【実施例】
【0016】
図1は、変形可能な反射面を備えた従来技術によるパラボラアンテナ反射器の一例の断面図である。アンテナ反射器10は、固定シャーシ11、柔軟膜12、および変形位置と呼ばれる異なる位置121で柔軟膜12の変形を可能にする起動システム13を含んでいる。柔軟膜12は、外周がシャーシ11に固定されている。柔軟膜12は、対象アプリケーションの関数として選択された所定の周波数帯域の電磁波を反射すべく適合されたほぼ放物面状の反射面122を含んでいる。反射面122は、例えば柔軟膜12の表面に配置された金属粒子により形成されている。膜12の柔軟性は、分節(articulations)により、または弾性的に変形可能な材料により得られる。柔軟膜12の材料は、例えばシリコンを含んでいる。起動システム13は、柔軟膜12の下、すなわち反射面122の反対側でシャーシ11に固定された支持部131、および一組の押圧要素132を含んでいる。起動システム13は、柔軟膜12の下に分散された約100個の押圧要素132を含んでいてもよい。各押圧要素132は、ロッド1321、およびロッド1321を並進移動させるアクチュエータ1322を含んでいる。各ロッド1321の自由端は、柔軟膜12の変形位置121と接触する。ロッド1321の自由端と変形位置121との間がボールジョイント接続されていてもよい。アクチュエータ1322は支持部131に固定されている。アクチュエータ1322は、支持部131に固定される。アクチュエータ1322は、ボールジョイント接続により支持部131に固定されてもよい。
図1に押圧要素132をシリンダ形式で示す。この場合、各ロッド1321は付随するシリンダのロッドに対応してもよい。押圧要素132は、電気シリンダ、ステッパモーター、または圧電モーターであってもよい。アクチュエータ1322は、変形位置121のレベルで柔軟膜12を変形させるように制御し得る。
【0017】
図2は、本発明の起動システムを含む変形可能な反射面を備えた反射器の一例の断面図である。反射器は、特定用途に適した放物線状または他の任意の形状をなしていてもよい。反射器は、通信衛星のアンテナに備えていてもよい。また、光学システムにおける鏡として用いることもできる。反射器20は、その起動システムにより、
図1に関して述べた反射器10とは基本的に区別される。反射器20は図示していない固定シャーシ、柔軟膜12、および異なる変形位置121で柔軟膜12の変形を可能にする起動システム23を含んでいる。起動システム23は、支持部を形成する固定構造231、選択装置232、アクチュエータ装置233、および一組の変形装置234を含んでいる。
図2において、見やすさのため、1個の変形装置234だけを示す。それにもかかわらず本発明は、起動システムが複数の変形装置、例えばそのような装置を数百個の含む場合に特に利点がある。各変形装置234は例えば、第1のプーリー2341、第2のプーリー2342、プーリー2341と2342を接続するベルト2343、ナット2344、およびナット2344と協働するねじ付きロッド2345を含んでいる。第1のプーリー2341は、第1の軸X
1の回りをピボット回転すべく固定構造231に接続されている。ピボット接続は、例えばベアリング2346により行われる。第2のプーリー2342は、第1の軸X
1にほぼ平行な第2の軸X
2の回りをピボット回転すべく固定構造231に接続されている。第1の実施形態において、第2のプーリー2342は、軸X
2の回りをピボット回転すべく固定構造231に接続されたナット2344に接続されていて連動的に回転する。ナット2344は、例えば、第2のプーリー2342用のベアリングを形成する。ねじ付きロッド2345の一端は、柔軟膜12に接続されて連動的に並進し、且つ軸X
2の回りに回転すべく柔軟膜12の変形位置121に固定されている。第2の実施形態において、第2のプーリー2342はねじ付きロッド2345に回転可能に接続されている。ナット2344は固定構造231に接続されていて連動的に軸X
2の回りに回転する。ねじ付きロッド2345の端部は、柔軟膜12に接続されていて連動的に並進移動し、且つ軸X
2の回りを回転するように変形位置121に固定されている。ねじ付きロッド2345の端は例えば、軸X
2の回りのピボット接続により変形位置121に接続されている。各実施形態において、軸X
2の回りの第2のプーリー2342の回転により、第2のプーリー2342の回転方向に応じてある方向または反対方向へ、当該軸に沿ってねじ付きロッド2345を並進移動させる。従って柔軟膜12は局所的に変形する。
【0018】
起動装置233は、各変形装置234の第1のプーリー2341および、ベルト2343を介して第2のプーリー2342を回転可能にする。起動装置233は、ステッパモーターまたは圧電モーター等のアクチュエータ2331、およびアクチュエータ2331により軸X
1にほぼ平行な軸の回りに回転させることができる駆動部2332を含んでいる。駆動部2332は、第1のプーリー2341の各々に接続可能なように構成されている。例えば、駆動部2332は、平坦なネジ回し型の先端を含んでいて、第1のプーリー2341は各々当該先端を受け入れるべく適合されたインプリントを含んでいる。この種の先端により、軸X
1に沿った並進移動を必要とせずに選択装置232による起動装置233の回転時に駆動部2332と第1のプーリー2341のインプリントの係合および解放が可能になる。駆動部2332は次いで、整数回数分の半回転を実現しなければならない。
【0019】
選択装置232により、選択された変形装置234の第1のプーリー2341を起動装置233が回転させることが可能なように、起動装置233を各変形装置234の方へ移動可能にする。特定の一実施形態において、選択装置232は、電気モーター2321および支持アーム2322を含んでいる。電気モーター2321は、支持アーム2322を軸X
1およびX
2にほぼ平行な第3の軸X
3の回りに回転させるべく適合されている。起動装置233は支持アーム2322に固定されている。この特定の実施形態において、各変形装置234の第1のプーリー2341は、固定構造231に環状に載置されている。起動装置233は従って、支持アーム2322の軸X
3回りの回転により各プーリー2341に向き合わせてもよく、変形装置234を連続的に起動してもよい。プーリー2341の配置は起動装置233の円運動により制約されているが、第2のプーリー2342はベルト2343のおかげで固定構造231上に自由に分散させ得る。
【0020】
起動システム23について、ベルトおよびプーリーの系による起動装置233と各種のねじ付きロッド2345の間における回転運動の伝達を考慮しながら
図2を参照して述べてきた。しかし、伝達はチェーンまたはギアによっても同等に実行し得る。
【0021】
ねじ付きロッド2345の両端と柔軟膜12の機械的接続は、
図1、2に示す実施形態と同様に、ねじ付きロッド2345と膜12の間での軸X
2に沿った並進移動の自由度を下げた接続であってもよい。それらは例えば、内部接続またはボールジョイント接続である。
図3は、ロッド2345の端部と柔軟膜12の間に生じ得る機械的接続の一例の断面図である。接続部30は、一端がねじ付きロッド2345の終端に固定され、他端が柔軟膜12の変形位置121に固定された第1の弾性要素31を含んでいる。接続部30は同様に、一端が起動システム23の固定構造231に固定され、他端が変形位置121の近傍で柔軟膜12に固定された第2の弾性要素32を含んでいてもよい。弾性要素31、32は、軸X
2に沿って弾性的に変形することができる。
図3の実施形態において、弾性要素31、32は同軸コイルスプリングである。第2のコイルスプリング32の内径は、第1のコイルスプリング31が自由に通過できるようコイルスプリング31の外径より大きい。各弾性要素は、1個以上のばねを直列または並列に含んでいてもよい。第1の弾性要素31の剛性k
1は第2の弾性要素32の剛性k
2より大幅に低いことが好都合である。接続部30は従って、柔軟膜12の変形を制限する効果を有する差分剛性系を形成する。より正確には、ねじ付きロッド2345が軸X
2に沿って所与の距離を移動するために、変形位置121は当該軸に沿ってより短い距離を移動する。従って、柔軟膜12をより高い精度で変形させることが可能である。ねじ付きロッド2345の移動を減らす他の解決策も考えられる。例えば、第2のプーリー2342と変形位置121との間に減速ギヤまたはプロニー差動ねじとしても知られるマイクロメーターねじを追加することが可能である。