(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、長時間のアイドリングストップを実現するには、例えば車両を使用していないソーク中にキャパシタの目標電圧を高く設定して予め蓄電しておかなくてはならないため、キャパシタの劣化が早く進行して静電容量が早期に低下し、車両の蓄電手段として要求される耐久性を確保できなくなることが考えられる。
【0008】
そこで、本発明は、例えばアイドリングストップ等による燃費の向上を実現すると共に、キャパシタの所要の耐久性を確保することを課題とする。なお、この課題は、キャパシタ以外の蓄電手段を用いた場合にも同様に生じ得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明に係る車両用電源の制御装置および方法は、次のように構成したことを特徴とする。
【0010】
まず、請求項1に記載の発明は、
エンジンに駆動されて発電する発電機と、
前記発電機で発電された電力を蓄電し、蓄電された電力を電気負荷に供給する
キャパシタと、
を有する車両用電源の制御装置であって、
前記
キャパシタの現在の劣化状態を検知する劣化状態検知手段と、
前記劣化状態検知手段によって検知された劣化状態に応じて、ソーク中の前記
キャパシタの目標電圧を変更する目標電圧変更手段と、
バッテリと、
前記発電機と前記目標電圧変更手段とを結ぶ第1回路部に前記キャパシタが接続され、前記目標電圧変更手段と前記電気負荷とを結ぶ第2回路部に前記バッテリが接続され、前記目標電圧変更手段をバイパスして前記第1回路部と前記第2回路部とを接続するバイパス回路部と、
前記第1回路部と前記第2回路部との間の電位差が所定値以下になったとき前記バイパス回路部を短絡し、また、前記所定値より大きいときは開放するスイッチと、を更に有し、
前記目標電圧変更手段によって、前記バッテリの現在の劣化状態に応じて、ソーク中の前記キャパシタの目標電圧を変更する
を有することを特徴とする。
【0011】
なお、前記目標電圧の変更には、高電圧から低電圧に変更する場合だけでなく、低電圧から高電圧への変更も含まれる。
【0012】
また、前記目標電圧変更手段には、現在の劣化状態に基づいて目標電圧を変更するものと、現在までの劣化状態の履歴から将来の劣化状態を予測して変更するものも含まれる。
【0013】
本願の請求項2に記載の発明は、前記請求項1に記載の発明において、
前記目標電圧変更手段は、ソーク中の前記蓄電手段の目標電圧を所定の高電圧から所定の低電圧へ切り替える
ことを特徴とする。
【0014】
本願の請求項3に記載の発明は、前記請求項1または2のいずれか1項に記載の発明において、
前記劣化状態検知手段によって、所定期間毎にソーク中に測定された前記キャパシタの静電容量に基づいて前記キャパシタの現在の劣化状態を検知する
ことを特徴とする。
【0016】
請求項
4に記載の発明は、
エンジンに駆動されて発電する発電機と、
前記発電機で発電された電力を蓄電し、蓄電された電力を電気負荷に供給する
キャパシタと、
を有する車両用電源の制御方法であって、
バッテリと、
前記発電機と前記目標電圧変更手段とを結ぶ第1回路部に前記キャパシタが接続され、前記目標電圧変更手段と前記電気負荷とを結ぶ第2回路部に前記バッテリが接続され、前記目標電圧変更手段をバイパスして前記第1回路部と前記第2回路部とを接続するバイパス回路部と、
前記第1回路部と前記第2回路部との間の電位差が所定値以下になったとき前記バイパス回路部を短絡し、また、前記所定値より大きいときは開放するスイッチと、を更に有し、
前記
キャパシタの現在の劣化状態を検知するステップと、
前記ステップで検知された前記
キャパシタの劣化状態に応じて、ソーク中の前記
キャパシタの目標電圧を変更するステップと、
前記バッテリの現在の劣化状態に応じて、ソーク中の前記キャパシタの目標電圧を変更するステップと、
を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
以上の構成により、本願各請求項の発明によれば、次の効果が得られる。
【0018】
請求項1に記載の発明によれば、使用初期は、例えばアイドリングストップ等による高燃費な走行を実現し、
キャパシタの劣化状態に応じて、例えば目標電圧をより低い所定の電圧に変更した後は、高燃費は維持できないが、
キャパシタの所要の耐久性を確保して、長期間使用しても、良好な走行状態を維持できる。
また、本発明によれば、バッテリの劣化状態に応じて、例えばソーク中のキャパシタの目標電圧をより低い所定の電圧へ変更することで、例えばバッテリのみで電気負荷に給電するときに、電気負荷への供給電圧が動作保障電圧以下となるのを回避できる。
【0019】
請求項2に記載の発明によれば、ソーク中の蓄電手段の目標電圧を所定の高電圧から低電圧へ切り替えるという簡易な方法で、その後の蓄電手段の劣化の進行を抑制することができる。
【0020】
請求項3に記載の発明によれば、所定期間毎にソーク中に測定したキャパシタの静電容量を用いているため、精度良く
キャパシタの劣化状態を検知することができる。
【0022】
請求項
4に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明と同様の効果が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0025】
図1は、本実施形態の車両電源の制御方法及び装置が適用された減速回生システム1を示すものである。減速回生システム1は、車両の減速時に行う減速回生発電とエンジン(図示しない)に駆動されて行う通常発電とが可能な回生オルタネータ10、バッテリ20、回生オルタネータ10で発電された電力を蓄電するキャパシタ30、車両に搭載される種々の電気デバイス60への給電を制御するDC/DCコンバータ40、減速回生システム1を制御する制御ユニット50(以下、「ECU50」という)、DC/DCコンバータ40をバイパスするバイパス回路部75にバイパスリレー70を有している。
【0026】
回生オルタネータ10とDC/DCコンバータ40は、第1回路部15によって結ばれており、この第1回路部15にはキャパシタ30が接続されている。また、DC/DCコンバータ40と電気デバイス60は、第2回路部65によって結ばれており、この第2回路部65にはバッテリ20が接続されている。
【0027】
さらにまた、DC/DCコンバータ40をバイパスするように、第1回路部15と第2回路部65とを短絡または開放するバイパスリレー70が接続されている。
【0028】
回生オルタネータ10は、エンジンによりベルト駆動されて、減速時等の運動エネルギを効率的に電力回生する可変電圧式のオルタネータであり、効率よく送電と蓄電を行うために最大25Vまで高電圧化が可能である。
【0029】
バッテリ20は、一般的な鉛バッテリである。
【0030】
キャパシタ30は、回生した大量の電気エネルギを瞬時に蓄え、効率的に取り出して使用できる、大容量の低抵抗電気二重層キャパシタ(EDLC)であり、最大25Vの電圧を発生できる。なお、このキャパシタ30は、電気自動車などに使われるリチウムイオン電池や一般的な鉛電池と比べた時、急速蓄電(50〜60km/h走行時に数秒)が可能であり、放電深度が無制限であり、半永久的な寿命を持つ等の優位性を備えるものである。
【0031】
DC/DCコンバータ40は、最大DC25VをDC14Vまで降圧して出力するコンバータであり、所定の容量(例えば、許容出力電流値(許容限界値)が50A)まで流すことが可能である。DC/DCコンバータは一般に、容量が大きくなるとサイズが大きくなり、より高価になる。
【0032】
ECU50は、減速回生システム1全体の動作を管理制御している。
【0033】
電気デバイス60には、例えば、ランプ、デフロスタ、ブロワ、シートヒータ、ファン、イグニッション、エンジンコントロールユニット、DSC(ダイナミックスタビリティコントロール)、EPAS(電動パワーステアリング)、パワーウィンドウ等がある。
【0034】
当該減速回生システム1によれば、アイドリングストップやアクセルONの時でも、バッテリ20やキャパシタ30に十分な電気が残っている間は回生オルタネータ10による発電を行わずに、これらに蓄電された電気を使用することで、燃料を使ったエンジンによる発電を抑制するので燃費が向上する。
【0035】
なお、市街走行時には頻繁に加減速が行われるためキャパシタ30に蓄えた電力が完全に枯渇する前に再び減速により蓄電され、走行中の車両に必要な電力はほぼ減速回生エネルギで充当される。
【0036】
次に、
図2及び
図3を参照しながら、ECU50によって、イグニッションスイッチをOFF(以下、「IG−OFF」という)してエンジンを停止している時(以下、「ソーク中」という)のキャパシタ目標電圧を切り替えるための車両用電源の具体的制御方法について説明する。
【0037】
まず、
図2のフローチャートを参照しながら、ソーク中のキャパシタ目標電圧の切り替えについて説明する。
【0038】
ステップS1で、キャパシタ30の現在の静電容量Cを測定する。ステップS2で、現在までに測定された静電容量Cに基づいて、次回測定時の静電容量C
NEXTを予測して、この予測された静電容量C
NEXTが、予め規定された静電容量(以下、「規定値C
MIN」という)以上か否かを判定する。予測された静電容量C
NEXTが規定値C
MIN以上ではない、すなわちキャパシタ30が劣化していると判定したときは、ステップS6で、ソーク中のキャパシタ目標電圧V
CAP_SOAKを所定の低電圧V
CAP_SOAK_LOW、例えば15Vに設定する。なお、上述の静電容量の予測については、後に詳細に説明する。
【0039】
一方で、前記ステップS2で、静電容量C
NEXTが規定値C
MIN以上であると判定したときは、ステップS3で、バッテリ20の最低電圧V
BAT_MIN_SOAKを推定する。なお、このバッテリ20の最低電圧V
BAT_MIN_SOAKの推定方法については、後に詳細に説明する。
【0040】
次に、ステップS4で、推定されたバッテリ20の最低電圧V
BAT_MIN_SOAKが、予め規定された最低電圧(以下、「動作保証電圧V
BAT_MIN_RUN)という」、例えば11.5V以上か否かを判定し、動作保証電圧V
BAT_MIN_RUN以上ではない、すなわちバッテリ20の劣化等により、IG−ON時の電力を確保できないと判定したときは、ステップS6で、ソーク中のキャパシタ目標電圧V
CAP_SOAKを低電圧V
CAP_SOAK_LOW(例えば15V)に設定する。
【0041】
なお、前記動作保証電圧V
BAT_MIN_RUNは、バッテリ20の最低電圧V
BAT_MIN_SOAKがこの動作保証電圧V
BAT_MIN_RUNを下回ると、電気デバイス60に十分な電力が供給できなくなる電圧に予め規定されている。
【0042】
一方、前記ステップS4で、バッテリ20の最低電圧V
BAT_MIN_SOAKが動作保証電圧V
BAT_MIN_RUN以上であると判定したときは、ステップ5で、ソーク中のキャパシタ目標電圧V
CAP_SOAKを所定の高電圧V
CAP_SOAK_HIGH、例えば20Vに設定する。
【0043】
つまり、キャパシタ30またはバッテリ20が劣化するまでは、ソーク中のキャパシタ目標電圧V
CAP_SOAKを高電圧V
CAP_SOAK_HIGH(例えば20V)とし、キャパシタ30またはバッテリ20のいずれかが劣化すると、ソーク中のキャパシタ目標電圧V
CAP_SOAKを低電圧V
CAP_SOAK_LOW(例えば15V)に切り替える。
【0044】
ここで、前記ステップS1での、キャパシタ30の静電容量Cの測定は、定期的に、例えば1ヶ月毎に行えばよい。その具体的な測定方法は、ソーク中にキャパシタ30から予め決められた抵抗値を持つ抵抗体に放電して、所定時間内にキャパシタ30の電圧がどの程度降下するかを測定することで、キャパシタ30の静電容量Cを測定できる。なお、キャパシタ30の静電容量Cは、上述のように直接的に測定せずに、公知の方法で間接的に推定しても良い。
【0045】
次に、
図3を参照しながら、バッテリ20の最低電圧を推定する方法について詳細に説明する。
図3は、
図2のメインループに含まれるサブループであるバッテリの最低電圧の推定について概略的に示すフローチャートである。
【0046】
まず、ステップS11で、走行中に現在のバッテリ20の充電状態を示すSOC(state of charge)を連続的に測定し、車両を停車させてIGスイッチをOFFする(以下、「IG−OFF」という)際に、走行中の最後に測定したSOCの値(%)(以下、「SOC
OFF」という)をECU50に記憶する。
【0047】
そして、ステップS12で、最後に測定して記憶したSOC
OFFから、予め車両ごとに規定された、暗電流(すなわち、ソーク中に消費する電流)によるSOCの低下分ΔSOC
SOAKを差し引いて(すなわち、(SOC
OFF−ΔSOC
SOAK))、次回IGをONした(以下、「IG−ON」という)時のバッテリ20のSOCの値(以下、「SOC
ON」という)を推定する。
【0048】
そして、ステップS13で、例えば、予め設定された変換マップ等を用いて、推定されたSOC
ONをバッテリ20の起電力E
BAT_ONに変換する。
【0049】
ここで、ステップS14で、バッテリ20の内部抵抗R
BATを推定し、ステップS15で、推定されたR
BATと、予め設定されたIG−ON時に瞬間的に流れる要求電流の最大値I
ON_MAXとの積算(すなわち、(R
BAT×I
ON_MAX))により、バッテリ20の電圧降下V
BAT_DROPを推定する。
【0050】
最後に、ステップS16で、起電力E
BAT_ONから電圧降下V
BAT_DROP分を差し引いて(すなわち、(E
BAT_ON−V
BAT_DROP))、バッテリ20の最低電圧V
BAT_MIN_SOAKを算出して、
図2のメインルーチンに戻る。
【0051】
以上のフローチャートに基づく、本実施形態に係る減速回生システム1を制御するECU50の動作について、
図4及び
図5を参照しながら説明する。
【0052】
図4は、キャパシタ30の静電容量に応じたソーク中のキャパシタ目標電圧の切り替えについて説明するタイムチャートである。該タイムチャートの横軸は、キャパシタ30の使用開始からの使用期間(年)を意味し、縦軸は、キャパシタ30の静電容量C(F)及びソーク中のキャパシタ目標電圧V
CAP_SOAK(V)を意味している。
【0053】
なお、当該タイムチャートの横軸は、正確には使用期間の平方根を目盛としている。なぜなら、キャパシタの使用期間の平方根と静電容量には、一般的に直線の相関関係が見られるため、説明が容易になるからである。
【0054】
ここで、上側のタイムチャートには、測定ラインと規定ラインの2本の右下がりの直線グラフが描かれている。
【0055】
この測定ラインは、ソーク中のキャパシタ目標電圧V
CAP_SOAKを20Vにして、使用期間が0年からT年まで定期的に、例えば1ヵ月毎に静電容量Cを測定して得られた複数の実測値の点に近似する直線を書いて、この直線を使用期間が、例えば10年まで延ばしたものである。なお、グラフを見易くするため、実測値は半年毎のもののみがプロットされている。
【0056】
したがって、測定ラインの傾きは、キャパシタ30の静電容量が時間と共に減少する速さ、すなわち、キャパシタ30の劣化が進行する速さを意味している。
【0057】
一方、この規定ラインは、使用開始から10年後も所望の燃費のモード走行が可能なキャパシタ静電容量C
MIN_10を10年後の目標値として予め定め、既に実験等で得られている、ソーク中キャパシタ目標電圧V
CAP_SOAKを15Vとして使用し続けた場合における静電容量の減少の傾きで、使用開始まで直線的に描いたものである。すなわち、静電容量の規定値C
MINを連続してグラフ上に描いたものである。
【0058】
ソーク中のキャパシタ目標電圧V
CAP_SOAKを20Vに設定して、車両の使用を開始する。使用開始から1ヵ月毎にキャパシタ30の静電容量Cを測定して(S1)、得られた実測値をECU50内に記憶する。現在までに測定して記憶された静電容量Cのデータに基づいて、1ヶ月後の静電容量C
NEXTを予測する。
【0059】
なお、この予測は、グラフ上では、得られた実測値に基づいて上述の測定ラインを作成し、この測定ラインの傾きに基づいて、1ヵ月後の静電容量を求めることと同じである。
【0060】
予測された1ヵ月後の静電容量C
NEXTとその時の規定値C
MINとを比較し(S2)、静電容量C
NEXTが規定値C
MIN以上ではないと判定された場合(すなわちC
NEXT<C
MIN)、何日後に静電容量が規定値C
MINと等しくなるのか、静電容量が規定値C
MINと等しくなる使用期間Tを計算する。
【0061】
なお、この計算は、使用期間Tのときの静電容量をC
Tとすれば、グラフ上では、測定ラインが規定ラインと交わる交点(T、C
T)(グラフ上の「ソーク中キャパシタ目標電圧切替点」を参照)を求めることと同じである。
【0062】
そして、計算した使用期間Tが到来したときに、ソーク中のキャパシタ目標電圧V
CAP_SOAKを20Vから15Vに切り替える(S6)。
【0063】
キャパシタ目標電圧V
CAP_SOAKの切り替え後も、引き続きキャパシタ静電容量Cの測定を継続する。なお、図示していないが、切り替え後の静電容量Cの実測値は、ほぼ規定ライン上にプロットされることとなり、10年後には目標の静電容量C
MIN_10が得られる。
【0064】
したがって、当該実施形態によれば、使用初期において目標電圧を高電圧にしてアイドリングストップ等による燃費の向上を実現すると共に、キャパシタ30の劣化がある程度進むと、目標電圧を高電圧から低電圧に切り替えることで、長期間に亘ってキャパシタ30の所要の耐久性を確保することができる。
【0065】
次に
図5を参照しながら、バッテリ20の劣化状態等に応じてソーク中のキャパシタ目標電圧V
CAP_SOAKを切り替える動作について詳細に説明する。
【0066】
図5は、バッテリ20の劣化状態等に応じたソーク中キャパシタ目標電圧V
CAP_SOAKの切り替えについて説明するタイムチャートであり、IGスイッチ、車速、バッテリ電圧及びキャパシタ電圧の時間的な変化をそれぞれ示している。
【0067】
まず、走行中に現在のバッテリ20のSOCを連続して測定する(S11)。車両が減速を始めると、回生オルタネータ10による減速回生が行われて、バッテリ20及びキャパシタ30に蓄電される。
【0068】
その後、停車して、エンジン停止及びIG−OFFしてソークとなる。IG−OFF時に、走行中の最後に測定したSOC
OFF等に基づいてバッテリの最低電圧V
BAT_MIN_SOAKを推定し(S3)、これが動作保証電圧V
BAT_MIN_RUN以上か否かを判定して(S4)、次回IG−ON時にバッテリ20で電力確保できるようなソーク中キャパシタ目標電圧V
CAP_SOAKを設定する(S5またはS6)して、設定した該ソーク中キャパシタ目標電圧V
CAP_SOAKまで電圧が下がるまで、キャパシタ30を放電させる。
【0069】
ソーク中は、暗電流によってバッテリ20の電力が消費されるため、バッテリ20の電圧が徐々に低下する。また、キャパシタ30はソーク中、IG−ON時に設定されたソーク中キャパシタ目標電圧V
CAP_SOAK(15Vまたは20V)を維持する。
【0070】
IG−ON時に、バッテリ20に電圧降下V
BAT_DROPが生じる。これは、ソーク中に目標電圧V
CAP_SOAKである15Vまたは20Vに維持されていたキャパシタ30の電圧が、IG−ON時に、電気デバイス60の定格電圧12V付近まで下がるまではバイパス回路部75を短絡できないため、バッテリ20のみで電気デバイス60に電力を供給することとなり、電気負荷が大きいと、このIG−ON時にバッテリ20から電気デバイス60に大電流I
ON_MAXが流れて、バッテリ20の内部抵抗R
BATにより、バッテリ20の電圧が降下するためである。
【0071】
電圧降下した時のバッテリ20の最低電圧は、IG−OFF時に推定した最低電圧V
BAT_MIN_SOAKとほぼ同じ電圧であり、IG−ON時にバッテリ20のみで電力確保できるようなソーク中キャパシタ目標電圧V
CAP_SOAKでソーク中にキャパシタ30の電圧を維持していたため、バッテリ20の動作保証電圧V
BAT_MIN_RUN(例えば11.5V)を下回らず、電気デバイス60は正常に作動し、やがて車両は発進する。
【0072】
なお、この最低電圧がバッテリ20の動作保証電圧V
BAT_MIN_RUNを下回ると、電気デバイス60に十分な電力が供給できなくなり、例えば、パワーステアリングが正常に働かずにハンドル操作が重くなる、ヘッドライトが消えてしまうなどの異常が生じる。
【0073】
キャパシタ30の電圧とバッテリ20の電圧との差が所定値以下になると、バイパスリレー70がONされ、第1回路部15と第2回路部65を短絡し、回生オルタネータ10で低電圧(例えば14V)の通常発電を行い、電気デバイス60には、DC/DCコンバータ40を経由して給電する。そして、回生オルタネータ10からバッテリ20にバイパス回路部75を経由して大電流で蓄電する。
【0074】
したがって、IG−ONしてバッテリ20が電圧降下した時をT
ON、キャパシタ30の電圧が15Vから12Vへ下がった時をT
1、キャパシタ30の電圧が20Vから12Vへ下がった時をT
2とすると、ソーク中キャパシタ目標電圧V
CAP_SOAKを20Vとした場合、T
ON〜T
2間をバッテリ20のみで電力を供給しなければならないのに対し、ソーク中キャパシタ目標電圧V
CAP_SOAKを15Vとした場合、T
ON〜T
1間だけ電力を供給すればよいため、この間に消費されるバッテリ20の電力がより少なくて済むこととなる。
【0075】
以上により、バッテリ20が劣化して蓄電できる電力が少なくなっている場合や、IG−ON時の電気負荷が大きい場合には、ソーク中のキャパシタ30の目標電圧を高電圧から低電圧へ切り替えることで、IG−ON時のバッテリ20の負担を減らすことができるため、電気デバイス60への供給電圧が動作保障電圧以下となることを回避できる。
【0076】
なお、本発明は例示された実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計上の変更が可能であることは言うまでもない。
【0077】
例えば、上述の実施形態では、キャパシタ30の測定は1ヵ月毎に行ったが、例えば毎日測定を行って、現在の劣化状態が規定値以下になった時点ですぐにソーク中キャパシタ目標電圧の切り替えを行ってもよい。また、キャパシタ30の測定はソーク中に行ったが、これはソーク中に限るものではない。
【0078】
そして、ソーク中キャパシタ目標電圧の変更は、高電圧から低電圧に切り替えたが、キャパシタ30やバッテリ20の能力に余裕がある場合には、より燃費を向上させるため、低電圧から高電圧へ切り替えてもよい。
【0079】
また、ソーク中キャパシタ目標電圧は、所定の高電圧から低電圧へ一度しか切り替えなかったが、例えば高電圧→中電圧→低電圧など、多段階で切り替えてもよい。また、目標電圧は、設定する候補の電圧値(15Vまたは20V)を予め決めていたが、設定する目標電圧は、切り替え時に適宜計算により求めてもよい。
【0080】
さらに、バッテリ20は、鉛蓄電池以外の二次電池を用いてもよい。キャパシタ30についても、他の蓄電手段を用いてもよい。
【0081】
さらにまた、上述の実施形態では、回生発電機として回生オルタネータ10を使用したが、当該回生オルタネータ10の替わりにモータジェネレータ等を採用してもよい。また、スイッチとしてバイパスリレー70を使用しているが、当該バイパスリレー70の替わりに半導体スイッチを用いてもよい。