(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記円周方向一端面のうち、前記各柱部の軸方向中央部と軸方向に関して整合する部分が、前記一端側支承面よりも周方向に凹んでいるか、又は前記円周方向他端面のうち、前記各柱部の軸方向中央部と軸方向に関して整合する部分が、前記他端側支承面よりも周方向に凹んでいる、請求項1に記載したラジアルころ軸受用保持器。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1〜3に記載される等により、保持器を備えたラジアルニードル軸受が、各種知られている。この様な従来構造のうち、特許文献1に記載された、自動車用手動変速機内の回転支持部分の構造に就いて、
図6により説明する。自動車用手動変速機を構成する歯車1a、1bは動力伝達軸2の周囲に、ラジアルころ軸受3a、3b及びシンクロ機構4a、4bを介し、この動力伝達軸2と同心に設置している。選択された変速段に対応する歯車1a(又は1b)は、前記シンクロ機構4a(又は4b)により前記動力伝達軸2と結合されて、この動力伝達軸2と同期して回転する様になる。これに対して、当該変速段に対応しない別の歯車1a(又は1b)は、前記動力伝達軸2に対し相対回転自在となる。前記各ラジアルニードル軸受3a、3bは、この様に選択された変速段に対応しない歯車1a(又は1b)と動力伝達軸2との相対回転を許容する為に設けている。
【0003】
従って、選択された変速段に対応する歯車1a(又は1b)と動力伝達軸2との間に設けたラジアルニードル軸受3a(又は3b)を構成し、それぞれが複列に配置された各ころ5a、5a(又は5b、5b)は、前記歯車1a(又は1b)の内周面である外輪軌道6a(又は6b)と、前記動力伝達軸2の外周面である内輪軌道7a(又は7b)との間で、自転も公転(歯車1a、1b及び動力伝達軸2に対する相対回転)もしない状態となる。
【0004】
又、前記ラジアルころ軸受3a、3bの場合、複列に配置された前記各ころ5a、5a(又は5b、5b)を、各列毎に設けた所謂単列型の保持器8a、8b(又は8c、8d)により転動自在に保持している。一方、この様な単列型の保持器8a、8b(又は8c、8d)に対して、複列(又は、多列)に配置された前記各ころ5a、5a(又は5b、5b)を、転動自在に保持する為に、前記単列型の保持器8a、8b(又は8c、8d)を軸方向に連結した如き形状を有した、複列型(多列型)の保持器を用いる事もできる。
【0005】
図7(a)は、ラジアルころ軸受を構成する複列型の保持器の1例として、特許文献4に記載された、保持器9の構造を示している。この保持器9は、複列に配置された各ころ5a、5a(又は5b、5b)(
図6参照)のうちの一方の列の各ころ5a(又は5b)を、転動自在に保持する為の複数の一方側ポケット10、10と、同じく他方の列の各ころ5a(又は5b)を保持する為の複数の他方側ポケット11、11とを有している。又、前記保持器9は、円周方向の1箇所に不連続部12を有しており、この不連続部12を挟んだ円周方向一端部13と、円周方向他端部14とを、係合部15により係合してこれら両端部13、14同士の軸方向の相対変位を実質的に阻止している。
【0006】
この様な従来の保持器9の場合、この保持器9を弾性変形させる事に基づいて、前記不連続部12の幅を円周方向に拡げる事ができる。この為、この不連続部12の幅を、前記保持器9を組み付ける前記動力伝達軸2{動力伝達軸2に外嵌固定された円筒状部材16(
図6参照)等を含む}等の軸部材の外径寸法よりも大きく拡げる事で、前記不連続部12の間に前記動力伝達軸2を通過させる様にして、前記保持器9をこの動力伝達軸2の周囲に組み付ける事も可能になるし、或いは、前記保持器9の内径寸法を、前記動力伝達軸2に設けられた段部又は外向フランジ状の鍔部等の障害物を乗り越えられる程度に弾性的に拡げる事で、前記保持器9を前記動力伝達軸2の周囲に軸方向に移動させて組み付ける事も可能になる。
【0007】
但し、前記保持器9は、前記円周方向一端部13と円周方向他端部14との円周方向に関する相対変位を規制していない。この為、運転時に、前記保持器9が弾性変形すると、前記両端部13、14同士の円周方向に関する間隔(隙間)が変化して、この間隔が小さくなった場合には、これら両端部13、14の先端面同士が強く当接する場合がある。
【0008】
図7(b)は、上述の様な保持器9の構造に於いて、前記両端部13、14同士の円周方向に関する間隔が最も小さくなった状態を示している。この状態では、前記両端部13、14同士が、前記係合部15を構成する、第一の係合凸部17a、17bの先端面と第二の係合凹部20a、20bの奥端面とが、第二の係合凸部19a、19bの先端面と第一の係合凹部18a、18bの奥端面とが、それぞれ当接(円周方向に関する荷重を支承)する。
【0009】
この様な当接部分は、前記不連続部12を挟んで設けられた円周方向一端の一方側、他方側柱部21、22、及び円周方向他端の一方側、他方側柱部21、22の軸方向中間部に相当する部分であり、円周方向に関する剛性が低い部分である。この様に剛性が低い部分で、前記当接に基づく円周方向の荷重を繰り返し支承し続けると、この部分に繰り返し大きな応力が生じて、この部分が損傷し、前記ラジアルころ軸受用保持器9の耐久性が低下してしまう可能性がある。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[実施の形態の第1例]
図1〜2は、総ての請求項に対応する、本発明の実施の形態の第1例を示している。
本発明のラジアルころ軸受用保持器9aは、前述した先発明のラジアルころ軸受用保持器9と同様に、複列に配置された各ころ5a、5a(又は5b、5b)(
図6参照)を、転動自在に保持する為のものであり、円周方向の少なくとも一部に不連続部12aを設けている。
【0019】
この様な本例のラジアルころ軸受用保持器9aは、それぞれが欠円環状で軸方向に間隔をあけて互いに同心に設けられた、一端側リム部23と、他端側リム部24と、特許請求の範囲の中間側リム部に相当する中央側リム部25とを有する。この中央側リム部25は、前記一端側、他端側両リム部24、25の軸方向中央位置に設けている。
【0020】
又、軸方向に隣り合う前記一端側リム部23と前記中央側リム部25との間に掛け渡される状態で、円周方向に亙って間欠的に、複数本の一方側柱部21a、21aを設けている。
一方、軸方向に隣り合う前記中央側リム部25と前記他端側リム部24との間に掛け渡される状態で、円周方向に亙って間欠的に、複数本の他方側柱部22a、22aを設けている。
【0021】
又、前記一端側、中央側両リム部23、25と、円周方向に隣り合う前記各一方側柱部21a、21aとにより四周を囲まれる部分を、前記各ころ5a(又は5b)を転動自在に保持する為の一方側ポケット26、26としている。
一方、前記中央側、他端側両リム部25、24と、円周方向に隣り合う前記各他方側柱部22a、22aとにより四周を囲まれる部分を、前記各ころ5a(又は5b)を転動自在に保持する為の他方側ポケット27、27としている。
本例の場合、前記各一方側ポケット26、26と他方側ポケット27、27との円周方向に関する位相を、互いに一致させている。
【0022】
又、この様なラジアルころ軸受用保持器9aは、前記不連続部12aを挟んで設けられた、円周方向一端部13bと円周方向他端部14bとを、係合部15aにより、これら両端部13b、14b同士の軸方向の相対変位を実質的に阻止した状態で係合している。
又、前記係合部15aは、前記円周方向一端部13bの軸方向に離隔した位置に形成された1対の第一の凹凸部28a、28bと、前記円周方向他端部14bの軸方向に離隔した位置に形成された第二の凹凸部29a、29bとから成る。このうちの両第一の凹凸部28a、28bは、前記各一方側ポケット26、26の軸方向中間部に整合する位置と、前記各他方側ポケット27、27の軸方向中間部に整合する位置とに形成している。又、前記両第二の凹凸部29a、29bは、前記一方側ポケット26、26の軸方向中間部に整合する位置と、前記各他方側ポケット27、27の軸方向中間部に整合する位置とに形成している。
【0023】
このうちの両第一の凹凸部28a、28bは、それぞれが第一の係合凸部30a、30bと、第一の係合凹部31a、31bとから成る。
このうち、一方(
図2の左側)の第一の凹凸部28aを構成する第一の係合凸部30aは、前記各一方側ポケット26、26の軸方向中央部よりも少し軸方向一方寄り部分と整合する位置に、円周方向(前記円周方向他端部14b側)に延出した状態で形成している。同じく、第一の係合凹部31aは、前記第一の係合凸部30aの軸方向他方側(前記各一方側ポケット26、26のほぼ軸方向中央部と整合する位置)に、円周方向(前記円周方向他端部14bと反対方向)に凹入した状態で形成している。
【0024】
又、他方(
図1の右側)の第一の凹凸部28bを構成する第一の係合凸部30bは、前記各他方側ポケット27、27の軸方向中央部よりも少し軸方向他方寄り部分と整合する位置に、円周方向(前記円周方向他端部14b側)に延出した状態で形成している。同じく、第一の係合凹部31bは、前記第一の係合凸部30bの軸方向一方側(前記各他方側ポケット27、27のほぼ軸方向中央部と整合する位置)に、円周方向(前記円周方向他端部14bと反対方向)に凹入した状態で形成している。
【0025】
又、前記第二の凹凸部29a、29bは、それぞれが第二の係合凸部32a、32bと、第二の係合凹部33a、33bとから成る。
このうち、一方(
図2の左側)の第二の凹凸部29aを構成する第二の係合凸部32aは、軸方向に関して前記一方の第一の係合凹部31aと整合する部分に、円周方向(前記円周方向一端部13b側)に延出した状態で形成している。同じく、一方(
図2の左側)の第二の凹凸部29aを構成する第二の係合凹部33aは、軸方向に関して前記一方の第一の係合凸部30aと整合する部分に、円周方向(前記円周方向一端部13bと反対方向)に凹入した状態で形成している。
【0026】
又、前記第二の凹凸部29a、29bのうちの、他方(
図2の右側)の第二の凹凸部29bを構成する第二の係合凸部32bは、軸方向に関して前記他方の第一の係合凹部31bと整合する部分に、円周方向(前記円周方向一端部13b側)に延出した状態で形成している。同じく、第二の係合凹部33bは、前記他方の第一の係合凸部30bと軸方向に関して整合する部分に、円周方向(前記円周方向一端部13bと反対方向)に凹入した状態で形成している。
【0027】
本例の場合、前記一方の第一の凹凸部28aを構成する第一の係合凸部30aの軸方向他方側に前記一方の第二の凹凸部29aを構成する第二の係合凸部32aを配置する共に、前記他方の第一の凹凸部28bを構成する第一の係合凸部30bの軸方向一方側に前記他方の第二の凹凸部29bを構成する第二の係合凸部32bを配置した状態で、前記両第一の凹凸部28a、28bと、前記両第二の凹凸部29a、29bとを凹凸係合させている。この様に凹凸係合した状態で、前記一方の第一の係合凸部30aと前記一方の第二の係合凸部32a、及び前記他方の第一の係合凸部30bと前記他方の第二の係合凸部32bとを軸方向に関して係合させ、前記円周方向一端部13bと、前記円周方向他端部14bとの軸方向に関する相対変位を規制(実質的に阻止)している。
【0028】
特に本例のラジアルころ軸受用保持器9aの場合、前記不連続部12aを挟んで設けられた円周方向一端面34のうちの、前記中央側リム部25と軸方向に関して整合する部分を、一端側支承面35としている。
又、円周方向他端面36のうちの、前記中央側リム部25と軸方向に関して整合する部分を、他端側支承面37としている。
そして、前記円周方向一端面34と前記円周方向他端面36との間に存在する円周方向に関する隙間38のうち、前記一端側支承面35と、前記他端側支承面37との間に存在する隙間を、他の隙間よりも小さくしている。
【0029】
即ち、
図2(a)に示す様に、前記一端側支承面35と前記他端側支承面37との間に存在する円周方向に関する隙間H
1を、前記両第一の係合凹部31a、31bの奥端面と前記両第二の係合凸部32a、32bの先端面との間に存在する円周方向に関する隙間H
2、H
2、及び前記両第一の係合凸部30a、30bの先端面と前記両第二の係合凹部33a、33bの奥端面との間に存在する円周方向に関する隙間H
3、H
3、及び前記一端側、他端側リム部23、24の円周方向一端面と円周方向他端面との間に存在する円周方向に関する隙間H
4、H
4よりも小さくしている(H
1<H
2、H
1<H
3、H
1<H
4)。
【0030】
この様な構成を有する本例のラジアルころ軸受用保持器9aが、
図2(b)に示す様に、前記円周方向一端面34と、前記円周方向他端面36とが円周方向に最も近付いた状態では、前記一端側支承面35と前記他端側支承面37との間に存在した円周方向に関する隙間H
1のみが0になり(H
1=0、隙間が消滅し)、前記他の隙間H
2、隙間H
3、隙間H
4は0より大きいままとなる(H
2>0、H
3>0、H
4>0、隙間が残る)。
【0031】
この様な本例のラジアルころ軸受用保持器9aによれば、前記一端側支承面35と前記他端側支承面37とが当接した(隙間が消滅した)状態でも、その他の部分には円周方向に関する隙間が残る(当接しない)。この為、運転時のラジアルころ軸受用保持器9aの弾性変形に基づいて、前記円周方向一端面34と円周方向他端面36とが強く当接した場合でも、この当接に基づく荷重を、前記中間側リム部25を設けた、円周方向に関する剛性が高い部分で支承する事ができる。その結果、前記ラジアルころ軸受用保持器9aの一部に過大な応力が生じる事を防止して、このラジアルころ軸受用保持器9aの耐久性の向上を図れる。
【0032】
特に本例のラジアルころ軸受用保持器9aの場合、前記円周方向一端面34のうち、前記一方側、他方側各柱部21a、22aの軸方向中央部と軸方向に関して整合する部分を、前記一端側支承面35よりも周方向に凹ませている。更に、前記円周方向他端面36のうち、前記一方側、他方側各柱部21a、22aの軸方向中央部と軸方向に関して整合する部分を、前記他端側支承面37よりも周方向に凹ませている。従って、前記円周方向一端面34と前記円周方向他端面36とが円周方向に最も近付き、前記一端側支承面35と前記他端側支承面37とが当接した状態でも、前記円周方向一端面34のうち、前記一方側、他方側各柱部21a、22aの軸方向中央部と軸方向に関して整合する部分と、前記円周方向他端面36のうち、前記一方側、他方側各柱部21a、22aの軸方向中央部と軸方向に関して整合する部分との間には、円周方向に関する隙間が残る(当接しない)。この為、前記一方側、他方側各柱部21a、22aの様に、円周方向に関する剛性が低い部分に、前記当接に基づく荷重が加わる事をより確実に防止して、前記ラジアルころ軸受用保持器9aの耐久性の向上をより確実に図れる。
【0033】
[実施の形態の第2例]
図3は、本発明の実施の形態の第2例を示している。本例のラジアルころ軸受用保持器9bは、上述した実施の形態の第1例のラジアルころ軸受用保持器9aの構造と同様に、複列に配置された各ころ5a、5a(又は5b、5b)(
図6参照)を、転動自在に保持する為のものである。
本例のラジアルころ軸受用保持器9bの場合、不連続部12bを挟んで設けられた円周方向一端部13aに設けた第一の係合凹部31c、31dの軸方向に関する寸法を、前述した実施の形態の第1例の構造よりも大きくしている。具体的には、軸方向一方(
図3の左側)の第一の係合凹部31cを上述した実施の形態の第1例の構造よりも軸方向中央寄りにまで延長している。一方、軸方向他方(
図3に右側)の第一の係合凹部31dを上述した実施の形態の第1例の構造よりも軸方向中央寄りにまで延長している。そして、一端側支承面35aの軸方向に関する寸法を、上述した実施の形態の第1例の構造よりも小さくしている。
【0034】
又、前記不連続部12bを挟んで設けられた円周方向他端部14aに設けた第二の係合凸部32a、32bのうちの、軸方向一方の第二の係合凸部32aの軸方向他方側に、円周方向(前記円周方向一端部13aと反対方向)に凹入した状態で、他端側凹部39aを形成している。一方、軸方向他方の第二の係合凸部32bの軸方向一方側に、円周方向(前記円周方向一端部13aと反対方向)に凹入した状態で、他端側凹部39bを形成している。そして、他端側支承面37aの軸方向に関する寸法を、上述した実施の形態の第1例の構造よりも小さくしている。
【0035】
この様に本例のラジアルころ軸受用保持器9bの場合、上述した実施の形態の第1例の構造よりも、一端側、他端側両支承面35a、37aの軸方向に関する寸法を小さくしている。従って、前記ラジアルころ軸受用保持器9bの一部、特に円周方向両端の各柱部21a、22aに過大な応力が生じる事を、より確実に防止できる。又、実施の形態の第1例の構造よりも、ラジアルころ軸受用保持器9bを成形する為の材料が少なくて済む。その結果、ラジアルころ軸受用保持器9bの材料コストの低減、及び軽量化を図れる。その他の構成及び作用・効果に就いては、上述した実施の形態の第1例の場合とほぼ同様である。
【0036】
[実施の形態の第3例]
図4は、本発明の実施の形態の第3例を示している。本例のラジアルころ軸受用保持器9cは、3列に配置されたころ(図示省略)を転動自在に保持する為のものである。この様なラジアルころ軸受用保持器9cは、一端側リム部23aと、他端側リム部24aと、これら一端側、他端側両リム部23a、24a同士の軸方向に関する間部分に設けられた、それぞれが特許請求の範囲の中間側リム部に相当する、一端寄り中間側リム部40及び他端寄り中間側リム部41とを、軸方向に間隔をあけて互いに同心に配置している。
【0037】
又、円周方向に亙って間欠的に、前記一端側リム部23aと一端寄り中間側リム部40との間に掛け渡される状態で、複数本の一方側柱部21b、21bを設けている。そして、円周方向に隣り合う一方側柱部21b、21bと前記一端側、一端寄り中間側両リム部23a、40とにより四周を囲まれた部分を、それぞれころを転動自在に保持する為の一方側ポケット26a、26aとしている。
【0038】
又、円周方向に亙って間欠的に、前記一端寄り中間側リム部40と前記他端寄り中間側リム部41との間に掛け渡される状態で、複数本の中央側柱部42、42を設けている。そして、円周方向に隣り合う中間側柱部42、42と前記一端寄り、他端寄り両中間側リム部40、41とにより四周を囲まれた部分を、それぞれころを転動自在に保持する為の中間側ポケット43、43としている。
【0039】
又、円周方向に亙って間欠的に、前記他端寄り中間側リム部41と、前記他端側リム部24aとの間に掛け渡される状態で複数本の他方側柱部22b、22bを設けている。そして、円周方向に隣り合う他方側柱部22b、22bと前記他端寄り中間側、他端側両リム部40、24aとにより四周を囲まれた部分を、それぞれころを転動自在に保持する為の他方側ポケット27a、27aとしている。又、本例の場合、前記各一方側、中間側、他方側各ポケット26a、43、27a同士の、円周方向に関する位相を、互いに一致させている。
【0040】
又、本例のラジアルころ軸受用保持器9cも、前述した実施の形態の第1例と同様に、円周方向の1箇所に不連続部12bを有している。又、この不連続部12bを挟んで設けられた円周方向一端部13cと、円周方向他端部14cとを、係合部15bにより、これら両端部13c、14c同士の軸方向に関する相対変位を阻止する状態で係合している。
【0041】
この様な係合部15bは、前記円周方向一端部13cの軸方向に離隔した位置(前記各一方側ポケット26a、26aの軸方向中間部と整合する位置、前記各他方側ポケット27a、27aの軸方向中間部と整合する位置)に形成された1対の第一の凹凸部28c、28dと、前記円周方向他端部14cの軸方向に離隔した位置(前記一方側ポケット26a、26aの軸方向中間部と整合する位置、前記各他方側ポケット27a、27aの軸方向中間部と整合する位置)に形成された第二の凹凸部29c、29dとから成る。
【0042】
このうちの両第一の凹凸部28c、28dは、それぞれが第一の係合凸部30c、30dと、第一の係合凹部31e、31fとから成る。
この様な両第一の凹凸部28c、28dのうちの、一方(
図2の左側)の第一の凹凸部28cを構成する第一の係合凸部30cは、前記各一方側ポケット26a、26aのほぼ軸方向中央部と整合する位置に、円周方向(前記円周方向他端部14c側)に延出した状態で形成している。同じく、第一の係合凹部31eは、前記第一の係合凸部30cの軸方向一方側(前記各一方側ポケット26a、26aの軸方向中央部よりもやや軸方向一方寄り部分)に、円周方向(前記円周方向他端部14cと反対方向)に凹入した状態で形成している。
【0043】
又、前記両第一の凹凸部28c、28dのうちの、他方(
図1の右側)の第一の凹凸部28dを構成する第一の係合凸部30dは、前記各他方側ポケット27a、27aのほぼ軸方向中央部と整合する位置に、円周方向(前記円周方向他端部14c側)に延出した状態で形成している。同じく、第一の係合凹部31fは、前記第一の係合凸部30dの軸方向他方側(前記各他方側ポケット27a、27aの軸方向中央部よりもやや軸方向他方寄り部分)に、円周方向(前記円周方向他端部14cと反対方向)に凹入した状態で形成している。
【0044】
又、前記両第二の凹凸部29c、29dは、それぞれが第二の係合凸部32c、32dと、第二の係合凹部33c、33dとから成る。
前記第二の凹凸部29c、29dのうちの、一方(
図2の左側)の第二の凹凸部29cを構成する第二の係合凸部32cは、前記一方の第一の係合凹部31eと軸方向に関して整合する部分に、円周方向(前記円周方向一端部13c側)に延出した状態で形成している。同じく、第二の係合凹部33cは、前記一方の第一の係合凸部30cと軸方向に関して整合する部分に、円周方向(前記円周方向一端部13cと反対方向)に凹入した状態で形成している。
【0045】
又、前記第二の凹凸部29c、29dのうちの、他方(
図2の右側)の第二の凹凸部29dを構成する第二の係合凸部32dは、前記他方の第一の係合凹部31fと軸方向に関して整合する部分に、円周方向(前記円周方向一端部13c側)に延出した状態で形成している。同じく、第二の係合凹部31fは、前記他方の第一の係合凸部30dと軸方向に関して整合する部分に、円周方向(前記円周方向一端部13cと反対方向)に凹入した状態で形成している。
【0046】
本例の場合、前記一方の第一の凹凸部28cを構成する第一の係合凸部30cの軸方向一方側に前記一方の第二の凹凸部29cを構成する第二の係合凸部32cを配置する共に、前記他方の第一の凹凸部28dを構成する第一の係合凸部30dの軸方向他方側に前記他方の第二の凹凸部29dを構成する第二の係合凸部32dを配置した状態で、前記両第一の凹凸部28c、28dと、前記両第二の凹凸部29c、29dとを凹凸係合させている。
【0047】
この様に凹凸係合した状態で、前記一方の第一の係合凸部30cと前記一方の第二の係合凸部32c、及び前記他方の第一の係合凸部30dと前記他方の第二の係合凸部32dとを軸方向に関して係合させ、前記円周方向一端部13cと、前記円周方向他端部14cとの軸方向に関する相対変位を規制している。
【0048】
又、本例の場合も、前述した実施の形態の第1例と同様に、前記不連続部12bを挟んで設けられた前記円周方向一端面34aのうちの、前記一端寄り中間側リム部40の軸方向中央部と軸方向に関して整合する部分、及び前記他端寄り中間側リム部41の軸方向中央部と軸方向に関して整合する部分を、一端側支承面35bとしている。尚、本例の場合、前記円周方向一端面34aのうちの、前記一端寄り中間側リム部40と軸方向に関して整合する部分と、前記他端寄り中間側リム部41と軸方向に関して整合する部分と、これら両部分に隣り合う部分とが、互いに同一面上に存在している。即ち、本例の場合、前記円周方向一端面34aのうちの、前記一方の第一の凹凸部28cを構成する第一の係合凸部30cの軸方向他方側から、前記他方の第一の凹凸部28dを構成する第一の係合凸部30dの軸方向一方側に掛けての部分を、前記一端側支承面35bとしている。
【0049】
又、前記ラジアルころ軸受用保持器9cの円周方向他端面36aのうちの、前記一端寄り中間側リム部40と軸方向に関して整合する部分、及び前記他端寄り中間側リム部41と軸方向に関して整合する部分とを他端側支承面37bとしている。尚、本例の場合、前記円周方向一端面36aのうちの、前記一端寄り中間側リム部40と軸方向に関して整合する部分と、前記他端寄り中間側リム部41と軸方向に関して整合する部分と、これら両部分に隣り合う部分とが、互いに同一面上に存在している。即ち、本例の場合、前記円周方向他端面36aのうちの、前記一方の第二の凹凸部29cを構成する第二の係合凹部33cの軸方向他方側から、前記他方の第二の凹凸部29dを構成する第二の係合凹部33dの軸方向一方側に掛けての部分を、前記他端側支承面37bとしている。
【0050】
又、本例の場合、前記円周方向一端面34aと前記円周方向他端面36aとの間に存在する円周方向に関する隙間38aのうち、前記一端側支承面35bと前記他端側支承面37bとの間に存在する円周方向に関する隙間を、他の部分の隙間よりも小さくしている。
即ち、
図4(a)に示す様に、前記一端側支承面35bと前記他端側支承面37bとの間に存在する円周方向に関する隙間H
1を、前記両第一の係合凸部30c、30dの先端面と、前記両第二の係合凹部33c、33dの奥端面との間に存在する円周方向に関する隙間H
2、H
2、及び前記両第一の係合凹部31e、31fの奥端面と前記両第二の係合凸部32c、32dの先端面との間に存在する円周方向に関する隙間H
3、H
3、及び前記一端側、他端側リム部23a、24aの円周方向一端面と円周方向他端面との間に存在する円周方向に関する隙間H
4、H
4よりも小さくしている。
【0051】
この様な構成を有する本例のラジアルころ軸受用保持器9aが、
図4(b)に示す様に、前記円周方向一端面34aと、前記円周方向他端面36aとが円周方向に最も近付いた状態では、前記一端側支承面35bと前記他端側支承面37bとの間に存在した円周方向に関する隙間H
1が0になり(H
1=0)、前記両第一の係合凸部30c、30dの先端面と、前記両第二の係合凹部33c、33dの奥端面との間に存在する円周方向に関する隙間H
2、H
2、及び前記両第一の係合凹部31e、31fの奥端面と前記両第二の係合凸部32c、32dの先端面との間に存在する円周方向に関する隙間H
3、H
3、及び前記一端側、他端側リム部23a、24aの円周方向一端面と円周方向他端面との間に存在する円周方向に関する隙間H
4、H
4は0より大きい(H
2>0、H
3>0、H
4>0)。その他の構成及び作用・効果に就いては、前述した実施の形態の第1例の場合とほぼ同様である。
【0052】
[実施の形態の第4例]
図5は、本発明の実施の形態の第4例を示している。本例のラジアルころ軸受用保持器9dは、前述した実施の形態の第3例のラジアルころ軸受用保持器9cと同様に、3列に配置されたころ(図示省略)を転動自在に保持する為のものである。
【0053】
特に本例のラジアルころ軸受用保持器9dの場合、不連続部12cに片側で対向する円周方向一端面34bのうちの軸方向中央部分(各中間側ポケット43、43の軸方向中央部分と整合する位置)に、円周方向(円周方向他端面36bと反対方向)に凹入した状態で、一端側凹部44を形成している。
一方、前記不連続部12cに他側で対向する円周方向他端面36bのうちの軸方向中央部分(前記各中間側ポケット43、43の軸方向中央部分と整合する位置)に、円周方向(前記円周方向一端面34bと反対方向)に凹入した状態で、他端側凹部45を形成している。
【0054】
即ち、本例のラジアルころ軸受用保持器9dの場合、前記円周方向一端面34bのうちの、一端寄り中間側リム部40の軸方向中央部と軸方向に関して整合する部分を、第一の一端側支承面46としている。又、前記円周方向一端面34bのうちの、他端寄り中間側リム部41の軸方向中央部と軸方向に関して整合する部分を、第二の一端側支承面47としている。
【0055】
一方、前記円周方向他端面36bのうちの、一端寄り中間側リム部40の軸方向中央部と軸方向に関して整合する部分を、第一の他端側支承面48としている。又、前記円周方向他端面36bのうちの、他端寄り中間側リム部41の軸方向中央部と軸方向に関して整合する部分を、第二の他端側支承面49としている。
そして、前記円周方向一端面34bと前記円周方向他端面36bとの間に存在する円周方向に関する隙間38bのうち、前記第一、第二の各一端側支承面46、47と、前記第一、第二の各他端側支承面48、49との間に存在する円周方向に関する隙間を、他の部分の隙間よりも小さくしている。
【0056】
即ち、
図5(a)に示す様に、前記第一、第二の各一端側支承面46、47と前記第一、第二の各他端側支承面48、49との間に存在する円周方向に関する隙間H
1、H
1を、両第一の係合凸部30c、30dの先端面と、両第二の係合凹部33c、33dの奥端面との間に存在する円周方向に関する隙間H
2、H
2、及び両第一の係合凹部31e、31fの奥端面と両第二の係合凸部32c、32dの先端面との間に存在する円周方向に関する隙間H
3、H
3、及び一端側、他端側両リム部23a、24aの円周方向一端面と円周方向他端面との間に存在する円周方向に関する隙間H
4、H
4、及び前記一端側凹部44の奥端面と、前記他端側凹部45の奥端面との間に存在する円周方向に関する隙間H
5よりも小さくしている(H
1<H
2、H
1<H
3、H
1<H
4、H
1<H
5)。
【0057】
この様な構成を有する本例のラジアルころ軸受用保持器9dが、
図5(b)に示す様に、前記円周方向一端面34bと、前記円周方向他端面36bとが円周方向に最も近付いた状態では、前記第一、第二の各一端側支承面46、47と前記第一、第二の各他端側支承面48、49との間に存在した円周方向に関する隙間H
1が0になる(H
1=0)。一方、前記両第一の係合凸部30c、30dの先端面と、前記両第二の係合凹部33c、33dの奥端面との間に存在する円周方向に関する隙間H
2、H
2、及び前記両第一の係合凹部31e、31fの奥端面と前記両第二の係合凸部32c、32dの先端面との間に存在する円周方向に関する隙間H
3、H
3、及び前記一端側、他端側両リム部23a、24aの円周方向一端面と円周方向他端面との間に存在する円周方向に関する隙間H
4、H
4、前記一端側凹部44の奥端面と、前記他端側凹部45の奥端面との間に存在する円周方向に関する隙間H
5は0より大きい(H
2>0、H
3>0、H
4>0、H
5>0)。
【0058】
本例の場合、前記円周方向一端面34bと、前記円周方向他端面36bとが円周方向に最も近付いた状態で、これら両端面34b、36b同士の、各中間側ポケット43、43の軸方向中央部と整合する部分に、円周方向に関する隙間を設けている。この為、運転時の前記ラジアルころ軸受用保持器9dの弾性変形に基づいて、前記円周方向一端面34bと円周方向他端面36bとの円周方向に関する間隔(隙間)が小さくなって、これら両端面34b、36b同士が強く当接した場合にも、この当接に基づく荷重を、円周方向に関する剛性が低い、前記両端面34b、36b同士の前記各中間側ポケット43、43の軸方向中央部と整合する部分で支承する事がない。その結果、前記ラジアルころ軸受用保持器9dの耐久性の向上をより一層確実に図れる。
【0059】
又、本例の場合、前記一端側凹部44と、前記他端側凹部45とを設けている分だけ、前記ラジアルころ軸受用保持器9dの成形に使用する材料が少なくて済む。この為、材料コストの低減と、軽量化とを図れる。その他の構成及び作用・効果に就いては、前述した実施の形態の第3例の場合とほぼ同様である。