【実施例1】
【0020】
実施例1に係る分岐管接続装置につき、
図1から
図5を参照して説明する。以下、
図1の紙面左側から右側の方向に流体管が配設され、
図1の紙面下側に分岐管が配設されるものであって、
図1の紙面下側を分岐管接続装置の正面側(前方側)として説明する。
【0021】
図1に示されるように、本発明の分岐管接続装置は、主として、流体管1の外周面に対して径方向から装着可能なように水平方向に分割された筐体2と、筐体2の分岐管接続部9の割面に跨って装着された分割部相対移動防止部材5とを備えている。
図1では、割面の下側の下部ハウジング2a等が示されている。
【0022】
本実施例の流体管1は、例えば、地中に埋設される上水道用のダクタイル鋳鉄製であり、断面視略円形状に形成され、内周面がモルタル層で被覆されている。尚、本発明に係る流体管は、その他鋳鉄、鋼等の金属製、あるいは石綿、コンクリート製、塩化ビニール、ポリエチレン若しくはポリオレフィン製等であってもよい。更に尚、流体管の内周面はモルタル層に限らず、例えばエポキシ樹脂等により被覆されてもよく、若しくは適宜の材料を粉体塗装により流体管の内周面に被覆してもよい。また、本実施例では流体管内の流体は上水であるが、本実施例の上水に限らず、例えば工業用水や農業用水、下水等の他、ガスやガスと液体との気液混合体であっても構わない。
【0023】
図2及び
図3に示されているように、流体管1の外周面に固定的に取り付けられる筐体2は、流体管1の外周を密封状に被覆するものであり、上下に分割された下部ハウジング2a、上部ハウジング2bをフランジ3a、3bを介して密封状に接続して円筒カップ状の弁ハウジング4(
図1及び
図4参照)が形成されており、開口した上部には作業弁(図示せず)の下側連結フランジ部(図示せず)を連結するためのフランジ6が形成されている。尚、流体管に取り付けられる筐体は、必ずしも本実施例のように2分割構造に限られず、3分割以上の分割ハウジングからなる複数分割構造であってもよく、これら分割ハウジング同士を接合するボルトは、流体管若しくは分岐管の管軸方向を除く方向に挿通されると、高い耐震性を達成できるため好ましい。
【0024】
また、
図1、
図3及び4に示すように、筐体2において、穿孔機(図示せず)により切断された流体管1の両側を流体密に接続するフランジ61を設けた連結部7、8が形成されており、該連結部7、8を結ぶ直線と直交する側面には、
図1にも示すように、分岐管接続部9が形成されている。2つ割りの連結部7、8及び分岐管接続部9は、下部ハウジング2a及び上部ハウジング2bのそれぞれに半円状に形成され、下部ハウジング2a及び上部ハウジング2bが合体されることにより環状をなすものである。尚、符号60は、下部ハウジング2aと上部ハウジング2bとを流体密に接続するための密封部材であって、下部ハウジング2aの接合面に形成された凹部に装着されている。
【0025】
分岐管接続部9は、後に詳細に説明する分割部相対移動防止部材5が装着可能なように、先端側に2つ割の環状突出部11を備えている。この環状突出部11の内径は分岐管10の外径よりわずかに大きく、軸方向にも一定の長さを有し、分岐管10が曲げなどにより揺動された場合でもこれを支持できる厚さを有している。また、環状突出部11の外周面には分割部相対移動防止部材5が外嵌されるため、フランジ3a、3bは設けられていない。また、分岐管接続部9の内周面には、分岐管10を流体密に接続するための環状のシール用取付け溝13が形成され、分岐管10の外周面との間で圧縮される密封用の弾性シール材12が装着されるようになっている。さらに、分岐管接続部9の内周面のシール用取付け溝13より奥側には、分岐管10の先端に形成されたフランジ14が嵌入可能な環状凹部15が形成され、分岐管10の抜け止めがなされるようになっている。
【0026】
分割部相対移動防止部材5は、筐体2の分岐管接続部9の先端に形成された環状突出部11に外嵌可能なリング状部材16から構成されるものであり、リング状部材16は一体に形成されている。リング状部材16の内周面と環状突出部11の外周面との間は、できるだけ隙間が少ないことが望ましいが、装着の便宜のため、リング状部材16の内径は環状突出部11の外径より若干大きく設定される。また、分割部相対移動防止部材5は、地震などが発生して分岐管10が流体管1に対して揺動するような大きな外力を受けた場合に、2つ割の環状突出部11が開くなどの相対移動を防止するものであり、大きな外力にも耐える必要があるため、例えば、鋼等の金属材料から形成され、厚み及び軸方向の長さも大きな外力に耐えるように設定されている。環状突出部11に分割部相対移動防止部材5が外嵌されると、分岐管接続部9の環状突出部11が分割部相対移動防止部材5により全周にわたってバックアップされるため、筐体2の分割部の開きや曲げ、ねじりなどによる相対移動が防止される。また、筐体2の分岐管接続部9全体も補強されるため、分岐管接続部9の変形も防止される。
【0027】
分割部相対移動防止部材5の環状突出部11からの離脱を防止するため、分岐管10の外周面には環状の鍔部17が設けられている。環状の鍔部17は、断面が先端側に開いた略漏斗状をなし、分割部相対移動防止部材5を構成するリング状部材16の外径とほぼ同じ外径を有している。そして、分割部相対移動防止部材5と鍔部17との間には周方向において2つに分割されたスペーサ18が介在されるようになっている。
【0028】
スペーサ18は、
図3に1点鎖線で示すように、分岐管10の外周面に外嵌されるように環状をなし、周方向において2つに分割されている。スペーサ18の内径は分岐管10の外径より大きく、外径はリング状部材16の外径とほぼ同じである。また、スペーサ18の軸方向の長さはリング状部材16の軸方向の長さと同じに設定されている。尚、スペーサの軸方向の長さは、本実施例のようにリング状部材の軸方向の長さよりも長寸、若しくは短寸に形成しても構わない。スペーサ18を構成する一方の半割部材18aの割面には固定ネジ21を装着する座グリ及び孔20が形成され、他方の半割部材18bの割面には雌ネジ部19が形成されており、分岐管10の外周面に外嵌された際、2つの半割部材18a及び18bが固定ネジ21により固定されるようになっている。
【0029】
図4は、流体管1に穿孔後、不断流分岐用切換弁が挿入され、分岐管10が接続された状態を示す図である。筐体2の下部ハウジング2a及び上部ハウジング2bはフランジ3a、3bを介して複数のボルト30(
図3参照)により一体的に固定される。弁ハウジング4内には密封部材26を介して弁箱25が装着され、密封部材26により、連結部7、8及び分岐管接続部9に通じる3つの部屋25a、25b、及び25cに仕切られている。
図4では、不断流分岐用切換弁の切換弁本体27は、連結部7及び8に通じる部屋25a及び25bを連通し、分岐管接続部9に通じる部屋25cを閉止した状態にある。尚、筐体2の両端と流体管1の連結部7、8の外周面との間には、両者を流体密に接続するために、それぞれ、環状の弾性シール部材28が押輪29により嵌入されている。
【0030】
分岐管接続部9には、弾性シール材12を介して分岐管10が嵌入されており、分岐管接続部9の先端側の環状突出部11の外周面に分割部相対移動防止部材5が外嵌されている。また、分岐管10の外周面の環状の鍔部17と分割部相対移動防止部材5を構成するリング状部材16との間には、周方向において2つに分割されたスペーサ18が介在されている。この状態において、分岐管接続部9の奥側の環状凹部15に分岐管10の先端のフランジ14が嵌入されており、分岐管10の軸方向の移動は規制されている。
【0031】
分岐管接続部9に分岐管10を接続するには、予め、分岐管10の外周面に弾性シール材12及び分割部相対移動防止部材5を構成するリング状部材16を外嵌しておく。この状態で分岐管10を2つ割状態の分岐管接続部9内に挿入し、分岐管10の先端のフランジ14が分岐管接続部9の環状凹部15に嵌入可能な位置で、筐体2の下部ハウジング2a及び上部ハウジング2bを一体的に固定する。次に、分割部相対移動防止部材5を構成するリング状部材16を分岐管10の外周面から分岐管接続部9の環状突出部11の外周面に移動して外嵌する。リング状部材16が移動した後の分岐管10の外周面には、周方向において2つ割のスペーサ18が外嵌される。
図3に示すように、分岐管10の外周面に外嵌された際、スペーサ18の2つの半割部材18a及び18bは固定ネジ21により固定される。これにより、分割部相対移動防止部材5を構成するリング状部材16が環状突出部11の外周面から離脱することはない。
【0032】
分岐管接続部9に分岐管10が接続された状態において、例えば、地震等の外力により、分岐管10に曲げモーメントが作用した場合、分岐管接続部9の先端の2つ割の環状突出部11には開く方向等の大きな力が作用する。しかしながら、本実施例においては、2つ割の環状突出部11は一体のリング状部材16により全周にわたってバックアップされるため、分割部において開きや曲げ、ねじりなどによる相対移動は防止される。また、分岐管接続部9全体も一体のリング状部材16により補強された状態にあるので、分岐管接続部9の変形も防止される。
【0033】
図5は、実施例1における分岐管接続装置の変形例を示す平面断面図であって、
図1ないし
図4と同一構成については同じ符号を付し、説明を省略する。
【0034】
図5において、分岐管接続部9の軸方向の先端側に形成される2つ割の環状突出部11’は、分割部相対移動防止部材5’が外嵌される部分より先端側に延長されており、その延長部分にスペーサ18の一端が嵌合可能な環状凹部32が形成されている。環状凹部32の外径は分割部相対移動防止部材5’が外嵌される部分の外径よりも小径である。
【0035】
分岐管10の外周面に設けられた環状の鍔部17’は、軸方向に対して略直交するように外径方向に延びている。この鍔部17’の内側面に環状突出部11’の先端が当接して筐体2に対する分岐管10の軸方向の位置が決められる。スペーサ18’は、環状をなし、円周方向において2つ割に形成されており、両端には内向きに突出するように形成されたフランジ部33a、33bを有し、その外径は分割部相対移動防止部材5’を構成するするリング状部材16’の側面が当接可能なように少なくともリング状部材16’の内径よりも大きく設定されている。
【0036】
環状突出部11’に分割部相対移動防止部材5’が外嵌され、スペーサ18’が装着された状態においては、スペーサ18’の一方のフランジ部33aが環状突出部11’の環状凹部32に嵌合し、他方のフランジ部33bが分岐管10の鍔部17’を抱くように嵌合されている。分岐管10の筐体2に対する挿入する向きの移動は、鍔部17’と環状突出部11’の先端との当接により阻止され、また、分岐管10の筐体2に対する離脱する向きの移動は、スペーサ18’により阻止される。このため、
図1ないし
図4の場合のように、分岐管10の先端にフランジ14を設けたり、分岐管接続部9に環状凹部15を設ける必要がない。本変形例においては、分岐管10の先端がストレートであってフランジ14を設ける必要がないため、分岐管接続部9に分岐管10を接続する際には、筐体2を一体に固定すると共に、分岐管接続部9の内面に弾性シール材12を装着し、環状突出部11’に分割部相対移動防止部材5’を外嵌した状態で分岐管10を分岐管接続部9に嵌入できるので、両者の接続作業を簡素化できる利点がある。
【実施例2】
【0037】
次に、実施例2に係る分岐管接続装置につき、
図6及び
図7を参照して説明する。尚、実施例2においては、分割部相対移動防止部材の構成が前記
図5に示す実施例1の変形例と相違するがその他の構成は前記
図5に示す実施例1の変形例と同じであり、同一構成については同じ符号を付し、説明を省略する。
【0038】
実施例2における分割部相対移動防止部材35は、
図7に示すように、環状をなし、周方向において2つに分割されており、筐体2の下部ハウジング2a及び上部ハウジング2bの接合後に、分岐管接続部9の環状突出部11’に外嵌されるものであって、例えば、接続フランジ3aと3bとの接合面と略同じ水平位置に置いて接合され、環状突出部11’を強固にバックアップするようになっている。詳述すると、分割部相対移動防止部材35は、第1の半割リング状部材35aと第2の半割リング状部材35bとから構成され、それぞれの接合部は、フック形状に形成され、例えば、第1の半割リング状部材35aの接合部36は上に開いたフック形状に、また、第2の半割リング状部材35bの接合部37は下に開いたフック形状に形成されており、接合時には逆向きの2つのフック形状により結合されるので、接合部において径方向に離脱されることはない。尚、第1の半割リング状部材35aと第2の半割リング状部材35bとの接合は、軸方向から行われる。さらに尚、これら接合部36,37が互いに接合される位置は、必ずしも本実施例のように接続フランジ3aと3bとの接合面と略同じ水平位置に限られず、例えば鉛直方向の上下端において接合されてもよい。
【0039】
図7に示す分割部相対移動防止部材35の第1の半割リング状部材35aと第2の半割リング状部材35bとの接合構造は、単に一例を示したに過ぎず、例えば、一方側に虫眼鏡型の凹部を設け、他方側に虫眼鏡型の凸部を設け、これらを軸方向から嵌合する構造にしてもよい。また、
図6に示すように、第1の半割リング状部材35a及び第2の半割リング状部材35bは、厚み方向に複数の板状部材が積層されて形成され、強度が向上された構成とされている。
【0040】
本実施例においては、分岐管10の先端がストレートであってフランジ14を設ける必要がないため、分岐管接続部9に分岐管10を接続する際には、筐体2を一体に固定すると共に、分岐管接続部9の内面に弾性シール材12を装着し、環状突出部11’に分割部相対移動防止部材35を外嵌した状態で分岐管10を分岐管接続部9に嵌入できるので、両者の接続作業を簡素化できる利点に加え、環状突出部11’に対する分割部相対移動防止部材35の外嵌作業を容易に行うことができる。
【実施例3】
【0041】
次に、実施例3に係る分岐管接続装置につき、
図8及び
図9を参照して説明する。尚、実施例3においては、分割部相対移動防止部材の装着位置及び構成が前記
図1ないし
図4に示す実施例1と相違するがその他の構成は前記
図1ないし
図4に示す実施例1と同じであり、同一構成については同じ符号を付し、説明を省略する。
【0042】
実施例3における分割部相対移動防止部材40は、
図9に示すように、H型部材から構成されており、筐体2の上下の分岐管接続部9及び接続フランジ3a、3bの接合面に跨るようにして設けられるものであって、
図8に示すように、軸方向に直線状に所定の長さを有している。また、
図8に示すように、実施例3における分岐管接続部9は、その先端側までフランジ3a、3bが形成されており、分岐管接続部9の先端側のフランジ3a、3bの基部付近において、分岐管接続部9の先端側から軸方向の奥側に向かって分割部相対移動防止部材40を嵌入させるための凹部41が形成されている。
図9に示すように、凹部41の断面形状は略H型をしており、H型部材からなる分割部相対移動防止部材40の2つのフランジ部40a及び40bが、それぞれ、下部ハウジング2a及び上部ハウジング2bに嵌入配置されるように形成されている。
【0043】
分岐管接続部9の断面略H型の凹部41に先端側から奥側に向かって分割部相対移動防止部材40を嵌入することにより、2つ割の分岐管接続部9は強固に結合される。本実施例では、分岐管接続部9の凹部41に分割部相対移動防止部材を装着することができるため、分割部相対移動防止部材を装着するための環状突出部を設ける必要がない。
【実施例6】
【0050】
次に、実施例6に係る分岐管接続装置につき、
図12を参照して説明する。尚、実施例6においては、分割部相対移動防止部材の装着位置及び構成が前記
図11に示す実施例5と相違するがその他の構成は前記
図11に示す実施例5と同じであり、同一構成については同じ符号を付し、説明を省略する。
【0051】
実施例6における分割部相対移動防止部材55は、分岐管接続部9の割面のフランジ3a、3bの外面に跨って該フランジ3a、3bを先端側から狭着可能な断面略コ字型部材から構成されている。分割部相対移動防止部材55は、例えば、弾性変形可能な材料からなる板状部材を断面形状が略コ字型になるように曲げ変形されて形成されるもので、フランジ3a及び3bの外面を狭着する狭着部55aと55bとの間隙はフランジ3a及び3bの合計の厚さよりも小さく形成され、装着時に狭着部55aと55bとの間隔を広げるように弾性変形させられる。
【0052】
分岐管接続部9のフランジ3a及び3bの外面に分割部相対移動防止部材55の弾性変形を利用して狭着することにより、2つ割の分岐管接続部9は強固に結合される。本実施例では、分岐管接続部9のフランジ3a及び3bの外面に分割部相対移動防止部材55を装着することができるため、分岐管接続部9側において分割部相対移動防止部材55を装着するための特別の加工を施す必要がない。尚、本実施例の分割部相対移動防止部材55は、例えば剛性の高い鋳造品からなる部材であってもよく、当該剛性により分岐管接続部9を狭着し強固に結合してもよい。
【0053】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。