(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項8において、前記エンジンの排気管に過給器を備え、前記過給器は前記改質器と前記第一の熱交換器との設けられていることを特徴とするエンジンコンバインドシステム。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1に本発明のエンジンコンバインドシステムの概略図を示す。エンジンの排気管に改質器を搭載し、改質器に燃料と水蒸気を供給する。本システムでは燃料として天然ガスを例として説明する。天然ガスは多成分であるが、以下主成分であるメタン(CH
4)を例に説明する。メタンの水蒸気改質反応は式(1)となる。
CH
4+H
2O ⇒ CO+3H
2−205.7kJ ・・・(1)
【0012】
式(1)は吸熱反応であることから、メタン1molを反応させることで、205.7kJの熱が吸収される。つまり、メタン1molの低位発熱量(802.7kJ)が、水蒸気改質により、205.7kJ高くなる。つまり改質後燃料である一酸化炭素と水素の合計発熱量はメタンよりも1.25倍高くなる。この吸熱量を排気熱でまかなうことで、排熱が燃料の発熱量として回収され、有効利用される。
【0013】
図2は、式(1)に示したメタンの水蒸気改質反応における平衡状態での改質温度と転化率の関係である。
図2ではS/C=1,2の条件をそれぞれ示した。S/Cとは改質前の成分である水蒸気(S)とメタン(C)のモル比のことを示す。メタンの水蒸気改質反応において転化率50%を確保するには615℃(S/C=1)、550℃(S/C=2)の改質温度が必要となることが分かる。つまり、改質器を通過した排ガスは高温状態であり、さらに動力もしくは冷熱を作ることができる温度域であることが分かる。
【0014】
たとえば、排熱から電気あるいは動力に変換したい場合はランキンサイクルを使用し、排熱から冷熱を作りたいときは吸収式冷凍機を使用する。ランキンサイクルあるいは吸収式冷凍機のどちらにおいても、冷媒を使用し、循環サイクルにおいて冷媒を冷却する行程(凝縮行程)が存在する。凝縮行程においては排熱が出てくるため、その熱を改質器に使用する水の加熱に使用する。そうすることで、熱利用システムの冷媒冷却と改質器で供給する水の蒸気化の両面で効果が得られる。
【0015】
燃料として天然ガスを例として説明したが、灯油、軽油、重油、ガソリンなどの炭化水素燃料、メタノール、エタノールなどのアルコール系燃料とその含水燃料、その他、アンモニアなど、水蒸気改質により水素を生成可能な水素化合物を用いることができる。
[第1実施形態]
図3に第1実施形態に係る改質器とランキンサイクルを組み合わせたエンジンコンバインドシステムの構成図を示す。
【0016】
エンジン102の排気管に改質器103が接続され、改質器103の排ガス下流側にランキンサイクルに用いられる熱交換器105が設けられる。この熱交換器105はランキンサイクルの加熱行程を実施するものである。ランキンサイクルの循環経路の熱媒体がポンプP1を介して熱交換器105に供給される。熱交換器105では、改質器103で利用されなかったエンジン102の排熱によって熱媒体が加熱され、高温、高圧の熱媒体となる。この高温、高圧の熱媒体が膨張機106へ送られ、膨張機106でエンタルピー差が生まれることで、発電機107により発電が行われる。膨張機106から排出された熱媒体は凝縮器108により凝縮され、再度ポンプP1によって熱交換器105に送られる。凝縮器108には水タンク109からポンプP2を介して水が供給され、熱媒体を冷却して凝縮させる。一方、水タンク109から凝縮器108に供給された水は、ランキンサイクルの凝縮行程の凝縮熱によって加熱される。凝縮器108から出た高温の水または水蒸気は、熱交換器110に供給され、改質器103から排出される高温の改質後燃料と熱交換され、さらに加熱され、その後、流量調整バルブV4により流量を調整して、改質器103に送られる。また、改質器103には燃料タンク104から流量調整バルブV1を介して、流量が調整された天然ガスが改質器103へ供給される。これにより改質器103では、式(1)に示す水蒸気改質反応が行われ、水素(H
2)と一酸化炭素(CO)が生成される。
【0017】
図4に改質温度と改質器に供給する水の加熱量(必要潜熱、顕熱の合計)の関係を示す。式(1)の改質反応でメタン1molを水蒸気改質するために必要な水の潜熱、顕熱の合計値で示す。改質温度が大きいほど、また、S/Cが大きいほど必要な水の潜熱、顕熱は大きくなる。S/C=3の条件においては改質反応熱205kJを超える熱量が必要になることがある。
図3の構成にすると、熱交換器108におけるランキンサイクルでの凝縮熱を改質器103に供給する水の顕熱、潜熱に利用でき、それにより改質器103において改質反応に利用できる排熱割合が増加する。従って、改質反応の転化率が向上する。ランキンサイクルから見た場合においても、凝縮器108の熱媒体の冷却に水を使えることから、凝縮器108の高効率化、小型化が可能となる。つまり、改質システム、ランキンサイクルシステムの両面から見て、相乗的な効果がある。熱交換器110も同様に水の潜熱、顕熱に利用でき、それにより改質器103において改質反応に利用できる排熱割合が増加する。従って、改質反応の転化率が向上する。
【0018】
本構成において、天然ガスと水蒸気の供給量の割合はS/Cが1よりも大きい値で制御することが望ましい。これは改質器103内での天然ガスの炭化を防ぐと同時に、所定温度での転化率を高めるためである。このように改質器103に過剰の水蒸気を供給すると、改質後燃料中に水蒸気が混ざる。これに対して、
図3に示したように改質器103からエンジン102への改質後燃料の供給経路の途中に熱交換器110を設け、熱交換器110で改質後燃料に含まれる水蒸気を凝縮させ、凝縮した水を水タンク109に戻す構成とすることが好ましい。これにより改質器103へ送られた余剰の水を水タンクに回収して、再度改質器103に送ることができる。また、配管内での水凝縮や、過剰な水蒸気のエンジン102への混入を防ぐことができる。配管内で水が凝縮すると、改質器103の圧力変動が大きくなることや、エンジン102へ凝縮された水が供給される可能性がある。つまり熱交換器110を設けることで、水の再利用のほか、エンジン102の燃焼および改質器103の改質反応の安定性が向上する効果が得られる。熱交換器110を通過した改質後燃料は燃料調整バルブV2により、流量が調整された後にエンジン102に供給され、エンジンが駆動される。エンジン102は発電機101と機械的に接続されており、エンジン102の動力を用いて発電機101で発電が行われる。
【0019】
また、
図3のシステムでは燃料をエンジン102に直接供給する燃料供給手段を備えている。具体的には、燃料タンク104はエンジン102と流量調整バルブV5を介して配管で接続されており、流量調整バルブV5により燃料タンク104の燃料をエンジン102に直接供給できる構成となっている。この燃料供給手段を設けることで改質器103が利用できないとき、あるいはエンジンの要求する燃料量を改質後燃料でまかなうことができないときに流量調整バルブV5により天然ガスがエンジン102に直接供給される。ここで、改質器103が利用できない場合としては、始動時などの改質器が低温状態、あるいは改質器の性能が低下したときなどである。
【0020】
またエンジンの吸気管にはエンジン102に供給する空気量を調整するために空気流量調整バルブV3(通常はスロットル)が設置されている。エンジン102に供給する燃料性状は上述のように変動することから、それに応じて空気量を調整する必要がある。天然ガスの主成分であるメタンを例に量論燃焼時の反応を式(2)に示す。
CH
4+2O
2+7.5N
2 ⇒ CO
2+2H
2O+7.5N
2 ・・・式(2)
【0021】
式(2)によると空気と燃料の体積比(空気体積/燃料体積)=9.5となる。一方メタン1molの水蒸気改質後の成分を量論燃焼した時の反応は式(3)となる。
CO+3H
2+2O
2+7.5N
2 ⇒ CO
2+3H
2O+7.5N
2 ・・・式(3)
【0022】
式(3)によると空気と燃料の体積比(空気体積/燃料体積)=2.4となる。量論燃焼において、改質前後で燃料と空気の体積割合が異なる。
図5にメタンと改質後燃料の燃焼熱を同じにした場合(802.7kJ)の量論燃焼時における燃焼室内の空気と燃料のモル数を示す。メタンと改質後燃料でトータルのガス量はほぼ変わらないが、その割合が大きく異なることが分かる。エンジンに供給する空気と燃料の割合は通常空気過剰率で示されるが、エンジンの熱効率、排気性能の観点で、空気過剰率は所定の値に制御される必要がある。このことから同エンジン発電出力において、所定の空気過剰率でエンジン運転を行うには、エンジンに供給する改質後燃料と改質前燃料の割合に応じて、空気流量調整バルブV3によって供給する空気量を制御することが有効となる。
【0023】
図3に示すシステムにおいて、改質器103、熱交換器105、110、凝縮器108の前後には温度計と圧力計が設置され(図示は省略)、制御装置111によりそれぞれの値を見ながらユーザの要求する発電量にあわせて、各流量調整装置(V1〜V5)およびポンプ(P1,P2)が制御される。
【0024】
本実施形態のエンジンコンバインドシステムの制御フローの一例を
図6〜8の制御フロー図を用いて説明する。
【0025】
まず、
図6を用いて始動時の制御フローの例を説明する。S1001で要求発電電力を確認する。要求発電電力が所定以上のとき、S1002でエンジン102を始動するプログラムがスタートする。S1003にてV5が制御され、エンジン102に燃料タンク104から燃料が供給される。エンジン102が始動することで改質器103が温められ、温度が上昇する。S1004で改質器103の温度が所定温度以上と判断されると、S1005でP2の電源が入り、V4が制御されることで、改質器103に水が供給される。またV1が制御されることで、燃料タンク104より改質器103に燃料が直接供給される。改質後燃料はV2が制御されることで、エンジン102に供給される。このときエンジン102の発電電力を一定に保つため、燃料タンク104からエンジン102に供給する燃料量を減らすよう、V5を制御する。次にS1006で熱交換器105の温度が監視され、所定温度以上になると、S1007でP1の電源が入り、ランキンサイクルの冷媒が循環され、暖気終了となる。このように改質器103、熱交換器105の温度を見ながら、順次各バルブ、ポンプの電源が入り、改質器、熱利用システムの運転を効率よく、開始することができる。
【0026】
次に、
図7を用いて定格運転時の改質器の温度制御フローについて説明する。S2001にて定格運転と判定されると、定格運転時の改質器の温度制御が開始される。まず、S2002で改質器の温度情報に基づいて改質器103の温度が所定温度範囲内か否か判断され、改質器103の温度が所定温度範囲を外れている場合にはS2003で所定温度範囲よりも高いか低いかを判断する。S2003において、改質器103の温度が所定温度範囲よりも高いと判断された場合には、2004にて改質器の温度を下げるために、V1,V4を制御することで、改質器へ供給する燃料量と水の量を増加させる。これにより吸熱反応量が増加し、改質器103の温度を下げることができる。またこの際、エンジンを同出力に保つために、V2を制御し、改質後燃料のエンジンへの供給量を増加させるとともに、V5を制御することで、燃料タンクから燃料のエンジン102への供給量を減少させる。以上の制御を行いS2006に移行し、S2001〜S2006を繰り返し実行する。また、S2003で改質器103の温度が所定温度範囲よりも低いと判断された場合には、改質器103の温度を増加させるため、2005にてV1,V4を制御し、改質器へ供給する燃料量と水の量を減少させる。これにより、吸熱反応量を低下させて改質器103の温度を上げることができる。また、エンジンを同出力に保つために、V2を制御し、改質後燃料のエンジンへの供給量を減少させるとともに、V5を制御することで、燃料タンクから燃料のエンジン102への供給量を増加させる。以上の制御を行いS2006に移行し、S2001〜S2006を繰り返し実行する。また、S2002で改質器の温度が所定範囲内であると判断された場合には、そのままS2006に移行し、S2001〜S2006を繰り返し実行する。
【0027】
次に、
図8を用いて定格運転時のランキンサイクルの制御フローについて説明する。S3001にて定格運転と判定されると、定格運転字のランキンサイクルの制御が開始される。まず、S3002にて熱交換器105の温度が所定範囲内か否か判断され、熱交換器105の温度が所定範囲を外れている場合にはS3003で所定温度範囲よりも高いか低いかを判断する。S3003において、熱交換器105の温度が所定範囲よりも高いと判断された場合には、S3004でP1の動力が制御され、熱媒体の循環量を増加させる。これにより熱交換器105の温度が低下し、膨張機106の出力が増加し、発電機107の発電量が増加する。なお、P1の動力制御はインバータなどを用いて行う。以上の制御を行いS3006に移行し、S3001〜S3006を繰り返し実行する。また、S3003において、熱交換器105の温度が所定温度範囲よりも低いと判断された場合にはS3005でP1の動力が制御され、熱媒体の循環量を減少させる。これにより熱交換器105の温度を上昇させる。以上の制御を行いS3006に移行し、S3001〜S3006を繰り返し実行する。また、S3002で熱交換器105の温度が所定範囲内であると判断された場合には、そのままS3006に移行し、S3001〜S3006を繰り返し実行する。以上の制御を行うことによって、熱交換器105の温度を所定温度範囲内にすることでランキンサイクルの発電効率(膨張機106の断熱効率、発電機107の発電効率)が正常に保たれる。ランキンサイクルは所定温度以下で運転すると、熱効率が低下することや、膨張機106の故障にもつながるため、上記のような制御が行われる。このような制御を行うことで、熱交換器105へ供給される排ガス熱量の変動に応じて、ランキンサイクルシステムを制御でき、システム効率向上と、システム故障を防止できる。
[第2実施形態]
図9に第2実施形態に係る改質器と吸収式冷凍機を組み合わせたエンジンコンバインドシステムの構成図を示す。
図9において、吸収式冷凍機以外の構成は
図3と同様であり、同じ構成については説明を省く。本実施形態では、冷媒として水、吸収材として臭化リチウムを用いた吸収式冷凍機を例として説明する。
図3と同様に本実施形態のエンジンコンバインドシステムもエンジン102の排気管に改質器103が接続され、改質器103の排ガス下流側に熱交換器105が設けられている。この熱交換器105と分離器202で吸収式冷凍機の再生器205として機能する。
【0028】
まず、吸収式冷凍機の構成を説明する。吸収器201に貯留されている水蒸気を吸収した臭化リチウム水溶液がポンプP1によって熱交換器105に供給され、エンジンの排ガスと熱交換される。エンジンの排熱によって加熱されることで、臭化リチウム水溶液は分離器202で水蒸気と臭化リチウムの濃溶液に分離され、温度、圧力の高い水蒸気は凝縮器203に送られ、臭化リチウムの濃溶液は吸収器201に送られる。凝縮器203に送られた水蒸気は、水タンク109からポンプP2を介して送られた水との熱交換により凝縮する。凝縮器203で凝縮した水は膨張弁V6で断熱膨張されて、温度、圧力が下がった状態で蒸発器204へ送られ、蒸発器204で熱交換されて水蒸気となり、吸収器201に送られて臭化リチウムに吸収される。蒸発器204では、冷媒と熱交換される媒体が潜熱冷却され、冷熱として外部に供給される。
【0029】
本実施形態のシステムでは、改質器103に供給する水蒸気として、吸収式冷凍機の凝縮器203に冷却水として水タンクから供給される水を利用することを特徴とする。これにより、改質器103に送られる水は凝縮器203の放熱により加熱されることで、改質器103にエンタルピーの高い水蒸気を送ることができ、それにより改質器103は転化率が向上する効果が得られる。また凝縮器203の冷却に改質用の水を利用するため、クーリングタワーのような冷却用の循環装置を必要としない点において、装置構成を簡素化できる。
【0030】
また、吸収式冷凍機では再生器205で臭化リチウムが析出しないように臭化リチウムの水溶液濃度は所定濃度である必要がある。そのために熱交換器105で熱交換された後の臭化リチウムの温度は所定以下にする必要がある。一方で再生器205は限られた温度範囲で駆動しながら、冷熱能力を高めるためにはより冷媒の流量を高める必要がある。つまり、熱交換器105で臭化リチウム水溶液と熱交換する排ガスは所定温度以下であり、かつ熱量(排ガス流量、比熱)を高くすることが求められる。所定温度以下で、エンジン排ガスの熱量を増加させる方法として、エンジンで希薄燃焼させることが挙げられる。希薄燃焼することで、排ガス流量と比熱を共に高めることができる。エンジンの廃熱は排ガス熱とエンジン冷却水への廃熱の2種類あるが、エンジンを希薄燃焼させることで、燃焼温度が低くなることから、エンジン冷却水との温度差が小さくなることから、エンジン冷却水への廃熱割合が小さくなり、逆にエンジン排ガス熱の割合が増加する。これらの理由で、エンジンで希薄燃焼させることで、所定温度以下に保ちながら、熱交換器105へ供給可能な排ガス熱量が増加する。しかしながら、天然ガスは可燃範囲が狭く、希薄燃焼させるためには、点火エネルギーを高める、エンジン内の空気流動を強くするなど、新たなエネルギーが必要となり、エネルギー損失を増加させてしまう。一方、本システムでは水素を含む改質後燃料をエンジンに供給するため、可燃範囲が大幅に広がり、上述の新たなエネルギーを加えることなく、希薄燃焼が可能となる。これにより熱交換器105で吸収式冷凍機の冷媒と熱交換することで限られた温度範囲で駆動する吸収式冷凍器の冷熱能力を高めることができる。
【0031】
本実施形態のシステム構成により、改質器の改質効率を高めると同時に吸収式冷凍機の冷熱能力を高めることができ、改質システム、吸収式冷凍機の双方の高効率化を図ることができる。
【0032】
図9に示すシステムにおいて、改質器103、熱交換器105、110、凝縮器203、蒸発器204の前後には温度計と圧力計が設置され(図の記載は省略)、制御装置111によりそれぞれの値を見ながらユーザの要求する発電量、冷熱量にあわせて、各流量調整装置(V1〜V5)およびポンプ(P1,P2)が制御される。流量調整装置V3に関しては、エンジンで希薄燃焼させるための空気量を調整するために制御される。本実施形態の吸収式冷凍機を用いたシステムにおいても、第1実施形態で説明した
図6〜8と同様の制御を行うことで、冷媒の温度を所定範囲に保つことができ、システム効率向上と、システム故障を防止できる。
【0033】
なお、
図9に示すシステムにおいて、吸収式冷凍機の加熱には排ガス熱のみを供給しているが、エンジンの冷却水熱を供給する、あるいは燃料を直接吸収式冷凍機に供給するといった方法で加熱する構成としてもよい。
[第3実施形態]
図10に第3実施形態に係るエンジンコンバインドシステムの構成図を示す。本実施形態のシステムは、エンジン102の排気管に改質器103を搭載し、改質器103の排ガス下流側の熱を使い、ランキンサイクルを組み動力を生み出す構成である。
図3との違いはランキンサイクルに使用する熱媒体が水であり、この水を改質器103の改質反応用の水蒸気として利用する構成とした点である。ランキンサイクルで利用できるエンジン排熱の温度が所定温度より高い場合、ランキンサイクルの冷媒に水を使用することができる。この場合、膨張機後の蒸気をそのまま改質器103に供給することができる。つまり、本システムに供給する水は排熱を使って改質器103で燃料(水蒸気)となるほかに、ランキンサイクルの熱媒体としても作用することになる。
【0034】
本システムのランキンサイクルについて説明する。水タンク109に貯蔵された熱媒体である水がポンプP1により熱交換器105に送られる。熱交換器105では、改質器103で利用されなかったエンジン102の排熱によって水が加熱され、高温、高圧の水蒸気となる。この高温、高圧の水蒸気が膨張機106へ送られ、膨張機106でエンタルピー差が生まれることで、発電機107により発電が行われる。膨張機107から排出された水蒸気は供給量調整装置V8を介して改質器103に供給され、燃料タンクから供給される燃料とともに改質器103で水蒸気改質される。その後、改質器103から排出される改質後燃料に含まれる水蒸気は熱交換器110によって凝縮され、改質後燃料と水に分離され、水が水タンク109に回収される。よって、熱交換器110がランキンサイクルの凝縮器となる。
【0035】
一方、熱交換器110で分離された改質後燃料は燃料調整バルブV2を介してエンジン102に供給し、エンジン102を駆動させ、発電機101により発電を行う。
【0036】
このように本システムでは、ランキンサイクルに使用する熱媒体を改質器103の燃料(水蒸気)としても使用することよって、部品点数削減とシステムの高効率化を同時に実現することができる。
【0037】
また、
図7のシステムでは、膨張器を介さずに熱交換器105から排出された水蒸気を改質器103に供給するための供給量調整装置V7を備えた配管を設けている。これにより、例えば、エンジン102の出力が小さく、ランキンサイクルで十分な動力を生み出すことができない運転条件の場合に、供給量調整装置V7により熱交換器105で加熱された水蒸気を直接改質器103に供給し、供給量調整装置V8によって膨張器106から水蒸気を改質器103に供給しないように制御することができる。このような制御を行うことにより、エンジン102の出力が小さく、ランキンサイクルで十分な動力を生み出すことができない運転条件の場合にも、エネルギー損失を抑制してシステムを稼動することができる。
【0038】
図10に示すシステムにおいて、改質器103、熱交換器105、110の前後には温度計と圧力計が設置され(図の記載は省略)、制御装置111によりそれぞれの値を見ながらユーザの要求する発電量にあわせて、各流量調整装置(V1〜V5、V7,V8)およびポンプ(P1)は制御される。
【0039】
本実施形態のエンジンコンバインドシステムの制御フローの一例を
図11〜13の制御フロー図を用いて説明する。
【0040】
まず、
図11を用いて始動時の制御フローの例を説明する。S4001〜S4004についてはS1001〜S1004と同様の制御を行うことから説明は割愛する。S4004にて改質器103の温度が所定温度以上になると、S4005にてP1の電源が入り、V7が制御されることで、改質器に水が供給される。この際、V8は閉じられており、ランキンサイクルへは水を供給しない。またV1が制御されることで燃料タンク104から燃料が改質器103に供給され、改質後燃料がV2を制御することでエンジン102へ供給される。このときエンジンの発電電力を一定に保つため、燃料タンク104からエンジンに供給する燃料量を減らすよう、V5を制御する。S4006にて熱交換器105の温度が所定温度以上のとき、S4007でV8が制御されることでランキンサイクルへ水が供給される。また同時にV7は水の供給量を減少するように制御される。このようにすることで、改質器へ供給される水の量は一定に保たれる。
【0041】
次に、
図12を用いて定格運転時の改質器の温度制御フローについて説明する。S5001にて定格運転と判定されると、定格運転時の改質器の温度制御が開始される。まず、S5002で改質器103の温度を監視し、改質器103の温度が所定温度範囲内か否か判断され、改質器103の温度が所定温度範囲を外れている場合にはS5003で所定温度範囲よりも高いか低いかを判断する。S5003において、改質器103の温度が所定温度範囲よりも高いと判断された場合には、S5004でV7が制御され、改質器103への水供給量を増加する。またV1を制御することで、改質器103への燃料供給量を増加させる。これにより、改質による吸熱量が増加するため、改質器103の温度を下げることができる。また改質後燃料が増加することから、V2が制御され、エンジンへの改質後燃料の供給量が増加される。エンジンの発電量を一定に保つために、V5を制御することで、エンジンに直接供給する燃料量を減少させる。以上の制御を行いS5006に移行し、S5001〜S5006を繰り返し実行する。また、S5003において、改質器103の温度が所定温度範囲よりも低いと判断された場合には、S5005でV7が制御され、改質器103への水供給量を減少する。またV1を制御することで、改質器103への燃料供給量を減少させる。これにより、改質による吸熱量が減少するため、改質器103の温度が増加する。また改質後燃料が減少することから、V2が制御され、エンジンへの改質後燃料の供給量が減少される。エンジンの発電量を一定に保つために、V5を制御することで、エンジンに直接供給する燃料量を増加させる。以上の制御を行いS5006に移行し、S5001〜S5006を繰り返し実行する。また、S5002で改質器の温度が所定範囲内であると判断された場合には、そのままS5006に移行し、S5001〜S5006を繰り返し実行する。このように制御することで、改質器103の温度範囲を一定に保つことができ、改質器103は高い転化率で運転でき、また劣化を抑制できることから高い転化率を維持することができる。結果的にシステム効率を高めることができる。
【0042】
次に、
図13を用いて熱交換器105の温度変化に対応した制御フローを説明する。S6001にて定格運転と判定されると、定格運転字の熱交換器1の温度制御が開始される。まず、S6002にて熱交換器105の温度が所定範囲内か否か判断され、熱交換器105の温度が所定範囲を外れている場合にはS6003で所定温度範囲よりも高いか低いかを判断する。S6003において、熱交換器105の温度が所定範囲よりも高いと判断された場合には、S6004でV8が制御されランキンサイクルへの水供給量を増加する。またV7を制御することで、改質器103への水供給量が一定に保たれる。これにより熱交換器105の温度を低下させる。以上の制御を行いS6006に移行し、S6001〜S6006を繰り返し実行する。また、S6003において、熱交換器105の温度が所定温度範囲よりも低いと判断された場合にはS6005でV8が制御されランキンサイクルへの水供給量を減少する。またV7を制御することで、改質器103への水供給量が一定に保たれる。これにより、熱交換器105の温度を上昇させる。以上の制御を行いS6006に移行し、S6001〜S6006を繰り返し実行する。また、S6002で熱交換器105の温度が所定範囲内であると判断された場合には、そのままS6006に移行し、S6001〜S6006を繰り返し実行する。以上の制御を行うことによって、熱交換器105へ供給される排ガス熱量の変動に応じて、ランキンサイクルシステムを制御でき、システム効率向上と、システム故障を防止できる。
[第4実施形態]
図14に第4実施形態に係るエンジンコンバインドシステムの構成図を示す。
図10との違いは改質器103と熱交換器105の間に過給器(ターボ)301が搭載され、エンジン102へ供給する空気を過給する点である。天然ガスなどのガス燃料は液体燃料に比べ、エンジン102への供給ガス中の燃料の割合が大きいため、最大トルクが小さくなる。なかでも
図5に示すように改質後燃料は一部が水素でありエネルギー密度が低いため、供給できる空気量が小さくなる。よって、
図8に示すように過給器301を設置し、吸入空気を過給することで、トルクを高めることができ、エンジン102の高効率化が可能となる。エンジン排ガスは過給器301を通過することで温度が下がることから、改質器103の後流に位置する。ランキンサイクルは比較的低温域まで熱回収できることから、過給器301の後流側に位置し、これにより排熱をカスケード的に利用することができる。また過給機301で加圧された空気は熱交換器302を通過することで、冷却することができ、より高密度に空気をエンジン内へ供給することができ、最大トルクを高めることができる。また熱交換器302の空気と熱交換するために、水タンク109より水を供給する。これにより、過給機301で加熱された空気の熱をランキンサイクルおよび改質器に供給する水の加熱に利用でき、ランキンサイクルで出力される動力(発電量)および改質器の改質割合が高くでき、システム効率を高めることができる。
【0043】
図14に示すシステムにおいて、改質器103、熱交換器105、110、302の前後には温度計と圧力計が設置され(図の記載は省略)、制御装置111によりそれぞれの値を見ながらユーザの要求する発電量にあわせて、各流量調整装置(V1〜V5、V7,V8)およびポンプ(P1)は制御される。本実施形態のシステムにおいても、第3実施形態で説明した
図11〜13と同様の制御を行うことで、システム効率向上とシステム故障を防止できる。
【0044】
次に、第1実施形態〜第4実施形態で適用される改質器の構造の一例を説明する。改質器は、
図15(a)に示すように、外形が円柱状を呈する複数本の反応セル31と、複数の反応セル31を収容した円筒状の第1ケーシング32と、を備えている。そして、天然ガスと水蒸気が各反応セル31内を通流し、高温の排気ガスが反応セル31の外であって第1ケーシング32内を通流するようになっている。
【0045】
第1ケーシング32及び後記する第2ケーシング34は、熱伝導率が高くなるように金属製(例えば、SUS)で形成されている。なお、第1ケーシング32、第2ケーシング34の形状は、円筒状に限定されず、その他に例えば、四角形筒状、多角形筒状でもよい。
【0046】
反応セル31は、
図15(b)に示すように、積層された複数枚の反応シート33と、複数枚の反応シート33を収容した第2ケーシング34と、を備えている。
【0047】
各反応シート33は、
図15(c)に示すように、ベースとなる金属箔35と、金属箔35の両面にそれぞれ形成された多孔質層36と、多孔質層36に担持された触媒37と、を備えている。つまり、各反応シート33は、触媒37が担持した多孔質層36、金属箔35、触媒37が担持した多孔質層36の順で積層した三層構造である。
【0048】
なお、厚さ方向において隣り合う反応シート33、33間には、天然ガス、水蒸気、生成した水素及び一酸化炭素が通流可能な隙間が形成されている。
【0049】
また、反応シート33はシート状であるから、その熱容量が小さく、熱が反応シート33を速やかに伝導し、触媒37がその触媒機能を良好に発揮する温度に速やかに昇温する。これにより、天然ガスと水蒸気を水素と一酸化炭素とに分解する分解反応の効率は、高くなっている。
【0050】
さらに、各反応シート33には、複数の貫通孔33aが形成されている。これにより、排気ガスの熱が厚さ方向に良好に伝導し、また、天然ガス、水蒸気、生成した水素及び一酸化炭素が、厚さ方向にも良好に通流するようになっている。
【0051】
金属箔35は、例えばアルミニウム箔で構成され、その厚さは50〜200μm程度とされる。
【0052】
ただし、金属箔35を備えず、又は、金属箔35に代えて、ベースとなる多孔質層を備え、反応シート33全体を多孔質構造としてもよい。
【0053】
多孔質層36は、触媒37を担持するための層であって、天然ガス、水蒸気、生成した水素及び一酸化炭素が通流可能な複数の細孔を有している。このような多孔質層36は、例えば、アルミナを主体とする酸化物で構成される。
【0054】
触媒37は、天然ガス、水蒸気を分解し、水素及び一酸化炭素を生成させるための触媒である(式(1)参照)。このような触媒37は、例えば、白金、ニッケル、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、モリブデン、レニウム、タングステン、バナジウム、オスミウム、クロム、コバルト、鉄等から選択された少なくとも1種で構成される。
【0055】
次に、
図16を用いて、第1実施形態〜第4実施形態で適用するエンジンの種類とシステム効率について説明する。本システムは、エンジン排ガスからの熱を回収し、システム効率を高めるものである。エンジンは一般的に排ガス熱と冷却水熱の2種類の廃熱がある。冷却水熱は一般的に80度程度の低い温度のため、その熱から動力あるいは冷熱に変換するには効率が低くなる。一方、排ガス熱は温度が高く、火花点火エンジンの場合、700〜1000℃と高い排ガス熱が排出される。そのため、冷却水熱への廃熱を削減し、エンジン廃熱を排ガス熱へ集中させることで、廃熱を利用し動力あるいは冷熱に変換する効率を高めることができる。
図16(a)は一般的なエンジンに改質器、熱利用機器(例えば電力に変換できる機器)を搭載した際のエネルギー収支を示す。この場合、燃料のエネルギーを1とした場合、エンジンの冷却水へ排出される量は0.25となり、電力に変換できる量は0.525となる。一方、
図16(b)はエンジンの冷却水を不要にした断熱エンジンに改質器、熱利用機器を搭載した際のエネルギー収支を示す。この場合、エンジンの冷却水は排出されず、その代わり、排ガス熱が増加し、結果的に電力に変換できる量は0.575となる。以上のことから断熱エンジンに本システムを適用することで、システム効率向上がより効果的になることがわかる。断熱エンジンを実現するには、耐熱性の高い材料をエンジンの燃焼室内の表面に適用することが求められる。また燃焼温度を低くするために不活性ガスを活用した希薄燃焼をすることも重要である。
【0056】
以上で説明した本発明の実施形態に係るエンジンコンバインドシステムによれば、改質器において化学的な排熱回収が可能となり、エンジンの熱効率が向上し、改質器後流の熱利用システムで排熱を使って動力もしくは冷熱を生成することができる。さらに改質器を通過したエンジン排熱を使って水蒸気改質の水を加熱できるため、エンジンの排熱をカスケード的に利用することができ、システム全体の効率が高くなる。さらに、改質器の後流のランキンサイクルなどの熱利用システムを使用する際に、その熱媒体に水を使用することができ、蒸気タービン等の膨張器から排出される水蒸気を凝縮器で凝縮せずにそのまま改質器に供給することが可能となる。つまり、改質器に供給する水は、ランキンサイクルの熱媒体としても利用することが可能となり、排熱利用の観点と部品点数削減という点で、改質器とランキンサイクルを組み合わせて相乗的な効果を生み出すことができる。