【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 〔販売日〕 平成24年11月20日 〔販売した場所〕 http://www.amazon.co.jp/%E3%80%90Amazon%E9%99%90%E5%AE%9A%E3%83%A2%E3%83%87%E3%83%AB%E3%80%91YAMAHA−%E3%83%95%E3%83%AD%E3%83%B3%E3%83%88%E3%82%B5%E3%83%A9%E3%82%A6%E3%83%B3%E3%83%89%E3%82%B7%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%A0−YAS−201−%E3%83%96%E3%83%A9%E3%83%83%E3%82%AF−%E3%83%AF%E3%82%A4%E3%83%A4%E3%83%AC%E3%82%B9%E3%82%B5%E3%83%96%E3%82%A6%E3%83%BC%E3%83%95%E3%82%A1%E3%83%BC%E4%BB%98/dp/B009PSVMJG/ 〔公開者〕 ヤマハ株式会社
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記左横エレメントおよび左ショートスタブで構成される左アンテナエレメントと、前記右横エレメントおよび右ショートスタブで構成される右アンテナエレメントとが、非対称である請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のアンテナ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のアンテナは、地板上に円板状のアンテナ素子を設け、アンテナ素子の端部と地板とを接続するショートスタブを複数設けたものである。アンテナ素子を円板状にしたことにより、低姿勢且つ広帯域にすることができ、ショートスタブの長さを調節することにより共振周波数の変更を可能にしたものである。
【0005】
しかし、特許文献1のアンテナは、地板、アンテナ素子および側壁が立体的に設けられているため製造が容易でなく、且つ、このアンテナを納める筐体に高さ方向の収容スペースが必要になる。また、地板をアンテナ素子に比べて十分に大きくとる必要があるため、小型化には限界があった。
【0006】
この発明は、平面状に形成され、広帯域で且つ放射効率の良好なアンテナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のアンテナは、アンテナエレメントが形成される側の辺である上辺、および該上辺を挟む左辺および右辺を有するグラウンドパターンと、前記上辺から縦方向に形成され頂部で左右の分岐を有する縦エレメントと、前記縦エレメントの左側に形成され、前記縦エレメントの前記左分岐に接続された左横エレメントと、前記縦エレメントの右側に形成され、前記縦エレメントの前記右分岐に接続された右横エレメントと、一端が前記左横エレメントに接続され他端が前記グラウンドパターンに接続される左ショートスタブと、一端が前記右横エレメントに接続され他端が前記グラウンドパターンに接続される右ショートスタブと、が平面上に形成されたアンテナであって、前記左右の横エレメントは、前記縦エレメントの前記頂部から前記グラウンドパターン方向の長さが、該アンテナの共振波長の1/16以上、1/6以下の平板状であり、前記左ショートスタブは、前記グラウンドパターンの前記上辺の左端に接続され、前記右ショートスタブは、前記グラウンドパターンの前記上辺の右端に接続されていることを特徴とする。
【0008】
また、左右の横エレメントの縦横比率を、2倍よりも小さくしてもよい。
【0009】
前記左右のショートスタブは、前記左右の横エレメントから前記上辺の左右端に至る間、蛇行するように形成されていてもよい。
【0010】
前記左横エレメントおよび左ショートスタブで構成される左アンテナエレメントと、前記右横エレメントおよび右ショートスタブで構成される右アンテナエレメントとが、非対称であってもよい。
【0011】
前記左右の横エレメントに挿入されたコンデンサ、または、前記ショートスタブに挿入されたインダクタをさらに設けてもよい。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、広帯域且つ高効率の平面状アンテナを実現することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図面を参照してこの発明の実施形態であるアンテナについて説明する。
図1はこの発明の実施形態であるアンテナ1の平面構造を示す図である。また
図2はアンテナ1の電流密度分布を示す図である。アンテナ1は、誘電体の回路基板100上に貼付された銅箔をエッチング等でパターン形成することによって作成された平面状のパターンアンテナである。回路基板100は、たとえば、ガラスエポキシFR4(εr=4.7)の1mm厚のもの(波長短縮率が60%〜70%)を用いている。
【0015】
以下の説明では、図面における方向(上下左右)をそのままパターンアンテナ1の方向として用いる。また、パターンアンテナ1の指向特性を表すための座標軸を
図2に示す矢印のように設定する。すなわち、図の右から左方向にX軸、図の下から上方向にY軸、図の表面から裏面方向にZ軸を設定する。
【0016】
グラウンドパターン101は、誘電体基板100の表面の全幅にわたって略長方形に生成される。グラウンドパターン101の上辺中央に給電点10が設けられ、給電点10から上方に縦エレメント11が取り出される。縦エレメント11は、給電点10から真っ直ぐ上行し、上端で左右の分岐線路110L、110Rに分岐する。左分岐線路110Lには左側のアンテナエレメント12Lが接続され、接続部11Rには右側のアンテナエレメント12Rが接続される。これにより、アンテナ1は略T型アンテナの形状をなす。左右のアンテナエレメント12L,Rは、縦エレメント11を軸として対称であるため、以下、左側のアンテナエレメント12Lについて説明する。
【0017】
縦エレメント11の左分岐線路110Lには、左横エレメント13Lが成形される。左横エレメント13Lは、縦エレメント11の長さの略85%の高さと55%の幅、若しくは、縦エレメント11の幅の略17倍の高さと11倍の幅を有する平板状であり、比較的大きな静電容量を有する。このように、縦エレメント11の先端に大きな静電容量を有するエレメントが接続されているため、アンテナ1は、容量装荷(Capacity Hat)アンテナとなり、エレメント長に比して共振周波数を低く設定することができる。
【0018】
なお、アンテナの構造的に述べると、横エレメント13は、分岐線路110から上辺に沿って縦エレメント11に垂直に延びる線状の部分を言い、その下に続く四角い部分は容量装荷のための平面であるが、以下の説明では説明の簡略のためにこれら全体を横エレメント13と呼ぶ。横エレメント13は、一般的に略長方形に形成されるが、その短辺と長辺の比は、1:2よりも小さく(正方形に近く)すれば、インダクタンス成分よりもキャパシタンス成分を十分に大きくすることができる。なお、横エレメント13の装荷容量値は、この幅広のパターンにスリットを設けることでも、その値を調整することが可能である。
【0019】
さらに、左横エレメント13Lの左辺下端から誘電体基板100の左上端に向けて左ショートスタブ14Lが形成されている。左ショートスタブ14Lは、上下に蛇行しながら左進し、グラウンドパターン101の左上端の接続点102Lにおいて、グラウンドパターン101に接続される。
図1の左ショートスタブ14Lは、左横エレメント13Lから、左向きに取り出され、蛇行(上行および下行)を2回繰り返してグラウンドパターン101に接続されるが、蛇行の回数は任意である。また、本実施形態では、左ショートスタブ14Lは、徐々にパターン幅が狭くなるように形成されているが、パターン幅も任意である。アンテナ1の目的とする共振周波数(波長)にあわせた電気長および幅に調整されればよい。
【0020】
左ショートスタブ14Lの左端の下行部140Lの左辺は、グラウンドパターン101の左辺103Lと一致しており、給電点10から左方向を観察した場合に、ショートスタブ14Lの下行部140Lとグラウンドパターン101の左辺103LとでT型アンテナに似た形状をなしている。
図2に示すように、このT型アンテナ類似形状の部分の電流密度が高く、本アンテナ1の電磁波輻射に大きく寄与していることが判る。
【0021】
なお、ショートスタブ14を、徐々に幅を狭めながら横エレメント13から接続点102に到達させたことにより、グラウンドパターン101のサイズ変更に対して特性がクリティカルでなくなることが、実験で判明している。
【0022】
以上は左側のアンテナエレメント12Lについて説明したが、右側のアンテナエレメント12Rは、左右が反転するのみで左側アンテナエレメント12Lと同形状であるため説明は省略する。
【0023】
ここで
図1のアンテナ形状を決定するために、種々の形状で特性をシミュレーションした。まず、
図2に示すように、横エレメント13の縦エレメント11に並行な方向の長さLを種々に変化させてその特性を調べた。長さの単位を縦エレメント11の幅wとする。Lが5w,11w,15w,17wおよび19wの5種類のアンテナについてリターンロス特性および放射抵抗値をシミュレーションした。
図3(A)は、リターンロス特性を示す図である。
図3(B)は、インピーダンス特性を示すスミスチャートである。図示のように、Lの長短による特性の変化は敏感である。Lが大きくなるにつれて共振周波数が下がってゆく。共振周波数でのリターンロスはL=17wのときが最良であり、約−45dBである。また、L=15w〜19wの範囲内であれば、リターンロスが−15dB以下で良好な特性を示していると言える。また、Lの長短によりインピーダンス(放射抵抗値)が変化し、Lが大きいほどインピーダンスが小さくなる。
【0024】
ここで、このアンテナの共振周波数を2.45GHzとし、縦エレメント11の幅wを0.5mmとしてLを共振波長λを用いて表す。w=0.5mmに基づき、15w=7.5mm、19w=9.5mmとなる。電波の真空伝搬速度c=3.00×10^8m/sに基づき、共振波長はλ=(3.00×10^8/2.45×10^9)×1000=122mmとなる。これらの値を適用すれば、Lの最小値は15w≒λ/16、最大値は19w≒λ/13と表される。
【0025】
しかし、アンテナ上では、回路基板100の誘電率によって波長が短縮される。回路基板100の比誘電率はεr=4.7であり、これに基づいて回路基板100の波長短縮率(速度係数)を算出すると、波長短縮率は0.46になる。しかし、アンテナパターンは回路基板100の表面に形成されているため、アンテナパターン上での波長短縮率は回路基板100の波長短縮率と空気中の波長短縮率(=1)の間のいずれかの値をとる。一般的には、中間的な0.7〜0.6程度の値をとると考えられる。
【0026】
したがって、Lの最大範囲は、下限値は、最大の波長短縮率(=1)を適用した波長λ=122mmを用いて、15w≒λ/16と表され、上限値は、最小の波長短縮率(=0.46)を適用した波長λ=122×0.46≒56mmを用いて、19w≒λ/6と表される。したがって、横エレメント13の長さLをλ/16〜λ/6の範囲内に設定すれば、リターンロスの少ない良好な特性が期待できると考えられる。
【0027】
次に、
図4に示すように、横エレメント13の縦エレメント11に垂直な方向の長さDを種々に変化させてその特性を調べた。Dが3w,7w,9wおよび11wのアンテナについてリターンロス特性および放射抵抗値をシミュレーションした。
図5(A)はリターンロス特性を示す図である。
図5(B)はインピーダンス特性を示すスミスチャートである。Dの変化により共振周波数は若干変化するが、リターンロスは全域にわたって−40dB以下の良好な特性を維持している。また、Dを大きくすることで誘導性インピーダンスが微増しているものの、Dの変化によるインピーダンス特性の変化は小さい。このことより、Dを増減することにより共振周波数を微調整することができることが解る。
【0028】
さらに、
図6に示すように、ショートスタブ14の幅Wを、2w,3w,4wに変化させてその特性を調べた。
図7(A)はリターンロス特性を示す図である。
図7(B)はインピーダンス特性を示すスミスチャートである。Wの変化により共振周波数は若干変化するが、リターンロスは全域にわたって−40dB以下の良好な特性を維持している。また、Wを大きくすることで容量性インピーダンスが微減するとともに誘導性インピーダンスが微増しているものの、Wの変化によるインピーダンス特性の変化は大きくない。このことより、Wを増減することにより、共振周波数を微調整することができることが解る。
【0029】
このように、横エレメント13の縦エレメント11に並行な方向の長さLが、アンテナ1の特性に及ぼす影響が大きいことが判明した。また、横エレメント13の縦エレメント11に垂直な方向の長さDによって共振周波数を微調整できるが、Dを大きくすると誘導性インピーダンスが増加することが判明した。そこで、L:Dを2:1〜1:2程度の範囲にすれば、よりよくアンテナ1に容量装荷特性を持たせることができる。
【0030】
以上のシミュレーションに基づきアンテナ1を適切な寸法で形成して、共振周波数を目的周波数である2.45GHz付近に設定し、2.45GHzの高周波信号を給電すると、
図8に示すような電流密度分布を示す。この図で、アンテナ1のパターンのうち濃度が濃い部分が電流密度が高い箇所であり、濃度が薄い部分が電流密度が低い箇所である。この図によれば、電流密度が高くなっているのは、縦エレメント11および左右の横エレメント13L,Rの縦エレメント11側、さらに、左右のショートスタブ14L,Rの下行部140L,Rを含む端部である。
【0031】
このように、アンテナ1の電磁界放射は、縦エレメント11、左右の横エレメント13L,Rの一部、および、左右のショートスタブ14から生じるため、アンテナの実効面積は十分に確保され、サイズに対して大きなアンテナゲインを得ることができる。
【0032】
アンテナエレメント12L,Rの端部がグラウンドパターン101の左右の接続点102L,Rに接続されているため、アンテナ1の励振電流は、グラウンドパターン101全体へ大きく広がらず、グラウンドパターン101の上辺に集中して流れる。これにより、グラウンド面積がアンテナの放射効率に及ぼす影響が小さくなり、基板サイズに応じたグラウンドパターン101の調整が容易になる。
【0033】
図9は、2.45GHz近辺の周波数に共振させたアンテナ1の放射効率を示す図である。この図によれば、2.4〜2.5GHzの帯域において放射効率が74%以上であり、λ/2ダイポールアンテナと同等の利得を得ることができている。このように、アンテナ1は、目的の2.45GHz帯を含む広い周波数帯で効率よく電磁界が放射されていることが判る。
【0034】
図10は、アンテナ1の給電点10における|S11|特性(電圧反射特性)を示す図である。この図に示すように、略2.23〜2.60GHz間で電圧反射特性が−10dB以下になっており、目的の2.45GHz帯を含む300MHzを超える広い帯域でマッチングしていることが判る。
【0035】
また、上記構造のアンテナ1は、
図11〜
図13に示す指向特性を有する。測定周波数は2.45GHzである。
図11〜
図13において50が水平偏波成分のゲイン曲線、51が垂直偏波成分のゲイン曲線である。ゲイン値は、アイソトロピックアンテナを基準とする値(dBi)で示している。
図11は、
図1に示したXY平面における2.45GHzの指向特性を示す図である。XY平面においては、水平偏波成分が全方位(特にX軸方向)に高いゲインを示しており、この配置では特に水平偏波成分を良好に放射していることが判る。
図12は、XZ平面における2.45GHzの指向特性を示す図である。X−Z平面においては、垂直偏波成分が全方位にほぼ0dBに近い極めて高いゲインを示しており、この配置すなわち縦エレメント11を大地に対して垂直とした場合には、特に垂直偏波成分を無指向性で良好に放射していることが判る。また、
図13は、YZ平面における2.45GHzの指向特性を示す図である。YZ平面においては、垂直偏波成分は全方位にほぼ高いゲインを示しているとともに、水平偏波成分は、8の字特性の双指向性の特性を有している。この最大ゲインは1.8dBiであり、ほぼダイポールアンテナと同等のゲインが得られていることが判る。
【0036】
以上の実施形態は、
図1に示したように、左右対称にアンテナエレメント12L,Rを配置し、ショートスタブ14L,Rを上下に蛇行させたものであるが、本発明のアンテナはこの形状に限定されるものではない。たとえば、
図14(A)に示すように、左右のアンテナエレメント12L,Rを非対称にしてもよい。左右のバランスを変更することにより、
図11〜
図13に示した指向特性を任意に変更することが可能になる。
図14(A)では、縦エレメント11を左にずらせて左右のアンテナエレメント12L,Rの横方向の長さを変えているが、非対称の形態はこれに限定されない。
【0037】
また、
図14(B)に示すように、幅広で静電容量を持たせた横エレメント13L,Rに加えて(または代えて)、チップコンデンサ20L,Rを線路に挿入してもよい。アンテナエレメント12L,Rの静電容量を大きくすることにより、共振周波数を低いほうにシフトすることができる。また、ショートスタブ14L,Rにコイルなどのインダクタを挿入してもよい。さらに、横エレメント13L,Rにスリットを設けて静電容量およびインダクタンスを調整してもよい。
【0038】
また、
図14(C)に示すように、ショートスタブ14L,Rを左右に蛇行させながら下から上へ形成してもよい。このように蛇行の方向を変えることにより、アンテナの指向特性を変えることができる。ただし、どのように蛇行させても、ショートスタブ14L,Rの両端の下行部140L,Rがグラウンドパターン101の左右の辺と一致するようにする。
【0039】
なお、以上の実施形態では、縦エレメント11の幅wを0.5mmとしているが、適宜変更可能である。ただし、共振波長λよりも十分に短い長さ、たとえば1/100以下、であることが好ましい。また、縦エレメント11の長さ、および、ショートスタブの下行部140の長さは、10mm程度、すなわちλ/12〜λ/6程度にするのが好ましいが、コイルを追加するなどにより短縮することも可能である。
【0040】
なお、この実施形態では、誘電体の回路基板100の表面にパターンを形成したパターンアンテナについて説明したが、両面基板上に形成されるマイクロストリップを用いたパッチアンテナに本発明の構造を用いてもよく、チップアンテナに本発明の構造を用いてもよい。また、パターンアンテナの一部線路に、たとえば
図14(B)に示すように、チップ部品等のプリント配線パターン以外の部分を含んでいてもよい。また、上記実施形態のショートスタブ14をコイルに置き換えることも可能である。またさらに、アンテナを回路基板100上のパターンでなく、金属板とワイヤを用いて構成してもよい。
【0041】
また、本実施形態のアンテナ1は、送信用アンテナのみならず、受信用アンテナとしても使用可能である。