特許第5998084号(P5998084)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5998084
(24)【登録日】2016年9月2日
(45)【発行日】2016年9月28日
(54)【発明の名称】蓄電モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/10 20060101AFI20160915BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20160915BHJP
   H01M 2/20 20060101ALI20160915BHJP
   H01G 9/26 20060101ALI20160915BHJP
   H01G 2/04 20060101ALI20160915BHJP
【FI】
   H01M2/10 M
   H01M2/10 S
   H01M10/48 P
   H01M2/20 Z
   H01G9/00 521
   H01G1/03 Z
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-53737(P2013-53737)
(22)【出願日】2013年3月15日
(65)【公開番号】特開2014-179289(P2014-179289A)
(43)【公開日】2014年9月25日
【審査請求日】2015年7月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立オートモティブシステムズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084412
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 冬紀
(72)【発明者】
【氏名】仙石 英資
(72)【発明者】
【氏名】前島 敏和
(72)【発明者】
【氏名】星 浩
(72)【発明者】
【氏名】小滝 彰
(72)【発明者】
【氏名】清田 茂之
(72)【発明者】
【氏名】田中 良幸
(72)【発明者】
【氏名】井口 豊樹
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 弘明
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 正義
【審査官】 田中 永一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−074338(JP,A)
【文献】 特開2010−080135(JP,A)
【文献】 特開2006−324060(JP,A)
【文献】 特開2012−217276(JP,A)
【文献】 特開2012−009389(JP,A)
【文献】 特開2001−345082(JP,A)
【文献】 特開2013−235734(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/10
H01M 2/10
H01M 2/20
H01M 10/48
H01G 2/04
H01G 9/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の蓄電素子が導電部材によって電気的に接続された蓄電モジュールであって、
前記蓄電素子の端子電圧を検出する電圧検出導体を有する電圧検出基板と、
前記電圧検出基板の前記電圧検出導体を前記導電部材に接続する第1おねじ部品と、
前記電圧検出基板および前記第1おねじ部品の頭部の頂面を覆う覆い部を有するカバーとを備え、
前記電圧検出基板は、前記導電部材が接続される前記蓄電素子の端子面と、前記覆い部との間に配置され、前記第1おねじ部品が接続される前記導電部材の接続端子に対向する部位に開口部が形成され、
前記カバーは、絶縁性を有する材料からなり、
前記導電部材は、前記第1おねじ部品が螺合される第1めねじ部を有し、
前記第1おねじ部品の頭部の頂面に対向する前記覆い部の内側面と前記第1おねじ部品の頭部の頂面との距離が、前記第1めねじ部における前記カバー側の端部と前記第1おねじ部品の軸部の先端との距離よりも短いことを特徴とする蓄電モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載の蓄電モジュールにおいて、
前記カバーの覆い部における前記第1おねじ部品の頭部の対向位置に、前記第1おねじ部品側に突出する凸部が設けられていることを特徴とする蓄電モジュール。
【請求項3】
請求項1または2に記載の蓄電モジュールにおいて、
前記複数の蓄電素子を保持する保持部材と、
前記電圧検出基板を前記保持部材に固定する第2おねじ部品とを備え、
前記保持部材は、絶縁性を有する材料からなり、前記第2おねじ部品が螺合される第2めねじ部を有し、
前記第2おねじ部品の頭部の頂面に対向する前記覆い部の内側面と前記第2おねじ部品の頭部の頂面との距離が、前記第2めねじ部における前記カバー側の端部と前記第2おねじ部品の軸部の先端との距離よりも短いことを特徴とする蓄電モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
電動車両などに搭載される蓄電モジュールは、複数の蓄電素子を有し、隣接する蓄電素子の一方の正極側と他方の負極側とがバスバーによって電気的に直列に接続されている。複数の蓄電素子を有する蓄電モジュールにおいて、蓄電素子の過充放電を避けるためには、各蓄電素子の状態を把握する必要がある。このため、各蓄電素子には、その端子電圧を検出するための電圧検出用導体が電気的に接続されている。
【0003】
特許文献1には、電圧検出基板の電圧検出用導体とバスバーとがねじによる締め付け固定により電気的に接続された蓄電モジュールが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−74338号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電圧検出基板の電圧検出用導体とバスバーとをねじにより接続する場合、車両の振動などを起因として、ねじが徐々に緩んで脱落し、脱落したねじによって異音が発生するおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の蓄電モジュールは、複数の蓄電素子が導電部材によって電気的に接続された蓄電モジュールであって、蓄電素子の端子電圧を検出する電圧検出導体を有する電圧検出基板と、電圧検出基板の電圧検出導体を導電部材に接続する第1おねじ部品と、電圧検出基板および第1おねじ部品の頭部の頂面を覆う覆い部を有するカバーとを備え、電圧検出基板は、導電部材が接続される蓄電素子の端子面と、覆い部との間に配置され、第1おねじ部品が接続される導電部材の接続端子に対向する部位に開口部が形成され、カバーは、絶縁性を有する材料からなり、導電部材は、第1おねじ部品が螺合される第1めねじ部を有し、第1おねじ部品の頭部の頂面に対向する覆い部の内側面と第1おねじ部品の頭部の頂面との距離が、第1めねじ部におけるカバー側の端部と第1おねじ部品の軸部の先端との距離よりも短いことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、振動に起因してねじが脱落することを防止し、脱落したねじによる異音を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施の形態に係る蓄電モジュールの外観斜視図。
図2図1の蓄電モジュールの分解斜視図。
図3】一方の側に配置される電圧検出基板、カバーおよび複数のバスバーを取り外した蓄電モジュールを示す外観斜視図。
図4】バスバーの外観斜視図。
図5図1のV−V線で切断した断面模式図。
図6図1のVI−VI線で切断した断面模式図。
図7図6の比較例を示す図であり、電圧検出端子とバスバーとの接続部分を拡大して示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明をエンジンと電動機の双方によって駆動されるハイブリッド型の電気自動車や電動機のみによって走行する純粋な電気自動車に搭載される蓄電装置に組み込まれる蓄電モジュールに適用した実施の形態について説明する。
【0010】
図1は、本発明の実施の形態に係る蓄電モジュール10の外観斜視図である。図2は蓄電モジュール10の分解斜視図である。図1に示すように、蓄電モジュール10は略直方体形状を呈しており、図2に示すように、蓄電モジュール10は複数の蓄電素子90がバスバー40によって電気的に接続されてなる。蓄電モジュール10は、複数の蓄電素子90と、複数のバスバー40と、複数の蓄電素子90を保持する保持ケース20と、電圧検出基板50と、カバー60とを含んで構成される。
【0011】
なお、以下の説明において、蓄電モジュール10の長さが最も長い方向、すなわち蓄電モジュール10の長手方向をX方向と定義する。円筒形の蓄電素子90の中心軸方向をY方向と定義する。蓄電モジュール10の長さが最も短い方向、すなわち蓄電モジュール10の短手方向をZ方向と定義する。X方向およびY方向、Z方向は、互いに直交する。
【0012】
図2では、Y方向における一方の側の電圧検出基板50、カバー60、バスバー40等の分解図を示しており、Y方向における他方の側の電圧検出基板、カバー、バスバー等の構成については結合されたままとしている。図3は、一方の側に配置される電圧検出基板50、カバー60および複数のバスバー40を取り外した蓄電モジュール10を示す外観斜視図である。図2に示す蓄電モジュール10の一方の側の電圧検出基板50、カバー60およびバスバー40等と、図示しない他方の側の電圧検出基板、カバーおよびバスバー等の構成は、ほぼ同じ構成であるため、蓄電モジュール10の一方の側の構成について説明し、他方の側の構成については説明を省略する。
【0013】
図2および図3に示すように、蓄電モジュール10に組み込まれる蓄電素子90は、円筒形のリチウムイオン二次電池であり、上層(図示上側)および下層(図示下側)のそれぞれに7つずつ、等間隔に配列されている。上層の蓄電素子90と、下層の蓄電素子90とは、X方向に半ピッチだけ変位させた状態で保持されている。上層の蓄電素子90と下層の蓄電素子90とは、各蓄電素子90の正極と負極の向きが逆向きとなるように配置されている。上層の蓄電素子90のY方向一端は負極端子を構成し、他端は正極端子を構成している。下層の蓄電素子90のY方向一端は正極端子を構成し、他端は負極端子を構成している。
【0014】
保持ケース20は、PBT(ポリブチレンテレフタレート)などの絶縁性を有する樹脂からなる下保持部材203と中保持部材202と上保持部材201の3つの部材からなり、下保持部材203と中保持部材202により下層の蓄電素子90を挟み込んで保持し、中保持部材202と上保持部材201により上層の蓄電素子90を挟み込んで保持する。
【0015】
下保持部材203、中保持部材202および上保持部材201が結合されると、保持ケース20のY方向両側の側板210のそれぞれに、蓄電素子90のY方向両側の端面をそれぞれ露出させる開口窓211が形成される(図2図3ではY方向の一方の側板210のみを図示)。
【0016】
図2に示すように、バスバー40は、上層の蓄電素子90と、隣接する下層の蓄電素子90とを電気的に接続する金属製、たとえば銅製の板状導電部材である。バスバー40は、矩形平板状の中央部456と、中央部456の両端側に位置する端部457と、中央部456から延在する接続端子410とを有している。
【0017】
図4(a)は図2のバスバー40の外観斜視図であり、図4(b)は図4(a)のバスバー40を反対側から見た外観斜視図である。図4に示すように、バスバー40の中央部456と各端部457とは、それぞれ連結部458により接続されている。連結部458は、断面がU字状を呈しており、弾性変形可能とされている。
【0018】
バスバー40の各端部457には長孔451が1つずつ形成されている。バスバー40の各端部457には蓄電素子90の端子面との接合部452が2つずつ形成されている。長孔451は、バスバー40の端部457と蓄電素子90の端子面とを溶接する際に、電流の流れを調整するために設けられている。バスバー40の中央部456には、側板210に設けられたガイドピン214a,214b(図3参照)が挿入される貫通孔455a,455bが形成されている。
【0019】
図5図1のV−V線で切断した断面模式図である。バスバー40は、中央部456の各貫通孔455a,455bが、側板210の各ガイドピン214a,214b(図3参照)に嵌合するように側板210に装着される。バスバー40が側板210に装着されると、バスバー40の両端部457(図5において一方の端部457のみを図示)は、開口窓211に入り込み、蓄電素子90の端子面(正極端子面または負極端子面)と当接する。バスバー40の端部457と蓄電素子90の端子面とは、たとえば、溶接トーチ(不図示)を接合部452に位置決めして接合部452と蓄電素子90とをアーク溶接することにより接合される。
【0020】
図4に示すように、バスバー40の中央部456には、接続端子410が設けられている。図2および図4に示すように、バスバー40は、中央部456がX−Z平面に平行に配置される。図4に示すように、接続端子410は、中央部456の一辺から+Y方向に向かって90度屈曲された連結板410aと、連結板410aの+Y方向端部から90度屈曲され、中央部456に対向するように設けられる端子板410bとを有している。
【0021】
図6は、図1のVI−VI線で切断した断面模式図である。図6に示すように、端子板410bの中央部456側の面には、裏ナット470が設けられている。端子板410bの中央には円形状の開口部が設けられており、この開口部に裏ナット470の基部471がかしめ固定されている。裏ナット470には、カバー60側の端部から蓄電素子90側に向かって貫通する貫通孔が設けられている。この貫通孔のうち、カバー60側の端部から所定長さまでが非めねじ部とされ、非めねじ部の端部から蓄電素子90側の端部までがめねじ部(有効ねじ部)417とされている。
【0022】
図2に示すように、電圧検出基板50は、ほぼ矩形状とされ、X−Z平面と平行になるように配置される。電圧検出基板50は、各蓄電素子90の端子電圧を検出する電圧検出回路(不図示)を有している。電圧検出基板50の一方の端部には、電圧検出線(不図示)を接続するためのコネクタ(不図示)等が設けられ、電圧検出基板50の電圧検出回路(不図示)が電圧検出線(不図示)によって制御装置(不図示)に接続されている。電圧検出基板50は、各バスバー40が取り付けられた後、保持ケース20の側板210に取り付けられる。
【0023】
側板210のZ方向の中央部分には、複数のボス218がX方向に並んで設けられている。図6に示すように、ボス218は、+Y方向に突設され、止めねじ80が螺合されるめねじ部218aを有している。めねじ部218a(有効ねじ部)は、ボス218の先端面から所定長さ延在し、先端面側には面取りが施されている。電圧検出基板50は、保持ケース20の側板210のボス218に設けられためねじ部218aに止めねじ80が螺合されることで、保持ケース20に固定される。
【0024】
図2図5および図6に示すように、電圧検出基板50には、側板210に取り付けられた状態において各バスバー40の接続端子410に対向する部位のそれぞれに円形状の開口部503が形成されている。各開口部503には、接続端子410に電気的に接続される電圧検出端子504が設けられている。図5および図6に示すように、接続端子410と電圧検出端子504とはボルト70によって接続されている。
【0025】
図6に示すように、電圧検出端子504は、接続端子410の端子板410bに当接される平板部541と、平板部541の−X方向端部から+Y方向、すなわち電圧検出基板50に向かって90度屈曲された屈曲部542とを備え、平板部541と屈曲部542とでL字状断面を呈している。
【0026】
平板部541には、ボルト70の軸部702が挿通される貫通孔(以下、ボルト孔541hと記す)が設けられている。屈曲部542の先端部は、図6において模式的に示すように、電圧検出基板50の貫通孔に挿通され、電圧検出基板50に設けられた電圧検出回路501に、はんだ514により接合されている。
【0027】
電圧検出基板50には、止めねじ80の軸部802が挿通される貫通孔(以下、ねじ孔508と記す)が設けられている。ボス218の先端面に電圧検出基板50が当接された状態で、止めねじ80の軸部802がねじ孔508に挿通され、止めねじ80の軸部802に設けられたおねじ部がボス218のめねじ部218aに螺合される。なお、軸部802のおねじ部は、ねじ先から所定長さまで延在しており、その有効ねじ長さは、めねじ部218aよりも長く設定されている。
【0028】
止めねじ80が所定量締め付けられると、止めねじ80の頭部801の座面と、ボス218の先端面とによって電圧検出基板50が挟持され、電圧検出基板50が保持ケース20に固定される。
【0029】
電圧検出基板50が止めねじ80により固定されると、電圧検出端子504の平板部541がバスバー40の端子板410bに当接される。ボルト70の軸部702が電圧検出端子504のボルト孔541hに挿通され、ボルト70の軸部702に設けられたおねじ部が裏ナット470のめねじ部417に螺合される。なお、軸部702のおねじ部は、ねじ先から所定長さまで延在しており、その有効ねじ長さは、めねじ部417よりも長く設定されている。
【0030】
ボルト70の頭部701の座面と、電圧検出端子504の平板部541との間にはワッシャ―75が配置されている。ボルト70が所定量締め付けられると、ボルト70の頭部701の座面とバスバー40の端子板410bとによって、電圧検出端子504の平板部541およびワッシャ―75が挟持され、バスバー40の接続端子410と電圧検出端子504とが電気的に接続される。これにより、バスバー40と電圧検出基板50の電圧検出回路501とが、電圧検出端子504を介して電気的に接続される。
【0031】
図1および図2に示すように、カバー60は、PVC(ポリ塩化ビニル)などの絶縁性を有する樹脂を成形してなり、側板210と電圧検出基板50の全体を覆うように構成されている。カバー60は、ほぼ矩形状の側方覆い部601と、側方覆い部601の+Z方向端部から保持ケース20に向かって延在する上方覆い部602と、側方覆い部601の−Z方向端部から保持ケース20に向かって延在する下方覆い部603とを有している。
【0032】
図5に示すように、上方覆い部602の先端には、+Z方向(図示上方)に屈曲されてなる取付部621が設けられている。下方覆い部603の先端には、−Z方向(図示下方)に屈曲されてなる取付部631が設けられている。
【0033】
保持ケース20の+Z方向端部には、−Z方向が開口された溝212が設けられている。溝212は、X方向に沿って所定長さで延在し、保持ケース20の複数箇所に設けられている。同様に、保持ケース20の−Z方向端部には、+Z方向が開口された溝213が設けられている。溝213は、X方向に沿って所定長さで延在し、保持ケース20の複数箇所に設けられている。
【0034】
カバー60は、上方覆い部602が−Z方向(図示下方)に向かって押圧され、下方覆い部603が+Z方向(図示上方)に向かって押圧されると、上方覆い部602と下方覆い部603との距離が近づくように弾性変形可能な構成とされている。このため、作業者は、カバー60の外方から押圧力を付与して、カバー60の取付部621と取付部631との距離が短くなるようにカバー60を弾性変形させることで、各溝212,213から各取付部621,631を取り外すことができる。カバー60を保持ケース20に取り付ける際、作業者は、カバー60の外方から押圧力を付与して、カバー60を弾性変形させ、各溝212,213に各取付部621,631を対向配置させた後、カバー60の外方からの押圧力を除去することで、各取付部621,631がそれぞれ各溝212,213に嵌め込まれる。
【0035】
カバー60が保持ケース20に取り付けられると、カバー60と側板210との間には空間が形成される。
【0036】
図5および図6に示すように、カバー60におけるボルト70の頭部701の対向位置には、ボルト70側に突出する凸部607が設けられている。凸部607は、カバー60の内側から見たとき、外形が円錐台形状を呈しており、先端面607aが円形状の平坦面とされている。先端面607aは、ボルト70の頭部701に対向するカバー60の内側面を構成している。
【0037】
各部品が組み付けられた状態において、ボルト70とカバー60との位置関係、ならびに、止めねじ80とカバー60との位置関係について説明する。図6に示すように、凸部607の先端面607aとボルト70の頭部701の頂面との距離dは、めねじ部417におけるカバー60側の端部とボルト70の軸部702の先端(すなわち、ねじ先)との距離eよりも短い。なお、距離dおよび距離eは、各部品の製造公差や組立公差を加味し、距離dが最も長く、距離eが最も短くなったときであってもd<eを満足するように設定される。本実施の形態では、距離dが距離eの1/6程度とされている。このため、振動や衝撃を起因として、ボルト70が徐々に緩み、ボルト70が軸方向(+Y方向)に移動したとしても、ボルト70の頭部701の頂面と凸部607の先端面607aとが当接することにより、その移動量は最大でdとなる。
【0038】
止めねじ80の頭部801に対向するカバー60の内側面と止めねじ80の頭部801の頂面との距離fは、めねじ部218aにおけるカバー60側の端部と止めねじ80の軸部802の先端(すなわち、ねじ先)との距離gよりも短い。なお、距離fおよび距離gは、各部品の製造公差や組立公差を加味し、距離fが最も長く、距離gが最も短くなったときであってもf<gを満足するように設定される。本実施の形態では、距離fが距離gの1/8程度とされている。このため、振動や衝撃を起因として、止めねじ80が徐々に緩み、止めねじ80が軸方向(+Y方向)に移動したとしても、止めねじ80の頭部801の頂面とカバー60の内側面とが当接することにより、その移動量は最大でfとなる。
【0039】
上述した本実施の形態によれば、以下のような作用効果を奏することができる。
(1)ボルト70の頭部701に対向するカバー60の内側面とボルト70の頭部701の頂面との距離dは、めねじ部417におけるカバー60側の端部とボルト70の軸部702の先端との距離eよりも短くなるように設定されている。これにより、ボルト70の軸部702に形成されたおねじ部と、めねじ部417とのかみ合いが外れることが防止される。つまり、本実施の形態によれば、ボルト70の脱落を防止することができ、脱落したボルト70によって異音が発生することを防止できる。
【0040】
図7は、図6の比較例を示す図である。図7(a)に示すように、比較例では、ボルト70Cの頭部701Cの頂面とカバー60Cの内側面との距離hが、めねじ部417Cにおけるカバー60C側の端部とボルト70Cの軸部702Cの先端との距離iに比べて僅かに長い。このため、図7(b)に示すように、ボルト70Cの軸部702Cに形成されたおねじ部と、めねじ部417Cとのかみ合いが外れた場合、車両の振動を起因として、外れたボルト70が周囲の部品と接触することにより、大きな異音が発生する。なお、裏ナット470Cには、カバー60C側の端部とめねじ部417Cのカバー60C側の端部までの間が非ねじ部418Cとされており、ボルト70Cのおねじ部と、裏ナット470Cのめねじ部417Cとのかみ合いが外れたとしても、ボルト70Cがバスバー40Cのボルト孔541hCから完全に抜け出ることはない。
【0041】
これに対して、本実施の形態では、ボルト70のおねじ部と裏ナット470のめねじ部417とのかみ合いが外れることが防止されているため、ボルト70の脱落に起因した異音の発生を防止することができる。
【0042】
(2)カバー60におけるボルト70の頭部701の対向位置に、ボルト70側に突出する凸部607を形成した。凸部607を設けることで、カバー60の側方覆い部601全体の内側面を保持ケース20側に近づける必要がない。このため、たとえば、ねじ80の頭部801とカバー60の内側面とが干渉し、頭部801によってカバー60が外方に押圧され、カバー60が変形してしまうことがない。
【0043】
(3)止めねじ80の頭部801に対向するカバー60の内側面と止めねじ80の頭部801の頂面との距離fは、ボス218のめねじ部218aにおけるカバー60側の端部と止めねじ80の軸部802の先端との距離gよりも短くなるように設定されている。これにより、ボルト80の軸部802に形成されたおねじ部と、ボス218のめねじ部218aとのかみ合いが外れることが防止される。
【0044】
なお、次のような変形も本発明の範囲内であり、変形例の一つ、もしくは複数を上述の実施形態と組み合わせることも可能である。
[変形例]
(1)上記した実施の形態では、距離dを距離eの1/6程度としたが、本発明はこれに限定されない。距離dは、少なくとも距離eよりも短ければよい。
【0045】
(2)上記した実施の形態では、距離fを距離gの1/8程度としたが、本発明はこれに限定されない。距離fは、少なくとも距離gよりも短ければよい。
【0046】
(3)距離dを0にしてもよい。すなわち、ボルト70の頭部701に対向するカバー60の内側面とボルト70の頭部701の頂面とを当接させてもよい。これにより、ボルト70の緩みによる異音の発生を防止することができる。
【0047】
(4)距離fを0にしてもよい。すなわち、止めねじ80の頭部801に対向するカバー60の内側面と止めねじ80の頭部801の頂面とを当接させてもよい。これにより、止めねじ80の緩みによる異音の発生を防止することができる。
【0048】
(5)上記した実施の形態では、止めねじ80の頭部801に対向するカバー60の内側面と止めねじ80の頭部801の頂面との距離fが、ボス218のめねじ部218aにおけるカバー60側の端部と止めねじ80の軸部802の先端との距離gよりも短くなるようにしたが、本発明はこれに限定されない。止めねじ80の軸部802に形成されるおねじ部と、ボス218のめねじ部218aとを接着剤により固定することで、止めねじ80の緩みを防止する場合には、距離fを距離gよりも長くすることができる。
【0049】
(6)下保持部材203と中保持部材202と上保持部材201の3つの部材を結合することで保持ケース20を構成したが、本発明はこれに限定されない。
【0050】
(7)ボルト70および止めねじ80の形状は、上記した実施の形態に限定されない。頭部と軸部とを有する、様々なねじ部品を採用することができる。
【0051】
(8)上記した実施の形態では、電圧検出基板50の電圧検出回路501に接続される断面L字状の電圧検出端子504を、ボルト70によりバスバー40の接続端子410に接続する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。たとえば、電圧検出基板上に、バスバー40の接続端子410と電気的に接続される電圧検出導体としての電圧検出端子を設けるようにしてもよい。
【0052】
(9)上記した実施の形態では、カバー60におけるボルト70の頭部701の対向位置に、ボルト70側に突出する凸部607を設けた例について説明したが、本発明はこれに限定されない。ボルト70の頭部701に対向するカバー60の内側面とボルト70の頭部701の頂面との距離dを、めねじ部417におけるカバー60側の端部とボルト70の軸部702の先端との距離eよりも短く設定することができるのであれば、凸部607は省略することができる。また、カバー60における止めねじ80の頭部801の対向位置に、止めねじ80側に突出する凸部を設けるようにしてもよい。
【0053】
(10)上記した実施の形態では、ボス218に予め、めねじ部218aを形成しておき、めねじ部218aに止めねじ80を螺合させる例について説明したが、本発明はこれに限定されない。ボス218に予め、めねじ部218aを形成せず、円筒形状のボス218の先端側の開口から止めねじ80をねじり込むことにより、樹脂からなるボス218にめねじ部218aを形成してもよい。
【0054】
(11)カバー60の材料は、PVCに限定されない。また、保持ケース20の材料は、PBTに限定されない。絶縁性を有する種々の材料によりカバー60および保持ケース20を形成することができる。
【0055】
(12)上記した実施の形態では、円筒形の蓄電素子90を複数備えた蓄電モジュール10について説明したが、蓄電素子90の形状は、円筒形に限定されない。たとえば、角形の蓄電素子を複数備えた蓄電モジュールに本発明を適用してもよい。
【0056】
(13)リチウムイオン二次電池を蓄電素子の一例として説明したが、ニッケル水素電池などその他の二次電池にも本発明を適用できる。さらに、電気二重層キャパシタやリチウムイオンキャパシタを蓄電素子とした蓄電モジュールなどにも本発明を適用できる。
【0057】
(14)上記した実施の形態では、電気自動車に本発明を適用した例について説明したが、本発明は、これに限定されない。他の電動車両、たとえばハイブリッド電車などの鉄道車両、バスなどの乗合自動車、トラックなどの貨物自動車、バッテリ式フォークリフトトラックなどの産業車両の車両用電源装置を構成する蓄電装置に組み込まれる蓄電モジュールにも本発明を適用できる。
【0058】
本発明は、上記した実施の形態に限定されるものでなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で自由に変更、改良が可能である。
【符号の説明】
【0059】
10 蓄電モジュール、20 保持ケース、40 バスバー、50 電圧検出基板、60 カバー、70 ボルト、75 ワッシャー、80 ボルト、90 蓄電素子、201 上保持部材、202 中保持部材、203 下保持部材、210 側板、211 開口窓、212 溝、213 溝、214a,214b ガイドピン、218 ボス、218a めねじ部、410 接続端子、410a 連結板、410b 端子板、417 めねじ部、451 長孔、452 接合部、455a 貫通孔、456 中央部、457 端部、458 連結部、470 裏ナット、471 基部、501 電圧検出回路、503 開口部、504 電圧検出端子、508 ねじ孔、541 平板部、541h ボルト孔、542 屈曲部、601 側方覆い部、602 上方覆い部、603 下方覆い部、607 凸部、607a 先端面、621 取付部、631 取付部、701 頭部、702 軸部、801 頭部、802 軸部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7