【実施例】
【0015】
以下に、回転電機用ロータの樹脂充填装置の実施例につき、図面を参照して説明する。
本例の回転電機用ロータの樹脂充填装置1は、
図1、
図4に示すごとく、回転電機用ロータの積層鉄心4の周方向に並んで設けられた複数の磁石挿入穴41に永久磁石5がそれぞれ配置されたときに磁石挿入穴41と永久磁石5との間に形成される隙間42へ樹脂6を充填するものである。
樹脂充填装置1は、積層鉄心4の一端面401に当接する当接表面201に、隙間42へ樹脂6を注入するための注入口21が開口された樹脂注入型2と、積層鉄心4の他端面402に当接して、積層鉄心4を樹脂注入型2との間に挟み込んで加圧する対向型3とを備えている。
図5〜
図8に示すごとく、注入口21の開口部211の周囲には、樹脂注入型2の当接表面201から突出する突出部22が形成されている。樹脂注入型2において、突出部22は、磁石挿入穴41の内周端411に配置される位置に形成されている。ここで、内周端411とは、磁石挿入穴41における、ロータの回転中心から見て内周側に位置する端のことをいう。
【0016】
以下に、本例の回転電機用ロータの樹脂充填装置1につき、
図1〜
図9を参照して詳説する。
図1に示すごとく、樹脂充填装置1において使用する樹脂6は、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂であって、硬化前の加熱状態にあるものである。熱硬化性樹脂は、加熱、溶融した状態で隙間42に充填された後に硬化して、永久磁石5を積層鉄心4に固着させる。
本例のロータは、ステータの内周側に配置して使用されるインナーロータである。積層鉄心4は、磁石挿入穴41となる貫通穴が形成された電磁鋼板43を積層して形成される。磁石挿入穴41は、積層鉄心4において貫通穴として形成される。
【0017】
図4に示すごとく、磁石挿入穴41は、永久磁石5が配置された部位に、ステータと合わせて磁路を形成するよう、2つずつがペアになって放射状に形成されている。磁石挿入穴41に、直方体形状に形成された永久磁石5を挿入配置したときには、磁石挿入穴41と永久磁石5との間の隙間42は、径方向の両側の部位に比べて、周方向の両側の部位が大きく形成されている。
【0018】
図1に示すごとく、樹脂注入型2は、注入口21及び注入口21に繋がる流入凹部23が形成されたゲートプレート20と、ゲートプレート20に重なる型本体部24と、樹脂6を加圧して吐出するように往復移動するプランジャ25と、プランジャ25の往復移動をガイドする円筒部26とを有している。円筒部26は型本体部24内に埋設されており、プランジャ25は円筒部26内を往復移動する。型本体部24内には、樹脂6を加熱するためのヒーターが埋設されている。
【0019】
図5、
図7に示すごとく、流入凹部23は、円筒部26内に形成された樹脂通路261と対向する位置に形成されており、プランジャ25によって樹脂通路261を通過する樹脂6は、流入凹部23から注入口21へと流れる。注入口21は、突出部22側である先端側に向かうに連れて縮径するテーパ形状に形成されている。また、注入口21の先端部は、先端側に向かうに連れてさらに急勾配で縮径して形成されており、開口部211の口径が小さく形成されている。
積層鉄心4における隙間42に樹脂6を充填した後には、この隙間42内の樹脂6は、注入口21の縮径した先端部と繋がっているだけである。そのため、注入口21の先端部において樹脂6を分断するようにして、積層鉄心4をゲートプレート20から容易に取り外すことができる。
【0020】
図2に示すごとく、ゲートプレート20は、積層鉄心4を載置して運搬するためのパレットとして使用することができる。そして、ゲートプレート20は、樹脂6を充填する前の積層鉄心4が載置されたものが樹脂充填装置1に搬入され、樹脂6を充填した後の積層鉄心4が載置されたものが樹脂充填装置1から搬出される。
ゲートプレート20を型本体部24から分割して形成したことにより、種々のサイズの積層鉄心4に対応したゲートプレート20を用いることにより、樹脂充填装置1において種々のサイズの積層鉄心4に対応することができる。また、場合によっては、プランジャ25及び円筒部26の位置を変更することにより、種々のサイズの積層鉄心4に対応することができる。
【0021】
図2に示すごとく、ゲートプレート20の裏面(下面)には、積層鉄心4が載置されたゲートプレート20を適宜場所の載置面に載置する際に、ゲートプレート20を載置面から浮かせておくためのスペーサ28を複数箇所に設けることができる。
このスペーサ28により、樹脂6の充填を行った後に積層鉄心4の内周穴44(
図4参照)にロータの回転軸を温間嵌めする際に、積層鉄心4及びゲートプレート20から熱が逃げにくくすることができる。そのため、この温間嵌めを行う際の加熱量を低減でき、ロータの生産効率を高めることができる。
また、スペーサ28とゲートプレート20との間には、断熱板を挟持しておくことができる。この場合には、積層鉄心4及びゲートプレート20からより一層熱が逃げにくくすることができる。
【0022】
また、スペーサ28を設けることにより、積層鉄心4への樹脂6の充填を行った後にゲートプレート20の裏面にカル(樹脂6によって形成されたバリ(突起))が形成された場合でも、このカルが適宜場所の載置面に接触しないようにすることができる。そのため、カルが、積層鉄心4を搬送する際の障害にならないようにすることができる。
【0023】
図1、
図2に示すごとく、樹脂注入型2は、積層鉄心4に対する下方に配置され、対向型3は積層鉄心4に対する上方に配置される。対向型3が上方に退避した状態で、下方に配置された樹脂注入型2の型本体部24の上面との間で、積層鉄心4が載置されたゲートプレート20の搬入出が行われる。本例においては、積層鉄心4の一端面401は下側面であり、積層鉄心4の他端面402は上側面である。
対向型3は、積層鉄心4及びゲートプレート20が配置される樹脂注入型2に対して昇降するよう構成されており、積層鉄心4を加圧する所定の加圧力を発生させるよう構成されている。
【0024】
図1に示すごとく、対向型3には、積層鉄心4を加圧する際に、多数の電磁鋼板43を積層して形成された積層鉄心4に生じる面の傾きを吸収するためのフローティング機構32が設けられている。フローティング機構32は、対向型3の型本体部31に対してフローティング型部33を移動可能にして構成されている。型本体部31とフローティング型部33との間にはスプリング34が配置されている。
そして、
図3に示すごとく、対向型3を下降させるときには、スプリング34の反発力を受けたフローティング型部33が先に積層鉄心4の他端面402に当接し、スプリング34の反発力によって積層鉄心4における各電磁鋼板43の傾斜状態が、樹脂注入型2及び対向型3に対して平行になるように矯正することができる。その後、対向型3の型本体部31によって積層鉄心4を押さえ込んで、樹脂注入型2との間に積層鉄心4を加圧することができる。
【0025】
図5、
図6示すごとく、本例の注入口21及び突出部22は、各磁石挿入穴41に対してそれぞれ2箇所ずつ形成されており、各磁石挿入穴41における内周端411における2箇所に配置される。そして、突出部22によって磁石挿入穴41をガイドすることにより、樹脂注入型2に対する積層鉄心4の平面方向(径方向及び周方向)の位置決めを容易に行うことができる。同各図において、径方向を矢印Rで示し、周方向を矢印Cで示す。
【0026】
図9に示すごとく、ゲートプレート20において、注入口21及び突出部22は、各磁石挿入穴41における外周端412における2箇所に配置される位置に形成することもできる。ここで、外周端412とは、磁石挿入穴41におけるロータの回転中心から見て外周側に位置する端のことをいう。この場合にも、注入口21及び突出部22が内周端411における2箇所に配置される場合と同様の作用効果を奏することができる。
注入口21及び突出部22を、隙間42の幅が狭い内周端411又は外周端412に設けることにより、隙間42の全体へ効果的に樹脂6を充填することができる。
【0027】
図7、
図8に示すごとく、本例の突出部22は、先端に向かうに連れて縮径するテーパ形状に形成されている。突出部22の先端は平坦になっており、この平坦な先端面に、注入口21の開口部211が形成されている。なお、突出部22の側面の形状は、積層鉄心4の磁石挿入穴41の側壁面に対向する部分だけテーパ形状にし、他の部分はストレート形状にすることもできる。
【0028】
図1、
図2に示すごとく、樹脂注入型2の当接表面201には、積層鉄心4の外周をガイドして、樹脂注入型2に対する積層鉄心4の位置決めを行うガイド部27が突出して設けられている。ガイド部27は、リング形状の積層鉄心4における外周の複数箇所に設けられている。本例のガイド部27は、周方向に等間隔な4箇所に設けられている。
【0029】
次に、本例の樹脂充填装置1を用いた回転電機用ロータの製造方法について説明する。
本例の回転電機用ロータの製造方法においては、所望形状に形成した電磁鋼板43を複数積層して積層鉄心4を形成する積層工程と、積層鉄心4に設けられた磁石挿入穴41に永久磁石5を挿入し、積層鉄心4を加熱して、隙間42内に樹脂6を充填する樹脂充填工程と、樹脂充填工程における積層鉄心4の加熱による余熱を利用し、積層鉄心4の内周穴44にロータの回転軸を温間嵌めする回転軸組付け工程とを行う。積層工程、樹脂充填工程及び回転軸組付け工程の間には、搬送レールが配設されており、積層鉄心4が載置されたゲートプレート20は、搬送レール上を移動可能である。
【0030】
積層工程においては、帯状鋼板から連続的に電磁鋼板43を打ち抜き、この電磁鋼板43を複数積層してかしめ固定することにより、積層鉄心4を形成する。この積層鉄心4においては、電磁鋼板43において打ち抜かれた貫通穴同士が合わさって、磁石挿入穴41が形成される。
積層鉄心4は、ゲートプレート20上に載置する。このとき、ガイド部27によってゲートプレート20に対する積層鉄心4の径方向の粗い位置が決定され、突出部22が磁石挿入穴41に配置されることによって、ゲートプレート20に対する積層鉄心4の径方向及び周方向の位置決めがなされる。
【0031】
樹脂充填工程においては、積層鉄心4が載置されたゲートプレート20が樹脂注入型の型本体部24まで搬送され、ゲートプレート20が型本体部24に配置される。そして、対向型3が下降して、対向型3と樹脂注入型2との間に積層鉄心4を挟み込み、積層鉄心4が複数の電磁鋼板43が積層された方向に加圧される。また、樹脂注入型2の型本体部24に埋設されたヒーターによって、円筒部26の樹脂通路261内の樹脂6が加熱され、この加熱されて溶融した樹脂6が、プランジャ25によって流入凹部23及び注入口21を経由して、磁石挿入穴41と永久磁石5との間の隙間42に注入される。そして、樹脂6が隙間42の全体に充填されて熱硬化する。
回転軸組付け工程においては、積層鉄心4を加熱し、積層鉄心4の内周穴44を拡径させ、この拡径させた内周穴44へロータの回転軸を挿入する。そして、積層鉄心4が冷却させるときに積層鉄心4が回転軸にかしめられ、温間嵌めが行われる。
【0032】
次に、本例の回転電機用ロータの樹脂充填装置1の作用効果につき説明する。
樹脂注入型2は、各磁石挿入穴41に対応して、突出部22が形成された注入口21を有している。この突出部22は、注入口21の開口部211の周囲において、樹脂注入型2を構成するゲートプレート20の当接表面201から突出して形成されている。そして、磁石挿入穴41と永久磁石5との間の隙間42への樹脂6の充填を行う際には、磁石挿入穴41内に突出部22が配置されることにより、注入口21から隙間42へ確実に樹脂6を注入することができる。
【0033】
また、突出部22は、各磁石挿入穴41の内周端411における2箇所に配置される。そして、積層鉄心4の一端面(下端面)401にゲートプレート20の当接表面201が当接する際には、各突出部22が各磁石挿入穴41へ案内されることにより、樹脂注入型2(ゲートプレート20)に対する積層鉄心4の径方向及び周方向の位置決めを行うことができる。また、各突出部22によって、各注入口21の位置を各磁石挿入穴41の内周端411に案内することができる。そして、各注入口21から各磁石挿入穴41の内周端411と永久磁石5との間に形成される隙間42に向けて樹脂6を注入し、磁石挿入穴41と永久磁石5との全周に樹脂6を効果的に充填することができる。
【0034】
それ故、本例の樹脂充填装置1によれば、樹脂注入型2に対する積層鉄心4の径方向及び周方向の位置決めを容易に行うことができ、各磁石挿入穴41と各永久磁石5との間の隙間42へできるだけ均等に樹脂6を充填することができる。