(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1室と前記第2室とは隣接しており、前記送風機は、前記第1室と前記第2室とを区画する仕切り材に設けられ、前記仕切り材に設けられた開口部を介して前記送風を行うことを特徴とする請求項1に記載の換気システム。
前記第1の無機発泡体及び前記第2の無機発泡体の少なくともいずれかの熱容量は、2〜40Kcal/℃であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の換気システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載の構成においては、室内の空気を屋外へ排気することによって室内を減圧しているため、室内の空気を排気する過程での熱損失が大きく、部屋全体の熱回収能力が低下してしまうといった問題がある。
【0007】
そこで本発明は、このような従来技術の有する課題を解決するものであり、ビル、住宅、倉庫などの建物の室内において、優れた断熱性能による省エネルギー化が実現でき、室内への新鮮な空気の導入による空気質の改善と同時に、排気時の熱損失の低減が実現できる換気システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決すべく、本発明は、第1室内及び第2室内の換気を行う換気システムであって、第1室に設けられ、第1室の室外空間と室内空間とを通気可能に区画する第1の無機発泡体と、第2室に設けられ、第2室の室外空間と室内空間とを通気可能に区画する第2の無機発泡体と、第1室の室内空間から第2室の室内空間への空気の送風、及び、第2室の室内空間から第1室の室内空間への空気の送風の切り替えが可能であり、空気の送風元の室内空間を第1室の室外空間及び第2室の室外空間よりも減圧し、空気の送風先の室内空間を第1室の室外空間及び第2室の室外空間よりも加圧する送風機と、送風機における第1室の室内空間から第2室の室内空間への送風及び第2室の室内空間から第1室の室内空間への送風を所定のタイミングで切り替える送風制御部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
この発明では、送風機を作動させることにより、第1室と第2室との間で空気が移動し、第1室の室内空間及び第2室の室内空間のうちの一方が減圧空間となり他方が加圧空間となる。加圧空間は、第1室の室外空間及び第2室の室外空間の空気圧力よりも高い圧力を有し、減圧空間は第1室の室外空間及び第2室の室外空間の空気圧力よりも低い圧力を有する。
【0010】
第1室の室内空間及び第2室の室内空間のうち、加圧空間では、室内の空気が加圧空間側の無機発泡体を通して室外に排気されるため、室内の空気が持つ熱が無機発泡体に熱交換され、無機発泡体に蓄熱される。また、加圧空間では、送風機によって減圧空間からの空気が導入される。
【0011】
一方、減圧空間では、減圧空間側の無機発泡体を通して外気(第1室外及び第2室外の空気)が室内に給気される。このとき、室内から無機発泡体に伝達された熱が無機発泡体を通気する空気に熱交換され、室内から無機発泡体に伝達された熱を回収することができる。即ち、減圧空間において、無機発泡体を通して外気を取り入れることで、無機発泡体を通気する外気を減圧空間内の温度と同じ或いは同程度にすることができ、減圧空間内の温度の変動を抑えることができる。これと同時に減圧空間では、新鮮な外気が室内に導入されることにより、高い空気質を維持することができる。
【0012】
なお、加圧空間では室内の空気の熱が加圧空間側の無機発泡体に熱交換され、無機発泡体で蓄熱されるが、この状態が長時間続くと、無機発泡体の熱容量を超える熱は室外に放出され、熱を損失してしまう。そこで、送風制御部が、送風機による送風の向きを切り替えることで、第1室の室内空間及び第2室の室内空間のうち、加圧空間であった空間が減圧空間に切り替わる。加圧空間から切り替えられた減圧空間では、無機発泡体を通して外気を室内に給気する際に、無機発泡体に蓄えられた熱を外気に熱交換して空内に取り込むことで、第1室及び第2室全体の熱回収能力を高めることができる。このように、加圧空間と減圧空間とを切り替えることにより、いずれの空間でも新鮮な外気を室内に取り入れることができ、第1室の室内空間及び第2室の室内空間全体において高い空気質を維持することもできる。
【0013】
また、第1及び第2の無機発泡体の材料である無機材料は親水性が高いため、湿気を材料内部に吸着等によって保持することが可能である。第1及び第2の無機発泡体を通して、室内から室外、室外から室内に空気が移動する際に湿気も移動するため、第1及び第2の無機発泡体内部で結露が発生することを防ぐこともできる。
【0014】
また、第1及び第2の無機発泡体は、発泡体という複数の微小空間を有する形状に形成されていることにより、材料自身が軽くなり、またパネル形状を得ることも可能になる。そのため、ハンドリング性及び施工性が、繊維質材料と比較して格段に向上する。さらに、軽量であることから、建築物の重量低減につながって耐震性も増す。さらに、外気が第1及び第2の無機発泡体を通気する際、外気に含まれる汚染物質が第1及び第2の無機発泡体で除去され、フィルターの効果も期待できる。
【0015】
以上のように、ビル、住宅、倉庫などの建物の室内において、優れた断熱性能による省エネルギー化が実現でき、室内への新鮮な空気の導入による空気質の改善と同時に、排気時の熱損失の低減が実現できる。
【0016】
また、第1室と第2室とは隣接しており、送風機は、第1室と第2室とを区画する仕切り材に設けられ、仕切り材に設けられた開口部を介して送風を行うことが好ましい。この場合には、仕切り材に設けられた開口部を介して一方の室内から他方の室内への送風を容易に行うことができる。また、第1室と第2室とが隣接していることにより、一方の室内から他方の室内へ空気を移動させる際の熱損失を低減することができる。
【0017】
また、第1の無機発泡体及び第2の無機発泡体の少なくともいずれかは、通気率が5×10
−4〜1m
2h
−1Pa
−1であり、かつ、熱伝導率が0.02〜0.1W/mKであることが好ましい。通気率が5×10
−4m
2h
−1Pa
―1未満になると、第1室の室内空間及び第2室の室内空間のうち、減圧空間において減圧空間側の無機発泡体を通して外気を室内へ給気することが困難になり、一方、加圧空間において室内の空気を加圧空間側の無機発泡体を通して室外へ排気することが困難になり、高い換気効果が得られない。また、通気率が1m
2h
−1Pa
―1を超えると、無機発泡体を通気する空気量が多くなりすぎて、加圧空間では室外への熱損失が大きくなり、減圧空間では外気が無機発泡体と熱交換を行う時間が十分とれなくなり、第1室及び第2室全体の熱回収率が低下する。また、熱伝導率が0.1W/mKを超えると、第1及び第2の無機発泡体を伝わって室外に逃げる熱量が大きくなるために第1室及び第2室全体の熱回収率が低下する。本発明の第1及び第2の無機発泡体の熱伝導率の下限は実用面から考えて、0.02W/mKが好ましい。従って、第1の無機発泡体及び第2の無機発泡体の少なくともいずれかは、通気率が5×10
−4〜1m
2h
−1Pa
−1であり、かつ、熱伝導率を0.02〜0.1W/mKとすることで、最適な換気効果、及び熱回収効果を得ることができる。
【0018】
また、送風制御部は、送風機の送風量を可変に制御することが好ましい。この場合には、第1室及び第2室の上下階層、室内空間の広さ、気候、及び、温度等に対応して、無機発泡体を通して給排気できる空気量を所定の値に調節し、室内全体の熱回収率を向上させることができる。
【0019】
また、第1の無機発泡体及び第2の無機発泡体の少なくともいずれかの熱容量は、2〜40Kcal/℃であることが好ましい。熱容量が2kcal/℃未満であると、保持できる熱量が小さいために、第1室の室内空間及び第2室の室内空間のうち、加圧空間において無機発泡体に伝達された熱を蓄えることができず、熱損失が大きくなる。また、熱容量が40kcal/℃を超えると、熱を保持する能力が高すぎるために、減圧空間において外気から無機発泡体に導入された空気と熱交換を有効に行うことができない。従って、第1の無機発泡体及び第2の無機発泡体の少なくともいずれかの熱容量を、2〜40Kcal/℃とすることで、最適な熱回収効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ビル、住宅、倉庫などの建物の室内において、優れた断熱性能による省エネルギー化が実現でき、室内への新鮮な空気の導入による空気質の改善と同時に、排気時の熱損失の低減が実現できる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しつつ、本発明に係る換気システムの好適な一実施形態について詳細に説明する。
【0023】
図1〜
図3に示すように、本実施形態の換気システム1は、建物Yの内部空間W内の換気を行うものであり、無機発泡体(第1無機発泡体)2Aと、無機発泡体(第2無機発泡体)2Bと、側部有機断熱材3,4と、下部有機断熱材5と、上部有機断熱材6と、仕切り材7と、送風機8A,8Bと、送風制御部100とを含んで構成される。無機発泡体2A,2B及び側部有機断熱材3,4は建物Yの外周を囲む外壁を形成している。
【0024】
無機発泡体2A,2B及び側部有機断熱材3,4はそれぞれ板状を成している。無機発泡体2A及び無機発泡体2Bが対向して配置され、側部有機断熱材3及び側部有機断熱材4が対向して配置される。無機発泡体2A,2B及び側部有機断熱材3,4の側部同士を連結することで内部空間Wの側部を囲む四角枠状の壁部が形成される。なお、側部有機断熱材3,4は、無機発泡体2A,2Bを間に挟みこむようにして配置され、側部有機断熱材3,4の平面部が無機発泡体2A,2Bの側部端面に当接している。
【0025】
下部有機断熱材5及び上部有機断熱材6は、それぞれ板状を成している。下部有機断熱材5は、四角枠状に配置された無機発泡体2A,2B及び側部有機断熱材3,4の開口部を下方側から覆う。なお、下部有機断熱材5の平面部が、四角枠状に配置された無機発泡体2A,2B及び側部有機断熱材3,4の下部端面に当接している。上部有機断熱材6は、四角枠状に配置された無機発泡体2A,2B及び側部有機断熱材3,4の開口部を上方側から覆う。なお、上部有機断熱材6の平面部が、四角枠状に配置された無機発泡体2A,2B及び側部有機断熱材3,4の上部端面に当接している。
【0026】
無機発泡体2A,2B、側部有機断熱材3,4、下部有機断熱材5、及び、上部有機断熱材6によって囲まれた内部空間W内に、無機発泡体2A,2Bと対向するように仕切り材7が配置される。これにより建物Y内に、無機発泡体2A、側部有機断熱材3,4、有機断熱材5,6、及び仕切り材7によって囲まれる第1室Aと、無機発泡体2B、側部有機断熱材3,4、有機断熱材5,6、及び仕切り材7によって囲まれる第2室Bと、が形成される。
【0027】
仕切り材7には、第1室Aの室内空間(以下「第1室内空間」という)WAと第2室Bの室内空間(以下「第2室内空間」という)WBとに連通する開口部7aが設けられている。なお、第1室A内及び第2室B内を加圧空間及び減圧空間とすることができるものであれば、仕切り材7を構成する部材は制限されるものではない。例えば、仕切り材7として間仕切壁や扉(ドア)が用いられる。
【0028】
第1室A及び第2室Bを形成する過程において、各部材の接合部分には、熱や空気が漏れることがないように気密用シール剤によってシーリングされている。
【0029】
無機発泡体2Aは、第1室Aの第1室内空間WAと、第1室A及び第2室Bの外側に位置する室外空間WCとを通気可能に区画する。また、無機発泡体2Bは、第2室Bの第2室内空間WBと、第1室A及び第2室Bの外側に位置する室外空間WCとを通気可能に区画する。無機発泡体2A,2Bは、通気性を有し、熱交換が可能であれば、その材料は制限されるものではない。例えば、無機発泡体2A,2Bの材料として、発泡ガラス、気泡コンクリート、軽量気泡コンクリート、発泡アルミナ、発泡炭酸カルシウム等を用いることができる。特に、無機発泡体2A,2Bの材料として、不燃材料であり、安価であることから軽量気泡コンクリートを用いることがより好ましい。
【0030】
無機発泡体2A,2Bの通気率の範囲は、5×10
―4〜1m
2h
−1Pa
―1であり、好ましくは1×10
−3〜0.5m
2h
−1Pa
―1、より好ましくは5×10
−3〜0.1m
2h
−1Pa
―1である。通気率が5×10
―4m
2h
−1Pa
―1未満になると、第1室Aの第1室内空間WA及び第2室Bの第2室内空間WBのうち、減圧空間において無機発泡体2A,2Bを通して室外空間WCの空気(以下「外気」という)を室内へ給気することが困難になり、一方、加圧空間において室内の空気を無機発泡体2A,2Bを通して室外空間WCへ排気することが困難になり、高い換気効果が得られない。また、通気率が1m
2h
−1Pa
―1を超えると、無機発泡体2A,2Bを通気する空気量が多くなりすぎて、加圧空間では、室外空間WCへの熱損失が大きくなり、減圧空間では、外気が無機発泡体2A,2Bと熱交換を行う時間が十分とれなくなり、第1室A及び第2室B全体の熱回収率が低下する。
【0031】
また、無機発泡体2A,2Bの熱伝導率の範囲は、0.02〜0.1W/mKであり、好ましくは0.02〜0.08W/mK、より好ましくは0.02〜0.06W/mKである。熱伝導率が0.1W/mKを超えると、無機発泡体2A,2Bを伝わって室外空間WCに逃げる熱量が大きくなるために第1室A及び第2室B全体の熱回収率が低下する。無機発泡体2A,2Bの熱伝導率の下限は実用面から考えて、0.02W/mKが好ましい。
【0032】
また、無機発泡体2A,2Bの熱容量の範囲は、2〜40kcal/℃であり、より好ましくは3〜30kcal/℃である。熱容量が2kcal/℃未満であると、保持できる熱量が小さいために、第1室Aの第1室内空間WA及び第2室Bの第2室内空間WBのうち、加圧空間において無機発泡体2A,2Bに伝達された熱を蓄えることができず、熱損失が大きくなる。また、熱容量が40kcal/℃を超えると、熱を保持する能力が高すぎるために、減圧空間において外気から無機発泡体2A,2Bに導入された空気と熱交換を有効に行うことができない。
【0033】
送風機8A,8Bは、仕切り材7の開口部7a周りに取り付けられる。送風機8Aは、第2室Bの第2室内空間WBから第1室Aの第1室内空間WAへの空気の送風を行う。送風機8Aは、ダンパー18Aと、ファン19Aとを含んで構成されている。ファン19Aは、回転動作によって第2室Bの第2室内空間WB内の空気を開口部7aを介して第1室A側へ送風するものである。ダンパー18Aは、開閉動作を行うことにより送風機8Aにおける第1室A及び第2室B間での空気の流通及び流通の遮断を行うものであり、開状態の時に空気を流通させ、閉状態のときに空気の流通を遮断する。
【0034】
送風機8Bは、送風機8Aと同様に、第1室Aの第1室内空間WAから第2室Bの第2室内空間WBへの空気の送風を行う。送風機8Bは、ダンパー18Bと、ファン19Bとを含んで構成されている。ファン19Bは、回転動作によって第1室Aの第1室内空間WA内の空気を開口部7aを介して第2室B側へ送風するものである。ダンパー18Bは、開閉動作を行うことにより送風機8Bにおける第1室A及び第2室B間での空気の流通及び流通の遮断を行うものであり、開状態の時に空気を流通させ、閉状態のときに空気の流通を遮断する。ダンパー18A,18Bが閉状態の場合、第1室A及び第2室B間において空気は移動しない。
【0035】
送風機8A或いは送風機8Bを作動させて、第1室A及び第2室B間で空気を移動させることで、第1室Aの第1室内空間WA及び第2室Bの第2室内空間WBのうちの一方が減圧空間となり他方が加圧空間となる。加圧空間とは、室外空間WCの空気圧力よりも高い圧力を有する空間、減圧空間とは室外空間WCの空気圧力よりも低い圧力を有する空間である。
【0036】
加圧空間及び減圧空間は、それぞれ外気との圧力差の範囲が2〜100Paであることが好ましく、より好ましくは5〜50Pa、さらにより好ましくは5〜20Paである。圧力差が2Pa未満になると、加圧空間又は減圧空間と、外気との間での空気の移動量が少なくなり、高い換気効果が得られない。また、圧力差が100Paを超えると、第1室A及び第2室Bに設けられた扉の開閉が困難となる。
【0037】
送風制御部100は、送風機8A,8Bにおけるダンパー18A,18Bの開閉動作の制御、及び、ファン19A,19Bの作動の制御を行う。より詳細には、送風制御部100は、ダンパー18A及びファン19Aの作動を制御することによって送風機8Aを用いた第2室Bから第1室Aへの空気の送風の制御と、ダンパー18B及びファン19Bの作動を制御することによって送風機8Bを用いた第1室Aから第2室Bへの空気の送風の制御と、を切り替える。また、送風制御部100は、第1室A及び第2室Bの上下階層、室内空間の広さ、気候、及び、温度等に対応して、ファン19A,19Bの作動を制御することで送風機8A,8Bの送風量を可変に制御することができる。なお、送風制御部100は、送風機8A,8Bの近傍など、適宜の位置に設けられている。
【0038】
次に、送風制御部100による送風機8A,8Bの制御、及び、各部の状態の変化について説明する。まず、送風制御部100が、ダンパー18Aを開状態に制御すると共にファン19Aを作動させ、送風機8Aを用いた第2室Bから第1室Aへの空気の送風の制御を行っているものとする。この場合、
図1に示すように、第1室Aの第1室内空間WAが加圧空間となり、第1室内空間WA内の空気が無機発泡体2Aを通して室外空間WCに排気される。このとき、第1室内空間WA内の空気が持つ熱が無機発泡体2Aに熱交換され、無機発泡体2Aに蓄熱される。なお、
図1では、空気の移動を白抜き矢印で示し、熱の移動を波線矢印で示している。また、第1室Aの第1室内空間WA内には、送風機8Aの作動により減圧空間となる第2室Bの第2室内空間WBからの空気が導入される。
【0039】
一方、
図1に示すように、減圧空間となる第2室B側では、無機発泡体2Bを通して室外空間WCから外気が第2室内空間WB内に給気される。このとき、第2室Bの第2室内空間WBから無機発泡体2Bに伝熱されて蓄えられた熱が無機発泡体2Bを通気する空気に熱交換され、第2室Bの第2室内空間WBから無機発泡体2Bに伝達された熱を回収することができる。即ち、減圧空間となる第2室Bの第2室内空間WBにおいて、無機発泡体2Bを通して外気を取り入れることで、無機発泡体2Bを通気する外気を第2室内空間WB内の温度と同じ或いは同程度にすることができ、第2室Bの第2室内空間WB内の温度の変動を抑えることができる。これと同時に第2室Bでは、新鮮な外気が第2室Bの第2室内空間WB内に給気されることにより、高い空気質が維持される。
【0040】
加圧空間となる第1室の第1室内空間WAでは室内の空気の熱が無機発泡体2Aに熱交換され、無機発泡体2Aで蓄熱されるが、この状態が長時間続くと、無機発泡体2Aの熱容量を超えた熱が第1室A外に放出され、熱を損失してしまう。そこで、送風制御部100は、無機発泡体2Aによって蓄熱できる熱容量を超える前に、第1室A及び第2室B間での空気の送風の向きを切り替える。具体的には、送風制御部100は、ダンパー18Aを閉状態に制御すると共にファン19Aを停止させて、送風機8Aにおける送風を停止させる。そして、送風制御部100は、ダンパー18Bを開状態に制御すると共にファン19Bを作動させ、送風機8Bを用いた第1室Aから第2室Bへの空気の送風の制御を開始する。
【0041】
第1室A及び第2室B間での送風の向きを切り替えることで、第1室Aの第1室内空間WAが減圧空間に切り替わり、第2室Bの第2室内空間WBが加圧空間に切り替わる。これにより、上述の場合と同様に、減圧空間となる第1室Aの第1室内空間WA内には、無機発泡体2Aを介して外気が給気される。このとき、無機発泡体2Aに蓄えられた熱が無機発泡体2Aを通気する空気に熱交換され、熱交換された空気が第1室内空間WA内に給気される。また、加圧空間となる第2室Bの第2室内空間WBでは、第2室Bの第2室内空間WB内の空気が第2室B外へ排出されると共に、無機発泡体2Bを通気する空気の熱が無機発泡体2Bで熱交換され、無機発泡体2Bで蓄熱される。送風制御部100は、第1室A及び第2室B間での送風の向きを所定タイミングで繰り返し切り替える。
【0042】
なお、送風制御部100の制御によって、加圧空間と減圧空間とを切り替えるタイミングは、第1室A及び第2室Bの大きさ、外気と第1室A及び第2室B内との圧力差、無機発泡体2A,2Bの熱容量、無機発泡体2A,2Bを通気する空気量に依存するが、30秒以上1時間以内であることが好ましく、より好ましくは、1分以上30分以内であり、さらに好ましくは2分以上15分以内である。切り替える時間が30秒未満の場合、切り替え時間内に加圧空間及び減圧空間を形成することが困難となる。また、切り替える時間が1時間を越えると、加圧空間から室外空間WCに放出される熱が大きくなり、第1室A及び第2室B全体の熱回収能力が低下する。
【0043】
次に、
図1〜
図3に示す換気システム1を用いて換気を行った場合の実施例について説明する。ここで、下記の実施例で用いる無機発泡体2A,2Bについての各値の測定方法、無機発泡体2A,2Bの製造方法及び形状、側部有機断熱材3,4、有機断熱材5,6、及び、仕切り材7の形状を説明する。
【0044】
(熱伝導率)
低温板5℃、高温板35℃でJIS A1412の平板熱流計法に従い測定する。試験体の形状は、300mm×300mm、厚さ50mmであり、温度20℃、湿度60%の条件下で恒量になったものを用いる。
【0045】
(通気率)
円柱形のサンプル(断面積(S)=1962.5mm
2、長さ(L)=50mm)の側面をシールし、真空ポンプにより圧力を制御しながらサンプルの前後に圧力差をつけ、サンプル中を流れる空気の流量を測定し、式(1)により算出する。
通気率(m
2h
−1Pa
―1)=W×L/S/ΔP (1)
W:流量(m
3h
−1)
ΔP:圧力差(Pa)
なお試験体は、温度20℃、湿度60%の条件下で恒量になったものを用いる。
【0046】
(温度回収率)
換気システムの熱回収能力を算定するために、温度回収率を式(2)で算出する。
温度回収率(%)=(SA−OA)/(RA−OA)×100 (2)
SA:給気側の無機発泡体の室内側の平均表面温度(℃)
RA:排気側の室内の平均空気温度(℃)
OA:室外平均温度(℃)
【0047】
(無機発泡体の製造方法)
55℃の温水316.8重量部をミキサーに投入し、攪拌しながら微粉珪砂100重量部、二水石膏粉体8.8重量部、硫酸アルミニウム粉体7.7重量部を順次加える。スラリー温度が50℃になったところで、早強ポルトランドセメント粉体78.4重量部、生石灰粉体29.0重量部、粘度調製剤としてメチルセルロース0.019重量部、界面活性剤として「EK−45」(商品名、松本油脂株式会社製)0.038重量部を順次加えて2分間攪拌する。その後、発泡剤として、アルミニウム粉0.38重量部を加え、30秒間攪拌し、型枠に注入して発泡させ、予備硬化を行う。
【0048】
型枠にスラリーを流し込んだ直後から、水分の蒸発を防いだ状態で60℃に保持して、予備硬化させる。次いで、予備硬化体を脱型して、オートクレーブ中で飽和水蒸気雰囲気下、180℃で4時間、高温高圧養生を行った後、乾燥させて無機発泡体を得た。無機発泡体の通気率は、3.0×10
−2m
2/hPaであり、熱伝導率は0.069W/mKであった。
【0049】
得られた無機発泡体を長さ45cm、幅45cm、厚さ10cmに切断し、その無機発泡体を4枚、市販の気密用シール剤で貼り合わせることで、長さ90cm、幅90cm、厚さ10cmの無機発泡体2A,2Bを作製した。
【0050】
側部有機断熱材3,4、下部有機断熱材5、及び、上部有機断熱材6を、それぞれ、長さ110cm、幅110cm、厚さ10cmの板状に形成した。仕切り材7を、長さ90cm、幅90cm、厚さ1.2cmの板状に形成した。即ち、建物Yは、外側の一辺が110cmの立方体状に形成されている。
【0051】
また、本実施例に係る換気システム1において、
図4及び
図5に示すように、熱電対を用いて、測定点P1,P3A,P3B,P4A,P4Bの温度を測定した。測定点P1は、室外空間WCの温度測定点である。測定点P3Aは、無機発泡体2Aの室内側の表面温度測定点である。測定点P3Aは、無機発泡体2Aの継ぎ目を避け、中央位置付近とした。測定点P4Aは、第1室Aの第1室内空間WA内の温度測定点である。測定点P4Aは、第1室内空間WAの中心付近とした。同様に、測定点P3Bは、無機発泡体2Bの室内側の表面温度測定点である。測定点P3Bは、無機発泡体2Bの継ぎ目を避け、中央位置付近とした。測定点P4Bは、第2室Bの第2室内空間WB内の温度測定点である。測定点P4Aは、第2室内空間WBの中心付近とした。
【0052】
また、本実施例に係る換気システム1において、第1室内空間WAと室外空間WCとの圧力差を測定するために差圧計20Aを設けた。差圧計20Aは、上部有機断熱材6における第1室内空間WAの上部位置に設けられ、上部有機断熱材6に設けられた測定孔21Aを介して第1室内空間WAと接続されている。同様に、第2室内空間WBと室外空間WCとの圧力差を測定するために差圧計20Bを設けた。差圧計20Bは、差圧計20Aと同様に、上部有機断熱材6における第2室内空間WBの上部位置に設けられ、上部有機断熱材6に設けられた測定孔を介して第2室内空間WBと接続されている。
【0053】
また、本実施例に係る換気システム1において、第1室内空間WA及び第2室内空間WB内に、それぞれ20Wの電球22A,23A及び電球22B,23Bを設置した。これらの電球22A,23A,22B,23Bは、各室内の温度を一定に保つための熱源として用いられるものであり、各室内の温度(測定点P4A,P4Bでの温度)に基づいてオンオフが制御される。電球22A,23Aは下部有機断熱材5の上面近傍に設置し、電球22B,23Bは上部有機断熱材6の上面近傍に設置した。また、これらの電球22A,23A,22B,23B、及び、送風機8A,8Bが消費する電力量を測定した。
【0054】
また、本実施例に係る換気システム1において、送風機8Bのダンパー18Bを閉状態とし、送風機8Aのダンパー18Aを開状態としてファン19Aを作動させると、差圧計20A,20Bによる測定の結果、加圧空間となる第1室内空間WAは+9Pa(外気に対して+9Pa)、減圧空間となる第2室内空間WBは−7Pa(外気に対して−7Pa)となった。一方、送風機8Aのダンパー18Aを閉状態とし、送風機8Bのダンパー18Bを開状態としてファン19Bを作動させると、差圧計20A,20Bによる測定の結果、減圧空間となる第1室内空間WAは−7Pa、加圧空間となる第2室内空間WBは、+9Paとなった。
【0055】
以下の実施例では、第1室内空間WA及び第2室内空間WB内に、それぞれ腐った卵が入った箱を5分間設置したのちに箱を取り出し、建物Yを0℃(測定点P1の温度)の恒温空間である室外空間WC内に設置した。その後、第1室内空間WA内及び第2室内空間WB内の温度が20℃となるように、電球22A,23A,22B,23Bのオンオフを制御した。そして、第1室内空間WA内及び第2室内空間WB内の温度が20℃の恒温状態になった後、送風制御部100によって送風機8A,8Bの制御を行い、第1室内空間WAから第2室内空間WBへの送風、及び、第2室内空間WBから第1室内空間WAへの送風の切り替えを交互に繰り返し行った。送風機8A,8Bの作動の合計時間は120分とした。
【0056】
(実施例1)
実施例1では、上述の実施例に係る換気システム1において、第1室内空間WAから第2室内空間WBへの送風、及び、第2室内空間WBから第1室内空間WAへの送風の切り替えを、2分毎に繰り返し行った。以下に、電球22A,23A,22B,23B及び送風機8A,8Bが消費する電力量、給気側の無機発泡体2A,2Bの室内側の平均表面温度(測定点P3A,P3Bでの温度)、排気側の室内空間の平均空気温度(測定点P4A,P4Bでの温度)、室外平均温度(測定点P1での温度)、温度回収率、送風機8A,8Bを合計120分間作動させた後、第1室内空間WA内及び第2室内空間WB内の臭いを鼻で嗅いだ場合の腐卵臭の有無、を示す。なお、ここでの温度は、平均値を用いた。
【0057】
電球及び送風機の消費電力:57.3Wh
給気側の無機発泡体の室内側の平均表面温度:18.7℃
排気側の室内空間の平均空気温度:19.6℃
室外平均温度:1.3℃
温度回収率:95.1%
腐卵臭の有無:なし
【0058】
(実施例2)
実施例2では、上述の実施例に係る換気システム1において、第1室内空間WAから第2室内空間WBへの送風、及び、第2室内空間WBから第1室内空間WAへの送風の切り替えを、5分毎に繰り返し行った。以下に、測定結果、及び、温度回収率等を示す。
【0059】
電球及び送風機の消費電力:57.1Wh
給気側の無機発泡体の室内側の平均表面温度:18.8℃
排気側の室内空間の平均空気温度:19.8℃
室外平均温度:1.4℃
温度回収率:94.6%
腐卵臭の有無:なし
【0060】
(実施例3)
実施例3では、上述の実施例に係る換気システム1において、第1室内空間WAから第2室内空間WBへの送風、及び、第2室内空間WBから第1室内空間WAへの送風の切り替えを、10分毎に繰り返し行った。以下に、測定結果、及び、温度回収率等を示す。
【0061】
電球及び送風機の消費電力:57.6Wh
給気側の無機発泡体の室内側の平均表面温度:18.6℃
排気側の室内空間の平均空気温度:19.7℃
室外平均温度:1.4℃
温度回収率:94.0%
腐卵臭の有無:なし
【0062】
(比較例1)
比較例1では、上述の実施例1に係る換気システム1において、送風の切り替えを行わずに送風機8Aのみを作動させ続けて、第2室内空間WBから第1室内空間WAへの送風のみを行った。その結果、送風の開始から120分後においても第1室内空間WA内及び第2室内空間WB内の空気温度は設定温度の20℃を維持できずに下がり続けたため、運転から7時間以上経過して定常状態となったときに室内温度を測定すると11.5℃であった。設定温度の20℃に到達しないため、温度回収率の計算はできなかった。電球22A,23A,22B,23B及び送風機8Aが消費する電力量は82.5Whであった。送風機8Aを合計120分間作動させた後、第1室内空間WA内及び第2室内空間WB内の臭いを鼻で嗅いだところ、腐卵臭は感じなかった。
【0063】
(比較例2)
比較例2では、上述の実施例1に係る換気システム1において、送風機8A,8Bを作動させず、送風を行わなかった。その結果、第1室内空間WA内及び第2室内空間WB内の空気温度は20℃を維持しており、電球22A,23A,22B,23Bが消費する電力量は53.6Whであった。試験開始から120分経過後、第1室内空間WA内及び第2室内空間WB内の臭いを鼻で嗅いだところ、痛烈な腐卵臭が感じられた。
【0064】
実施例1〜3に示すように、第1室内空間WA及び第2室内空間WB間での送風の向きを切り替えることで、94.0%以上の温度回収率を得ることができた。また、実施例1〜3に示すように、送風機8A,8Bの作動終了後、第1室内空間WA内及び第2室内空間WB内で腐卵臭がせず、第1室内空間WA内及び第2室内空間WB内の換気が適切に行われていた。
【0065】
以上のように、本実施形態に係る換気システム1は、送風機8A,8Bにおける送風の向きを切り替えることで、第1室内空間WAを加圧空間とし第2室内空間WBを減圧空間とすることと、第1室内空間WAを減圧空間とし第2室内空間WBを加圧空間とすることと、を交互に切り替えることができる。このため、加圧空間側では、無機発泡体2A,2Bを介して排気しつつ排気される空気の熱を無機発泡体2A,2Bに蓄熱させることができる。また、減圧空間側では、無機発泡体2A,2Bを介して給気しつつ、無機発泡体2A,2Bに蓄えられた熱を給気する空気に熱交換することができる。これにより、減圧空間内の温度の変動を抑えることができる。これと同時に減圧空間では、新鮮な外気が室内に導入されることにより、高い空気質を維持することができる。
【0066】
また、無機発泡体2A,2Bに蓄えられる熱が、加圧空間側における無機発泡体2A,2Bの熱容量を超える前に、送風制御部100が送風機8A,8Bにおける送風の向きを切り替える。これにより、加圧空間側において熱が室外に放出されることがなく、第1室A及び第2室B全体の熱回収能力を高めることができる。このように、加圧空間と減圧空間を切り替えることにより、いずれの空間でも新鮮な外気を室内に入れることができ、第1室Aの第1室内空間WA及び第2室Bの第2室内空間WBにおいて高い空気質を維持することもできる。
【0067】
また、無機発泡体2A,2Bの材料である無機材料は親水性が高いため、湿気を材料内部に吸着等によって保持することが可能である。無機発泡体2A,2Bを通して、第1室内空間WA及び第2室内空間WBから室外空間WCへ、室外空間WCから第1室内空間WA及び第2室内空間WB内に空気が移動する際に湿気も移動するため、無機発泡体2A,2B内部で結露が発生することを防ぐこともできる。
【0068】
また、無機発泡体2A,2Bは、発泡体という複数の微小空間を有する形状に形成されていることにより、材料自身が軽くなり、またパネル形状を得ることも可能になる。そのため、ハンドリング性及び施工性が、繊維質材料と比較して格段に向上する。さらに、無機発泡体2A,2Bが軽量であることから、建築物の重量低減につながって耐震性も増す。さらに、無機発泡体2A,2Bを外気が通気する際、外気に含まれる汚染物質が無機発泡体2A,2Bで除去され、フィルターの効果も期待できる。
【0069】
以上のように、ビル、住宅、倉庫などの建物Yの第1室A内及び第2室B内において、優れた断熱性能による省エネルギー化が実現でき、第1室A内及び第2室B内への新鮮な空気の導入による空気質の改善と同時に、排気時の熱損失の低減が実現できる。
【0070】
また、第1室Aと第2室Bとは隣接し、第1室Aと第2室Bとを区画する仕切り材7に送風機8A,8Bを設けた。この場合には、仕切り材7に設けられた開口部7aを介して第1室内空間WA及び第2室内空間WB間での送風を容易に行うことができる。また、第1室Aと第2室Bとが隣接していることにより、一方の室内から他方の室内へ空気を移動させる際の熱損失を低減することができる。
【0071】
また、無機発泡体2A及び無機発泡体2Bの通気率を5×10
−4〜1m
2h
−1Pa
−1とし、かつ、熱伝導率を0.02〜0.1W/mKとすることで、最適な換気効果、及び熱回収効果を得ることができる。
【0072】
また、送風制御部100は、送風機8A,8Bの送風量を可変に制御することで、第1室A及び第2室Bの上下階層、室内空間の広さ、気候、及び、温度等に対応して、無機発泡体2A,2Bを通して給排気できる空気量を所定の値に調節し、室内全体の熱回収率を向上させることができる。
【0073】
また、無機発泡体2A及び無機発泡体2Bの熱容量を、2〜40Kcal/℃とすることで、最適な熱回収効果を得ることができる。
【0074】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、第1室Aと第2室Bとが隣接していなくてもよい。この場合、たとえば、第1室Aと第2室Bとの間をつなぐ送風用配管等を通じて第1室内空間WA及び第2室内空間WB間での送風を行うことができる。
【0075】
また、送風機8A,8Bの構成は、実施形態において開示した構成に限定されず、他の構成であってもよい。例えば、送風の向きを切り替え可能な送風機であれば、実施形態で説明したように2台の送風機8A,8Bを用いる必要がなく、1台の送風機のみを用いてもよい。また、建物Yにおいて、無機発泡体2A,2Bの外側面が室外空間WCに通じていれば、側部有機断熱材3,4に隣接して他の空間が設けられていてもよい。