特許第5998672号(P5998672)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5998672車両の充電ケーブル接続時における移動制限装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5998672
(24)【登録日】2016年9月9日
(45)【発行日】2016年9月28日
(54)【発明の名称】車両の充電ケーブル接続時における移動制限装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 61/22 20060101AFI20160915BHJP
   F16H 63/48 20060101ALI20160915BHJP
   F16H 61/16 20060101ALI20160915BHJP
   B60L 11/18 20060101ALI20160915BHJP
【FI】
   F16H61/22
   F16H63/48
   F16H61/16
   B60L11/18 C
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-145531(P2012-145531)
(22)【出願日】2012年6月28日
(65)【公開番号】特開2014-9726(P2014-9726A)
(43)【公開日】2014年1月20日
【審査請求日】2015年4月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119644
【弁理士】
【氏名又は名称】綾田 正道
(72)【発明者】
【氏名】山本 直樹
【審査官】 日下部 由泰
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/060895(WO,A2)
【文献】 特開2010−172065(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 59/00−61/12
61/16−61/24
61/66−61/70
63/40−63/50
B60L 11/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
充電ケーブルを介し外部電源により充電可能なバッテリを搭載した車両において、
前記充電ケーブルが前記外部電源および前記車両に接続状態であるのを検知する充電ケーブル接続検知手段と、
この充電ケーブル接続検知手段が前記接続状態を検知するとき、前記車両を車輪が回転ロックされた駐車状態にする駐車手段を設け
前記車両の対地移動速度が、前記車両が走行していることを示す車速域の下限車速、若しくはその近傍値に定めた設定速度以上である間に、前記充電ケーブル接続検知手段が前記接続状態を検知するとき、前記駐車手段は車両を前記駐車状態にする動作を行わないよう構成したことを特徴とする車両の充電ケーブル接続時における移動制限装置。
【請求項2】
請求項1に記載された、車両の充電ケーブル接続時における移動制限装置において、
前記駐車手段は、車両の走行形態を選択するために運転者が操作するシフトユニットを該操作とは関係なく駐車位置となして前記車輪の回転ロックを行わせるものであることを特徴とする車両の充電ケーブル接続時における移動制限装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載された、車両の充電ケーブル接続時における移動制限装置において、
前記車両の対地移動速度が前記設定速度以上である間に前記充電ケーブル接続検知手段が前記充電ケーブルの接続を検知するとき、該充電ケーブル接続検知手段からの充電ケーブル接続検知信号が異常であると判定するものであることを特徴とする車両の充電ケーブル接続時における移動制限装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、適宜に接続可能な充電ケーブルを介し外部電源により充電可能なバッテリを搭載した車両の充電ケーブル接続時における移動制限を行う装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車のような車両は、車載電源としてバッテリが不可欠で、この車載バッテリは充電が必要である。
この充電に際し、外部電源により車載バッテリへの充電を行う車両にあっては、電気自動車やプラグイン式ハイブリッド車両に見られるように、外部電源側または車両側(通常は外部電源側)に具えられた充電ケーブルの充電ガンを車両側または外部電源側(通常は車両側)の充電ポートに差し込んで充電ケーブルの接続を行い、この充電ケーブルを介して外部電源により車載バッテリを充電する。
【0003】
上記の充電に際し充電ケーブルの接続を行うに当たっては通常、運転者が車両から降りて当該充電ケーブルの接続作業を行う。
このとき運転者は、車輪駆動軸を回転ロックする駐車位置(Pレンジ)へのシフト操作により車両を移動しない状態にして上記の充電ケーブル接続操作を行う必要がある。
【0004】
しかし、運転者が駐車位置(Pレンジ)へのシフト操作を忘れて車両から降り、充電ケーブルの接続作業を行うと、車両が傾斜面上に停車されている場合などにおいて、車両が傾斜面方向における重力の分力を受けて移動することがある。
かかる車両の移動はバッテリの充電中、外部電源との間に延在している充電ケーブルを損傷するという問題を生ずる。
【0005】
そこで従来、充電ケーブル接続時の移動制限技術として、例えば特許文献1に記載のようなものが提案されている。
この提案技術は、充電ポートの蓋を開けてこのポートに充電ケーブルが接続されたらシフト操作位置を駐車位置(Pレンジ)以外へ、つまり停車位置(Nレンジ)や、前進走行位置(Dレンジ)や、後退走行位置(Rレンジ)へ切り替えすることができないようにする対策が提案された。
【0006】
この提案技術によれば、運転者が駐車位置(Pレンジ)へシフト操作して下車し、充電ケーブルの接続作業を行った後は、運転者が車内に戻り誤ってシフト操作を行ったとしてもPレンジ以外へのシフトが実行されることはない。
よって、充電ケーブルを介したバッテリへの充電中は誤操作によっても駐車位置(Pレンジ)が保持されて車両の移動を防止することができ、この移動で充電ケーブルが損傷するという上記の問題を解消することができる。
【0007】
しかしこの技術では、運転者が駐車位置(Pレンジ)へのシフト操作を忘れて充電ケーブルの接続作業を行った場合、駐車位置(Pレンジ)以外のシフト位置のまま充電が行われることとなって、充電ケーブル接続時における車両の移動制限を行い得ず、上記の問題解決を実現することができない。
【0008】
そこで特許文献1には更に加えて、駐車位置(Pレンジ)以外では充電ポートの蓋を開けることができないようロックして充電ケーブルの接続ができないようにする技術も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平09−322313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし上記の提案技術では、運転者が駐車位置(Pレンジ)へのシフト操作を忘れて充電ケーブルの接続作業を行おうとした場合の問題解決を実現しようとすると、充電ポートの蓋を開けることができないようロックするものであることから、充電ポートの蓋を開閉制御する装置や、当該蓋の開閉を検知する手段が必要となり、構成上および制御上の双方においてコスト高になるという問題を生ずる。
【0011】
本発明は、運転者が駐車位置(Pレンジ)へのシフト操作を忘れて充電ケーブルの接続作業を行った場合における車両の移動制限(充電ケーブルの保護)を、充電ポート蓋の開閉制御や開閉検知に頼ることなく安価に実現して、従来技術の前記した問題を解消可能な車両の充電ケーブル接続時における移動制限装置を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的のため、本発明による車両の充電ケーブル接続時における移動制限装置は、これを以下のごとくに構成する。
先ず本発明の前提となる車両を説明するに、これは、
適宜に接続可能な充電ケーブルを介し外部電源により充電可能なバッテリを搭載したものである。
【0013】
本発明は、かかる車両において、
上記充電ケーブルが上記外部電源および上記車両に接続状態であるのを検知する充電ケーブル接続検知手段と、
この充電ケーブル接続検知手段が上記接続状態を検知するとき、上記車両を車輪が回転ロックされた駐車状態にする駐車手段を設け
上記車両の対地移動速度が、上記車両が走行していることを示す車速域の下限車速、若しくはその近傍値に定めた設定速度以上である間に、上記充電ケーブル接続検知手段が上記接続状態を検知するとき、上記駐車手段は車両を上記駐車状態にする動作を行わないよう構成した点に特徴づけられる。
【発明の効果】
【0014】
本発明による車両の充電ケーブル接続時における移動制限装置は、充電ケーブルの接続状態が検知されたとき駐車手段により車両を車輪が回転ロックされた駐車状態にするため、充電ケーブル接続時に車両が移動不能状態にされることとなり
駐車位置(Pレンジ)へのシフト操作を忘れて充電ケーブルの接続作業を行ったとしても、充電ケーブル接続状態で車両が移動することはなく、この移動により充電ケーブルが損傷される虞もない。
そして、車両の対地移動速度が、車両の走行を示す車速域の下限車速、若しくはその近傍値に定めた設定速度以上である間に、充電ケーブルの接続状態が検知されるとき、駐車手段が車両を駐車状態にする動作を行わないよう構成したため、
車両の対地移動速度が車両の走行を示す車速域であるのに充電ケーブルの接続状態が検知された異常検知に基づいて車両が駐車状態にされるのを回避し得ることとなり、当該車速域での走行が妨げられることがない。
【0015】
しかも本発明によれば、これらの作用効果を、充電ポート蓋の開閉制御や開閉検知に頼ることなく安価に実現することができ、また上記の駐車手段として、車両に不可欠なシフトユニットの駐車位置(Pレンジ)、つまりパークロック装置などを流用可能であることとも相俟って、従来技術の前記したコスト上の問題を解消可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施例になる、車両の充電ケーブル接続時における移動制限装置を具えた電気自動車の全体制御システムを、バッテリ充電システムと共に示す概略系統図である。
図2図1における車両コントローラが実行する、充電ケーブル接続時における車体移動制限用の制御プログラムを示すフローチャートである。
図3図2に示す、充電ケーブル接続時における車体移動制限制御プログラムの動作例1に係わる動作タイムチャートである。
図4図2に示す、充電ケーブル接続時における車体移動制限制御プログラムの動作例2に係わる動作タイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を、図面に示す実施例に基づき詳細に説明する。
<実施例の構成>
図1は、本発明の一実施例になる、車両の充電ケーブル接続時における移動制限装置を具えた電気自動車(車両)1の全体制御システムを、バッテリ充電システムと共に示す概略系統図である。
【0018】
電気自動車1は、電動モータ11を動力源として具え、これにより車輪(図示せず)を駆動して走行可能なものとする。
電動モータ11は、強電バッテリ12を電源とし、車両コントローラ13によりインバータ14を介して供給電力を制御され、この供給電力に応じたトルクで上記車輪(図示せず)の駆動を行う。
【0019】
車両コントローラ13は、インバータ14を介した電動モータ11への供給電力制御に際し、運転者が走行形態に応じて手動操作するシフトユニット15のシフト位置、つまり駐車位置(Pレンジ)、後退走行位置(Rレンジ)、停車位置(Nレンジ)、および前進走行位置(Dレンジ)に基づき当該制御を行う。
【0020】
詳しくは本発明と関係ないため省略するが、シフトユニット15のこれらシフト位置を検出するシフト位置センサ15aからの信号を基に車両コントローラ13は、
駐車位置(Pレンジ)選択中の場合、電動モータ11への供給電力を0にし、シフト操作に機械的に応動するパークロック機構(図示せず)の作動による車輪回転ロックとで電気自動車1を駐車状態となし、
後退走行位置(Rレンジ)選択中の場合、電動モータ11への供給電力を車両後退(逆転)方向のものにすると共に、その大きさを図示せざるアクセルペダルの踏み込み量に応じたものにすることで、電気自動車1を後退走行させ、
停車位置(Nレンジ)選択中の場合、電動モータ11への供給電力を0にすることで電気自動車1を停車状態となし、
前進走行位置(Dレンジ)選択中の場合、電動モータ11への供給電力を車両前進(正転)方向のものにすると共に、その大きさを図示せざるアクセルペダルの踏み込み量に応じたものにすることで、電気自動車1を前進走行させる。
【0021】
電気自動車1は、エアコンディショナーなどの強電補機系16と、12Vバッテリや各種ランプ類やワイパーなどの弱電補機系17とを具える。
強電補機系16は強電バッテリ12からの電力で直接駆動し、弱電補機系17は、強電バッテリ12からの電力をDC−DCコンバータ18により降圧して得られる電力で駆動する。
【0022】
強電バッテリ12は、自宅等にある外部電源20、または充電スタンド等にある車外充電装置30により充電可能とする。
外部電源20は、商用電源21およびこれに接続された電源コンセント22よりなり、電源コンセント22に充電ケーブル40を接続する。
【0023】
充電ケーブル40は、その一端を電源コンセント22に接続すべくこの電源コンセント22に差し込む電源プラグ41と、充電ケーブル40の中程に介在させたコントロールボックス42と、充電ケーブル40の他端に接続した充電ガン43とからなる。
【0024】
車外充電装置30は、充電スタンド等に設置されている充電器31と、この充電器31から延在して充電ガン32に至る充電ケーブル33とで構成する。
【0025】
電気自動車1には、充電ガン43,32を差し込んで接続するための充電ポート51,52を設ける。
一方の充電ポート51は、電力供給装置53およびバッテリリレー54を順次経て強電バッテリ12に接続する。
【0026】
電力供給装置53は、車両コントローラ13による制御下で外部電源20(充電ケーブル40および充電ポート51)からの電力を形式変換すると共に昇圧して、バッテリ12の充電に供する。
【0027】
バッテリリレー54は、車両コントローラ13からの指令に応答してバッテリコントローラ55が開閉する。
バッテリコントローラ55はその他に、バッテリ12の充電状態や温度を監視して、バッテリ12の充放電を制限したり、極低温下においてバッテリ12の加温制御を行う。
【0028】
充電ポート52は、充電リレー56およびバッテリリレー54を順次介してバッテリ12に接続する。
【0029】
<充電ケーブル接続時における車両移動制限制御>
シフトユニット15は、前記したごとく運転者が駐車位置(Pレンジ)、後退走行位置(Rレンジ)、停車位置(Nレンジ)、および前進走行位置(Dレンジ)の選択に際して手動操作するだけでなく、シフトアクチュエータ15bによっても当該手動操作とは無関係にシフト操作し得るようになす。
【0030】
このシフトアクチュエータ15bは後で詳述するが、充電ガン43(32)を充電ポート51(52)に差し込んだ充電ケーブル40(33)の接続状態で車両コントローラ13からの指令に応動し、シフトユニット15を駐車位置(Pレンジ)へシフト動作させるよう機能する。
かかるシフトユニット15のシフト動作により図示せざるパークロック装置が作動されて駆動車輪を回転ロックすることで、充電ケーブル40(33)の接続状態において電気自動車1を移動制限することができる。
【0031】
かかる充電ケーブル接続時の車両移動制限に際し車両コントローラ13は、図2の制御プログラムを実行して以下のように適宜アクチュエータ15bを介しシフトユニット15を駐車位置(Pレンジ)へシフト動作させる。
先ずステップS11において、充電ケーブル40(33)が接続されているか否かをチェックし、次のステップS12において、シフトユニット19によるシフト位置が駐車位置(Pレンジ)以外か否かをチェックする。
従ってステップS11は、本発明における充電ケーブル接続検知手段に相当する。
【0032】
ステップS11で充電ケーブル40(33)が接続されていないと判定する時や、ステップS12でシフト位置が駐車位置(Pレンジ)であると判定する時は、充電ケーブル接続状態でなかったり、充電ケーブル接続状態であっても駐車位置(Pレンジ)故に車両が移動しなくて、充電ケーブル接続時における車両移動制限が不要であるため、制御をそのまま終了する。
【0033】
ステップS11で充電ケーブル40(33)が接続されていると判定し、且つ、ステップS12でシフト位置が駐車位置(Pレンジ)以外であると判定する時は、充電ケーブル接続状態であって、駐車位置(Pレンジ)以外故に車両が移動可能なことから、充電ケーブル損傷防止などのために制御をステップS13以降に進める。
【0034】
ステップS13においては、ステップS11で充電ケーブル40(33)の接続が判定された時、つまり充電ケーブル接続検知時における車速VSP(車両の対地移動速度)が設定車速VSPs以上か否かをチェックする。
ここで設定車速VSPsは、充電ケーブル40(33)の接続が行われる筈のない車速域の下限値、或いはその近傍値とする。
かくして、ステップS13で充電ケーブル接続検知時の車速VSPが設定車速VSPs以上であると判定した場合は、ステップS11での充電ケーブル接続判定(充電ケーブル接続検知信号)が異常であることを意味し、
ステップS13で充電ケーブル接続検知時の車速VSPが設定車速VSPs未満であると判定した場合は、ステップS11での充電ケーブル接続判定(充電ケーブル接続検知信号)が信頼できる正常なものであることを意味する。
【0035】
ステップS13で充電ケーブル接続検知時の車速VSPが設定車速VSPs未満であると判定した場合は、ステップS11の判定結果である充電ケーブル接続検知信号が信頼できる正常なものであることから、接続されている充電ケーブル40(33)の破損防止を図るために制御をステップS14へ進める。
このステップS14においては、車両移動制限用にアクチュエータ15bを介しシフトユニット15を駐車位置(Pレンジ)へ強制的にシフト動作させる。
従ってステップS14は、本発明における駐車手段に相当する。
【0036】
なおシフトユニット15は一般的なものと同様、駐車位置(Pレンジ)へのシフト後、この位置に自己保持されるものである。
従ってステップS14では、アクチュエータ15bがシフトユニット15を駐車位置(Pレンジ)へシフト動作するのに必要なシフト力を一瞬だけ発生するようアクチュエータ15bを駆動するものとする。
【0037】
上記のようにステップS14で一旦シフトユニット15が駐車位置(Pレンジ)へ強制的にシフト動作されると、その後に充電ケーブル40(33)が取り外されても、ステップS11がそのまま制御を終了するため、シフトユニット15は、運転者による手動シフト操作がない限り、駐車位置(Pレンジ)を保つ。
【0038】
かようにシフトユニット15が駐車位置(Pレンジ)へシフトされると、このシフト動作に既存のパークロック装置(図示せず)が応動して駆動車輪を回転ロックする。
このため、運転者がシフトユニット15をPレンジにするのを忘れたまま、充電ケーブル40(33)を接続した場合においても、電気自動車1はアクチュエータ15bによるシフトユニット15のPレンジ強制シフトで移動を制限(阻止)され、接続状態の充電ケーブル40(33)が損傷されるなどの問題を回避することができる。
【0039】
ステップS13で充電ケーブル接続検知時の車速VSPが設定車速VSPs以上であると判定した場合は、ステップS11の判定結果である充電ケーブル接続検知信号が信頼できない異常なものであることから、ステップS14をスキップして、ステップS15を通るループに制御を進める。
ステップS14の当該スキップで、充電ケーブル40(33)が接続されていないにもかかわらず電気自動車1が無用なPレンジへの強制シフトにより移動制限されるのを回避することができる。
【0040】
この間ステップS15においては、ステップS11の判定結果である充電ケーブル接続検知信号が異常であるとの判定を行い、同時にこの異常を運転席のインストルメントパネルに設けたランプやブザーに警報したり、必要な異常対策処理を行う。
【0041】
<実施例の効果>
上記した実施例の効果を、図3,4に示す動作例1,2に基づき以下に説明する。
(a)動作例1
図3は、車速VSP=0となる停車時t1の後、運転者がシフト位置を駐車位置(Pレンジ)にするのを忘れ、駐車位置(Pレンジ)以外の位置にしたまま車両から降り、瞬時t2に充電ケーブル40(33)を充電ポート51(52)に接続してバッテリ12への充電を開始した場合の動作タイムチャートである。
【0042】
充電ケーブル接続瞬時t2にステップS11が制御をステップS12に進め、このとき駐車位置(Pレンジ)以外のままであることから、ステップS12が制御をステップS13に進め、また、充電ケーブル接続時t2の車速VSPが設定車速VSPs未満の0であることから、ステップS13が制御をステップS14に進める。
【0043】
このステップS14は、所定の応答遅れ後の瞬時t3に強制Pレンジ要求信号(図1参照)をシフトアクチュエータ15bへ出力し、このアクチュエータ15bは強制Pレンジ要求信号の立ち上がりに応動して、所定の動作遅れ後の瞬時t4にシフトユニット15をPレンジ位置にする。
この時におけるアクチュエータ15bの駆動は、シフトユニット15がPレンジ位置になるまでの一瞬であり、その後アクチュエータ15bの駆動が行われなくても、シフトユニット15はPレンジ位置を自己保持する。
【0044】
シフトユニット15がPレンジ位置にされるとき、これに応動する既存のパークロック装置(図示せず)が車輪の回転ロックにより電気自動車1を駐車状態にする。
よって、駐車位置(Pレンジ)へのシフト操作を忘れて充電ケーブル40(33)の接続作業を行ったとしても、この充電ケーブル接続状態で電気自動車1が移動することはなく、この車両移動により接続状態の充電ケーブル40(33)が損傷される懸念を払拭することができる。
【0045】
しかも本実施例によれば上記の作用効果を、充電ポート51,52の開閉制御や開閉検知に一切頼ることなく安価に、且つ僅かなエネルギーで実現することができ、
また車両に不可欠なシフトユニット15の駐車位置(Pレンジ)、つまりパークロック装置を流用することとも相俟って、従来技術の前記したコスト上の問題を解消可能である。
【0046】
なお図3の瞬時t5に充電ケーブル40(33)の取り外しが行われた場合、ステップS11がステップS14をスキップして制御をそのまま終了するため、所定の応答遅れ後における瞬時t6に強制Pレンジ要求信号が消失する。
このときにおける強制Pレンジ要求信号の立ち下がりにシフトアクチュエータ15bは応動せず、シフトユニット15はPレンジ位置の前記した自己保持作用により、充電ケーブル取り外し瞬時t5以降もPレンジ位置を保つ。
よって、充電ケーブル取り外し瞬時t5以降運転者が運転席にいないのに、シフトユニット15がPレンジ以外の位置にされて電気自動車1が動き出すという問題を回避することができる。
【0047】
(b)動作例2
図4は、運転者がシフト位置を駐車位置(Pレンジ)以外の前進走行位置(Dレンジ)にし、充電ケーブル40(33)の接続が行われる筈のない設定車速VSPs以上の車速VSPで走行している間の瞬時t1に、ステップS11が充電ケーブル40(33)の接続を判定して充電ケーブル接続検知信号を出力した場合の動作タイムチャートである。
【0048】
充電ケーブル接続判定瞬時t1にステップS11が制御をステップS12に進め、このとき駐車位置(Pレンジ)以外の前進走行位置(Dレンジ)であることから、ステップS12が制御をステップS13に進め、また、充電ケーブル接続判定瞬時t1の車速VSPが設定車速VSPs以上であることから、ステップS13が制御をステップS15に進める。
【0049】
このステップS15は、充電ケーブル40(33)の接続が行われる筈のない設定車速VSPs以上の車速VSPで走行している間の瞬時t1に充電ケーブル接続検知信号が出力されたことから、所定の応答遅れ後の瞬時t2に、この充電ケーブル接続検知信号が信頼できない異常信号であるとの判定を行い、必要に応じて警報を発したり異常対策処理を行う。
【0050】
かようにステップS15を通るループが選択されたということはステップS14が実行されないことを意味し、
充電ケーブル接続判定瞬時t1以降も、シフトアクチュエータ15bへの強制Pレンジ要求信号(図1参照)はOFF(強制Pレンジ要求なし)のままとなる。
このため、充電ケーブル40(33)の接続が行われる筈のない設定車速VSPs以上の車速VSPで走行している間(図4では瞬時t1)に充電ケーブル接続検知信号が発生した場合は、シフトユニット15が強制的にPレンジ位置にされることなく、前進走行位置(Dレンジ)のままである。
【0051】
よって充電ケーブル40(33)の接続が行われる筈のない車速域VSP≧VSPsでの走行中に発生した充電ケーブル接続検知信号の異常判定を行い得ると共に、この信号異常にもかかわらず(充電ケーブルの接続が行われていないのに)無用に、シフトユニット15が強制的にPレンジ位置にされる不都合を回避することができると共に、前進走行位置(Dレンジ)での走行が妨げられる弊害を回避することができる。
【符号の説明】
【0052】
1 電気自動車(車両)
11 電動モータ
12 強電バッテリ
13 車両コントローラ
14 インバータ
15 シフトユニット
15a シフト位置センサ
15b シフトアクチュエータ
16 強電補機系
17 弱電補機系
18 DC−DCコンバータ
20 外部電源
21 商用電源
22 電源コンセント
30 車外充電装置
31 充電器
32 充電ガン
33 充電ケーブル
40 充電ケーブル
41 電源プラグ
42 コントロールボックス
43 充電ガン
51,52 充電ポート
53 電力供給装置
54 バッテリリレー
55 バッテリコントローラ
56 充電リレー
図1
図2
図3
図4