(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5998423
(24)【登録日】2016年9月9日
(45)【発行日】2016年9月28日
(54)【発明の名称】減速機
(51)【国際特許分類】
F16H 1/32 20060101AFI20160915BHJP
【FI】
F16H1/32 A
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-278052(P2012-278052)
(22)【出願日】2012年12月20日
(65)【公開番号】特開2014-122651(P2014-122651A)
(43)【公開日】2014年7月3日
【審査請求日】2015年10月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005197
【氏名又は名称】株式会社不二越
(74)【代理人】
【識別番号】100192614
【弁理士】
【氏名又は名称】梅本 幸作
(74)【代理人】
【識別番号】100158355
【弁理士】
【氏名又は名称】岡島 明子
(72)【発明者】
【氏名】井田 信也
【審査官】
藤村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−187945(JP,A)
【文献】
特開2006−200557(JP,A)
【文献】
特開2000−065162(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータの入力軸に係合して回転するとともに、その外周部分に偏心円筒部が設けられた中空円筒状のクランク軸と、
前記クランク軸の偏心円筒部の軸方向を内輪側で挟持するように設けられた第一及び第二軸受と、
前記第一及び第二軸受の外輪がそれぞれ嵌合された第一及び第二キャリアと、
前記第一及び第二キャリアの外周部に内輪がそれぞれ嵌合された第三及び第四軸受と、
前記第三及び第四軸受の外輪側で挟持されて相対回転可能にされたフレームと、
前記フレームの内側に設けられ内歯と、
前記偏心円筒部に偏心用軸受を介して係合し、前記クランク軸の回転に伴って偏心運動する前記内歯と噛み合うようにされた外歯が設けられた1以上の歯付き円盤と、
前記歯付き円盤に複数設けられた出力ピン開口穴に挿通され前記歯付き円盤を公転運動可能に支持し、かつ前記歯付き円盤の自転運動を取り出す出力ピンと、
前記歯付き円盤に複数設けられた繭状穴を貫通する薄板円弧断面状の脚部と、を備え、
前記出力ピンと、前記脚部とが前記第一及び第二キャリア間に固定された減速機であって、
前記脚部は前記第一キャリアと一体に形成され、前記複数の脚部の先端部からなる外周をねじ外径とする外ねじが前記脚部の先端にそれぞれ設けられ、前記複数の外ねじが前記第二キャリアを貫通して突出し、前記複数の外ねじに螺合する内ねじ部材により、前記第一キャリアに前記第二キャリアを挟持固定するようにされていることを特徴とする減速機。
【請求項2】
前記出力ピン開口穴と、前記繭状穴とは、軸方向からみて円周方向に交互に配置されていることを特徴とする請求項1記載の減速機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空クランク軸からの入力を内外歯車の相対回転差を出力として取り出す減速機、好ましくはロボットの関節部分に使用される減速機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ロボット用の減速機においては、限られた外径サイズの中で減速機内部を中空として、その中空部にロボット制御用等の配線を通すことによって、スペースの有効活用を図っている。さらに、ロボットの小型・軽量化及びロボット制御用の配線の数の増大に伴い、減速機の大きさをそのままにして、中空部の穴径を大きくしたい。
【0003】
そこで、特許文献1においては、内歯車に噛み合う歯付き円盤(外歯車)が偏心駆動されるように設けられた中空円筒状のクランク軸(中空軸)の偏心円筒部(カム)の軸方向を円錐ころ軸受で挟持する。さらに、テーパころ軸受の外輪を第一及び第二キャリアで挟持する。また、第一及び第二キャリアの外周と内歯車が設けられたフレーム(ハウジング)との間もテーパころ軸受で軸方向に挟持している。これにより、剛性を維持し、歯付き円盤を公転可能に支持する出力ピンの径を細くすることにより、軸の穴径を大きくしている。なお、出力ピンは第一及び第二キャリア間にボルトで固定されている。
【0004】
一方、外歯車が遊星歯車であって、中空円筒状クランク軸ではないが、特許文献2においては、薄板円弧状断面の脚部によりキャリアを結合している。また、特許文献3の第12図の第5実施例においては、中空円筒状クランク軸ではなく、出力ピン側を偏心させたものであるが、複数の出力ピンの間に繭状の穴と、穴を貫通する繭状の脚部を設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−65162号公報
【特許文献2】特開2002−21946号公報
【特許文献3】実公平4−29986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、かかる弧状断面の脚部を特許文献1のものに追加することにより、中空穴の径方向の増大を図ることが可能と考えられる。しかし、ロボットの関節用に使用する場合は、頻繁な正逆回転、加減速、停止等が行われる。このため非常に高い回転精度が要求され、また、ガタやバックラッシを少なく、剛性を高くしたい。しかし、特許文献2のものでは、外歯車が遊星歯車であり、軸方向の寸法規制はあまり必要としない。このため、脚部とキャリアとの固定は溶接、かしめ等であり、組付け精度、特に軸方向の軸受の予圧管理はできず、剛性も低いという問題があった。また、特許文献3のものでは、軸方向の精度を高くできるが弧状あるいは繭状断面の脚部とキャリアとの固定をボルトで行っているので、径方向の寸法を小さくすることができず、クランク軸の中空穴を大きくできないという問題があった。
【0007】
本発明の課題は、かかる問題点に鑑みて、中空クランク軸からの入力を内外歯車の相対回転差を出力として取り出す減速機のキャリアの脚部を円弧状断面とし、中空クランク軸の中空穴径を拡大し、さらには、軸方向精度を確保し、かつ軸方向予圧管理を可能とし、剛性の高い減速機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明においては、モータの入力軸に係合して回転するとともに、その外周部分に偏心円筒部が設けられた中空円筒状のクランク軸と、前記クランク軸の偏心円筒部の軸方向を内輪側で挟持するように設けられた第一及び第二軸受と、前記第一及び第二軸受の外輪がそれぞれ嵌合された第一及び第二キャリアと、前記第一及び第二キャリアの外周部に内輪がそれぞれ嵌合された第三及び第四軸受と、前記第三及び第四軸受の外輪側で挟持されて相対回転可能にされたフレームと、前記フレームの内側に設けられ内歯と、前記偏心円筒部に偏心用軸受を介して係合し、前記クランク軸の回転に伴って偏心運動する前記内歯と噛み合うようにされた外歯が設けられた1以上の歯付き円盤と、前記歯付き円盤に複数設けられた出力ピン開口穴に挿通され前記歯付き円盤を公転運動可能に支持し、かつ前記歯付き円盤の自転運動を取り出す出力ピンと、前記歯付き円盤に複数設けられた繭状穴を貫通する薄板円弧断面状の脚部と、を備え、前記出力ピンと、前記脚部とが前記第一及び第二キャリア間に固定された減速機であって、
前記脚部は前記第一キャリアと一体に形成され、前記複数の脚部の先端部からなる外周をねじ外径とする外ねじが前記脚部の先端にそれぞれ設けられ、前記複数の外ねじが前記第二キャリアを貫通して突出し、前記複数の外ねじに螺合する内ねじ部材により、前記第一キャリアに前記第二キャリアを挟持固定するようにされている減速機を提供することにより前述した課題を解決した。
【0009】
即ち、第一キャリアの薄板円弧断面状の脚部の先端の外周面に設けられた雄ねじ部を内ねじ部材(ナット)で螺着することにより、第二キャリアを第一キャリアと内ねじ部材とで挟持固定する。これにより、第一キャリアと第二キャリアとを軸方向に互いに近づく方向に付勢しながら、一体固定される。同時に第一乃至第四軸受を挟持して予圧を与える。なお、内ねじの回り止めや、脚部側に段差を設けてストッパとすることにより締め付け位置を規制できる。
【0010】
また、請求項2に記載の発明においては、前記出力ピン開口穴と、前記繭状穴とは、軸方向からみて円周方向に交互に配置されている減速機とした。出力ピン開口穴と、繭状穴の位置は適宜配置できるが、円周状に交互に配置することにより、径方向厚みを小さくできる。
【発明の効果】
【0011】
本発明においては、クランク軸からの入力を内外歯車の相対回転差を出力として取り出す減速機において、第一キャリアの薄板円弧断面状の脚部と内ねじ部材(ナット)とで、第二キャリアを挟持固定し、第一キャリアと第二キャリアとを軸方向に互いに近づく方向に付勢し、第一乃至第四軸受を挟持して予圧を与えるようにしたので、軸方向精度を確保し、かつ軸方向予圧管理が可能であり、さらには剛性の高い減速機を提供するものとなった。また、従来の減速機のように、キャリア及び脚部にボルト穴や雌ねじを形成しないので、第1及び第2のキャリアの肉厚も薄くでき、それに伴って中空クランク軸の中空穴の内径を大きくすることができる。
【0012】
また、請求項2に記載の発明においては、出力ピン開口穴と、繭状穴の位置を円周状に交互に配置し径方向厚みを小さくできるので、第1及び第2のキャリアの肉厚も薄くでき、中空クランク軸の中空穴の内径をさらに大きくすることができる。
【0013】
なお、締結手段は、軸方向の付勢が可能な弾性体を介して、例えばスナップリング、キー、ピン等を用いてもよいが、本発明の雄ねじとナットの組合せが構造も簡単で精度も確保し易く、取扱も容易である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施の形態を示す減速機が組み込まれたロボットの関節部分の縦断面図である。
【
図2】
図1のキャリア及び軸受部の部分拡大図である。
【
図4】本発明の実施の形態を示す(a)は第一キャリアの左側面図、(b)は正面図、(c)は右側面図である。
【
図5】本発明の実施の形態を示す(a)は第二キャリアの左側面図、(b)は正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。本実施の形態においては、クランク軸が減速機の軸心に配置され、モータの入力軸が軸心からオフセットされた偏心位置に配置されたセンタークランク式偏心揺動型減速機(以下、単に「減速機」と記載する。)の例について説明する。
【0016】
図1に示すように、図示しないロボットのアーム本体及びモータが接続固定される基台10と、基台10にキャリア13を介して連結される減速機100と、減速機のフレーム(出力部材)1にボルト33により接続固定された旋回体20とを備える。基台10と旋回体20とは減速機100を介して互いに相対回転され、ロボットの関節部を構成する。 また、旋回体20の軸心部分には、ロボット制御用の配線(図示せず)とクランク軸2の内周面との干渉を避けるための保護円筒体34が取り付けられている。
【0017】
図1及び
図2に示されるように、減速機100を構成するフレーム1(出力部材)の軸心には、クランク軸2が配置されている。クランク軸2は中空円筒形状であり、その外周部分における軸方向のほぼ中央部に一対の偏心円筒部2a、2bが軸方向に並んで設けられている。一対の偏心円筒部2a,2bの偏心の位相は、互いにずれている(例えば180°)。クランク軸2の一方(
図2の図面視における右側)の偏心円筒部2aよりも右側の部分と、同じく他方(
図2の図面視における左側)の偏心円筒部2bよりも左側の部分は各偏心円筒部2a,2bよりも外径が小さくなっており、これらの部分に一対のテーパころ軸受(第一及び第二軸受)3b,3aの内輪が互いに大径部側を内側にして装着されている。
【0018】
クランク軸2の左側の偏心円筒部2bよりもさらに左側の部分(クランク軸2の先端部)には、その全周に亘って雄スプライン部4が形成されている。雄スプライン部4は、歯車5の内周に形成された雌スプラインに係合されている。歯車5の外周には外歯車が形成されている。一方、基台10には、図示しないモータのモータ軸6が、その軸方向を減速機100のフレーム1の軸線に沿わせ、かつ軸心から所定の長さだけオフセットされた位置に取り付けられている。モータ軸6の先端部には歯車5の外歯車に係合する歯部が形成されており、歯車5を介してクランク軸2のスプライン部4に連結されている。これにより、図示しないモータを駆動させてモータ軸6を回転させると、クランク軸2が所定方向に回転する。なお、本実施の形態では、クランク軸2と歯車5とはスプライン結合によって連結されているが、クランク軸2と歯車5を一体に形成してもよい。
【0019】
クランク軸2の各偏心円筒部2b,2aの外周面には、ニードル軸受7b,7aが装着されている。一対のニードル軸受7b,7aの外周部分には、外周面にそれぞれ外歯9a,8aが形成された各歯付き円盤9,8が回転可能に取り付けられている。一対の歯付き円盤9,8の構成は位相がずれていることを除いて同一なので、歯付き円盤9についてのみ説明する。
図3に示すように、歯付き円盤9の周縁部には、ぺリサイクロイド曲線より成る多数(例えば39本)の外歯9aが一定角度をおいて波状に形成されている。また、歯付き円盤9の周縁部で外歯9aよりも内側の部分には、各出力ピン11を貫通させる複数の出力ピン開口穴12とキャリア13に設けられた薄板円弧状断面の脚部22(後述)を貫通させる複数の繭状穴14が設けられている。各出力ピン開口穴12は出力ピン11の外径よりも大きな円孔であり、各繭状穴14は脚部22よりも大きい。各出力ピン開口穴12と各繭状穴14は、軸方向視において略同一円周上に、かつそれらが交互になるように配置されている。
【0020】
フレーム1の内側には、多数(例えば40本)の外ピンからなる内歯31が回転自在に設けられている。内歯31の歯数に対して歯付き円盤の外歯9a,8aの歯数(例えば39歯)は少なくされており、内歯31と歯付き円盤9,8の外歯9a,8aとが噛み合うように、内歯31の内側に歯付き円盤9,8が配置されている。
【0021】
クランク軸2の外方には、略円筒形状のキャリア13が配置されている。キャリア13は、
図1の図面視における左方に配置される第一キャリア15と、同じく右方に配置される第二キャリア16、及び第一キャリアから第二キャリアに向かって延びる薄板円弧状断面の脚部22と、ナット18とから一体に構成される。
【0022】
図2に示されるように、第一キャリア15は、テーパころ軸受3bと玉軸受17bによって支持される厚肉の中空円板形状の基部21と、基部21から第二キャリア16に対して軸方向に沿って突出する薄板円弧状断面の脚部22とからなる。
図4に示すように、第一キャリア15の脚部22は、各出力ピン11との干渉を避けるため円周方向に複数本設けられている。各脚部22の先端に複数の脚部の先端部からなる外周をねじ外径とする外ねじ23がそれぞれ設けられている。各脚部全体として、雄ねじ部23を形成している。脚部22の基部端面には、各出力ピン11の端部を嵌合させて支持するための出力ピン支持穴26が設けられている。脚部22の剛性を高くするため、基部21と脚部22との接続部19を大きなアールを有する曲面形状としたり、接続部19の肉厚を厚くしたりすることが望ましい。また、基部21の反脚部側端面には、基台10と連結するボルト24を螺合させるための多数本の雌ねじ部21aが、円周方向に一定の角度をおいて形成されている。また、モータ軸6を配置するための逃し穴25が設けられている。
【0023】
一方、第二キャリア16は、
図5に示されるように、鍔16a付きの長さの短い円筒形状(リング状、環状)である。第二キャリア16には、軸方向に沿って各出力ピン11の端部を嵌合させて支持するための出力ピン支持穴27と、第一キャリア15から延出する脚部22が嵌合・貫通するための脚部支持開口穴28が設けられている。第二キャリアの反支持ピン穴側には小径部16aが形成されている。小径部16aは、脚部の内径とほぼ同一にされ、脚部22の内径側円弧が嵌合する。第一キャリアの脚部22を第二キャリアの脚部支持開口穴28に嵌合・貫通させて、鍔16bより突出する外ねじ23に、内ねじ部材(ナット)18が螺着され、第一及び第二キャリアが一体に組み立てられる。ナット18と鍔16aとの間に座金29が設けられナットの緩み止めと位置決めが可能にされている。
【0024】
図1及び2に示すように、キャリア13は第一及び第二キャリア15,16が脚部22とナット18とを螺合させて一体に固定化された状態とされる。このとき、キャリア13の内径側は、クランク軸2の偏心円筒部2b,2aの両側に互いに大径部側を内側にして装着された内輪からなる一対のテーパころ軸受(第一及び第二軸受)3b,3aの外輪を挟持するように組み立てられ、第一及び第二キャリア15,16とで、テーパころ軸受(第一及び第二軸受)3b,3a及び偏心円筒部2b,2aを挟持して、予圧を与える。
【0025】
同様に、キャリア13の第一及び第二キャリアの外周部に内輪がそれぞれ嵌合された第三及び第四(玉)軸受17b,17aが設けられ、第三及び第四軸受の外輪側でフレーム1の一部及び内歯(ピン)31を挟持して、フレーム1とキャリア13が相対回転可能に支持されている。第三及び第四軸受の内輪は互いに外側が大径となるように、また、外輪は互いに外側が小径となるように装着され、第一及び第二キャリア15,16とで、第三及び第四軸受17b,17a及びフレーム1の内歯部を挟持し予圧を与える。
【0026】
このように、本実施の形態においては、キャリア13を薄板円弧状断面の脚部22の雄ねじ23とナット18で結合一体化するとともに、クランク軸2、フレーム1を挟持回転支持する第一乃至第四軸受に予圧を与えることができる。
【0027】
次に、本実施の形態の作用について説明する。
図1ないし
図3に示されるように、図示しないモータを作動させてモータ軸6を回転させると、クランク軸2が所定方向に回転する。クランク軸2の偏心円筒部2a,2bにより、一対の歯付き円盤8,9が回転する。このとき、各歯付き円盤8,9の外歯8a,9aが、各外ピン31を乗り越えるような動作を行い、それによりフレーム1は押されて、本実施の形態の場合は、外ピン31の1ピッチ分だけ回転する。各外歯8a,9aが1つの外ピン31を乗り越えるのは、一対の偏心円筒部2a,2bが1回転したときであるから、フレーム1とキャリア15との減速比は、本実施の形態の場合、1/外ピン31の数(外ピン31の数が40本であるから、減速比は1/40)となる。なお、本実施の形態の減速機の減速比は、((歯付き円盤8,9の外歯8a,9a数−外ピン31の本数)/外ピン本数)×(モータ軸6の歯車歯数/クランク軸2の歯車5の歯数)となり、100以上の高い減速比が得られる。
【0028】
第1キャリア15の脚部22が各歯付き円盤8,9のキャリア開口14を通って、第2キャリア16の脚部支持開口28に挿入される。この状態で脚部22先端の雄ねじ部23は、脚部支持開口28から抜け出て第2キャリア16の小径部16aに配置される。このとき、脚部22の内周面は、僅かな隙間をもって小径部16aの外周面に配置される。そして、脚部22の雄ねじ部23に座金29(菊座金)を介してナット18が螺合、締め込まれ、第一キャリア15と第二キャリア16が、一対のテーパころ軸受3b,3a、一対の玉軸受7b,7a及びフレーム1を挟み込んで予圧をかけた状態で一体に固定される。このため、第一キャリア15と第二キャリア16とにおける軸方向の長さは、一対のテーパころ軸受3b,3a、一対の玉軸受17b,17a及びフレーム1によって規制される。
【0029】
第一キャリア15の脚部22の先端の外ねじ23は、ナット18で螺合、締め込まれることにより、第二キャリア16と一体的に構成される。このため、第一キャリア15の脚部22の肉厚が薄くても、その剛性が低下するおそれはない。そして、脚部22の肉厚を薄くできる分だけ、クランク軸2を脚部22の内周面に接近させることができ、その結果、中空クランク軸2の中空穴の内径を大きくすることができる。
【0030】
なお、本実施の形態では、基台をロボットのアーム本体等に連結し、フレーム側を出力側としたが、逆に、フレーム側を本体等に連結し、基台側を旋回体としてもよい。また、第一乃至第四軸受はそれぞれテーパころ軸受、アンギュラ玉軸受としているが、逆でも、同じでもよく、これに限定されるものでなく軸方向予圧を与え、剛性を高めることができる軸受であればよい。さらに、本発明は中空クランク軸タイプの減速機に適しているが、他の減速機についても適宜適用できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0031】
1 フレーム(出力部材)
2 (中空)クランク軸
2a、2b 偏心円筒部
3a、3b 第二、第一軸受(テーパころ軸受)
6 モータ軸(入力軸)
7a、7b 偏心用軸受(ニードル軸受)
8、9 歯付き円盤
8a、9a 外歯
11 出力ピン(ピン)
12 出力ピン開口穴
13 キャリア
14 繭状穴
15 第一キャリア
16 第二キャリア
17a、17b 第四、第三軸受(玉軸受)
18 内ねじ部材(ナット)
22 脚部
23 外ねじ
31 内歯(外ピン)
100 減速機