(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
それぞれ第1のビット数を有する輝度信号及び色差信号よりなり、第1のフレーム周波数を有する第1及び第2の映像信号をフレームメモリに書き込んで、前記フレームメモリより、前記第1のビット数を有する現在フレームの第1のフレーム信号と、前記第1のビット数の下位の1または複数ビットである下位ビットを除いた上位ビットよりなる第2のビット数を有し、前記現在フレームより1フレーム前の第2のフレーム信号とを読み出して、前記第1及び第2のフレーム信号を前記第1のフレーム周波数より高い第2のフレーム周波数に変換して出力するフレームレート変換部と、
前記第1のフレーム信号の輝度信号及び色差信号を第1のRGB信号に変換する第1のRGB変換部と、
前記第2のフレーム信号の最下位ビット側に前記第1のフレーム信号における前記下位ビットを配置して前記第1のビット数を有する合成データとし、前記合成データの輝度信号及び色差信号を第2のRGB信号に変換する第2のRGB変換部と、
前記第1のRGB信号と前記第2のRGB信号との差分値に応じて、前記第1のRGB信号の振幅値を補正するオーバードライブ処理部と、
を備えることを特徴とする映像信号処理装置。
それぞれ第1のビット数を有する輝度信号及び色差信号よりなり、第1のフレーム周波数を有する第1及び第2の映像信号をフレームメモリに書き込んで、前記フレームメモリより、前記第1のビット数を有する現在フレームの第1のフレーム信号と、前記第1のビット数の下位の1または複数ビットである下位ビットを除いた上位ビットよりなる第2のビット数を有し、前記現在フレームより1フレーム前の第2のフレーム信号とを読み出して、前記第1及び第2のフレーム信号を前記第1のフレーム周波数より高い第2のフレーム周波数に変換し、
前記第1のフレーム信号の輝度信号及び色差信号を第1のRGB信号に変換し、
前記第2のフレーム信号の最下位ビット側に前記第1のフレーム信号における前記下位ビットを配置して前記第1のビット数を有する合成データとし、
前記合成データの輝度信号及び色差信号を第2のRGB信号に変換し、
前記第1のRGB信号と前記第2のRGB信号との差分値に応じて前記第1のRGB信号の振幅値を補正することによりオーバードライブ処理する
ことを特徴とする映像信号処理方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、一実施形態の映像信号処理装置及び方法について、添付図面を参照して説明する。
図1において、フレームレート変換部10には、映像信号の実フレームを構成する画素データである実フレーム信号S0と、隣接する実フレーム間に内挿する補間フレームを構成する画素データである補間フレーム信号S0.5とが入力される。本実施形態では、実フレーム信号S0及び補間フレーム信号S0.5は、それぞれ、輝度信号Y及び色差信号Pb,Prよりなる。
【0014】
映像信号のフレーム周波数が60Hzであるとすると、実フレーム信号S0は、
図2の(a)に示すように、1/60秒間隔の実フレームF1,F2,F3…より構成される。補間フレーム信号S0.5は、
図2の(b)に示すように、1/60秒間隔の補間フレームF1.5,F2.5,F3.5…より構成される。
【0015】
補間フレーム信号S0.5は、フレームレート変換部10の前段に設けられている図示していない補間部において、少なくとも隣接する2つの実フレームの画素データに基づいて生成される。補間部は、例えば動き補償型フレーム補間によって補間フレーム信号S0.5を生成する。補間フレーム信号S0.5を生成する補間部の構成及び動作は特許文献1,2に記載されているようによく知られており、ここでは説明を省略することとする。
【0016】
本実施形態においては、実フレーム信号S0及び補間フレーム信号S0.5を構成する輝度信号Y及び色差信号Pb,Prを10ビットのデジタルデータとしている。輝度信号Y及び色差信号Pb,Prはいわゆる4:4:4の形式である。データ量を削減するために、色差信号Pb,Prのデータを間引いて、4:2:2の形式としてもよい。
【0017】
フレームレート変換部10は、フレームメモリとしてのDRAM(Dynamic Random Access Memory)11を有する。フレームレート変換部10は、実フレーム信号S0及び補間フレーム信号S0.5をDRAM11に書き込み、フレーム周波数60Hzの2倍の120Hzで実フレーム信号S0と補間フレーム信号S0.5とを交互に読み出すことにより、映像信号のフレーム周波数を120Hzに変換する。
【0018】
フレームレート変換部10より出力される映像信号は、
図2の(c)に示すように、1/120秒間隔で実フレームF1,F2,F3…と補間フレームF1.5,F2.5,F3.5…とが交互に配置された状態となる。
【0019】
フレームレート変換部10は、現在フレームを構成する画素データであるフレーム信号S10aと、フレーム信号S10aの1フレーム前のフレームを構成する画素データであるフレーム信号S10bとを出力する。
図2の(c)において、例えば、フレーム信号S10aが実フレームF2であれば、フレーム信号S10bは補間フレームF1.5であり、フレーム信号S10aが補間フレームF2.5であれば、フレーム信号S10bは実フレームF2である。
【0020】
実フレームにより構成された実フレーム信号S0を第1の映像信号とし、実フレーム信号S0の隣接する実フレーム間に内挿する補間フレームにより構成された補間フレーム信号S0.5を第2の映像信号とすれば、フレームレート変換部10の動作は次のとおりである。
【0021】
フレームレート変換部10は、DRAM11より実フレーム信号S0と補間フレーム信号S0.5とを交互に読み出してフレーム周波数を変換する。フレームレート変換部10は、実フレーム信号S0をフレーム信号S10a(第1のフレーム信号)としているときには、補間フレーム信号S0.5をフレーム信号S10b(第2のフレーム信号)とし、補間フレーム信号S0.5をフレーム信号S10aとしているときには、実フレーム信号S0をフレーム信号S10bとする。
【0022】
フレームレート変換部10は、フレーム周波数を変換後の隣接する2フレームのフレーム信号S10a,S10bを出力する。実フレーム信号S0及び補間フレーム信号S0.5が10ビットであるので、フレームレート変換部10はそれぞれ10ビットのフレーム信号S10a,S10bを出力するのが一般的である。
【0023】
本実施形態においては、フレームレート変換部10は、DRAM11より、実フレーム信号S0または補間フレーム信号S0.5の10ビットをフレーム信号S10aとして読み出す。一方、フレームレート変換部10は、DRAM11より、実フレーム信号S0または補間フレーム信号S0.5の10ビットのうち、下位の例えば2ビットを除いた8ビットをフレーム信号S10bとして読み出す。
【0024】
本実施形態では、実フレーム信号S0及び補間フレーム信号S0.5が10ビットであるので、フレーム信号S10bを上位8ビットとしている。下位の何ビットを除くかは、実フレーム信号S0及び補間フレーム信号S0.5のビット数に応じて適宜設定すればよい。下位の1ビットのみを除いてもよい。
【0025】
10ビットのフレーム信号S10aは、RGB変換部21に入力される。8ビットのフレーム信号S10bは、RGB変換部22に入力される。RGB変換部22には、フレーム信号S10aの下位2ビットも入力される。
【0026】
RGB変換部22は、
図3に概念的に示すように、8ビットのフレーム信号S10bの最下位ビット(LSB)側に、ハッチングを付して示すフレーム信号S10aの下位2ビットを配置して、10ビットのデータとする。なお、
図3において、それぞれの矩形はデジタルデータの1つのビットを示し、MSBは最上位ビットである。
【0027】
フレーム信号S10bをDRAM11より8ビットで読み出すことにより、DRAM11にアクセスする際のデータレートが低減する。よって、フレーム信号S10bをDRAM11より読み出す際の負荷が低減され、信号処理が簡略化される。
【0028】
RGB変換部21は、入力されたフレーム信号S10aの輝度信号Y及び色差信号Pb,Prを赤色(R),緑色(G),青色(B)信号に変換する。RGB変換部21より出力されるR,G,B信号をRGB信号S21とする。
図1では簡略化のため、RGB変換部21より出力されるRGB信号S21の信号線を1本としている。
【0029】
RGB変換部22は、8ビットのフレーム信号S10bとフレーム信号S10aの下位2ビットとを合成した10ビットの合成データの輝度信号Y及び色差信号Pb,PrをR,G,B信号に変換する。RGB変換部22より出力されるR,G,B信号をRGB信号S22とする。同様に、
図1では簡略化のため、RGB変換部22より出力されるRGB信号S22の信号線を1本としている。
【0030】
RGB信号S21,S22は、オーバードライブ処理部50に入力される。オーバードライブ処理部50は、オーバードライブ係数算出部30と乗算器40とを有する。オーバードライブ係数算出部30には、RGB信号S21,S22が入力される。乗算器40には、RGB信号S21が入力される。
【0031】
オーバードライブ係数算出部30は、RGB信号S21とRGB信号S22との差分値の大きさに応じた所定の係数を算出し、係数信号S30を出力する。オーバードライブ係数算出部30は、R信号に対する係数と、G信号に対する係数と、B信号に対する係数とをそれぞれ生成する。係数信号S30は、R,G,B信号それぞれに対する係数を示す。オーバードライブ係数算出部30は、RGB信号S21とRGB信号S22との差分値が大きいほど係数を大きくすることが好ましい。
【0032】
係数信号S30は乗算器40に入力される。乗算器40は、RGB信号S21に係数信号S30が示すR,G,B信号の係数を乗算して、オーバードライブ処理が施されたRGB信号S50を出力する。
図1では簡略化のため、乗算器40を1つとして図示しているが、実際には、R,G,B信号それぞれに係数を乗算する3つの乗算器が必要である。
【0033】
以上のように、オーバードライブ処理部50は、現在フレームのRGB信号S21と1フレーム前のRGB信号S22との差分値に応じて、現在フレームのRGB信号S21の振幅値を補正したRGB信号S50を出力する。RGB信号S50は、図示していない液晶表示装置の駆動部に供給されて映像表示される。
【0034】
図4を用いて、オーバードライブ処理部50によってオーバードライブ処理が施されたRGB信号S50に基づいて、液晶表示装置がオーバードライブ駆動される様子の一例を説明する。
図4において、(a)はオーバードライブ駆動されていない状態の電圧・光応答波形、(b)はオーバードライブ駆動された状態の電圧・光応答波形を示す。
【0035】
図4の(a)に示すように、オーバードライブ駆動されていない状態では、現在フレームと1フレーム前のフレームとで、電圧(画素レベル)に所定の差分値が発生しても、液晶の応答速度が遅いため、光応答特性はなだらかに変化する。よって、動画ぼやけが発生する。
【0036】
一方、
図4の(b)に示すように、オーバードライブ駆動された状態では、現在フレームと1フレーム前のフレームとの画素レベルの差分値に応じて電圧が増減されるように補正されることから、光応答特性は比較的急峻に変化する。よって、動画ぼやけが低減する。
【0037】
図1においては、現在フレームのRGB信号S21と1フレーム前のRGB信号S22との差分値に応じて、現在フレームのRGB信号S21の振幅値を増減させる構成として、乗算器40によって現在フレームのRGB信号S21に係数を乗算するように構成したオーバードライブ処理部50を示している。オーバードライブ処理部の具体的な構成は、
図1に示すオーバードライブ処理部50に限定されるものではない。
【0038】
図5を用いて、他の構成のオーバードライブ処理部であるオーバードライブ処理部51について説明する。
図5において、RGB信号S21は減算器511と加算器513とに入力される。RGB信号S22は、減算器511に入力される。減算器511は、RGB信号S21よりRGB信号S22を減算する。減算器511の出力は、現在フレームのRGB信号S21と1フレーム前のRGB信号S22との差分値を示す。
【0039】
減算器511の出力は、乗算器512に入力される。乗算器512は、減算器511の出力に所定の係数kを乗算する。係数kは液晶の応答速度に応じて適宜設定すればよい。応答速度が比較的速い場合には小さい値に設定し、応答速度が比較的遅い場合には大きい値に設定する。加算器513は、RGB信号S21と乗算器512の出力とを加算して、オーバードライブ処理が施されたRGB信号S51を出力する。
【0040】
図5に示すオーバードライブ処理部51の動作を式で表すと、式(1)となる。
S51=S21+k(S21−S22) …(1)
【0041】
オーバードライブ処理部51は、現在フレームのRGB信号S21と1フレーム前のRGB信号S22との差分値に応じて、現在フレームのRGB信号S21に加算する付加成分を生成して、加算器513によって現在フレームのRGB信号S21に付加成分を加算する構成である。なお、
図5においても、実際には、減算器511,乗算器512,加算器513が3系統必要である。
【0042】
ここで、
図1の構成によって、オーバードライブ駆動に悪影響を与えることなく、映像信号がオーバードライブ駆動を必要とする状態であるときに的確に液晶表示装置をオーバードライブ駆動させることができる理由を説明する。
【0043】
上記の説明より分かるように、オーバードライブ駆動は、現在フレームのRGB信号S21の画素レベルと1フレーム前のRGB信号S22の画素レベルとの間に所定の差分値が発生した場合に必要となる処理である。映像信号が静止画像であれば、オーバードライブ駆動する必要はない。映像信号が静止画像であれば、実フレーム信号S0と補間フレーム信号S0.5の隣接する2フレームは同じデータである。
【0044】
映像信号が静止画像であれば、10ビットの実フレーム信号S0または補間フレーム信号S0.5の下位2ビットを除いた8ビットのフレーム信号S10bに対して、フレーム信号S10aの下位2ビットを配置した10ビットの合成データは、フレーム信号S10bの元となっている実フレーム信号S0または補間フレーム信号S0.5と全く同じとなる。
【0045】
従って、オーバードライブ処理部50,51において、現在フレームのRGB信号S21と1フレーム前のRGB信号S22との差分値は0となり、液晶表示装置をオーバードライブ駆動してしまうことはない。映像信号が静止画像のとき、
図1に示す本実施形態は、オーバードライブ駆動に悪影響を与えることがない。
【0046】
なお、単にDRAM11にアクセスする際のデータレートを低減させることを目的とするのであれば、同様にDRAM11より8ビットの輝度信号Y及び色差信号Pb,Prをフレーム信号S10bとして読み出し、RGB変換部22が8ビットのRGB信号S22に変換すればよい。この構成を比較例とする。
【0047】
しかしながら、比較例では、映像信号が静止画像であったとしても、10ビットのRGB信号S21と8ビットのRGB信号S22との間に差分値が生じて、オーバードライブ駆動してしまう。単にDRAM11にアクセスする際のデータレートを低減させる比較例では、オーバードライブ駆動の必要のない静止画像においてもオーバードライブ駆動してしまう。よって、比較例では、映像信号がオーバードライブ駆動を必要とする状態であるときに的確に液晶表示装置をオーバードライブ駆動させることはできない。
【0048】
映像信号が動画像であれば、厳密には、10ビットの実フレーム信号S0または補間フレーム信号S0.5の下位2ビットを除いた8ビットのフレーム信号S10bに対して、フレーム信号S10aの下位2ビットを配置した10ビットの合成データは、フレーム信号S10bの元となっている実フレーム信号S0または補間フレーム信号S0.5とは異なる場合が発生する。
【0049】
しかしながら、10ビットの合成データのうち下位2ビットのみ相違する可能性があるものの、上位8ビットは元の実フレーム信号S0または補間フレーム信号S0.5と同じである。従って、全体の10ビットの合成データとしては、十分に無視できる程度の相違である。
【0050】
以上により、本実施形態によれば、映像信号が静止画像であればオーバードライブ駆動させることはなく、映像信号が動画像であればオーバードライブ駆動させることができる。即ち、本実施形態によれば、映像信号がオーバードライブ駆動を必要とする状態であるときに的確に液晶表示装置をオーバードライブ駆動させることができる。
【0051】
以上説明した本実施形態においては、フレームレート変換部10に入力する映像信号を実フレーム信号S0及び補間フレーム信号S0.5とする構成について説明したが、フレームレート変換部10に入力する映像信号を右目用画像信号と左目用画像信号とよりなる立体映像信号としてもよい。
【0052】
右目用画像と左目用画像とに視差があれば、右目用画像信号と左目用画像信号とには差分値が発生し、オーバードライブ処理部50,51において立体映像信号に対してオーバードライブ処理が施されることになる。右目用画像と左目用画像とに視差がなければ、右目用画像信号と左目用画像信号との差分値は0となり、立体映像信号に対してオーバードライブ処理は施されない。
【0053】
本実施形態においては、フレームレート変換部10への入力映像信号が立体映像信号の場合、右目用画像と左目用画像とに視差がなければオーバードライブ駆動させることはなく、右目用画像と左目用画像とに視差があるときのみオーバードライブ駆動させることができる。入力映像信号が立体映像信号の場合でも、映像信号がオーバードライブ駆動を必要とする状態であるときに的確に液晶表示装置をオーバードライブ駆動させることができる。
【0054】
フレームレート変換部10に入力する映像信号が立体映像信号の場合には、フレームレート変換部10の動作は次のとおりである。立体映像信号における右目画像信号または左目画像信号の一方を第1の映像信号とし、右目画像信号または左目画像信号の他方を第2の映像信号とする。
【0055】
フレームレート変換部10は、DRAM11より第1の映像信号と第2の映像信号とを交互に読み出してフレーム周波数を変換する。フレームレート変換部10は、第1の映像信号をフレーム信号S10a(第1のフレーム信号)としているときには、第2の映像信号をフレーム信号S10b(第2のフレーム信号)とし、第2の映像信号をフレーム信号S10aとしているときには、第1の映像信号をフレーム信号S10bとする。
【0056】
本発明は以上説明した本実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。入力映像信号である輝度信号Y及び色差信号Pb,Prは10ビットに限定されない。
図1では、DRAM11をフレームメモリとしたが、DRAM以外のメモリでフレームメモリを構成してもよい。