特許第5998585号(P5998585)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5998585
(24)【登録日】2016年9月9日
(45)【発行日】2016年9月28日
(54)【発明の名称】シート搬送装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 31/00 20060101AFI20160915BHJP
   B65H 29/22 20060101ALI20160915BHJP
   B65H 29/60 20060101ALI20160915BHJP
【FI】
   B65H31/00 B
   B65H29/22 Z
   B65H29/60 D
【請求項の数】6
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2012-81323(P2012-81323)
(22)【出願日】2012年3月30日
(65)【公開番号】特開2013-209201(P2013-209201A)
(43)【公開日】2013年10月10日
【審査請求日】2015年3月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129643
【弁理士】
【氏名又は名称】皆川 祐一
(72)【発明者】
【氏名】刑部 吉記
(72)【発明者】
【氏名】三浦 克朗
(72)【発明者】
【氏名】高畑 宗晃
【審査官】 ▲高▼辻 将人
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−286450(JP,A)
【文献】 特開平07−252004(JP,A)
【文献】 特開2006−240848(JP,A)
【文献】 特開2011−254213(JP,A)
【文献】 特開2006−232525(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 31/00
B65H 29/22
B65H 29/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体内に形成され、シートを第1方向に搬送するための共通パスと、
前記筐体内に形成され、前記共通パスから送り込まれるシートを折り返すための折り返しパスと、
前記筐体内に形成され、前記共通パスから送り込まれるシートを前記第1方向に排出するためのワンウェイパスと、
前記共通パスの出口に設けられ、前記共通パスを挟んで対向し、互いに周面が当接するローラ対と、
記ワンウェイパスから排出されるシートを受け取るためのカバーと
前記ローラ対と前記カバーとの間に設けられた搬送ガイドとを含み、
前記カバーは、その下端が上下方向および前記第1方向と直交する幅方向に延びる回動軸線を中心に回動可能に設けられて、前記回動軸線を中心とする回動により、前記カバーの外面が前記筐体の側面の一部をなすカバー位置と、前記カバーの上端が前記筐体の側面から離間する方向に変位することにより上向きに傾斜する傾斜位置との間で変位可能であり、前記傾斜位置にある状態でシートを受け取り、
前記回動軸線は、上下方向の位置が前記ローラ対の各周面の当接位置よりも上であり、
前記搬送ガイドは、前記ローラ対と前記カバーの下端との間に延在し、その上面が前記カバーに近づくに従って高くなるように傾斜し、
前記ワンウェイパスは、前記搬送ガイドの上面に沿って延びる空間であり、
前記カバーにおけるシートを受け取る面は、前記カバーが前記傾斜位置にある状態で、前記搬送ガイドの上面と前記第1方向に隣り合い、前記搬送ガイドから前記第1方向に離れるに従って前記搬送ガイドの上面よりも高くなるように傾斜している、シート搬送装置。
【請求項2】
前記カバーは、前記傾斜位置と前記カバー位置との間の複数の位置に前記筐体によって保持可能に設けられている、請求項に記載のシート搬送装置。
【請求項3】
前記ワンウェイパスは、前記カバーの回動に連動して揺動するように設けられている、請求項1または2に記載のシート搬送装置。
【請求項4】
前記ワンウェイパスは、前記カバーが前記傾斜位置にて前記筐体に保持されている状態において上下方向と直交する基準面に対して傾斜しており、
前記ワンウェイパスが前記基準面に対して傾斜する第1角度は、45°以下であり、
前記カバーが前記傾斜位置で前記ワンウェイパスに対して傾斜する第2角度は、45°以下であり、
前記第2角度は、前記第1角度よりも大きい、請求項1〜のいずれか一項に記載のシート搬送装置。
【請求項5】
前記筐体は、前記第1方向に平行な揺動軸線を中心に、上下方向と直交する基準面に沿った位置と前記基準面に対して傾斜した位置とに揺動可能に設けられ、
前記筐体が前記基準面に沿った位置にある状態において、
前記ワンウェイパスは、前記基準面に対して傾斜しており、
前記ワンウェイパスの下方には、前記筐体を前記基準面に対して傾斜した位置に保持するためのストッパが配置されている、請求項1〜のいずれか一項に記載のシート搬送装置。
【請求項6】
シートが積載されるように構成されたトレイと、
前記トレイに積層されたシートを最下方の原稿から順に前記共通パスに送り出す供給機構とをさらに含む、請求項1〜のいずれか一項に記載のシート搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートを搬送するシート搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、イメージスキャナおよびプリンタには、シートを搬送するシート搬送装置が備えられている。イメージスキャナでは、シート搬送装置により、シートが画像読取部を経由して搬送される。シートが画像読取部を通過する際に、画像読取部により、シートに形成されている画像が読み取られる。プリンタでは、シート搬送装置により、シートが画像形成部を経由して搬送される。シートが画像形成部を通過する際に、画像形成部により、シートに画像が形成される。
【0003】
シート搬送装置において、シートの排出先を2つのトレイの一方に選択的に切替可能に構成されたものがある。
【0004】
この構成の一例では、シート搬送装置が収容される筐体の上面および一側面にそれぞれ第1トレイおよび第2トレイが設けられている。シートが搬送される搬送路は、その途中部で、第1トレイに向けて延びるUターンパスと、第2トレイに向けて延びるストレートパスとに分岐している。Uターンパスとストレートパスとの分岐点には、駆動ローラおよび従動ローラが設けられている。従動ローラは、駆動ローラに対して上方から対向している。そして、Uターンパスは、駆動ローラと従動ローラとの接触部分から第1トレイに向けて、U字状に湾曲している。ストレートパスは、駆動ローラと従動ローラとの接触部分から第2トレイに向けて、直線状に延びている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平2−291352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、前述の構成では、第2トレイの使用時には、第2トレイが筐体の一側面に沿う方向に対して大きく傾斜した角度に開かれる。そのため、第2トレイの使用時における装置の専有面積が増大するという問題がある。
【0007】
本発明の目的は、シートを複数の排出先に選択的に排出できながら、専有面積の増大を抑制できる、シート搬送装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するため、本発明の一の局面に係るシート搬送装置は、筐体と、前記筐体内に形成され、シートを第1方向に搬送するための共通パスと、前記筐体内に形成され、前記共通パスから送り込まれるシートを折り返すための折り返しパスと、前記筐体内に形成され、前記共通パスから送り込まれるシートを前記第1方向に排出するためのワンウェイパスと、前記共通パスの出口に設けられ、前記共通パスを挟んで対向し、互いに周面が当接するローラ対と、前記ワンウェイパスから排出されるシートを受け取るためのカバーと、前記ローラ対と前記カバーとの間に設けられた搬送ガイドとを含み、前記カバーは、その下端が上下方向および前記第1方向と直交する幅方向に延びる回動軸線を中心に回動可能に設けられて、前記回動軸線を中心とする回動により、前記カバーの外面が前記筐体の側面の一部をなすカバー位置と、前記カバーの上端が前記筐体の側面から離間する方向に変位することにより上向きに傾斜する傾斜位置との間で変位可能であり、前記傾斜位置にある状態でシートを受け取り、前記回動軸線は、上下方向の位置が前記ローラ対の各周面の当接位置よりも上であり、前記搬送ガイドは、前記ローラ対と前記カバーの下端との間に延在し、その上面が前記カバーに近づくに従って高くなるように傾斜し、前記ワンウェイパスは、前記搬送ガイドの上面に沿って延びる空間であり、前記カバーにおけるシートを受け取る面は、前記カバーが前記傾斜位置にある状態で、前記搬送ガイドの上面と前記第1方向に隣り合い、前記搬送ガイドから前記第1方向に離れるに従って前記搬送ガイドの上面よりも高くなるように傾斜している
【0009】
シートは、共通パスを第1方向に搬送される。共通パスから折り返しパスに送り込まれるシートは、第1方向から折り返される。共通パスからワンウェイパスに送り込まれるシートは、第1方向に排出される。ワンウェイパスから排出されるシートは、カバーによって受け取られる。このとき、カバーは、その上端が筐体の側面に対して離間する方向に変位することにより上向きに傾斜する傾斜位置に配置されている。そのため、シートがカバーに受け取られるときに、平面視でカバーが占める面積が小さい。
【0010】
よって、シートを複数の排出先に選択的に排出できながら、装置の専有面積、つまり平面サイズの増大を抑制できる。
【0011】
また、カバーの上端筐体の側面に対して離間する方向に変位することにより、カバーが上向きに傾斜する。そのため、カバーに受け取られたシートをカバー上から取り出しやすい。
【0012】
カバーは、上下方向および第1方向と直交する幅方向に延びる回動軸線を中心に回動可能に設けられてい
【0013】
また、カバーは、回動軸線を中心とする回動により、傾斜位置とカバーの外面が筐体の外面の一部をなすカバー位置との間で変位可能である。
【0014】
カバーがカバー位置に配置されているときには、カバーが専有する面積をなくすことができる。その結果、装置の専有面積をさらに縮小することができる。
【0015】
カバーは、傾斜位置とカバー位置との間の複数の位置に筐体によって保持可能に設けられていてもよい。
【0016】
これにより、シートの腰の強弱に応じて、シートがカバーに良好に排出されるように、カバーの位置を調節することができる。
【0017】
ワンウェイパスは、カバーの回動に連動して揺動するように設けられていてもよい。
【0018】
カバーの回動に連動して、ワンウェイパスがカバーと平行をなすように揺動することにより、ワンウェイパスとカバーとの間隔を小さくすることができる。そのため、装置のサイズを縮小することができる。
【0019】
ワンウェイパスは、カバーが傾斜位置で筐体に保持されている状態において上下方向と直交する基準面に対して傾斜していてもよい。この場合、ワンウェイパスが基準面に対して傾斜する第1角度が45°以下であり、カバーが傾斜位置でワンウェイパスに対して傾斜する第2角度が45°以下であって、第2角度が第1角度よりも大きいことが好ましい。
【0020】
通常、シートが上下方向に近い状態で排出されるほど、排出されるシートが取り出されやすくなる。しかし、水平方向に近い方向に搬送されていたシートを、急激に上下方向に近い状態で排出しようとすると、シートの搬送不良を起こす可能性が高い。これに対し、第1角度、及び第2角度が上記の条件を満たすことにより、シートの搬送方向を段階的に変更しながらシートを排出することができる。したがって、シートを共通パスからワンウェイパスを通してカバー上に良好に排出することができる。そして、第2角度が第1角度よりも大きいことにより、シートの取り出しが容易となる。
【0021】
筐体は、第1方向に平行な揺動軸線を中心に、上下方向と直交する基準面に沿った位置と前記基準面に対して傾斜した位置とに揺動可能に設けられていてもよい。この場合、ワンウェイパスは、基準面に対して傾斜していることが好ましい。
【0022】
ワンウェイパスが基準面に対して傾斜している場合、ワンウェイパスの下方にスペースが生じる。そこで、そのワンウェイパスの下方のスペースには、筐体を基準面に対して傾斜した位置に保持するためのストッパが配置されていてもよい。
【0023】
ワンウェイパスの下方のスペースを有効に利用することができる。その結果、装置のサイズをさらに縮小することができる。
【0024】
シートが積載されるように構成されたトレイと、トレイに積層されたシートを最下方の原稿から順に共通パスに送り出す供給機構とが設けられていてもよい。
【0025】
本発明の他の局面に係るシート搬送装置は、筐体と、前記筐体内に形成され、シートを第1方向に搬送するための共通パスと、前記筐体内に形成され、前記共通パスから送り込まれるシートを前記第1方向と反対方向の第2方向に折り返すための折り返しパスと、前記筐体内に形成され、前記共通パスから送り込まれるシートを前記第1方向に排出するためのワンウェイパスと、前記ワンウェイパスから排出されるシートを受け取る受取部とを含む。前記ワンウェイパスから前記受取部に至る搬送経路は、上下方向と直交する基準面に対する傾斜角度が複数段階で変化するように屈曲している。
【0026】
シートは、共通パスを第1方向に搬送される。共通パスから折り返しパスに送り込まれるシートは、第1方向と反対方向の第2方向に折り返される。共通パスからワンウェイパスに送り込まれるシートは、第1方向に排出される。ワンウェイパスから排出されるシートは、受取部によって受け取られる。
【0027】
ワンウェイパスから受取部に至る搬送経路は、上下方向と直交する基準面に対する傾斜角度が複数段階で変化するように屈曲している。そのため、ワンウェイパスから受取部に至る搬送経路でシートをスムーズに搬送することができる。
【0028】
また、搬送経路の傾斜角度が受取部に近づくにつれて大きくなるように屈曲している場合には、受取部が上下方向に近い姿勢をなす。そのため、受取部に受け取られたシートを受取部上から取り出しやすい。
【0029】
本発明のさらに他の局面に係るシート搬送装置は、筐体と、前記筐体内に形成され、シートを第1方向に搬送するための共通パスと、前記筐体内に形成され、前記共通パスから送り込まれるシートを前記第1方向と反対方向の第2方向に折り返すための折り返しパスと、前記筐体内に形成され、前記共通パスから送り込まれるシートを、前記共通パスと平行な方向から前記共通パスと直交する方向に近づくように前記共通パスに対して屈曲した方向に排出するためのワンウェイパスと、前記ワンウェイパスから排出されるシートを受け取る受取部とを含む。
【0030】
シートは、共通パスを第1方向に搬送される。共通パスから折り返しパスに送り込まれるシートは、第1方向と反対方向の第2方向に折り返される。共通パスからワンウェイパスに送り込まれるシートは、共通パスに対して共通パスと平行な方向から共通パスに対して垂直な方向に近づくように屈曲した方向に排出される。ワンウェイパスから排出されるシートは、受取部によって受け取られる。
【0031】
ワンウェイパスは、共通パスと平行な方向から共通パスに対して垂直な方向に近づくように共通パスに対して屈曲した方向に延びている。そのため、ワンウェイパスから排出されて受取部に受け取られたシートを受取部から取り出しやすい。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、シートを複数の排出先に選択的に排出できながら、装置の専有面積の増大を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る画像読取装置1の左前上方から見た斜視図であり、トレイ3が使用位置に配置された状態を示す。
図2図2は、図1に示される前記画像読取装置1の断面図である。
図3図3は、前記画像読取装置1の左前上方から見た斜視図であり、排出カバー4が開かれた状態を示す。
図4図4は、図3に示される前記画像読取装置1の断面図である。
図5図5は、前記画像読取装置1の左前上方から見た斜視図であり、メンテナンスカバー6が開かれた状態を示す。
図6図6は、図5に示される前記画像読取装置1の断面図である。
図7図7は、前記画像読取装置1の左前上方から見た斜視図であり、排出カバー4およびメンテナンスカバー6が開かれた状態を示す。
図8図8は、図6に示される前記画像読取装置1の断面図である。
図9図9は、前記画像読取装置1の筐体2内の左端部の斜視図である。
図10図10は、前記画像読取装置1の第2LFローラ19の近傍の断面図であり、フラッパ45が折り返しパス41に沿って延びた状態を示す。
図11図11は、前記画像読取装置1の第2LFローラ19の近傍の断面図であり、前記フラッパ45が前記ワンウェイパス42に沿って延びた状態を示す。
図12図12は、前記筐体2の下部の斜視図である。
図13A図13Aは、前記排出カバー4と前記筐体2内のワンウェイパス42とが連動して変位する構成について説明するための図であり、前記排出カバー4が閉じられた状態を示す。
図13B図13Bは、前記排出カバー4と前記筐体2内のワンウェイパス42とが連動して変位する構成について説明するための図であり、前記排出カバー4が閉じられた状態を示す。
図14図14は、ワンウェイパス42が折り返しパス41との分岐点から上方に延びた構成を図解的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下では、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
<画像読取装置の外観構成>
【0035】
図1に示されるように、画像読取装置1は、平面視略矩形状をなしている。画像読取装置1は、たとえば、不図示のプリンタ上に取り付けられる。そして、画像読取装置1は、そのプリンタとともに、コンパクトサイズの複合機を構成する。
【0036】
なお、平面視における画像読取装置1の長手方向を左右方向と規定する。また、平面視における画像読取装置1の長手方向と直交する方向を前後方向と規定する。複合機が水平面上に載置された状態で、左右方向および前後方向と直交する方向は、上下方向である。図1以降の各図では、図面の理解を助けるために、その規定された方向を矢印で示す。また、以降の説明において、左側から右側に向かう方向が第1方向の一例である。この場合に、右側が第1方向の上流側となり、左側が第1方向の下流側となる。
【0037】
画像読取装置1は、筐体2を備えている。
【0038】
筐体2には、トレイ3が取り付けられている。トレイ3は、不使用位置と使用位置とに変位可能である。トレイ3の外面は、不使用位置において、筐体2の上面の左右方向の中央部をなす。トレイ3が不使用位置から使用位置に変位されるときには、不使用位置に配置されたトレイ3の左端部が持ち上げられて、トレイ3が右端部を支点に右側に回動される。トレイ3は、使用位置において、図1および図2に示されるように、右上がりに傾斜して延びる。
【0039】
筐体2の左側面には、カバーおよび受取部の一例としての排出カバー4が設けられている。排出カバー4は、前後方向に延びる回動軸61を中心とする回動によって開閉される。排出カバー4は、前後方向に筐体2の左側面よりも短い幅で延びる略矩形板状をなしている。
【0040】
回動軸61は、排出カバー4の下端縁に沿って延びている。排出カバー4が閉じられた状態で、排出カバー4の外面は、図1および図2に示されるように、筐体2の左側面の前後方向の中央部をなす。排出カバー4が開かれた状態で、排出カバー4は、図3および図4に示されるように、水平面HSに対して約50°の角度θ3で左上がりに傾斜して延びる。この状態で、排出カバー4は、図4に示されるように、後述するワンウェイパス42に対して、ワンウェイパス42と平行な方向D1からワンウェイパス42と垂直な方向D2に近づくように屈曲して延びる。排出カバー4が開かれた状態で、筐体2と排出カバー4とにより、排出口5が形成される。
【0041】
筐体2の上面の左端部には、メンテナンスカバー6が設けられている。メンテナンスカバー6は、前後方向に延びる回動軸62を中心とする回動によって開閉される。メンテナンスカバー6は、前後方向の長さL1が筐体2の上面の前後方向の長さとほぼ等しい略矩形板状をなしている。これにより、図1に示されるように、メンテナンスカバー6の前後方向の長さL1は、筐体2の左側面よりも前後方向に小幅である排出カバー4の前後方向の長さL2よりも大きい。
【0042】
回動軸62は、メンテナンスカバー6の右端縁に沿って延びている。メンテナンスカバー6が閉じられた状態で、メンテナンスカバー6の外面は、図1および図2に示されるように、筐体2の上面の左端部をなす。メンテナンスカバー6が開かれた状態で、メンテナンスカバー6は、図5および図6に示されるように、左上がりに傾斜して延びる。この状態で、筐体2とメンテナンスカバー6とにより、メンテナンス開口7が形成される。そして、メンテナンス開口7が形成されることにより、後述する折り返しパス41およびワンウェイパス42が露出する。
【0043】
また、図7および図8に示されるように、排出カバー4およびメンテナンスカバー6の両方が開かれた状態では、排出口5とメンテナンス開口7とが連通する。これにより、排出口5およびメンテナンス開口7からなる大きな開口が形成され、筐体2の内部がさらに見やすい状態となる。
【0044】
一方、図1および図2に示されるように、排出カバー4およびメンテナンスカバー6の両方が閉じられた状態において、排出カバー4の上端縁とメンテナンスカバー6の左端縁とは、互いに突き合わされて、ほぼ隙間のない状態で、それぞれ前後方向に延びる。
【0045】
メンテナンスカバー6の左端部における前後方向の中央部には、指挿入部8が形成されている。指挿入部8は、平面視において、メンテナンスカバー6の左端縁から矩形状に切りかかれた形状をなしている。また、指挿入部8は、図7および図8に示されるように、メンテナンスカバー6の上面から下方に凹み、上方および左方に開放される凹部をなしている。排出カバー4およびメンテナンスカバー6の両方が閉じられた状態において、指挿入部8に指先が入れられて、指先で排出カバー4の上端部が左方に押されることにより、排出カバー4が開かれる。また、排出カバー4およびメンテナンスカバー6の両方が閉じられた状態において、指挿入部8に指先が入れられて、指先でメンテナンスカバー6の左端部が上方に引き上げられることにより、メンテナンスカバー6が開かれる。
【0046】
画像読取装置1は、落下防止部材65を備えている。落下防止部材65は、排紙カバー4が閉じられた状態では、排紙カバー4に収納されている。落下防止部材65は、排紙カバー4が開かれた状態において、図3図4図7および図8に示すように、前側を向く収納位置から上側を向く展開位置へ回動可能となる。
【0047】
落下防止部材65は、延出部66と、ストッパ67とを備える。延出部66は、落下防止部材65が展開位置に位置している状態において、左上側へ延出する形状をなしている。ストッパ67は、落下防止部材65が展開位置に位置している状態において、延出部66から右上側に突出している。ストッパ67は、後述するワンウェイパス42を通過して排紙される葉書などに当接可能である。ストッパ67と葉書などが当接することにより、ストッパ67は、ワンウェイパス42を通過して排紙される葉書等が画像読取装置1の外部に落下することを抑制することができる。
<画像読取装置の内部構成>
【0048】
筐体2内には、トレイ3が使用位置に配置されることによって露出する部分に、供給部11および排出部12が設けられている。
【0049】
供給部11は、排出部12の下方に位置している。供給部11の上面は、右端部を除いて、前後方向および左右方向に延びる平面に形成されている。供給部11の上面の右端部は、下方に凸となるように緩やかに湾曲しつつ右上がりに傾斜している。そして、供給部11の上面の右端部は、使用位置に配置されたトレイ3の内面の下端部に微小な隙間を空けて接続される。
【0050】
供給部11には、1対のシート幅ガイド13が設けられている。1対のシート幅ガイド13は、互いに前後方向に対向している。1対のシート幅ガイド13は、それらの間の中央を基準として、互いに同じ移動量で近接および離間可能に構成されている。
【0051】
1対のシート幅ガイド13が互いに最も近接した状態では、図3に示されるように、それらの間の間隔が欧米名刺サイズの短辺の長さとほぼ同じ最小幅となる。この状態で、1対のシート幅ガイド13の間に、欧米名刺サイズのシートが右側から差し込まれることにより、そのシートが供給部11上にセンタ基準で載置される。
【0052】
1対のシート幅ガイド13が互いに最も離間した状態では、図1に示されるように、それらの間の間隔がリーガルサイズの短辺の長さとほぼ同じ最大幅となる。この状態で、1対のシート幅ガイド13の間に、リーガルサイズのシートが右側から差し込まれることにより、そのシートが供給部11およびトレイ3上にセンタ基準で載置される。
【0053】
また、欧米名刺サイズよりも大きく、リーガルサイズよりも小さいサイズのシートが供給部11上に載置されるときには、そのシートの前後方向の幅に合わせて、1対のシート幅ガイド13の間の間隔が調節される。
【0054】
排出部12は、供給部11の上方に、供給部11と間隔を空けて設けられている。排出部12は、前後方向および左右方向に延びる矩形板状をなしている。排出部12上には、シートが筐体2内から右側に向けて排出される。そして、そのシートの右端部は、排出部12を越えて、トレイ3上に載置される。シートの左端部は、排出部12上に残って、排出部12上に載置される。シートの左端部が排出部12上に残るので、そのシートは、供給部11およびトレイ3上にそれらに跨がって載置されているシートと重なり合わない。
【0055】
筐体2の内部には、図2図4図6および図8に示されるように、共通パス14が形成されている。共通パス14は、供給部11の左端部から左方に延び、屈曲して左下方に傾斜して延び、さらに屈曲して左方に延びている。
【0056】
共通パス14に沿って、供給機構の一例としての供給ローラ15、分離ローラ16、第1LFローラ17、従動ローラ18、第2LFローラ19および従動ローラ20,21が設けられている。
【0057】
供給ローラ15は、共通パス14の入口に配置されている。供給ローラ15は、前後方向に延びる軸線を中心に回転可能に設けられている。
【0058】
分離ローラ16は、供給ローラ15に対して左方に間隔を空けて設けられている。分離ローラ16は、前後方向に延びる軸線を中心に回転可能に設けられている。分離ローラ16の上方には、分離片22が設けられている。分離片22は、たとえば、ゴムからなる。分離片22は、分離ローラ16の周面に上方から弾性的に当接している。
【0059】
第1LFローラ17および従動ローラ18は、共通パス14における左下方に傾斜した部分を挟んで対向して配置されている。第1LFローラ17および従動ローラ18は、それぞれ前後方向に延びる軸線を中心に回転可能に設けられている。従動ローラ18の周面は、第1LFローラ17の周面に下方から当接している。
【0060】
第2LFローラ19および従動ローラ20,21は、共通パス14の出口付近に配置されている。
【0061】
第2LFローラ19は、図9に示されるように、前後方向に3個設けられている。3個の第2LFローラ19は、前後方向に延びる共通の回転軸23に、互いに間隔を空けて取り付けられている。中央の第2LFローラ19は、筐体2の前後方向の中央部に配置されている。回転軸23の両端部は、筐体2に回転可能に保持されている。これにより、3個の第2LFローラ19は、回転軸23を中心に回転可能に設けられている。
【0062】
従動ローラ20は、図2図4図6および図8に示されるように、各第2LFローラ19に共通パス14を挟んで対向して配置されている。従動ローラ20は、前後方向に延びる軸線を中心に回転可能に設けられている。従動ローラ20の周面は、各第2LFローラ19の周面の最下点よりも少し右側の位置に当接している。
【0063】
従動ローラ21は、図9に示されるように、中央の第2LFローラ19に共通パス14を挟んで対向して配置されている。前後の各第2LFローラ19に対しては、従動ローラ21は設けられていない。従動ローラ21は、前後方向に延びる軸線を中心に回転可能に設けられている。従動ローラ21の周面は、中央の第2LFローラ19の周面の最下点よりも少し左側の位置に当接している。
【0064】
なお、従動ローラ21が中央の第2LFローラ19のみに対向して設けられているのは、後述するように、排出カバー4が開かれて、葉書などがワンウェイパス42を通される際に、その葉書などを第2LFローラ19と従動ローラ21とによって搬送するためである。
【0065】
従動ローラ21の前後方向の両側には、押出部24が設けられている。押出部24は、図10および図11に示されるように、円板状の本体部25と、本体部25の周縁から放射状に突出する複数の突出部26とを一体的に有している。本体部25の中心には、従動ローラ21と共通の回転軸27が相対回転不能に挿通されている。
【0066】
共通パス14の出口付近において、共通パス14の前後方向の両外側には、図10および図11に示されるように、板状の上流側凸部28および下流側凸部29が設けられている。
【0067】
上流側凸部28は、回転軸27の右側で左右方向に延びている。上流側凸部28は、共通パス14の下面よりも上方に突出している。そして、上流側凸部28は、前方から見たときに、その突出量が左側ほど大きくなる三角形状をなしている。図10に示されるように、上流側凸部28の最高点の位置P3は、従動ローラ21の回転軸線、つまり回転軸27の中心線の位置P1よりも高く、従動ローラ21の周面の最上位置P4よりも低い。
【0068】
下流側凸部29は、回転軸27の左側で左右方向に延びている。下流側凸部28は、共通パス14の下面よりも上方に突出している。下流側凸部28の上端縁の位置P2は、回転軸27の中心軸線の位置P1よりも高く、従動ローラ21の周面の最上位置P4よりも低い位置で、左右方向に延びている。また、下流側凸部29の後端縁は、押出部24よりも左側に位置している。
【0069】
そして、上流側凸部28と下流側凸部29との間には、回転軸27の端部を回転可能に保持する軸保持部30が形成されている。これにより、従動ローラ21および押出部24は、回転軸27を支点として回転可能に設けられている。そして、押出部24の突出部26の先端と押出部24の回転軸線との間の距離P1−P5は、その回転軸線と従動ローラ21の周面との間の距離P1−P4よりも大きい。
【0070】
共通パス14は、図2図4図6および図8に示されるように、第1LFローラ17と第2LFローラ19との間において、第1コンタクトガラス31および第2コンタクトガラス32上を経由している。
【0071】
第1コンタクトガラス31は、供給部11の下方において、左右方向に長く延びる矩形薄板状をなしている。第1コンタクトガラス31の前後方向の幅は、共通パス14の前後方向の幅とほぼ等しい。共通パス14は、第1コンタクトガラス31の左端部の上方を経由している。
【0072】
第1コンタクトガラス31の下方には、CIS(Contact Image Sensor)モジュール33が左右方向に移動可能に設けられている。CISモジュール33の内部には、たとえば、LED光源、レンズおよびイメージセンサなどが設けられている。CISモジュール33は、通常、第1コンタクトガラス31の左端部と対向する位置に配置されている。
【0073】
なお、筐体2は、上下2分割に構成されている。筐体2の上部の後端部は、不図示のヒンジを介して下部の後端部と連結されている。これにより、筐体2の上部は、ヒンジを支点に下部に対して揺動可能に設けられている。筐体2の上部の前端部が持ち上げられると、第1コンタクトガラス31が露出する。そして、第1コンタクトガラス31上に原稿を載置して、CISモジュール33に原稿の画像を読み取らせることができるようになっている。
【0074】
第2コンタクトガラス32は、共通パス14に上方から対向している。第2コンタクトガラス32は、前後方向に長い矩形薄板状をなしている。第1コンタクトガラス31の前後方向の幅は、共通パス14の前後方向の幅とほぼ等しい。
【0075】
第2コンタクトガラス32の上方には、CISモジュール34が左右方向に移動可能に設けられている。CISモジュール34の内部には、たとえば、LED光源、レンズおよびイメージセンサなどが設けられている。
【0076】
筐体2の内部には、折り返しパス41およびワンウェイパス42が形成されている。
【0077】
折り返しパス41は、メンテナンスカバー6の内面がなすカバー側搬送ガイド43と第2LFローラ19の周面および筐体2内に設けられた筐体側搬送ガイド63の上面とによって形成される。筐体側搬送ガイド63は、薄板状をなしている。筐体側搬送ガイド63は、第2LFローラ19の周面の最上位置に対して右側に微小な間隔を空けた位置から右方に延びている。筐体側搬送ガイド63の右端部は、排出部12の左端部に対して左側に微小な間隔を空けた位置に配置されている。これにより、折り返しパス41は、共通パス14の出口から第2LFローラ19の周面に沿って上方に湾曲し、第2LFローラ19の周面の最上位置から右方に延びている。折り返しパス41の出口は、排出部12の左端部の近傍に配置されている。折り返しパス41の前後方向の幅は、共通パス14の前後方向の幅とほぼ等しい。
【0078】
第2LFローラ19の左上方には、折り返しパス41を挟んで、従動ローラ44が配置されている。従動ローラ44は、前後方向に延びる軸線を中心に回転可能に設けられている。従動ローラ44の周面は、第2LFローラ19の周面に左上方から当接している。
【0079】
ワンウェイパス42は、共通パス14の出口から左上方に傾斜して延びている。
【0080】
具体的には、従動ローラ21の左側に、搬送ガイド64が設けられている。搬送ガイド64は、薄板状をなしている。搬送ガイド64は、従動ローラ21の周面における上下方向の中央位置の近傍から左方に少し延び、左上方に屈曲して延びている。搬送ガイド64の左端部は、排出カバー4の下端部の近傍に配置されている。また、搬送ガイド64の前後方向の長さは、図9に示されるように、前側の第2LFローラ19の後端面と後側の第2LFローラ19の前端面との間の間隔よりもわずかに小さい。そして、ワンウェイパス42は、搬送ガイド64の右端部と後述するフラッパ45との間から搬送ガイド64の上面に沿って左上方に延びる空間として形成されている。
【0081】
これにより、ワンウェイパス42の入口は、共通パス14の出口における前後方向の中央部に対向している。ワンウェイパス41の前後方向の幅は、共通パス14の前後方向の幅よりも小さい。ワンウェイパス42の出口は、排出カバー4の下端部の近傍に配置されている。ワンウェイパス42の水平面HSに対する傾斜角度θ1は、排出カバー4が開かれた状態における排出カバー4の水平面HSに対する傾斜角度θ3よりも小さく、たとえば、20°である。
【0082】
そして、折り返しパス41とワンウェイパス42との分岐部分には、フラッパ45が配置されている。フラッパ45は、前後方向に延びる揺動軸線を中心に、図10に示される姿勢と図11に示される姿勢とに揺動可能に設けられている。図10に示される姿勢のフラッパ45は、折り返しパス41に沿って延び、その下端部がワンウェイパス42を塞ぐように配置される。図11に示される姿勢のフラッパ45は、ワンウェイパス42に沿って延び、その右端部が折り返しパス41を塞ぐように配置される。図11に示される姿勢のフラッパ45は、共通パス14からワンウェイパス42へのシートの進入を許容する。
【0083】
フラッパ45は、排出カバー4の開閉に連動して、図10に示される姿勢と図11に示される姿勢とに切り替えられる。具体的には、排出カバー4の開閉に連動してフラッパ45を揺動させるために、図2図4図6および図8に示されるように、リンク機構46が設けられている。このリンク機構46の働きにより、排出カバー4が閉じられているときに、フラッパ45が図10に示される姿勢をなし、排出カバー4が開かれているときに、フラッパ45が図11に示される姿勢をなす。
【0084】
筐体2の左後角部には、図12に示されるように、スペース48が生じている。具体的には、図12には、搬送ガイド64が取り外された状態が示されており、スペース48は、搬送ガイド64の後端縁と筐体2の後壁47との間に、ワンウェイパス42として使用されない空間として形成されている。このスペース48を有効に利用すべく、スペース48には、供給ローラ15、分離ローラ16、第1LFローラ17および第2LFローラ19を駆動するための駆動源であるモータ49が配置されている。
【0085】
また、図2図4図6および図8に示されるように、ワンウェイパス42の右端部の下方には、ワンウェイパス42が右上がりに傾斜することにより、スペース50が生じている。画像読取装置1は、左右方向に延びる揺動軸線を中心とする揺動により、水平面HSに沿った位置と、その前端部が不図示のプリンタに対して持ち上がった位置とに変異可能に設けられている。そして、スペース50を有効に利用すべく、スペース50には、画像読取装置1の前端部が不図示のプリンタに対して持ち上がった状態で画像読取装置1を支持するためのストッパの一例としての支持アーム51が収容されている。
【0086】
さらに、図9に示されるように、ワンウェイパス42の前後方向の両側には、被係止部52が立設されている。被係止部52は、直方体形状をなしている。各被係止部52の前後方向の内側の面には、矩形状の凹部53が形成されている。そして、各被係止部52に対応して、メンテナンスカバー6の内面には、図5に示されるように、鉤状の係止部54が形成されている。メンテナンスカバー6が閉じられたときに、係止部54の先端部が凹部53に入り込み、係止部54が被係止部52に係止される。これにより、メンテナンスカバー6の閉じられた状態が保持される。
<画像読取動作1>
【0087】
画像読取装置1では、ADF(Auto Document Feeder)機能を使用して、シートの両面に形成されている画像を並行して読み取ることができる。また、シートの一方面および他方面に形成されている画像を選択的に読み取ることができる。以下、シートの搬送および画像の読取りについて時系列的に説明する。
【0088】
たとえば、シートがA4サイズの用紙である場合、排出カバー4が閉じられる。図1に示されるように、トレイ3が筐体2に対して開けられた状態で、1対のシート幅ガイド13の間の間隔がおおよそA4サイズの短辺の長さに合わされる。その後、シートが1対のシート幅ガイド13の間に右側から差し込まれる。1対のシート幅ガイド13の間の間隔が、差し込まれたシートの前後方向の長さに合わされる。こうして、シートが供給部11およびトレイ3上に載置される。
【0089】
シートの先端部は、供給ローラ15の周面上に配置される。供給ローラ15が前側から見て反時計回りに回転されると、供給部11上の最下のシートの下面と供給ローラ15の周面との摩擦力により、そのシートが共通パス14に送り込まれる。
【0090】
分離ローラ16は、前側から見て反時計回りに回転されている。シートの先端が分離ローラ16の周面と分離片22との接触部分に当接すると、分離ローラ16の回転により、シートが分離ローラ16の周面と分離片22との間に引き込まれる。シートが分離ローラ16の周面および分離片22から受ける摩擦力により、シートが1枚ずつに確実に分離される。そして、1枚のシートが分離ローラ16の周面と分離片22との間を通過する。
【0091】
第1LFローラ17は、前側から見て時計回りに回転されている。従動ローラ18は、第1LFローラ17の回転に伴って、前側から見て反時計回りに従動回転している。シートの先端が第1LFローラ17の周面と従動ローラ18の周面との接触部分に当接すると、第1LFローラ17の回転により、シートの先端部が第1LFローラ17の周面と従動ローラ18の周面との間に引き込まれる。そして、第1LFローラ17からシートに搬送力が付与される。
【0092】
シートの搬送が進むと、シートの下面が第1コンタクトガラス31に対向する。そして、CISモジュール33から第1コンタクトガラス31上のシートの下面に光が照射される。シートの下面での反射光がCISモジュール33のイメージセンサに受けられることにより、シートの下面に形成されている画像の読取りが達成される。
【0093】
また、シートの下面が第2コンタクトガラス32に対向する。そして、CISモジュール34から第2コンタクトガラス32上のシートの上面に光が照射される。シートの上面での反射光がCISモジュール34のイメージセンサに受けられることにより、シートの上面に形成されている画像の読取りが達成される。
【0094】
その後、シートの先端は、第2LFローラ19の周面と従動ローラ20の周面との接触部分に当接する。第2LFローラ19は、前側から見て時計回りに回転されている。従動ローラ20は、第2LFローラ19の回転に伴って、前側から見て反時計回りに従動回転している。これにより、シートの先端部が第2LFローラ19の周面と従動ローラ20の周面との間に引き込まれる。そして、第2LFローラ19からシートに搬送力が付与される。
【0095】
次いで、シートの先端は、第2LFローラ19の周面と従動ローラ21の周面との接触部分に当接する。従動ローラ21は、第2LFローラ19の回転に伴って、前側から見て反時計回りに従動回転している。これにより、シートの先端部が第2LFローラ19の周面と従動ローラ21の周面との間に引き込まれる。そして、第2LFローラ19からシートに搬送力が付与される。
【0096】
このとき、排出カバー4が閉じられているので、フラッパ45が図10に示される姿勢をなしている。そのため、第2LFローラ19の周面と従動ローラ21の周面との間から送り出されるシートは、その先端がフラッパ45に沿って移動することにより、折り返しパス41内を搬送される。
【0097】
折り返しパス41内を搬送されるシートは、第2LFローラ19の周面と従動ローラ44の周面との接触部分に向けて移動する。従動ローラ44は、第2LFローラ19の回転に伴って、前側から見て反時計回りに従動回転している。シートの先端が第2LFローラ19の周面と従動ローラ44の周面との接触部分に当接すると、シートの先端部が第2LFローラ19の周面と従動ローラ44の周面との間に引き込まれる。そして、第2LFローラ19からシートに搬送力が付与される。
【0098】
その後、シートの後端が第2LFローラ19の周面と従動ローラ44の周面との接触部分から離れると、シートが排出部12およびトレイ3上にそれらに跨がった状態に排出される。
<画像読取動作2>
【0099】
たとえば、シートが葉書などのコシのあるシートである場合、排出カバー4が開かれる。図1に示されるように、トレイ3が筐体2に対して開けられた状態で、1対のシート幅ガイド13の間の間隔がおおよそ葉書等の短辺の長さに合わされる。その後、シートが1対のシート幅ガイド13の間に右側から差し込まれる。1対のシート幅ガイド13の間の間隔が、差し込まれたシートの前後方向の長さに合わされる。こうして、葉書等のシートが供給部11上に載置される。
【0100】
シートの先端部は、供給ローラ15の周面上に配置される。供給ローラ15が前側から見て反時計回りに回転されると、シートの下面と供給ローラ15の周面との摩擦力により、そのシートが共通パス14に送り込まれる。
【0101】
分離ローラ16は、前側から見て反時計回りに回転されている。シートの先端が分離ローラ16の周面と分離片22との接触部分に当接すると、分離ローラ16の回転により、シートが分離ローラ16の周面と分離片22との間に引き込まれる。そして、シートが分離ローラ16の周面と分離片22との間を通過する。
【0102】
第1LFローラ17は、前側から見て時計回りに回転されている。従動ローラ18は、第1LFローラ17の回転に伴って、前側から見て反時計回りに従動回転している。シートの先端が第1LFローラ17の周面と従動ローラ18の周面との接触部分に当接すると、第1LFローラ17の回転により、シートの先端部が第1LFローラ17の周面と従動ローラ18の周面との間に引き込まれる。そして、第1LFローラ17からシートに搬送力が付与される。
【0103】
シートの搬送が進むと、シートの下面が第1コンタクトガラス31に対向する。そして、CISモジュール33から第1コンタクトガラス31上のシートの下面に光が照射される。シートの下面での反射光がCISモジュール33のイメージセンサに受けられることにより、シートの下面に形成されている画像の読取りが達成される。
【0104】
また、シートの下面が第2コンタクトガラス32に対向する。そして、CISモジュール34から第2コンタクトガラス32上のシートの上面に光が照射される。シートの上面での反射光がCISモジュール34のイメージセンサに受けられることにより、シートの上面に形成されている画像の読取りが達成される。
【0105】
その後、シートの先端は、第2LFローラ19の周面と従動ローラ20の周面との接触部分に当接する。第2LFローラ19は、前側から見て時計回りに回転されている。従動ローラ20は、第2LFローラ19の回転に伴って、前側から見て反時計回りに従動回転している。これにより、シートの先端部が第2LFローラ19の周面と従動ローラ20の周面との間に引き込まれる。そして、第2LFローラ19からシートに搬送力が付与される。
【0106】
次いで、シートの先端は、第2LFローラ19の周面と従動ローラ21の周面との接触部分に当接する。従動ローラ21は、第2LFローラ19の回転に伴って、前側から見て反時計回りに従動回転している。これにより、シートの先端部が第2LFローラ19の周面と従動ローラ21の周面との間に引き込まれる。そして、第2LFローラ19からシートに搬送力が付与される。
【0107】
このとき、排出カバー4が開かれているので、フラッパ45が図11に示される姿勢をなしている。つまり、フラッパ45により、共通パス14からワンウェイパス42へのシートの進入が許容されるため、第2LFローラ19の周面と従動ローラ21の周面との間から送り出されるシートは、ワンウェイパス42を搬送される。
【0108】
その後、シートの後端が第2LFローラ19の周面と従動ローラ21の周面との接触部分から離れると、シートの先端部が排出カバー4上に配置された状態に排出される。
【0109】
このとき、シートの腰が強いために、シートの先端部が排出カバー4またはワンウェイパス42の下面に当接し、シートの後端部が従動ローラ21の周面上に残った状態になることがある。この場合、従動ローラ21とともに回転する押出部24の突出部26がシートの後端部に当接し、シートの後端部が突出部26によって左側に押される。その結果、シートの後端部が従動ローラ21の周面上から落下し、シートの排出が完了する。
<作用効果>
【0110】
シートは、共通パス14を左方向に搬送される。共通パス14から折り返しパス41に送り込まれるシートは、左方向から右方向に折り返される。共通パス14からワンウェイパス42に送り込まれるシートは、左方向に排出される。ワンウェイパス42から排出されるシートは、排出カバー4によって受け取られる。このとき、排出カバー4は、開かれて、ワンウェイパス42に対して屈曲して延びる傾斜位置に配置されている。そのため、シートが排出カバー4に受け取られるときに、上側から見て、排出カバー4が占める面積が小さい。
【0111】
よって、シートを排出部12上と排出カバー4上とに選択的に排出できながら、画像読取装置1の専有面積、つまり平面サイズの増大を抑制できる。
【0112】
また、排出カバー4が開かれた状態で、排出カバー4が水平面HSに対して約50°の角度θ3で左上がりに傾斜して延びているので、排出カバー4に受け取られたシートを排出カバー4上から取り出しやすい。
【0113】
排出カバー4は、前後方向に延びる回動軸61を中心とする回動によって開閉される。排出カバー4が閉じられた状態で、排出カバー4の外面は、筐体2の左側面の前後方向の中央部をなす。よって、排出カバー4が閉じられているときには、排出カバー4が専有する面積をなくすことができる。その結果、画像読取装置1の専有面積をさらに縮小することができる。
【0114】
ワンウェイパス42は、水平面HSに対して左上がりに傾斜している。その傾斜角度θ1は、約20°である。排出カバー4が開かれた状態で、水平面HSに対する排出カバー4の傾斜角度θ3は、約50°である。したがって、排出カバー4が開かれた状態で、排出カバー4は、ワンウェイパス42に対して約30°の角度θ2で傾斜している。このような角度でワンウェイパス42および排出カバー4が傾斜していることにより、シートを共通パス14からワンウェイパス42を通して排出カバー4上に良好に排出することができる。
【0115】
また、図2図4図6および図8に示されるように、ワンウェイパス42の右端部の下方には、ワンウェイパス42が右上がりに傾斜することにより、スペース50が生じている。画像読取装置1は、左右方向に延びる揺動軸線を中心とする揺動により、水平面HSに沿った位置と、その前端部が不図示のプリンタに対して持ち上がった位置とに変位可能に設けられている。そして、スペース50には、画像読取装置1の前端部が不図示のプリンタに対して持ち上がった状態で画像読取装置1を支持するための支持アーム51が収容されている。これにより、スペース50を有効に利用されている。その結果、画像読取装置1のサイズをさらに縮小することができる。
<変形例>
【0116】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、他の形態で実施することもできる。
【0117】
たとえば、前述の構成では、排出カバー4が開かれた状態で、排出カバー4がワンウェイパス42に対して約30°の傾斜角度θ2で傾斜していることにより、ワンウェイパス42上から排出カバー4上に至る経路は、水平面HSに対する傾斜角度が2段階で変化している。これに限らず、ワンウェイパス42が屈曲して、ワンウェイパス42上から排出カバー4上に至る経路は、水平面HSに対する傾斜角度が3段階以上で変化していてもよい。
【0118】
排出カバー4は、図1および図2に示される閉じられた位置と図3および図4に示される開かれた位置との間の複数の位置に保持可能に設けられていてもよい。
【0119】
これにより、シートの腰の強弱に応じて、シートが排出カバー4に良好に排出されるように、排出カバー4の位置、つまり水平面HSに対する排出カバー4の傾斜角度を調節することができる。
【0120】
ワンウェイパス42は、図13Aおよび図13Bに図解的に示されるように、排出カバー4の回動に連動して揺動するように設けられていてもよい。たとえば、図13Aおよび図13Bに示される構成では、ワンウェイパス42を形成する搬送ガイド64の右端部に、前後方向に延びる回転軸68が設けられている。そして、搬送ガイド64は、回転軸68によって揺動可能に支持されている。排出カバー4が閉じられた状態では、図13Aに示されるように、搬送ガイド64が水平方向に対して相対的に大きい傾斜角度で左上がりに傾斜した姿勢をなす。そして、排出カバー4が開かれると、図13Bに示されるように、搬送ガイド64の左端部が自重によって回転軸68を中心に下方に下がり、搬送ガイド64が水平方向に対して相対的に小さい傾斜角度で左上がりに傾斜した姿勢をなす。
【0121】
排出カバー4の回動に連動して、ワンウェイパス42が排出カバー4と平行をなすように揺動することにより、ワンウェイパス42と排出カバー4との間隔を小さくすることができる。そのため、装置のサイズを縮小することができる。
【0122】
また、ワンウェイパス42は、図14に図解的に示されるように、折り返しパス41との分岐点から上方に延びていてもよい。そして、筐体2の上面には、たとえば、ワンウェイパス42から排出されるシートを受け取るための排出トレイ69が左上方に延びる姿勢に設けられていてもよい。
【0123】
また、コシのあるシートの一例として、葉書を挙げたが、これに限らず、例えば、名刺、及びクレジットカード等であってもよい。また、ワンウェイパス42内を搬送させるシートの一例としてコシのあるシートを挙げたが、これに限らず、例えば、レシートのようなコシのないシート等であってもよい。
【0124】
その他、前述の構成には、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0125】
1 画像読取装置
2 筐体
3 トレイ
4 排出カバー
14 共通パス
15 供給ローラ
41 折り返しパス
42 ワンウェイパス
51 支持アーム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図14