特許第5998162号(P5998162)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5998162-ショックアブソーバ 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5998162
(24)【登録日】2016年9月2日
(45)【発行日】2016年9月28日
(54)【発明の名称】ショックアブソーバ
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/38 20060101AFI20160915BHJP
   F16F 9/32 20060101ALI20160915BHJP
【FI】
   F16F9/38
   F16F9/32 B
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-21156(P2014-21156)
(22)【出願日】2014年2月6日
(65)【公開番号】特開2015-148272(P2015-148272A)
(43)【公開日】2015年8月20日
【審査請求日】2016年5月6日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075513
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 政喜
(74)【代理人】
【識別番号】100120260
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅昭
(74)【代理人】
【識別番号】100137604
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100185487
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 哲生
(72)【発明者】
【氏名】河部 俊晴
(72)【発明者】
【氏名】武尾 覚
【審査官】 保田 亨介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−225475(JP,A)
【文献】 特開2005−016721(JP,A)
【文献】 特開平11−294511(JP,A)
【文献】 特開2002−031181(JP,A)
【文献】 実公平08−009471(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60G1/00−99/00
F16F9/00−9/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ショックアブソーバであって、
一端からピストンロッドが延出し、外周に凸部が形成されたシリンダと、
前記凸部に圧入されたスプリングシートと、
前記スプリングシートに固定され、前記ピストンロッドを保護するダストブーツの一端を保持するブラケットと、
を備え
前記ブラケットの前記ダストブーツ側の端部とは反対側の端部と、前記スプリングシートの前記ダストブーツ側の端部とが固定されていることを特徴とするショックアブソーバ。
【請求項2】
請求項1に記載のショックアブソーバであって、
前記ブラケットは、前記ダストブーツ側の端部に、前記ダストブーツの端部に引っかかる係止部を有することを特徴とするショックアブソーバ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のショックアブソーバであって、
前記ブラケットの前記ダストブーツ側の端部とは反対の端部の内径は、前記ダストブーツ側の端部の内径よりも大きいことを特徴とするショックアブソーバ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のショックアブソーバであって、
前記スプリングシートは、前記ダストブーツ側に位置し前記シリンダの前記凸部に圧入される筒状部と、前記ダストブーツとは反対側に位置したスプリング座面とを有することを特徴とするショックアブソーバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ショックアブソーバに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、有底筒状部を有するスプリングシートを、ピストンロッドが延出する側からアウターチューブに嵌装したショックアブソーバが開示されている。スプリングシートの筒状部には、ダストブーツの一端を保持する突起が設けられている。スプリングシートは、筒状部の底面とアウターチューブの端面とが当接した状態で位置決めされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】DE 19641728 C2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のショックアブソーバでは、スプリング座面の位置やダストブーツを保持する位置によっては、スプリングシートの筒状部が軸方向に長くなって重量が増加し、スプリングシート自体の成形も困難になる。このため、スプリング座面の位置およびダストブーツを保持する位置に対する設定自由度が低いという問題がある。
【0005】
そこで、スプリング座面としてのスプリングシートとダストブーツ保持部を有するブラケットとを個別に設けて、スプリング座面の位置およびダストブーツを保持する位置の設定自由度を確保することが考えられる。
【0006】
ここで、アウターチューブにスプリングシートを固定する方法を検討すると、アウターチューブの外周にスプリングシートを溶接で固定した場合は、その後の静電塗装でスプリングシートの裏側に未塗装部が発生することになる。このため、アウターチューブにスプリングシートを固定するには、アウターチューブの外周にスプリングシートを圧入するための凸部を設けておき、アウターチューブ、すなわちショックアブソーバ本体とスプリングシートとを個別に塗装した後に、アウターチューブの凸部にスプリングシートを圧入することが望ましい。
【0007】
一方で、ブラケットについては、アウターチューブの外周に溶接で固定することが考えられる。しかしながら、溶接は、上記のように、アウターチューブを塗装する前に行うので、アウターチューブにブラケットを溶接で固定すると、スプリングシートの内周側がブラケットと干渉してしまい、アウターチューブを塗装してからスプリングシートを組み付けることができなくなる。したがって、アウターチューブにブラケットを溶接で固定する場合は、スプリングシートをアウターチューブに固定してから塗装しなければならず、未塗装部が発生してしまうという問題がある。
【0008】
本発明は、このような技術的課題に鑑みてなされたもので、スプリング座面の位置およびダストブーツを保持する位置の設定自由度を確保するとともに、塗装を容易に行うことができるショックアブソーバを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ショックアブソーバであって、一端からピストンロッドが延出し、外周に凸部が形成されたシリンダと、前記凸部に圧入されたスプリングシートと、前記スプリングシートに固定され、前記ピストンロッドを保護するダストブーツの一端を保持するブラケットと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、スプリングシートとダストブーツの一端を保持するブラケットとを個別に設けるので、スプリング座面の位置およびダストブーツを保持する位置を自由に設定できる。また、ブラケットがスプリングシートに固定されるので、スプリングシートをシリンダに圧入する前に、シリンダとスプリングシートとを個別に塗装することができる。したがって、未塗装部を発生させることなく、ショックアブソーバを容易に塗装できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係るショックアブソーバを示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態に係るショックアブソーバ100について説明する。
【0013】
ショックアブソーバ100は、例えば、車両(図示せず)の車体と車軸との間に介装され、減衰力を発生させて車体の振動を抑制する装置であって、シリンダとしてのアウターチューブ1から延出したピストンロッド2の端部に連結されたマウント部材(図示せず)を介して、一端が車両に取り付けられる。ショックアブソーバ100の他端は、アウターチューブ1に設けられた取付部材1aにより車両に取り付けられる。
【0014】
ショックアブソーバ100は、いわゆるツインチューブショックアブソーバであって、ピストンロッド2は、アウターチューブ1内に配設されたインナーチューブ(図示せず)に進退自在に挿入される。
【0015】
アウターチューブ1の外周には、スプリングシート3が固定される。また、スプリングシート3に固定されたブラケット4により、ピストンロッド2を保護するダストブーツ5の一端が保持される。ダストブーツ5の他端は、例えば、マウント部材に保持される。
【0016】
以下、より詳細に説明する。
【0017】
アウターチューブ1の外周には、凸部1bが形成される。凸部1bは、図1に示すように、スプリングシート3が圧入される圧入部1cと、圧入部1cよりも突出して形成された係止部1dと、を有する。
【0018】
本実施形態では、凸部1bがアウターチューブ1の全周に設けられており、アウターチューブ1が拡径された状態になっている。凸部1bは、例えば、アウターチューブ1の周方向に複数に区切って設けてもよい。
【0019】
スプリングシート3は、スプリング座面3aと、スプリング座面3aの内周側に設けられた筒状部3bと、を有する。スプリングシート3は、ピストンロッド2が延出した側から、アウターチューブ1の圧入部1cに圧入される。スプリングシート3の位置は、筒状部3bに形成された段部3cとアウターチューブ1の係止部1dとが当接した位置で規定される。したがって、アウターチューブ1の凸部1bの位置を変更することで、スプリングシート3の位置、すなわち、スプリング座面3aの位置を自由に設定することができる。
【0020】
スプリングシート3の筒状部3bには、筒状のブラケット4が溶接で固定される。
【0021】
ブラケット4のダストブーツ5側の端部には、ダストブーツ5の開口部に内側から引っ掛かる係止部4aが形成される。これにより、ダストブーツ5のスプリングシート3側の端部がブラケット4に保持される。係止部4aは、ブラケット4の全周に設けてもよいし、ブラケット4の周方向に複数に区切って設けてもよい。
【0022】
上記のように、ブラケット4は、スプリングシート3に溶接で固定されるので、スプリングシート3の位置を変更すると、ダストブーツ5を保持する位置も併せて変更されることになる。ここで、ダストブーツ5を保持する位置だけを変更したい場合は、係止部の位置が異なる別のブラケットを用いることで、スプリングシート3の位置に関わらず、ダストブーツ5を保持する位置を自由に設定できる。
【0023】
続いて、ショックアブソーバ100の組み付け方法について説明する。
【0024】
ショックアブソーバ100は、スプリングシート3、ブラケット4、およびダストブーツ5を組み付ける前に、アウターチューブ1の塗装が行われる。また、スプリングシート3およびブラケット4は、溶接で固定した後に塗装が行われる。
【0025】
このように、スプリングシート3を組み付けていない状態でアウターチューブ1の塗装を行うので、コストが安い静電塗装を適用してアウターチューブ1の全面を塗装することができる。また、スプリングシート3およびブラケット4については、内周側まで塗装可能な電着塗装を適用できる。これにより、未塗装部を発生させることなく、ショックアブソーバ100を容易に塗装できる。
【0026】
塗装完了後に、アウターチューブ1の凸部1bに、ブラケット4が固定されたスプリングシート3が圧入される。
【0027】
そして、ダストブーツ5のスプリングシート3側の端部をブラケット4の係止部4aに係止させて、ショックアブソーバ100の組み付けが完了する。
【0028】
以上、述べたように、本実施形態によれば、スプリングシート3とダストブーツ5の一端を保持するブラケット4とを個別に設けるので、スプリング座面3aの位置およびダストブーツ5を保持する位置を自由に設定できる。
【0029】
より具体的には、アウターチューブ1の凸部1bの位置を変更することで、スプリングシート3の位置、すなわち、スプリング座面3aの位置を自由に設定できる。また、係止部の位置が異なる別のブラケットを用いることで、スプリングシート3の位置に関わらず、ダストブーツ5を保持する位置を自由に設定できる。
【0030】
また、ブラケット4がスプリングシート3に固定されるので、スプリングシート3をアウターチューブ1に圧入する前に、アウターチューブ1とスプリングシート3とを個別に塗装できる。したがって、未塗装部を発生させることなく、ショックアブソーバ100を容易に塗装できる。
【0031】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体例に限定する趣旨ではない。
【0032】
上記実施形態では、ブラケット4に設けた係止部4aにより、ダストブーツ5を保持しているが、ブラケット4にダストブーツ5を保持させる方法は、これに限定されるものではない。例えば、ダストブーツ5をブラケット4の外周に被せた状態で、ダストブーツ5の外側からバンドで締め付けることで、ブラケット4にダストブーツ5を保持させる構造とすることもできる。
【0033】
また、スプリングシート3にブラケット4を溶接で固定しているが、車両走行時の振動やダストブーツ5が伸長したときの引張力により外れなければよいので、例えば、スプリングシート3の筒状部3bに圧入で固定してもよい。
【0034】
また、スプリングシート3およびブラケット4の塗装は、スプリングシート3とブラケット4とを溶接した後に行われるが、上記のように、スプリングシート3にブラケット4を圧入で固定する場合は、スプリングシート3とブラケット4とを個別に塗装してから圧入してもよい。スプリングシート3とブラケット4とを個別に塗装する場合は、アウターチューブ1にスプリングシート3を圧入した後に、スプリングシート3にブラケット4を圧入してもよいし、アウターチューブ1にスプリングシート3を圧入する前に、スプリングシート3にブラケット4を圧入してもよい。
【符号の説明】
【0035】
100 ショックアブソーバ
1 アウターチューブ(シリンダ)
1b 凸部
2 ピストンロッド
3 スプリングシート
4 ブラケット
5 ダストブーツ
図1