(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ポリイミド系樹脂を含む主剤と、前記ポリイミド系樹脂の硬化物の粘着力を低下させるための添加剤とを含有し、JIS Z0237に準拠した方法で測定した前記硬化物の粘着力(試験板:銅箔、剥離速度:300mm/分、剥離距離:50mm、剥離角:180°)は、初期の粘着力が0.98×10-3N/25mm以上、196×10-3N/25mm以下であり、230℃で60分間加熱した後の粘着力が4.90×10-3N/25mm以上、490×10-3N/25mm以下であって、
前記ポリイミド系樹脂の硬化物の粘着力を低下させるための添加剤が、ペンタエリスリトールトリアクリレート及びエトキシ化ビスフェノールAジアクリレートから選ばれるアクリル系モノマーであり、前記添加剤の含有量が、前記ポリイミド系樹脂と前記添加剤との合計量に対して、10質量%以上、90質量%以下であることを特徴とする粘着剤組成物。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る粘着剤組成物及び粘着テープの実施の形態について詳細に説明する。本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0015】
[粘着剤組成物]
本発明に係る粘着剤組成物は、シリコーン系樹脂又はポリイミド系樹脂を含む主剤と、前記シリコーン系樹脂の硬化物又は前記ポリイミド系樹脂の硬化物の粘着力を低下させるための添加剤とを含有している。そして、JIS Z0237に準拠した方法で測定した前記硬化物の粘着力は、初期の粘着力が0.98×10
-3N(0.1gf)/25mm以上、196×10
-3N(20gf)/25mm以下であり、230℃で60分間加熱した後の粘着力が4.90×10
-3N(0.5gf)/25mm以上、490×10
-3N(50gf)/25mm以下であることに特徴がある。
【0016】
こうした粘着剤組成物によれば、粘着剤組成物で形成された硬化物(粘着剤層)は、被着体を固定や保護するために必要な粘着力を有するとともに、その粘着力が比較的弱いので被着体から容易に剥がすことができ、貼り直し等を容易に行うことができる。また、被着体が薄い場合であっても、硬化物(粘着剤層)を被着体から剥がし易く、薄い被着体に損傷を与えることなく貼り直しを行うことができる。また、硬化物(粘着剤層)に熱が加わった後であっても、その硬化物(粘着剤層)を被着体から容易に剥離することができる。
【0017】
なお、「硬化物」とは、粘着剤組成物を加熱又は紫外線照射等による硬化反応によって得られたもの、又は、粘着剤組成物中の含有溶媒を揮発除去した後のもの、を意味し、粘着剤組成物で形成した「粘着剤層」と同じ意味で用いている。また、「230℃で60分間加熱した後」は、「230℃で60分間の温度に保持した後」と言い換えることができる。
【0018】
以下、各構成要素について詳細に説明する。
【0019】
<主剤>
主剤は、粘着剤組成物の主な構成材料であり、シリコーン系樹脂又はポリイミド系樹脂を含む。シリコーン系樹脂又はポリイミド系樹脂としては、硬化させた後の硬化物が粘着力を有するものであれば特に限定されない。シリコーン系樹脂とポリイミド系樹脂は耐熱性が高いので、シリコーン系樹脂又はポリイミド系樹脂を粘着剤組成物の主剤として用いることにより、粘着剤組成物を硬化させた後の硬化物(粘着剤層)も高い耐熱性を示す。そのため、硬化物に熱が加わった場合であっても、その耐熱性によって被着体を固定したり保護したりするための粘着力を保持することができるとともに、粘着力に著しい上昇が起きない。その結果、硬化物に熱が加わった後であっても被着体に対する粘着性能や剥離性能を保持することができる。
【0020】
ここで、耐熱性が高いとは、後述の実施例で示すように例えば230℃の温度に曝された場合であっても、樹脂構造に変形等の変化が生じにくいことである。そして、樹脂構造が変化しにくいことによって、粘着力の上昇が抑えられる特性であるということができる。また、本願でいう「高温」及び「加熱され」とは、少なくとも後述の実施例で粘着剤層(硬化物)に加える230℃60分の条件に対応するものであり、この加熱条件を最低限の条件としてという意味である。したがって、230℃60分の条件で特定範囲の粘着力を示す硬化物を得ることができる粘着剤組成物は、本発明の技術的範囲に含まれるということができる。
【0021】
(シリコーン系樹脂)
シリコーン系樹脂は、シロキサン結合を骨格構造とする樹脂であり、このシロキサン結合の柔軟な骨格により、シリコーン系樹脂の硬化物は柔軟性を示すことができる。したがって、シリコーン系樹脂の硬化物は、そうした柔軟性に基づく粘着力を発揮することができる。
【0022】
シリコーン系樹脂としては、液状シリコーン樹脂と熱加硫型シリコーン樹脂とを挙げることができる。中でも、液状シリコーン樹脂は、製造が容易であり、粘着力の調整が容易であることから好ましく用いることができる。また、液状シリコーン樹脂としては、1成分又は2成分縮合型シリコーン樹脂、付加反応型シリコーン樹脂、紫外線硬化型シリコーン樹脂等を挙げることができる。これらの中でも、付加反応型シリコーン樹脂は、反応速度が速く、粘着力の調整が容易であることから好ましく用いることができる。
【0023】
シリコーン系樹脂の市販品としては、例えば、X40−3229(信越化学工業株式会社製)、X40−3306(信越化学工業株式会社製)、X40−3270−1(信越化学工業株式会社製)、FC4600(東レ・ダウコーニング株式会社製)等を挙げることができる。中でも、低分子成分が少ないシリコーン系樹脂は、粘着剤組成物を剥離した後の糊残りを低減することができるので特に好ましく用いることができる。低分子成分が少ないシリコーン系樹脂の市販品としては、例えば、X40−3229(信越化学工業株式会社製)を挙げることができる。なお、シリコーン系樹脂に低分子成分が含まれる場合に糊残りが生じるおそれがある理由は、低分子成分が粘着剤組成物からブリードアウトして、粘着剤組成物が剥離した被着体の表面に残ってしまうためであると考えられる。
【0024】
主剤がシリコーン系樹脂である場合は、粘着剤組成物には、シリコーン系樹脂を硬化させるための硬化触媒が含まれる。シリコーン系樹脂用の硬化触媒としては、例えば、ヒドロシリル化付加反応硬化型の硬化触媒、縮合反応硬化型の硬化触媒、有機過酸化物等の従来公知の硬化触媒を使用することができる
【0025】
(ポリイミド系樹脂)
ポリイミド系樹脂としては、熱硬化性のポリイミド系樹脂又は光硬化性のポリイミド系樹脂を挙げることができる。熱硬化性のポリイミド系樹脂は、末端にアミノ基を有し、一方、光硬化性のポリイミド系樹脂は、末端にメタクリル系の二重結合を有する。これら熱硬化性のポリイミド系樹脂と光硬化性のポリイミド系樹脂は、従来公知の方法で製造することができる。前者の熱硬化性のポリイミド系樹脂は、例えば、溶液重合法;ポリアミック酸溶液を調製し、これを製膜してイミド化する方法;ハーフエステル塩等の塩又はイミドオリゴマーを得て固相重合を行なう方法;等で製造することができる。後者の光硬化性のポリイミド系樹脂は、例えば、溶液重合法等の公知の手法で合成した熱硬化性のポリイミド系樹脂とエネルギー線重合性モノマーとを反応させることで製造することができる。
【0026】
熱硬化性のポリイミド系樹脂又は光硬化性のポリイミド系樹脂のうち、光硬化性のポリイミド系樹脂は、硬化させる際に加熱する必要がないために低コストで製造できること、及び、均一に硬化した硬化物を得やすいことから、より好ましく用いることができる。
【0027】
ポリイミド系樹脂を硬化させた後の硬化物は、柔軟性を有するエーテル結合構造を有している。そのため、柔軟性のあるエーテル結合構造を含む硬化物は柔軟性を示し、その柔軟性に基づく粘着力を発揮する。エーテル結合構造を有するポリイミド系樹脂の合成方法は、例えば、上記した溶液重合法等の公知の方法において、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物にエチレンオキシド・プロピレンオキシド共重合物ビス(2−アミノプロピル)エーテル(三井化学ファイン株式会社製、商品名:ジェファーミンED−900)を付加させる方法等を挙げることができる。
【0028】
<添加剤>
添加剤は、主剤であるシリコーン系樹脂の硬化物又はポリイミド系樹脂の硬化物の粘着力を低下させるために、シリコーン系樹脂又はポリイミド系樹脂とともに粘着剤組成物に含まれている。添加剤がさらに備えていてもよい好ましい特性は、高い耐熱性を有すること、シリコーン系樹脂又はポリイミド系樹脂と相溶性を有すること、高温にした場合であっても粘着力を発現しないものであること、それ自身が粘着力を有さないこと、を挙げることができる。これらの好ましい特性は、必ず備えている必要があるというものではないが、少なくとも1つ又は2以上備えていることが好ましく、全て備えていることが特に好ましい。
【0029】
添加剤としては、主剤がシリコーン系樹脂の場合は、例えば、ヒンダードフェノール系化合物(N又はSを含まない。以下、単に「ヒンダードフェノール系化合物」ともいう。)、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、クレゾール樹脂、ノボラック樹脂等を挙げることができ、好ましくはヒンダードフェノール系化合物を挙げることができる。一方、主剤が光硬化性のポリイミド系樹脂の場合は、エネルギー線重合性モノマーを挙げることができ、主剤が熱硬化性のポリイミド系樹脂の場合は、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、金属キレート系架橋剤等を挙げることができる。
【0030】
こうした添加剤は、粘着剤組成物で形成された硬化物に対し、被着体を固定や保護するために必要な粘着力を持たせた状態でその粘着力を弱くさせることができる。そのため、形成された硬化物を、被着体から容易に剥がすことができ、貼り直し等を容易に行うことができるようにすることができる。また、被着体が薄い場合であっても、硬化物を被着体から剥がし易く、薄い被着体に損傷を与えることなく貼り直しを行うことができるようにすることができる。また、粘着剤組成物中に添加剤が含有されることにより、硬化物中の粘着成分である主剤と被着体との接触面積が減少すると考えられるので、粘着剤組成物の剥離面に糊残りが生じるのを抑制できる。こうした添加剤は、主剤に化学的に結合又は反応する化合物である点で、単なる詰め物や充填材として一般的に用いられるフィラーとは異なる。
【0031】
(シリコーン系樹脂への添加剤)
ヒンダードフェノール系化合物は、一般的には耐熱安定剤や酸化防止剤と呼ばれて用いられている化合物であり、樹脂等に含有されてその樹脂等の耐熱性を向上させたり酸化を防ぐために用いられている。一方、本発明で用いるヒンダードフェノール系化合物は、シリコーン系樹脂を主剤とした粘着剤組成物に添加され、その粘着剤組成物が含むシリコーン系樹脂の硬化物の硬化を向上させるために用いられる化合物である。そして、シリコーン系樹脂と良好な相溶性を有し、シリコーン系樹脂の硬化を向上させるヒンダードフェノール系化合物であれば特に限定されない。中でも、シリコーン系樹脂中で、低揮発性のヒンダードフェノール系化合物であることが好ましく、高温に曝されたときの揮発を抑制することができる。
【0032】
ヒンダードフェノール系化合物は、具体的には、ヒンダードフェノール構造骨格を有する化合物であって、化合物中にN(窒素原子)を含まず、且つS(硫黄原子)も含まないものが好ましく用いられる。そうしたヒンダードフェノール系化合物としては、例えばチバ・ジャパン株式会社製の、IRGANOX 1010、IRGANOX 1076、IRGANOX 1135、IRGANOX 245、IRGANOX 259、IRGANOX MD1024等を挙げることができる。これらのヒンダードフェノール系化合物は、上記した作用効果を奏し、シリコーン系樹脂に含有させる添加剤として好ましく用いることができる。なお、ヒンダードフェノール系化合物であっても、その構造中にS(硫黄原子)を含む化合物や、ベンゾトリアゾールを含む化合物、すなわちN(窒素原子)を含む化合物は、硬化を阻害することがあるので、使用できないことがある。
【0033】
フッ素樹脂は、シリコーン系樹脂と良好な相溶性を有し、また、高い耐熱性を示す。そのため、粘着剤組成物が含むシリコーン系樹脂の硬化物の粘着力を低下させるための添加剤として好ましく用いられる。フッ素樹脂としては、従来公知の各種のフッ素樹脂を適用でき、例えば、ポリフッ化ビニリデン、四フッ化エチレン樹脂、四フッ化エチレンペルフルオロアルコキシビニルエーテル共重合体、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、四フッ化エチレン−エチレン共重合体、クロロトリフルオロエチレン−エチレン共重合体、ポリビニルフロライド等を挙げることができる。
【0034】
フッ素樹脂を添加剤として用いる場合、従来公知の硬化剤を使用することが可能なフッ素樹脂を用いることが好ましい。硬化剤を使用可能なフッ素樹脂としては、前記したフッ素樹脂のうち、官能基を有するフッ素樹脂から選ばれる1種又は2種以上を挙げることができる。官能基を有するフッ素樹脂は、高温に曝されたときの耐熱性が向上するので好ましく用いられる。このとき用いられる硬化剤は、フッ素樹脂が有する官能基の種類によって、その官能基に適したものが選択されることが好ましい。硬化剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤等のように、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基等の活性水素を含むもの、また、エポキシ系架橋剤等のように、グリシジル基(エポキシ基)等を含むもの、また、金属キレート系架橋剤等を挙げることができる。また、フッ素樹脂が(メタ)アクリル系等の二重結合等の重合性不飽和結合を含む場合には、前記した硬化剤と共に、光や熱で重合を開始するラジカル重合開始剤等を併せて配合することが好ましい。
【0035】
エポキシ樹脂は、シリコーン系樹脂と良好な相溶性を有し、また、高い耐熱性を示す。そのため、粘着剤組成物が含むシリコーン系樹脂の硬化物の粘着力を低下させるための添加剤として好ましく用いられる。エポキシ樹脂としては、製造の容易性の観点から、常温で液体のエポキシ樹脂を好ましく挙げることができる。そうしたエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、脂肪族型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、変性フェノール型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリアジン核含有エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂及びグリシジルアミン型エポキシ樹脂等から選ばれる1種又は2種以上を挙げることができる。これらの中でも、ビスフェノールAエポキシ樹脂、ビスフェノールFエポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂は、耐熱性の観点から好ましく用いられる。また、エポキシ樹脂を添加剤として用いる場合は、エポキシ樹脂用の硬化剤も添加される。エポキシ樹脂用の硬化剤としては、従来公知のものを使用でき、例えば、アミン系硬化剤、フェノール系硬化剤、イミダゾール系硬化剤、酸無水物系硬化剤、有機金属系触媒等を挙げることができる。
【0036】
これらの添加剤が粘着剤組成物中に含有されることにより、粘着剤組成物で形成された硬化物中の粘着成分である主剤と被着体との接触面積が減少すると考えられるので、被着体の表面に糊残りが生じるのを抑制できる。例えば、非粘着性成分であるヒンダードフェノール系化合物が添加剤としてシリコーン系樹脂とともに粘着剤組成物に含まれている場合、粘着剤組成物の硬化物と被着体との接触面積が減少する。その結果、硬化物の粘着力を低下させることができるとともに、被着体の表面での糊残りの発生を抑制できる。一方、フッ素樹脂やエポキシ樹脂等が添加剤としてシリコーン系樹脂とともに粘着剤組成物に含まれている場合、そのフッ素系樹脂やエポキシ系樹脂はシリコーン系樹脂とは独立に硬化し、独立して硬化した硬化物は粘着力を有さない。そのため、粘着剤組成物で形成された硬化物中にフッ素樹脂やエポキシ樹脂等の硬化物が混入するので、シリコーン系樹脂の硬化物の柔軟性が低下するとともに、シリコーン系樹脂の硬化物と被着体との接触面積が減少する。その結果、シリコーン系樹脂の硬化物の粘着力を低下させることができるとともに、被着体の表面での糊残りの発生を抑制できる。
【0037】
主剤がシリコーン系樹脂である場合の添加剤の含有量は、シリコーン系樹脂と添加剤との合計量に対して、0.4質量%以上、10質量%以下の範囲内であることが好ましい。添加剤がこうした範囲で含まれていることにより、硬化物の初期の粘着力を実用可能な範囲内で弱めることができ、また、高温に曝された場合の粘着力の上昇を抑制することができる。特にヒンダードフェノール系化合物を添加剤として用いた場合のヒンダードフェノール系化合物の含有量は、シリコーン系樹脂とヒンダードフェノール系化合物との合計量に対して、0.4質量%以上、5質量%以下の範囲内であることが好ましい。
【0038】
(ポリイミド系樹脂への添加剤)
光硬化性のポリイミド系樹脂の場合;
主剤が光硬化性のポリイミド系樹脂の場合は、エネルギー線重合性モノマーが添加剤として好ましく用いられる。エネルギー線重合性モノマーは、エネルギー線の照射により重合し得るものであれば、特に限定されない。例えば、光ラジカル重合性モノマー、光カチオン重合性モノマー、及び光アニオン重合性モノマー等を挙げることができる。なお、エネルギー線とは、電子線や紫外線のことであり、さらに、可視光線、X線、γ線等の電磁波、α線等の荷電粒子線を含む。エネルギー線重合性モノマーとは、エネルギー線を照射することにより、重合する単量体のことである。
【0039】
これらの中でも、光ラジカル重合性モノマーは、硬化速度が速く、また、多種多様な化合物から選択することができ、さらに、粘着性や剥離性等の物性を容易に所望のものに制御することができるので好ましく用いられる。光ラジカル重合性のモノマーとしては、多官能性アクリレートモノマーや多官能性メタクリレートモノマーが好ましく用いられる。例えば、1分子中にアクリロイル基を3個以上有するアクリル系モノマーや、1分子中にアクリロイル基を2個有するアクリル系モノマーを挙げることができる。なお、本願において、「アクリロイル基」はメタクリロイル基を含み、「アクリレート」はメタクリレートを含む。
【0040】
1分子中にアクリロイル基を3個以上有するアクリル系モノマーとしては、例えば、トリメチロールメタントリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、グリセリルトリアクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、及びこれらのエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド付加物等のモノマーを挙げることができる。また、1分子中にアクリロイル基を2個有するアクリル系モノマーとしては、例えば、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリテトラメチレングリコールジアクリレート、ブタンジオールジアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、ノナンジオールジアクリレート、ペンタンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジメチロールートリシクロデカンジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、ビスフェノールAポリエトキシジオールジアクリレート、ビスフェノールAポリプロポキシジオールジアクリレート、及びこれらのエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド付加物等のモノマーを挙げることができる。
【0041】
主剤が光硬化性のポリイミド系樹脂である場合の添加剤であるエネルギー線重合性モノマーの含有量は、光硬化性のポリイミド系樹脂と添加剤との合計量に対して、10質量%以上、90質量%以下の範囲内であることが好ましい。添加剤がこうした範囲で含まれていることにより、硬化物の初期の粘着力を実用可能な範囲内で弱めることができ、また、高温に曝された場合の粘着力の上昇を抑制することができる。添加剤の含有量が10質量%未満の場合は、硬化物の粘着力が十分に弱くならないので、被着体が薄い場合に貼り直しが難しいことがある。また、添加剤の含有量が90質量%を超えると、硬化物の粘着力が低下し、被着体を仮固定したり保護したりすることができなくなることがある。添加剤であるエネルギー線重合性モノマーの好ましい含有量としては、粘着力が小さすぎず大きすぎないという観点から、20質量%以上、70質量%以下の範囲内を挙げることができる。
【0042】
なお、粘着剤組成物が1分子中にアクリロイル基を3個以上有するアクリル系モノマーを含有させることにより、粘着剤組成物で形成された硬化物に熱が加わった後の粘着力の上昇を低く抑えることができる。この理由は、粘着剤組成物の主剤である光硬化性のポリイミド系樹脂がより密に架橋されるので、耐熱性が向上し、その結果、熱による変形が抑えられるためであると考えられる。具体的には、ポリイミド1当量に対して、エネルギー線重合性モノマーを1当量〜4当量反応させることが好ましい。
【0043】
主剤が光硬化性のポリイミド系樹脂である場合は、ビスマレイミド化合物を含有させることが好ましい。こうすることにより、粘着剤組成物の硬化物の耐熱性を向上させることができる。ビスマレイミド化合物としては、N,N’−(4,4’−ジフェニルメタン)ビスマレイミド、N,N’−(4,4’−ジフェニルオキシ)ビスマレイミド、N,N’−(4,4’−ジフェニルスルホン)ビスマレイミド、N,N’−p−フェニレンビスマレイミド、N,N’−m−フェニレンビスマレイミド、N,N’−2,4−トリレンビスマレイミド、N,N’−2,6−トリレンビスマレイミド、N,N’−エチレンビスマレイミド、N,N’−ヘキサメチレンビスマレイミド等を挙げることができる。粘着剤組成物中のビスマレイミド化合物は、上記した耐熱性を向上させることができる程度に配合させていることが好ましく、後述の実施例に示すように光硬化性ポリイミド系樹脂10質量部に対して1.5質量部の割合で配合した例を一例として挙げることができるが、これには限定されず、光硬化性ポリイミド系樹脂10質量部に対して1質量部以上、40質量部以下の割合で配合することができる。
【0044】
主剤が光硬化性のポリイミド系樹脂である場合は、光硬化性のポリイミド系樹脂を硬化させるために光重合開始剤を含有する。光重合開始剤としては、特に限定されるものではなく、従来公知のものを使用できる。例えば、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、α−アミロキシムエステル、テトラメチルチウラムモノサルファイド、チオキサントン類を挙げることができる。より具体的には、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンを挙げることができる。粘着剤組成物中の光重合開始剤の含有量は特に限定されないが、一例としては後述の実施例に示すように粘着剤組成物の全量に対して約5質量%の割合で含まれていることが好ましい。
【0045】
熱硬化性のポリイミド系樹脂の場合;
主剤が熱硬化性のポリイミド系樹脂の場合は、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、金属キレート系架橋剤等が添加剤として好ましく用いられる。
【0046】
イソシアネート系架橋剤は、1分子あたり2つ以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物であることが好ましい。例えば、ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の低級脂肪族ポリイソシアネート類;シクロペンチレンジイソシアネート、シクロへキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環族イソシアネート類;2,4−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート類;トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート3量体付加物(日本ポリウレタン工業株式会社製、商品名:コロネートL)、トリメチロールプロパン/へキサメチレンジイソシアネート3量体付加物(日本ポリウレタン工業株式会社製、商品名:コロネートHL)、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(日本ポリウレタン工業社製、商品名コロネートHX)等のイソシアネート付加物;等を挙げることができる。これらの架橋剤は、単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0047】
エポキシ系架橋剤は、1分子あたり2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ系架橋剤であることが好ましい。例えば、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、及びポリブタジエンジグリシジルエーテル等の多官能エポキシ系化合物を挙げることができる。
【0048】
光硬化性のポリイミ樹脂に上記したエネルギー線重合性モノマーが添加剤として含まれていたり、熱硬化性のポリイミド系樹脂に上記した架橋剤が添加剤として含まれていたりすることによって、ポリイミド系樹脂の硬化物がより密に架橋する。そのため、ポリイミド系樹脂の硬化物の柔軟性が低下するので、その粘着力を低下させることができる。
【0049】
<その他>
粘着剤組成物には、その他、本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて増感剤、シランカップリング剤、粘着付与剤、金属キレート剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、顔料、染料、着色剤、耐電防止剤、防腐剤、消泡剤、ぬれ性調整剤等の各種添加剤が含まれていてもよい。
【0050】
こうして構成された粘着剤組成物は、加熱又は紫外線照射等により、又は、粘着剤組成物中の含有溶媒を揮発除去により、硬化して硬化物(粘着剤層)になる。本発明の粘着剤組成物は、JIS Z0237に準拠した方法で測定した前記硬化物の初期の粘着力が0.98×10
-3N(0.1gf)/25mm以上、196×10
-3N(20gf)/25mm以下である。そのため、被着体を固定や保護するために必要な粘着力を有するとともに、その粘着力が比較的弱いので被着体から容易に剥がすことができ、貼り直し等を容易に行うことができる。また、被着体が薄い場合であっても、硬化物(粘着剤層)を被着体から剥がし易く、薄い被着体に損傷を与えることなく貼り直しを行うことができる。なお、前記硬化物の初期の粘着力は、0.98×10
-3N(0.1gf)/25mm以上、118×10
-3N(12gf)/25mm以下がより好ましい。
【0051】
また、本発明の粘着剤組成物は、JIS Z0237に準拠した方法で測定した粘着力は、前記硬化物を230℃で60分間加熱した後の粘着力が4.90×10
-3N(0.5gf)/25mm以上、490×10
-3N(50gf)/25mm以下である。そのため、前記硬化物の粘着体組成物を加熱した後であっても、その硬化物(粘着剤層)を被着体から容易に剥離することができる。この理由は、粘着力が著しく上昇するのが抑えられているためと考えられる。なお、前記硬化物を230℃で60分間加熱した後の加熱後の粘着力は、14.7×10
-3N(1.5gf)/25mm以上、490×10
-3N(50gf)/25mm以下がより好ましい。初期粘着力や加熱後の粘着力の測定は、例えば、万能材料試験機(インストロン・ジャパン社製、型番:5565)を用いて測定できる。
【0052】
以上、本発明によれば、貼り直しが容易で、熱が加わった後であっても被着体から容易に剥離することができる粘着剤層(硬化物)を形成するための粘着剤組成物を提供することができる。
【0053】
[粘着テープ]
次に、本発明に係る粘着テープについて説明する。本発明に係る粘着テープ10は、
図1に示すように、上記した粘着剤組成物で形成された粘着剤層2と、粘着剤層2が設けられた基材1とを有する。この粘着テープ10は、上記した本発明に係る粘着剤組成物で形成された硬化物である粘着剤層を有するので、その粘着剤層が奏する効果を持っている。そのため、被着体が薄い場合であっても貼り直しが容易であり、また、糊残りの発生を抑制でき、さらに、高温に曝された場合であっても被着体から容易に剥離することができる。なお、
図1中、符号3は剥離層である。
【0054】
図1に示す粘着テープ10は、基材1上に、粘着剤層2と剥離層3とがその順で設けられているが、この構成に限定されない。例えば、剥離層3はなくてもよいし、基材1の粘着剤層2が設けられている面とは反対の面に、他の機能層が設けられていてもよい。また、粘着テープ10の厚さは、特に限定されないが、17.5μm以上、350μm以下であることが好ましい。粘着テープ10の厚さがこの範囲内であれば、適度な柔軟性を有するので、取り扱いが容易になる。
【0055】
粘着テープ10の製造方法は、基材1と粘着剤組成物を準備する工程(準備工程)と、基材1上に粘着剤組成物を塗布する工程(塗布工程)と、その粘着剤組成物を硬化させて粘着剤層2を形成する工程(粘着剤層形成工程)とを少なくとも有する。以下、各構成について説明する。
【0056】
<準備工程>
準備工程は、基材1と粘着剤組成物を準備する工程でえある。基材1は、粘着剤層2を設けるためのものであり、耐熱性を有するものであれば、特に限定されない。耐熱性とは、具体的には、電子部品の製造工程における想定加熱温度180℃以上での使用に耐え得ることをいい、そのため、基材1の融点は260℃よりも高いことが好ましく、285℃よりも高いことがより好ましい。また、基材1は、必要な強度と柔軟性とを有することが好ましい。
【0057】
基材1の構成材料としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、セルロース系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、フェノール系樹脂、及びポリウレタン系樹脂等を挙げることができる。これらのうち、ポリイミド系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリエステル系樹脂で構成された基材1は、耐熱性、強度及び柔軟性を有すると共に、寸法安定性、エネルギー線透過性、剛性、伸長性、積層適性、耐薬品性にも優れることから、電子部品の製造工程で電子部品を一時的に固定又は保護するための粘着テープ用の基材として好ましく用いることができる。なお、ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリアリレート、ポリテトラメチレンテレフタレート等を挙げることができ、これらの中でも、ポリブチレンテレフタレートは取り扱いが容易で低価格であることから特に好ましく用いることができる。
【0058】
基材1は、これらの樹脂単独で構成した合成樹脂フィルムでもよいし、これらの樹脂から選択された2種以上を組み合わせて構成した合成樹脂フィルムでもよい。また、基材1は、単層構造体であってもよいし、2層以上の積層構造体であってもよい。また、1軸延伸した延伸フィルムや2軸延伸した延伸フィルムは、機械的強度の観点から好ましく用いることができる。
【0059】
基材1の厚さは特に限定されないが、12.5μm以上、300μm以下であることが好ましい。この範囲内の厚さの基材1は、粘着テープ10の形態を保持することができるので、粘着テープ10の貼付や剥離等の作業性が良い。また、反り、弛み、破断等が生じ難く、十分な機械的強度を示すので、連続帯状で供給して加工することも可能である。さらに、電子部品の製造工程において、被着体である電子部品等の表面を適切に保護することができる。なお、基材1の厚さが300μmを超えると、過剰性能でコスト高になることがある。好ましい基材1の厚さは、25μm以上、100μm以下である。
【0060】
基材1の形成方法は特に限定されるものではなく、例えば、溶液流延法、溶融押出法、カレンダー法等の従来公知の方法で形成することができる。また、これらの方法により予めフィルム状に形成された市販の基材1を用いてもよい。なお、基材1には、その片面又は両面に、コロナ処理、プラズマ処理、オゾン処理、フレーム処理、プライマー処理、蒸着処理、及びアルカリ処理等の易接着処理を施してもよい。こうした易接着処理により、粘着剤組成物との濡れ性を向上させることができる。
【0061】
粘着剤組成物は、上記した本発明に係る粘着剤組成物を準備する。この粘着剤組成物については、既に詳しく説明したのでここではその説明を省略する。
【0062】
<塗布工程>
塗布工程は、基材1上に粘着剤組成物を塗布する工程である。粘着剤組成物を基材1に塗布する方法としては、従来公知の方法を適用でき、例えば、コーティングによる塗布方法と印刷による塗布方法を挙げることができる。コーティングによる塗布方法としては、例えば、ロールコート、リバースコート、コンマコート、ナイフコート、ダイコート、グラビアコート等を挙げることができる。印刷による塗布方法としては、例えば、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法等を挙げることができる。
【0063】
粘着剤組成物は、必要に応じて有機溶剤に溶解又は分散させてもよい。こうすることにより、塗布時の粘着剤組成物の粘度を調整することができる。有機溶剤は特に限定されないが、例えば、トルエン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、ジメチルアセトアミド、及びこれらの混合溶液等を挙げることができる。
【0064】
粘着剤組成物は、硬化した後の粘着剤層の厚さが、通常、5μm以上、50μm以下であり、好ましくは10μm以上、30μm以下になる目付量で塗布される。この厚さ範囲の粘着剤層2になる目付量で塗布することにより、形成された粘着剤層2は粘着物性が安定する。粘着剤層2の厚さが5μm未満だと、十分な粘着力が得られないことがあり、粘着剤層2の厚さが50μmを超えると、過剰性能でコスト高になることがあるとともに、加熱時に粘着剤層の変形が大きくなり、寸法安定性が低下することがある。
【0065】
<粘着剤層形成工程>
粘着剤層形成工程は、塗布された粘着剤組成物を硬化させて粘着剤層2を形成する工程である。粘着剤組成物の硬化は、粘着剤組成物を加熱又は紫外線照射等による硬化反応によって行う、又は、粘着剤組成物中の含有溶媒を揮発除去して行う。
【0066】
例えば、粘着剤組成物の主剤がシリコーン系樹脂又は熱硬化性のポリイミド系樹脂である場合は、加熱により硬化させて粘着剤層2を形成できる。一方、粘着剤組成物の主剤が光硬化性のポリイミド系樹脂である場合は、エネルギー線照射により硬化させて粘着剤層2を形成できる。エネルギー線として紫外線を使用する場合には、例えば、紫外線源として高圧水銀ランプ、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプを適用できる。
【0067】
<その他>
剥離層3は、必須の構成ではないが、
図1に示すように、粘着テープ10の粘着剤層2の上に設けられていることが好ましい。この剥離層3は、剥離性を有する剥離部材であり、粘着剤層2の表面を保護する機能を有するフィルム状の剥離部材(剥離フィルムとも言う。)であることが好ましい。こうしたフィルム状の剥離部材である剥離層3は、必要な強度と柔軟性を有するものであれば特に限定されるものではなく、離型処理した合成樹脂フィルムが好ましく用いられる。合成樹脂フィルムの材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリアリレート、及びポリテトラメチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂を挙げることができる。離型処理は、シリコーン離型処理を挙げることができる。剥離層3の厚さは特に限定されるものではないが、好ましくは25μm以上、100μm以下である。こうした合成樹脂フィルムからなるフィルム状の剥離層3は、粘着剤層2上に剥離可能にラミネートすることにより設けることができる。
【実施例】
【0068】
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されない。
【0069】
[実施例1]
主剤としてのシリコーン系樹脂(固形分:30%、商品名:X40−3306、信越化学工業株式会社製)333質量部に、ヒンダードフェノール系化合物A(表1では「耐熱安定剤A」で表す。固形分:100%、商品名:IRGANOX1010、チバ・ジャパン株式会社製)0.5質量部と、シリコーン系樹脂用硬化触媒(白金触媒、商品名:PL−50T、信越化学工業株式会社製)1.66質量部とを配合し、これをディスパーにて回転数1000rpmで20分間撹拌して粘着剤組成物を調製した。
【0070】
得られた粘着剤組成物を、トルエン及びメチルエチルケトンの混合溶媒(質量比1:1、商品名:KT11、DICグラフィックス株式会社製)50質量部で希釈し、十分に分散させて粘度を調整した後、基材(ポリイミドフィルム、厚さ:25μm、商品名:カプトン100H、東レ・デュポン株式会社製)上に、乾燥後の厚さが15μmとなるようにアプリケータにより全面塗工し、その後、乾燥させ、剥離フィルム(PETセパレータ、厚さ:38μm、商品名:SP−PET−01、三井化学東セロ株式会社製)をラミネートし、120℃に1分間保持して粘着剤組成物を硬化させた。こうして実施例1の粘着テープを得た。
【0071】
[実施例2]
粘着剤組成物に含まれるヒンダードフェノール系化合物Aの配合量を5質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして実施例2の粘着テープを得た。
【0072】
[実施例3]
粘着剤組成物に含まれるヒンダードフェノール系化合物Aを、ヒンダードフェノール系化合物B(表1では「耐熱安定剤B」で表す。固形分:100%、商品名:IRGANOX MD1024、チバ・ジャパン株式会社製)に変更した以外は、実施例2と同様にして実施例3の粘着テープを得た。
【0073】
[実施例4]
粘着剤組成物の組成を、以下に示す組成aに変更した以外は、実施例1と同様にして実施例4の粘着テープを得た。
【0074】
(組成a)
・シリコーン系樹脂(固形分:30%、商品名:X40−3306、信越化学工業株式会社製):300質量部
・フッ素樹脂(固形分:60%、商品名:ルミフロンLF200、旭硝子株式会社製):16.7質量部
・シリコーン系樹脂用硬化触媒(白金触媒、商品名:PL−50T、信越化学工業株式会社製):1.5質量部
・フッ素樹脂用硬化剤(イソシアネート系硬化剤、固形分:75%、商品名:コロネートL、日本ポリウレタン工業株式社製):0.067質量部
【0075】
[実験例5]
組成aのフッ素樹脂用硬化剤(イソシアネート系硬化剤)の配合量を0.20質量部に変更した以外は、実施例4と同様にして実施例5の粘着テープを得た。
【0076】
[実施例6]
組成aのフッ素樹脂用硬化剤(イソシアネート系硬化剤)の配合量を0.40質量部に変更した以外は、実施例4と同様にして実施例6の粘着テープを得た。
【0077】
[実施例7]
粘着剤組成物の組成を、以下に示す組成bに変更した以外は、実施例1と同様にして実施例7の粘着テープを得た。
【0078】
(組成b)
・シリコーン系樹脂(固形分:30%、商品名:X40−3306、信越化学工業株式会社製):300質量部
・エポキシ樹脂A(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、固形分:100%、商品名:jER828、三菱化学株式会社製):10質量部
・シリコーン系樹脂用硬化触媒(白金触媒、商品名:PL−50T、信越化学工業株式会社製):1.35質量部
・エポキシ樹脂用硬化剤A(芳香族スルホニウム塩、固形分:31.3%、商品名:サンエイドSI−60L、三新化学工業株式会社製):0.96質量部
【0079】
[実施例8]
粘着剤組成物の組成を、以下に示す組成cに変更した以外は、実施例1と同様にして実施例8の粘着テープを得た。
【0080】
(組成c)
・シリコーン系樹脂(固形分:30%、商品名:X40−3306、信越化学工業株式会社製):300質量部
・アルコシ基含有シラン変性エポキシ樹脂B(固形分:48.8%、コンポセランE103D、荒川化学工業株式会社製):20.5質量部
・シリコーン系樹脂用硬化触媒(白金触媒、商品名:PL−50T、信越化学工業株式会社製):1.35質量部
・エポキシ樹脂用硬化剤A(芳香族スルホニウム塩、商品名:サンエイドSI−60L、三新化学工業株式会社製):0.3質量部
・エポキシ樹脂用硬化剤B(有機錫系触媒、固形分:100%、商品名:U−810、日東化成株式会社製):0.01質量部
【0081】
[比較例1]
実施例1の粘着剤組成物に、ヒンダードフェノール系化合物A(表1では「耐熱安定剤A」で表す。固形分:100%、商品名:IRGANOX1010、チバ・ジャパン株式会社製)を添加しなかった以外は、実施例1と同様にして比較例1の粘着テープを得た。
【0082】
[比較例2]
比較例1の粘着剤組成物に、ヒンダードフェノール系化合物C(表1では「耐熱安定剤C」で表す。固形分:100%、商品名:IRGANOX1726、チバ・ジャパン株式会社製)を2.5質量部添加した以外は、比較例1と同様にして比較例2の粘着テープを得た。このヒンダードフェノール系化合物Cは、ヒンダードフェノール系化合物ではあるがS原子を含む化合物であり、硬化した粘着剤層を形成できなかった。
【0083】
[比較例3]
比較例1の粘着剤組成物に、ベンゾトリアゾール系化合物D(表1では「耐熱安定剤D」で表す。1,2,3ベンゾトリアゾール、固形分:100%、東京化成工業株式会社製)を2.5質量部添加した以外は、比較例1と同様にして比較例3の粘着テープを得た。このベンゾトリアゾール系化合物Dは、N原子を含むベンゾトリアゾールであり、硬化した粘着剤層を形成できなかった。
【0084】
実施例1〜8及び比較例1〜3の粘着剤組成物の組成を表1に示す。なお、値は全て固形分の値である。
【0085】
【表1】
【0086】
[実施例9]
主剤として以下のように合成した光硬化性のポリイミド系樹脂(固形分:20%)50質量部に、架橋剤であるビスマレイミド(N,N’−(4,4’−ジフェニルメタン)ビスマレイミド、固形分:100%、商品名:BMI−1000、大和化成工業株式会社製)1.5質量部、アクリル系モノマーA(ペンタエリスリトールトリアクリレート、固形分:100%、商品名:PET−30、日本化薬株式会社製)90質量部、光重合開始剤(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、固形分:100%、商品名:IRGACURE184、チバ・ジャパン株式会社製)5質量部、及び溶剤(1,3−ジオキソラン、岳南化学株式会社製)290質量部を配合し、これをディスパーにて回転数1000rpmで20分間撹拌して粘着剤組成物を調製した。
【0087】
得られた粘着剤組成物を、トルエン及びメチルエチルケトンの混合溶媒(質量比1:1、商品名:KT11、DICグラフィックス株式会社製)50質量部で希釈し、十分に分散させて粘度を調整した後、基材(ポリイミドフィルム、厚さ:25μm、商品名:カプトン100H、東レ・デュポン株式会社製)上に、乾燥後の厚さが5μmとなるようにアプリケータにより全面塗工し、その後、乾燥させ、剥離フィルム(PETセパレータ、厚さ:38μm、商品名:SP−PET−01、三井化学東セロ株式会社製)をラミネートし、紫外線照射装置で紫外線を300mJ/cm
2照射して粘着剤組成物を硬化させた。こうして実施例9の粘着テープを得た。
【0088】
主剤としての光硬化性のポリイミド系樹脂は以下のように合成した。温度計、撹拌器、窒素導入管、側管付き滴下ロート、ディーンスターク、及び冷却管を備えた500mL5つ口ガラス製丸底フラスコに、窒素気流下、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(HPMDA、三菱瓦斯化学株式会社製)58.5g、エチレンオキシド・プロピレンオキシド共重合物ビス(2−アミノプロピル)エーテル(商品名:ジェファーミンED−900、三井化学ファイン株式会社製)315.4gを加え、200rpmで撹拌しながら200℃に昇温して3時間イミド化反応を行い、ディーンスタークで生成水を分離した。3時間後、水の留出が止まったのを確認し、水9.3gを回収し、常温まで冷却して液状のポリイミド(A)を得た。
【0089】
温度計、撹拌器、ガス導入管、側管付き滴下ロート、冷却管を備えた反応容器に、上記で得られたポリイミド(A)2795質量部と、モノエチルエーテルハイドロキノン15質量部とを仕込み、空気気流下、撹拌、加熱して温度を60℃に保持し溶解した。次いで、滴下装置を用いてメタクリル酸グリシジル(商品名:メタクリル酸グリシジル、三菱瓦斯化学株式会社製)298質量部を1時間かけて連続的に滴下し反応を行った。その後、トリフェニルホスフィン15質量部を加え、加熱して温度を120℃に保持しながらさらに8時間反応を行って、主剤となる光硬化性のポリイミドを得た。
【0090】
[実施例10〜17]
主剤の光硬化性のポリイミド系樹脂と、架橋剤であるビスマレイミド(N,N’−(4,4’−ジフェニルメタン)ビスマレイミド、固形分:100%、商品名:BMI−1000、大和化成工業株式会社製)と、アクリル系モノマーA(ペンタエリスリトールトリアクリレート、アクリロイル基数:3、固形分:100%、商品名:PET−30、日本化薬株式会社製)と、アクリル系モノマーB(エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、固形分:100%、アクリロイル基数:2、新中村化学工業株式会社製)と、ヒンダードフェノール系化合物(固形分:100%、商品名:IRGANOX1010、チバ・ジャパン株式会社製)と、増感剤(2、4−ジエチルチオキサントン、固形分:100%、商品名:KAYACURE DETX−S、日本化薬株式会社製)と、光重合開始剤(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、固形分:100%、商品名:IRGACURE184、チバ・ジャパン株式会社製)の組成を、下記の表2のように配合して粘着剤組成物を調製した。それ以外は、実施例1と同様にして、実施例10〜17の粘着テープを得た。
【0091】
[比較例4]
粘着剤組成物を、アクリル系モノマーA(ペンタエリスリトールトリアクリレート、アクリロイル基数:3、固形分:100%、商品名:PET−30、日本化薬株式会社製)のみにした以外は、実施例1と同様にして比較例4の粘着テープを得た。
【0092】
実施例9〜17と比較例4の粘着剤組成物の組成を表2に示す。なお、値は全て固形分の値である。また「PETA」は、ペンタエリスリトールトリアクリレートのことであり、「A−BPE−4」は、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレートのことである。
【0093】
【表2】
【0094】
[評価と結果]
実施例1〜17及び比較例1〜4で得られた粘着テープについて、(ア)初期の粘着力の測定、(イ)初期の糊残りの有無の確認、(ウ)加熱処理後の粘着力の測定、(エ)加熱処理後の糊残りの有無の確認を行った。測定結果は表3に示す。
【0095】
初期の粘着力の測定は、得られた粘着テープを幅25mm×長さ100mmに切断し、銅箔(福田金属箔粉工業株式会社製、商品名:RCF−T58)上に2kgのローラーを用いて貼り合わせ、常温常湿(約23℃、約60%RH)下にて20分間放置した。次いで、この粘着テープを万能材料試験機(インストロン・ジャパン社製、型番:5565)を用いて引き剥がす(剥離)ことにより測定した。剥離は、JIS Z0237に準拠し、剥離速度:300mm/分、剥離距離:50mm、剥離角:180°の条件で行った。
【0096】
初期の糊残りの有無の確認は、上記した初期の粘着力を測定した後の銅箔の剥離面を目視で観察することにより行った。
【0097】
加熱後の粘着力(粘着強度)の測定は、得られた粘着テープを幅25mm×長さ100mmに切断し、銅箔(福田金属箔粉工業株式会社製、商品名:RCF−T58)上に2kgのローラーを用いて貼り合わせ、常温常湿(約23℃、約60%RH)下にて20分間放置した。次いで、230℃で60分間加熱した後、この粘着テープを万能材料試験機(インストロン・ジャパン社製、型番:5565)を用いて引き剥がす(剥離)ことにより測定した。剥離は、JIS Z0237に準拠し、剥離速度:300mm/分、剥離距離:50mm、剥離角:180°で行った。
【0098】
加熱後の糊残りの有無の確認は、上記した加熱後の粘着力を測定した後の銅箔の剥離面を目視で観察することにより行った。
【0099】
【表3】
【0100】
表3の結果からわかるように、実施例1〜8のシリコーン系樹脂を主剤として用いた例では、初期の粘着力は、41.2×10
-3N(4.2gf)/25mm以上、118×10
-3N(12gf)/25mm以下の範囲であり、加熱後の粘着力は、50.0×10
-3N(5.1gf)/25mm以上、489×10
-3N(49gf)/25mm以下の範囲であった。一方、実施例9〜17のポリイミド系樹脂を主剤として用いた例では、初期の粘着力は、0.98×10
-3N(0.1gf)/25mm以上、72.6×10
-3N(7.4gf)/25mm以下であり、加熱後の粘着力は、14.7×10
-3N(1.5gf)/25mm以上、164×10
-3N(16.7gf)/25mm以下であった。したがって、これら実施例1〜17の粘着テープは、いずれも、初期の粘着力が0.98×10
-3N(0.1gf)/25mm以上、196×10
-3N(20gf)/25mm以下の範囲内にあり、非常に弱い粘着力を有していた。また、いずれも、230℃で60分間加熱した後の粘着力が4.90×10
-3N(0.5gf)/25mm以上、490×10
-3N(50gf)/25mm以下の範囲内にあり、加熱による粘着力の著しい上昇を抑えることができた。さらに、いずれの粘着テープも、糊残りを確認できなかった。