特許第5998833号(P5998833)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5998833
(24)【登録日】2016年9月9日
(45)【発行日】2016年9月28日
(54)【発明の名称】樹脂部品の取付構造
(51)【国際特許分類】
   B60K 37/00 20060101AFI20160915BHJP
【FI】
   B60K37/00 C
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-229119(P2012-229119)
(22)【出願日】2012年10月16日
(65)【公開番号】特開2014-80104(P2014-80104A)
(43)【公開日】2014年5月8日
【審査請求日】2015年3月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(72)【発明者】
【氏名】冨永 泰裕
(72)【発明者】
【氏名】重松 光
【審査官】 増子 真
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−168492(JP,A)
【文献】 特開2007−182170(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 35/00 − 37/06
F16B 21/00 − 21/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付方向の手前側に露出する露出面と、該露出面の裏面とを有する樹脂部品を、所定の相手側部材に取付ける取付構造であって、
上記樹脂部品における上記裏面から反露出面方向に所定距離離間した部位に、クリップ部材を取り付ける取付け面部が設けられ、
上記樹脂部品は、互いに離間した状態で上記取付け面部から突出する複数の突出部と、
該突出部の間を、上記取付け面部から反露出面方向に所定距離離間した位置にて連結する連結部と、
上記突出部の間において上記取付け面部に形成された開口部とを有しており、
上記連結部には、上記クリップ部材が係合する係合部が設けられ、
上記クリップ部材と上記係合部との係合により、上記クリップ部材が上記突出部に取付けられ、
上記クリップ部材は、上記相手側部材に係合している
樹脂部品の取付構造。
【請求項2】
上記開口部周辺には、上記突出部の突出方向に沿って、上記開口部から離間する方向に立ち上がるリブが立設されており、
該リブの反露出面側端部には、上記相手側部材に当接する当接部が形成されている
請求項1記載の樹脂部品の取付構造。
【請求項3】
上記クリップ部材が上記相手側部材に係合する係合部位には、該係合部位を上記露出面側から覆う部材が取付けられる
請求項2記載の樹脂部品の取付構造。
【請求項4】
上記樹脂部品の裏面から反露出面方向に突出するとともに、上記樹脂部品を上記相手側部材に取付ける際に、該相手側部材の一部と当接することで、上記樹脂部品が上記相手側部材に支持された状態にする仮預け部が、上記裏面上において、上記開口部から離間した位置に形成された
請求項1〜3のいずれか一項に記載の樹脂部品の取付構造。
【請求項5】
上記仮預け部は、反露出面方向に向かうにつれて先細りになるように形成される一方、
上記相手側部材には、上記仮預け部が挿入される挿入孔が形成された
請求項4記載の樹脂部品の取付構造。
【請求項6】
上記相手側部材は、車両のインストルメントパネルを構成するインストルメントパネル本体であり、
上記樹脂部品は、上記インストルメントパネル本体に取付けられるロアパネルである
請求項1〜5のいずれか一項に記載の樹脂部品の取付構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、樹脂部品の取付構造に関するものであり、取付方向の手前側に露出する露出面と、該露出面の裏面とを有する樹脂部品を、所定の相手側部材に取付ける取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のインストルメントパネルのような樹脂製の部材は、その形状の特殊性や、部材内部に部品を固定する必要性から、複数の部品によって構成される場合があり、この場合、取付対象(インストルメントパネルの場合は、車両)への取付時において、上記部品をそれぞれ相互に取付けるのが一般的とされている。
【0003】
また、この場合、一方の部品には、取付方向の手前側(インストルメントパネルの場合は、車室側)に露出する露出面と反対の裏面に突出部を形成し、この突出部にクリップを取付けるのが一般的とされ、該クリップを取付けた突出部を他方の部品(相手側部材)の開口部に挿入することで、上記クリップを介して両部品を相互に取付けるようにしている。
【0004】
ここで、従来、突出部にクリップを取付ける構造として、上記突出部に、クリップを係合させるための開口部を形成したものが知られている(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−194010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1の場合、樹脂材料の射出成形によって樹脂部品(メータクラスタフード)を成形しようとすると、図12に示すように、部品106に開口部106aを形成するためには、キャビティ120、コア121に加え、これらとは移動方向の異なる専用の成形型(スライドコア122)が必要になり、その結果、生産コストの増大を招いていた。
【0007】
また、上記特許文献1の場合、露出面(メータクラスタフードの露出面)によって取付方向の手前側(車室側)が覆われることにより、樹脂部品を相手側部材(インストルメントパネル本体)に取付ける際、突出部の開口部に係合したクリップを、取付方向の手前側から視認することができないという問題があった。このため、樹脂部品の相手側部材への取付状態を容易に確認することができなかった。
【0008】
この発明は、生産コストの低減を図るとともに、樹脂部品の相手側部材への取付状態を容易に確認することができる樹脂部品の取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の樹脂部品の取付構造は、取付方向の手前側に露出する露出面と、該露出面の裏面とを有する樹脂部品を、所定の相手側部材に取付ける取付構造であって、上記樹脂部品における上記裏面から反露出面方向に所定距離離間した部位に、クリップ部材を取り付ける取付け面部が設けられ、上記樹脂部品は、互いに離間した状態で上記取付け面部から突出する複数の突出部と、該突出部の間を、上記取付け面部から反露出面方向に所定距離離間した位置にて連結する連結部と、上記突出部の間において上記取付け面部に形成された開口部とを有しており、上記連結部には、上記クリップ部材が係合する係合部が設けられ、上記クリップ部材と上記係合部との係合により、上記クリップ部材が上記突出部に取付けられ、
上記クリップ部材は、上記相手側部材に係合しているものである。
【0010】
この構成によれば、クリップ部材と係合する開口部専用の成形型を用いなくても、取付方向の手前側に露出する露出面と裏面とを成形する2つの成形型のみを用いてクリップ部材の取付部位を成形することができる。これにより、生産コストの低減を図ることができる。
【0011】
そして、樹脂部品が開口部を有することで、樹脂部品を相手側部材に取付ける際、クリップ部材を、開口部を通じて露出面側から視認することができる。このため、樹脂部品の相手側部材への取付状態を容易に確認することができる。
【0012】
この発明の一実施態様においては、上記開口部周辺には、上記突出部の突出方向に沿って、上記開口部から離間する方向に立ち上がるリブが立設されており、該リブの反露出面側端部には、上記相手側部材に当接する当接部が形成されているものである。
【0013】
この構成によれば、クリップ部材の取付部位の剛性をリブにより向上させることができる。そして、該リブにおいて、その反露出面側端部に、相手側部材に当接する当接部を形成することで、樹脂部品を相手側部材に取付ける際、剛性向上のためのリブを利用して、樹脂部品と相手側部材との位置決めを行うことができる。
【0014】
この発明の一実施態様においては、上記クリップ部材が上記相手側部材に係合する係合部位には、該係合部位を上記露出面側から覆う部材が取付けられるものである。
【0015】
この構成によれば、開口部が最終的に取付方向の手前側から見えないようにすることができるとともに、リブによる剛性向上によって、樹脂部品、相手側部材、及び係合部位を露出面側から覆う部材の3部材が重なる重ね合わせ部での各部材の位置決めを確実に行うことができる。これにより、取付方向の手前側からの見栄えが悪化することを防止できる。
【0016】
この発明の一実施態様においては、上記樹脂部品の裏面から反露出面方向に突出するとともに、上記樹脂部品を上記相手側部材に取付ける際に、該相手側部材の一部と当接することで、上記樹脂部品が上記相手側部材に支持された状態にする仮預け部が、上記裏面上において、上記開口部から離間した位置に形成されたものである。
【0017】
この構成によれば、仮預け部により、取付作業者が樹脂部品を相手側部材に取付ける際、仮預け部を相手側部材の一部に当接させて仮預けした後の樹脂部品の保持や、相手側部材への取付作業が容易になる。このため、取付者業者の作業負荷を低減することができる。
【0018】
そして、仮預け部を、裏面上において開口部から離間した位置に形成することで、開口部と仮預け部とを、互いに型抜き方向で重複しないように配置することができる。この場合、成形型の型抜き方向の変更や、その型抜き方向と異なる方向に移動するスライドコア等の部材を要することなく、つまりは、樹脂部品本体やクリップ部材の取付部位を成形する2つの成形型のみを利用して、仮預け部を同時に成形することができるため、仮預け部を利用した仮預けを行う場合において、生産コスト上有利となる。
【0019】
この発明の一実施態様においては、上記仮預け部は、反露出面方向に向かうにつれて先細りになるように形成される一方、上記相手側部材には、上記仮預け部が挿入される挿入孔が形成されたものである。
【0020】
この構成によれば、仮預け部における型抜きが容易になり、結果として、成形型を利用した仮預け部の成形が容易になる。そして、仮預け部を挿入孔に挿入してその周縁部に仮預け部を当接させることで、仮預け部による仮預けを行うことができる。この場合、仮預け部が先細りになるように形成されていることから、仮預け部を挿入孔に挿入する作業が容易になり、結果として、仮預け部による仮預けを容易に行うことができる。
【0021】
この発明の一実施態様においては、上記相手側部材は、車両のインストルメントパネルを構成するインストルメントパネル本体であり、上記樹脂部品は、上記インストルメントパネル本体に取付けられるロアパネルであるものである。
【0022】
この構成によれば、クリップ部材と係合する開口部専用の成形型を用いなくても、車室側(取付方向の手前側)に露出する露出面と裏面とを成形する2つの成形型のみを用いてクリップ部材の取付部位を成形することができる。これにより、生産コストの低減を図ることができる。
【0023】
そして、ロアパネルが開口部を有することで、ロアパネルをインストルメントパネル本体に取付ける際、クリップ部材を、開口部を通じて露出面側から視認することができる。このため、ロアパネルのインストルメントパネル本体への取付状態を容易に確認することができる。
【発明の効果】
【0024】
この発明によれば、クリップ部材と係合する開口部専用の成形型を用いなくても、取付方向の手前側に露出する露出面と裏面とを成形する2つの成形型のみを用いてクリップ部材の取付部位を成形することができる。これにより、生産コストの低減を図ることができる。
【0025】
そして、樹脂部品が開口部を有することで、樹脂部品を相手側部材に取付ける際、クリップ部材を、開口部を通じて露出面側から視認することができる。このため、樹脂部品の相手側部材への取付状態を容易に確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の実施形態に係る樹脂部品の取付構造を備えるインストルメントパネルを示す正面図。
図2図1の分解斜視図。
図3】ロアパネルを車両前方から見た斜視図。
図4図3の要部拡大斜視図。
図5図4の正面図。
図6】ロアパネルの成形工程を説明するための説明図。
図7】クリップ部材をインストルメントパネル本体に係合させた状態を車両側方から見た斜視図。
図8】クリップ部材をインストルメントパネル本体に係合させた状態を示す水平断面図。
図9】ロアパネルをインストルメントパネル本体に取付ける工程を説明するための説明図。
図10】ロアパネルをインストルメントパネル本体に取付ける工程を説明するための説明図。
図11】ロアパネルをインストルメントパネル本体に取付ける工程を説明するための説明図。
図12】従来の樹脂部品の成形工程を説明するための説明図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳述する。
図1は、本発明の実施形態に係る樹脂部品の取付構造を備えるインストルメントパネル1を示す正面図である。車室前部には、図1に示すようなインストルメントパネル1が、車幅方向全幅にわたって延びるように配設されるとともに、インストルメントパネル1の車幅方向中央部からは、運転席側と助手席側とを区画するコンソールパネル2が車両後方に向かって延設される。そして、このコンソールパネル2の上面部には、図1に二点鎖線で示すように、自動変速機のシフトレバー3が設けられる。
【0028】
インストルメントパネル1は、車幅方向全幅にわたって延びるインストルメントパネル本体(以下、インパネ本体と略記する)4と、運転席側(図面では左側)に設けた枠部材5と、該枠部材5の下方に配設されたロアパネル6とにより構成されている。なお、図1に示すインストルメントパネル1の部位1aは、枠部材5の下部及びロアパネル6の上部の凹部5a、6aにより形成された開口部であり、この開口部1aには、図示しないステアリングホイールやステアリングシャフト等により構成されたステアリング装置が取付けられる。
【0029】
また、インストルメントパネル1の車幅方向中央部には、図1に二点鎖線で示すように、前記空調装置で生成されたオーディオ装置や、車室内の室温等を制御する空調装置の操作ユニット7が設けられ、運転席側、助手席側(図面では右側)、及び車幅方向中央部には、空調エアを車室内に送風する空調吹出口8、9が設けられている。なお、運転席、助手席の配置は、左右逆であってもよい。
【0030】
さらに、インストルメントパネル1の車幅方向中央部には、例えば、図1に二点鎖線で示すように、空調吹出口9の上方に、地図情報、現在地情報、簡易的な経路誘導情報等の付加的な運転支援情報を表示するナビゲーション装置10が配設される。図1に示すナビゲーション装置10は、図示しない昇降機構により上下方向に昇降可能なディスプレイ装置10aを有するものを示しており、図1は、車両走行中におけるディスプレイ装置10aの状態を示している。
【0031】
また、インストルメントパネル1の運転席側には、図1に二点鎖線で示すように、メータユニット11と、該メータユニット11を覆うメータフード12とが設けられる。
【0032】
インストルメントパネル1の運転席側では、インパネ本体4に、車両前方に向かって凹む平面視略半円形状の凹部4aが形成されている。そして、この凹部4aの後部(下部)開放側には、枠部材5が取付けられており、この枠部材5の開口部にメータユニット11が嵌め込まれる。
【0033】
図2は、図1の分解斜視図であり、図3は、ロアパネル6を車両前方から見た斜視図、図4は、図3の要部拡大斜視図、図5は、図4の正面図である。
【0034】
枠部材5の下方には、図1図5に示すようなロアパネル6が取付けられるとともに、ロアパネル6の右側端部には、コンソールパネル2の左側端部が取付けられる。
【0035】
インパネ本体4には、その左前端部、及び凹部4aの左右両端下方に、図2に示すように、ロアパネル6やコンソールパネル2を取付けるための取付フランジ41、左側取付部42、右側取付部43が一体形成されている。そして、取付フランジ41には、嵌合孔41aが形成されるとともに、左側取付部42、右側取付部43には、それぞれ複数の係合孔42a〜42c、43a〜43dが形成されている。また、右側取付部43の最下端部には、後述する挿入孔43eが形成されている。
【0036】
一方、ロアパネル6には、図2図3に示すように、その左右両端部に取付フランジ61、62が形成されている。そして、車室側に露出する露出面6bと反対側の裏面6cでは、左側端部の取付フランジ61の上部に嵌合凸部61aが一体形成されるとともに、凹部6aの左右両側に樹脂製のクリップ部材13A〜13Fが取付けられている。インストルメントパネル1では、嵌合凸部61aがインパネ本体4の嵌合孔41aに嵌合し、かつクリップ部材13A〜13Fがそれぞれインパネ本体4の各係合孔42a〜42c、43a〜43cに係合することで、ロアパネル6がインパネ本体4に取付けられている。
【0037】
また、ロアパネル6では、その右側端部に位置する取付フランジ62が、露出面6bに対して車両前方に一段凹むように形成され、上下方向において階段状をなしている。そして、階段状を形成する取付フランジ62の縦面部62a〜62dのうち、縦面部62a、62bには、クリップ部材13E、13Fが取付けられ、縦面部62c、62dには、後述する係合孔62e、62fが形成されている。また、クリップ部材13Fが取付けられる縦面部62bの下部には、裏面6cから反露出面方向(車両前方)に向かって突出するフック状の仮預け部62gが形成されている。
【0038】
また、ロアパネル6は、縦面部62a、62bにおいて、図3図5に示すように、裏面6cから反露出面方向に所定距離離間して突出する複数(ここでは2つ)の突出部62hと、突出部62h、62h間をロアパネル6本体から反露出面方向に所定距離離間した位置にて連結する連結部62iと、突出部62h、62h間においてロアパネル6本体に形成された開口部62jとを有している。
【0039】
また、開口部62jの上下周辺には、突出部62hの突出方向に沿って、開口部62jから離間する方向に立ち上がるリブ62k、62kが立設されている。
【0040】
また、上述した仮預け部62gは、縦面部62bにおいて、開口部62jの下方に形成されており、仮預け部62gと開口部62jとは、裏面6c上において互いに離間している。この仮預け部62gは、突出方向の先端に向かうにつれて下方に傾斜するリブ62g1を上部に有しており、このリブ62g1も含めて全体として、反露出面方向に向かうにつれて先細りになるように形成されている。
【0041】
このように、仮預け部62g、突出部62h、連結部62i、開口部62j等が形成された本実施形態のロアパネル6は、図6に示す2つの成形型(キャビティ20、コア21)を用いた射出成形により成形される。ここで、図6は、ロアパネル6の成形工程を説明するための説明図であって、それぞれ(a)図5のA−A線、(b)図5のB−B線、(c)図5のC−C線矢視断面に対応する断面図である。
【0042】
図6(a)、図6(c)に示すように、キャビティ20は、反露出面方向に突出する第1凸部20aを有する一方、コア21には、第1凸部20aに対応する断面略コ字状の第1凹部21aを有する。そして、第1凸部20aの先端部と第1凹部21aとの間の一部には、隙間なく両者が面接触する面接触部20b、21bが設定されている。
【0043】
また、図6(a)に示すように、コア21は、キャビティ20の第1凸部20aの先端部と対向する位置に、第2凹部21cを有している。そして、上述した面接触部20b、21bは、第2凹部21cの両側に略対称に配置されている。
【0044】
また、図6(b)、図6(c)に示すように、キャビティ20は、第1凸部20aの下方に、側面視で反露出面方向に断面略L字状に突出する第2凸部20cを有する一方、コア21は、第2凸部20cに対応して側面視で反露出面方向に略断面逆L字状に凹む第3凹部21dを有する。
【0045】
ロアパネル6を成形する際には、キャビティ20とコア21との間に樹脂材料を流し込んで射出成形を行う。これにより、凹部6a、露出面6b、及び裏面6c等を有するロアパネル6本体が成形される。そして、同時に、第1凸部20aと第1凹部21aとにより、上下2つの突出部62h、62h、第1凸部20aと面接触する面接触部20b、21bとにより、開口部62j、第1凸部20aの先端部と第2凹部21cとにより、上下の突出部62h、62hを連結する連結部62i、第2凸部20cと第3凹部21dとにより、反露出面方向に突出する仮預け部62gがそれぞれ成形される。
【0046】
図7は、クリップ部材13Eをインパネ本体4に係合させた状態を車両側方から見た斜視図、図8は、クリップ部材13Fをインパネ本体4に係合させた状態を示す水平断面図である。
【0047】
クリップ部材13A〜13Fは、図7図8に示すように、露出面方向に突出する一対の第1係合爪13aを有し、該第1係合爪13aには、その基端側に厚肉部13bが形成される一方、先端側には、厚肉部13bよりも薄肉に設定されたくびれ部13cが形成されている。そして、このうち、クリップ部材13E、13Fは、連結部62iの露出面側端部(係合部)62i1に係合する一対の第2係合爪13dを、第1係合爪13aの内側に有している。
【0048】
本実施形態では、第2係合爪13dに露出面側端部62i1を係合させることにより、ロアパネル6(取付フランジ62)にクリップ部材13E、13Fが取付けられている。そして、第1係合爪13aのくびれ部13cに右側取付部43の係合孔43b、43cの周縁部が嵌合することによって、第1係合爪13aが係合孔43b、43cに係合し、この両者の係合により、ロアパネル6の右側端部がインパネ本体4の右側取付部43に取付けられている。
【0049】
このように、ロアパネル6がインパネ本体4に取付けられた状態では、挿入孔43eに仮預け部62gが挿入されている。また、リブ62kにおいて、その反露出面側端部は、側面視で略L字状をなす当接部62k1とされ、ロアパネル6がインパネ本体4に取付けられた状態では、図7に示すように、当接部62k1が、側面視で略逆L字状をなすインパネ本体4の凹部43fに当接するようになっている。
【0050】
次に、図9図11を参照して、ロアパネル6をインパネ本体4に取付ける工程を説明する。
ロアパネル6をインパネ本体4に取付ける際には、先ず、図9に示すように、仮預け部62gを挿入孔43eに挿入する。このとき、フック状をなす仮預け部62gが挿入孔43eの周縁部に当接することで、取付フランジ62の下端部が右側取付部43により支持された状態となり、これによってロアパネル6がインパネ本体4に仮預け(仮保持)される。
【0051】
次に、図9に太矢印Xで示すように、右側取付部43に支持された取付フランジ62の下端部を中心にして、ロアパネル6を車室側(取付方向の手前側)から車両上方かつ前方(インパネ本体4の反露出面方向)に回動させ、各クリップ部材13A〜13Fを、係合孔42a〜42c、43a〜43cと対向する位置に配置する。
【0052】
そして、図10に太矢印Yで示すように、ロアパネル6を車両前方に押し込む。このとき、クリップ部材13A〜13Fの厚肉部13b(図7図8参照)が係合孔42a〜42c、43a〜43cの周縁部に当接することで、一対の第1係合爪13a(図7図8参照)が互いに接近する方向に弾性変形し、これによって、クリップ部材13A〜13Fは係合孔42a〜42c、43a〜43cに挿入される。そして、ロアパネル6のさらなる押し込みによって上記周縁部が厚肉部13bを乗越え、くびれ部13c(図7参照)に嵌合することで、第1係合爪13aは元の形状に近い状態に戻り(弾性変形した状態を保ったまま)、クリップ部材13A〜13Fが係合孔42a〜42c、43a〜43cに係合する。
【0053】
このように、クリップ部材13A〜13Fを係合孔42a〜42c、43a〜43cに係合させ、さらには、取付フランジ61の嵌合凸部61aを嵌合孔41aに嵌合させることで、図11に示すように、ロアパネル6をインパネ本体4に完全に取付ける。
【0054】
ところで、図1図2に示すコンソールパネル2の左側端部には、インパネ本体4の係合孔43d、及び取付フランジ62の係合孔62e、62fに対応して複数のクリップが取付けられており、これら複数のクリップを係合孔43d、62e、62fに係合させることで、コンソールパネル2の左側端部は、クリップ部材13E、13Fがインパネ本体4の係合孔43b、43cに係合している係合部位に取付けられている。
【0055】
そして、コンソールパネル2の左側端部が取付けられた状態では、これが露出面6bと取付フランジ62とにより形成された段差部に隙間なく嵌め込まれる。このため、上記係合部位は、コンソールパネル2の左側端部によって車室側(露出面6b側)から完全に覆われた状態となっている。
【0056】
本実施形態では、ロアパネル6(樹脂部品)において、裏面6cから反露出面方向に所定距離離間して突出する突起部62h、62hと、突出部62h、62h間をロアパネル6本体から反露出面方向に所定距離離間した位置にて連結する連結部62iと、突出部62h、62h間においてロアパネル6本体に形成された開口部62jとを有し、かつ、連結部62iにクリップ部材13E、13Fの第2係合爪13dと係合する露出面側端部62i1を設けることで、クリップ部材13E、13Fと係合する開口部専用の成形型を用いなくても、図6に示すように、車室側(取付方向の手前側)に露出する露出面6bと裏面6cとを成形する2つの成形型(キャビティ20、コア21)のみを用いてクリップ部材13の取付部位を成形することができる。これにより、生産コストの低減を図ることができる。
【0057】
そして、ロアパネル6が開口部62jを有することで、ロアパネル6をインパネ本体4(相手側部材)に取付ける際、クリップ部材13E、13Fを、開口部62jを通じて露出面6b側から視認することができる。このため、ロアパネル6のインパネ本体4への取付状態を容易に確認することができる。
【0058】
また、開口部62jの周辺に、突出部62hの突出方向に沿って、開口部62jから離間する方向に立ち上がるリブ62k、62kを立設することで、クリップ部材13E、13Fの取付部位の剛性をリブ62kにより向上させることができる。そして、該リブ62kにおいて、その反露出面側端部に、インパネ本体4の凹部43fに当接する当接部62k1を形成することで、ロアパネル6をインパネ本体4に取付ける際、剛性向上のためのリブ62kを利用して、ロアパネル6とインパネ本体4との位置決めを行うことができる。
【0059】
また、クリップ部材13E、13Fがインパネ本体4に係合する係合部位に、該部位を露出面6b側から覆うコンソールパネル2を取付けることで、開口部62jが最終的に車室側(取付方向の手前側)から見えないようにすることができるとともに、リブ62kによる剛性向上によって、ロアパネル6、インパネ本体4、及びコンソールパネル2の3部材が重なる重ね合わせ部での各部材2、4、6の位置決めを確実に行うことができる。これにより、車室側からの見栄えが悪化することを防止できる。
【0060】
また、裏面6cから反露出面方向に突出するとともに、ロアパネル6をインパネ本体4に取付ける際に、インパネ本体4の一部(挿入孔43eの周縁部)と当接することで、ロアパネル6(取付フランジ62の下端部)がインパネ本体4(右側取付部43)に支持された状態にする仮預け部62gを形成することで、取付作業者がロアパネル6をインパネ本体4に取付ける際、仮預け部62gを挿入孔43eの周縁部に当接させて仮預けした後のロアパネル6の保持や、インパネ本体4への取付作業が容易になる。このため、取付者業者の作業負荷を低減することができる。
【0061】
そして、仮預け部62gを、裏面6c上において開口部62jから離間した位置に形成することで、開口部62jと仮預け部62gとを、互いに型抜き方向で重複しないように配置することができる。この場合、キャビティ20、コア21の型抜き方向の変更や、その型抜き方向と異なる方向に移動するスライドコア等の部材を要することなく、つまりは、ロアパネル6本体やクリップ部材13E、13Fの取付部位を成形する2つの成形型のみを利用して、仮預け部62gを同時に成形することができるため、仮預け部62gを利用した仮預けを行う場合において、生産コスト上有利となる。
【0062】
また、仮預け部62gを、反露出面方向に向かうにつれて先細りになるように形成したことで、仮預け部62gにおける型抜きが容易になり、結果として、キャビティ20、コア21を利用した仮預け部62gの成形が容易になる。そして、仮預け部62gを挿入孔43eに挿入してその周縁部43eに仮預け部62gを当接させることで、仮預け部62gによる仮預けを行うことができる。この場合、仮預け部62gが先細りになるように形成されていることから、仮預け部62gを挿入孔43eに挿入する作業が容易になり、結果として、仮預け部62gによる仮預けを容易に行うことができる。
【0063】
なお、上述した実施形態では、インストルメントパネル1を一例として説明したが、これに限らす、例えば、車室の側壁を構成するサイドトリム等の他の車両用樹脂部品に適用してもよい。また、車両用の樹脂部品に必ずしも限定されるものではなく、露出面、裏面を有する樹脂部品をクリップで取付ける構造であればあらゆる機器に本発明を適用することができる。
【0064】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の、樹脂部品は、ロアパネル6に対応し、
以下同様に、
相手側部材は、インパネ本体4に対応し、
取付け面部は、縦面部62a、62bに対応し、
係合部は、露出面側端部62i1に対応し、
係合部位を露出面側から覆う部材は、コンソールパネル2に対応するも、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【符号の説明】
【0065】
1…インストルメントパネル
2…コンソールパネル
4…インストルメントパネル本体
6…ロアパネル
6b…露出面
6c…裏面
13E〜13F…クリップ部材
43e…挿入孔
62a、62b…縦面部
62g…仮預け部
62h…突出部
62i…連結部
62i1…露出面側端部
62j…開口部
62k…リブ
62k1…当接部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12