【実施例】
【0034】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、これは単に例示であって、本発明を制限するものではない。
【0035】
1.リチウムランタンチタン酸化物焼結体の評価方法
(組成式のx、a、bの決定方法)
リチウムランタンチタン酸化物焼結体とNa
2O
2とNaOHをジルコニア坩堝に入れて、加熱して溶融する。その後放冷し、水とHClを加えて溶解する。溶解した液分を分取し、Tiについてはアルミニウム還元−硫酸アンモニウム鉄(III)滴定法により、その他の元素ついてはICP発光分光法により定量を行い、La
x−aM
1aLi
2−3xTi
1−bM
2bO
3、La
xLi
2−3x−aM
1aTi
1−bM
2bO
3、(La
xLi
2−3x)
1−aM
1aTi
1−bM
2bO
3、La
x−aM
1aLi
2−3xTiO
3−2a、La
x−aM
1aLi
2−3xTiO
3−a、La
xLi
2−3xTi
1−bM
2bO
3−3b、La
xLi
2−3xTi
1−bM
2bO
3−2b、La
xLi
2−3xTi
1−bM
2bO
3−bのx、a、bの値を決定した。
【0036】
(Clの定量方法)
混合原料粉、チタン化合物を分析用セルに直接入れ、その試料表面を波長分散型蛍光X線装置 型式名:LIX3000(株式会社リガク製)を用いて定性・定量分析を行い、Cl濃度を算出した。
【0037】
(リチウムイオン伝導度測定方法)
板状(15mm×15mm×2.5mm)のリチウムランタンチタン酸化物焼結体の試料表面を#150のダイヤモンド砥石で研磨を行い、仕上げに#600のダイヤモンド砥石で研磨を行った。10mm×10mmの大きさに切り取った2枚のろ紙に、1Mの塩化リチウム水溶液を染み込ませ、板状のリチウムランタンチタン酸化物焼結体を挟むように貼り付けた。インピーダンスアナライザー 型式名:4192A(ヒューレットパッカード社製)を用いて測定周波数5Hz〜13MHz、測定温度27℃でコール・コールプロットを測定し、測定データから粒内、粒界の抵抗値を読み取り、リチウムイオン伝導度を以下の計算式より求めた。
【0038】
リチウムイオン伝導度(Scm
−1)=1/(R
b+R
gb)×(L/S)
R
b:粒内の抵抗値(Ω)
R
gb:粒界の抵抗値(Ω)
L:板状のリチウムランタンチタン酸化物の厚み(cm)
S:電極の面積(cm
2)
【0039】
(単相化率の測定方法)
得られたリチウムランタンチタン酸化物焼結体をアルミナ製の乳鉢で粉砕して測定試料とし、X線回折装置(X線源:CuKα線) 型式名:X’Part−ProMPD(パナリティカル社製)を用いて測定した。得られたX線回折パターンより、リチウムランタンチタン酸化物焼結体と不純物のメインピークの高さから、単相化率を以下の計算式により求めた。
【0040】
単相化率(%)=I/(I+S)×100
I:リチウムランタンチタン酸化物の2θ=0〜50°における最強ピークの高さ
S:全ての不純物のメインピークの高さの和
【0041】
[実施例1]
1.原料
原料として炭酸リチウム(Sociedad
Quimica y Minera de Chile S.A.製、純度99.2%以上)、酸化ランタン(宣興新威利成稀土有限公司製、純度99.99%以上)、酸化チタン(東邦チタニウム株式会社製、純度99.99%以上)を使用した。ぞれぞれの原料の重量と酸化チタンのCl濃度を表1に示し、炭酸リチウムの過剰添加量は7.5重量%とした。
【0042】
2.一次粉砕
ウレタンライニングボールミル(容量200L)に、秤量した原料、アルミナメディア(径3mm)200kg、イオン交換水35L及びエタノール35L投入し、粉砕・混合30分行った後、15時間ボールミル内で放置し再度30分粉砕を行い、一次粉砕粉を得た。
【0043】
3.一次乾燥
一次粉砕粉をスプレードライヤーにより乾燥を行い、一次乾燥粉を得た。スプレードライヤーの条件は以下である。
原料供給量:10〜30L/h
熱風入口温度:150〜250℃
排風温度:90〜120℃
また、一次乾燥粉のCl濃度を表1に示す。
【0044】
4.仮焼
一次乾燥粉をコウジライトムライト材質の匣鉢にいれ、電気炉にて仮焼を行い、仮焼粉を得た。仮焼条件は、大気中、仮焼温度1150℃、仮焼時間2時間にて行った。
【0045】
5.二次粉砕
ウレタンライニングボールミル(容量200L)に、仮焼粉70kg、ジルコニアメディア(径3mm)200kg、イオン交換水60L、分散剤(ポリアクリル酸アンモニウム塩)700gを投入し、粉砕を6時間行った。その後、アクリル樹脂系バインダー4.5kgを投入し、15分間混合を行い、二次粉砕粉を得た。
【0046】
6.二次乾燥
二次粉砕粉をスプレードライヤーにより乾燥し、二次乾燥粉を得た。スプレードライヤーの条件は以下である。
原料供給量:10〜30L/h
熱風入口温度:200〜250℃
排風温度:90〜120℃
【0047】
7.成形
二次乾燥粉15gを、金型成形(成形圧力・1000kg/cm
2)により40mm×40mm×厚み3mmの平板状に成形し、成形体を得た。
【0048】
8.焼結
成形体を電気炉にて、大気中で1100℃、2時間で一次焼結を行った後、1460℃、6時間にて二次焼結を行い、リチウムランタンチタン酸化物焼結体を得た。得られたリチウムランタンチタン酸化物焼結体の単相化率、リチウムイオン伝導度を表2に示す。
【0049】
[実施例2]
「1.原料」の酸化チタン(東邦チタニウム株式会社製、純度99.99%以上)を100Lの純水で水洗した後、乾燥した酸化チタン(東邦チタニウム株式会社製、純度99.99%以上)に変更した以外は実施例1と同じ方法でリチウムランタンチタン酸化物焼結体を作製した。得られたリチウムランタンチタン酸化物焼結体の単相化率、リチウムイオン伝導度を表2に示す。
【0050】
[実施例3]
「2.一次粉砕」で、原料と共に、10重量%の塩酸を0.18kg投入した以外は実施例1と同じ方法でリチウムランタンチタン酸化物焼結体を作製した。得られたリチウムランタンチタン酸化物焼結体の単相化率、リチウムイオン伝導度を表2に示す。
【0051】
[実施例4]
実施例1のそれぞれの原料の重量を表1に示したとおりに変更した以外は、実施例1と同じ方法でリチウムランタンチタン酸化物焼結体を作製した。得られたリチウムランタンチタン酸化物焼結体の単相化率、リチウムイオン伝導度を表2に示す。
【0052】
[実施例5]
実施例1のそれぞれの原料の重量を表1に示したとおりに変更した以外は、実施例1と同じ方法でリチウムランタンチタン酸化物焼結体を作製した。得られたリチウムランタンチタン酸化物焼結体の単相化率、リチウムイオン伝導度を表2に示す。
【0053】
[実施例6]
実施例1のそれぞれの原料の重量を表1に示したとおりに変更し、さらにSrCO
3を3.751kg添加した以外は、実施例1と同じ方法でリチウムランタンチタン酸化物焼結体を作製した。得られたリチウムランタンチタン酸化物焼結体の単相化率、リチウムイオン伝導度を表2に示す。
【0054】
[実施例7]
実施例1のそれぞれの原料の重量を表1に示したとおりに変更し、さらにSrCO
3を11.25kg添加した以外は、実施例1と同じ方法でリチウムランタンチタン酸化物焼結体を作製した。得られたリチウムランタンチタン酸化物焼結体の単相化率、リチウムイオン伝導度を表2に示す。
【0055】
[実施例8]
実施例1のそれぞれの原料の重量を表1に示したとおりに変更し、さらにFe
2O
3を2.029kg添加した以外は、実施例1と同じ方法でリチウムランタンチタン酸化物焼結体を作製した。得られたリチウムランタンチタン酸化物焼結体の単相化率、リチウムイオン伝導度を表2に示す。
【0056】
[実施例9]
実施例1のそれぞれの原料の重量を表1に示したとおりに変更し、さらにFe
2O
3を6.087kg添加した以外は、実施例1と同じ方法でリチウムランタンチタン酸化物焼結体を作製した。得られたリチウムランタンチタン酸化物焼結体の単相化率、リチウムイオン伝導度を表2に示す。
【0057】
[実施例10]
実施例1のそれぞれの原料の重量を表1に示したとおりに変更し、さらにSrCO
3を37.14kg、Ta
2O
5を56.13kg添加した以外は、実施例1と同じ方法でリチウムランタンチタン酸化物焼結体を作製した。得られたリチウムランタンチタン酸化物焼結体の単相化率、リチウムイオン伝導度を表2に示す。
【0058】
[実施例11]
実施例1のそれぞれの原料の重量を表1に示したとおりに変更し、さらにSrCO
3を25.88kg、Ta
2O
5を56.13kg添加した以外は、実施例1と同じ方法でリチウムランタンチタン酸化物焼結体を作製した。得られたリチウムランタンチタン酸化物焼結体の単相化率、リチウムイオン伝導度を表2に示す。
【0059】
[比較例1]
「2.一次粉砕」で、原料と共に、10重量%の塩酸を0.44kg投入した以外は実施例1と同じ方法でリチウムランタンチタン酸化物焼結体を作製した。得られたリチウムランタンチタン酸化物焼結体の単相化率、リチウムイオン伝導度を表2に示す。
【0060】
[比較例2]
「2.一次粉砕」で、原料と共に、10重量%の塩酸を0.44kg投入した以外は実施例5と同じ方法でリチウムランタンチタン酸化物焼結体を作製した。得られたリチウムランタンチタン酸化物焼結体の単相化率、リチウムイオン伝導度を表2に示す。
【0061】
[比較例3]
「2.一次粉砕」で、原料と共に、10重量%の塩酸を0.44kg投入した以外は実施例7と同じ方法でリチウムランタンチタン酸化物焼結体を作製した。得られたリチウムランタンチタン酸化物焼結体の単相化率、リチウムイオン伝導度を表2に示す。
【0062】
[比較例4]
「2.一次粉砕」で、原料と共に、10重量%の塩酸を0.44kg投入した以外は実施例9と同じ方法でリチウムランタンチタン酸化物焼結体を作製した。得られたリチウムランタンチタン酸化物焼結体の単相化率、リチウムイオン伝導度を表2に示す。
【0063】
【表1】
【0064】
【表2】
【0065】
一次乾燥粉(混合粉)におけるClの濃度が550ppmを上回る比較例1〜4では、いずれもリチウムイオン伝導度が3.0×10
−4Scm
−1未満であった。これに対して、一次乾燥粉(混合粉)におけるClの濃度が550ppm以下の実施例1〜11では、リチウムイオン伝導度が3.0×10
−4Scm
−1以上であった。