノブ(握り部)12Dを握持した状態で、釣り糸巻き取り回転操作をするのに適したものとなる。
【0066】
指移動阻止部12Hは、ハンドルアーム12B側に向けてハンドルノブ支持軸部12Eの外径が、ハンドルノブ(握り部)を握持する手RHの親指RH1と人差し指RH2にて挟み持つハンドルノブ支持軸部12Eの部分12E0の外径の1.3〜2.5倍に徐々に拡大する形状である。指受け部12Kは、ハンドルアーム12Bの端縁から連続してリール本体11側へ向けて弧状に膨出し、この弧状全体が傾斜面12Jをなしている。この傾斜面12Jは平坦面であってもよいが、若干の凹状または凸状に加工された湾曲面であってもよい。
【0067】
本発明が達成されるための実施形態として、ハンドルノブ支持軸部12Eの外形は、断面円形状の柱状外形であり、ハンドルノブ支持軸部12Eの外形を形成する筒部12D1は、ハンドルノブ(握り部)12Dの付け根部分の直径t3が17mm〜25mmであり、先端までの長さt0が25mm〜35mmであり、ハンドルノブ(握り部)12Dを握持する手RHの親指RH1と人差し指RH2にて挟み持つ部分の直径t1が10mm〜15mmであり、そこからハンドルノブ支持軸部12Eの外径が直線または曲線でもって徐々に拡大して、軸線12ESと直角方向の断面が円形状の外形をなす指移動阻止部12Hが形成されており、この指移動阻止部12Hの直径t2が18mm〜25mmの範囲に形成された構成である。この場合、指移動阻止部12Hは、軸線12ESの方向において、ハンドルノブ支持軸部12Eが取り付けられるハンドルアーム12Bの先端部12B1よりも外側へ1mm以上張り出す大きさの外径でもって円形状に形成される。これによって、ハンドルノブ(握り部)12Dを右手RHで握持し、その握持する手RHの親指RH1と人差し指RH2によってハンドルノブ支持軸部12Eを挟み持つ部分12E0を挟み持った状態で、この親指RH1と人差し指RH2は、
図11〜
図13に示すように、指移動阻止部12Hによってハンドルアーム12Bの先端部12B1へ移動することが抑止される状態となる。
【0068】
一つの好ましい実施例として、
図1に示すように、ハンドルノブ支持軸部12Eは、ハンドルノブ(握り部)12Dの付け根部分から先端までの長さt0が30mmであり、ハンドルノブ(握り部)12Dの付け根部分の直径t3が18mmであり、この付け根部分から親指RH1と人差し指RH2にて挟み持つ部分の直径t1が12mmまでの範囲が曲面でもって徐々に縮径する。この縮径部が、ハンドルノブ(握り部)12Dを握持する手RHの親指RH1と人差し指RH2にて挟み持つ部分12E0を形成する。その12mmまで縮径した12E0の部分から直径t2が20mm(半径10mm)まで曲面でもって徐々に拡大して指移動阻止部12Hを形成する。ハンドルアーム12Bの先端部12B1は、半径7.3mmの円弧状に形成されており、指移動阻止部12Hは、ハンドルノブ支持軸部12Eが取り付けられるハンドルアーム12Bの先端部12B1よりも外側へ2.7mmの張り出しとなる。なお、指移動阻止部12Hは、ハンドルアーム12B側に向けて徐々に縮径し、指移動阻止部12Hを指が乗り越える際の緩衝効果を得るようにしている。
【0069】
上記のように縮径部12E0を形成することによって、ハンドルノブ(握り部)12Dを右手で握持し、その握持する手の親指と人差し指にて挟み持つことに好適な構成となり、親指と人差し指がハンドルノブ支持軸部12Eを挟み持ち易く、且つ20mmまで拡大した指移動阻止部12Hによって、
図11及び
図12に示すように、親指と人差し指がハンドルアーム12B側に向けてはみ出ることを有効に阻止できる効果を奏する。
【0070】
また、
図5にはハンドルアーム12Bのハンドルノブ12D側の面を示している。指受け部12Kの一つの好ましい実施例として、
図1〜
図6に示すように、指受け部12Kは、ハンドルアーム12Bの後端縁から連続して弧状に膨出し、この弧状全体のハンドルノブ12D側の面が傾斜面12Jをなしている。また、指受け部12Kは、ハンドルノブ支持軸部12Eの軸線12ES方向において、ハンドルアーム12Bに対する指移動阻止部12Hの投影範囲に、指受け部12Kの一端12K1(
図5での左端部)が掛かる状態であり、その位置からハンドル軸12Aの方向へ延びた位置(即ち、ハンドル軸12Aの軸線12AS方向へ寄った位置)に形成されている。指受け部12Kによる指受けを良好にするために、その指受け部12Kの弧状の一端12K1は、ハンドルアーム12Bの先端12B1の円弧(
図5に半径7.3mmの円弧を示すR7.3と表示した部分)に段差がない状態で連続するように、
図5に半径15mmの円弧を示すR15と表示した部分によって、指受け部12Kがハンドルアーム12Bの先端12B1の円弧に連続形成されている。
【0071】
上記の構成において、ハンドルノブ(握り部)12Dを右手で握持し、その握持する手の親指と人差し指にて挟み持つことに好適な構成となり、指移動阻止部12Hを人差し指RH2が乗り越えても、指受け部12Kの傾斜面で受け止められるため、その人差し指RH2がハンドルアーム12Bの端部で負傷することを防ぐことができる。指受け部12Kが傾斜面であることによって、受け止められる人差し指RH2への緩衝効果が得られるものとなる。
【0072】
上記のように、ハンドルノブ支持軸部の大きさを制限したのは、ハンドルノブ支持軸部の外径(直径)が10mmより小さい場合は、ハンドルノブ支持軸部12Eに収容するハンドルノブ軸12Cが小径になり過ぎて強度が弱くなること、そして、軸受け20A、20Bを収容し難くなる。また、ハンドルノブ支持軸部12Eの外径(直径)が15mmより大きい場合は、ハンドルノブ12Dを握る手RHの親指RH1と人差し指RH2で挟み難くなり、ハンドル12の操作性が悪くなる。また、指移動阻止部12Hの外径をハンドルノブ支持軸部12Eの親指RH1と人差し指RH2にて挟み持つ部分12E0の外径の1.3〜2.5倍とするのは、ハンドルノブ12Dを握る手RHの親指RH1と人差し指RH2がハンドルアーム12B側に向けて移動し難くする効果が十分発揮できるものである。指移動阻止部12Hの外径をあまり大きくしても、親指RH1と人差し指RH2親指がハンドルアーム12B側に向けて移動し難くする効果に著しい向上が期待できないことと、大きくし過ぎると外観上の美観が劣り好ましくないためである。
【0073】
なお、操作者の左手LHの親指LH1によるドラグレバー14の操作性の向上等のために、スプール15の右側のフランジ部15Cを覆う第2側板11B部分の円弧状の上面には、その上面に沿ってドラグレバー14の上端部が覆い被さる状態で揺動自在に嵌まり込む円弧状溝部70を形成している。具体的構成として、操作者の左手LHの親指LH1がドラグレバー14の上端部を操作し易いようにするために、ドラグレバー14の一部をなすようにドラグレバー14の上端部の操作部14Dとして、合成樹脂製の親指タッチ部材14Dを取り付けており、この操作部14Dから下方へ突出した突起部14D1が、円弧状溝部70に沿って移動可能に嵌まり込んだ構成である。これによって、突起部14A1が円弧状溝部70に沿った移動を行うため、ドラグレバー14の前後揺動操作を安定して行えるものとなる。
【0074】
また、レバードラグ式リール1の右側に配置されるドラグ調整部材51の回動位置を操作者に音で認識させるためと、ドラグ調整部材51の回動を段階的に行えるようにするために、
図7に拡大図にて示すように、発音装置95を設けている。発音装置95は、ドラグ調整部材51に対向するカム体32Bの外側面に、球面状の窪み96が円形状に等間隔で形成され、ドラグ調整部材51からこの窪み96へ向けて、先端球面状部が突出するようにバネ98で付勢された進出体97によって構成されている。進出体97は、
図7に拡大で示すように球状体でもよいが、棒状でもよい。なお、発音装置95と同様の構成でもって、ドラグレバー14の回動位置を操作者に音で認識させるため、及びドラグレバー14の回動を段階的に行えるようにするために、ドラグレバー14の操作部14Dにバネで付勢された進出体を設け、この進出体がドラグレバー14の回動に伴って円弧状溝部70の底面に形成した窪み70Dに段階的に嵌り合う発音装置65を設けている。
【0075】
これによって、ドラグ調整部材51の回動に伴って窪み96に対して進出体97が順次進入脱出動作を行うためその都度発音することとなり、ドラグ調整部材51の回動位置を操作者が音で認識できる。また、窪み96に対して進出体97が進入する度に、ドラグ調整部材51の回動が断続的に抵抗を受けることとなり、ドラグ調整部材51の回動が段階的動作となり、ドラグ調整部材51の回動操作を安定して行えるものとなる。
【0076】
レバードラグ式リール1の左側に、釣り糸62の繰り出しに伴うスプール15の回転にブレーキを掛けるブレーキ装置75を備えている。具体的には、
図7に示すように、第1側板11A内にブレーキ装置75が収容され、ブレーキ装置75の操作部76が第1側板11Aの一部である第1側板カバー11Dの左側面の前上部に露出状態で配置されている。ブレーキ装置75は、スプール15の左側面に対し離れる方向へコイルバネ78にて付勢された作動体77と、第1側板11A内に回動自在に軸支持76Aされ、コイルバネ78に抗して作動体77をスプール15のフランジ部15Bの外側面へ押し圧する操作部76を備えている。
【0077】
通常、コイルバネ78の付勢によって作動体77はスプール15の側面から離れた状態である。これと共に操作部76の一部は、コイルバネ78によって外方へ付勢された作動体77によって、第1側板カバー11Dの外に露出状態である。実釣の最初に行なうキャスティングとして、ジグと称される錘式のルアーを使用した釣り糸62を釣り竿60から略真下へ向けて垂らす際や、実釣中に釣れた魚による引きによって、釣り糸62の繰り出しに伴ってスプール15が回転するとき、この回転にブレーキを掛けるためには、操作部76を操作者の左手LHの親指LH1か人差し指LH2によって押し圧することにより、作動体77の先端がスプール15の左側面に圧接する程度によって、スプール15の回転にブレーキが掛かる。
【0078】
実釣中に釣針が岩等の異物に引っ掛かったときなどの異常時に、釣り竿60の強い引き上げ操作によってその引っ掛かりを外す、または釣り糸62を切る操作を行なう。そのために、釣り糸62の繰り出し方向へのスプール15の回転を停止させるストップ装置85が、
図7に示すように、レバードラグ式リール1の左側の第1側板11A内に収容されている。
【0079】
ストップ装置85は、スプール15の左側面に取り付けたラチェット車(つめ車)86の歯に対して係止と離脱を行なうロック部材87と、ロック部材87を操作するロック操作部88を備えており、通常時はロック部材87がラチェット車(つめ車)86の歯に係止状態ではなく、ロック操作部88が第1側板11Aの下部に露出するようにバネ付勢されている。そして、上記異常時には、ロック部材87がラチェット車86の歯に係止してスプール15の回転を停止させるように、ロック操作部88を回動操作する。
【0080】
レバードラグ式リール1は、スプール15の左フランジ部15Bと第1側板11Aとの隙間や、スプール15の右フランジ部15Cと第2側板11Bとの隙間に、釣り糸62が侵入することを防止して、釣り糸62がスプール15へ案内されるようにするために、
図8等に示すように、スプール15の前面側にスプール15から離間した状態に釣り糸ガイド90を設けている。釣り糸ガイド90は、スプール15の左フランジ部15B及び右フランジ部15Cよりも外側位置において、基部90Aが第1側板11Aと第2側板11Bとに取付けられ、これら基部90A間に湾曲状の釣り糸ガイド部90Bを左右に一体形成した線状体で形成されている。釣り糸ガイド90を安定保持するために、左右の釣り糸ガイド部90Bの連絡部が連結部11Cの溝に上部が露出する状態で嵌まり込んでいる。
【0081】
上記の実施例は、レバードラグ式の両軸受けリールについて記載したが、他の形態の両軸受けリールについても同様の効果を発揮できるものであり、更に、本発明のハンドル装置をスピニングリールに適用しても同様の効果を発揮できるものである。即ち、スピニングリールは、スプールは回転しないが、ハンドルの回転によってスプールへ釣り糸を巻き取るように回転する回転体を設けた形態であり、両軸受けリール及びスピニングリールのいずれも、リール本体に支持されたスプールへハンドルの回転によって釣り糸を巻き取る魚釣り用リールである。このため、ハンドルは、ハンドル軸の外側端部に基部が固定されたハンドルアームと、手のひらで握持するタイプのハンドルノブ(握り部)を備え、ハンドルノブ(握り部)がハンドルアームの先端部に取付けたハンドルノブ支持軸部でもって回転自在に支持された構成であれば、両軸受けリール及びスピニングリールのいずれにも、本発明のハンドル装置は適用できるものである。それゆえ、本発明は、上記実施例に限定されず、本発明の趣旨に則る種々の実施形態の魚釣り用リールを含むものである。