(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5998909
(24)【登録日】2016年9月9日
(45)【発行日】2016年9月28日
(54)【発明の名称】メッシュ無線通信ネットワークシステム、無線通信方法、および、無線端末
(51)【国際特許分類】
H04W 84/18 20090101AFI20160915BHJP
H04W 4/04 20090101ALI20160915BHJP
【FI】
H04W84/18
H04W4/04 190
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-274866(P2012-274866)
(22)【出願日】2012年12月17日
(65)【公開番号】特開2014-120939(P2014-120939A)
(43)【公開日】2014年6月30日
【審査請求日】2015年11月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(72)【発明者】
【氏名】松井 伸二
(72)【発明者】
【氏名】星野 充紀
【審査官】
桑原 聡一
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2008/129593(WO,A1)
【文献】
特開2006−221518(JP,A)
【文献】
特開2007−312307(JP,A)
【文献】
特開2007−208955(JP,A)
【文献】
特開2009−116624(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24−7/26
H04W 4/00−99/00
H03J 9/00−9/06
H04Q 9/00−9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メッシュ無線通信ネットワークを構成する無線端末が、低出力の無線出力で広範囲をカバーし、一定の時間間隔で所定の計測を行い、計測データを上位の集計装置まで複数の無線端末をバケツリレー方式でデータ転送するメッシュ無線通信ネットワークシステムであって、
前記無線端末のそれぞれは、
少なくとも、無線送信回路と、無線受信回路と、送受切替え回路と、アンテナと、無線端末全体を制御する制御部とを備え、
無線端末全体を制御する前記制御部は、
前記計測データを他無線端末から受信したとき、送信バッファに格納されている他無線端末の前記計測データの転送所要時間を更新して該送信バッファに格納する送信バッファ格納手段と、
前記送信バッファの容量が満杯になったときには、前記送信バッファに格納された、端末ID、更新された転送所要時間及び計測データを含む他無線端末のデータを一括して自無線端末より前記集計装置に近い無線端末に送信する第1の送信制御手段と、
前記送信バッファの容量が満杯でなくとも、自端末の計測データを所定タイミングで取得したときには、自端末のID及び転送所要時間を前記送信バッファに付加し、さらに前記更新された転送所要時間を含む前記他無線端末から受信した計測データと他端末IDとを束ねて一括して前記集計装置に近い無線端末に送信する第2の送信制御手段と、を備え、
前記集計装置は、
直近の無線端末から前記計測データを受信したら、前記無線端末それぞれにおける前記転送所要時間を基準時刻を基に減算して個々の無線端末における正確な計測時点を算出する計測時点算出手段、
を備えていることを特徴とするメッシュ無線通信ネットワークシステム。
【請求項2】
前記制御部は、定周期で送信されるビーコン送信時間に所要時間を加算して計測周期を超えなければビーコン送信を実行するビーコン送信/計測処理切り分け手段を備えることを特徴とする請求項1に記載のメッシュ無線通信ネットワークシステム。
【請求項3】
前記制御部は、個別に設定された計測タイミング待ち時間を経て計測を実行する計測タイミング待ち時間設定手段をさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載のメッシュ無線通信ネットワークシステム。
【請求項4】
メッシュ無線通信ネットワークを構成する無線端末が、低出力の無線出力で広範囲をカバーし、一定の時間間隔で所定の計測を行い、計測データを上位の集計装置まで複数の無線端末をバケツリレー方式でデータ転送するメッシュ無線通信ネットワークシステムにおける無線端末であって、
前記無線端末のそれぞれは、
少なくとも、無線送信回路と、無線受信回路と、送受切替え回路と、アンテナと、無線端末全体を制御する制御部とを備え、
無線端末全体を制御する前記制御部は、
前記計測データを他無線端末から受信したとき、送信バッファに格納されている他無線端末の前記計測データの転送所要時間を更新して該送信バッファに格納する送信バッファ格納手段と、
前記送信バッファの容量が満杯になったときには、前記送信バッファに格納された、端末ID、更新された転送所要時間及び計測データを含む他無線端末のデータを一括して自無線端末より前記集計装置に近い無線端末に送信する第1の送信制御手段と、
前記送信バッファの容量が満杯でなくとも、自端末の計測データを所定タイミングで取得したときには、自端末のID及び転送所要時間を前記送信バッファに付加し、さらに前記更新された転送所要時間を含む前記他無線端末から受信した計測データと他端末IDとを束ねて一括して前記集計装置に近い無線端末に送信する第2の送信制御手段と、
を備えることを特徴とする無線端末。
【請求項5】
前記制御部は、定周期で送信されるビーコン送信時間に所要時間を加算して計測周期を超えなければビーコン送信を実行するビーコン送信/計測処理切り分け手段を備えることを特徴とする請求項4に記載の無線端末。
【請求項6】
前記制御部は、個別に設定された計測タイミング待ち時間を経て計測を実行する計測タイミング待ち時間設定手段をさらに備えることを特徴とする請求項4または5に記載の無線端末。
【請求項7】
メッシュ無線通信ネットワークを構成する無線端末が、低出力の無線出力で広範囲をカバーし、一定の時間間隔で所定の計測を行い、計測データを上位の集計装置まで複数の無線端末をバケツリレー方式でデータ転送するメッシュ無線通信ネットワークシステムにおける無線通信方法であって、
前記無線端末のそれぞれは、
前記計測データを他無線端末から受信したとき、送信バッファに格納されている他無線端末の前記計測データの転送所要時間を更新して該送信バッファに格納する過程、
前記送信バッファの容量が満杯になったときには、前記送信バッファに格納された、端末ID、更新された転送所要時間及び計測データを含む他無線端末のデータを一括して自無線端末より前記集計装置に近い無線端末に送信する過程、または、
前記送信バッファの容量が満杯でなくとも、自端末の計測データを所定タイミングで取得したときには、自端末のID及び転送所要時間を前記送信バッファに付加し、さらに前記更新された転送所要時間を含む前記他無線端末から受信した計測データと他端末IDとを束ねて一括して前記集計装置に近い無線端末に送信する過程、を含み、
前記集計装置は、
直近の無線端末から前記計測データを受信したら、前記無線端末それぞれにおける前記転送所要時間を基準時刻を基に減算して個々の無線端末における正確な計測時点を算出する過程、
を含むことを特徴とするメッシュ無線通信方法。
【請求項8】
前記無線端末は、定周期で送信されるビーコン送信時間に所要時間を加算して計測周期を超えなければビーコン送信を実行し、計測周期になれば計測処理を実行することを特徴とする請求項7に記載のメッシュ無線通信方法。
【請求項9】
前記無線端末は、個別に設定された計測タイミング待ち時間を経て計測を実行することを特徴とする請求項7または8に記載のメッシュ無線通信方法。
【請求項10】
メッシュ無線通信ネットワークを構成する無線端末が、低出力の無線出力で広範囲をカバーし、一定の時間間隔で所定の計測を行い、計測データを上位の集計装置まで複数の無線端末をバケツリレー方式でデータ転送するメッシュ無線通信ネットワークシステムにおける無線端末であって、該無線端末が、前記計測データを他無線端末から受信したとき、送信バッファに格納されている他無線端末の前記計測データの転送所要時間を更新して該送信バッファに格納する送信バッファ格納手段を備え、
前記無線端末のコンピュータを、
前記送信バッファの容量が満杯になったときには、前記送信バッファに格納された、端末ID、更新された転送所要時間及び計測データを含む他無線端末のデータを一括して自無線端末より前記集計装置に近い無線端末に送信する第1の送信制御手段と、
前記送信バッファの容量が満杯でなくとも、自端末の計測データを所定タイミングで取得したときには、自端末のID及び転送所要時間を前記送信バッファに付加し、さらに前記更新された転送所要時間を含む前記他無線端末から受信した計測データと他端末IDとを束ねて一括して前記集計装置に近い無線端末に送信する第2の送信制御手段、
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計測機能を有する複数の無線端末から1つの集計装置(ホスト)に計測結果(計測データ)を通知するメッシュ無線通信ネットワークシステム、無線通信方法、および、無線端末に関する。
【背景技術】
【0002】
低消費電力タイプのメッシュ無線通信方式として、全ての無線機が一定周期で短いビーコンを送信し、データを送信したい無線機はビーコンに同期して接続リクエストを送信して特定の無線機とハンドシェイクを行うことでデータの送信を実行し、これを繰り返すことで、バケツリレー方式でデータ転送しながら目的の無線機にデータを届けるものが知られている。
【0003】
この場合、全ての無線機は、ネットワークの構成情報を自無線機内に所持しており、自分より目的の無線機に近い無線機からのビーコンを選択することにより、効率的な転送ルートを選択するようにしている(この方式は、一般に、N×Nメッシュ無線通信方式などと呼ばれる)。
【0004】
上記N×Nメッシュ無線通信方式の亜流として、1つの集計装置で全ての無線機の計測結果を収集するタイプ(1×Nメッシュ無線通信方式)では、それぞれの無線機は集計装置までの距離情報(構成情報)を保持し、自分より集計装置に近い(ホップ数が少ない)無線機に対してデータを転送することにより、最終的に集計装置までデータを届けるようにしている。
【0005】
下記に示す特許文献1には、センサ情報と、該センサ情報を検出した時刻(絶対時刻)を基幹装置(ホスト)に向けて送信する無線通信ネットワークシステムが開示されている。
【0006】
また下記に示す特許文献2には、記憶部に記憶している計測データを無線通信手段によって他の無線通信手段に送信し、次の起動タイミングまで無線通信手段を停止させるとともに、無線通信手段の起動時に、ネットワークに含まれる所定装置との間における時刻情報の同期処理を実行する制御手段を備える無線計測制御方式が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−233071号公報(0014,0018段落)
【特許文献2】特開2012−205108号公報(0023段落)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
省電力タイプのメッシュ無線通信方式では、バケツリレー方式の1回のデータ転送に数秒を要する場合があり、規模の大きなメッシュ無線通信方式の構築には、計測結果が集計装置に届くまでに1分程度の遅延が発生することを考慮する必要がある。
【0009】
また、省電力や無線通信の輻輳緩和のため、複数の計測結果を束ねて送信することが有効だが、この場合にも遅延時間が大きくなることを考慮する必要となる。
また各無線機に時計と時刻合わせ機能を持たせれば、計測データに正確な時刻情報を付加することができるが、無線機個々に対する小型・省電力・低価格の要求からそれらの機能を夫々の無線機に持たせることが困難であり、その場合には、計測データを受け取った集計装置では各無線機における正確な計測時刻を知ることができない。
【0010】
電力や都市ガスなどの遠隔検針で毎月1回程度の計測頻度であれば、数分の遅延はさほど問題にならないが、計測頻度として数分に1回を要する計測システムであれば、正確な計測時刻を知るうえで転送にかかる遅延時間の補正が必要不可欠である。
【0011】
そこで本発明は、バケツリレー方式でデータ転送した無線端末個々についてデータの転送にかかる遅延時間を補正し、正確な計測時刻を知ることができるメッシュ無線通信ネットワークシステム、無線通信方法、および無線端末を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために本発明のメッシュ無線通信ネットワークシステムは、メッシュ無線通信ネットワークを構成する無線端末が、低出力の無線出力で広範囲をカバーし、一定の時間間隔で所定の計測を行い、計測データを上位の集計装置まで複数の無線端末をバケツリレー方式でデータ転送するメッシュ無線通信ネットワークシステムであって、上記無線端末のそれぞれは、少なくとも、無線送信回路と、無線受信回路と、送受切替え回路と、アンテナと、無線端末全体を制御する制御部とを備え、無線端末全体を制御する上記制御部は、上記計測データを他無線端末から受信したとき、送信バッファに格納されている他無線端末の上記計測データの転送所要時間を更新して該送信バッファに格納する送信バッファ格納手段と、上記送信バッファの容量が満杯になったときには、上記送信バッファに格納された、端末ID、更新された転送所要時間及び計測データを含む他無線端末のデータを一括して自無線端末より上記集計装置に近い無線端末に送信する第1の送信制御手段と、上記送信バッファの容量が満杯でなくとも、自端末の計測データを所定タイミングで取得したときには、自端末のID及び転送所要時間を上記送信バッファに付加し、さらに上記更新された転送所要時間を含む上記他無線端末から受信した計測データと他端末IDとを束ねて一括して上記集計装置に近い無線端末に送信する第2の送信制御手段と、を備え、上記集計装置は、直近の無線端末から上記計測データを受信したら、上記無線端末それぞれにおける上記転送所要時間を基準時刻を基に減算して個々の無線端末における正確な計測時点を算出する計測時点算出手段、を備えていることを特徴とする。
【0013】
上記において、上記制御部は、定周期で送信されるビーコン送信時間に所要時間を加算して計測周期を超えなければビーコン送信を実行するビーコン送信/計測処理切り分け手段を備えることを特徴とする。
【0014】
また上記において、上記制御部は、個別に設定された計測タイミング待ち時間を経て計測を実行する計測タイミング待ち時間設定手段をさらに備えることを特徴とする。
また上記目的を達成するために本発明の無線通信端末は、メッシュ無線通信ネットワークを構成する無線端末が、低出力の無線出力で広範囲をカバーし、一定の時間間隔で所定の計測を行い、計測データを上位の集計装置まで複数の無線端末をバケツリレー方式でデータ転送するメッシュ無線通信ネットワークシステムにおける無線端末であって、上記無線端末のそれぞれは、少なくとも、無線送信回路と、無線受信回路と、送受切替え回路と、アンテナと、無線端末全体を制御する制御部とを備え、無線端末全体を制御する上記制御部は、上記計測データを他無線端末から受信したとき、送信バッファに格納されている他無線端末の上記計測データの転送所要時間を更新して該送信バッファに格納する送信バッファ格納手段と、上記送信バッファの容量が満杯になったときには、上記送信バッファに格納された、端末ID、更新された転送所要時間及び計測データを含む他無線端末のデータを一括して自無線端末より上記集計装置に近い無線端末に送信する第1の送信制御手段と、上記送信バッファの容量が満杯でなくとも、自端末の計測データを所定タイミングで取得したときには、自端末のID及び転送所要時間を上記送信バッファに付加し、さらに上記更新された転送所要時間を含む上記他無線端末から受信した計測データと他端末IDとを束ねて一括して上記集計装置に近い無線端末に送信する第2の送信制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0015】
上記目的を達成するために本発明のメッシュ無線通信方法は、メッシュ無線通信ネットワークを構成する無線端末が、低出力の無線出力で広範囲をカバーし、一定の時間間隔で所定の計測を行い、計測データを上位の集計装置まで複数の無線端末をバケツリレー方式でデータ転送するメッシュ無線通信ネットワークシステムにおける無線通信方法であって、上記無線端末のそれぞれは、上記計測データを他無線端末から受信したとき、送信バッファに格納されている他無線端末の上記計測データの転送所要時間を更新して該送信バッファに格納する過程、上記送信バッファの容量が満杯になったときには、上記送信バッファに格納された、端末ID、更新された転送所要時間及び計測データを含む他無線端末のデータを一括して自無線端末より上記集計装置に近い無線端末に送信する過程、または、上記送信バッファの容量が満杯でなくとも、自端末の計測データを所定タイミングで取得したときには、自端末のID及び転送所要時間を上記送信バッファに付加し、さらに上記更新された転送所要時間を含む上記他無線端末から受信した計測データと他端末IDとを束ねて一括して上記集計装置に近い無線端末に送信する過程、を含み、上記集計装置は、直近の無線端末から上記計測データを受信したら、上記無線端末それぞれにおける上記転送所要時間を基準時刻を基に減算して個々の無線端末における正確な計測時点を算出する過程、含むことを特徴とする。
【0016】
また上記目的を達成するために本発明にかかる無線端末のコンピュータに機能させるためのプログラムは、メッシュ無線通信ネットワークを構成する無線端末が、低出力の無線出力で広範囲をカバーし、一定の時間間隔で所定の計測を行い、計測データを上位の集計装置まで複数の無線端末をバケツリレー方式でデータ転送するメッシュ無線通信ネットワークシステムにおける無線端末であって、該無線端末が、上記計測データを他無線端末から受信したとき、送信バッファに格納されている他無線端末の上記計測データの転送所要時間を更新して該送信バッファに格納する送信バッファ格納手段を備え、上記無線端末のコンピュータを、上記送信バッファの容量が満杯になったときには、上記送信バッファに格納された、端末ID、更新された転送所要時間及び計測データを含む他無線端末のデータを一括して自無線端末より上記集計装置に近い無線端末に送信する第1の送信制御手段と、上記送信バッファの容量が満杯でなくとも、自端末の計測データを所定タイミングで取得したときには、自端末のID及び転送所要時間を上記送信バッファに付加し、さらに上記更新された転送所要時間を含む上記他無線端末から受信した計測データと他端末IDとを束ねて一括して上記集計装置に近い無線端末に送信する第2の送信制御手段、として機能させる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、受信した計測データフォーマット内に付加された、更新された転送所要時間を、基準時刻を備える上位の集計装置が現在時刻から減算することにより、計測データを送信した無線端末の正確な計測時刻を知ることができる。
【0018】
また、省電力や無線通信の輻輳緩和のために複数の計測結果(計測データ)が束ねられている場合でも、計測データフォーマット内の計測データごとに転送所要時間が付加されているので、基準時刻を備える上位の集計装置が、計測データを送信した無線端末ごとの正確な計測時刻を算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態に係るメッシュ無線通信ネットワークシステムの構成例を示す図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る無線端末の構成を示す機能ブロック図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る無線端末の転送時における転送所要時間の更新例を説明する図である。
【
図4】メッシュ無線通信ネットワークシステムの無線端末間のハンドシェイク手順の一例を示す図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る無線端末間の通信シーケンスの一例を示す図である。
【
図6】本発明の実施形態に係るメッシュ無線通信ネットワークシステムの各無線端末の動作処理フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るメッシュ無線通信ネットワークシステムの構成例を示す図である。
図1において本発明の実施形態に係るメッシュ無線通信ネットワークシステムは、1台の集計装置10と、無線端末1ないし無線端末6とから構成されている。そして本発明の実施形態に係るメッシュ無線通信ネットワークシステムは、メッシュ無線通信ネットワークを構成する無線端末が、一定の時間間隔で所定の計測を行い、計測結果(計測データ)を上位の集計装置10まで複数の無線端末をバケツリレー方式でデータ転送して届けるもので、低出力の無線出力で広範囲の通信エリアをカバーできるようにしている。なお集計装置10はパソコンなどを備えて構成され、集計装置10における低消費電力化の要求は低いものとする。
【0021】
図1においては、一例として無線端末1を発信元として無線端末2、無線端末5を経由して、計測データを集計装置10に転送する場合を示しているが、当該計測データの転送に関与していない無線端末3、無線端末4、無線端末6もメッシュ無線通信ネットワークシステムの構成要素として示され、同じように上位の集計装置10までバケツリレー方式でデータ転送することができる。そして無線端末の構成としては、計測部、制御部、無線部を備えるものであることについては、
図1の無線端末2にブロック図で示しているが、各無線端末の構成の詳細については、
図2で説明する。なお各無線端末の配置は固定でなく移動可能であり、
図1の配置は単なる事例にすぎない。集計装置10を除く互いの配置関係は当業者に良く知られた構成情報の更新によって把握される。
【0022】
図2において、無線端末11は、計測対象9に対する計測を定周期に実行して計測データ(計測結果)を取得する計測部19と、無線送信回路14および無線受信回路15を備える無線部13と、バッファ単位(一例として16バイトとして説明するがこの値に限定されない)で計測データを制御するメモリ制御部32及び該メモリ制御部32の下に計測データを保持するメモリ33並びに送受信のシーケンスを制御する送受信シーケンス制御部35を少なくとも備える制御部12と、から構成されている。さらに詳しく説明すると、
計測部19は、タイムカウント機能を有する間欠動作制御部20から所定時間が経過したとして出される動作指示(指示等の制御線を破線で示す)に基づき計測対象9を所定の時間間隔、例えば1分間隔、で計測を実行し、計測結果を制御部12に渡す。制御部12はこの計測結果をメモリ33の所定の領域(計測データバッファ領域)に保持する。
【0023】
無線部13は、タイムカウント機能を有する間欠動作制御部20から制御部12へ所定時間が経過したとして出される動作指示の下に制御部12の送受信シーケンス制御部35が無線送信回路14を動作させることでビーコンを一定の周期、例えば5秒周期、で送信し、これに応じて他無線端末からの計測データを無線受信回路15で受信して制御部12に渡す。制御部12の送受信シーケンス制御部35はデータ受信部36に指示して他無線端末から送られてきた計測データをメモリ33の所定の領域(計測データバッファ領域)に保持する。
【0024】
また送受信シーケンス制御部35は、無線受信回路15で受信したデータをデータ受信部36を介して受け取って解析し、その後に行う通信シーケンスを制御する。例えば、受信したデータが接続リクエストパケットであれば接続許可パケットを送信元に送信する。なお、通信シーケンス制御については
図4で詳しく説明する。
【0025】
また無線部13は、メモリ33内に保持されている構成情報(図示せず)を制御部12が参照して自無線端末より集計装置10に近い(ホップ数の少ない)無線端末を選択して、メモリ33の所定の領域に保持されている計測データをデータ送信部34、無線送信回路14を介して上記で選択した無線端末にデータ転送する(バケツリレー方式のデータ転送に該当)。
【0026】
制御部12は、CPU(図示せず)を含み、CPUの制御の下に、無線部13の無線受信回路15で受信された計測データをデータ受信部36を介してメモリ33の所定の領域に保持するとともに、計測部19から所定の周期で得られる自端末における計測データを受け取ったとき、受け取った計測データとそれまでにメモリ33の所定の領域に蓄積された他無線端末の計測データとを束ねて一括して送信できるようにメモリ制御部32を通じてバッファ編集してデータ送信部34に渡し、データ送信部34では渡された計測データを送受信シーケンス制御部35の指示の下に無線部13の無線送信回路14に送り、無線送信回路14から束ねて一括して送信する。
【0027】
また制御部12は、複数の無線端末から計測データを受け取ってメモリ33の所定の領域に蓄積していた計測データを一括して送信可能にするためにメモリ制御部32を通じてバッファ編集するが所定のバッファ容量(本実施形態では、8バッファ単位)を超えるか否かをメモリ制御部32で検出し、バッファ容量満杯(以下、単に“バッファフル”という)になった時点でメモリ33からデータ送信部34にバッファフルになった計測データを渡し、データ送信部34では渡された計測データを送受信シーケンス制御部35の指示の下に無線部13の無線送信回路14にバッファフルの計測データを送り、無線送信回路14から一括して送信する。この際、制御部12はあらかじめ選択しておいた自無線端末より集計装置10に近い無線端末にデータ送信する。なお、自無線端末より集計装置10に近い無線端末を選択する構成については上述した公知のN×Nメッシュ無線通信方式で採用されているためここでの説明は省略する。
【0028】
なお、受信した複数の他無線端末からの計測データが所定のバッファ容量を超えた場合には、メモリ33の上記バッファ領域と異なるメモリ領域にバッファ容量を超えたバッファ単位分の計測データを一旦格納しておき、次回の送信タイミングまでに上記バッファ容量を超えたバッファ単位分の計測データをバッファ編集して送信バッファ(後述する)の上位に配置して次の送信タイミングで送信できるように制御する。
【0029】
間欠動作制御部20は、タイムカウント機能、すなわち計時機能を備えており、制御部12から計時すべき内容についての計時指示が随時与えられて計時が開始され、計時開始から例えばビーコンが受信された時点で制御部12から間欠動作制御部20に計数停止を指示してそれまでに計数した経過時間、または、計測データを受信してから自端末の計測開始に至った時点で制御部12から間欠動作制御部20に計数停止を指示して、それまでに計数した経過時間を制御部12や計測部19に通知する。ただし、本実施形態の集計装置10または他の無線端末との時刻合わせ機能は有さない。
【0030】
図3は、本発明の実施形態に係る無線端末の転送時における転送所要時間の更新例を説明する図である。
図3においては、集計装置10にデータ転送する無線端末として、
図1に示した無線端末のうち、無線端末1、無線端末2および無線端末5がデータ転送に関与したとして説明する。なお、無線端末1は無線端末ID“01”を有し、無線端末2は無線端末ID“02”を有し、無線端末5は無線端末ID“05”を有するものとする。
【0031】
図3の説明では、
図1を適宜参照する。
図3において、最初に無線端末1が計測を実行し、計測結果の送信を開始する。
図3の最上位に示すように、無線端末1が送信するデータには、端末ID“01”と転送所要時間“02”(単位:秒)と計測データとが送信フォーマットに納められて送信される。なお転送所要時間は、計測終了してから送信先の無線端末のビーコンを受信して計測データの送信を開始するまでに要する時間と定義される。無線端末1では無線端末2からのビーコンを受信して計測データの送信を開始するまでに2秒かかったとして転送所要時間を02[秒]に設定している。
【0032】
無線端末2は、無線端末1が送信した計測データの受信を基点に計時を開始し、無線端末2が、自身における計測対象を計測するまでに要した時間“10”(秒)を得た時点で計時を停止し、自身の計測データを得た時点を基点に再度計時を開始し、ビーコンを受信した時点で再度計時を停止し、無線端末5からのビーコンを受信するまでに要した時間“01”(秒)を上記のタイムカウント機能を有する間欠動作制御部20から得て、計測データの送信タイミングで無線端末1から受信した端末ID“01”の転送所要時間を“13”(秒)に更新するとともに、自身の端末ID“02”と転送所要時間“01”(秒)と計測データを送信フォーマットに付加して送信する(
図3の上から2段目参照)。
【0033】
同様に、無線端末5では、無線端末2が送信した計測データの受信を基点に計時を開始し、無線端末5が自身における計測対象を計測するまでに要した時間“20”(秒)を得た時点で計時を停止し、自身の計測データを得た時点を基点に再度計時を開始し、集計装置10からビーコンを受信した時点で再度計時を停止し、集計装置10からのビーコンを受信するまでに要した時間“01”(秒)を上記のタイムカウント機能を有する間欠動作制御部20から得て、無線端末ID“01”の転送所要時間は34[秒]に更新され、無線端末ID“02”の転送所要時間は22[秒]に更新するとともに、自身の計測に係る端末ID“05”と転送所要時間“01”(秒)と計測データとを送信フォーマットに付加して集計装置10に送信する。集計装置10は、このようにして無線端末5から送信された、
図3の上から3段目に示される送信フォーマットを受信する。この送信フォーマットには、無線端末1および無線端末2の各端末ID、更新された転送所要時間および計測データが、また無線端末5の端末ID、転送所要時間および計測データが、それぞれ記録されている。
【0034】
なお、転送所要時間および計測データを受信してから自端末が計測開始に至るまでの経過時間は、上述したように、計数が必要になった時点で制御部12からタイムカウント機能を有する間欠動作制御部20に計数すべき内容と計数指示を随時与えて計時が開始され、計時開始から例えばビーコンが受信された時点で制御部12から間欠動作制御部20に計数停止を指示してそれまでに計数した経過時間、または、計測データを受信してから自端末が計測開始に至った時点で制御部12から間欠動作制御部20に計数停止を指示してそれまでに計数した経過時間を、間欠動作制御部20から取得することができる。
【0035】
図4は、メッシュ無線通信方式におけるハンドシェイク手順を説明する図であり、本実施形態でもこのハンドシェイク手順を用いて無線端末間の送受信シーケンスを進めるものである。本実施形態におけるハンドシェイク手順は、
図2に示した無線端末11の制御部12内に設けられている送受信シーケンス制御部35により実行される。
【0036】
図4において計測データの送信元の無線端末Aは、まずビーコン要求パケットを送信する。集計装置10は、常にビーコン要求待ちの状態にあり、或る無線端末からビーコン要求があれば即座にビーコンを送信する。本例の場合、集計装置10までビーコン要求の電波が届かなかったため、集計装置10はビーコンを出さなかったものとする。
【0037】
いま無線端末Aは、計測処理を終了した後に計測データを送信するために、ビーコン要求パケットを送信した後は他の無線端末から一定周期で送信されるビーコンが到達するのをひたすら待つ、最大で10秒間待つ、状態を続けている。つまり他の無線端末は通常受信状態に無いためビーコン要求パケットが無視され、即にはビーコンを送信する状態にないからである。無線端末Bは定周期でビーコンを送信しており、ビーコンには無線端末Bから集計装置10までの距離情報が含まれている。無線端末Bからのビーコンを受信した無線端末Aは、ビーコン内に含まれる距離情報と自端末から集計装置10までの距離を比較し、自端末より無線端末Bの方が集計装置10に近ければ無線端末B宛に接続リクエストパケットを送信する。
【0038】
接続リクエストパケットを受信した無線端末Bは、計測データ受信可能であれば接続許可パケットを返送する。接続許可パケットを受信した無線端末Aは、計測データを送信し、無線端末Bからの肯定応答をもって、一連のデータ転送処理シーケンスを終了する。仮に無線端末Aが無線端末Bに代えて集計装置10からのビーコンを受信した場合も、以降の処理は同様であるため、その説明を省略する。
【0039】
ここで、各無線端末が送信するビーコンの周期を5秒とすれば、ビーコン待ちのタイムアウト時間は10秒程度に設定する必要がある。複数の無線端末がビーコンを出すが、本発明の実施形態に係るメッシュ無線通信ネットワークシステムもこのハンドシェイク手順を採用していることから、平均すればビーコン受信までに2.5秒程度のビーコン待ちを継続することになり、転送所要時間を1秒精度で求めるためにはビーコン待ち時間を考慮する必要がある。このため
図6に示す処理フローでは、ステップS2に「所要時間+5秒」としてビーコン待ち時間に配慮している。
【0040】
なお転送所要時間は送信先からの接続許可パケットを受信した時点で確定する。ビーコンを受信しても、集計装置10までの距離が自分より遠い無線端末からのビーコンであれば、ビーコン待ちが継続されることになる。また接続リクエストを送信しても接続許可パケットが受信できなければ、他の無線端末からのビーコンを待つ動作に復帰することになる。
【0041】
このように小型・省電力・低価格のメッシュ無線通信ネットワークシステムの特性を活かしつつ本発明の実施形態では、計測データを一元管理する集計装置が各無線端末に基準時刻を持たせることなく各無線端末の正確な計測時刻を知ることできる。
【0042】
図5は、本発明の実施形態に係る無線端末間の通信シーケンスの一例を示す図である。
図5に示した例は、
図1において示した、無線端末1を発信元として、計測データが無線端末2、無線端末5を経由して集計装置10に転送されるケースについて説明するものである。
【0043】
図5において無線端末1は、自端末で取得した計測データを送信するのにビーコン待ち時間として2秒を要して無線端末2に送信する。無線端末2は、定周期計測タイミング待ち時間に10秒を要し、さらに送信するのにビーコン待ち時間として1秒を要して計測データを無線端末5に送信する。次に無線端末5は、定周期計測タイミング待ち時間に20秒を要し、さらに送信するのにビーコン待ち時間として1秒を要して計測データを集計装置10に送信する。
【0044】
図5には図示していないが、
図3で説明したように無線端末2及び無線端末5から計測データを送信する際には、無線端末2及び無線端末5より前段の無線端末における転送所要時間を更新して計測データを送信する。その結果、基準時刻を備えた集計装置10では、受信した各無線端末の更新に要した時間を基準時刻から減算することで計測を行った各無線端末の計測時間を正確に算出することが可能となる。
【0045】
なお
図5に示す黒丸は計測タイミングを表し、細中括弧は定周期計測タイミング待ち時間を表し、太中括弧はビーコン待ち時間を表し、区切り線はビーコン送信タイミングを表している。また太矢視線は転送所要時間が更新された計測データの転送を表している。
【0046】
図6は、本発明の実施形態に係るメッシュ無線通信ネットワークシステムの各無線端末の動作処理フローを示す図である。本発明の実施形態に係る無線端末は、
図4に示すハンドシェイク手順を採用して通信を確立するものであることは上述したとおりなので、
図4を適宜参照する。したがって各無線端末の動作の基点に「スリープ」を選ぶことにする。ステップS1において、或る無線端末のスリープが5秒経過したかをチェックする。ここで5秒を基準にするのは、各無線端末のビーコンの送信が一例として5秒周期で実行されるからである。そこで5秒経過していなければ、ふたたびスリープに戻るが、5秒経過していれば、ステップS2に進む。ステップS2において、ビーコン送信周期である5秒に所要時間を加算する処理を行ってステップS3に進む。
【0047】
ステップS3においては、1分経過したかをチェックする。ここで1分を基準にするのは、各無線端末における計測周期が一例として1分間隔で実行されるからである。そこで1分経過していなければ、ステップS4に進み、ステップS4において、ビーコン送信を実行する。ビーコン送信によりデータ受信の準備が整っていることを他無線端末に通知することになる。
【0048】
次いで、ステップS5では、他無線端末からの接続リクエストが有るか判定する。接続リクエストがなければ、処理スタート時のスリープに戻る。接続リクエストが有れば、ステップS6に進み、ステップS6において計測データの受信処理を実行してステップS7に進む。
【0049】
ステップS7においては、計測データの受信に伴って計測データバッファの編集処理を実行する。計測データバッファの編集処理は、
図3の上から2番目又は3番目に示した処理のいずれかを実行することに当たる。すなわち、他無線端末の転送所要間を更新し且つ自無線端末の転送所要時間と計測データを送信フォーマットの所定の領域に納める。当該編集処理を終了したら、ステップS8に進み、ステップS8においてバッファフルかを判定する。バッファフルでなければ、処理スタート時のスリープに戻る。またバッファフルであればステップS9に進み、ステップS9において送信のためのビーコン待ちを実行する。
【0050】
ステップS9におけるビーコン待ちでビーコンが受信できたら、ステップS10に進み、ステップS10において次送信タイミングを得るための所要時間を更新した後、ステップS11においてバッファフルになったデータを一括してデータ送信を実行し、その後、処理スタート時のスリープに戻る。ここで“次送信タイミングを得るための所要時間”とは、
図5の通信シーケンスにおける“定周期計測タイミング待ち時間”に相当する。
【0051】
一方、ステップS9におけるビーコン待ちでビーコンが受信できず、タイムアウトになったら、ステップS12に進み、ステップS12において次送信タイミングを得るための所要時間を更新した後、処理スタート時のスリープに戻る。
【0052】
また上記したステップS3において、1分経過していれば、ステップS13に進む。ステップS13において、自無線端末における計測対象9についての計測を実施する。次いでステップS14に進み、計測データバッファの編集処理を実行する。計測データバッファの編集処理は、自無線端末における計測終了時点で計測データバッファに保持された計測結果を束ねて一括して送信できるようにすることである。そして自無線端末の計測終了時点で編集された計測データバッファに保持された計測データをデータ送信部34を介して無線部13の無線送信回路14に送り、無線送信回路14からデータを束ねて一括して送信できるようにステップS9に進み、ビーコン待ちを実行する。ビーコン待ち処理以降のステップ(ステップS9〜S12)については上述したのでここでは説明を省略することにする。
【符号の説明】
【0053】
1〜7 無線端末
9 計測対象
10 集計装置
11 無線端末
12 制御部
13 無線部
14 無線送信回路
15 無線受信回路
16 切り替え部
17 アンテナ
18 直流電源
19 計測部
20 間欠動作制御部(タイムカウント機能)
32 メモリ制御部
33 メモリ
34 データ送信部
35 送受信シーケンス制御部
36 データ受信部