特許第5998733号(P5998733)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アイシン・エィ・ダブリュ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5998733-回転電機用ロータの樹脂充填装置 図000002
  • 特許5998733-回転電機用ロータの樹脂充填装置 図000003
  • 特許5998733-回転電機用ロータの樹脂充填装置 図000004
  • 特許5998733-回転電機用ロータの樹脂充填装置 図000005
  • 特許5998733-回転電機用ロータの樹脂充填装置 図000006
  • 特許5998733-回転電機用ロータの樹脂充填装置 図000007
  • 特許5998733-回転電機用ロータの樹脂充填装置 図000008
  • 特許5998733-回転電機用ロータの樹脂充填装置 図000009
  • 特許5998733-回転電機用ロータの樹脂充填装置 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5998733
(24)【登録日】2016年9月9日
(45)【発行日】2016年9月28日
(54)【発明の名称】回転電機用ロータの樹脂充填装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/03 20060101AFI20160915BHJP
   H02K 1/27 20060101ALI20160915BHJP
【FI】
   H02K15/03 Z
   H02K1/27 501D
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-175816(P2012-175816)
(22)【出願日】2012年8月8日
(65)【公開番号】特開2014-36486(P2014-36486A)
(43)【公開日】2014年2月24日
【審査請求日】2015年1月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000100768
【氏名又は名称】アイシン・エィ・ダブリュ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 進
(72)【発明者】
【氏名】前田 秀
(72)【発明者】
【氏名】横山 剛
(72)【発明者】
【氏名】大浦 卓也
(72)【発明者】
【氏名】郡 智基
【審査官】 ▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−325368(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0278417(US,A1)
【文献】 特開2011−088329(JP,A)
【文献】 特開2002−034187(JP,A)
【文献】 特開平07−312853(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/03
H02K 1/27
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転電機用ロータの積層鉄心の周方向に並んで設けられた複数の磁石挿入穴に磁石がそれぞれ配置されたときに、該磁石挿入穴と該磁石との間に形成される隙間へ、樹脂を充填する樹脂充填装置であって、
上記磁石挿入穴は、上記積層鉄心の一端面から他端面まで同一断面形状で形成された貫通穴であり、
上記積層鉄心の一端面に当接する当接表面に、上記隙間へ上記樹脂を注入するための注入口が開口された樹脂注入型と、
上記積層鉄心の他端面に当接して、該積層鉄心を上記樹脂注入型との間に挟み込んで加圧する対向型と、を備え、
上記注入口の開口部の全周には、上記樹脂注入型の上記当接表面から突出する突出部が形成されており、
該突出部は、上記磁石挿入穴における、上記回転電機用ロータの回転中心から見て内周側に位置する内周端、又は外周側に位置する外周端に配置され、上記突出部の先端に位置する、上記注入口の開口部は、上記磁石挿入穴内に配置されることを特徴とする回転電機用ロータの樹脂充填装置。
【請求項2】
請求項1に記載の回転電機用ロータの樹脂充填装置において、上記注入口及び上記突出部は、上記各磁石挿入穴の内周端又は外周端に対してそれぞれ複数箇所に配置されることを特徴とする回転電機用ロータの樹脂充填装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の回転電機用ロータの樹脂充填装置において、上記樹脂注入型の上記当接表面には、上記積層鉄心の外周をガイドして、該樹脂注入型に対する該積層鉄心の位置決めを行うガイド部が突出して設けられていることを特徴とする回転電機用ロータの樹脂充填装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の回転電機用ロータの樹脂充填装置において、上記突出部は、先端に向かうに連れて縮径するテーパ形状に形成されていることを特徴とする回転電機用ロータの樹脂充填装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機用ロータの積層鉄心における磁石挿入穴と磁石との間に形成される隙間へ樹脂を充填する樹脂充填装置に関する。
【背景技術】
【0002】
回転電機用ロータの製造においては、複数の電磁鋼板を積層して積層鉄心を形成するときには、各電磁鋼板に形成された貫通穴が連通されて、磁石を挿入する磁石挿入穴が形成される。そして、この磁石挿入穴に磁石を挿入し、これらの間に形成される隙間に樹脂を充填し固化させることによって、積層鉄心に磁石を固定している。
【0003】
例えば、特許文献1の磁石埋込型回転子においては、板状磁性部材を積層して形成された積層鉄心に、永久磁石をそれぞれ挿入する複数の穴部と、穴部と連通する複数の注入用穴部と、積層鉄心の両端面において穴部と注入用穴部との間をそれぞれ連通する連通溝部とを形成している。そして、樹脂部材を、注入用穴部及び連通溝部を介して、永久磁石が配置された複数の穴部へ注入している。また、この注入を行う際には、上型の各注入穴部の位置を積層鉄心の各注入用穴部の位置と一致させるとともに、上型の表面に形成された各突起部の位置を積層鉄心の各穴部の位置と一致させる。そして、各突起部によって永久磁石の軸方向位置を位置決めして、各注入穴部から注入する樹脂を、各注入用穴部及び連通溝部を経由して、永久磁石が挿入された穴部へと充填している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−34187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1においては、永久磁石が挿入された穴部には、注入穴部及び連通溝部を経由して樹脂が充填されるため、各穴部にできるだけ均等に樹脂を充填することは困難である。また、下型に対する積層鉄心の位置決めは、下型に形成された有底穴部内に積層鉄心を嵌挿することによって行っている。そのため、積層鉄心を位置決めするための下型の形状が複雑である。
【0006】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたもので、樹脂注入型に対する積層鉄心の径方向の位置決めを容易に行うことができ、磁石挿入穴と磁石との間の隙間へできるだけ均等に樹脂を充填することができる樹脂充填装置を提供しようとして得られたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、回転電機用ロータの積層鉄心の周方向に並んで設けられた複数の磁石挿入穴に磁石がそれぞれ配置されたときに、該磁石挿入穴と該磁石との間に形成される隙間へ、樹脂を充填する樹脂充填装置であって、
上記磁石挿入穴は、上記積層鉄心の一端面から他端面まで同一断面形状で形成された貫通穴であり、
上記積層鉄心の一端面に当接する当接表面に、上記隙間へ上記樹脂を注入するための注入口が開口された樹脂注入型と、
上記積層鉄心の他端面に当接して、該積層鉄心を上記樹脂注入型との間に挟み込んで加圧する対向型と、を備え、
上記注入口の開口部の全周には、上記樹脂注入型の上記当接表面から突出する突出部が形成されており、
該突出部は、上記磁石挿入穴における、上記回転電機用ロータの回転中心から見て内周側に位置する内周端、又は外周側に位置する外周端に配置され、上記突出部の先端に位置する、上記注入口の開口部は、上記磁石挿入穴内に配置されることを特徴とする回転電機用ロータの樹脂充填装置にある(請求項1)。
【発明の効果】
【0008】
上記回転電機用ロータの樹脂充填装置においては、樹脂注入型は、突出部が形成された注入口を有している。この突出部は、注入口の開口部の周囲において、樹脂注入型の当接表面から突出して形成されている。そして、隙間への樹脂の充填を行う際には、磁石挿入穴内に突出部が配置されることにより、注入口から隙間へ確実に樹脂を注入することができる。
【0009】
また、突出部は、磁石挿入穴の内周端又は外周端に配置される。ここで、内周端とは、磁石挿入穴におけるロータの回転中心から見て内周側に位置する端のことをいい、外周端とは、磁石挿入穴におけるロータの回転中心から見て外周側に位置する端のことをいう。そして、積層鉄心の一端面に樹脂注入型の当接表面が当接する際には、各突出部が各磁石挿入穴へ案内されることにより、樹脂注入型に対する積層鉄心の径方向の位置決めを行うことができる。また、突出部によって、注入口の位置を磁石挿入穴の内周端又は外周端に案内することができる。そして、注入口から磁石挿入穴の内周端又は外周端と磁石との間に形成される隙間に向けて樹脂を注入し、磁石挿入穴と磁石との全周に樹脂を効果的に充填することができる。
それ故、上記樹脂充填装置によれば、樹脂注入型に対する積層鉄心の径方向の位置決めを容易に行うことができ、磁石挿入穴と磁石との間の隙間へできるだけ均等に樹脂を充填することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例にかかる、積層鉄心に樹脂を充填した後の樹脂充填装置を示す断面説明図。
図2】実施例にかかる、ゲートパレットを搬送する状態の樹脂充填装置を示す断面説明図。
図3】実施例にかかる、対向型が下降する状態の樹脂充填装置を示す断面説明図。
図4】実施例にかかる、各磁石挿入穴に磁石が挿入された積層鉄心と、樹脂注入型の各注入口及び突出部との配置関係を示す平面説明図。
図5】実施例にかかる、各磁石挿入穴と樹脂注入型の各注入口及び突出部との配置関係を拡大して示す平面説明図。
図6】実施例にかかる、図5において、各磁石挿入穴と各磁石との間の隙間に樹脂を充填した状態を拡大して示す平面説明図。
図7】実施例にかかる、樹脂充填装置の要部を、2つの注入口が並ぶ方向から見た状態で拡大して示す断面説明図。
図8】実施例にかかる、樹脂充填装置の要部を、図7と直交する方向から見た状態で拡大して示す断面説明図。
図9】実施例にかかる、図5において、各注入口及び突出部が、各磁石挿入穴の外周端に配置される場合を示す平面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
上述した回転電機用ロータの樹脂充填装置における好ましい実施の形態につき説明する。
上記回転電機用ロータの樹脂充填装置において、上記回転電機は、電動機、発電機、モータジェネレータのいずれとすることもできる。また、上記回転電機用のロータは、アウターロータ又はインナーロータのいずれとすることもできる。
【0012】
また、上記注入口及び上記突出部は、上記各磁石挿入穴の内周端又は外周端に対してそれぞれ複数箇所に配置されていてもよい(請求項2)。
この場合には、樹脂注入型に対する積層鉄心の径方向及び周方向の位置決めを容易に行うことができる。そして、各磁石挿入穴に対して、より適切な位置に注入口及び突出部を
配置し、磁石挿入穴と磁石との間の隙間へより均等に樹脂を充填することができる。
【0013】
また、上記樹脂注入型の上記当接表面には、上記積層鉄心の外周をガイドして、該樹脂注入型に対する該積層鉄心の位置決めを行うガイド部が突出して設けられていてもよい(請求項3)。
この場合には、ガイド部によって、樹脂注入型に対する積層鉄心の径方向位置の粗い位置決めを行い、突出部によって、樹脂注入型に対する積層鉄心のより細かい位置決めを行うことができる。
【0014】
また、上記突出部は、先端に向かうに連れて縮径するテーパ形状に形成されていてもよい(請求項4)。
この場合には、突出部の外周によって、樹脂注入型に対する積層鉄心の位置決めをより高い精度で行うことができる。
【実施例】
【0015】
以下に、回転電機用ロータの樹脂充填装置の実施例につき、図面を参照して説明する。
本例の回転電機用ロータの樹脂充填装置1は、図1図4に示すごとく、回転電機用ロータの積層鉄心4の周方向に並んで設けられた複数の磁石挿入穴41に永久磁石5がそれぞれ配置されたときに磁石挿入穴41と永久磁石5との間に形成される隙間42へ樹脂6を充填するものである。
樹脂充填装置1は、積層鉄心4の一端面401に当接する当接表面201に、隙間42へ樹脂6を注入するための注入口21が開口された樹脂注入型2と、積層鉄心4の他端面402に当接して、積層鉄心4を樹脂注入型2との間に挟み込んで加圧する対向型3とを備えている。図5図8に示すごとく、注入口21の開口部211の周囲には、樹脂注入型2の当接表面201から突出する突出部22が形成されている。樹脂注入型2において、突出部22は、磁石挿入穴41の内周端411に配置される位置に形成されている。ここで、内周端411とは、磁石挿入穴41における、ロータの回転中心から見て内周側に位置する端のことをいう。
【0016】
以下に、本例の回転電機用ロータの樹脂充填装置1につき、図1図9を参照して詳説する。
図1に示すごとく、樹脂充填装置1において使用する樹脂6は、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂であって、硬化前の加熱状態にあるものである。熱硬化性樹脂は、加熱、溶融した状態で隙間42に充填された後に硬化して、永久磁石5を積層鉄心4に固着させる。
本例のロータは、ステータの内周側に配置して使用されるインナーロータである。積層鉄心4は、磁石挿入穴41となる貫通穴が形成された電磁鋼板43を積層して形成される。磁石挿入穴41は、積層鉄心4において貫通穴として形成される。
【0017】
図4に示すごとく、磁石挿入穴41は、永久磁石5が配置された部位に、ステータと合わせて磁路を形成するよう、2つずつがペアになって放射状に形成されている。磁石挿入穴41に、直方体形状に形成された永久磁石5を挿入配置したときには、磁石挿入穴41と永久磁石5との間の隙間42は、径方向の両側の部位に比べて、周方向の両側の部位が大きく形成されている。
【0018】
図1に示すごとく、樹脂注入型2は、注入口21及び注入口21に繋がる流入凹部23が形成されたゲートプレート20と、ゲートプレート20に重なる型本体部24と、樹脂6を加圧して吐出するように往復移動するプランジャ25と、プランジャ25の往復移動をガイドする円筒部26とを有している。円筒部26は型本体部24内に埋設されており、プランジャ25は円筒部26内を往復移動する。型本体部24内には、樹脂6を加熱するためのヒーターが埋設されている。
【0019】
図5図7に示すごとく、流入凹部23は、円筒部26内に形成された樹脂通路261と対向する位置に形成されており、プランジャ25によって樹脂通路261を通過する樹脂6は、流入凹部23から注入口21へと流れる。注入口21は、突出部22側である先端側に向かうに連れて縮径するテーパ形状に形成されている。また、注入口21の先端部は、先端側に向かうに連れてさらに急勾配で縮径して形成されており、開口部211の口径が小さく形成されている。
積層鉄心4における隙間42に樹脂6を充填した後には、この隙間42内の樹脂6は、注入口21の縮径した先端部と繋がっているだけである。そのため、注入口21の先端部において樹脂6を分断するようにして、積層鉄心4をゲートプレート20から容易に取り外すことができる。
【0020】
図2に示すごとく、ゲートプレート20は、積層鉄心4を載置して運搬するためのパレットとして使用することができる。そして、ゲートプレート20は、樹脂6を充填する前の積層鉄心4が載置されたものが樹脂充填装置1に搬入され、樹脂6を充填した後の積層鉄心4が載置されたものが樹脂充填装置1から搬出される。
ゲートプレート20を型本体部24から分割して形成したことにより、種々のサイズの積層鉄心4に対応したゲートプレート20を用いることにより、樹脂充填装置1において種々のサイズの積層鉄心4に対応することができる。また、場合によっては、プランジャ25及び円筒部26の位置を変更することにより、種々のサイズの積層鉄心4に対応することができる。
【0021】
図2に示すごとく、ゲートプレート20の裏面(下面)には、積層鉄心4が載置されたゲートプレート20を適宜場所の載置面に載置する際に、ゲートプレート20を載置面から浮かせておくためのスペーサ28を複数箇所に設けることができる。
このスペーサ28により、樹脂6の充填を行った後に積層鉄心4の内周穴44(図4参照)にロータの回転軸を温間嵌めする際に、積層鉄心4及びゲートプレート20から熱が逃げにくくすることができる。そのため、この温間嵌めを行う際の加熱量を低減でき、ロータの生産効率を高めることができる。
また、スペーサ28とゲートプレート20との間には、断熱板を挟持しておくことができる。この場合には、積層鉄心4及びゲートプレート20からより一層熱が逃げにくくすることができる。
【0022】
また、スペーサ28を設けることにより、積層鉄心4への樹脂6の充填を行った後にゲートプレート20の裏面にカル(樹脂6によって形成されたバリ(突起))が形成された場合でも、このカルが適宜場所の載置面に接触しないようにすることができる。そのため、カルが、積層鉄心4を搬送する際の障害にならないようにすることができる。
【0023】
図1図2に示すごとく、樹脂注入型2は、積層鉄心4に対する下方に配置され、対向型3は積層鉄心4に対する上方に配置される。対向型3が上方に退避した状態で、下方に配置された樹脂注入型2の型本体部24の上面との間で、積層鉄心4が載置されたゲートプレート20の搬入出が行われる。本例においては、積層鉄心4の一端面401は下側面であり、積層鉄心4の他端面402は上側面である。
対向型3は、積層鉄心4及びゲートプレート20が配置される樹脂注入型2に対して昇降するよう構成されており、積層鉄心4を加圧する所定の加圧力を発生させるよう構成されている。
【0024】
図1に示すごとく、対向型3には、積層鉄心4を加圧する際に、多数の電磁鋼板43を積層して形成された積層鉄心4に生じる面の傾きを吸収するためのフローティング機構32が設けられている。フローティング機構32は、対向型3の型本体部31に対してフローティング型部33を移動可能にして構成されている。型本体部31とフローティング型部33との間にはスプリング34が配置されている。
そして、図3に示すごとく、対向型3を下降させるときには、スプリング34の反発力を受けたフローティング型部33が先に積層鉄心4の他端面402に当接し、スプリング34の反発力によって積層鉄心4における各電磁鋼板43の傾斜状態が、樹脂注入型2及び対向型3に対して平行になるように矯正することができる。その後、対向型3の型本体部31によって積層鉄心4を押さえ込んで、樹脂注入型2との間に積層鉄心4を加圧することができる。
【0025】
図5図6示すごとく、本例の注入口21及び突出部22は、各磁石挿入穴41に対してそれぞれ2箇所ずつ形成されており、各磁石挿入穴41における内周端411における2箇所に配置される。そして、突出部22によって磁石挿入穴41をガイドすることにより、樹脂注入型2に対する積層鉄心4の平面方向(径方向及び周方向)の位置決めを容易に行うことができる。同各図において、径方向を矢印Rで示し、周方向を矢印Cで示す。
【0026】
図9に示すごとく、ゲートプレート20において、注入口21及び突出部22は、各磁石挿入穴41における外周端412における2箇所に配置される位置に形成することもできる。ここで、外周端412とは、磁石挿入穴41におけるロータの回転中心から見て外周側に位置する端のことをいう。この場合にも、注入口21及び突出部22が内周端411における2箇所に配置される場合と同様の作用効果を奏することができる。
注入口21及び突出部22を、隙間42の幅が狭い内周端411又は外周端412に設けることにより、隙間42の全体へ効果的に樹脂6を充填することができる。
【0027】
図7図8に示すごとく、本例の突出部22は、先端に向かうに連れて縮径するテーパ形状に形成されている。突出部22の先端は平坦になっており、この平坦な先端面に、注入口21の開口部211が形成されている。なお、突出部22の側面の形状は、積層鉄心4の磁石挿入穴41の側壁面に対向する部分だけテーパ形状にし、他の部分はストレート形状にすることもできる。
【0028】
図1図2に示すごとく、樹脂注入型2の当接表面201には、積層鉄心4の外周をガイドして、樹脂注入型2に対する積層鉄心4の位置決めを行うガイド部27が突出して設けられている。ガイド部27は、リング形状の積層鉄心4における外周の複数箇所に設けられている。本例のガイド部27は、周方向に等間隔な4箇所に設けられている。
【0029】
次に、本例の樹脂充填装置1を用いた回転電機用ロータの製造方法について説明する。
本例の回転電機用ロータの製造方法においては、所望形状に形成した電磁鋼板43を複数積層して積層鉄心4を形成する積層工程と、積層鉄心4に設けられた磁石挿入穴41に永久磁石5を挿入し、積層鉄心4を加熱して、隙間42内に樹脂6を充填する樹脂充填工程と、樹脂充填工程における積層鉄心4の加熱による余熱を利用し、積層鉄心4の内周穴44にロータの回転軸を温間嵌めする回転軸組付け工程とを行う。積層工程、樹脂充填工程及び回転軸組付け工程の間には、搬送レールが配設されており、積層鉄心4が載置されたゲートプレート20は、搬送レール上を移動可能である。
【0030】
積層工程においては、帯状鋼板から連続的に電磁鋼板43を打ち抜き、この電磁鋼板43を複数積層してかしめ固定することにより、積層鉄心4を形成する。この積層鉄心4においては、電磁鋼板43において打ち抜かれた貫通穴同士が合わさって、磁石挿入穴41が形成される。
積層鉄心4は、ゲートプレート20上に載置する。このとき、ガイド部27によってゲートプレート20に対する積層鉄心4の径方向の粗い位置が決定され、突出部22が磁石挿入穴41に配置されることによって、ゲートプレート20に対する積層鉄心4の径方向及び周方向の位置決めがなされる。
【0031】
樹脂充填工程においては、積層鉄心4が載置されたゲートプレート20が樹脂注入型の型本体部24まで搬送され、ゲートプレート20が型本体部24に配置される。そして、対向型3が下降して、対向型3と樹脂注入型2との間に積層鉄心4を挟み込み、積層鉄心4が複数の電磁鋼板43が積層された方向に加圧される。また、樹脂注入型2の型本体部24に埋設されたヒーターによって、円筒部26の樹脂通路261内の樹脂6が加熱され、この加熱されて溶融した樹脂6が、プランジャ25によって流入凹部23及び注入口21を経由して、磁石挿入穴41と永久磁石5との間の隙間42に注入される。そして、樹脂6が隙間42の全体に充填されて熱硬化する。
回転軸組付け工程においては、積層鉄心4を加熱し、積層鉄心4の内周穴44を拡径させ、この拡径させた内周穴44へロータの回転軸を挿入する。そして、積層鉄心4が冷却させるときに積層鉄心4が回転軸にかしめられ、温間嵌めが行われる。
【0032】
次に、本例の回転電機用ロータの樹脂充填装置1の作用効果につき説明する。
樹脂注入型2は、各磁石挿入穴41に対応して、突出部22が形成された注入口21を有している。この突出部22は、注入口21の開口部211の周囲において、樹脂注入型2を構成するゲートプレート20の当接表面201から突出して形成されている。そして、磁石挿入穴41と永久磁石5との間の隙間42への樹脂6の充填を行う際には、磁石挿入穴41内に突出部22が配置されることにより、注入口21から隙間42へ確実に樹脂6を注入することができる。
【0033】
また、突出部22は、各磁石挿入穴41の内周端411における2箇所に配置される。そして、積層鉄心4の一端面(下端面)401にゲートプレート20の当接表面201が当接する際には、各突出部22が各磁石挿入穴41へ案内されることにより、樹脂注入型2(ゲートプレート20)に対する積層鉄心4の径方向及び周方向の位置決めを行うことができる。また、各突出部22によって、各注入口21の位置を各磁石挿入穴41の内周端411に案内することができる。そして、各注入口21から各磁石挿入穴41の内周端411と永久磁石5との間に形成される隙間42に向けて樹脂6を注入し、磁石挿入穴41と永久磁石5との全周に樹脂6を効果的に充填することができる。
【0034】
それ故、本例の樹脂充填装置1によれば、樹脂注入型2に対する積層鉄心4の径方向及び周方向の位置決めを容易に行うことができ、各磁石挿入穴41と各永久磁石5との間の隙間42へできるだけ均等に樹脂6を充填することができる。
【符号の説明】
【0035】
1 樹脂充填装置
2 樹脂注入型
20 ゲートプレート
201 当接表面
21 注入口
22 突出部
27 ガイド部
3 対向型
4 積層鉄心
401 一端面
402 他端面
41 磁石挿入穴
411 内周端
412 外周端
42 隙間
5 永久磁石
6 樹脂
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9