(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
水酸基含有共重合体中に占める(メタ)アクリレートA〜Dの配合割合をそれぞれa〜d(重量%)とし、該水酸基含有共重合体を構成する(メタ)アクリレートBに対する(メタ)アクリレートEの配合割合をe(モル%)としたとき、aとdは相互に独立して10〜70重量%であり、bは10〜30重量%であり、cは5〜40重量%であり、eは20〜100モル%である請求項1〜6のいずれかに記載の反応性含フッ素オリゴマー。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[反応性含フッ素オリゴマー]
本発明の反応性含フッ素オリゴマーについて詳述する。本明細書において(メタ)アクリレートとは、アクリレートおよび/またはメタクリレートを意味する。
【0010】
本発明の反応性含フッ素オリゴマーは、下記一般式A、B、CおよびDで表される(メタ)アクリレートを共重合させてなる水酸基含有共重合体の水酸基に、下記一般式Eで表されるイソシアネート基含有(メタ)アクリレートを反応性化合物として反応させることで調製されたものである。
【0012】
式A中、Rf
1は下記式(1)または(2)で示される基またはそれらの混合基である。混合基とは、当該一般式Aの(メタ)アクリレートは、Rf
1が下記式(1)の基である一般式Aの(メタ)アクリレートと、Rf
1が下記式(2)の基である一般式Aの(メタ)アクリレートとの混合(メタ)アクリレートであることを意味する。
【0013】
【化8】
[式(1)および(2)中、*は結合部位を示す。]
【0014】
R
1は炭素原子数が1〜50の二価の飽和脂肪族炭化水素基を含有する二価の有機基である。当該二価の飽和脂肪族炭化水素基は好ましくは炭素原子数が1〜30、より好ましくは2〜10、最も好ましくは2〜4の基であり、具体例として、上記炭素原子数を有する直鎖状または分枝鎖状アルキレン基、好ましくは直鎖状アルキレン基が挙げられる。二価の飽和脂肪族炭化水素基は1以上の水素原子がハロゲン原子によって置換されていてもよい。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、好ましくはフッ素原子または塩素原子が挙げられる。
【0015】
R
1としての二価の有機基は上記二価の飽和脂肪族炭化水素基を含有する限り特に制限されず、例えば、上記二価の飽和脂肪族炭化水素基、および上記二価の飽和脂肪族炭化水素基から選択される1以上の基とアリーレン基から選択される1以上の基とが連結基を介して結合してなる複合基が挙げられる。アリーレン基は炭素原子数6〜15のアリーレン基であり、例えば、フェニレン基、ナフチレン基、トリレン基、キシリレン基、アントラニレン基、フェナントリレン基等が挙げられる。好ましいアリーレン基はフェニレン基、特にp−フェニレン基である。複合基を構成する二価の飽和脂肪族炭化水素基およびアリーレン基はそれぞれ独立して水素原子が上記ハロゲン原子によって置換されていてもよい。複合基を構成する連結基としては、例えば、単結合、エーテル結合(−O−)、エステル結合(−COO−または−O−CO−)、アミド結合(−NHCO−または−CONH−)等が挙げられる。
【0016】
好ましいR
1の具体例として、以下に示す二価の有機基が挙げられる。なお以下の具体例において左側の結合部位がRf
1Oに結合される。
【0017】
−(CH
2)
n1− (n1=2〜10、好ましくは2〜4の整数)
−C
6H
4COO(CH
2)
n2− (n2=2〜10、好ましくは2〜4の整数)
−C
6H
4(CH
2)
n3− (n3=1〜10、好ましくは2〜4の整数)
−CH
2CH
2(OCH
2CH
2)
n4− (n4=1〜10、好ましくは2〜4の整数)
−C
6H
4CO(OCH
2CH
2)
n5− (n5=1〜10、好ましくは2〜4の整数)
【0018】
上記好ましいR
1の具体例の中でも、以下の基が特に好ましい。
−C
6H
4COO(CH
2)
n2− (n2=2〜10、好ましくは2〜4の整数)
【0019】
R
2は水素原子またはメチル基であり、好ましくはメチル基である。
【0020】
一般式Aで表される(メタ)アクリレート(以下、単に(メタ)アクリレートAという)は、公知の方法により製造することができる。
【0021】
例えば(メタ)アクリレートAは、R
1が下記の基;
−C
6H
4COO(CH
2)
n2− (n2=2〜10)
であるとき、以下の反応式に基づいて、室温下、酸クロライドの有機溶媒溶液を水酸基含有アルキル(メタ)アクリレートの有機溶媒溶液に滴下することにより製造することができる。
【0022】
【化9A】
(式中、Rf
1およびR
2はそれぞれ式Aにおいてと同様である;n2は上記と同様である)。
【0023】
また例えば(メタ)アクリレートAは、R
1が下記の基;
−(CH
2)
n1− (n1=2〜10)
であるとき、以下の反応式に基づいて、室温下、ヘキサフルオロプロペントリマーを水酸基含有アルキル(メタ)アクリレートの有機溶媒溶液に滴下することにより製造することができる。
【0024】
【化9B】
(式中、Rf
1およびR
2はそれぞれ式Aにおいてと同様である;n1は上記と同様である)。
【0025】
成分Aは、Rf
1、R
1および/またはR
2が異なる2種類以上の(メタ)アクリレートAが含有されてもよい。
【0027】
式B中、R
3は炭素原子数が1〜100の二価の飽和脂肪族炭化水素基を含有する二価の有機基である。当該二価の飽和脂肪族炭化水素基は好ましくは炭素原子数が1〜50、より好ましくは2〜30、最も好ましくは2〜20の基であり、具体例として、上記炭素原子数を有する直鎖状または分枝鎖状アルキレン基、好ましくは直鎖状アルキレン基が挙げられる。二価の飽和脂肪族炭化水素基は1以上の水素原子がハロゲン原子によって置換されていてもよい。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、好ましくはフッ素原子または塩素原子が挙げられる。
【0028】
R
3としての二価の有機基は上記二価の飽和脂肪族炭化水素基を含有する限り特に制限されず、例えば、上記二価の飽和脂肪族炭化水素基、および上記二価の飽和脂肪族炭化水素基から選択される2以上の基を連結基を介して結合させてなる複合基が挙げられる。複合基を構成する二価の飽和脂肪族炭化水素基およびアリーレン基はそれぞれ独立して水素原子が上記ハロゲン原子によって置換されていてもよい。複合基を構成する連結基としては、例えば、エーテル結合(−O−)、エステル結合(−COO−または−O−CO−)、アミド結合(−NHCO−または−CONH−)等が挙げられる。
【0029】
好ましいR
3の具体例として、以下に示す二価の有機基が挙げられる。なお以下の具体例において左側の結合部位が水酸基に結合される。
【0030】
−(CH
2)
n6− (n6=2〜10、好ましくは2〜5の整数)
−(CH
2CH
2O)
n7CH
2CH
2− (n7=1〜20、好ましくは1〜10の整数)
−(CH
2CH
2CH
2O)
n8CH
2CH
2CH
2− (n8=1〜10、好ましくは2〜5の整数)
−(CH(CH
3)CH
2O)
n9CH(CH
3)CH
2− (n9=1〜10、好ましくは2〜5の整数)
−(CH
2CH(CH
3)O)
n10CH
2CH(CH
3)− (n10=1〜10、好ましくは2〜5の整数)
【0031】
上記好ましいR
3の具体例の中でも、以下の基が特に好ましい。
−(CH
2)
n6− (n6=2〜10、好ましくは2〜5の整数)
−(CH
2CH
2O)
n7CH
2CH
2− (n7=1〜20、好ましくは1〜10の整数)
【0032】
R
4は水素原子またはメチル基であり、好ましくは水素原子である。
【0033】
一般式Bで表される(メタ)アクリレート(以下、単に(メタ)アクリレートBという)は、市販品として入手することもできるし、公知の方法により製造することもできる。
【0034】
(メタ)アクリレートBの市販品として、4−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、ポリエチレングリコールモノメチルアクリレート(ブレンマーAE−400;日油社製)、ポリエチレングリコールモノメチルアクリレート(ブレンマーAE−200;日油社製)等が入手できる。
【0035】
成分Bは、R
3および/またはR
4が異なる2種類以上の(メタ)アクリレートBが含有されてもよい。
【0037】
式C中、R
5は水素原子または炭素原子数が1〜50の一価の有機基である。当該一価の有機基としては、一価の飽和脂肪族炭化水素基、一価の脂環式炭化水素基、一価の芳香族炭化水素基、およびそれらの基からなる群から選択される2以上の基が連結基を介して結合してなる複合基が挙げられる。一価の飽和脂肪族炭化水素基は炭素原子数が1〜50、好ましくは1〜21、より好ましくは1〜10の直鎖状または分枝鎖状アルキル基であり、好ましい当該アルキル基は直鎖状である。一価の脂環式炭化水素基は炭素原子数が1〜50、好ましくは1〜20、より好ましくは1〜10である。一価の芳香族炭化水素基は炭素原子数が6〜15、好ましくは6〜10のアリール基である。複合基を構成する連結基としては、例えば、単結合、エーテル結合(−O−)、エステル結合(−COO−または−O−CO−)、アミド結合(−NHCO−または−CONH−)等が挙げられる。上記一価の有機基は1以上の水素原子がハロゲン原子によって置換されていてもよい。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、好ましくはフッ素原子または塩素原子が挙げられる。
【0038】
好ましいR
5の具体例として、以下に示す一価の有機基が挙げられる。
水素原子、一般式;−(CH
2)
n11CH
3(n11=0〜20、好ましくは0〜2)で表されるアルキル基、2−エチルヘキシル基、イソオクチル基、シクロへキシル基、イソボルニル基、ジシクロペンタニル基、ベンジル基、および一般式;−(CH
2CH
2O)
n12CH
3(n12=1〜10)で表される基。
【0039】
上記好ましいR
5の具体例の中でも、以下の基が特に好ましい。
水素原子、および一般式;−(CH
2)
n11CH
3(n11=0〜20、好ましくは0〜2)で表されるアルキル基。
【0040】
R
6は水素原子またはメチル基であり、好ましくはメチル基である。
【0041】
一般式Cで表される(メタ)アクリレート(以下、単に(メタ)アクリレートCという)は、市販品として入手することもできるし、公知の方法により製造することもできる。
【0042】
(メタ)アクリレートCの市販品として、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル等が入手できる。
【0043】
成分Cは、R
5および/またはR
6が異なる2種類以上の(メタ)アクリレートCが含有されてもよい。
【0045】
式D中、Rf
2は炭素原子数1〜5、好ましくは1〜3のペルフルオロアルキレン基である。当該ペルフルオロアルキレン基は直鎖状または分枝鎖状であってよく、好ましくは直鎖状である。式中、2個のRf
2は同一でも異なっていてもよく、好ましくは同一である。
【0046】
角括弧([])内においてペルフルオロエチレンオキシ基およびジフルオロメチレンオキシ基はランダムに配列されている。m+nは5〜50の整数であり、好ましくは10〜30の整数である。mは0〜50の整数であり、好ましくは6〜19の整数である。nは0〜50の整数であり、好ましくは6〜14の整数である。
【0047】
R
7は単結合、または炭素原子数1〜5のアルキレン基であり、好ましくは炭素原子数1〜3のアルキレン基である。当該アルキレン基は直鎖状または分枝鎖状であってよく、好ましくは直鎖状である。式中、2個のR
7は同一でも異なっていてもよく、好ましくは同一である。
【0048】
R
8は2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する一価の有機基である。(メタ)アクリロイル基の数が1個以下であると、有機溶媒や樹脂との相溶性が低下したり、指紋拭き取り性が低下したり、表面平滑性が低下したりする。式D中、2個のR
8は同一でも異なっていてもよく、好ましくは同一である。R
8が有する(メタ)アクリロイル基の数は通常、2〜10個であり、好ましくは2〜6個であり、より好ましくは2〜4個、最も好ましくは2個である。R
8は通常、1個以上のウレタン結合も有する。R
8が有するウレタン結合の数は通常、(メタ)アクリロイル基の数より1だけ多い数である。
【0049】
R
8の具体例として、例えば下記一般式(d1)で表される1価の有機基が挙げられる。
【0051】
式(d1)中、R
80は(r+1)価の有機基であり、rは1または2であり、具体的には下記一般式(d11)〜(d19)で表される(r+1)価の有機基が挙げられる。
【0052】
rが1である場合、R
80は下記式で示される構造の有機基もしくはそれらの混合基が挙げられる。好ましいR
80は下記一般式(d11)で表される2価の有機基である。
【0054】
[式(d12)中、s1は1〜12の整数であり、好ましくは6に等しい。
式(d13)中、R
804は、ハロゲン原子(例えば、Cl、Br、F)、炭素原子数1〜6のアルキル基(例えば、メチル、エチル等)などの置換基であり、s
4は0〜10の整数である。
式(d14)中、R
801およびR
802は、それぞれ独立して、R
804として記載の上記置換基と同様の置換基である。R
803は単結合、メチレン基(−CH
2−)、酸素原子(−O−)、−C(CH
3)
2−基、−C(CF
3)
2−基、−SO
2−基、−C(O)−基の中から選択された二価橋架け基であり、好ましくは、R
803はメチレン基である。s
2、s
3は独立して0〜4の間から選択される整数である。
式(d15)中、R
805はR
804として記載の上記置換基と同様の置換基である。s
5は0〜4の間から選択される整数である。
式(d11)〜(d15)において*は共通して結合部位を示す。]
【0055】
rが2である場合、R
80は下記式で示される構造の有機基もしくはそれらの混合基が挙げられる。
【0057】
[式(d16)中、R
806は炭素原子数1〜10、好ましくは4〜8、より好ましくは5〜7のアルキレン基である。当該アルキレン基は直鎖状または分枝鎖状であってよく、好ましくは直鎖状である。式中、3個のR
806は同一でも異なっていてもよく、好ましくは同一である。
式(d17)中、R
807は炭素原子数1〜5、好ましくは1〜3のアルキル基である。s6は0〜3の整数であり、好ましくは1である。
式(d18)中、R
808は水素原子または炭素原子数1〜5のアルキル基であり、好ましくは水素原子である。
式(d19)中、s7およびs8はそれぞれ独立して0〜5の整数、好ましくは2〜3の整数であり、s7+s8は2〜10の整数、好ましくは4〜6の整数である。
式(d16)〜(d19)において*は共通して結合部位を示す。]
【0058】
式(d1)中、R
81は(メタ)アクリロイル基または1個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する1価の有機基である。当該有機基の具体例として、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートおよびトリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレートから1個の水酸基を除いた基が挙げられる。
【0059】
R
81は下記一般式で示される基であることが好ましい。
【化16】
[式(d20)中、Acは(メタ)アクリロイル基を表し、R
811は炭素原子数1〜5、好ましくは1〜3のアルキル基であり、R
812は単結合、メチレン基またはエチレン基である;tについて、R
8中のrが1のとき、tは1〜3の整数、好ましくは1であり、当該rが2のとき、tは0〜1の整数、好ましくは0である。]
【0060】
一般式Dで表される(メタ)アクリレート(以下、単に(メタ)アクリレートDという)は、公知の方法により製造することもできるし、市販品として入手することもできる。
【0061】
例えば(メタ)アクリレートDは、R
8が前記一般式(d1)で表される基であるとき、以下の工程を含む公知の方法により製造することができる(特開2010−159386号公報、および「Polymer International」(2012年;第61巻;第65−73頁))。
【0062】
(1)下記一般式(i)で示されるパーフルオロポリエーテルジオールを、下記一般式(ii)で表されるジイソシアネート化合物と反応させる工程;および
【0063】
【化17】
[式(i)中、Rf
2、R
7、m及びnは上記定義の通りである。]
【0065】
(2)上記工程(1)で生成した化合物を下記一般式(iii)で示される(メタ)アクリレートと反応させる工程。
【0066】
【化19】
[式(iii)中、R
81は上記定義の通りである。]
【0067】
パーフルオロポリエーテルジオール(i)としては、パーフルオロポリアルキレンオキシドの両末端に水酸基を有する化合物、および市販のFluorolink D10H、Fluorolink D(ソルベイソレクシス社製)等が使用される。
【0068】
ジイソシアネート化合物(ii)としては、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(H12−MDI)、シクロヘキシル−1,4−ジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(フェニルイソシアネート)(MDI)またはその異性体、トルエン2,4−ジイソシアネート(TDI)またはその異性体、キシリレンジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、メタフェニレンジイソシアネート、パラフェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ジメチルベンゼンジイソシアネート、エチルベンゼンジイソシアネート、イソプロピルベンゼンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、1,4−ナフタレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、2,6−ナフタレンジイソシアネート、2,7−ナフタレンジイソシアネート等が使用される。
【0069】
(メタ)アクリレート(iii)としては、(メタ)アクリル酸、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、エチレングルコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングルコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングルコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングルコールジ(メタ)アクリレート、ビス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレート類、及びこれらの水酸基へのエチレンオキシド又はプロピレンオキシド付加物のポリ(メタ)アクリレート類、分子内に2以上の(メタ)アクリロイル基を有するオリゴエステル(メタ)アクリレート類、オリゴエーテル(メタ)アクリレート類、及びオリゴエポキシ(メタ)アクリレート類が使用される。
【0070】
R
80が前記一般式(d12)〜(d19)で表される基である一般式(d1)の基をR
8として有する(メタ)アクリレートDは、上記製造方法において、ジイソシアネート化合物(ii)の代わりに対応するジもしくはトリイソシアネート化合物を用いることにより製造することができる。
【0071】
また、(メタ)アクリレートDの市販品として、Fluorolink AD1700、5101X、5113X(ソルベイソレキシス社製)等が入手できる。
【0072】
たとえばFluorolink AD1700は、上記一般式Dにおいて、2個のRf
2が同時にジフルオロメチレン基であり、2個のR
7が同時にメチレン基であり、m+nが10〜15であり、2個のR
8が同時に前記一般式(d1)で表される基[式(d1)中、rが1であり、R
80が前記一般式(d11)で表される基であり、R
81が前記一般式(d20)で表される基[式(d20)中、R
811はエチル基もしくはメチル基であり、R
812はメチレン基もしくは単結合であり、tは1である]である]である(メタ)アクリレートであると推定される。
【0073】
成分Dは、Rf
2、R
7、R
8、mおよび/またはnが異なる2種類以上の(メタ)アクリレートDが含有されてもよい。
【0075】
式E中、R
9は炭素原子数が2〜10の二価または三価の飽和脂肪族炭化水素基であり、当該飽和脂肪族炭化水素基はエーテル結合を有しても良い。好ましいR
9は炭素原子数が2〜4の二価の飽和脂肪族炭化水素基、すなわちアルキレン基である。
xは1または2の整数であり、好ましくは1である。xはR
9の価数に依存して決定され、例えばR
9が2価のときxは1であり、また例えばR
9が3価のときxは2である。
R
10は水素原子またはメチル基であり、好ましくは水素原子である。
【0076】
一般式Eで表されるイソシアネート基含有(メタ)アクリレート(以下、単に(メタ)アクリレートEという)は、市販品として入手することもできるし、公知の方法により製造することもできる。
【0077】
(メタ)アクリレートEの市販品として、化合物名;2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(カレンズMOI;昭和電工社製)、化合物名;2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート(カレンズAOI;昭和電工社製)、化合物名;1,1−ビス(アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート(カレンズBEI;昭和電工社製)等が入手できる。
【0078】
成分Eは、R
9および/またはR
10が異なる2種類以上の(メタ)アクリレートEが含有されてもよい。
【0079】
[反応性含フッ素オリゴマーの製造方法]
本発明の反応性含フッ素オリゴマーは、上記(メタ)アクリレートA〜Dを共重合させてなる水酸基含有共重合体の水酸基に、上記(メタ)アクリレートEを反応性化合物として反応させることで調製することができる。
【0080】
好ましい実施態様においては、水酸基含有共重合体中に占める(メタ)アクリレートA〜Dの配合割合をそれぞれa〜d(重量%)とし、当該水酸基含有共重合体を構成する(メタ)アクリレートBに対する(メタ)アクリレートEの配合割合をe(モル%)としたとき、aとdは相互に独立して10〜70重量%であり、bは10〜30重量%であり、cは5〜40重量%であり、eは20〜100モル%である。aが少なすぎると、撥油持続性および指紋拭き取り持続性が低下する。bが少なすぎると、撥水性、撥油性および指紋拭き取り性の全てにおいて持続性が低下する。cが少なすぎると、指紋拭き取り性が低下する。dが少なすぎると、初期から撥水性および撥油性が低下し、指紋拭き取り持続性が低下する。eが少なすぎると、撥水性、撥油性および指紋拭き取り性に関する持続性が低下する。
【0081】
aは特に15〜65重量%が好ましい。
bは特に10〜20重量%が好ましい。
cは特に5〜35重量%が好ましい。
dは特に15〜50重量%が好ましい。
eは特に30〜80モル%が好ましい。
【0082】
本発明のより好ましい実施態様においては、a、b、c、dおよびeが上記範囲内であって、さらに以下の関係を満たす。
a/dが0.1〜5であり、好ましくは0.1〜4である。
a+dが40〜80重量%であり、好ましくは45〜78重量%である。
(a+d)/bが1.3〜8であり、好ましくは2.2〜5である。
c/bが0.2〜2であり、好ましくは0.4〜1.5である。
【0083】
水酸基含有共重合体を得るための(メタ)アクリレートA〜Dの重合方法としては公知の重合方法を用いることができる。詳しくは、(メタ)アクリレートA〜Dを所望の比率で混合し、適量の重合開始剤を加え、有機溶媒の存在下に室温から100℃程度の温度で1〜24時間程度反応させる。これにより反応は定量的に進む。(メタ)アクリレートA〜Dの混合順序は特に限定されるものではない。
【0084】
重合開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、過酸化ベンゾイル等が使用できる。有機溶媒は、上記反応が進行すれば特に限定されないが、例えば、非プロトン性溶媒が挙げられる。非プロトン性溶媒としては、ジメトキシエタン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、トルエン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが好ましく例示される。該有機溶媒は、一種単独で使用しても良いし、二種以上を混合して使用しても良い。
【0085】
水酸基含有共重合体において、繰り返し単位は、化学式で示すとおりに位置しなくてもよく、水酸基含有共重合体は(メタ)アクリレートA〜Dのランダム重合体またはブロック共重合体であってよい。
【0086】
水酸基含有共重合体とイソシアネート基含有(メタ)アクリレートEとの反応は、得られた水酸基含有共重合体溶液に対して、(メタ)アクリレートEを所定の比率で混合し、−20℃〜100℃、好ましくは20℃〜90℃で、1〜48時間撹拌することにより達成できる。これにより、水酸基含有共重合体における(メタ)アクリレートB成分に由来の水酸基と、(メタ)アクリレートEのイソシアネート基とが反応し、ウレタン結合が形成され、本発明の反応性含フッ素オリゴマーが得られる。このとき、混合された(メタ)アクリレートEは定量的に反応する。
【0087】
当該反応に際しては、アルカリ性触媒を用いてもよい。アルカリ性触媒は、上記反応が進行すれば特に限定されないが、好ましいアルカリ性触媒としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等の有機系のアルカリ性触媒が挙げられる。該アルカリ性触媒は、特に、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンが好ましい。該アルカリ性触媒は、一種単独で使用しても良いし、二種以上を混合して使用しても良い。
【0088】
含フッ素反応性オリゴマーの重量平均分子量は好ましくは2000〜20000であり、より好ましくは3000〜15000である。
【0089】
本明細書中、重量平均分子量は以下の装置を用いて以下の条件により測定された値を用いている。
装置:ACQUITY UPLC H-Class (Waters)
検出器:ACQUITY UPLC ELS検出器 (Waters)
カラム:TSKgel α-5000(φ7.8mm×30cm)(東ソー)
ガードカラム:TSK guard α(φ6.0mm×4cm)(東ソー)
溶媒:テトラヒドロフラン(関東化学)
流速:0.6 mL/min
カラム温度:40℃
試料濃度 0.2〜0.3 wt%
注入量:0.01mL
分子量校正:単分散ポリエチレングリコール(東ソー)
【0090】
[反応性含フッ素オリゴマーの使用方法]
本発明の反応性含フッ素オリゴマーは、所望により、樹脂成分、溶媒成分、重合開始剤成分、フィラー成分等の添加剤と混合されて、基材表面に塗布され、あるいは塗布後硬化させる。
【0091】
本発明の反応性含フッ素オリゴマーは、通常、少なくとも当該反応性含フッ素オリゴマーおよび樹脂成分を含む樹脂組成物として使用される。
【0092】
<硬化性樹脂組成物>
本発明の硬化性樹脂組成物は、反応性含フッ素オリゴマーおよび樹脂成分を含み、所望により、溶媒成分、重合開始剤成分、フィラー成分等の添加剤が添加される。硬化性樹脂組成物には通常、溶媒成分が含まれ、この場合、硬化性樹脂組成物における反応性含フッ素オリゴマーの含有量は、組成物全量に対して、例えば0.1〜90.0質量%程度とすればよい。本発明の硬化性樹脂組成物は溶媒成分を含有しない無溶媒系であってもよい。溶媒成分の有無に拘わらず、硬化性樹脂組成物における反応性含フッ素オリゴマーの好ましい含有量は、固形分(溶媒成分以外の成分の合計量)に対して、0.0006〜17質量%程度であり、より好ましくは0.007〜13質量%程度、さらに好ましくは、0.07〜10質量%程度である。反応性含フッ素オリゴマーの含有量は、特に樹脂成分100質量部に対して、0.001〜18質量部程度が好ましく、より好ましくは0.01〜15質量部程度、さらに好ましくは0.1〜10質量部程度である。反応性含フッ素オリゴマーは、一種単独で使用されても良いし、二種以上混合されて使用されても良い。この場合、それらの合計量が上記範囲内であればよい。
【0093】
樹脂成分は、反応性含フッ素オリゴマーと反応し得るエネルギー線硬化性樹脂モノマー及び/又は樹脂オリゴマー(以下、単に「樹脂モノマー」、「樹脂オリゴマー」ということがある)を含む。このような樹脂モノマー及び樹脂オリゴマーは、放射線、電子線、紫外線、可視光線等のエネルギー線により反応性含フッ素オリゴマーと反応して硬化膜を形成するものであれば、特に限定されず、通常ハードコート膜や反射防止コート膜に用いられるエネルギー線硬化性の樹脂モノマー及び/又は樹脂オリゴマーを任意に使用することができる。
【0094】
当該樹脂モノマー及び樹脂オリゴマーとしては、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、(メタ)アクリルウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂等が挙げられ、好ましくは(メタ)アクリル系樹脂、(メタ)アクリルウレタン系樹脂、特に(メタ)アクリルウレタン系樹脂が用いられる。特に、本発明の硬化性樹脂組成物は、硬化して膜形態で用いられるため、2官能以上の反応性官能基を有する樹脂モノマー及び/又は樹脂オリゴマーを用いることが好ましい。反応性官能基とは重合性二重結合を有する基である。
【0095】
2官能以上の反応性官能基を有する(メタ)アクリル系樹脂として、例えば、トリシクロデカンジメチロールジアクリレート、ビスフェノールF EO変性ジアクリレート、ビスフェノールA EO変性ジアクリレート、イソシアヌル酸EO変性ジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチールプロパンPO変性トリアクリレート、グリセリンPO付加トリアクリレート、トリメチロールプロパンEO変性トリアクリレート、トリメチロールプロパンEO変性トリメタクリレート、イソシアヌル酸EO変性ジアクリレート、イソシアヌル酸EO変性トリアクリレート、ε−カプロラクトン変性トリス(アクロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等が挙げられるが、特にこれらに限定するものではない。
【0096】
2官能以上の反応性官能基を有する(メタ)アクリルウレタン系樹脂として、例えば、各種ウレタンアクリレートオリゴマー(日本合成化学工業株式会社製 紫光シリーズ、根上工業株式会社製 アートレジンシリーズ等)等が挙げられるが、特にこれらに限定するものではない。
【0097】
樹脂成分の含有量は、硬化性樹脂組成物の固形分(溶媒成分以外の成分の合計量)に対して、通常55〜99.9質量%程度であり、好ましくは60〜99.5質量%程度、より好ましくは、70〜99質量%程度である。樹脂成分は2種類以上の材料が使用されてよく、この場合、それらの合計量が上記範囲内であればよい。
【0098】
溶媒成分は、本発明の硬化性樹脂組成物に必ずしも含まれる必要はないが、必要に応じて含まれる。溶媒成分としては、従来公知の有機溶媒を使用すればよく、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、アセトニトリル、プロピオニトリルなどのニトリル類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、ジエチルエーテルなどのエーテル類、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなどのアルキレングリコールモノエーテル類、ジエチレングリコールジエチルエーテルなどのアルキレングリコールジエーテル類、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンが挙げられる。
【0099】
溶媒成分を使用する場合、その含有量は、硬化性樹脂組成物の固形分100質量部に対して、通常25〜5000質量部程度、好ましくは40〜2000質量部程度、より好ましくは60〜1000質量部程度とすればよい。溶媒成分は1種類でも使用できるが、2種以上を任意の割合で配合して使用してもよい。この場合、それらの合計量が上記範囲内であればよい。
【0100】
重合開始剤成分は、紫外線、可視光線を硬化のためのエネルギー源とする場合には配合することが好ましい。放射線、電子線による硬化では電磁波のエネルギーが高いため、重合開始剤成分は必ずしも配合する必要はない。
【0101】
重合開始剤成分は、従来公知のものが使用でき、例えば、光重合開始剤を使用することができる。光重合開始剤としては、多種多様なものが知られており、適宜選択して使用すればよい。例えば、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、ベンゾフェノン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ−フェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モリフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モリフォリノフェニル)−ブタノン、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ベンチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン,[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(0−アセチルオキシム)、2,2−ビス(2−クロロフェニル)−4,4,5,5−テトラフェニル−1,2−ビイミダゾール、2,2−ジエトキシアセトフェノン、ベンゾフェノン、O−ベンゾイル安息香酸メチル、4,4−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、ジベンジルケトン、フルオレノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、チオキサントン、ベンジルジメチルケタノール、ベンジルメトキシエチルアセタール、ベンゾイン、アントラキノン、アントロン、ジベンゾスベロン、4,4−ビス(ジメチルアミノ)カルコン、P−ジメチルアミノシンナミリデンインダノン、2−(P−ジメチルアミノフェニルビニレン)−イソナフトチアゾール、3,3−カルボニルービス(7−ジエチルアミノクマリン)、3−フェニルー5−ベンゾイルチオ−テトラゾール等が挙げられる。
【0102】
重合開始剤成分を使用する場合、その含有量は、硬化性樹脂組成物の固形分に対して、通常0.1〜50質量%程度、好ましくは0.5〜40質量%程度、より好ましくは1〜30質量%程度とすればよい。重合開始剤成分は、1種類単独での使用も可能であるが、2種以上を任意に配合して使用してもよい。その場合、それらの合計量が上記範囲内であればよい。
【0103】
本発明の硬化性樹脂組成物には、本発明の目的が達成される範囲内で、反応性官能基を有さないポリマーが含有されてもよい。
【0104】
本発明の硬化性樹脂組成物は、例えば、樹脂、ガラスおよび金属等からなる基材(例えば、フィルム、ボードおよび繊維等の形状を有する成形品)の表面に塗布することにより、基材表面の特性を改質する。詳しくは、硬化性樹脂組成物を塗布した後、溶媒成分を蒸発させることにより、基材表面に本発明の反応性含フッ素オリゴマーを含む膜を形成し、好ましくはその後、反応性含フッ素オリゴマーおよび樹脂成分を硬化させる。
【0105】
基材としては、膜の支持が可能であれば特に限定されないが、例えば、形成された膜を光学用途向けハードコートとして利用する場合には透明性を有するシートが望ましい。透明性シートの材質としては、ガラス、プラスチック等が挙げられ、特にプラスチックシートが好ましい。プラスチックとしては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等が使用でき、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、トリアセチルセルロース、ブチルセルロース等のセルロース樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアクリロニトリル、シクロオレフィンポリマー、ポリエーテルスルホン等が挙げられる。これらの材質からなるシートは必要に応じて、バインダー処理、コロナ処理、プラズマ処理、フレーム処理等の易着処理を行ってもよい。
【0106】
塗布方法は特に限定されないが、例えば、ウェットコーティングにより塗布され、その方式として例えばグラビア方式、バーコート方式、ワイヤーバー方式、スピンコート方式、ドクターブレード方式、ディップコート方式、スリットコート方式、スプレーコート方式等が挙げられる。
【0107】
溶媒の乾燥方法としては、特に制限されず、温風乾燥、真空乾燥等を行えばよい。乾燥(蒸発)条件は、溶媒の種類、量等によって変化するが、通常、室温〜200℃で、10秒間〜10分間程度乾燥させればよい。
【0108】
硬化方法は、放射線、電子線、紫外線、可視光線等のエネルギー線を照射する方法を採用する。通常は、250nm〜400nm程度の波長の光を100〜500mJ/cm
2照射することにより硬化を行う。太陽光も照射することにより硬化を行ってもよい。硬化により、膜が基材表面上に密着し、耐指紋性、レベリング性等の高い持続性が達成される。本発明は、硬化を加熱により達成することを妨げるものではない。この場合、重合開始剤成分としては、公知の熱重合開始剤が使用される。
【0109】
硬化膜の厚みは、特に限定されず、用途に応じて適宜選択すればよい。通常は、100nm〜30μm程度とすることができる。
【0110】
本発明の反応性含フッ素オリゴマーは、少なくとも当該反応性含フッ素オリゴマーおよび溶媒成分を含み、樹脂成分を含まない単なる溶液系として使用することもできる。
【実施例】
【0111】
本発明の内容を以下の実施例により説明するが、本発明の内容は実施例により限定して解釈されるものではない。
合成例1
滴下ロートを備えた三つ口フラスコ(3L)内に、2−ヒドロキエチルメタクリレート130.1g(1.0mol)、トリエチルアミン111.1g(1.1mol)、酢酸エチル600gを入れた。滴下ロートに次式(3)で表される含フッ素酸クロライド586.5g(1.0mol)、酢酸エチル100gを入れフラスコ内の溶液中へ約60分間かけて攪拌下で徐々に滴下した。滴下終了後、室温で攪拌をさらに3時間続行した。
【0112】
【化21】
【0113】
[式(3)中、Rf
1は前記一般式(1)および(2)で示される基の混合基である。]
【0114】
反応混合物に1N塩酸1050gを加えて反応を停止させ、次いで、該反応混合物を3Lのビーカー内へ移した後、水1Lを用いる洗浄処理を3回行った。水洗処理後の溶液を減圧下脱水することにより、次式(A−1)で表される含フッ素メタクリレートを634.8g(収率93%)得た。得られた含フッ素メタクリレート(A−1)の
1H−NMRのデータを表1に示す。
【0115】
【化22】
【0116】
[式(A−1)中、Rf
1は上記式(3)においてと同様である。]
【0117】
【表1】
【0118】
合成例2
冷却管を備えた三つ口フラスコ(100mL)内に、合成例1で合成した含フッ素メタクリレート(A−1)7.32g(10.8mmol)、ソルベイソレキシス社製Fluorolink AD1700(D−1)3.48g、日油社製ブレンマーAE−400(ポリエチレングリコールモノメチルアクリレート)(B−1)2.42g(4.7mmol)、メタクリル酸(C−1)1.16g(13.4mmol)、メタクリル酸メチル(C−2)1.68g(16.8mmol)、メチルイソブチルケトン22.50g、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.13g(0.8mmol)、ラウリルメルカプタン1.60g(7.9mmol)を入れた。反応溶液中に窒素ガスを導入し、反応容器内を窒素置換した。窒素置換後、反応溶液を撹拌しながら反応溶液を80℃まで加熱し反応を開始した。その後80℃で撹拌を14時間続行した。反応の終了を
1H−NMRの、それぞれのアクリレート特有のピークの消失で確認した。具体的には、(A−1)のメタクリル基5.60ppm,6.15ppm、(D−1)のアクリル基5.83−5.87ppm,6.11−6.18ppm,6.42−6.46ppm、(B−1)のアクリル基5.83−5.85ppm,6.11−6.18ppm,6.40−6.44ppm、(C−1)のメタクリル基5.62−5.74ppm,6.14−6.31ppm、(C−2)のメタクリル基5.53−5.58ppm,6.07−6.13ppmのピークの消失を確認した。目的の共重合体が定量的(40質量%メチルイソブチルケトン溶液)に得られた。
【0119】
得られた共重合体を固形分濃度20質量%になるようにメチルイソブチルケトンを加え調整し、単量体(B−1)に対して0.5当量分の単量体(E−1:2−(イソシアネートエチル)アクリレート)及び0.01当量分の1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンを入れ、50℃で反応溶液の攪拌を20時間続行した。反応の終了をFT−IRを用いて−N=C=O吸収(2275〜2250cm
−1)の消失により確認した。得られた含フッ素オリゴマーの重量平均分子量をGPCを用いて確認した。測定結果を表2に示す。また得られた含フッ素オリゴマーの
1H−NMRを測定したところ、アクリレート基由来のピーク(5.82−5.85ppm,6.07−6.14ppm,6.38−6.43ppm)が観察されたことから、反応性基を有していることが確認された。
【0120】
合成例3〜7/比較合成例1〜7
単量体成分として表2に示す単量体を所定の割合で用いたこと以外、合成例2と同様の方法により、含フッ素オリゴマーを製造した。
合成例5では、メチルイソブチルケトンの代わりにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを用いた。
合成例6では、メチルイソブチルケトンの代わりに酢酸エチルを用いた。
比較合成例3では、メチルイソブチルケトンの代わりに酢酸エチルを用いた。
比較合成例5では、メチルイソブチルケトンの代わりにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを用いた。
【0121】
各合成例/比較合成例では、以下のピークに関する確認を行った。
成分A〜Dの反応の終了は、合成例2と同様に、
1H−NMRによる各成分のアクリル基またはメタクリル基のピークの消失により確認した。
成分Eとの反応の終了は、合成例2と同様に、FT−IRによる−N=C=O吸収(2275〜2250cm
−1)の消失により確認した。
得られた含フッ素オリゴマーの
1H−NMRを測定したところ、合成例2と同様にアクリレート基由来のピークが観察されたことから、反応性基を有していることが確認された。
【0122】
【表2】
【0123】
(B−1)日油社製ブレンマーAE−400 HO(CH
2CH
2O)
nC(=O)CH=CH
2) n≒10
(B−2)4−ヒドロキシブチルアクリレート
(D−2)ソルベイソレキシス社製Fluorolink MD700;当該MD700は1分子あたり2個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物である。
(D−3)直鎖含フッ素アクリレート(CF
3(CF
2)
5CH
2CH
2OC(=O)CH=CH
2)
(E−2)2−(イソシアネートエチル)メタクリレート
【0124】
実施例1〜6/比較例1〜7
硬化性樹脂モノマーとしてウレタンアクリレート(日本合成化学工業製、商品名:紫光UV−6300B)20質量部、光重合開始剤として1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名:イルガキュア184)を0.8質量部、表3に示す含フッ素オリゴマー1.0質量部(20質量%溶液品)、溶媒としてメチルエチルケトン(MEK)を78.2質量部、混合し、硬化性塗工液を作成した。これをNo.8のバーコーターでポリエステルフィルム(東洋紡績製、商品名:コスモシャインA4100)に塗り広げ、60℃に設定した乾燥機に3分間投入し、溶媒を揮発させた後、UV照射(120W高圧水銀、7m×2pass、500mJ/cm
2)することで硬化膜を得た。その評価結果を表3に示す。
【0125】
評価
(1)相溶性
硬化性塗工液を観察することにより、含フッ素オリゴマーの有機溶媒および樹脂成分に対する相溶性を評価した。
評価基準:
透明=○
白濁・沈殿物有=×
【0126】
(2)初期撥水性
作製直後の硬化膜表面に対する水の接触角を接触角測定装置(協和界面化学製;DropMaster600)で測定した。
評価基準:
水の接触角が90度超=○
水の接触角が90度以下=×
【0127】
(3)初期撥油性
作製直後の硬化膜表面に対するオレイン酸の接触角を接触角測定装置(協和界面化学製;DropMaster600)で測定した。
評価基準:
オレイン酸の接触角が35度超=○
オレイン酸の接触角が35度以下=×
【0128】
(4)初期指紋拭取り性
硬化膜表面に指紋を付着させ、指紋が見えなくなるまでプロワイプ(大王製紙製、商品名:エリエール プロワイプ ソフトマイクロワイパーS220)で指紋を拭き取り、その回数(往復で1回とする)を計測した。なお、反応性含フッ素オリゴマーを添加せずに塗工したブランクは10回であった。
評価基準:
拭き取り回数が7回以下=○
拭き取り回数が7.5回以上もしくは白化する=×
【0129】
(5)撥水持続性
硬化膜表面をエタノールで濡らしたプロワイプ(大王製紙製、商品名:エリエール プロワイプ ソフトマイクロワイパーS220)で往復で100回拭き、乾燥後の硬化膜に対する水の接触角を上記初期撥水性と同様の方法により測定した。
評価基準:
拭き取り後の水の接触角が90度超=○
拭き取り後の水の接触角が90度以下、若しくは初期接触角が90度以下=×
【0130】
(6)撥油持続性
硬化膜表面をエタノールで濡らしたプロワイプ(大王製紙製、商品名:エリエール プロワイプ ソフトマイクロワイパーS220)で往復で100回拭き、乾燥後の硬化膜に対するオレイン酸の接触角を上記初期撥油性と同様の方法により測定した。
評価基準:
拭き取り後のオレイン酸の接触角が35度超=○
拭き取り後のオレイン酸の接触角が35度以下、若しくは初期接触角が35度以下=×
【0131】
(7)指紋拭取りの持続性
硬化膜表面をエタノールで濡らしたプロワイプ(大王製紙製、商品名:エリエール プロワイプ ソフトマイクロワイパーS220)で往復で100回拭き、乾燥後の硬化膜に対する指紋拭き取り性を上記指紋拭き取り性と同様の方法により測定した。なお、反応性含フッ素オリゴマーを添加せずに塗工したブランクは10回であった。
評価基準:
拭き取り回数が6.5回以下=○
拭き取り回数が7回以上もしくは白化する=×
【0132】
(8)鉛筆硬度
硬化膜表面をJIS−K−5600の試験方法に則り、評価した。
評価基準:
鉛筆硬度がHまたはそれより硬い=○
鉛筆硬度がFまたはそれより柔らかい=×
【0133】
(9)表面平滑性
UV照射後の硬化膜表面を目視で観察した。
評価基準:
スジ、ハジキ等がない=○
スジ、ハジキ等がある=×
【0134】
【表3】
【0135】
表3から分かるように、実施例1〜6の硬化膜は、いずれも良好な撥水撥油性、指紋拭き取り性(耐指紋性)および表面平滑性を示し、特に撥水撥油性および指紋拭き取り性は持続性を有することが判った。
含フッ素オリゴマーが単量体成分(D)(ペルフルオロポリエーテル基含有4官能型アクリレート成分)を含有しない比較例1では、撥水撥油性に関して充分な性能が得られなかった。
含フッ素オリゴマーが単量体成分(A)(ペルフルオロアルキレン基含有成分)を含有しない比較例2では、撥油性の持続性および指紋拭き取りの持続性に関して充分な性能が得られなかった。
含フッ素オリゴマーがペルフルオロポリエーテル基含有4官能型アクリレートの代わりに2官能型メタクリレートを含有する比較例3では、相溶性、拭き取り持続性および表面平滑性が悪かった。
含フッ素オリゴマーが単量体成分(E)を含有しない比較例4では、撥水撥油性および指紋拭き取り性の持続性において充分な性能が得られなかった。
含フッ素オリゴマーがペルフルオロポリエーテル基含有4官能型アクリレートの代わりに1官能型アクリレートを含有する比較例5では、拭き取り後の塗膜が白化し耐指紋性が劣る結果になった。
含フッ素オリゴマーが単量体成分(B)を含有しない比較例6では、撥水撥油性および指紋拭き取り性の持続性において充分な性能が得られなかった。
含フッ素オリゴマーが単量体成分(C)を含有しない比較例7では、指紋拭き取り性において充分な性能が得られなかった。