特許第5998857号(P5998857)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ジェイテクトの特許一覧
<>
  • 特許5998857-転がり軸受 図000002
  • 特許5998857-転がり軸受 図000003
  • 特許5998857-転がり軸受 図000004
  • 特許5998857-転がり軸受 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5998857
(24)【登録日】2016年9月9日
(45)【発行日】2016年9月28日
(54)【発明の名称】転がり軸受
(51)【国際特許分類】
   F16C 41/00 20060101AFI20160915BHJP
   F16C 33/38 20060101ALI20160915BHJP
   F16C 33/78 20060101ALI20160915BHJP
   F16J 15/447 20060101ALN20160915BHJP
【FI】
   F16C41/00
   F16C33/38
   F16C33/78 Z
   !F16J15/447
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-243579(P2012-243579)
(22)【出願日】2012年11月5日
(65)【公開番号】特開2014-92225(P2014-92225A)
(43)【公開日】2014年5月19日
【審査請求日】2015年10月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】特許業務法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永野 洋佑
【審査官】 塚原 一久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−13983(JP,A)
【文献】 特開2012−44776(JP,A)
【文献】 特開2012−174940(JP,A)
【文献】 特開2004−332859(JP,A)
【文献】 特開平7−204447(JP,A)
【文献】 特開2010−78073(JP,A)
【文献】 特開2005−180985(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 41/00−41/04
F16C 19/00−19/56
F16C 33/30−33/66
F16C 33/78
F16J 15/447
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同心状に配置された固定輪及び回転輪と、前記固定輪と回転輪との間に転動自在に配置された複数の転動体と、前記複数の転動体を円周方向に沿って所定間隔毎に保持する環状の保持器と、前記固定輪の軸方向両端部に取り付けられ、前記固定輪と回転輪との間の環状空間を密封する一対のシールド板とを備え、前記環状空間に潤滑剤が封入されている転がり軸受であって、
前記一対のシールド板のうちの少なくとも一方は、金属製の放熱板とされており、
外側面が前記放熱板の内側面に対向して配置され、前記放熱板と異なる種類の金属からなる吸熱板と、
前記放熱板の内側面と前記吸熱板の外側面とに接触し、所定の方向に電流が流れることで前記吸熱板で吸熱作用を起こすとともに前記放熱板で放熱作用を起こす熱電変換素子と、
少なくとも一部が前記吸熱板の内側面に沿って配設された環状のコイルと、前記コイルに対向する前記保持器の外側面に取り付けられ、円周方向に沿って所定間隔毎に配置された複数の永久磁石とを有し、前記保持器と共に前記永久磁石が回転することにより、前記コイルに前記所定の方向の誘導電流を発生させる発電部と、
を備えていることを特徴とする転がり軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転がり軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回転機械等に用いられる転がり軸受として、内輪と、外輪と、内外輪間に配置された複数の転動体と、転動体を周方向に所定間隔で保持する保持器と、軸受内部を密封するための一対のシールド板とを備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。このような転がり軸受の潤滑は、軸受内部に封入されたグリースにより行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−332859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年の回転機械は、高性能化に伴って回転速度が高速化している傾向にある。これに付随して、前記転がり軸受は、軸受内部に熱がこもり、焼き付きなどによって寿命が低下することが懸念されている。そこで、転がり軸受の高温化に対応する方策として、高粘度のグリースを使用することが考えられる。しかし、この場合には、転動体が転動する際のグリースによる転がり粘性抵抗が増大するため、転がり軸受が高トルク化するという問題が生じる。
本発明は、前記問題点に鑑みてなされたものであり、低粘度の潤滑剤を用いても軸受内部に熱がこもるのを抑制することができる転がり軸受を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の転がり軸受器は、同心状に配置された固定輪及び回転輪と、前記固定輪と回転輪との間に転動自在に配置された複数の転動体と、前記複数の転動体を円周方向に沿って所定間隔毎に保持する環状の保持器と、前記固定輪の軸方向両端部に取り付けられ、前記固定輪と回転輪との間の環状空間を密封する一対のシールド板とを備え、前記環状空間に潤滑剤が封入されている転がり軸受であって、前記一対のシールド板のうちの少なくとも一方は、金属製の放熱板とされており、外側面が前記放熱板の内側面に対向して配置され、前記放熱板と異なる種類の金属からなる吸熱板と、前記放熱板の内側面と前記吸熱板の外側面とに接触し、所定の方向に電流が流れることで前記吸熱板で吸熱作用を起こすとともに前記放熱板で放熱作用を起こす熱電変換素子と、少なくとも一部が前記吸熱板の内側面に沿って配設された環状のコイルと、前記コイルに対向する前記保持器の外側面に取り付けられ、円周方向に沿って所定間隔毎に配置された複数の永久磁石とを有し、前記保持器と共に前記永久磁石が回転することにより、前記コイルに前記所定の方向の誘導電流を発生させる発電部と、を備えていることを特徴としている。
【0006】
本発明によれば、転がり軸受の回転輪が回転すると、保持器と共に永久磁石が回転することにより、発電部のコイルに誘導電流が発生し、吸熱板を介して熱電変換素子に電流が流れる。これにより、軸受内部で発生した熱は、吸熱板から熱電変換素子を介して放熱板であるシールド板に移動して軸受外部に放熱される。このように、本発明の転がり軸受は、軸受内部で発生した熱を、熱電変換素子を用いて軸受外部に効率的に放熱することができるため、低粘度の潤滑剤を用いても軸受内部に熱がこもるのを抑制することができる。
また、シールド板を放熱板として兼用しているため、軸受全体の構成を簡略化することができる。さらに、シールド板と保持器との間に、吸熱板、熱電変換素子及び発電部が収容されているため、軸受全体をコンパクトにすることができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の転がり軸受によれば、低粘度の潤滑剤を用いても軸受内部に熱がこもるのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る転がり軸受を示す断面図である。
図2図1のA部拡大断面図である。
図3】上記転がり軸受の発電部を示すシールド板の側面図である。
図4】本発明の他の実施形態に係る転がり軸受を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明の好ましい実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る転がり軸受用を示す断面図である。図1において、転がり軸受1は、深溝玉軸受からなり、外輪(固定輪)2と、内輪(回転輪)3と、複数の玉(転動体)4と、玉4を保持する環状の保持器5と、外輪2と内輪3との間の環状空間を密封する一対のシールド板6とを備えている。前記環状空間には、グリース(潤滑剤)が封入されている。
【0010】
外輪2の内周には外軌道面2aが形成されており、外輪2の軸方向両端部には外軌道面2aよりも軸方向外方に位置する肩部2bがそれぞれ形成されている。各肩部2bの内周には、径方向外側に窪む周溝2cが形成されている。
内輪3は外輪2と同心状に配置されており、内輪3の外周には前記外軌道面2aに対向する内軌道面3aが形成されている。内輪3の軸方向両端部には内軌道面3aよりも軸方向外方に位置する肩部3bがそれぞれ形成されている。各肩部3bの内周には、径方向外側に窪む周溝3cが前記外輪2の周溝2cに対向して形成されている。外輪2及び内輪3は、軸受鋼や浸炭鋼等の軸受用鋼によって形成されている。
【0011】
外輪2の外軌道面2aと内輪3の内軌道面3aとの間には、複数の玉4が転動自在に配置されており、これらの玉4は、前記保持器5により円周方向に沿って所定間隔毎に保持されている。
前記各シールド板6は、例えば鉄により円環状に形成されており、軸受外部に放熱可能な金属製の放熱板とされている。シールド板6の径方向外端は、例えばゴム等の絶縁体7を介して外輪2の周溝2cに固定されており、外輪2とシールド板6とは絶縁されている。また、シールド板6の径方向内端は、内輪3の周溝3cとの間にラビリンス隙間を設けて近接配置されている。
【0012】
転がり軸受1は、軸受内部で発生した熱をシールド板6から軸受外部に放熱するために、第1吸熱板8と、第2吸熱板9と、熱電変換素子10と、発電部11とをさらに備えている。本実施形態の第1及び第2吸熱板8,9、熱電変換素子10及び発電部11は、これらを1セットとして、保持器5の軸方向両端部と各シールド板6と間の環状空間に2セット配置されている。これら2セットは同様の構成であるため、本実施形態では軸方向一方側(図1の右側)の1セットについてのみ説明する。
【0013】
図2は、前記第1及び第2吸熱板8,9、熱電変換素子10及び発電部11を示す図1のA部拡大断面図である。図2において、シールド板6の軸方向内方には、第1吸熱板8と第2吸熱板9とが配置されている。第1吸熱板8は、シールド板6と異なる種類の金属(例えば銅)により円環状に形成されており(図3参照)、第1吸熱板8の外側面は、シールド板6の内側面の径方向内端部と対向して配置されている。
第2吸熱板9は、シールド板6と異なる種類の金属である、例えば銅により円環状に形成されており(図3参照)、第2吸熱板9の外側面は、シールド板6の内側面の径方向外端部と非接触状態で対向して配置されている。第2吸熱板9の径方向外端は、外輪2の周溝2cに接触しており、第2吸熱板9と外輪2とは電気的に接続されている。
【0014】
前記熱電変換素子10は、シールド板6の内側面と第1吸熱板8の外側面とに接着されたp型熱電変換素子10aと、シールド板6の内側面と第2吸熱板9の外側面の径方向内端部とに接着されたn型熱電変換素子10bとによって構成されている。熱電変換素子10は、2つの異種金属間に配置された状態で電流が流れると、ペルチェ効果により一方の金属で吸熱作用を起こし、他方の金属で放熱作用を起こすものである。
本実施形態では、図2の矢印a及びbで示す所定の方向、すなわち、第1吸熱板8、p型熱電変換素子10a、シールド板6、n型熱電変換素子10b、第2吸熱板9及び外輪2の順に電流を流すことにより、第1及び第2吸熱板8,9で吸熱作用を起こし、シールド板6で放熱作用を起こすことができる。これにより、第1及び第2吸熱板8,9が軸受内部で発生した熱を吸熱し、p型及びn型熱電変換素子10a,10bを介してシールド板6から軸受外部に放熱することができる。
【0015】
図3は、前記発電部11を示すシールド板6の側面図である。図2及び図3において、前記発電部11は、内輪3が回転することによって発電するものであり、複数(2個)のコイル12と、複数(5個)の永久磁石13と、絶縁板14とを備えている。
コイル12は、図3の側面視において、シールド板6を円周方向に2等分するように略半円弧環状に巻回形成されている。各コイル12の一部である径方向内側部12aは、図2に示すように、第1吸熱板8の内側面に沿って固定されている。また、各コイル12の他部である径方向外側部12bは絶縁板14の内側面に沿って固定されている。絶縁板14は、例えばゴム等により円環状に形成されており、n型熱電変換素子10bの内側面に沿って固定されている。これにより、コイル12は、第1吸熱板8を介してp型熱電変換素子10aと電気的に接続されており、絶縁板14によってn型熱電変換素子10bと絶縁されている。
【0016】
図2及び図3において、前記永久磁石13は、コイル12に対向する保持器5の外側面に、円周方向に沿って所定間隔毎に固定されている。これらの永久磁石13は、図3に示すように、保持器5の全周に対して一部分(半周部分)に偏って配置されている。これにより、内輪3が回転して保持器5と共に永久磁石13が回転すると、図3の側面視において各コイル12内を通過する永久磁石13の個数が増減することにより磁束密度が変化するため、各コイル12に誘導電流が発生する。その際、前記磁束密度が増加する場合と減少する場合とで、コイル12に発生する誘導電流の向きが逆になる。しかし、上述のようにコイル12とn型熱電変換素子10bとは絶縁板14により絶縁されているため、コイル12で発生した誘導電流はp型熱電変換素子10aにのみ流れる。これにより、前記誘導電流を前記所定の方向にのみ流すことができる。
【0017】
上記のように構成された本実施形態の転がり軸受1によれば、内輪3が回転すると、保持器5と共に永久磁石13が回転することにより、発電部11のコイル12に誘導電流が発生し、この誘導電流は第1吸熱板8を介して熱電変換素子10に流れる。これにより、軸受内部で発生した熱は、第1及び第2吸熱板8,9から熱電変換素子10を介して放熱板であるシールド板6に移動して軸受外部に放熱される。このように、本発明の転がり軸受1は、軸受内部で発生した熱を、熱電変換素子10を用いて軸受外部に効率的に放熱することができるため、低粘度のグリースを用いても軸受内部に熱がこもるのを抑制することができる。
また、シールド板6を放熱板として兼用しているため、軸受全体の構成を簡略化することができる。さらに、シールド板6と保持器5との間に、第1及び第2吸熱板8,9、熱電変換素子10及び発電部11が収容されているため、軸受全体をコンパクトにすることができる。
【0018】
図4は、本発明の他の実施形態に係る転がり軸受を示す拡大断面図である。図4において、この実施形態の転がり軸受1は、外輪2を回転輪とし、内輪3を固定輪としており、各構成部材の取付位置が図2の実施形態と相違している。以下、その相違する点について説明する。
シールド板6は、その径方向内端が絶縁体7を介して内輪3の周溝3cに固定されており、内輪3とシールド板6とは絶縁されている。また、シールド板6の径方向外端は、外輪2の周溝2cとの間にラビリンス隙間を設けて近接配置されている。
【0019】
第1吸熱板8の外側面は、シールド板6の内側面の径方向外端部と対向して配置されており、第2吸熱板9の外側面は、シールド板6の内側面の径方向内端部と非接触状態で対向して配置されている。第2吸熱板9の径方向内端は、内輪3の周溝3cに接触しており、第2吸熱板9と内輪3とは電気的に接続されている。
【0020】
熱電変換素子10は、シールド板6の内側面と第1吸熱板8の外側面とに接着されたp型熱電変換素子10aと、シールド板6の内側面と第2吸熱板9の外側面の径方向外端部とに接着されたn型熱電変換素子10bとによって構成されている。
本実施形態では、図4の矢印a及びbで示す所定の方向、すなわち、第1吸熱板8、p型熱電変換素子10a、シールド板6、n型熱電変換素子10b、第2吸熱板9及び内輪3の順に電流を流すことにより、第1及び第2吸熱板8,9で吸熱作用を起こし、シールド板6で放熱作用を起こすことができる。これにより、第1及び第2吸熱板8,9が軸受内部で発生した熱を吸熱し、p型及びn型熱電変換素子10a,10bを介してシールド板6から軸受外部に放熱することができる。
【0021】
発電部11は、外輪2が回転することによって発電するものである。この発電部11のコイル12の径方向外側部12bは、第1吸熱板8の内側面に沿って固定されている。また、コイル12の径方向内側部12aは絶縁板14の内側面に沿って固定されている。絶縁板14は、n型熱電変換素子10bの内側面に沿って固定されている。これにより、コイル12は、第1吸熱板8を介してp型熱電変換素子10aと電気的に接続されており、絶縁板14によってn型熱電変換素子10bと絶縁されている。
【0022】
以上の構成により、外輪2が回転して保持器5と共に永久磁石13が回転すると、各コイル12に誘導電流が発生する。その際、前記磁束密度が増加する場合と減少する場合とで、コイル12に発生する誘導電流の向きが逆になるが、コイル12とn型熱電変換素子10bとは絶縁板14により絶縁されているため、コイル12で発生した誘導電流はp型熱電変換素子10aにのみ流れる。これにより、前記誘導電流を前記所定の方向にのみ流すことができる。なお、本実施形態のその他の構成については、図2の実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
上記のように構成された本実施形態の転がり軸受1においても、軸受内部で発生した熱を、熱電変換素子10を用いて軸受外部に効率的に放熱することができるため、低粘度のグリースを用いても軸受内部に熱がこもるのを抑制することができる。
【0023】
なお、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく適宜変更して実施可能である。例えば、上記実施形態において第1及び第2吸熱板8,9、熱電変換素子10及び発電部11は、軸方向両側にそれぞれ配置されているが、軸方向一方側にのみ配置されていてもよい。但し、放熱効率という観点では軸方向両側に配置されているほうがよい。また、熱電変換素子10は、シールド板6の内側面と吸熱板8,9の外側面とに接着されているが、少なくとも前記内側面と外側面とに接触していればよい。さらに、上記実施形態では、転がり軸受1として玉軸受を使用しているが、ころ軸受にも適用することも可能である。
【符号の説明】
【0024】
1:転がり軸受、2:外輪、3:内輪、4:玉(転動体)、5:保持器、6:シールド板(放熱板)、8:第1吸熱板、9:第2吸熱板、10:熱電変換素子、11:発電部、12:コイル、13:永久磁石
図1
図2
図3
図4