(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記オリフィスシートは、前記連通孔に代えて、前記トッププレートの前記吸引孔に対応する位置に、上面から下面に貫通する複数の第2のオリフィスを有することを特徴とする請求項1又は2に記載の浮上用エアプレート。
前記トッププレートの前記空気噴出孔と吸引孔とを、該トッププレートの上面視で互いに並行な複数の直線上に交互に配置すると共に、該複数の直線と、該浮上用エアプレートによる搬送方向とのなす角度が0°、45°及び90°以外の角度であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の浮上用エアプレート。
前記オリフィスシートの前記複数のオリフィスの各々をレーザーを用いた微細孔加工により穿設することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の浮上用エアプレート。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、ガラス等を高剛性で浮上保持するため、多孔質絞りの静圧気体軸受と吸引孔とを組み合わせることが提唱されている。しかし、高精度で大型の多孔質絞り構造を製作するのは困難であり、2m×2mレベルの大型製品は実現していない。また、高剛性を有する厚板材に小径孔を多数加工する形式のエアベアリングを製作するには、膨大な時間と費用がかかるという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、上記従来の浮上用エアプレートにおける問題点に鑑みてなされたものであって、容易に製造することができると共に、ガラス等の被搬送物を高剛性で浮上させ、浮上量を高精度に制御することのできる浮上用エアプレートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、浮上用エアプレートであって、上面から下面に貫通する空気噴出孔及び吸引孔が、上面視で交互に複数配設されると共に、前記複数の空気噴出孔の各々の下面側に座ぐり部を有するトッププレートと、該トッププレートの前記座ぐり部に対応する位置に、上面から下面に貫通する複数の第1のオリフィスを有すると共に、前記トッププレートの前記吸引孔に一対一で連通し、上面から下面に貫通する連通孔を有するオリフィスシートと、該オリフィスシートに穿設されたすべての第1のオリフィスに空気を供給するための空気供給経路及び給気孔、並びに前記吸引孔に連通するすべての連通孔から空気を吸引する空気吸引経路及び吸引孔を有するボトム側プレートとを備えることを特徴とする。
【0008】
そして、本発明によれば、オリフィスシートに穿設した第1のオリフィスから噴き出された空気がトッププレートの座ぐり部に衝突し、速度を落とした状態で空気噴出孔から上方に噴出し、上方に位置するガラス等を非接触で高剛性で浮上させることができる。また、空気噴出孔及び吸引孔を交互に複数配設することで、吹き出される空気の圧力と、吸引される空気の圧力のバランスをち密に調整することができ、被搬送物の浮上量を高精度に制御することが可能となる。
【0009】
上記浮上用エアプレートにおいて、前記ボトム側プレートを空気経路プレートと、ボトムプレートとで構成し、該空気経路プレートの上面に、前記オリフィスシートに穿設された第1のオリフィスのすべてに連通する空気噴出用溝部と、前記オリフィスシートの前記貫通孔に一対一で連通する吸引用開口を形成し、該空気経路プレートの下面に、前記吸引用開口に連通する連通孔のすべてに連通する吸引用溝部と、該下面に開口して前記空気噴出用溝部に連通する連通孔とを形成し、前記ボトムプレートの上面から下面に貫通する給気孔及び吸引孔を形成し、該給気孔の上面側開口部が前記空気経路プレートの前記空気噴出用溝部に連通する連通孔に連通し、前記吸引孔の上面側開口部が前記空気経路プレートの前記吸引用溝部に連通するように構成することができる。これにより、空気噴出経路と空気吸引経路の作製が容易となり、製造コストをより低減することができる。
【0010】
上記浮上用エアプレートにおいて、前記オリフィスシートの前記連通孔に代えて、前記トッププレートの前記吸引孔に対応する位置に、上面から下面に貫通する複数の第2のオリフィスとすることができる。これにより、吸引される空気に対しても絞り効果を発揮し、吸引力の変化を抑制することができる。
【0011】
また、本発明は、浮上用エアプレートであって、上面から下面に貫通する空気噴出孔及び吸引孔が、上面視で交互に複数配設されるトッププレートと、該トッププレートの前記空気噴出孔及び吸引孔に一対一で連通し、上面から下面に貫通する、前記空気噴出孔及び吸引孔の径より大きい径の連通孔を有する座面シートと、前記トッププレートの前記空気噴出孔に連通する前記座面シートの連通孔に対応する位置に、上面から下面に貫通する複数の第1のオリフィスを有すると共に、前記トッププレートの前記吸引孔に連通する前記座面シートの連通孔に対応する位置に、上面から下面に貫通する複数の第2のオリフィスを有するオリフィスシートと、該オリフィスシートに穿設されたすべての第1のオリフィスに空気を供給するための空気供給経路及び給気孔、並びに該オリフィスシートに穿設されたすべての第2のオリフィスから空気を吸引する空気吸引経路及び吸引孔を有するボトム側プレートとを備えることを特徴とする。本発明によれば、前記発明と同様に、上方に位置するガラス等を非接触で高剛性で浮上させることができると共に、被搬送物の浮上量を高精度に制御することができる。
【0012】
また、座面シートに設けられた連通孔によって座ぐり部が形成され、この座ぐり部をトッププレートと異なるシートである座面シートに設けるため、座ぐり加工の精度を高め、均一な座ぐり深さを得ることができると共に、座ぐり加工を容易に行うことができる。
【0013】
上記浮上用エアプレートにおいて、前記ボトム側プレートを空気経路プレートと、ボトムプレートとで構成し、該空気経路プレートの上面に、前記オリフィスシートに穿設された第1のオリフィスのすべてに連通する空気噴出用溝部と、前記オリフィスシートに穿設された第2のオリフィスのすべてに連通する吸引用開口を形成し、該空気経路プレートの下面に、前記吸引用開口に連通する連通孔のすべてに連通する吸引用溝部と、該下面に開口して前記空気噴出用溝部に連通する連通孔とを形成し、前記ボトムプレートの上面から下面に貫通する給気孔及び吸引孔を形成し、該給気孔の上面側開口部が前記空気経路プレートの前記空気噴出用溝部に連通する連通孔に連通し、前記吸引孔の上面側開口部が前記空気経路プレートの前記吸引用溝部に連通するように構成することができる。これにより、空気噴出経路と空気吸引経路の作製が容易となり、製造コストをより低減することができる。
【0014】
上記浮上用エアプレートにおいて、前記トッププレートの前記空気噴出孔と吸引孔とを、該トッププレートの上面視で互いに並行な複数の直線上に交互に配置すると共に、該複数の直線と、該浮上用エアプレートによる搬送方向とのなす角度を0°、45°及び90°以外の角度とすることができる。これにより、搬送方向に対して垂直な方向の位置に関わらず、空気噴出孔と吸引孔が搬送方向に均一に配列されるため、安定した状態で被搬送物を非接触搬送することができる。さらに、ガラス等の非搬送物がコーティング等により温度が高い状態で搬送される場合においては、非搬送物が移動する際に噴出口がないデッドゾーンが少なくなるため、非搬送物の均一な冷却を好ましく行うことができる。
【0015】
上記浮上用エアプレートにおいて、前記オリフィスシートの前記複数のオリフィスの各々をレーザーを用いた微細孔加工により穿設することができる。これにより、オリフィスを短時間で効率よく穿設することができ、製造コストをさらに低減することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明によれば、製造コストが低く、ガラス等の被搬送物を高剛性で浮上させ、浮上量を高精度に制御することのできる浮上用エアプレートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明に係る浮上用エアプレートの第1の実施形態を示す図であって、(a)は正面図、(b)は上面図、(c)は下面図である。
【
図2】
図1の浮上用エアプレートのトッププレートを示す図であって、(a)は上面図、(b)は(a)のA−A線断面図、(c)は下面図、(d)は座ぐり部及びその周辺を示す拡大断面図である。
【
図3】
図2のトッププレートの空気噴出孔及び吸引孔の配列設計例を示す上面図である。
【
図4】
図1の浮上用エアプレートのオリフィスシートを示す図であって、(a)は正面図、(b)は上面図である。
【
図5】
図1の浮上用エアプレートの空気経路プレートを示す図であって、(a)は正面図、(b)は上面図(c)は下面図、(d)は空気噴出用溝部及び吸引用溝部、並びにその周辺を示す拡大断面図である。
【
図6】
図1の浮上用エアプレートのボトムプレートを示す図であって、(a)は上面図、(b)は(a)のB−B線断面図である。
【
図8】浮上用エアプレートを用いてガラス等を搬送する要領を説明するための上面図であって、(a)は従来例を、(b)は本発明の第1の実施形態の場合を示す。
【
図9】本発明に係る浮上用エアプレートの第2の実施形態を示す図であって、(a)は正面図、(b)は上面図、(c)は下面図である。
【
図10】
図9の浮上用エアプレートのトッププレートを示す図であって、(a)は上面図、(b)は(a)のC−C線断面図である。
【
図11】
図9の浮上用エアプレートの座面シートを示す図であって、(a)は上面図、(b)は(a)のD−D線断面図である。
【
図12】
図9の浮上用エアプレートのオリフィスシートを示す図であって、(a)は正面図、(b)は上面図である。
【
図13】
図9の浮上用エアプレートの空気経路プレートを示す図であって、(a)は正面図、(b)は上面図、(c)は下面図、(d)は空気噴出用溝部及び吸引用溝部、並びにその周辺を示す拡大断面図である。
【
図14】
図9の浮上用エアプレートのボトムプレートを示す図であって、(a)は上面図、(b)は(a)のE−E線断面図、(c)は(a)のF−F線断面図である。
【
図15】
図9の浮上用エアプレートの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。
【0019】
図1は、本発明に係る浮上用エアプレートの第1の実施形態を示し、この浮上用エアプレート1は、上面に空気噴出孔2c(白丸で表示)及び吸引孔2d(黒丸で表示)が交互に複数配設されたトッププレート2と、トッププレート2の下方に位置するオリフィスシート3と、オリフィスシート3の下方に位置する空気経路プレート4と、空気経路プレート4の下方に位置し、給気孔5c及び吸引孔5dを有するボトムプレート5とで構成される。
【0020】
トッププレート2は、高精度に平面研削加工され、
図2に示すように、上面2aから下面2bに貫通する空気噴出孔2c及び吸引孔2dが交互に複数配設される。各々の空気噴出孔2cの下面2b側には、座ぐり部2eが形成される。空気噴出孔2cはφ2.5mm程度とし、座ぐり部2eは、0.1〜0.2mmの深さで約φ8である。吸引孔2dは、全長にわたって同一内径で形成される。
【0021】
図3は、空気噴出孔2c及び吸引孔2dの配列設計例を示す。同図に示すように、格子目の交点に交互に空気噴出孔2cと吸引孔2dとを配置する。空気噴出孔2cと吸引孔2dの位置は、プレートの呼び寸法により決定されるが、0.7mm厚さのガラスの場合には、約10mmで略々x=yの関係とする。空気噴出孔2cと吸引孔2dのピッチは、搬送されるガラス等の厚みにより設定され、薄いガラス等を搬送する場合にはち密なピッチとし、厚いガラスには疎なピッチに設計することが経済的に好ましい。
【0022】
図4に示すように、オリフィスシート3は、トッププレート2の座ぐり部2eに対応する位置に、上面3aから下面3bに貫通する1組(本実施の形態では16個)のオリフィス3cを有すると共に、トッププレート2の吸引孔2dに連通し、上面3aから下面3bに貫通する連通孔3dを有する。
【0023】
オリフィス3cは、空気の絞り孔として0.03〜0.05mm程度の微細孔であって、例えば、0.3mm程度のステンレス鋼製のシートに島状にレーザー加工等によりφ6の円周上に複数個設けたものである。このオリフィスシート3を通過した空気は、絞り効果を発揮し、浮上ガラスに剛性を与える。
【0024】
図5に示すように、空気経路プレート4は、上面4aに空気噴出用溝部4cを、下面4bに吸引用溝部4dを備え、空気噴出用溝部4cは連通孔4eを介して空気噴出用開口部4gに連通し、吸引用溝部4dは連通孔4fを介して吸引用開口部4hに連通する。
図7に示すように、空気経路プレート4の上面4aにオリフィスシート3が位置すると、空気噴出用溝部4cは、オリフィスシート3のオリフィス3cのすべてに連通すると共に、吸引用開口部4hの各々は、オリフィスシート3の各々の連通孔3dに一対一で連通する。また、すべての吸引用開口部4hは、吸引用溝部4dに連通する。
【0025】
図6に示すように、ボトムプレート5は、上面5aから下面5bに貫通する給気孔5c及び吸引孔5dを有し、給気孔5cの上面側開口部5eが空気経路プレート4の空気噴出用溝部4cに連通する連通孔4eに連通し、吸引孔5dの上面側開口部5fが空気経路プレート4の吸引用溝部4dに連通する。このように、ボトムプレート5は、空気経路プレート4の吸引用溝部4dの蓋の役割を果たす。ボトムプレート5の給気孔5cの下面側開口部5g及び吸引孔5dの下面側開口部5hは、各々給気用配管並びに真空吸引用配管及び真空ポンプに接続される。
【0026】
上記トッププレート2〜ボトムプレート5は、
図7に示すように重ねられ、組立用ボルト7によって一体化される。
【0027】
次に、上記構成を有する浮上用エアプレート1の動作について、
図7を中心に参照しながら説明する。
【0028】
ボトムプレート5の給気口5cから入った圧縮空気が空気経路プレート4の空気噴出用溝部4cに入り、オリフィスシート3の島状に点在する複数個のオリフィス3cに到達して絞り効果を発揮し、トッププレート2の座ぐり部2eにオリフィス3cから噴き出された空気が衝突し、座面との隙間を通って2.5mm程度の空気噴出孔2cからガラス等に向かって速度を落として吹き出される。これにより、ガラス等を上面2aの上方に非接触で高剛性で浮上させることができる。
【0029】
また、トッププレート2の吸引孔2dから吸い込まれた空気は、オリフィスシート3のφ2.5mm程度の連通孔3dを通過し、空気経路プレート4の下面に格子状に加工された吸引用溝部4dを経てボトムプレート5の吸引孔5dを通過し、最終的に真空ポンプに排気される。
【0030】
図8は、浮上用エアプレートを用いてガラス等を搬送する要領を説明するための図であって、(a)に示す従来例では、空気噴出孔12cと、吸引孔12dとを垂直に交わる直線の交点に交互に配置しているため、搬送ラインL1では、ガラス等が空気噴出孔12cや吸引孔12dの直上に位置することがなく、搬送ラインL2では、ガラス等が空気噴出孔12cや吸引孔12dの直上に位置することとなる。このように、搬送ラインL1、L2とでガラス等に対する浮上力と吸引力とが大きく異なり、安定した温度状態でガラス等を非接触搬送することができない。
【0031】
一方、本発明の第1の実施形態では、
図3に示すように、空気噴出孔2c及び吸引孔2dを通過する複数の直線と、浮上用エアプレートによる搬送方向Tとのなす角度θを30°程度としたため、
図8(b)に示すように、搬送ラインL3、L4のように、ガラス等がどのラインを通過しても、ガラス等が空気噴出孔2cや吸引孔2dの直上に満遍なく位置することとなり、ガラス等に対して浮上力と吸引力とが均一に付与できるため、安定した状態でガラス等を非接触搬送することができる。尚、
図3における空気噴出孔2c及び吸引孔2dを通過する複数の直線と、浮上用エアプレートによる搬送方向Tとのなす角度θは、30°程度に限定されず、0°、45°及び90°以外の角度であれば、上述のように、ガラス等が空気噴出孔2cや吸引孔2dの直上に満遍なく位置し、安定した状態で非接触搬送することができる。
【0032】
尚、本発明の第1の実施形態に係る浮上用エアプレート1は、
図2に示すように、上面2aから下面2bに貫通する空気噴出孔2c及び吸引孔2dが、上面視で交互に複数配設されると共に、複数の空気噴出孔2cの各々の下面側に座ぐり部2eを有するトッププレート2と、
図4及び
図7に示すように、トッププレート2の座ぐり部2eに対応する位置に、上面3aから下面3bに貫通する複数のオリフィス3cを有すると共に、トッププレート2の吸引孔2dに一対一で連通し、上面3aから下面3bに貫通する連通孔を有するオリフィスシート3を備えることを第1の特徴とするのであって、上記構成を有する空気経路プレート4及びボトムプレート5を用いることが種々の利点があって好ましいが、これらの構成に限定されるものではなく、ボトム側に、オリフィスシート3に穿設されたすべてのオリフィス3cに空気を供給することができ、吸引孔2dに連通するすべてのオリフィスシート3の連通孔から空気を吸引することのできるプレートであれば、いかなる構成のものも使用することができる。
【0033】
次に、本発明の第1の実施形態に係る浮上用エアプレートの実施例について説明する。
【0034】
上述のように、空気浮上するガラスを高精度に保持するため、絞り効果を持ったオリフィス3c(
図4参照)を下方に備える空気噴出孔2c(
図2参照)と、吸引孔2dとを交互に複数個配列して浮上ガラスに高剛性を与える必要がある。例えば、G8サイズのガラス(2,200×2,500×t)の場合では、オリフィス3c(φ0.05mm)を約60,000個、空気噴出孔2c(φ2.5mm)を約3,000個、吸引孔2d(φ2.5mm)を約3,000個配列設計する。
【0035】
絞り効果を持たせるオリフィス3cは、板厚が0.3mmのステンレス鋼製のシートにφ0.05mm孔を60,000個穿設するが、この際レーザー加工等を用いることで加工に要する時間を顕著に短縮させることができる。
【0036】
これに対し、板厚10mm程度のステンレス鋼板にφ0.05の孔をドリルを用いて60000個加工するのに要する加工時間は、60,000分(1孔1分以上)、すなわち40日以上かかることになる。ドリルの寿命を考慮すると不可能に近い加工といえる。
【0037】
本発明の第1の実施形態では、薄い(例えば0.3mm)のオリフィスシート3に微細孔を多数加工することで、トッププレート2のように厚い(例えば10mm)板材に微細孔(例えば0.05mm)の加工をせずにφ2.5mm程度の加工で済ませることができる。
【0038】
空気噴出孔の径がφ0.05mmの場合には、給気圧が10kPa、浮上高さ0.25mmの条件では、噴出空気の速度が76.8m/secと試算されるが、本発明の第1の実施形態では、トッププレート2の下面2bに設けられた空気噴出孔2cに衝突し、隙間を通過して空気噴出孔2cから吹き出される空気の速度は約20m/secに低下し、ガラス等に当る空気による静電気の発生は極めて小さくなる。
【0039】
また、本発明の第1の実施形態では、浮上高さ20mmでは速度は1m/sec以下となり、クリーンルームの天井からのダウンフローの気流の外乱障害にはならない。これが、空気噴出孔の径がφ0.1mmで給気圧が10kPa、ガラスの浮上高さ0.25mmの条件では、速度が95m/secとなり、静電気が発生するため、その対策が必要となる。また、クリーンルームのダウンフローの気流の外乱要因にもなる。
【0040】
次に、本発明を実施するための第2の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0041】
図9は、本発明に係る浮上用エアプレートの第2の実施形態を示し、この浮上用エアプレート21は、上面に空気噴出孔22c(白丸で表示)及び吸引孔22d(黒丸で表示)が交互に複数配設されたトッププレート22と、トッププレート22の下方に位置する座面シート26と、座面シート26の下方に位置するオリフィスシート23と、オリフィスシート23の下方に位置する空気経路プレート24と、空気経路プレート24の下方に位置し、給気孔25c及び吸引孔25dを有するボトムプレート25とで構成される。
【0042】
図10に示すように、トッププレート22は、第1の実施形態によるトッププレート2と同様に、上面22aから下面22bに貫通する空気噴出孔22c及び吸引孔22dが交互に複数配設される。空気噴出孔22c及び吸引孔22dの配列については、
図3に示す第1の実施形態と同様であり、空気噴出孔22cはφ2.5mm程度とし、吸引孔22dはφ4.0mm程度とする。
【0043】
図11に示すように、座面シート26は、空気噴出孔22c及び吸引孔22dに対応する位置に、上面26aから下面26bに貫通する連通孔26cが配設される。連通孔26cは、後述するオリフィスシート23の空気噴出用オリフィス部23dから噴出する空気を水平方向に案内するためのものであり、空気噴出孔22c及び吸引孔22dよりも大きい径とされる。例えば、座面シート26の厚みが0.15〜0.3mm程度である場合、連通孔26cの径は、φ8mm程度である。このように連通孔26cの径を設定することにより、空気に対する絞り効果と空気の噴出速度を抑える効果を持たせることができる。
【0044】
このように、座面シート26に配設された連通孔26cの径を空気噴出孔22c及び吸引孔22dの径より大きくすることにより、トッププレート22及び座面シート26を積層した際に、第1の実施形態によるトッププレート2に設けられた座ぐり部2eを形成することができる。
【0045】
これによって、例えば、TV(TeleVision)用のLCDパネル等の、一辺が2500mmを超えるような大きなトッププレートに対する座ぐり加工の精度を高め、均一な座ぐり深さを得ることができると共に、座ぐり加工を容易に行うことができる。
【0046】
図12に示すように、オリフィスシート23は、トッププレート22の空気噴出孔22cに対応する位置に、上面23aから下面23bに貫通する1組(本実施の形態では8個)のオリフィス23cからなる空気噴出用オリフィス部23dを有すると共に、トッププレート22の吸引孔22dに対応する位置に、上面23aから下面23bに貫通する1組(本実施の形態では4個)のオリフィス23cからなる吸引用オリフィス部23eを有する。
【0047】
オリフィス23cは、空気の絞り孔として0.03〜0.10mm程度の微細孔であって、例えば、0.15〜0.3mm程度のステンレス鋼製のシートに島状にレーザー加工等により所定の径を有する円周上に複数個設けたものである。例えば、空気噴出用オリフィス部23dでは、φ6.0mm程度の円周上に4〜8個のオリフィス23cが設けられ、吸引用オリフィス部23eでは、φ3.0mm程度の円周上に3〜6個のオリフィス23cが設けられる。
【0048】
このオリフィスシート23を通過した空気は、絞り効果を発揮し、浮上ガラスに剛性を与える。また、吸引側にもオリフィス23cを設けることにより、吸引される空気に対する絞り効果を発揮し、吸引力の変化を抑制することができる。
【0049】
図13に示すように、空気経路プレート24は、第1の実施形態による空気経路プレート4と同様に、上面24aに空気噴出用溝部24cを、下面24bに吸引用溝部24dを備え、空気噴出用溝部24cは連通孔24eを介して空気噴出用開口部24gに連通し、吸引用溝部24dは連通孔24fを介して吸引用開口部24hに連通する。
【0050】
図15に示すように、空気経路プレート24の上面24aにオリフィスシート23が位置すると、空気噴出用溝部24cは、オリフィスシート23における空気噴出用オリフィス部23dのオリフィス23cのすべてに連通すると共に、吸引用開口部24hの各々は、オリフィスシート23における吸引用オリフィス部23eのオリフィス23cのすべてに連通する。また、すべての吸引用開口部24hは、吸引用溝部24dに連通する。
【0051】
尚、この例では、ガラス等を搬送する際の浮上量の変化を抑制するために、吸引用溝部24dを、ガラス等の搬送方向に対して空気経路が互いに独立するように3分割した場合を示す。また、吸引用溝部24dは、これに限られず、例えば、3分割以上としてもよいし、第1の実施形態と同様に吸引用溝部24dを分割しないように構成してもよい。
【0052】
図14に示すように、ボトムプレート25は、第1の実施形態によるボトムプレート5と同様に、上面25aから下面25bに貫通する給気孔25c及び吸引孔25dを有する。給気孔25cの上面側開口部25eは、空気経路プレート24の空気噴出用溝部24cに連通する連通孔24eに連通し、吸引孔25dの上面側開口部25fは、空気経路プレート24の吸引用溝部24dに連通する。このように、ボトムプレート25は、空気経路プレート24の吸引用溝部24dの蓋の役割を果たす。
【0053】
ボトムプレート25の給気孔25cの下面側開口部25g及び吸引孔25dの下面側開口部25hは、各々給気用配管並びに真空吸引用配管及び真空ポンプに接続される。
【0054】
上記トッププレート22〜ボトムプレート25は、
図15に示すように重ねられ、組立用ボルト27によって一体化される。
【0055】
次に、上記構成を有する浮上用エアプレート21の動作について、
図15を中心に参照しながら説明する。
【0056】
ボトムプレート25の給気口25cから入った圧縮空気が空気経路プレート24の空気噴出用溝部24cに入り、オリフィスシート23の島状に点在する複数個のオリフィス23c(空気噴出用オリフィス部23d)に到達して絞り効果を発揮し、座面シート26の連通孔26cを通過した空気がトッププレート22の底面に衝突し、座面との隙間を通って2.5mm程度の空気噴出孔22cからガラス等に向かって速度を落として吹き出される。これにより、ガラス等を上面22aの上方に非接触で高剛性で浮上させることができる。
【0057】
また、トッププレート22の吸引孔22dから吸い込まれた空気は、座面シート26の連通孔26cを通過し、オリフィスシート23の島状に点在する複数個のオリフィス23c(吸引用オリフィス部23e)に到達して絞り効果を発揮し、空気経路プレート24の下面に格子状に加工された吸引用溝部24dを経てボトムプレート25の吸引孔25dを通過し、最終的に真空ポンプに排気される。
【0058】
このように浮上用エアプレート21が動作することにより、第1の実施形態と同様に、安定した状態でガラス等を非接触搬送することができる。
【0059】
以上のように、第2の実施形態では、空気噴出孔22c及び吸引孔22dが配設されたトッププレート22と、空気噴出孔22c及び吸引孔22dの径よりも大きい径を有する連通孔26cが配設された座面シート26とを積層して、第1の実施形態によるトッププレート2を形成するため、第1の実施形態によるトッププレート2に設けられた座ぐり部2eを座面シート26に独立して形成することができる。これにより、座ぐり加工の精度を高め、均一な座ぐり深さを得ることができると共に、座ぐり加工を容易に行うことができる。
【0060】
以上、本発明の第1及び第2の実施形態について説明したが、本発明は、上述した本発明の第1及び第2の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。例えば、第1の実施形態では、オリフィスシート3に対して空気を吸引するための連通孔3dを設けたが、これに限られず、第2の実施形態と同様に、島状に配設された1組のオリフィス3cを設けてもよい。また、例えば、第2の実施形態では、吸引用オリフィス部23eに代えて、第1の実施形態と同様に、連通孔を設けてもよい。
【0061】
さらに、例えば、第1の実施形態において、空気経路プレート4の下面4bに設けられた吸引用溝部4dを、第2の実施形態と同様に、ガラス等の搬送方向に対して分割して設けてもよい。