特許第5998034号(P5998034)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5998034角柱形弁のヒータ、及びそのヒータを備える角柱形弁
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5998034
(24)【登録日】2016年9月2日
(45)【発行日】2016年9月28日
(54)【発明の名称】角柱形弁のヒータ、及びそのヒータを備える角柱形弁
(51)【国際特許分類】
   H05B 3/20 20060101AFI20160915BHJP
   F16L 59/147 20060101ALI20160915BHJP
   F16K 49/00 20060101ALI20160915BHJP
   F16K 51/02 20060101ALI20160915BHJP
   H05B 3/06 20060101ALI20160915BHJP
【FI】
   H05B3/20 335
   F16L59/147
   F16K49/00 B
   F16K51/02 A
   H05B3/06 B
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-269233(P2012-269233)
(22)【出願日】2012年12月10日
(65)【公開番号】特開2014-116188(P2014-116188A)
(43)【公開日】2014年6月26日
【審査請求日】2015年6月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000106760
【氏名又は名称】CKD株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 慎
【審査官】 土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−276096(JP,A)
【文献】 特開2008−091348(JP,A)
【文献】 実開昭57−032323(JP,U)
【文献】 実開昭62−069387(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 3/20
F16K 49/00
F16K 51/02
F16L 59/147
H05B 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
角柱状の本体を有し前記本体の側面のうち所定の1面に流体の流路が形成された弁に対して、前記本体の側面に取り付けられるヒータであって、
前記本体の側面のうち前記所定の1面を除く全側面にわたる長さを有する帯状のヒータ部と、
前記ヒータ部において前記本体の各側面に対応する位置にそれぞれ取り付けられた板状部材と、
前記ヒータ部の幅方向において前記板状部材の両端部の所定個所にそれぞれ取り付けられており、前記本体の側面に前記板状部材を外側にして前記ヒータ部を巻いた状態において、前記板状部材の外側から前記本体の側面の周りに1周以上巻くことのできる帯状の巻部と、
前記巻部の各々に設けられ、前記板状部材の外側から前記本体の側面の周りに1周以上巻かれた前記巻部を留めるように係合する係合部と、
を備えることを特徴とする角柱形弁のヒータ。
【請求項2】
前記板状部材は、断熱部材により構成されている請求項1に記載の角柱形弁のヒータ。
【請求項3】
前記ヒータ部において前記本体の角部に対応する角位置には、前記ヒータ部の幅方向に延びる孔が形成されている請求項1又は2に記載の角柱形弁のヒータ。
【請求項4】
前記ヒータ部は、線状に延びる電熱線を有しており、
前記電熱線は、前記ヒータ部の前記角位置において前記孔が形成されていない部分を、前記ヒータ部の長さ方向へ通っている請求項3に記載の角柱形弁のヒータ。
【請求項5】
前記ヒータ部とで前記板状部材を挟むカバーを備え、
前記カバーは、互いに隣り合う前記板状部材の間に対応する位置に、互いに隣り合う前記板状部材の間隔よりも長く形成されて曲げることのできる曲げ部分を有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の角柱形弁のヒータ。
【請求項6】
前記巻部と前記カバーとは、一体に形成されている請求項5に記載の角柱形弁のヒータ。
【請求項7】
前記係合部は、前記巻部において前記カバーから延長されて前記カバーの隣に位置する部分に取り付けられた第1係合部材と、前記巻部において前記板状部材の外側から前記本体の側面の周りに1周以上巻かれて前記第1係合部材に対応する位置に取り付けられた第2係合部材とを有する請求項6に記載の角柱形弁のヒータ。
【請求項8】
前記係合部は、前記巻部の互いに反対の面にそれぞれ取り付けられた第1シート及び第2シートを有する面ファスナである請求項1〜7のいずれか1項に記載の角柱形弁のヒータ。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のヒータを備え、
角柱状の本体を有し前記本体の側面のうち所定の1面に流体の流路が形成された弁であって、
前記本体の側面に前記ヒータが取り付けられていることを特徴とする角柱形弁。
【請求項10】
前記角柱形弁は、気体の排気通路を開閉する真空用弁である請求項9に記載の角柱形弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、角柱状の本体を有する弁に対して、本体の側面に取り付けられるヒータ、及びそのヒータを備える角柱形弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、四角柱形弁の本体において、4つの側面のうち気体の流路が形成された1面を除く3面に、柔軟性を有する薄型のヒータを貼り付けたものがある(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のものでは、ヒータの上に「コ」の字形(溝形)の断熱部材を取り付け、更に断熱部材の上に「コ」の字形の取付板を取り付けている。そして、8個のねじにより、弁の本体に取付板を固定している。
【0003】
上記構成によれば、弁の本体にヒータを密着させることができるため、ヒータが発生する熱を弁の本体に効率良く伝えることができる。また、取付板を「コ」の字形にすることで、本体の各側面に矩形の取付板をそれぞれ取り付ける構成と比較して、使用するねじの個数を減らすことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5048717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載のものでは、使用するねじの個数を減らしてはいるものの、ヒータ、断熱部材、及び取付板を、弁の本体に個別に取り付ける必要があり、取り付け作業に未だ多くの手間を要する。さらに、取付板の取り付けに複数のねじを使用しているため、ねじを紛失するおそれがある。
【0006】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、角柱形弁の本体に対するヒータの密着性を確保しつつ、取り付けを容易に行うことのできる角柱形弁のヒータ、及びそのヒータを備える角柱形弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために、以下の手段を採用した。
【0008】
第1の手段は、角柱状の本体を有し前記本体の側面のうち所定の1面に流体の流路が形成された弁に対して、前記本体の側面に取り付けられるヒータであって、前記本体の側面のうち前記所定の1面を除く全側面にわたる長さを有する帯状のヒータ部と、前記ヒータ部において前記本体の各側面に対応する位置にそれぞれ取り付けられた板状部材と、前記ヒータ部の幅方向において前記板状部材の両端部の所定個所にそれぞれ取り付けられており、前記本体の側面に前記板状部材を外側にして前記ヒータ部を巻いた状態において、前記板状部材の外側から前記本体の側面の周りに1周以上巻くことのできる帯状の巻部と、前記巻部の各々に設けられ、前記板状部材の外側から前記本体の側面の周りに1周以上巻かれた前記巻部を留めるように係合する係合部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
上記構成によれば、弁は角柱状の本体を有しており、本体の側面のうち所定の1面に流体の流路が形成されている。ヒータは、本体の側面のうち所定の1面を除く全側面にわたる長さを有する帯状のヒータ部を備えている、このため、本体の側面にヒータを取り付けて、所定の1面を除く側面をヒータ部により加熱することができる。
【0010】
ここで、ヒータ部には、弁の本体の各側面に対応する位置に、それぞれ板状部材が取り付けられている。そして、ヒータ部の幅方向(長さ方向に対して垂直な方向)において板状部材の両端部の所定個所には、帯状の巻部がそれぞれ取り付けられている。巻部は、弁の本体の側面に板状部材を外側にしてヒータ部を巻いた状態において、板状部材の外側から本体の側面の周りに1周以上巻くことができる。このため、各板状部材を巻部により外側から締め付けることで、各板状部材を介して本体の各側面にヒータ部を面で押し付けることができる。さらに、巻部は、ヒータ部の幅方向において板状部材の両端部を締め付けるため、本体の各側面にヒータ部を押し付ける力が偏ることを抑制することができる。
【0011】
そして、それぞれの巻部には、板状部材の外側から本体の側面の周りに1周以上巻かれた巻部を留めるように係合する係合部が設けられている。このため、係合部を係合させることにより、各板状部材を外側から締め付けている巻部を留めることができる。その結果、角柱形弁の本体に対するヒータ部の密着性を確保しつつ、ヒータの取り付けを容易に行うことができる。
【0012】
第2の手段では、前記板状部材は、断熱部材により構成されている。
【0013】
上記構成によれば、板状部材は断熱部材により構成されているため、ヒータ部の熱が外側に伝わることを抑制する断熱部材を、弁の本体の側面にヒータ部を押し付ける板状部材として利用することができる。その結果、ヒータの部材数を減少させることができる。
【0014】
弁における角柱状の本体の側面に帯状のヒータ部を巻く場合に、本体の角部において側面とヒータ部とに隙間が生じ易い。
【0015】
この点、第3の手段は、前記ヒータ部において前記本体の角部に対応する角位置には、前記ヒータ部の幅方向に延びる孔が形成されているといった構成を採用している。このため、ヒータ部に形成された孔によって本体の角部にならうことができ、本体の角部において側面とヒータ部とに隙間が生じることを抑制することができる。したがって、角柱形弁の本体に対するヒータ部の密着性を向上させることができる。
【0016】
第4の手段では、前記ヒータ部は、線状に延びる電熱線を有しており、前記電熱線は、前記ヒータ部の前記角位置において前記孔が形成されていない部分を、前記ヒータ部の長さ方向へ通っている。
【0017】
上記構成によれば、ヒータ部は線状に延びる電熱線を有しているため、ヒータ部の全体に電熱線を偏りなく配置することにより、ヒータ部によって均等に弁の本体を加熱することができる。ここで、ヒータ部において本体の角部に対応する角位置に、ヒータ部の幅方向に延びる孔が形成されている場合には、本体の各側面に対応する部分の間で、電熱線を渡すことができないおそれがある。
【0018】
この点、上記構成によれば、電熱線は、ヒータ部の上記角位置において孔が形成されていない部分を、ヒータ部の長さ方向へ通っている。このため、ヒータ部において、角位置に孔が形成されている場合であっても、本体の各側面に対応する部分の間で、電熱線を渡すことができる。その結果、ヒータ部の全体に電熱線を配置することができる。
【0019】
第5の手段では、前記ヒータ部とで前記板状部材を挟むカバーを備え、前記カバーは、互いに隣り合う前記板状部材の間に対応する位置に、互いに隣り合う前記板状部材の間隔よりも長く形成されて曲げることのできる曲げ部分を有する。
【0020】
上記構成によれば、ヒータは、ヒータ部とで板状部材を挟むカバーを備えているため、カバーにより板状部材やヒータ部を保護することができる。ここで、弁の本体の側面に板状部材を外側にしてヒータ部を巻いた状態では、カバーは板状部材の外周側に位置する。このため、弁の本体の角部では、板状部材の厚みに応じてカバーを長くする必要がある。
【0021】
この点、上記構成によれば、カバーは、互いに隣り合う板状部材の間に対応する位置に、互いに隣り合う板状部材の間隔よりも長く形成されて曲げることのできる曲げ部分を有している。したがって、カバーにおいて弁の本体の角部に対応する位置の長さを、曲げ部分により調整することができ、カバーの長さが足りなくなることを抑制することができる。
【0022】
第6の手段では、前記巻部と前記カバーとは、一体に形成されている。
【0023】
上記構成によれば、上記巻部とカバーとは一体に形成されているため、巻部とカバーとを同一の材料から同時に形成することができる。さらに、巻部とカバーとを重ね合わせて、互いに固定する必要がない。その結果、巻部及びカバーの製造を容易化することができる。
【0024】
第7の手段では、前記係合部は、前記巻部において前記カバーから延長されて前記カバーの隣に位置する部分に取り付けられた第1係合部材と、前記巻部において前記板状部材の外側から前記本体の側面の周りに1周以上巻かれて前記第1係合部材に対応する位置に取り付けられた第2係合部材とを有する。
【0025】
上記構成によれば、巻部において、カバーから延長されてカバーの隣に位置する部分に、第1係合部材が取り付けられている。また、巻部において、板状部材の外側から本体の側面の周りに1周以上巻かれて第1係合部材に対応する位置に、第2係合部材が取り付けられている。このため、第1係合部と第2係合部とを係合させることのできる構成において、巻部の長さを最も短くすることができる。
【0026】
第8の手段では、前記係合部は、前記巻部の互いに反対の面にそれぞれ取り付けられた第1シート及び第2シートを有する面ファスナである。
【0027】
上記構成によれば、巻部の互いに反対の面にそれぞれ、面ファスナの第1シート及び第2シートが取り付けられている。そして、この面ファスナにより、板状部材の外側から本体の側面の周りに1周以上巻かれた巻部を留めることができる。ここで、面ファスナでは第1シートと第2シートとの係合位置(係合量)を調節することができるため、巻部により板状部材を締め付ける力を調節することができる。したがって、面ファスナの第1シートと第2シートとの係合位置を調節することにより、ヒータ部から弁の本体に伝わる熱量を調節することができる。
第9の手段は、第1〜第8の手段のいずれか1つに記載のヒータを備え、角柱状の本体を有し前記本体の側面のうち所定の1面に流体の流路が形成された弁であって、前記本体の側面に前記ヒータが取り付けられていることを特徴とする。
上記構成によれば、ヒータに取り付けられた角柱形弁において、第1〜第8の手段と同様の作用効果を奏することができる。
具体的には、第10の手段のように、前記角柱形弁は、気体の排気通路を開閉する真空用弁であるといった構成を採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】四角柱形弁の正面を示す正面図。
図2】四角柱形弁の側面を示す側面図。
図3】上記四角柱形弁にヒータを取り付けた状態を示す正面図。
図4】上記四角柱形弁にヒータを取り付けた状態を示す側面図。
図5】上記四角柱形弁にヒータを取り付けた状態を示す上面図。
図6】上記ヒータの内面を示す正面図。
図7】上記ヒータの下面を示す下面図。
図8】巻部の変更例を示す正面図。
図9】巻部の他の変更例を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態は、半導体製造装置等において、気体の排気通路を開閉する真空用弁に取り付けられるヒータとして具体化している。
【0030】
初めに、ヒータが取り付けられる真空用弁の概略について説明する。ここでは、真空用弁として、四角柱状の本体を有する四角柱形弁を採用している。図1,2に示すように、四角柱形弁10(角柱形弁)は、本体11、弁機構17、及びアクチュエータ19を備えている。
【0031】
本体11は、アルミやステンレス等により、四角柱状に形成されている。本体11の4つの側面11a,11b,11c,11dのうち、側面11a(所定の1面)には、気体の流路である第1流路13が形成されている。また、本体11の下面11e(下底面)には、気体の流路である第2流路15が形成されている。流路13,15は、それぞれ側面11a及び下面11eの略中央に形成されている。流路13,15は、円筒状に形成されており、それぞれ側面11a及び下面11eに垂直な方向へ延びている。そして、第1流路13又は第2流路15に、真空ポンプ等が接続される。なお、流路13,15は、円筒状に限らず、四角筒状等、他形状の筒状であってもよい。
【0032】
本体11の内部には、弁体等を有する上記弁機構17が配置されている。本体11の上面11fには、上記アクチュエータ19が取り付けられている。アクチュエータ19は、作動流体により動作が制御される。弁機構17は、アクチュエータ19により駆動され、弁体を移動させることにより、上記第1流路13及び第2流路15を連通及び遮断する。なお、アクチュエータ19は、電動モータ等を備え、供給される電力により動作が制御されるものでもよい。
【0033】
次に、図3〜5を参照して、四角柱形弁10にヒータ20を取り付けた状態の概略について説明する。図3〜5はそれぞれ、四角柱形弁10にヒータ20を取り付けた状態を示す正面図、側面図、及び上面図である。
【0034】
同図に示すように、ヒータ20は、四角柱形弁10の上記本体11における側面11a〜11dに取り付けられている。ヒータ20は、帯状のヒータ部21、板状の断熱部材31b,31c,31d、帯状の巻部41,45、及び面ファスナ51,55を備えている。ヒータ部21は、本体11の側面11a〜11dのうち、側面11b〜11d(所定の1面を除く全側面)にわたる長さを有している。断熱部材31b,31c,31d(板状部材)は、ヒータ部21において本体11の各側面11b,11c,11dに対応する位置にそれぞれ取り付けられている。巻部41,45は、ヒータ部21の幅方向において断熱部材31dの両端部の所定個所にそれぞれ取り付けられている。
【0035】
ヒータ部21は、本体11の側面11b〜11dに、断熱部材31b〜31dを外側にして巻かれている。巻部41,45は、断熱部材31b〜31dの外側から、本体11の側面11a〜11dの周りに1周以上巻かれている。そして、巻部41の長さ方向の両端に取り付けられた面ファスナ51(係合部)により、巻部41が留められている。また、巻部45の長さ方向の両端に取り付けられた面ファスナ55(係合部)により、巻部45が留められている。
【0036】
次に、図6,7を参照して、ヒータ20について詳細に説明する。図6はヒータ20の内面を示す正面図であり、図7はヒータ20の下面を示す下面図である。
【0037】
上述したように、ヒータ20は、ヒータ部21、断熱部材31b,31c,31d、巻部41,45、及び面ファスナ51,55を備えている。さらに、ヒータ20は、熱電対25、温度ヒューズ27、及びカバー61を備えている。
【0038】
ヒータ部21は、電熱線22、導線23、及び絶縁部材24を有している。絶縁部材24は、シリコンゴム等の絶縁性及び耐熱性に優れる材料により形成されており、矩形の膜状(帯状)に形成されている。絶縁部材24は、四角柱形弁10の本体11における各側面11b,11c,11dにそれぞれ対応した領域24b,24c,24dを有している。すなわち、各領域24b,24c,24dは、本体11の各側面11b,11c,11dと等しい形状に形成されている。
【0039】
電熱線22は、一対の絶縁部材24により挟み込まれており、絶縁部材24に固定されている。すなわち、電熱線22は、絶縁部材24によって絶縁されている。電熱線22は、ニクロム線等の合金や金属により形成され、曲線状(線状)に延びている。電熱線22は、絶縁部材24の各領域24b,24c,24dを蛇行しており、絶縁部材24の全体に略均等に広がるように配置されている。電熱線22の両端部には、導線23が接続されている。そして、電熱線22は、導線23を通じて通電されることにより発熱する。
【0040】
上記構成において、四角柱形弁10における本体11の側面11a〜11dに帯状のヒータ部21を巻く場合に、本体11の角部において側面とヒータ部21とに隙間が生じ易い。そこで、絶縁部材24(ヒータ部21)において本体11の角部に対応する角位置Cには、絶縁部材24の幅方向に延びる孔Hがそれぞれ形成されている。孔Hは、矩形状に形成されており、絶縁部材24の幅方向の両端部付近まで延びている。すなわち、絶縁部材24は、角位置Cにおいて孔Hの形成されていない両端部分で繋がっている。
【0041】
ここで、絶縁部材24には孔Hが形成されているため、本体11の各側面11b,11c,11dに対応する各領域24b,24c、24dの間で、電熱線22を渡すことができないことが懸念される。この点、電熱線22は、絶縁部材24の角位置Cにおいて孔Hが形成されていない両端部分を、絶縁部材24の長さ方向へ通っている。このため、絶縁部材24において、本体11の各側面11b,11c,11dに対応する各領域24b,24c,24dの間で、電熱線22を渡すことができる。
【0042】
断熱部材31b,31c,31dは、シリコンゴムの発砲材等の断熱材料により形成されている。断熱部材31b,31c,31dは、四角柱形弁10の本体11における各側面11b,11c,11dに対応した形状、すなわち絶縁部材24の各領域24b,24c,24dに対応した形状で、板状に形成されている。断熱部材31b,31c,31dは、絶縁部材24よりも厚く形成されており、ヒータ部21を押さえ付ける板状部材として必要な剛性を有している。詳しくは、断熱部材31b,31c,31dは、ヒータ部21(電熱線22及び絶縁部材24)の厚み略2mmに対して、5倍(略5倍)の厚み略10mmを有している。断熱部材31b,31c,31dは、ヒータ部21の外面において、絶縁部材24の各領域24b,24c,24dに対応する位置にそれぞれ取り付けられている。
【0043】
断熱部材31b,31c,31dにおいてヒータ部21と反対側の面には、カバー61が取り付けられている。すなわち、断熱部材31b,31c,31dは、ヒータ部21及びカバー61によって挟まれている。カバー61は、上記絶縁部材24に対応した形状で、矩形の膜状(帯状)に形成されている。ただし、カバー61には、上記孔Hに対応する孔は形成されていない。
【0044】
ここで、四角柱形弁10における本体11の側面11a〜11dに断熱部材31b〜31dを外側にしてヒータ部21を巻いた状態では、カバー61は断熱部材31b〜31dの外周側に位置する(図3,5参照)。このため、絶縁部材24の角位置C(本体11の角部)では、断熱部材31b〜31dの厚みに応じてカバー61を長くする必要がある。
【0045】
この点、カバー61は、互いに隣り合う断熱部材31b,31c,31dの間に対応する位置、すなわち絶縁部材24の角位置Cに対向する位置に、曲げ部分61aを有している。カバー61において、曲げ部分61aを除く部分が断熱部材31b,31c,31dに固定されており、曲げ部分61aは断熱部材31b,31c,31dに固定されていない。曲げ部分61aは、互いに隣り合う断熱部材31b,31c,31dの間隔gよりも長く形成されており、互いに隣り合う断熱部材31b,31c,31dがなす角度に応じて曲げることができる。
【0046】
カバー61と上記巻部41,45とは、一体に形成されている。カバー61及び上記巻部41,45は、織布(布)により、一続きで形成されている。巻部41,45は、カバー61(ヒータ部21)の幅方向の両端部において、カバー61の長さ方向の一端からそれぞれ延びている。詳しくは、巻部41,45は、断熱部材31dの2つの角部にそれぞれ取り付けられている。巻部41,45は、本体11の側面5つ分と上記間隔g2つ分と断熱部材31b,31dの厚みとを合計した長さ、すなわち断熱部材31b〜31dの外側から、本体11の側面11a〜11dを1周して更に側面11aに略1回重なる長さを有している。巻部41と巻部45との間隔は、本体11の第1流路13の外径と略等しくなっている。
【0047】
上述したように、巻部41,45の長さ方向の両端部には、面ファスナ51,55がそれぞれ取り付けられている。面ファスナ51は、第1シート51a及び第2シート51bを有しており、面ファスナ55は、第1シート55a及び第2シート55bを有している。巻部41,45において、カバー61から延長されてカバー61の隣に位置する部分(一端部)に、第1シート51a,55a(第1係合部材)がそれぞれ取り付けられている。また、巻部41,45において、カバー61から最も離れた部分(他端部)に、第2シート51b,55b(第2係合部材)がそれぞれ取り付けられている。すなわち、第2シート51b,55bは、断熱部材31b〜31dの外側から巻部41,45を本体11の側面の周りに1周以上巻いて、第1シート51a,55aにそれぞれ重なる位置に取り付けられている。
【0048】
第1シート51a,55aは、巻部41,45(カバー61)に対して断熱部材31b〜31dと反対側の面に取り付けられている。一方、第2シート51b,55bは、巻部41,45(カバー61)に対して断熱部材31b〜31dと同じ側の面に取り付けられている。すなわち、第1シート51a,55aと第2シート51b,55bとは、巻部41,45の互いに反対の面にそれぞれ取り付けられている。
【0049】
熱電対25は、絶縁部材24の領域24dに取り付けられている。熱電対25は、図示しない制御装置に接続されており、検出位置の温度に応じた信号を制御装置に出力する。制御装置は、熱電対25から入力される信号に基づいて、ヒータ20の温度を目標温度にフィードバック制御する。なお、絶縁部材24の領域24cには、温度ヒューズ27が取り付けられている。温度ヒューズ27は、検出位置の温度が所定温度よりも高くなった場合に、電熱線22への電流を遮断する。
【0050】
次に、四角柱形弁10にヒータ20を取り付ける手順について説明する。
【0051】
使用者は、ヒータ20における絶縁部材24の領域24b,24c,24dを、本体11の側面11b,11c,11dにそれぞれ順に押し当てる。このとき、絶縁部材24において本体11の角部に対応する角位置Cには、絶縁部材24の幅方向に延びる孔Hがそれぞれ形成されているため、本体11の角部の先端を孔Hに合わせることができる。このため、絶縁部材24を容易に折り曲げることができ、本体11の側面と絶縁部材24とに隙間が生じることを抑制することができる。また、カバー61は、互いに隣り合う断熱部材31b,31c,31dの間に対応する位置に、曲げ部分61aを有している。このため、断熱部材31b〜31dの外周側に位置するカバー61の長さが、本体11の角部で足りなくなることを抑制することができる。さらに、カバー61が曲げ部分61aを有することで、断熱部材31b〜31dを厚くすることができるため、ヒータ部21の発熱量を大きくすることができる。
【0052】
続いて、巻部41を、断熱部材31b〜31d及びカバー61の外側から、本体11の側面11a〜11dの周りに順に巻く。そして、再び巻部41を、本体11の側面11aの前まで巻き、側面11aの前において面ファスナ51の第1シート51aに第2シート51bを係合させる。このとき、第1シート51aと第2シート51bとの係合位置を調節することで、巻部41により断熱部材31b〜31dを締め付ける力を調節する。
【0053】
同様にして、巻部45を、断熱部材31b〜31d及びカバー61の外側から、本体11の側面11a〜11dの周りに順に巻く。このとき、巻部41と巻部45との間に、本体11の第1流路13が位置する。すなわち、本体11の第1流路13を避けて、巻部41,45を本体11の側面に巻くことができる。そして、面ファスナ55の第1シート55aに第2シート55bを係合させる位置を調節することで、巻部45により断熱部材31b〜31dを締め付ける力を調節する。
【0054】
以上詳述した本実施形態は、以下の利点を有する。
【0055】
・ヒータ部21には、四角柱形弁10における本体11の各側面11b,11c,11dに対応する位置に、それぞれ断熱部材31b,31c,31dが取り付けられている。そして、ヒータ部21の幅方向において断熱部材31dの両端部の所定個所には、帯状の巻部41,45がそれぞれ取り付けられている。巻部41,45は、四角柱形弁10の本体11の側面に断熱部材31b,31c,31dを外側にしてヒータ部21を巻いた状態において、断熱部材31b,31c,31dの外側から本体11の側面の周りに1周以上巻くことができる。このため、各断熱部材31b,31c,31dを巻部41,45により外側から締め付けることで、各断熱部材31b,31c,31dを介して本体11の各側面11b,11c,11dにヒータ部21を面で押し付けることができる。さらに、巻部41,45は、ヒータ部21の幅方向において断熱部材31b,31c,31dの両端部を締め付けるため、本体11の各側面11b,11c,11dにヒータ部21を押し付ける力が偏ることを抑制することができる。
【0056】
・それぞれの巻部41,45には、断熱部材31b,31c,31dの外側から本体11の側面の周りに1周以上巻かれた巻部41,45を留めるように係合する面ファスナ51,55が取り付けられている。このため、面ファスナ51,55を係合させることにより、各断熱部材31b,31c,31dを外側から締め付けている巻部41,45を留めることができる。その結果、四角柱形弁10の本体11に対するヒータ部21の密着性を確保しつつ、ヒータ20の取り付けを容易に行うことができる。
【0057】
・ヒータ部21の熱が外側に伝わることを抑制する断熱部材31b,31c,31dを、四角柱形弁10における本体11の側面11b,11c,11dにヒータ部21を押し付ける板状部材として利用することができる。その結果、ヒータ20の部材数を減少させることができる。
【0058】
・絶縁部材24(ヒータ部21)において本体11の角部に対応する角位置Cには、絶縁部材24の幅方向に延びる孔Hが形成されている。このため、絶縁部材24に形成された孔Hによって本体11の角部にならうことができ、本体11の角部において側面と絶縁部材24とに隙間が生じることを抑制することができる。したがって、四角柱形弁10の本体11に対する絶縁部材24の密着性を向上させることができる。
【0059】
・電熱線22は、絶縁部材24の上記角位置Cにおいて孔Hが形成されていない部分を、ヒータ部21の長さ方向へ通っている。このため、絶縁部材24において、角位置Cに孔Hが形成されている場合であっても、本体11の各側面11b,11c,11dに対応する部分の間で、電熱線22を渡すことができる。その結果、ヒータ部21の全体に電熱線22を配置することができる。さらに、断熱部材31b,31c,31dのない部分には、幅方向の両端部を除いて電熱線22が通っていないため、断熱部材31b,31c,31dのない部分が加熱されることを抑制することができる。その結果、使用者のやけど等を抑制することができる。
【0060】
・カバー61は、互いに隣り合う断熱部材31b,31c,31dの間に対応する位置に、互いに隣り合う断熱部材31b,31c,31dの間隔gよりも長く形成されて曲げることのできる曲げ部分61aを有している。したがって、カバー61において四角柱形弁10の本体11の角部に対応する位置の長さを、曲げ部分61aにより調整することができ、カバー61の長さが足りなくなることを抑制することができる。
【0061】
・上記巻部41,45とカバー61とは一体に形成されているため、巻部41,45とカバー61とを同一の材料から同時に形成することができる。さらに、巻部41,45とカバー61とを重ね合わせて、互いに固定する必要がない。その結果、巻部41,45及びカバー61の製造を容易化することができる。
【0062】
・巻部41,45において、カバー61から延長されてカバー61の隣に位置する部分に、第1シート51a,55aがそれぞれ取り付けられている。また、巻部41,45において、断熱部材31b,31c,31dの外側から本体11の側面の周りに1周以上巻かれて第1係合部材に対応する位置に、第2シート51b,55bがそれぞれ取り付けられている。このため、第1シート51a,55aと第2シート51b,55bとをそれぞれ係合させることのできる構成において、巻部41,45の長さを最も短くすることができる。
【0063】
・面ファスナ51,55では第1シート51a,55aと第2シート51b,55bとの係合位置(係合量)を調節することができるため、巻部41,45により断熱部材31b,31c,31dを締め付ける力を調節することができる。したがって、面ファスナ51,55の第1シート51a,55aと第2シート51b,55bとの係合位置を調節することにより、ヒータ部21から四角柱形弁10の本体11に伝わる熱量を調節することができる。
【0064】
・ヒータ20は、ねじ等を使用していないため、部品の紛失を抑制することができる。
【0065】
上記実施形態を、以下のように変更して実施することもできる。なお、上記実施形態と同一の部材については、同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0066】
・絶縁部材24の角位置Cにおいて、絶縁部材24の孔Hを複数に分割して形成してもよい。また、孔Hを省略することもできる。
【0067】
・電熱線22を複数に分割して配置してもよい。また、電熱線22に代えて、半導体材料等により形成され、面発熱する電熱部材を採用することもできる。
【0068】
・面ファスナ51において、第1シート51aを複数有したり、第2シート51bを複数有したりしてもよい。こうした構成によれば、第1シート51aと第2シート51bとの係合位置を、より柔軟に調節することができる。また、その場合に、巻部41の長さをより長く設定してもよい。なお、面ファスナ55及び巻部45についても同様である。
【0069】
・上記実施形態では、巻部41,45が断熱部材31d(領域24dの対向部)の端部に取り付けられていたが、図8に示すように、巻部41,45を断熱部材31c(領域24cの対向部)に取り付けることもできる。この場合も、巻部41,45の長さは上記実施形態と同一であり、面ファスナ51,55を係合させることにより、巻部41,45によって断熱部材31b,31c,31dを締め付けることができる。なお、巻部41,45を断熱部材31b(領域24bの対向部)に取り付けることもできる。
【0070】
・上記実施形態では、巻部41,45とカバー61とを一体に形成したが、巻部41,45とカバー61とを別体に形成して、それぞれ断熱部材31b,31c,31dに取り付けることもできる。また、カバー61を省略して、巻部41,45のみを断熱部材31b〜31dに取り付けることもできる。
【0071】
・上記実施形態では、巻部41と巻部45とが別体で形成されていたが、図9に示すように、本体11の第1流路13に対応する部分に孔142及び切り欠き143が形成され、それ以外の部分がつながった巻部141を採用することもできる。こうした構成によれば、巻部141により断熱部材31b〜31dを締め付ける面積が拡大するため、本体11にヒータ部21をより均等に押し付けることができる。
【0072】
・上記実施形態では、カバー61は、互いに隣り合う断熱部材31b,31c,31dの間に対応する位置に、それらの間隔gよりも長い曲げ部分61aを有していた。しかしながら、曲げ部分61aの長さを間隔gと等しくし、曲げ部分61aを伸縮性の材料により形成することもできる。この場合であっても、カバー61において四角柱形弁10の本体11の角部に対応する位置で曲げ部分61aを伸ばすことにより、カバー61の長さが足りなくなることを抑制することができる。
【0073】
・上記実施形態では、巻部41,45を留めるように係合する係合部として、面ファスナ51,55を採用したが、ボタンやフックを採用することもできる。
【0074】
・上記実施形態では、断熱部材31b〜31dを、ヒータ部21を押し付ける板状部材として利用したが、断熱部材と板状部材とを別部材とすることもできる。この場合には、断熱材料以外の材料、例えばステンレス鋼やアルミ等により板状部材を形成することができる。また、板状部材が耐熱性の材料により形成されている場合には、断熱部材と板状部材とでいずれを内側(ヒータ部21側)にすることもできる。
【0075】
・四角柱形弁10に限らず、その他の角柱形の弁にヒータ20を適用することもできる。その場合には、断熱部材31b〜31c(板状部材)の数や、巻部41,45,141の長さを調節すればよい。
【符号の説明】
【0076】
10…四角柱形弁(弁)、11…本体、11a…側面(所定の1面)、11b…側面、11c…側面、11d…側面、13…第1流路(流路)、17…弁機構、19…アクチュエータ、20…ヒータ、21…ヒータ部、22…電熱線、24…絶縁部材、31b…断熱部材(板状部材)、31c…断熱部材(板状部材)、31d…断熱部材(板状部材)、41…巻部、45…巻部、51…面ファスナ(係合部材)、51a…第1シート(第1係合部材)、51b…第2シート(第2係合部材)、55…面ファスナ(係合部材)、55a…第1シート(第1係合部材)、55b…第2シート(第2係合部材)、61…カバー、61a…曲げ部分、141…巻部、C…角位置、H…孔。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9