(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
自動車のような車両は、車載電源としてバッテリが不可欠で、この車載バッテリは充電が必要である。
この充電に際し、外部電源により車載バッテリへの充電を行う車両にあっては、電気自動車やプラグイン式ハイブリッド車両に見られるように、外部電源側または車両側(通常は外部電源側)に具えられた充電ケーブルの充電ガンを車両側または外部電源側(通常は車両側)の充電ポートに差し込んで充電ケーブルの接続を行い、この充電ケーブルを介して外部電源により車載バッテリを充電する。
【0003】
上記の充電に際し充電ケーブルの接続を行うに当たっては通常、運転者が車両から降りて当該充電ケーブルの接続作業を行う。
このとき運転者は、車輪駆動軸を回転ロックする駐車位置(Pレンジ)へのシフト操作により車両を移動しない状態にして上記の充電ケーブル接続操作を行う必要がある。
【0004】
しかし、運転者が駐車位置(Pレンジ)へのシフト操作を忘れて車両から降り、充電ケーブルの接続作業を行うと、車両が傾斜面上に停車されている場合などにおいて、車両が傾斜面方向における重力の分力を受けて移動することがある。
かかる車両の移動はバッテリの充電中、外部電源との間に延在している充電ケーブルを損傷するという問題を生ずる。
【0005】
そこで従来、充電ケーブル接続時の移動制限技術として、例えば特許文献1に記載のようなものが提案されている。
この提案技術は、充電ポートの蓋を開けてこのポートに充電ケーブルが接続されたらシフト操作位置を駐車位置(Pレンジ)以外へ、つまり停車位置(Nレンジ)や、前進走行位置(Dレンジ)や、後退走行位置(Rレンジ)へ切り替えすることができないようにする対策が提案された。
【0006】
この提案技術によれば、運転者が駐車位置(Pレンジ)へシフト操作して下車し、充電ケーブルの接続作業を行った後は、運転者が車内に戻り誤ってシフト操作を行ったとしてもPレンジ以外へのシフトが実行されることはない。
よって、充電ケーブルを介したバッテリへの充電中は誤操作によっても駐車位置(Pレンジ)が保持されて車両の移動を防止することができ、この移動で充電ケーブルが損傷するという上記の問題を解消することができる。
【0007】
しかしこの技術では、運転者が駐車位置(Pレンジ)へのシフト操作を忘れて充電ケーブルの接続作業を行った場合、駐車位置(Pレンジ)以外のシフト位置のまま充電が行われることとなって、充電ケーブル接続時における車両の移動制限を行い得ず、上記の問題解決を実現することができない。
【0008】
そこで特許文献1には更に加えて、駐車位置(Pレンジ)以外では充電ポートの蓋を開けることができないようロックして充電ケーブルの接続ができないようにする技術も提案されている。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を、図面に示す実施例に基づき詳細に説明する。
<実施例の構成>
図1は、本発明の一実施例になる、車両の充電ケーブル接続時における移動制限装置を具えた電気自動車(車両)1の全体制御システムを、バッテリ充電システムと共に示す概略系統図である。
【0018】
電気自動車1は、電動モータ11を動力源として具え、これにより車輪(図示せず)を駆動して走行可能なものとする。
電動モータ11は、強電バッテリ12を電源とし、車両コントローラ13によりインバータ14を介して供給電力を制御され、この供給電力に応じたトルクで上記車輪(図示せず)の駆動を行う。
【0019】
車両コントローラ13は、インバータ14を介した電動モータ11への供給電力制御に際し、運転者が走行形態に応じて手動操作するシフトユニット15のシフト位置、つまり駐車位置(Pレンジ)、後退走行位置(Rレンジ)、停車位置(Nレンジ)、および前進走行位置(Dレンジ)に基づき当該制御を行う。
【0020】
詳しくは本発明と関係ないため省略するが、シフトユニット15のこれらシフト位置を検出するシフト位置センサ15aからの信号を基に車両コントローラ13は、
駐車位置(Pレンジ)選択中の場合、電動モータ11への供給電力を0にし、シフト操作に機械的に応動するパークロック機構(図示せず)の作動による車輪回転ロックとで電気自動車1を駐車状態となし、
後退走行位置(Rレンジ)選択中の場合、電動モータ11への供給電力を車両後退(逆転)方向のものにすると共に、その大きさを図示せざるアクセルペダルの踏み込み量に応じたものにすることで、電気自動車1を後退走行させ、
停車位置(Nレンジ)選択中の場合、電動モータ11への供給電力を0にすることで電気自動車1を停車状態となし、
前進走行位置(Dレンジ)選択中の場合、電動モータ11への供給電力を車両
前進(正転)方向のものにすると共に、その大きさを図示せざるアクセルペダルの踏み込み量に応じたものにすることで、電気自動車1を前進走行させる。
【0021】
電気自動車1は、エアコンディショナーなどの強電補機系16と、12Vバッテリや各種ランプ類やワイパーなどの弱電補機系17とを具える。
強電補機系16は強電バッテリ12からの電力で直接駆動し、弱電補機系17は、強電バッテリ12からの電力をDC−DCコンバータ18により降圧して得られる電力で駆動する。
【0022】
強電バッテリ12は、
自宅等にある外部電源20、または
充電スタンド等にある車外充電装置30により充電可能とする。
外部電源20は、商用電源21およびこれに接続された電源コンセント22よりなり、電源コンセント22に充電ケーブル40を接続する。
【0023】
充電ケーブル40は、その一端を電源コンセント22に接続すべくこの電源コンセント22に差し込む電源プラグ41と、充電ケーブル40の中程に介在させたコントロールボックス42と、充電ケーブル40の他端に接続した充電ガン43とからなる。
【0024】
車外充電装置30は、
充電スタンド等に設置されている充電器31と、この充電器31から延在して充電ガン
32に至る充電ケーブル
33とで構成する。
【0025】
電気自動車1には、充電ガン43,32を差し込んで接続するための充電ポート51,52を設ける。
一方の充電ポート51は、電力供給装置53およびバッテリリレー54を順次経て強電バッテリ12に接続する。
【0026】
電力供給装置53は、車両コントローラ13による制御下で外部電源20(充電ケーブル40および充電ポート51)からの電力を形式変換すると共に昇圧して、バッテリ12の充電に供する。
【0027】
バッテリリレー54は、車両コントローラ13からの指令に応答してバッテリコントローラ55が開閉する。
バッテリコントローラ55はその他に、バッテリ12の充電状態や温度を監視して、バッテリ12の充放電を制限したり、極低温下においてバッテリ12の加温制御を行う。
【0028】
充電ポート52は、充電リレー56およびバッテリリレー54を順次介してバッテリ12に接続する。
【0029】
<充電ケーブル接続時における車両移動制限制御>
シフトユニット15は、前記したごとく運転者が駐車位置(Pレンジ)、後退走行位置(Rレンジ)、停車位置(Nレンジ)、および前進走行位置(Dレンジ)の選択に際して手動操作するだけでなく、シフトアクチュエータ15bによっても当該手動操作とは無関係にシフト操作し得るようになす。
【0030】
このシフトアクチュエータ15bは後で詳述するが、充電ガン43(32)を充電ポート51(52)に差し込んだ充電ケーブル40(33)の接続状態で車両コントローラ13からの指令に応動し、シフトユニット15を駐車位置(Pレンジ)へシフト動作させるよう機能する。
かかるシフトユニット15のシフト動作により図示せざるパークロック装置が作動されて駆動車輪を回転ロックすることで、充電ケーブル40(33)の接続状態において電気自動車1を移動制限することができる。
【0031】
かかる充電ケーブル接続時の車両移動制限に際し車両コントローラ13は、
図2の制御プログラムを実行して以下のように適宜アクチュエータ15bを介しシフトユニット15を駐車位置(Pレンジ)へシフト動作させる。
先ずステップS11において、充電ケーブル40(33)が接続されているか否かをチェックし、次のステップS12において、シフトユニット19によるシフト位置が駐車位置(Pレンジ)以外か否かをチェックする。
従ってステップS11は、本発明における充電ケーブル接続検知手段に相当する。
【0032】
ステップS11で充電ケーブル40(33)が接続されていないと判定する時や、ステップS12でシフト位置が駐車位置(Pレンジ)であると判定する時は、充電ケーブル接続状態でなかったり、充電ケーブル接続状態であっても駐車位置(Pレンジ)故に車両が移動しなくて、充電ケーブル接続時における車両移動制限が不要であるため、制御をそのまま終了する。
【0033】
ステップS11で充電ケーブル40(33)が接続されていると判定し、且つ、ステップS12でシフト位置が駐車位置(Pレンジ)以外であると判定する時は、充電ケーブル接続状態であって、駐車位置(Pレンジ)以外故に車両が移動可能なことから、充電ケーブル損傷防止などのために制御をステップS13以降に進める。
【0034】
ステップS13においては、ステップS11で充電ケーブル40(33)の接続が判定された時、つまり充電ケーブル接続検知時における車速VSP(車両の対地移動速度)が設定車速VSPs以上か否かをチェックする。
ここで設定車速VSPsは、充電ケーブル40(33)の接続が行われる筈のない車速域の下限値、
或いはその近傍値とする。
かくして、ステップS13で充電ケーブル接続検知時の車速VSPが設定車速VSPs以上であると判定した場合は、ステップS11での充電ケーブル接続判定(充電ケーブル接続検知信号)が異常であることを意味し、
ステップS13で充電ケーブル接続検知時の車速VSPが設定車速VSPs未満であると判定した場合は、ステップS11での充電ケーブル接続判定(充電ケーブル接続検知信号)が信頼できる正常なものであることを意味する。
【0035】
ステップS13で充電ケーブル接続検知時の車速VSPが設定車速VSPs未満であると判定した場合は、ステップS11の判定結果である充電ケーブル接続検知信号が信頼できる正常なものであることから、接続されている充電ケーブル40(33)の破損防止を図るために制御をステップS14へ進める。
このステップS14においては、車両移動制限用にアクチュエータ15bを介しシフトユニット15を駐車位置(Pレンジ)へ強制的にシフト動作させる。
従ってステップS14は、本発明における駐車手段に相当する。
【0036】
なおシフトユニット15は一般的なものと同様、駐車位置(Pレンジ)へのシフト後、この位置に自己保持されるものである。
従ってステップS14では、アクチュエータ15bがシフトユニット15を駐車位置(Pレンジ)へシフト動作するのに必要なシフト力を一瞬だけ発生するようアクチュエータ15bを駆動するものとする。
【0037】
上記のようにステップS14で一旦シフトユニット15が駐車位置(Pレンジ)へ強制的にシフト動作されると、その後に充電ケーブル40(33)が取り外されても、ステップS11がそのまま制御を終了するため、シフトユニット15は、運転者による手動シフト操作がない限り、駐車位置(Pレンジ)を保つ。
【0038】
かようにシフトユニット15が駐車位置(Pレンジ)へシフトされると、このシフト動作に既存のパークロック装置(図示せず)が応動して駆動車輪を回転ロックする。
このため、運転者がシフトユニット15をPレンジにするのを忘れたまま、充電ケーブル40(33)を接続した場合においても、電気自動車1はアクチュエータ15bによるシフトユニット15のPレンジ強制シフトで移動を制限(阻止)され、接続状態の充電ケーブル40(33)が損傷されるなどの問題を回避することができる。
【0039】
ステップS13で充電ケーブル接続検知時の車速VSPが設定車速VSPs以上であると判定した場合は、ステップS11の判定結果である充電ケーブル接続検知信号が信頼できない異常なものであることから、ステップS14をスキップして、ステップS15を通るループに制御を進める。
ステップS14の当該スキップで、充電ケーブル40(33)が接続されていないにもかかわらず電気自動車1が無用なPレンジへの強制シフトにより移動制限されるのを回避することができる。
【0040】
この間ステップS15においては、ステップS11の判定結果である充電ケーブル接続検知信号が異常であるとの判定を行い、同時にこの異常を運転席のインストルメントパネルに設けたランプやブザーに警報したり、必要な異常対策処理を行う。
【0041】
<実施例の効果>
上記した実施例の効果を、
図3,4に示す動作例1,2に基づき以下に説明する。
(a)
動作例1
図3は、車速VSP=0となる停車時t1の後、運転者がシフト位置を駐車位置(Pレンジ)にするのを忘れ、駐車位置(Pレンジ)以外の位置にしたまま車両から降り、瞬時t2に充電ケーブル40(33)を充電ポート51(52)に接続してバッテリ12への充電を開始した場合の動作タイムチャートである。
【0042】
充電ケーブル接続瞬時t2にステップS11が制御をステップS12に進め、このとき駐車位置(Pレンジ)以外のままであることから、ステップS12が制御をステップS13に進め、また、充電ケーブル接続時t2の車速VSPが設定車速VSPs未満の0であることから、ステップS13が制御をステップS14に進める。
【0043】
このステップS14は、所定の応答遅れ後の瞬時t3に強制Pレンジ要求信号(
図1参照)をシフトアクチュエータ15bへ出力し、このアクチュエータ15bは強制Pレンジ要求信号の立ち上がりに応動して、所定の動作遅れ後の瞬時t4にシフトユニット15をPレンジ位置にする。
この時におけるアクチュエータ15bの駆動は、シフトユニット15がPレンジ位置になるまでの一瞬であり、その後アクチュエータ15bの駆動が行われなくても、シフトユニット15はPレンジ位置を自己保持する。
【0044】
シフトユニット15がPレンジ位置にされるとき、これに応動する既存のパークロック装置(図示せず)が車輪の回転ロックにより電気自動車1を駐車状態にする。
よって、駐車位置(Pレンジ)へのシフト操作を忘れて充電ケーブル40(33)の接続作業を行ったとしても、この充電ケーブル接続状態で電気自動車1が移動することはなく、この車両移動により接続状態の充電ケーブル40(33)が損傷される懸念を払拭することができる。
【0045】
しかも本実施例によれば上記の作用効果を、充電ポート51,52の開閉制御や開閉検知に一切頼ることなく安価に、且つ僅かなエネルギーで実現することができ、
また車両に不可欠なシフトユニット15の駐車位置(Pレンジ)、つまりパークロック装置を流用することとも相俟って、従来技術の前記したコスト上の問題を解消可能である。
【0046】
なお
図3の瞬時t5に充電ケーブル40(33)の取り外しが行われた場合、ステップS11がステップS14をスキップして制御をそのまま終了するため、所定の応答遅れ後における瞬時t6に強制Pレンジ要求信号が消失する。
このときにおける強制Pレンジ要求信号の立ち下がりにシフトアクチュエータ15bは応動せず、シフトユニット15はPレンジ位置の前記した自己保持作用により、充電ケーブル取り外し瞬時t5以降もPレンジ位置を保つ。
よって、充電ケーブル取り外し瞬時t5以降運転者が運転席にいないのに、シフトユニット15がPレンジ以外の位置にされて電気自動車1が動き出すという問題を回避することができる。
【0047】
(b)
動作例2
図4は、運転者がシフト位置を駐車位置(Pレンジ)以外の前進走行位置(Dレンジ)にし、充電ケーブル40(33)の接続が行われる筈のない設定車速VSPs以上の車速VSPで走行している間の瞬時t1に、ステップS11が充電ケーブル40(33)の接続を判定して充電ケーブル接続検知信号を出力した場合の動作タイムチャートである。
【0048】
充電ケーブル接続判定瞬時t1にステップS11が制御をステップS12に進め、このとき駐車位置(Pレンジ)以外の前進走行位置(Dレンジ)であることから、ステップS12が制御をステップS13に進め、また、充電ケーブル接続判定瞬時t1の車速VSPが設定車速VSPs以上であることから、ステップS13が制御をステップS15に進める。
【0049】
このステップS15は、充電ケーブル40(33)の接続が行われる筈のない設定車速VSPs以上の車速VSPで走行している間の瞬時t1に充電ケーブル接続検知信号が出力されたことから、所定の応答遅れ後の瞬時t2に、この充電ケーブル接続検知信号が信頼できない異常信号であるとの判定を行い、必要に応じて警報を発したり異常対策処理を行う。
【0050】
かようにステップS15を通るループが選択されたということはステップS14が実行されないことを意味し、
充電ケーブル接続判定瞬時t1以降も、シフトアクチュエータ15bへの強制Pレンジ要求信号(
図1参照)はOFF(強制Pレンジ要求なし)のままとなる。
このため、充電ケーブル40(33)の接続が行われる筈のない設定車速VSPs以上の車速VSPで走行している間(
図4では瞬時t1)に充電ケーブル接続検知信号が発生した場合は、シフトユニット15が強制的にPレンジ位置にされることなく、前進走行位置(Dレンジ)のままである。
【0051】
よって充電ケーブル40(33)の接続が行われる筈のない車速域VSP≧VSPsでの走行中に発生した充電ケーブル接続検知信号の異常判定を行い得ると共に、この信号異常にもかかわらず(充電ケーブルの接続が行われていないのに)無用に、シフトユニット15が強制的にPレンジ位置にされる不都合を回避することができると共に、前進走行位置(Dレンジ)での走行が妨げられる弊害を回避することができる。