(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載された技術は、シアン、マゼンタ、イエローの3色分の動作を繰り返すことによりフルカラーを表現するプリンタに対して適用される。
【0006】
従って、上記特許文献1に記載された技術を、ワンパス(カラー感熱紙の搬送が一度行われるだけ)でカラー発色を行うカラー印刷機には適用することはできなかった。
【0007】
すなわち、ワンパスでカラー発色を行うカラー印刷機では、サーマルヘッドの各発熱素子に対して各色に適した予熱をそれぞれ与えないと、画像の各1ドット目に対応したカラー発色の特性、つまり、カラー印刷の初期書き出しの特性に影響が及んでしまう。
【0008】
そこで、本発明は、上述した点を鑑みてなされたものであり、ワンパスによるカラー印刷であっても、画像の各1ドット目に対応したカラー発色の特性、つまり、カラー印刷の初期書き出しの特性を改善させることができるカラー印刷機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題を解決するためになされた請求項1に係る発明は、複数の発熱素子を有するサーマルヘッドに対してカラー感熱紙の搬送が一度行われるだけで前記カラー感熱紙をカラー発色させるカラー印刷機であって、前記カラー感熱紙は、基材と、前記カラー感熱紙の搬送時に前記サーマルヘッドが存在する上層側から第一発色層と第二発色層とが順番に前記基材に積層され、前記第一発色層と前記第二発色層とはそれぞれ異なる発色温度を持ち、前記上層側と対向した下層側にある前記第二発色層の発色温度は前記上層側にある前記第一発色層の発色温度よりも低温であり、且つ、前記下層側にある前記第二発色層を発色させるには前記上層側にある前記第一発色層よりも長時間の加熱を必要とし、前記カラー感熱紙をカラー発色させる開始前にて、当該カラー発色の対象である画像の1ドット目の各色に対応した予熱印加パルスを、前記サーマルヘッドの対応する各発熱素子にそれぞれ与え
、前記カラー感熱紙をカラー発色させる開始前における、各色に対応した予熱印加パルスの単位時間当たりのエネルギーの大小関係を各色で表す式が、前記第二発色層の単独色>前記第一発色層と前記第二発色層との複合色≧前記第一発色層の単独色であること、を特徴とする。
【0010】
【0011】
また、請求項
2に係る発明は、複数の発熱素子を有するサーマルヘッドに対してカラー感熱紙の搬送が一度行われるだけで前記カラー感熱紙をカラー発色させるカラー印刷機であって、前記カラー感熱紙は、基材と、前記カラー感熱紙の搬送時に前記サーマルヘッドが存在する上層側から第一発色層と第二発色層と第三発色層とが順番に前記基材に積層され、前記第一発色層と前記第二発色層と前記第三発色層とはそれぞれ異なる発色温度を持ち、前記上層側と対向した下層側にある前記第三発色層の発色温度は前記下層側と前記上層側の中間位置にある前記第二発色層の発色温度よりも低温であると共に前記中間位置にある前記第二発色層の発色温度は前記上層側にある前記第一発色層の発色温度よりも低温であり、且つ、前記下層側にある前記第三発色層を発色させるには前記中間位置にある前記第二発色層よりも長時間の加熱を必要とすると共に前記中間位置にある前記第二発色層を発色させるには前記上側層にある前記第一発色層よりも長時間の加熱を必要とし、
前記カラー感熱紙をカラー発色させる開始前にて、当該カラー発色の対象である画像の1ドット目の各色に対応した予熱印加パルスを、前記サーマルヘッドの対応する各発熱素子にそれぞれ与え
、前記カラー感熱紙をカラー発色させる開始前における、各色に対応した予熱印加パルスの単位時間当たりのエネルギーの大小関係を各色で表す式が、前記第三発色層の単独色≧前記第二発色層と前記第三発色層との複合色≧前記第二発色層の単独色≧前記第一発色層と前記第二発色層と前記第三発色層との複合色>前記第一発色層と前記第三発色層との複合色≧前記第一発色層と前記第二発色層との複合色≧前記第一発色層の単独色であること、を特徴とする。
【0012】
【0013】
また、請求項
3に係る発明は、請求項1
又は請求項
2に記載するカラー印刷機であって、前記サーマルヘッドの温度を検知するサーミスタを備え、前記サーミスタの検知温度が所定温度を超えたときは、前記サーマルヘッドの各発熱素子に対して予熱印加パルスをそれぞれ与えることを停止すること、を特徴とする。
【0014】
また、請求項
4に係る発明は、請求項1
又は請求項
2に記載するカラー印刷機であって、前記サーマルヘッドを内装させた筐体と、前記筐体内の環境温度を検知する温度測定装置を備え、前記温度測定装置の検知温度が所定温度を超えたときは、前記サーマルヘッドの各発熱素子に対して予熱印加パルスをそれぞれ与えることを停止すること、を特徴とする。
【0015】
また、請求項
5に係る発明は、請求項1
又は請求項
2に記載するカラー印刷機であって、前記カラー感熱紙の搬送速度が安定速度に達する前に、前記サーマルヘッドの各発熱素子に対して予熱印加パルスをそれぞれ与えることを停止すること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
すなわち、請求項1に係る発明であるカラー印刷機は、複数の発熱素子を有するサーマルヘッドに対して、カラー感熱紙の搬送が一度行われるだけ(ワンパス)で、カラー感熱紙をカラー発色させる。そのカラー感熱紙は、カラー感熱紙の搬送時にサーマルヘッドが存在する上層側から第一発色層と第二発色層とが順番に基材に積層されている。
【0017】
この点、第一発色層と第二発色層とは、それぞれ異なる発色温度を持つ。上層側と対向した下層側にある第二発色層の発色温度は、上層側にある第一発色層の発色温度よりも低温である。且つ、下層側にある第二発色層を発色させるには、上層側にある第一発色層よりも長時間の加熱を必要とする。
【0018】
さらに、カラー感熱紙をカラー発色させる開始前にて、当該カラー発色の対象である画像の1ドット目の各色に対応した予熱印加パルスが、サーマルヘッドの対応する各発熱素子にそれぞれ与えられる。これによって、当該カラー発色の対象である画像の各1ドット目に対応したサーマルヘッドの各発熱素子に対して各色に適した予熱がそれぞれ与えられる。
【0019】
従って、請求項1に係る発明であるカラー印刷機は、ワンパス(カラー感熱紙の搬送が一度行われるだけ)のカラー印刷であっても、画像の各1ドット目に対応したカラー発色の特性、つまり、カラー印刷の初期書き出しの特性を改善させることができる。
【0020】
また、請求項
1に係る発明であるカラー印刷機は、カラー感熱紙をカラー発色させる開始前における、各色に対応した予熱印加パルスの単位時間当たりのエネルギーの大小関係を各色で表す式が、以下の式となる。
第二発色層の単独色>第一発色層と第二発色層との複合色≧第一発色層の単独色
【0021】
従って、請求項
1に係る発明であるカラー印刷機は、ワンパス(カラー感熱紙の搬送が一度行われるだけ)のカラー印刷であっても、この関係式により、第二発色層の単独色、第一発色層と第二発色層との複合色、及び第一発色層の単独色について、画像の各1ドット目に対応したカラー発色の特性、つまり、カラー印刷の初期書き出しの特性を改善させることができる。
【0022】
また、請求項
2に係る発明であるカラー印刷機は、複数の発熱素子を有するサーマルヘッドに対して、カラー感熱紙の搬送が一度行われるだけ(ワンパス)で、カラー感熱紙をカラー発色させる。そのカラー感熱紙は、カラー感熱紙の搬送時にサーマルヘッドが存在する上層側から第一発色層と第二発色層と第三発色層とが順番に基材に積層されている。
【0023】
この点、第一発色層と第二発色層と第三発色層とは、それぞれ異なる発色温度を持つ。上層側と対向した下層側にある第三発色層の発色温度は、下層側と上層側の中間位置にある第二発色層の発色温度よりも低温である。と共に中間位置にある第二発色層の発色温度は、上層側にある第一発色層の発色温度よりも低温である。且つ、下層側にある第三発色層を発色させるには、中間位置にある第二発色層よりも長時間の加熱を必要とする。と共に中間位置にある第二発色層を発色させるには、上側層にある第一発色層よりも長時間の加熱を必要とする。
【0024】
さらに、カラー感熱紙をカラー発色させる開始前にて、当該カラー発色の対象である画像の1ドット目の各色に対応した予熱印加パルスが、サーマルヘッドの対応する各発熱素子にそれぞれ与えられる。これによって、当該カラー発色の対象である画像の各1ドット目に対応したサーマルヘッドの各発熱素子に対して各色に適した予熱がそれぞれ与えられる。
【0025】
従って、請求項
2に係る発明であるカラー印刷機は、ワンパス(カラー感熱紙の搬送が一度行われるだけ)のカラー印刷であっても、画像の各1ドット目に対応したカラー発色の特性、つまり、カラー印刷の初期書き出しの特性を改善させることができる。
【0026】
また、請求項
2に係る発明であるカラー印刷機は、カラー感熱紙をカラー発色させる開始前における、各色に対応した予熱印加パルスの単位時間当たりのエネルギーの大小関係を各色で表す式が、以下の式となる。
第三発色層の単独色≧第二発色層と第三発色層との複合色≧第二発色層の単独色≧第一発色層と第二発色層と第三発色層との複合色>第一発色層と第三発色層との複合色≧第一発色層と第二発色層との複合色≧第一発色層の単独色
【0027】
従って、請求項
2に係る発明であるカラー印刷機は、ワンパス(カラー感熱紙の搬送が一度行われるだけ)のカラー印刷であっても、この関係式により、第三発色層の単独色、第二発色層と第三発色層との複合色、第二発色層の単独色、第一発色層と第二発色層と第三発色層との複合色、第一発色層と第三発色層との複合色、第一発色層と第二発色層との複合色、第一発色層の単独色について、画像の各1ドット目に対応したカラー発色の特性、つまり、カラー印刷の初期書き出しの特性を改善させることができる。
【0028】
また、請求項
3に係る発明であるカラー印刷機では、サーマルヘッドの温度を検知するサーミスタの検知温度が所定温度を超えたときは、サーマルヘッドの各発熱素子に対して予熱印加パルスをそれぞれ与えることが停止される。これにより、画像の各1ドット目に対応したカラー発色の特性、つまり、カラー印刷の初期書き出しの特性を改善させる必要がある温度環境の下で、サーマルヘッドの各発熱素子に対して予熱印加パルスをそれぞれ与えることができる。
【0029】
また、請求項
4に係る発明であるカラー印刷機では、サーマルヘッドを内装させた筐体内の環境温度を検知する温度測定装置の検知温度が所定温度を超えたときは、サーマルヘッドの各発熱素子に対して予熱印加パルスをそれぞれ与えることが停止される。これにより、画像の各1ドット目に対応したカラー発色の特性、つまり、カラー印刷の初期書き出しの特性を改善させる必要がある温度環境の下で、サーマルヘッドの各発熱素子に対して予熱印加パルスをそれぞれ与えることができる。
【0030】
また、請求項
5に係る発明であるカラー印刷機では、カラー感熱紙の搬送速度が安定速度に達する前に、サーマルヘッドの各発熱素子に対して予熱印加パルスをそれぞれ与えることが停止される。これにより、サーマルヘッドの各発熱素子に対して予熱印加パルスをそれぞれ与えることを、カラー印刷前という適切なタイミングで行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
<1.第1実施の形態>
先ず、本発明の第1実施形態に係るカラー印刷機について説明する。
【0033】
[1−1.カラー印刷機]
第1実施形態に係るカラー印刷機について、
図1乃至
図4を参照しつつ説明する。第1実施形態に係るカラー印刷機101は、
図1及び
図2に表した筐体104を有する。
【0034】
また、第1実施形態に係るカラー印刷機101は、
図3に表されたように、サーマルヘッド102や、プラテンローラ103、制御部111、ヘッド駆動回路117、搬送モーター駆動回路118、媒体搬送モーター119、サーミスタ121、温度測定装置122を有する。
【0035】
尚、サーミスタ121は、サーマルヘッド102に設けられ、サーマルヘッド102の温度を検知する。温度測定装置122は、筐体104内でサーマルヘッド102の付近に設けられ、サーマルヘッド102の付近の温度を検知する。
【0036】
また、サーマルヘッド102とプラテンローラ103との間に挟まれたカラー感熱紙1は、カラー印刷時には、プラテンローラ103の回転により一方向のみに搬送される。つまり、第1実施形態に係るカラー印刷機101では、ワンパス(カラー感熱紙1の搬送が一度行われるだけ)のカラー印刷が行われる。
【0037】
制御部111は、CPU112や、CG−ROM113、EEPROM114、ROM115、RAM116により構成される。CPU112は、第1実施形態に係るカラー印刷機101における各種制御の中枢を担う中央演算処理装置である。従って、CPU112は、各種制御プログラム等に基づいて、第1実施形態に係るカラー印刷機101そのものを制御する。
【0038】
CG−ROM113は、印字される文字や記号の画像データがコードデータと対応させてドットパターンで記憶されるキャラクタージェネレータ用メモリである。EEPROM114は、記憶内容の書込・消去ができる不揮発性メモリである。ROM115には、第1実施形態に係るカラー印刷機101における各種制御プログラムやデータが記憶される。RAM116は、CPU112での演算結果等が一時的に記憶される記憶装置である。さらに、RAM116には、例えば、編集された印字データ等が記憶される。
【0039】
制御部111には、ヘッド駆動回路117や搬送モーター駆動回路118が接続される。ヘッド駆動回路117は、CPU112からの制御信号に基づいてサーマルヘッド102に駆動信号を供給し、サーマルヘッド102の駆動状態を制御する回路である。
【0040】
搬送モーター駆動回路118は、CPU112からの制御信号に基づいて媒体搬送モーター119に駆動信号を供給し、媒体搬送モーター119の駆動制御を介してプラテンローラ103の回転を制御する回路である。
【0041】
サーマルヘッド102とプラテンローラ103との間に挟まれたカラー感熱紙1は、カラー印刷時において、プラテンローラ103の回転により一方向のみに搬送される際には、プラテンローラ103によってサーマルヘッド102に押し付けられる。
【0042】
サーマルヘッド102は、
図4に表されたように、カラー感熱紙1の幅方向と同方向に、複数(ここでは、128個)の発熱素子102Aを1列に列設させたラインヘッド102B等で構成される。
【0043】
[1−2.カラー感熱紙]
第1実施形態に係るカラー印刷機101で使用されるカラー感熱紙1は、
図5に表されたように、基材2を有する。基材2は白色であり、基材2上には、イエロー・マゼンタ・シアンの順で各発色層5,4,3が積層されている。さらに、シアン発色層3上にはオーバーコート層6が積層されている。
【0044】
この点、サーマルヘッド102とプラテンローラ103との間に挟まれたカラー感熱紙1は、カラー印刷時において、プラテンローラ103の回転により一方向のみに搬送される。その際、サーマルヘッド102とプラテンローラ103との間に挟まれたカラー感熱紙1は、プラテンローラ103によって、サーマルヘッド102に押し付けられる。
【0045】
このとき、カラー感熱紙1は、シアン発色層3上にあるオーバーコート層6の側がサーマルヘッド102に押し付けられる。つまり、カラー感熱紙1は、カラー感熱紙1の搬送時にサーマルヘッド102が存在する上層側から、シアン発色層3とマゼンタ発色層4とイエロー発色層5とが順番に基材2に積層されている。
【0046】
サーマルヘッド102は、カラー感熱紙1を発色させるための熱エネルギーを与えるものである。上述したように、カラー感熱紙1が有するシアン発色層3上にあるオーバーコート層6がサーマルヘッド102に対して押し付けられることから、サーマルヘッド102の熱エネルギーは、カラー感熱紙1が有するシアン発色層3上にあるオーバーコート層6の側から与えられる。
【0047】
そして、カラー印刷時には、カラー感熱紙1で発色させようとするシアン・マゼンタ・イエローの各発色層3,4,5の発色特性に応じ、制御部111及びヘッド駆動回路117によってサーマルヘッド102が制御される。
【0048】
すなわち、制御部111及びヘッド駆動回路117は、一印字周期の中で、サーマルヘッド102への駆動電圧の印加時間と印加タイミングを制御することで、カラー感熱紙1で発色させようとするシアン・マゼンタ・イエローの各発色層3,4,5の発色特性に応じて、サーマルヘッド102の発熱温度と発熱時間を制御する。
【0049】
さらに、カラー印刷の開始前にも、カラー感熱紙1で発色させようとするシアン・マゼンタ・イエローの各発色層3,4,5の発色特性に応じ、制御部111及びヘッド駆動回路117によってサーマルヘッド102が制御される。
【0050】
すなわち、制御部111及びヘッド駆動回路117は、カラー感熱紙1をカラー発色させる開始前にて、カラー感熱紙1で発色させようとするシアン・マゼンタ・イエローの各発色層3,4,5の発色特性に応じ、予熱印加パルスをサーマルヘッド102の各発熱素子102Aにそれぞれ与える。
【0051】
もっとも、予熱が必要が無いほどにサーマルヘッド102の温度が十分に高いときは、予熱印加パルスをサーマルヘッド102の各発熱素子102Aにそれぞれ与える必要はない。
【0052】
そこで、サーマルヘッド102の温度を検知するサーミスタ121の検知温度が所定温度未満のとき、あるいは、サーマルヘッド102の付近の温度を検知する温度測定装置122が所定温度未満のときを条件として、カラー感熱紙1をカラー発色させる開始前にて、カラー感熱紙1で発色させようとするシアン・マゼンタ・イエローの各発色層3,4,5の発色特性に応じ、予熱印加パルスをサーマルヘッド102の各発熱素子102Aにそれぞれ与える。
【0053】
この点、第1実施形態に係るカラー印刷機101で使用されるカラー感熱紙1は、サーミスタ121と温度測定装置122の双方を有しているが、サーミスタ121と温度測定装置122の一方のみを有していてもよい。
【0054】
これによって、当該カラー発色の対象であるカラープリント画像の各1ドット目に対応させながら、サーマルヘッド102の各発熱素子102Aに対して各色に適した予熱がそれぞれ与えられる。
【0055】
尚、図
5に表したカラー感熱紙1の断面図では、カラー感熱紙1の断面が煩雑になって見辛くなることを回避するため、基材2や、シアン・マゼンタ・イエローの各発色層3,4,5、オーバーコート層6の各断面を表すそれぞれの平行斜線を省略している。
【0056】
[1−3.カラー感熱紙の発色特性]
上述したように、シアン・マゼンタ・イエローの各発色層3,4,5は、それぞれ異なる発色特性を持っている。シアン発色層3は、カラー感熱紙1の搬送時にサーマルヘッド102が存在する上層側にあり、比較的に、高温・短時間で発色が開始される。イエロー発色層5は、カラー感熱紙1の搬送時にサーマルヘッド102が存在する上層側と対向した下層側にあり、比較的に、低温・長時間で発色が開始される。マゼンタ発色層4は、下層側と上層側の中間位置にあり、比較的に、中温・中時間で発色が開始される。
【0057】
つまり、シアン・マゼンタ・イエローの各発色層3,4,5は、それぞれ異なる発色温度を持つ。上層側と対向した下層側にあるイエロー発色層5の発色温度は、下層側と上層側の中間位置にあるマゼンタ発色層4の発色温度よりも低温である。と共に、中間位置にあるマゼンタ発色層4は、上層側にあるシアン発色層3の発色温度よりも低温である。
【0058】
且つ、下層側にあるイエロー発色層5を発色させるには、中間位置にあるマゼンタ発色層4よりも長時間の加熱を必要とする。と共に中間位置にあるマゼンタ発色層4を発色させるには、上側層にあるシアン発色層3よりも長時間の加熱を必要とする。
【0059】
また、シアン・マゼンタ・イエローの各発色層3,4,5は、白色の基材2上で発色させる発色層を組み合わせることによって、カラー感熱紙1に7色を発色させることができる。
【0060】
7色とは、シアン(以下、「C色」という)、マゼンタ(以下、「M色」という)、イエロー(以下、「Y色」という)、ブルー(以下、「B色」という)、レッド(以下、「R色」という)、グリーン(以下、「G色」という)、及びブラック(以下、「Bk色」という)である。
【0061】
「C色」は、シアン発色層3の単独色である。
【0062】
「M色」は、マゼンタ発色層4の単独色である。
【0063】
「Y色」は、イエロー発色層5の単独色である。
【0064】
「B色」は、シアン発色層3とマゼンタ発色層4との複合色である。
【0065】
「R色」は、マゼンタ発色層4とイエロー発色層5との複合色である。
【0066】
「G色」は、シアン発色層3とイエロー発色層5との複合色である。
【0067】
「Bk色」は、シアン発色層3とマゼンタ発色層4とイエロー発色層5との複合色である。
【0068】
尚、ホワイトは、カラー感熱紙1に出現させることができる色だが、シアン・マゼンタ・イエローの各発色層3,4,5を発色させる必要がなく、カラー感熱紙1をカラー発色させる開始前の予熱とは無関係であるので、上記7色から除いている。
【0069】
ここで、カラー感熱紙1をカラー発色させる開始前における、各色に対応した予熱印加パルスの単位時間当たりのエネルギーの大小関係を各色で表す式は、以下の式(A)となる。
「Y色」≧「R色」≧「M色」≧「Bk色」>「G色」≧「B色」≧「C色」…(A)
以下、上記の式の検討を行う。
【0070】
先ず、「C色」と「B色」と「G色」は、以下の(1)(2)の理由から、予熱の必要性が小さいグループである。
(1)「C色」と「B色」と「G色」は、その発色時には、上層側のシアン発色層3を最初に発色させるために、サーマルヘッド102からカラー感熱紙1に連続通電で短時間の間に大エネルギーを与える必要がある。
(2)サーマルヘッド102からカラー感熱紙1に予熱を与えると、マゼンタ発色層4とイエロー発色層5とが反応しやすい状態になってしまう。
【0071】
従って、7色のうち、残りの「M色」と「Y色」と「R色」と「Bk色」は、予熱の必要性が大きいグループである。
【0072】
予熱の必要性が大きいグループを構成する「M色」と「Y色」と「R色」と「Bk色」については、以下(1)〜(4)の理由から、カラー感熱紙1をカラー発色させる開始前における、各色に対応した予熱印加パルスの単位時間当たりのエネルギーの大小関係を各色で表す式は、以下の式となる。
「Y色」≧「R色」≧「M色」≧「Bk色」
【0073】
(1)一番感度の低いイエロー発色層5を発色させるときの予熱の印加エネルギーが最も大きい。
(2)「R色」の発色時は、マゼンタ・イエローの両発色層4,5を発色させる必要がある。そのため、「R色」の発色時の印加エネルギーは、「Y色」の発色時の印加エネルギーよりも大きい。従って、予熱の印加エネルギーの大小関係は、「Y色」≧「R色」である。
(3)「M色」の発色時は、マゼンタ発色層5を発色させる一方、イエロー発色層5を発色させない必要がある。従って、予熱の印加エネルギーの大小関係は、「R色」≧「M色」である。
(4)「Bk色」の発色時は、シアン・マゼンタ・イエローの全発色層3,4,5を発色させる必要があるため、7色の中でサーマルヘッド102からカラー感熱紙1に与えるエネルギーが最も大きくなる。それでも、予熱は必要であるが、「Y色」や「R色」や「M色」の発色時と比べれば、予熱の印加エネルギーは少なくて良い。
【0074】
これに対して、予熱の必要性が小さいグループを構成する「C色」と「B色」と「G色」については、以下(1)〜(2)の理由から、カラー感熱紙1をカラー発色させる開始前における、各色に対応した予熱印加パルスの単位時間当たりのエネルギーの大小関係を各色で表す式は、以下の式となる。
「G色」≧「B色」≧「C色」
【0075】
(1)「C色」の発色時は、マゼンタ・イエローの各発色層4,5を発色させてはいけない。そのため、予熱の必要性が小さいグループの中では、予熱の印加エネルギーは最も少なくて良い。
(2)「G色」の発色時は、シアン・イエローの各発色層3,5を発色させる必要がある。一方、「B色」の発色時は、シアン・マゼンタの各発色層3,4を発色させる必要がある。この点、共通する上層側のシアン発色層3を除いて、下層側のイエロー発色層5と中間位置にあるマゼンタ発色層4で比較すれば、予熱の印加エネルギーの大小関係は、「G色」≧「B色」である。
【0076】
以上より、予熱の必要性が小さいグループと予熱の必要性が大きいグループとを合わせれば、カラー感熱紙1をカラー発色させる開始前における、各色に対応した予熱印加パルスの単位時間当たりのエネルギーの大小関係を各色で表す式として、上述した以下の式(A)が導かれる。
「Y色」≧「R色」≧「M色」≧「Bk色」>「G色」≧「B色」≧「C色」…(A)
【0077】
[1−4.予熱のタイミング]
予熱の実行タイミングは、カラー感熱紙1をカラー発色させる開始前である。第1実施形態に係るカラー印刷機101では、カラー感熱紙1をカラー発色させる開始前は、
図6に表されたように、カラー感熱紙1の搬送速度は加速状態にある。一方、カラー感熱紙1をカラー発色させた開始後は、
図6に表されたように、カラー感熱紙1の搬送速度は定速状態にある。従って、カラー感熱紙1の搬送速度が安定する前の時機Tが、予熱の実行時機としては最適である。
【0078】
[1−5.まとめ]
すなわち、第1実施形態に係るカラー印刷機101は、複数の発熱素子102Aを有するサーマルヘッド102に対して、カラー感熱紙1の搬送が一度行われるだけ(ワンパス)で、カラー感熱紙1をカラー発色させる。そのカラー感熱紙1は、カラー感熱紙1の搬送時にサーマルヘッド102が存在する上層側から、シアン発色層3とマゼンタ発色層4とイエロー発色層5とが順番に基材2に積層されている。
【0079】
この点、シアン・マゼンタ・イエローの各発色層3,4,5は、それぞれ異なる発色特性を持っている。シアン発色層3は、カラー感熱紙1の搬送時にサーマルヘッド102が存在する上層側にあり、比較的に、高温・短時間で発色が開始される。イエロー発色層5は、カラー感熱紙1の搬送時にサーマルヘッド102が存在する上層側と対向した下層側にあり、比較的に、低温・長時間で発色が開始される。マゼンタ発色層4は、下層側と上層側の中間位置にあり、比較的に、中温・中時間で発色が開始される。
【0080】
つまり、シアン・マゼンタ・イエローの各発色層3,4,5は、それぞれ異なる発色温度を持つ。上層側と対向した下層側にあるイエロー発色層5の発色温度は、下層側と上層側の中間位置にあるマゼンタ発色層4の発色温度よりも低温である。と共に、中間位置にあるマゼンタ発色層4は、上層側にあるシアン発色層3の発色温度よりも低温である。
【0081】
且つ、下層側にあるイエロー発色層5を発色させるには、中間位置にあるマゼンタ発色層4よりも長時間の加熱を必要とする。と共に中間位置にあるマゼンタ発色層4を発色させるには、上側層にあるシアン発色層3よりも長時間の加熱を必要とする。
【0082】
さらに、カラー感熱紙1をカラー発色させる開始前にて、各色に対応した予熱印加パルスがサーマルヘッド102の各発熱素子102Aにそれぞれ与えられる。これによって、当該カラー発色の対象である画像の各1ドット目に対応したサーマルヘッド102の各発熱素子102Aに対して各色に適した予熱がそれぞれ与えられる。
【0083】
従って、第1実施形態に係るカラー印刷機101は、ワンパス(カラー感熱紙1の搬送が一度行われるだけ)のカラー印刷であっても、画像の各1ドット目に対応したカラー発色の特性、つまり、カラー印刷の初期書き出しの特性を改善させることができる。
【0084】
また、第1実施形態に係るカラー印刷機101は、カラー感熱紙1をカラー発色させる開始前における、各色に対応した予熱印加パルスの単位時間当たりのエネルギーの大小関係を各色で表す式は、以下の式となる。
「Y色」≧「R色」≧「M色」≧「Bk色」>「G色」≧「B色」≧「C色」
【0085】
従って、第1実施形態に係るカラー印刷機101は、ワンパス(カラー感熱紙1の搬送が一度行われるだけ)のカラー印刷であっても、この関係式により、「Y色」、「R色」、「M色」、「Bk色」、「G色」、「B色」、「C色」について、画像の各1ドット目に対応したカラー発色の特性、つまり、カラー印刷の初期書き出しの特性を改善させることができる。
【0086】
また、第1実施形態に係るカラー印刷機101では、サーマルヘッド102の温度を検知するサーミスタ121の検知温度が所定温度を超えたときは、サーマルヘッド102の各発熱素子102Aに対して予熱印加パルスをそれぞれ与えることが停止される。これにより、画像の各1ドット目に対応したカラー発色の特性、つまり、カラー印刷の初期書き出しの特性を改善させる必要がある温度環境の下で、サーマルヘッド102の各発熱素子102Aに対して予熱印加パルスをそれぞれ与えることができる。
【0087】
また、第1実施形態に係るカラー印刷機101では、サーマルヘッド102を内装させた筐体104内の環境温度を検知する温度測定装置122の検知温度が所定温度を超えたときは、サーマルヘッド102の各発熱素子102Aに対して予熱印加パルスをそれぞれ与えることが停止される。これにより、画像の各1ドット目に対応したカラー発色の特性、つまり、カラー印刷の初期書き出しの特性を改善させる必要がある温度環境の下で、サーマルヘッド102の各発熱素子102Aに対して予熱印加パルスをそれぞれ与えることができる。
【0088】
また、第1実施形態に係るカラー印刷機101では、カラー感熱紙1の搬送速度が安定速度に達する前に、サーマルヘッド102の各発熱素子102Aに対して予熱印加パルスをそれぞれ与えることが停止される(
図6参照)。これにより、サーマルヘッド102の各発熱素子102Aに対して予熱印加パルスをそれぞれ与えることを、カラー印刷前という適切なタイミングで行うことができる。
【0089】
<2.第2実施の形態>
次に、本発明の第2実施形態に係るカラー印刷機について説明する。
【0090】
[2−1.カラー印刷機]
第2実施形態に係るカラー印刷機は、第1実施形態に係るカラー印刷機101と同様である。従って、第2実施形態に係るカラー印刷機については、説明を省略するとともに、第1実施形態に係るカラー印刷機101と同じ符号を用いる。
【0091】
[2−2.カラー感熱紙]
第2実施形態に係るカラー印刷機101で使用されるカラー感熱紙は、
図7乃至
図9に表されたように、3パターンのカラー感熱紙1001,1002,1003が使用され得る。従って、
図3では、カラー感熱紙の符号1は、3パターンの各カラー感熱紙の符号である1001,1002,1003のいずれかに代わる。
【0092】
尚、第2実施形態に係るカラー印刷機101で使用されるカラー感熱紙1001,1002,1003において、第1実施形態に係るカラー印刷機101で使用されるカラー感熱紙1と同様な構成要素は、第1実施形態に係るカラー印刷機101で使用されるカラー感熱紙1の構成要素と同じ符号を用いる。
【0093】
[2−2−1.カラー感熱紙の第1パターン]
図7に表されたカラー感熱紙1001は、基材2を有する。基材2は白色であり、基材2上には、マゼンタ・シアンの順で各発色層4,3が積層されている。さらに、シアン発色層3上にはオーバーコート層6が積層されている。
【0094】
この点、サーマルヘッド102とプラテンローラ103との間に挟まれたカラー感熱紙1001は、カラー印刷時において、プラテンローラ103の回転により一方向のみに搬送される。その際、サーマルヘッド102とプラテンローラ103との間に挟まれたカラー感熱紙1001は、プラテンローラ103によって、サーマルヘッド102に押し付けられる。
【0095】
このとき、カラー感熱紙1001は、シアン発色層3上にあるオーバーコート層6の側がサーマルヘッド102に押し付けられる。つまり、カラー感熱紙1001は、カラー感熱紙1001の搬送時にサーマルヘッド102が存在する上層側から、シアン発色層3とマゼンタ発色層4とが順番に基材2に積層されている。
【0096】
サーマルヘッド102は、カラー感熱紙1001を発色させるための熱エネルギーを与えるものである。上述したように、カラー感熱紙1001が有するシアン発色層3上にあるオーバーコート層6がサーマルヘッド102に対して押し付けられることから、サーマルヘッド102の熱エネルギーは、カラー感熱紙1001が有するシアン発色層3上にあるオーバーコート層6の側から与えられる。
【0097】
そして、カラー印刷時には、カラー感熱紙1001で発色させようとするシアン・マゼンタの各発色層3,4の発色特性に応じ、制御部111及びヘッド駆動回路117によってサーマルヘッド102が制御される。
【0098】
すなわち、制御部111及びヘッド駆動回路117は、一印字周期の中で、サーマルヘッド102への駆動電圧の印加時間と印加タイミングを制御することで、カラー感熱紙1001で発色させようとするシアン・マゼンタの各発色層3,4の発色特性に応じて、サーマルヘッド102の発熱温度と発熱時間を制御する。
【0099】
さらに、カラー印刷の開始前にも、カラー感熱紙1001で発色させようとするシアン・マゼンタの各発色層3,4の発色特性に応じ、制御部111及びヘッド駆動回路117によってサーマルヘッド102が制御される。
【0100】
すなわち、制御部111及びヘッド駆動回路117は、カラー感熱紙1001をカラー発色させる開始前にて、カラー感熱紙1001で発色させようとするシアン・マゼンタの各発色層3,4の発色特性に応じ、予熱印加パルスをサーマルヘッド102の各発熱素子102Aにそれぞれ与える。
【0101】
もっとも、予熱が必要が無いほどにサーマルヘッド102の温度が十分に高いときは、予熱印加パルスをサーマルヘッド102の各発熱素子102Aにそれぞれ与える必要はない。
【0102】
そこで、サーマルヘッド102の温度を検知するサーミスタ121の検知温度が所定温度未満のとき、あるいは、サーマルヘッド102の付近の温度を検知する温度測定装置122が所定温度未満のときを条件として、カラー感熱紙1001をカラー発色させる開始前にて、カラー感熱紙1001で発色させようとするシアン・マゼンタの各発色層3,4の発色特性に応じ、予熱印加パルスをサーマルヘッド102の各発熱素子102Aにそれぞれ与える。
【0103】
この点、第2実施形態に係るカラー印刷機101で使用されるカラー感熱紙1001は、サーミスタ121と温度測定装置122の双方を有しているが、サーミスタ121と温度測定装置122の一方のみを有していてもよい。
【0104】
これによって、当該カラー発色の対象であるカラープリント画像の各1ドット目に対応させながら、サーマルヘッド102の各発熱素子102Aに対して各色に適した予熱がそれぞれ与えられる。
【0105】
尚、
図7に表したカラー感熱紙1001の断面図では、カラー感熱紙1001の断面が煩雑になって見辛くなることを回避するため、基材2や、シアン・マゼンタの各発色層3,4、オーバーコート層6の各断面を表すそれぞれの平行斜線を省略している。
【0106】
[2−2−2.カラー感熱紙の第2パターン]
図8に表されたカラー感熱紙1002は、基材2を有する。基材2は白色であり、基材2上には、イエロー・シアンの順で各発色層5,3が積層されている。さらに、シアン発色層3上にはオーバーコート層6が積層されている。
【0107】
この点、サーマルヘッド102とプラテンローラ103との間に挟まれたカラー感熱紙1002は、カラー印刷時において、プラテンローラ103の回転により一方向のみに搬送される。その際、サーマルヘッド102とプラテンローラ103との間に挟まれたカラー感熱紙1002は、プラテンローラ103によって、サーマルヘッド102に押し付けられる。
【0108】
このとき、カラー感熱紙1002は、シアン発色層3上にあるオーバーコート層6の側がサーマルヘッド102に押し付けられる。つまり、カラー感熱紙1002は、カラー感熱紙1002の搬送時にサーマルヘッド102が存在する上層側から、シアン発色層3とイエロー発色層5とが順番に基材2に積層されている。
【0109】
サーマルヘッド102は、カラー感熱紙1002を発色させるための熱エネルギーを与えるものである。上述したように、カラー感熱紙1002が有するシアン発色層3上にあるオーバーコート層6がサーマルヘッド102に対して押し付けられることから、サーマルヘッド102の熱エネルギーは、カラー感熱紙1002が有するシアン発色層3上にあるオーバーコート層6の側から与えられる。
【0110】
そして、カラー印刷時には、カラー感熱紙1002で発色させようとするシアン・イエローの各発色層3,5の発色特性に応じ、制御部111及びヘッド駆動回路117によってサーマルヘッド102が制御される。
【0111】
すなわち、制御部111及びヘッド駆動回路117は、一印字周期の中で、サーマルヘッド102への駆動電圧の印加時間と印加タイミングを制御することで、カラー感熱紙1002で発色させようとするシアン・イエローの各発色層3,5の発色特性に応じて、サーマルヘッド102の発熱温度と発熱時間を制御する。
【0112】
さらに、カラー印刷の開始前にも、カラー感熱紙1002で発色させようとするシアン・イエローの各発色層3,5の発色特性に応じ、制御部111及びヘッド駆動回路117によってサーマルヘッド102が制御される。
【0113】
すなわち、制御部111及びヘッド駆動回路117は、カラー感熱紙1002をカラー発色させる開始前にて、カラー感熱紙1002で発色させようとするシアン・イエローの各発色層3,5の発色特性に応じ、予熱印加パルスをサーマルヘッド102の各発熱素子102Aにそれぞれ与える。
【0114】
もっとも、予熱が必要が無いほどにサーマルヘッド102の温度が十分に高いときは、予熱印加パルスをサーマルヘッド102の各発熱素子102Aにそれぞれ与える必要はない。
【0115】
そこで、サーマルヘッド102の温度を検知するサーミスタ121の検知温度が所定温度未満のとき、あるいは、サーマルヘッド102の付近の温度を検知する温度測定装置122が所定温度未満のときを条件として、カラー感熱紙1002をカラー発色させる開始前にて、カラー感熱紙1002で発色させようとするシアン・イエローの各発色層3,5の発色特性に応じ、予熱印加パルスをサーマルヘッド102の各発熱素子102Aにそれぞれ与える。
【0116】
この点、第2実施形態に係るカラー印刷機101で使用されるカラー感熱紙1002は、サーミスタ121と温度測定装置122の双方を有しているが、サーミスタ121と温度測定装置122の一方のみを有していてもよい。
【0117】
これによって、当該カラー発色の対象であるカラープリント画像の各1ドット目に対応させながら、サーマルヘッド102の各発熱素子102Aに対して各色に適した予熱がそれぞれ与えられる。
【0118】
尚、
図8に表したカラー感熱紙1002の断面図では、カラー感熱紙1002の断面が煩雑になって見辛くなることを回避するため、基材2や、シアン・イエローの各発色層3,5、オーバーコート層6の各断面を表すそれぞれの平行斜線を省略している。
【0119】
[2−2−3.カラー感熱紙の第3パターン]
図9に表されたカラー感熱紙1003は、基材2を有する。基材2は白色であり、基材2上には、マゼンタ・イエローの順で各発色層4,5が積層されている。さらに、マゼンタ発色層4上にはオーバーコート層6が積層されている。
【0120】
この点、サーマルヘッド102とプラテンローラ103との間に挟まれたカラー感熱紙1003は、カラー印刷時において、プラテンローラ103の回転により一方向のみに搬送される。その際、サーマルヘッド102とプラテンローラ103との間に挟まれたカラー感熱紙1003は、プラテンローラ103によって、サーマルヘッド102に押し付けられる。
【0121】
このとき、カラー感熱紙1003は、マゼンタ発色層4上にあるオーバーコート層6の側がサーマルヘッド102に押し付けられる。つまり、カラー感熱紙1003は、カラー感熱紙1003の搬送時にサーマルヘッド102が存在する上層側から、マゼンタ発色層4とイエロー発色層5とが順番に基材2に積層されている。
【0122】
サーマルヘッド102は、カラー感熱紙1003を発色させるための熱エネルギーを与えるものである。上述したように、カラー感熱紙1003が有するマゼンタ発色層4上にあるオーバーコート層6がサーマルヘッド102に対して押し付けられることから、サーマルヘッド102の熱エネルギーは、カラー感熱紙1003が有するマゼンタ発色層4上にあるオーバーコート層6の側から与えられる。
【0123】
そして、カラー印刷時には、カラー感熱紙1003で発色させようとするマゼンタ・イエローの各発色層4,5の発色特性に応じ、制御部111及びヘッド駆動回路117によってサーマルヘッド102が制御される。
【0124】
すなわち、制御部111及びヘッド駆動回路117は、一印字周期の中で、サーマルヘッド102への駆動電圧の印加時間と印加タイミングを制御することで、カラー感熱紙1003で発色させようとするマゼンタ・イエローの各発色層4,5の発色特性に応じて、サーマルヘッド102の発熱温度と発熱時間を制御する。
【0125】
さらに、カラー印刷の開始前にも、カラー感熱紙1003で発色させようとするマゼンタ・イエローの各発色層4,5の発色特性に応じ、制御部111及びヘッド駆動回路117によってサーマルヘッド102が制御される。
【0126】
すなわち、制御部111及びヘッド駆動回路117は、カラー感熱紙1003をカラー発色させる開始前にて、カラー感熱紙1003で発色させようとするマゼンタ・イエローの各発色層4,5の発色特性に応じ、予熱印加パルスをサーマルヘッド102の各発熱素子102Aにそれぞれ与える。
【0127】
もっとも、予熱が必要が無いほどにサーマルヘッド102の温度が十分に高いときは、予熱印加パルスをサーマルヘッド102の各発熱素子102Aにそれぞれ与える必要はない。
【0128】
そこで、サーマルヘッド102の温度を検知するサーミスタ121の検知温度が所定温度未満のとき、あるいは、サーマルヘッド102の付近の温度を検知する温度測定装置122が所定温度未満のときを条件として、カラー感熱紙1003をカラー発色させる開始前にて、カラー感熱紙1003で発色させようとするマゼンタ・イエローの各発色層4,5の発色特性に応じ、予熱印加パルスをサーマルヘッド102の各発熱素子102Aにそれぞれ与える。
【0129】
この点、第2実施形態に係るカラー印刷機101で使用されるカラー感熱紙1003は、サーミスタ121と温度測定装置122の双方を有しているが、サーミスタ121と温度測定装置122の一方のみを有していてもよい。
【0130】
これによって、当該カラー発色の対象であるカラープリント画像の各1ドット目に対応させながら、サーマルヘッド102の各発熱素子102Aに対して各色に適した予熱がそれぞれ与えられる。
【0131】
尚、
図9に表したカラー感熱紙1003の断面図では、カラー感熱紙1003の断面が煩雑になって見辛くなることを回避するため、基材2や、マゼンタ・イエローの各発色層4,5、オーバーコート層6の各断面を表すそれぞれの平行斜線を省略している。
【0132】
[2−3.カラー感熱紙の発色特性]
第2実施形態に係るカラー印刷機101で使用される各カラー感熱紙1001,1002,1003においても、第1実施形態に係るカラー印刷機101で使用される各カラー感熱紙1と同様にして、シアン・マゼンタ・イエローの各発色層3,4,5は、それぞれ異なる発色特性を持っている。
【0133】
従って、第2実施形態に係るカラー印刷機101で使用される各カラー感熱紙1001,1002,1003における、シアン・マゼンタ・イエローの各発色層3,4,5の発色特性についての説明は省略する。
【0134】
[2−3−1.第1パターンのカラー感熱紙の発色特性]
ここで、第1パターンのカラー感熱紙1001をカラー発色させる開始前における、各色に対応した予熱印加パルスの単位時間当たりのエネルギーの大小関係を各色で表す式を検討する。第1パターンのカラー感熱紙1001では、
図7に表されたように、シアン・マゼンタの各発色層3,4を有する。従って、第1パターンのカラー感熱紙1001でカラー発色できる色は、「C色」と「M色」と「B色」の3色である。
【0135】
そこで、カラー感熱紙1001をカラー発色させる開始前における、各色に対応した予熱印加パルスの単位時間当たりのエネルギーの大小関係を各色で表す式を、上述した第1実施形態の式(A)から抜粋すると、以下の式(B)となる。
「M色」>「B色」≧「C色」…(B)
【0136】
「M色」は、
図7によれば、下層側にある第二発色層であるマゼンタ発色層4の単独色である。
【0137】
「C色」は、
図7によれば、上層側にある第一発色層であるシアン発色層3の単独色である。
【0138】
「B色」は、下層側にある第二発色層であるマゼンタ発色層4と上層側にある第一発色層であるシアン発色層3との複合色である。
【0139】
つまり、上記式(B)を書き換えると、以下の式となる。
第二発色層の単独色>第一発色層と第二発色層との複合色≧第一発色層の単独色
【0140】
[2−3−2.第2パターンのカラー感熱紙の発色特性]
ここで、第2パターンのカラー感熱紙1002をカラー発色させる開始前における、各色に対応した予熱印加パルスの単位時間当たりのエネルギーの大小関係を各色で表す式を検討する。第2パターンのカラー感熱紙1002では、
図8に表されたように、シアン・イエローの各発色層3,5を有する。従って、第2パターンのカラー感熱紙1002でカラー発色できる色は、「C色」と「Y色」と「G色」の3色である。
【0141】
そこで、カラー感熱紙1002をカラー発色させる開始前における、各色に対応した予熱印加パルスの単位時間当たりのエネルギーの大小関係を各色で表す式を、上述した第1実施形態の式(A)から抜粋すると、以下の式(C)となる。
「Y色」>「G色」≧「C色」…(C)
【0142】
「Y色」は、
図8によれば、下層側にある第二発色層であるイエロー発色層5の単独色である。
【0143】
「C色」は、
図8によれば、上層側にある第一発色層であるシアン発色層3の単独色である。
【0144】
「G色」は、下層側にある第二発色層であるイエロー発色層5と上層側にある第一発色層であるシアン発色層3との複合色である。
【0145】
つまり、上記式(C)を書き換えると、以下の式となる。
第二発色層の単独色>第一発色層と第二発色層との複合色≧第一発色層の単独色
【0146】
[2−3−3.第3パターンのカラー感熱紙の発色特性]
ここで、第3パターンのカラー感熱紙1003をカラー発色させる開始前における、各色に対応した予熱印加パルスの単位時間当たりのエネルギーの大小関係を各色で表す式を検討する。第3パターンのカラー感熱紙1003では、
図9に表されたように、マゼンタ・イエローの各発色層4,5を有する。従って、第3パターンのカラー感熱紙1003でカラー発色できる色は、「M色」と「Y色」と「R色」の3色である。
【0147】
そこで、カラー感熱紙1003をカラー発色させる開始前における、各色に対応した予熱印加パルスの単位時間当たりのエネルギーの大小関係を各色で表す式を、上述した第1実施形態の式(A)から抜粋すると、以下の式(D)となる。
「Y色」≧「R色」≧「M色」…(D)
【0148】
「Y色」は、
図8によれば、下層側にある第二発色層であるイエロー発色層5の単独色である。
【0149】
「M色」は、
図8によれば、上層側にある第一発色層であるマゼンタ発色層4の単独色である。
【0150】
「R色」は、下層側にある第二発色層であるイエロー発色層5と上層側にある第一発色層であるマゼンタ発色層4との複合色である。
【0151】
つまり、上記式(D)を書き換えると、以下の式となる。
第二発色層の単独色≧第一発色層と第二発色層との複合色≧第一発色層の単独色
【0152】
[2−4.予熱のタイミング]
予熱の実行タイミングは、各カラー感熱紙1001,1002,1003をカラー発色させる開始前である。第2実施形態に係るカラー印刷機101では、各カラー感熱紙1001,1002,1003をカラー発色させる開始前は、
図6に表されたように、各カラー感熱紙1001,1002,1003の搬送速度は加速状態にある。一方、各カラー感熱紙1001,1002,1003をカラー発色させた開始後は、
図6に表されたように、各カラー感熱紙1001,1002,1003の搬送速度は定速状態にある。従って、各カラー感熱紙1001,1002,1003の搬送速度が安定する前の時機Tが、予熱の実行時機としては最適である。
【0153】
[2−5.まとめ]
すなわち、第2実施の形態に係るカラー印刷機101は、複数の発熱素子102Aを有するサーマルヘッド102に対して、各カラー感熱紙1001,1002,1003の搬送が一度行われるだけ(ワンパス)で、各カラー感熱紙1001,1002,1003をカラー発色させる。
【0154】
そのカラー感熱紙1001,1002,1003は、カラー感熱紙1001,1002,1003の搬送時にサーマルヘッド102が存在する上層側から第一発色層と第二発色層とが順番に基材2に積層されている。
【0155】
具体的には、第1パターンのカラー感熱紙1001では、
図7に表したように、上層側から第一発色層であるシアン発色層3と第二発色層であるマゼンタ発色層4とが順番に基材2に積層されている。
【0156】
また、第2パターンのカラー感熱紙1002では、
図8に表したように、上層側から第一発色層であるシアン発色層3と第二発色層であるイエロー発色層5とが順番に基材2に積層されている。
【0157】
また、第3パターンのカラー感熱紙1003では、
図9に表したように、上層側から第一発色層であるマゼンタ発色層4と第二発色層であるイエロー発色層5とが順番に基材2に積層されている。
【0158】
この点、以下の特徴は、各カラー感熱紙1001,1002,1003で共通する。つまり、第一発色層と第二発色層とは、それぞれ異なる発色温度を持つ。上層側と対向した下層側にある第二発色層の発色温度は、上層側にある第一発色層の発色温度よりも低温である。且つ、下層側にある第二発色層を発色させるには、上層側にある第一発色層よりも長時間の加熱を必要とする。
【0159】
さらに、各カラー感熱紙1001,1002,1003をカラー発色させる開始前にて、各色に対応した予熱印加パルスがサーマルヘッド102の各発熱素子102Aにそれぞれ与えられる。これによって、当該カラー発色の対象である画像の各1ドット目に対応したサーマルヘッド102の各発熱素子102Aに対して各色に適した予熱がそれぞれ与えられる。
【0160】
従って、第2実施の形態に係るカラー印刷機101は、ワンパス(各カラー感熱紙1001,1002,1003の搬送が一度行われるだけ)によるカラー印刷であっても、画像の各1ドット目に対応したカラー発色の特性、つまり、カラー印刷の初期書き出しの特性を改善させることができる。
【0161】
また、第2実施の形態に係るカラー印刷機101は、各カラー感熱紙1001,1002,1003をカラー発色させる開始前における、各色に対応した予熱印加パルスの単位時間当たりのエネルギーの大小関係を各色で表す式が、以下の式で共通する。
第二発色層の単独色>第一発色層と第二発色層との複合色≧第一発色層の単独色
【0162】
従って、第2実施の形態に係るカラー印刷機101は、ワンパス(各カラー感熱紙1001,1002,1003の搬送が一度行われるだけ)のカラー印刷であっても、この関係式により、第二発色層の単独色、第一発色層と第二発色層との複合色、及び第一発色層の単独色について、画像の各1ドット目に対応したカラー発色の特性、つまり、カラー印刷の初期書き出しの特性を改善させることができる。
【0163】
また、第2実施形態に係るカラー印刷機101では、サーマルヘッド102の温度を検知するサーミスタ121の検知温度が所定温度を超えたときは、サーマルヘッド102の各発熱素子102Aに対して予熱印加パルスをそれぞれ与えることが停止される。これにより、画像の各1ドット目に対応したカラー発色の特性、つまり、カラー印刷の初期書き出しの特性を改善させる必要がある温度環境の下で、サーマルヘッド102の各発熱素子102Aに対して予熱印加パルスをそれぞれ与えることができる。
【0164】
また、第2実施形態に係るカラー印刷機101では、サーマルヘッド102を内装させた筐体104内の環境温度を検知する温度測定装置122の検知温度が所定温度を超えたときは、サーマルヘッド102の各発熱素子102Aに対して予熱印加パルスをそれぞれ与えることが停止される。これにより、画像の各1ドット目に対応したカラー発色の特性、つまり、カラー印刷の初期書き出しの特性を改善させる必要がある温度環境の下で、サーマルヘッド102の各発熱素子102Aに対して予熱印加パルスをそれぞれ与えることができる。
【0165】
また、第2実施形態に係るカラー印刷機101では、カラー感熱紙1の搬送速度が安定速度に達する前に、サーマルヘッド102の各発熱素子102Aに対して予熱印加パルスをそれぞれ与えることが停止される(
図6参照)。これにより、サーマルヘッド102の各発熱素子102Aに対して予熱印加パルスをそれぞれ与えることを、カラー印刷前という適切なタイミングで行うことができる。
【0166】
<3.その他>
尚、本発明は上記実施形態に限定されるものでなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば、第1,第2実施の形態で使用される各カラー感熱紙1,1001,1002,1003においては、シアン・マゼンタ・イエローの各発色層3,4,5の間に、中間層を設けてもよい。
【0167】
また、シアン・マゼンタ・イエローの各発色層3,4,5が基材2に積層される順番が任意でもよい。また、各発色層はシアン・マゼンタ・イエローの三色に限るものではなく、基材2の色も白色に限るものではない。