特許第5998550号(P5998550)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ジェイテクトの特許一覧
<>
  • 特許5998550-転がり軸受装置 図000002
  • 特許5998550-転がり軸受装置 図000003
  • 特許5998550-転がり軸受装置 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5998550
(24)【登録日】2016年9月9日
(45)【発行日】2016年9月28日
(54)【発明の名称】転がり軸受装置
(51)【国際特許分類】
   F16C 33/78 20060101AFI20160915BHJP
【FI】
   F16C33/78 E
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2012-58316(P2012-58316)
(22)【出願日】2012年3月15日
(65)【公開番号】特開2013-190082(P2013-190082A)
(43)【公開日】2013年9月26日
【審査請求日】2015年2月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100079038
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100060874
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 瑛之助
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(72)【発明者】
【氏名】滝本 将生
【審査官】 増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−210085(JP,A)
【文献】 特開2006−118553(JP,A)
【文献】 特開2010−84904(JP,A)
【文献】 米国特許第3519316(US,A)
【文献】 独国特許出願公開第102011003704(DE,A1)
【文献】 特開2008−180277(JP,A)
【文献】 特開2008−232404(JP,A)
【文献】 特開2008−240948(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 33/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外輪、内輪、複数の転動体および両輪端部間の少なくとも一方に設けられた密封装置を備えており、密封装置は、外輪の外周面に嵌合される円筒部を有する芯金と、これに取り付けられた弾性シールとからなる転がり軸受装置において、
芯金の円筒部の内径は、外輪にしまり嵌めされる大きさとされて、該円筒部の端部内周面は、外輪に嵌合されている部分に比べて大径とされており、
外輪の外周面における、芯金の円筒部の端部に対応する位置に環状溝が形成されており、
弾性シールは、芯金の円筒部の外周面に密着する円筒部と、これに連なる折り返し部とを有し、折り返し部は、その先端が環状溝の側面に当接するように環状溝に嵌め合わされ、芯金の円筒部の端部内周面と外輪外周面との間に挟まれて圧縮変形させられていることを特徴とする転がり軸受装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、転がり軸受装置に関し、特に、密封装置を備えた転がり軸受装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車で使用されるホイール用軸受装置のように、外部から水が浸入しやすい条件下で使用される用途では、密封装置を備えた転がり軸受装置が使用されている。このような密封装置を備えている転がり軸受装置として、特許文献1には、外輪、内輪、複数の転動体および両輪端部間の少なくとも一方に設けられた密封装置を備えており、密封装置は、外輪の外周面に嵌合される円筒部を有する芯金と、これに取り付けられた弾性シールとからなるものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−177814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の転がり軸受装置では、芯金の円筒部が外輪にしまり嵌めされることで、嵌め合い部分からの水の浸入を防止するようになっているが、芯金がプレス加工によるもので、精度が十分でないこともあって、嵌め合い時に、円筒部がラッパ状に変形して、円筒部の端部が浮いた状態となることがあり、この場合、嵌め合い部分の防水性が低下するという問題が生じる。
【0005】
この発明の目的は、密封装置の芯金と外輪との嵌め合い部分の防水性を向上させた転がり軸受装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明による転がり軸受装置は、外輪、内輪、複数の転動体および両輪端部間の少なくとも一方に設けられた密封装置を備えており、密封装置は、外輪の外周面に嵌合される円筒部を有する芯金と、これに取り付けられた弾性シールとからなる転がり軸受装置において、芯金の円筒部の内径は、外輪にしまり嵌めされる大きさとされて、該円筒部の端部内周面は、外輪に嵌合されている部分に比べて大径とされており、弾性シールは、芯金の円筒部の外周面に密着する円筒部と、これに連なる折り返し部とを有し、折り返し部は、芯金の円筒部の端部内周面と外輪外周面との間に挟まれて圧縮変形させられていることを特徴とするものである。
【0007】
芯金の円筒部の端部内周面が外輪に嵌合されている部分に比べて大径とされ、この円筒部の端部内周面と外輪外周面との両方に密着する折り返し部が弾性シールに設けられることで、嵌め合い時に、芯金の円筒部がラッパ状に変形して、芯金の円筒部の端部が浮いた状態となった場合であっても、弾性シールの折り返し部の圧縮変形が小さくなった状態で、芯金および外輪と弾性シールとの密着性が維持され、これにより、水浸入に対する防水効果が向上する。
【0008】
外輪の芯金の円筒部の端面に対応する位置に、環状溝が形成されており、弾性シールは、該環状溝に嵌め合わされて圧縮変形させられる環状凸部をさらに有していることがある。また、外輪の芯金の円筒部の端部に対応する位置に、環状溝が形成されており、弾性シールの折り返し部は、その先端が環状溝の側面に当接するように環状溝に嵌め合わされて圧縮変形させられていることがある。いずれの場合でも、芯金および外輪と弾性シールとの密着性がさらに高められ、水浸入に対し、さらに防水効果が向上する。
【発明の効果】
【0009】
この発明の転がり軸受装置によると、芯金の円筒部の端部内周面は、外輪に嵌合されている部分に比べて大径とされており、弾性シールは、芯金の円筒部の端部内周面と外輪外周面との間に挟まれて圧縮変形させられている折り返し部を有しているので、芯金および外輪と弾性シールとの密着性が高められ、水浸入に対し、防水効果が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、この発明による転がり軸受装置の第1実施形態を示す縦断面図である。
図2図2は、この発明による転がり軸受装置の第1実施形態の要部を示す拡大縦断面図である。
図3図3は、この発明による転がり軸受装置の第2実施形態の要部を示す拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
この発明の実施の形態を、以下図面を参照して説明する。
【0012】
図1および図2は、この発明による転がり軸受装置の第1実施形態を示している。
【0013】
この転がり軸受装置(1)は、自動車用のハブユニットなどに好適に使用されるもので、外輪(2)と、内輪(3)と、両輪(2)(3)間に2列に配された複数の円錐ころ(転動体)(4)と、複数の円錐ころ(4)を保持する保持器(5)と、両輪(2)(3)間のインボード側およびアウトボード側にそれぞれ配された密封装置(6)(7)とを有している。内輪(3)のアウトボード側に、ホイールを取り付けるためのフランジ(8)が設けられ、外輪(2)に、車体側であるナックルへの取付け用のフランジ(9)が設けられている。
【0014】
内輪(3)の両端部には、円錐ころ(4)を受ける大鍔部(3a)(3b)が形成されている。アウトボード側フランジ(8)は、外輪(2)のアウトボード側端面と若干の間隙をおくようにして、内輪(3)のアウトボード側鍔部(3b)近傍から径方向外方にのびている。
【0015】
インボード側の密封装置(6)は、いわゆるパックシールとされて、外輪(2)の内周面と内輪(3)の外周面との間に嵌められている。アウトボード側の密封装置(7)は、外輪(2)の外周面に嵌め合わされるタイプとされている。
【0016】
図2は、この発明による転がり軸受装置(1)の要部であるアウトボード側の密封装置(7)を示している。
【0017】
密封装置(7)は、外輪(2)に取り付けられた断面略L字状の芯金(11)と、芯金(11)に取り付けられた弾性シール(12)とを備えている。
【0018】
芯金(11)は、外輪(2)の外周面に嵌められた円筒部(21)と、円筒部(21)の軸方向外側端部から径方向内方にのびる円板部(22)とを有している。
【0019】
芯金(11)の円筒部(21)は、その内径が外輪(2)にしまり嵌めされる大きさとされており、円筒部(21)のインボード側端部内周面(21a)は、外輪(2)に嵌合されている円筒部(21)のアウトボード側内周面に比べて大径とされている。
【0020】
芯金(11)の円板部(22)は、外輪(2)の端面に当接している外側円板部(22a)と、外側円板部(22a)の径方向内側縁部に連なって軸方向内方かつ径方向内方にのびるテーパ部(22b)と、テーパ部(22b)の径方向内側縁部に連なって径方向内方にのびる内側円板部(22c)とからなる。
【0021】
弾性シール(12)は、芯金(11)の円板部(22)に密着するように設けられた円板部(31)と、芯金(11)の円筒部(21)に密着するように設けられた円筒部(32)と、円板部(31)の径方向内側縁部に設けられた2つのラジアルリップ(33)(34)と、円板部(31)の軸方向外側部分に設けられたアキシアルリップ(35)およびラビリンスリップ(36)とを有している。
【0022】
2つのラジアルリップ(33)(34)は、内輪(3)の外周面にわずかな間隙をおいて臨まされている。アキシアルリップ(35)は、内輪(3)のアウトボード側フランジ(8)に摺接している。ラビリンスリップ(36)は、アキシアルリップ(35)の径方向外側において、内輪(3)のアウトボード側フランジ(8)に、わずかな間隙をおいて臨まされている。2つのラジアルリップ(33)(34)の1つまたは2つは、内輪(3)の外周面に摺接させてもよく、また、ラビリンスリップ(36)は、内輪(3)のアウトボード側フランジ(8)に摺接させてもよい。
【0023】
弾性シール(12)には、さらに、円筒部(32)の軸方向内側の端部に連なる折り返し部(37)と、折り返し部(37)の基部において径方向内方に突出する環状凸部(38)とが設けられている。折り返し部(37)は、円筒部(32)の端部から径方向内方にのびるフランジ部(32a)から軸方向外方にのびる円筒状とされている。
【0024】
折り返し部(37)は、円筒部(32)のアウトボード側端部を径方向内方に折り返すことにより、端部内周面(21a)に嵌め入れられている。折り返し部(37)の外輪(2)に嵌め入れる前の厚みは、芯金(11)の端部内周面(21a)と外輪(2)の外周面(2a)との間にできている隙間の大きさよりも大きくなされており、折り返し部(37)は、芯金(11)の円筒部(21)の端部内周面(21a)と外輪(2)外周面(2a)との間に挟まれて圧縮変形させられた状態で、芯金(11)の端部内周面(21a)および外輪(2)の外周面(2a)に密着している。
【0025】
外輪(2)には、折り返し部(37)の基部に対応する位置に、断面円弧状の環状溝(10)が形成されている。環状凸部(38)の外輪(2)に嵌め入れる前の厚みは、環状溝(10)の大きさよりも大きくなされており、環状凸部(38)は、圧縮変形させられて、外輪(2)に形成された環状溝(10)に嵌め合わされている。
【0026】
図2において、環状溝(10)については、断面円弧状に限られるものではなく、また、折り返し部(37)の基部に対応する位置に限られるものではなく、例えば、図3に示すように、断面方形の環状溝(20)とするとともに、折り返し部(39)全体を嵌め入れ可能とし、折り返し部(39)の先端面と環状溝(20)の側面(段部)とが当接するようにしてもよい。この場合の折り返し部(39)の外輪(2)に嵌め入れる前の厚みは、芯金(11)の端部内周面(21a)と環状溝(20)の底面との間にできている隙間の大きさよりも大きくなされており、折り返し部(39)は、芯金(11)の円筒部(21)の端部内周面(21a)と環状溝(20)の底面との間に挟まれて圧縮変形させられた状態で、芯金(11)の端部内周面(21a)および環状溝(20)の底面(外輪(2)の外周面)に密着するようになされる。
【0027】
なお、上記において、弾性シール(12)に設けられるリップが、2つのラジアルリップ(33)(34)と1つのアキシアルリップ(35)と1つのアキシアル方向のラビリンスリップ(36)とされているが、これに限られるものではない。また、環状溝(20)を設けることなく、環状凸部(38)を外輪(2)の外周面に押し付けて密着させてもよい。
【符号の説明】
【0028】
(1):転がり軸受装置、(2):外輪、(3):内輪、(4):玉(転動体)、(7):密封装置、(10):環状溝、(11):芯金、(12):弾性シール、(20):環状溝、(21):円筒部、(21a):端部内周面、(32):円筒部、(37):折り返し部、(38):環状凸部、(39):折り返し部
図1
図2
図3