特許第5999051号(P5999051)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5999051レーザ発振装置、レーザ加工装置及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5999051
(24)【登録日】2016年9月9日
(45)【発行日】2016年9月28日
(54)【発明の名称】レーザ発振装置、レーザ加工装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H01S 3/131 20060101AFI20160915BHJP
   H01S 3/0941 20060101ALI20160915BHJP
   H01S 3/113 20060101ALI20160915BHJP
   H01S 3/00 20060101ALI20160915BHJP
   B23K 26/00 20140101ALI20160915BHJP
【FI】
   H01S3/131
   H01S3/0941
   H01S3/113
   H01S3/00 B
   B23K26/00 N
   B23K26/00 B
【請求項の数】6
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-178262(P2013-178262)
(22)【出願日】2013年8月29日
(65)【公開番号】特開2015-46556(P2015-46556A)
(43)【公開日】2015年3月12日
【審査請求日】2015年3月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000992
【氏名又は名称】特許業務法人ネクスト
(72)【発明者】
【氏名】杉本 裕司
【審査官】 林 祥恵
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−026858(JP,A)
【文献】 特開2003−332657(JP,A)
【文献】 特開平08−148740(JP,A)
【文献】 特開2012−253098(JP,A)
【文献】 特開2012−044098(JP,A)
【文献】 特開2000−340872(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 3/00−3/30
B23K 26/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
励起用半導体レーザと、
加工対象物にレーザ光により加工する加工情報を受信し、前記加工情報に基づいて前記励起用半導体レーザを駆動する駆動パターンを生成する駆動パターン生成部と、
前記励起用半導体レーザを駆動するレーザドライバと、
レーザ媒質と受動Qスイッチを有して、前記励起用半導体レーザから出射された励起光を受光した前記レーザ媒質が励起されて、前記受動Qスイッチに蓄えられた光エネルギーが一定値を超えるとパルスレーザを発振するレーザ発振器と、
前記駆動パターン生成部によって生成された駆動パターンに従って前記レーザドライバを駆動制御する制御部と、
を備え、
前記レーザ発振器は、前記パルスレーザを発振しない前記励起光の最大出力値である出力閾値より高い出力の励起光を受光し、且つ、前記励起光の出力期間が該レーザ発振器が前記受動Qスイッチを介してパルスレーザを発振する最小出力期間である期間閾値より長い場合に、前記励起光に対応するパルスレーザを発振し、
前記駆動パターンは、
前記励起光の出力が前記出力閾値より低い待機出力の状態から、前記励起光の出力が前記出力閾値より高い第1出力値で、前記期間閾値以下である前記受動Qスイッチを介してパルスレーザを発振しない第1出力期間の間、前記励起用半導体レーザを駆動する第1出力と、
前記第1出力に続いて、前記励起光の出力が前記出力閾値以下で、前記励起用半導体レーザを駆動する第2出力と、
前記第2出力に続いて、前記励起光の出力が前記出力閾値より高い第2出力値で、前記励起用半導体レーザを駆動する第3出力と、
を有し、
前記駆動パターン生成部は、前記加工情報に含まれる前記パルスレーザの発振を開始する開始タイミングに基づいて、前記第3出力の開始タイミングを設定することを特徴とするレーザ発振装置。
【請求項2】
前記駆動パターンは、前記第3出力に続いて、前記励起光の出力が前記第2出力の出力値よりも低い第3出力値で、前記励起用半導体レーザを駆動する第4出力を有し、
前記駆動パターン生成部は、前記加工対象物のレーザ光による加工の加工終了タイミングに基づいて、前記第4出力の開始タイミングを設定することを特徴とする請求項1に記載のレーザ発振装置。
【請求項3】
前記駆動パターンは、
前記第4出力に続いて、前記励起光の出力が前記出力閾値以下で、前記励起用半導体レーザを駆動する第5出力と、
前記第5出力に続いて、前記励起光の出力が前記待機出力で、前記励起用半導体レーザを駆動する第6出力と、
を有し、
前記駆動パターン生成部は、前記励起用半導体レーザの出力停止タイミングに基づいて、前記第6出力の開始タイミングを設定することを特徴とする請求項2に記載のレーザ発振装置。
【請求項4】
前記駆動パターン生成部は、前記第2出力において、前記励起光の出力が前記出力閾値以下で、且つ、前記待機出力より高い出力で、前記励起用半導体レーザを駆動することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のレーザ発振装置。
【請求項5】
励起用半導体レーザと、
加工対象物にレーザ光により加工する加工情報を受信し、前記加工情報に基づいて前記励起用半導体レーザを駆動する駆動パターンを生成する駆動パターン生成部と、
前記励起用半導体レーザを駆動するレーザドライバと、
レーザ媒質と受動Qスイッチを有して、前記励起用半導体レーザから出射された励起光を受光した前記レーザ媒質が励起されて、前記受動Qスイッチに蓄えられた光エネルギーが一定値を超えるとパルスレーザを発振するレーザ発振器と、
前記駆動パターン生成部によって生成された駆動パターンに従って前記レーザドライバと前記レーザ走査部とを駆動制御する制御部と、
前記レーザ発振器から発振されたパルスレーザを、加工対象物の加工面に走査するレーザ走査部と、
を備え、
前記レーザ発振器は、前記パルスレーザを発振しない前記励起光の最大出力値である出力閾値より高い出力の励起光を受光し、且つ、前記励起光の出力期間が該レーザ発振器が前記受動Qスイッチを介してパルスレーザを発振する最小出力期間である期間閾値より長い場合に、前記励起光に対応するパルスレーザを発振し、
前記駆動パターンは、
前記励起光の出力が前記出力閾値より低い待機出力の状態から、前記励起光の出力が前記出力閾値より高い第1出力値で、前記期間閾値以下である前記受動Qスイッチを介してパルスレーザを発振しない第1出力期間の間、前記励起用半導体レーザを駆動する第1出力と、
前記第1出力に続いて、前記励起光の出力が前記出力閾値以下で、前記励起用半導体レーザを駆動する第2出力と、
前記第2出力に続いて、前記励起光の出力が前記出力閾値より高い第2出力値で、前記励起用半導体レーザを駆動する第3出力と、
を有し、
前記駆動パターン生成部は、前記加工情報に含まれる前記パルスレーザの発振を開始する開始タイミングに基づいて、前記第3出力の開始タイミングを設定することを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項6】
励起用半導体レーザと、前記励起用半導体レーザを駆動するレーザドライバと、レーザ媒質と受動Qスイッチを有して、前記励起用半導体レーザから出射された励起光を受光したレーザ媒質が励起されて、前記受動Qスイッチに蓄えられた光エネルギーが一定値を超えるとパルスレーザを発振するレーザ発振器と、を備え、前記レーザ発振器は、前記パルスレーザを発振しない前記励起光の最大出力値である出力閾値より高い出力の励起光を受光し、且つ、前記励起光の出力期間が該レーザ発振器が前記受動Qスイッチを介してパルスレーザを発振する最小出力期間である期間閾値より長い場合に、前記励起光に対応するパルスレーザを発振するレーザ発振装置を制御するコンピュータに、
加工対象物にレーザ光により加工する加工情報を受信し、前記加工情報に基づいて前記励起用半導体レーザを駆動する駆動パターンを生成する駆動パターン生成工程と、
前記駆動パターン生成工程で生成された駆動パターンに従って前記レーザドライバを駆動制御する制御工程と、
を実行させ、
前記駆動パターンは、
前記励起光の出力が前記出力閾値より低い待機出力の状態から、前記励起光の出力が前記出力閾値より高い第1出力値で、前記期間閾値以下である前記受動Qスイッチを介してパルスレーザを発振しない第1出力期間の間、前記励起用半導体レーザを駆動する第1出力と、
前記第1出力に続いて、前記励起光の出力が前記出力閾値以下で、前記励起用半導体レーザを駆動する第2出力と、
前記第2出力に続いて、前記励起光の出力が前記出力閾値より高い第2出力値で、前記励起用半導体レーザを駆動する第3出力と、
を有し、
前記駆動パターン生成工程で、前記加工情報に含まれる前記パルスレーザの発振を開始する開始タイミングに基づいて、前記第3出力の開始タイミングを設定するように実行させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受動Qスイッチを備えたレーザ発振器を駆動制御するレーザ発振装置、レーザ加工装置及びプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、加工対象物にレーザ光により加工するレーザ加工装置の技術に関し種々提案されている。
例えば、レーザシステムは、電源部と、レーザヘッド部と、電源部とレーザヘッド部とを光学的に接続するファイバーと、電源部の動作を制御するコントローラとから構成されている。電源部は、励起光としてのレーザ光を出射する半導体レーザと、半導体レーザを駆動する電源と、半導体レーザ及び電源を冷却する冷却装置等から構成されている。また、レーザヘッド部は、ファイバー及びファイバーコネクタを介して励起光を集光する集光レンズと、反射鏡と、レーザ媒質と、受動Qスイッチと、反射鏡とレーザ共振器を構成する出力カプラーと、ウインドウとから構成されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−332657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記した特許文献1に記載されたレーザシステムでは、レーザヘッド部のレーザ出力の立ち上がりが遅れる。例えば、一般的に、図6に示すように、加工対象物をレーザ光により加工する場合には、コントローラは、先ず、加工開始前に半導体レーザを低駆動電流で時間T11[ms]間駆動して低出力L1[W]の励起光を出力して、低励起状態にする。そして、コントローラは、レーザ光による加工開始タイミングからONの加工信号を出力して、半導体レーザを高駆動電流で時間T12[ms]間駆動して高出力L2[W]の励起光を出力する。また、コントローラは、レーザ光による加工が終了した場合には、OFFの加工信号を出力して、半導体レーザを低駆動電流で時間T13[ms]間駆動して低出力L1[W]の励起光を出力して、低励起状態にした後、半導体レーザの駆動を停止する。
【0005】
しかしながら、加工開始タイミングから半導体レーザを高駆動電流で時間T12[ms]間駆動して高出力L2[W]の励起光を出力しても、レーザヘッド部のレーザ出力の立ち上がりが遅れる。このため、レーザ光により実際にマーキングされた文字、記号、図形等の加工開始付近における加工痕の加工深さや加工欠け等の印字品質が低下する虞がある。
【0006】
そこで、本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、受動Qスイッチを備えたレーザ発振器によるレーザ加工の印字品質を向上させることができるレーザ発振装置、レーザ加工装置及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため請求項1に係るレーザ発振装置は、励起用半導体レーザと、加工対象物にレーザ光により加工する加工情報を受信し、前記加工情報に基づいて前記励起用半導体レーザを駆動する駆動パターンを生成する駆動パターン生成部と、前記励起用半導体レーザを駆動するレーザドライバと、レーザ媒質と受動Qスイッチを有して、前記励起用半導体レーザから出射された励起光を受光した前記レーザ媒質が励起されて、前記受動Qスイッチに蓄えられた光エネルギーが一定値を超えるとパルスレーザを発振するレーザ発振器と、前記駆動パターン生成部によって生成された駆動パターンに従って前記レーザドライバを駆動制御する制御部と、を備え、前記レーザ発振器は、前記パルスレーザを発振しない前記励起光の最大出力値である出力閾値より高い出力の励起光を受光し、且つ、前記励起光の出力期間が該レーザ発振器が前記受動Qスイッチを介してパルスレーザを発振する最小出力期間である期間閾値より長い場合に、前記励起光に対応するパルスレーザを発振し、前記駆動パターンは、前記励起光の出力が前記出力閾値より低い待機出力の状態から、前記励起光の出力が前記出力閾値より高い第1出力値で、前記期間閾値以下である前記受動Qスイッチを介してパルスレーザを発振しない第1出力期間の間、前記励起用半導体レーザを駆動する第1出力と、前記第1出力に続いて、前記励起光の出力が前記出力閾値以下で、前記励起用半導体レーザを駆動する第2出力と、前記第2出力に続いて、前記励起光の出力が前記出力閾値より高い第2出力値で、前記励起用半導体レーザを駆動する第3出力と、を有し、前記駆動パターン生成部は、前記加工情報に含まれる前記パルスレーザの発振を開始する開始タイミングに基づいて、前記第3出力の開始タイミングを設定することを特徴とする。
【0008】
また、請求項2に係るレーザ発振装置は、請求項1に記載のレーザ発振装置において、前記駆動パターンは、前記第3出力に続いて、前記励起光の出力が前記第2出力の出力値よりも低い第3出力値で、前記励起用半導体レーザを駆動する第4出力を有し、前記駆動パターン生成部は、前記加工対象物のレーザ光による加工の加工終了タイミングに基づいて、前記第4出力の開始タイミングを設定することを特徴とする。
【0009】
また、請求項3に係るレーザ発振装置は、請求項2に記載のレーザ発振装置において、前記駆動パターンは、前記第4出力に続いて、前記励起光の出力が前記出力閾値以下で、前記励起用半導体レーザを駆動する第5出力と、前記第5出力に続いて、前記励起光の出力が前記待機出力で、前記励起用半導体レーザを駆動する第6出力と、を有し、前記駆動パターン生成部は、前記励起用半導体レーザの出力停止タイミングに基づいて、前記第6出力の開始タイミングを設定することを特徴とする。
【0010】
更に、請求項4に係るレーザ発振装置は、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のレーザ発振装置において、前記駆動パターン生成部は、前記第2出力において、前記励起光の出力が前記出力閾値以下で、且つ、前記待機出力より高い出力で、前記励起用半導体レーザを駆動することを特徴とする。
【0011】
また、請求項5に係るレーザ加工装置は、励起用半導体レーザと、加工対象物にレーザ光により加工する加工情報を受信し、前記加工情報に基づいて前記励起用半導体レーザを駆動する駆動パターンを生成する駆動パターン生成部と、前記励起用半導体レーザを駆動するレーザドライバと、レーザ媒質と受動Qスイッチを有して、前記励起用半導体レーザから出射された励起光を受光した前記レーザ媒質が励起されて、前記受動Qスイッチに蓄えられた光エネルギーが一定値を超えるとパルスレーザを発振するレーザ発振器と、前記駆動パターン生成部によって生成された駆動パターンに従って前記レーザドライバと前記レーザ走査部とを駆動制御する制御部と、前記レーザ発振器から発振されたパルスレーザを、加工対象物の加工面に走査するレーザ走査部と、を備え、前記レーザ発振器は、前記パルスレーザを発振しない前記励起光の最大出力値である出力閾値より高い出力の励起光を受光し、且つ、前記励起光の出力期間が該レーザ発振器が前記受動Qスイッチを介してパルスレーザを発振する最小出力期間である期間閾値より長い場合に、前記励起光に対応するパルスレーザを発振し、前記駆動パターンは、前記励起光の出力が前記出力閾値より低い待機出力の状態から、前記励起光の出力が前記出力閾値より高い第1出力値で、前記期間閾値以下である前記受動Qスイッチを介してパルスレーザを発振しない第1出力期間の間、前記励起用半導体レーザを駆動する第1出力と、前記第1出力に続いて、前記励起光の出力が前記出力閾値以下で、前記励起用半導体レーザを駆動する第2出力と、前記第2出力に続いて、前記励起光の出力が前記出力閾値より高い第2出力値で、前記励起用半導体レーザを駆動する第3出力と、を有し、前記駆動パターン生成部は、前記加工情報に含まれる前記パルスレーザの発振を開始する開始タイミングに基づいて、前記第3出力の開始タイミングを設定することを特徴とする。
【0012】
また、請求項6に係るプログラムは、励起用半導体レーザと、前記励起用半導体レーザを駆動するレーザドライバと、レーザ媒質と受動Qスイッチを有して、前記励起用半導体レーザから出射された励起光を受光したレーザ媒質が励起されて、前記受動Qスイッチに蓄えられた光エネルギーが一定値を超えるとパルスレーザを発振するレーザ発振器と、を備え、前記レーザ発振器は、前記パルスレーザを発振しない前記励起光の最大出力値である出力閾値より高い出力の励起光を受光し、且つ、前記励起光の出力期間が該レーザ発振器が前記受動Qスイッチを介してパルスレーザを発振する最小出力期間である期間閾値より長い場合に、前記励起光に対応するパルスレーザを発振するレーザ発振装置を制御するコンピュータに、加工対象物にレーザ光により加工する加工情報を受信し、前記加工情報に基づいて前記励起用半導体レーザを駆動する駆動パターンを生成する駆動パターン生成工程と、前記駆動パターン生成工程で生成された駆動パターンに従って前記レーザドライバを駆動制御する制御工程と、を実行させ、前記駆動パターンは、前記励起光の出力が前記出力閾値より低い待機出力の状態から、前記励起光の出力が前記出力閾値より高い第1出力値で、前記期間閾値以下である前記受動Qスイッチを介してパルスレーザを発振しない第1出力期間の間、前記励起用半導体レーザを駆動する第1出力と、前記第1出力に続いて、前記励起光の出力が前記出力閾値以下で、前記励起用半導体レーザを駆動する第2出力と、前記第2出力に続いて、前記励起光の出力が前記出力閾値より高い第2出力値で、前記励起用半導体レーザを駆動する第3出力と、を有し、前記駆動パターン生成工程で、前記加工情報に含まれる前記パルスレーザの発振を開始する開始タイミングに基づいて、前記第3出力の開始タイミングを設定するように実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係るレーザ発振装置、請求項5に係るレーザ加工装置、及び、請求項6に係るプログラムでは、励起用半導体レーザを、励起光の出力が出力閾値より高い第1出力値で駆動される第1出力の駆動パターン、期間閾値以下である受動Qスイッチを介してパルスレーザを発振しない第1出力期間の間、駆動した後、続いて、励起光の出力が出力閾値以下で駆動される第2出力の駆動パターンで駆動することによって、第1出力の駆動パターンでレーザ発振器に入射された励起光は、受動Qスイッチの内部に光エネルギーを蓄え、パルスレーザは出射されない。そして、励起用半導体レーザを励起光の出力が出力閾値より高い第2出力値で駆動される第3出力の駆動パターンで駆動して、出力閾値より高い第2出力値の励起光を出射することによって、受動Qスイッチに蓄えられた光エネルギーが一定値を超えて、レーザ発振器は、短時間でパルスレーザの出射を開始する。
【0014】
これにより、第1出力の駆動パターンでの励起光によって受動Qスイッチの内部に光エネルギーを蓄えることができ、第3出力の駆動パターンで励起用半導体レーザの駆動を開始した際の、レーザ発振器のレーザ出力の立ち上がり時間を短くすることができる。従って、加工情報に含まれるパルスレーザを発振する開始タイミングに基づいて、第3出力の駆動パターンの開始タイミングを設定することによって、パルスレーザにより実際にマーキングされた文字、記号、図形等の加工開始付近における加工痕の加工深さや加工欠け等の印字品質の向上を図ることができる。
【0015】
また、請求項2に係るレーザ発振装置では、第3出力の駆動パターンに続いて、励起光の出力が第2出力の出力値よりも低い第3出力値で駆動される第4出力の駆動パターンで励起用半導体レーザを駆動することによって、励起用半導体レーザの出力が出力閾値以下の第2出力の出力値よりも低くなる。これにより、受動Qスイッチの内部に蓄えられる光エネルギーを急激に低くして、レーザ発振器のレーザ出力の立ち下がり時間を短くし、パルスレーザの発振停止の遅れを無くすことができる。従って、レーザ光による加工の加工終了タイミングに基づいて、第4出力の駆動パターンの開始タイミングを設定することによって、パルスレーザにより実際にマーキングされた文字、記号、図形等の加工終了付近における加工痕の加工深さや加工痕の角部の曲率、加工欠け等の印字品質の向上を図ることができる。
【0016】
また、請求項3に係るレーザ発振装置では、第4出力の駆動パターンに続いて、第5出力の駆動パターンにおいて出力閾値以下で励起用半導体レーザを駆動した後、続いて、第6出力の駆動パターンにおいて待機出力で励起用半導体レーザを駆動する。これにより、励起用半導体レーザの待機状態における出力を低くして、励起用半導体レーザの使用寿命を延ばし、更に、消費電力の削減化を図ることができる。
【0017】
更に、請求項4に係るレーザ発振装置では、第2出力の駆動パターンにおいて、励起用半導体レーザを励起光の出力が出力閾値以下で、且つ、待機出力より高い出力で駆動する。これにより、第2出力の駆動パターンにおいて、待機出力(例えば、「0W」の出力である。)で励起用半導体レーザを駆動した場合よりも、第3出力の駆動パターンにおける励起用半導体レーザの励起光の出力の立ち上がり時間を短くすることができ、レーザ発振器のレーザ出力の立ち上がり時間を更に短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施形態に係るレーザ加工装置1の概略構成を示す図である。
図2】レーザ発振器の概略構成を示す説明図である。
図3】レーザ加工装置1の電気的構成を示すブロック図である。
図4】レーザ加工装置1のレーザコントローラ3が励起用半導体レーザ28を駆動制御する駆動処理の一例を示すフローチャートである。
図5】励起用半導体レーザ28の駆動パターンとレーザ発振器11の動作関係を示す説明図である。
図6】従来の励起用半導体レーザの駆動パターンとレーザ発振器の動作関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係るレーザ発振装置、レーザ加工装置及びプログラムを具体化した一実施形態に基づき図面を参照しつつ詳細に説明する。先ず、本実施形態に係るレーザ加工装置1の概略構成について図1乃至図3に基づいて説明する。
【0020】
図1に示すように、本実施形態に係るレーザ加工装置1は、レーザ加工装置本体部2と、レーザコントローラ3と、電源部5とから構成されている。レーザ加工装置本体部2は、レーザ光Lを加工対象物6の加工面6A上を2次元走査して文字、記号、図形等をマーキングする加工を行う。
【0021】
レーザコントローラ3は、コンピュータで構成されて、パーソナルコンピュータ(以下、「PC」という。)7(図3参照)と双方向通信可能に接続されると共に、レーザ加工装置本体部2及び電源部5と電気的に接続されている。そして、レーザコントローラ3は、PC7から送信された印字情報(加工情報)、制御パラメータ、各種指示情報等に基づいてレーザ加工装置本体部2及び電源部5を駆動制御する。つまり、レーザコントローラ3は、レーザ加工装置1の全体を制御する。
【0022】
レーザ加工装置本体部2の概略構成について図1に基づいて説明する。尚、レーザ加工装置本体部2の説明において、レーザ発振器11からレーザ光Lを出射する方向(図1の左方向である。)が、レーザ加工装置本体部2の前方向である。また、本体ベース12のレーザ発振器11を取り付けた取付面に対して垂直方向(図1の上下方向である。)が、レーザ加工装置本体部2の上下方向である。そして、レーザ加工装置本体部2の上下方向及び前後方向に直交する方向が、レーザ加工装置本体部2の左右方向である。
【0023】
図1に示すように、レーザ加工装置本体部2は、本体ベース12と、レーザ光Lを出射するレーザ発振ユニット13と、光シャッター部15と、不図示の光ダンパーと、不図示のハーフミラーと、反射ミラー16と、光センサ17と、ガルバノスキャナ18と、fθレンズ19等から構成され、不図示の略直方体形状の筐体カバーで覆われている。
【0024】
レーザ発振ユニット13は、レーザ発振器11と、ビームエキスパンダ21等から構成されている。ビームエキスパンダ21は、レーザ光Lのビーム径を調整する(例えば、ビーム径を拡大する。)ものであり、レーザ発振器11と同軸に設けられている。不図示のハーフミラーは、光シャッター部15の前側に配置され、レーザ光Lの光路に対して斜め右後ろ方向に45度の角度を形成するように配置され、後側から入射されたレーザ光Lのほぼ全部を透過する。
【0025】
また、ハーフミラーは、後側から入射されたレーザ光Lの一部、例えば、レーザ光Lの1%を、反射ミラー16へ45度の反射角で反射する。反射ミラー16は、入射されたレーザ光Lを45度の反射角で前側方向へ反射する。光センサ17は、レーザ光Lの発光強度を検出するフォトディテクタ等で構成され、反射ミラー16で反射されたレーザ光Lが入射され、この入射されたレーザ光Lの発光強度を検出する。
【0026】
ガルバノスキャナ18は、本体ベース12の前側端部に形成された貫通孔の上側に取り付けられ、レーザ発振ユニット13から出射されたレーザ光Lを下方へ2次元走査するものである。ガルバノスキャナ18は、ガルバノX軸モータ22とガルバノY軸モータ23とが、それぞれのモータ軸が互いに直交するように外側からそれぞれの取付孔に嵌入されて本体部25に取り付けられ、各モータ軸の先端部に取り付けられた走査ミラーが内側で互いに対向している。そして、各モータ22、23の回転をそれぞれ制御して、各走査ミラーを回転させることによって、レーザ光Lを下方へ2次元走査する。この2次元走査方向は、前後方向(X方向)と左右方向(Y方向)である。
【0027】
fθレンズ19は、ガルバノスキャナ18によって2次元走査されたレーザ光Lを下方に配置された加工対象物6の加工面6Aに集光する。従って、各モータ22、23の回転を制御することによって、レーザ光Lが、加工対象物6の加工面6A上において、所望の印字パターンで前後方向(X方向)と左右方向(Y方向)に2次元走査される。
【0028】
次に、電源部5の概略構成について図1に基づいて説明する。図1に示すように、電源部5は、ケーシング27内に、励起用半導体レーザ28と、レーザドライバ29と、電源31と、冷却装置32とが配置されている。電源31は、励起用半導体レーザ28を駆動する駆動電流をレーザドライバ29を介して励起用半導体レーザ28に供給する。レーザドライバ29は、後述のようにレーザコントローラ3から入力される駆動情報に基づいて、励起用半導体レーザ28を直流駆動する。
【0029】
励起用半導体レーザ28は、光ファイバ33によってレーザ発振器11に光学的に接続されている。励起用半導体レーザ28は、レーザドライバ29から入力されるパルス状の駆動電流に対して、レーザ光を発生する閾値電流を超えた電流値に比例した出力[W]の波長λのレーザ光を光ファイバ33内に出射する。従って、レーザ発振器11は、励起用半導体レーザ28の波長λのレーザ光(以下、「励起光」という。)が光ファイバ33を介して入射される。励起用半導体レーザ28は、例えば、GaAsを用いたレーザバーを用いることができる。
【0030】
冷却装置32は、電源31及び励起用半導体レーザ28を電子冷却方式により冷却し、励起用半導体レーザ28の温度制御を行っており、励起用半導体レーザ28の発振波長を微調整することができる。尚、冷却装置32は、水冷式の冷却装置や、空冷式の冷却装置等を用いるようにしてもよい。
【0031】
次に、レーザ発振器11の概略構成について図2に基づいて説明する。図2に示すように、レーザ発振器11は、ケーシング35内に、ファイバコネクタ36と、集光レンズ37と、反射鏡38と、レーザ媒質39と、受動Qスイッチ41と、出力カプラー42と、ウインドウ43とが配設されている。ファイバコネクタ36は、光ファイバ33が接続され、励起用半導体レーザ28から出射された励起光が、光ファイバ33を介して入射される。
【0032】
集光レンズ37は、ファイバコネクタ36から入射された励起光を集光する。反射鏡38は、集光レンズ37によって集光された励起光を透過すると共に、レーザ媒質39から出射されたレーザ光を高効率で反射する。レーザ媒質39は、励起用半導体レーザ28から出射された励起光によって励起されてレーザ光を発振する。レーザ媒質39としては、例えば、レーザ活性イオンとしてネオジウム(Nd)が添加されたネオジウム添加ガドリニウムバナデイト(Nd:GdVO)結晶や、ネオジウム添加イットリウムバナデイト(Nd:YVO)結晶や、Nd:YAG結晶等を用いることができる。
【0033】
受動Qスイッチ41は、内部に蓄えられた光エネルギーがある一定値を超えたとき、透過率が80%〜90%になるという性質持った結晶である。従って、受動Qスイッチ41は、レーザ媒質39によって発振されたレーザ光をパルス状のパルスレーザとして発振するQスイッチとして機能する。受動Qスイッチ41としては、例えば、クロームYAG(Cr:YAG)結晶やCr:MgSiO結晶等を用いることができる。従って、レーザ発振器11は、受動Qスイッチ41を介してパルスレーザを発振する。
【0034】
出力カプラー42は、反射鏡38とレーザ共振器を構成する。出力カプラー42は、例えば、表面に誘電体層膜をコーティングした凹面鏡により構成された部分反射鏡で、波長1063nmでの反射率は、80%〜95%である。ウインドウ43は、合成石英等から形成され、出力カプラー42から出射されたレーザ光を外部へ透過させる。
【0035】
従って、レーザ発振器11は、励起用半導体レーザ28から光ファイバ33を介してパルスレーザを発振しない励起光の最大出力値である「出力閾値」より高い出力の励起光を受光し、且つ、励起光の出力期間が該レーザ発振器11がパルスレーザを発振する最小出力期間である「期間閾値」より長い場合に、励起光の出力閾値を超えた出力値に比例した平均出力を持つ波長λのパルスレーザを発振する。「出力閾値」と「期間閾値」は、励起用半導体レーザ28の特性や、Nd:YVO結晶やNd:YAG結晶等の種類、又は、これらの組み合わせによって決定される。
【0036】
次に、レーザ加工装置1の回路構成について図3に基づいて説明する。図3に示すように、レーザ加工装置1は、レーザ加工装置1の全体を制御するレーザコントローラ3、ガルバノコントローラ45、ガルバノドライバ46、レーザドライバ29等から構成されている。レーザコントローラ3には、ガルバノコントローラ45、レーザドライバ29、光センサ17等が電気的に接続されている。
【0037】
また、レーザコントローラ3には、PC7が双方向通信可能に接続され、PC7から送信された印字情報、レーザ加工装置本体部2の制御パラメータ、ユーザからの各種指示情報等を受信可能に構成されている。また、PC7には、不図示の入出力インターフェースを介してマウスやキーボード等から構成される入力操作部61、液晶ディスプレイ(LCD)62等が電気的に接続されている。
【0038】
レーザコントローラ3は、レーザ加工装置1の全体の制御を行う演算装置及び制御装置としてのCPU51、RAM52、ROM53、時間を計測するタイマ54等を備えている。また、CPU51、RAM52、ROM53、タイマ54は、不図示のバス線により相互に接続されて、相互にデータのやり取りが行われる。
【0039】
RAM52は、CPU51により演算された各種の演算結果や印字パターンのXY座標データ等を一時的に記憶させておくためのものである。ROM53は、各種のプログラムを記憶させておくものであり、PC7から送信された印字情報に基づいて印字パターンのXY座標データを算出してRAM52に記憶する等の各種プログラムが記憶されている。ROM53には、フォントの種類別に、直線と楕円弧とで構成された各文字のフォントの始点、終点、焦点、曲率等のデータが記憶されている。ROM53には、後述の励起用半導体レーザ28を駆動制御する駆動処理のプログラム(図4参照)が記憶されている。
【0040】
そして、CPU51は、かかるROM53に記憶されている各種のプログラムに基づいて各種の演算及び制御を行なうものである。例えば、CPU51は、PC7から入力された印字情報に基づいて算出した印字パターンのXY座標データ、ガルバノ走査速度情報等をガルバノコントローラ45に出力する。また、CPU51は、PC7から入力された印字情報に基づいて設定した励起用半導体レーザ28の励起光出力[W]、励起光の出力期間[ms]等の励起用半導体レーザ28の駆動情報をレーザドライバ29に出力する。また、CPU51は、印字パターンのXY座標データ、ガルバノスキャナ18のON・OFFを指示する加工信号等をガルバノコントローラ45に出力する。
【0041】
ガルバノコントローラ45は、レーザコントローラ3から入力された印字パターンのXY座標データ、ガルバノ走査速度情報等に基づいて、ガルバノX軸モータ22とガルバノY軸モータ23の駆動角度、回転速度等を算出して、駆動角度、回転速度を表すモータ駆動情報をガルバノドライバ46へ出力する。ガルバノドライバ46は、ガルバノコントローラ45から入力された駆動角度、回転速度を表すモータ駆動情報に基づいて、ガルバノX軸モータ22とガルバノY軸モータ23を駆動制御して、レーザ光Lを2次元走査する。
【0042】
レーザドライバ29は、レーザコントローラ3から入力された励起用半導体レーザ28の励起光出力[W]、励起光の出力期間[ms]等のレーザ駆動情報等に基づいて、励起用半導体レーザ28を駆動制御する。具体的には、レーザドライバ29は、レーザコントローラ3から入力されたレーザ駆動情報の励起光出力[W]に比例した電流値のパルス状の駆動電流を発生し、レーザ駆動情報の励起光の出力期間[ms]の間、励起用半導体レーザ28に出力する。これにより、励起用半導体レーザ28は、励起光出力[W]の励起光を出力期間[ms]の間、光ファイバ33内に出射する。
【0043】
[励起用半導体レーザ28の駆動処理]
次に、上記のように構成されたレーザ加工装置1において、レーザコントローラ3のCPU51が励起用半導体レーザ28を駆動制御する駆動処理について図4及び図5に基づいて説明する。尚、CPU51は、PC7から加工対象物6にレーザ光L(パルスレーザ)でマーキングする「加工速度」、レーザ光Lの「レーザーパワー」、レーザ光Lの発振を開始する開始タイミング、文字、記号、図形等の印字情報等を受信し、レーザ光による加工開始指示が入力された場合に、図4のS11〜S22の処理を実行する。
【0044】
図4に示すように、先ず、ステップ(以下、Sと略記する)11において、CPU51は、受信した文字、記号、図形等の「マーキングデータ」に基づいて印字パターンのXY座標データを算出してRAM52に記憶する。また、CPU51は、レーザ光Lのレーザーパワー[W]から励起用半導体レーザ28の加工時に出力する励起光出力[W]を算出してRAM52に記憶する。例えば、図5の上段部と中段部に示すように、CPU51は、レーザ発振器11が加工時に発振するレーザ光Lの出力P1[W]に対する励起用半導体レーザ28の励起光出力L2[W]を算出してRAM52に記憶する。
【0045】
そして、CPU51は、励起用半導体レーザ28の駆動パターンを生成し、RAM52に記憶する。例えば、図5の中段部に示すように、CPU51は、待機状態W0、第1出力W1乃至第6出力W6から構成される励起用半導体レーザ28の駆動パターンを生成する。具体的には、CPU51は、先ず、励起光出力が0[W]の待機出力の待機状態W0から、加工時の励起光出力L2[W](例えば、L2=24[W]である。)で、且つ、励起光の出力期間がレーザ発振器11がパルスレーザを発振する最小出力期間である「期間閾値」以下である第1出力期間T1[ms](例えば、T1=3[ms]である。)の第1出力W1を設定してRAM52に記憶する。
【0046】
尚、待機状態W0の待機出力は、0[W]から後述の励起光出力L3[W](例えば、L3=5[W]である。)までの任意の出力に設定するようにしてもよい。また、第1出力W1の励起光出力は、加工時の励起光出力L2[W]よりも低い出力で、且つ、レーザ発振器11がパルスレーザを発振しない励起光の最大出力値である「出力閾値」のL1[W](例えば、L1=6[W]である。)よりも高い出力(例えば、20[W]である。)に設定するようにしてもよい。
【0047】
そして、第1出力W1に続いて、CPU51は、レーザ発振器11がパルスレーザを発振しない励起光の最大出力値である「出力閾値」のL1[W]で、第1出力期間T1[ms]よりも長い第2出力期間T2[ms](例えば、T2=10[ms]である。)の第2出力W2を設定してRAM52に記憶する。従って、第2出力W2では、レーザ発振器11はパルスレーザを発振しないため、第1出力W1の励起光による低励起状態が維持され、受動Qスイッチ41に光エネルギーが蓄えられる。
【0048】
そして、第2出力W2に続いて、CPU51は、加工時の励起光出力L2[W]で、且つ、励起光の出力期間がレーザ光Lを2次元走査して、文字、記号、図形等を加工対象物6の加工面6Aに加工する時間、つまり、第3出力期間T3[ms](例えば、T3=100[ms]である。)の第3出力W3を設定してRAM52に記憶する。尚、CPU51は、文字、記号、図形等の「全加工長さ」と、レーザ光Lでマーキングする「加工速度」とから第3出力期間T3[ms]を算出する。
【0049】
そして、第3出力W3に続いて、CPU51は、レーザ発振器11がパルスレーザを発振しない励起光の最大出力値である「出力閾値」のL1[W]よりも低い励起光出力L3[W](例えば、L3=5[W]である。)で、レーザ発振器11が低励起状態になりパルスレーザを発振しなくなる時間、つまり、第4出力期間T4[ms](例えば、T4=1[ms]である。)の第4出力W4を設定してRAM52に記憶する。
【0050】
そして、第4出力W4に続いて、CPU51は、レーザ発振器11がパルスレーザを発振しない励起光の最大出力値である「出力閾値」のL1[W]で、第2出力期間T2[ms]とほぼ同じ出力期間である第5出力期間T5[ms](例えば、T5=10[ms]である。)の第5出力W5を設定してRAM52に記憶する。更に、第5出力W5に続いて、CPU51は、励起光出力が0[W]の待機出力である第6出力W6を設定してRAM52に記憶する。
【0051】
続いて、S12において、CPU51は、RAM52に記憶している励起用半導体レーザ28の駆動パターンから、第1出力W1の励起光出力L2[W]と第1出力期間T1[ms]を読み出し、レーザドライバ29に出力する。これにより、励起用半導体レーザ28は、レーザドライバ29により第1出力期間T1[ms]の間、直流駆動され、出力L2[W]の励起光を光ファイバ33内に出射する。この結果、図5の上段部と中段部に示すように、レーザ発振器11は、光ファイバ33を介してレーザ媒質39にレーザ光が入射され、レーザ光を発振して低励起状態になり、受動Qスイッチ41に光エネルギーが蓄えられるが、受動Qスイッチ41の作用によりパルスレーザは出射しない。
【0052】
尚、S12において、CPU51は、PC7から受信したレーザ光Lの発振を開始する開始タイミングから第1出力期間T1[ms]と第2出力期間T2[ms]の合計時間を引き算した時刻を、第1出力W1の励起光出力L2[W]と第1出力期間T1[ms]をレーザドライバ29に出力するタイミングとして設定する。
【0053】
そして、S13において、CPU51は、RAM52に記憶している励起用半導体レーザ28の駆動パターンから、第2出力W2の励起光出力L1[W]と第2出力期間T2[ms]を読み出し、レーザドライバ29に出力する。これにより、励起用半導体レーザ28は、レーザドライバ29により第2出力期間T2[ms]の間、直流駆動され、出力L1[W]の励起光を光ファイバ33内に出射する。この結果、図5の上段部と中段部に示すように、レーザ発振器11は、パルスレーザを発振しない励起光が光ファイバ33を介して入射されるため、第1出力W1の励起光による低励起状態が維持され、パルスレーザは出射しない。
【0054】
続いて、S14において、CPU51は、レーザ光Lによる加工開始か否かを判定する判定処理を実行する。具体的には、CPU51は、第2出力W2の励起光出力L1[W]と第2出力期間T2[ms]をレーザドライバ29に出力した後、第2出力期間T2[ms]の時間が経過したか否かを判定する判定処理を実行する。つまり、CPU51は、レーザ光L(パルスレーザ)の発振を開始する開始タイミングになったか否かを判定する判定処理を実行する。
【0055】
そして、レーザ光Lによる加工開始でない、つまり、第2出力期間T2[ms]の時間が経過していないと判定した場合には(S14:NO)、CPU51は、再度S14以降の処理を実行する。
【0056】
一方、レーザ光Lによる加工開始である、つまり、第2出力期間T2[ms]の時間が経過したと判定した場合には(S14:YES)、CPU51は、S15の処理に移行する。S15において、CPU51は、RAM52に記憶している励起用半導体レーザ28の駆動パターンから、第3出力W3の励起光出力L2[W]と第3出力期間T3[ms]を読み出し、レーザドライバ29に出力する。これにより、励起用半導体レーザ28は、レーザドライバ29により第3出力期間T3[ms]の間、直流駆動され、出力L2[W]の励起光を光ファイバ33内に出射する。
【0057】
この結果、図5の上段部と中段部に示すように、レーザ発振器11は、第1出力W1の励起光出力L2[W]によって、パルスレーザを発振しない低いエネルギー状態である低励起状態とされているから、光ファイバ33を介してレーザ媒質39にレーザ光が入射され、短時間でパルスレーザを発振する高いエネルギー状態である高励起状態に遷移される。これにより、受動Qスイッチ41には、第1出力W1の励起光出力L2[W]によって光エネルギーが蓄えられているため、レーザ発振器11は、短時間でレーザ出力P1[W]のパルスレーザのレーザ光Lをウインドウ43から出射する。
【0058】
そして、S16において、CPU51は、印字パターンのXY座標データ、PC7から受信した「加工速度」の各データをガルバノコントローラ45に出力する。そして、CPU51は、図5の下段部に示すように、レーザ光Lによる加工開始を指示する加工信号を「ON」に設定して、ガルバノコントローラ45に出力する。これにより、ガルバノコントローラ45は、印字パターンのXY座標データに従って、ガルバノX軸モータ22とガルバノY軸モータ23の駆動を開始し、レーザ光Lを2次元走査して、文字、記号、図形等を加工対象物6の加工面6Aに加工する。
【0059】
続いて、S17において、CPU51は、レーザ光Lによる加工終了か否かを判定する判定処理を実行する。具体的には、CPU51は、第3出力W3の励起光出力L2[W]と第3出力期間T3[ms]をレーザドライバ29に出力した後、第3出力期間T3[ms]の時間が経過したか否かを判定する判定処理を実行する。レーザ光Lによる加工終了でない、つまり、第3出力期間T3[ms]の時間が経過していないと判定した場合には(S17:NO)、CPU51は、再度S17以降の処理を実行する。
【0060】
一方、レーザ光Lによる加工終了である、つまり、第3出力期間T3[ms]の時間が経過したと判定した場合には(S17:YES)、CPU51は、S18の処理に移行する。S18において、CPU51は、RAM52に記憶している励起用半導体レーザ28の駆動パターンから、第4出力W4の励起光出力L3[W]と第4出力期間T4[ms]を読み出し、レーザドライバ29に出力する。これにより、励起用半導体レーザ28は、レーザドライバ29により第4出力期間T4[ms]の間、直流駆動され、第2出力W2の励起光出力L1[W]よりも低い励起光出力L3[W]の励起光を光ファイバ33内に出射する。
【0061】
この結果、図5の上段部と中段部に示すように、レーザ発振器11は、高励起状態から第4出力W4の励起光出力L3[W]によって短時間で低励起状態に遷移される。これにより、レーザ発振器11は、受動Qスイッチ41の内部に蓄えられる光エネルギーが急激に低下し、短時間でレーザ出力P1[W]のパルスレーザのレーザ光Lの出射が停止される。
【0062】
そして、S19において、CPU51は、図5の下段部に示すように、レーザ光Lによる加工開始を指示する加工信号を「OFF」に設定して、ガルバノコントローラ45に出力する。これにより、ガルバノコントローラ45は、ガルバノX軸モータ22とガルバノY軸モータ23の駆動を停止し、レーザ光Lの2次元走査を終了する。
【0063】
続いて、S20において、CPU51は、RAM52に記憶している励起用半導体レーザ28の駆動パターンから、第5出力W5の励起光出力L1[W]と第5出力期間T5[ms]を読み出し、レーザドライバ29に出力する。これにより、励起用半導体レーザ28は、レーザドライバ29により第5出力期間T5[ms]の間、直流駆動され、第5出力W5の励起光出力L1[W]の励起光を光ファイバ33内に出射する。この結果、図5の上段部と中段部に示すように、レーザ発振器11は、パルスレーザを発振しない励起光が光ファイバ33を介して入射されるため、パルスレーザは出射しない。
【0064】
その後、S21において、CPU51は、励起用半導体レーザ28の駆動を停止して、励起光の出力を停止するか否かを判定する判定処理を実行する。具体的には、CPU51は、第5出力W5の励起光出力L1[W]と第5出力期間T5[ms]をレーザドライバ29に出力した後、第5出力期間T5[ms]の時間が経過したか否かを判定する判定処理を実行する。そして、励起用半導体レーザ28の駆動を停止しない、つまり、第5出力期間T5[ms]の時間が経過していないと判定した場合には(S21:NO)、CPU51は、再度S21以降の処理を実行する。
【0065】
一方、励起用半導体レーザ28の駆動を停止する、つまり、第5出力期間T5[ms]の時間が経過したと判定した場合には(S21:YES)、CPU51は、S22の処理に移行する。S22において、RAM52に記憶している励起用半導体レーザ28の駆動パターンから、第6出力W6の励起光出力が0[W]の待機出力を読み出し、レーザドライバ29に出力する。これにより、励起用半導体レーザ28は、レーザドライバ29による駆動が停止され、光ファイバ33への励起光の入射が停止される。その後、CPU51は、当該処理を終了する。
【0066】
ここで、レーザコントローラ3は、駆動パターン生成部及び制御部の一例として機能する。また、レーザコントローラ3、電源部5及びレーザ発振ユニット13は、レーザー発振装置の一例を構成する。また、ガルバノスキャナ18、ガルバノドライバ46及びガルバノコントローラ45は、レーザ走査部の一例を構成する。
【0067】
以上詳細に説明した通り、本実施形態に係るレーザ加工装置1では、レーザコントローラ3のCPU51は、励起用半導体レーザ28を第1出力W1で駆動した後、続いて、第2出力W2で駆動することによって、第1出力W1でレーザ発振器11に入射された励起光により、レーザ発振器11はレーザ光を発振して低励起状態になり、受動Qスイッチ41の内部に光エネルギーが蓄えられるが、パルスレーザのレーザ光Lは出射されない。そして、励起用半導体レーザ28を第3出力W3で駆動して、励起光を出射することによって、受動Qスイッチ41に蓄えられた光エネルギーが一定値を超えて、レーザ発振器11は、短時間でパルスレーザの出射を開始する。
【0068】
これにより、第1出力W1での励起光によって受動Qスイッチ41の内部に光エネルギーを蓄えることができ、第3出力W3で励起用半導体レーザ28の駆動を開始した際の、レーザ発振器11のレーザ出力の立ち上がり時間を短くすることができる。従って、レーザ光Lにより加工する加工開始タイミングに、第3出力W3の開始タイミングを設定することによって、レーザ光Lにより実際にマーキングされた文字、記号、図形等の加工開始付近における加工痕の加工深さや加工欠け等の印字品質の向上を図ることができる。
【0069】
また、第3出力W3に続いて、第4出力W4で励起用半導体レーザ28を駆動することによって、励起用半導体レーザ28は、第2出力W2の励起光出力L1[W]よりも低い励起光出力L3[W]の励起光を光ファイバ33内に出射する。これにより、受動Qスイッチ41の内部に蓄えられる光エネルギーを急激に低くして、レーザ発振器11のレーザ出力の立ち下がり時間を短くし、パルスレーザの発振停止の遅れを無くすことができる。従って、レーザ光Lによる加工の加工終了タイミングに、第4出力W4の開始タイミングを設定することによって、レーザ光Lにより実際にマーキングされた文字、記号、図形等の加工終了付近における加工痕の加工深さや加工痕の角部の曲率、加工欠け等の印字品質の向上を図ることができる。
【0070】
また、第4出力W4に続いて、第5出力W5でパルスレーザを発振しない励起光出力L1[W]で励起用半導体レーザ28を駆動した後、第6出力W6で励起光出力が0[W]の待機出力で励起用半導体レーザ28を駆動する。これにより、励起用半導体レーザ28の待機状態における出力を0[W]にして、励起用半導体レーザ28の使用寿命を延ばし、更に、消費電力の削減化を図ることができる。
【0071】
尚、本発明は前記実施形態に限定されることはなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることは勿論である。尚、以下の説明において上記図1乃至図5の前記実施形態に係るレーザ加工装置1の構成等と同一符号は、前記実施形態に係るレーザ加工装置1の構成等と同一あるいは相当部分を示すものである。
【0072】
例えば、第2出力W2における励起用半導体レーザ28の励起光出力を、レーザ発振器11がパルスレーザを発振しない励起光の最大出力値である「出力閾値」のL1[W]以下で、且つ、待機状態W0の待機出力0[W]よりも大きくなるように設定してもよい。例えば、第2出力W2における励起用半導体レーザ28の励起光出力を、「出力閾値」のL1[W]の50%以上に設定するのが望ましい。これにより、第2出力W2における励起用半導体レーザ28の励起光出力を、待機出力0[W]にした場合よりも、第3出力W3における励起用半導体レーザ28の励起光の出力の立ち上がり時間を短くすることができ、レーザ発振器11のレーザ出力の立ち上がり時間を短くすることができる。
【符号の説明】
【0073】
1 レーザ加工装置
3 レーザコントローラ
11 レーザ発振器
28 励起用半導体レーザ
29 レーザドライバ
33 光ファイバ
39 レーザ媒質
41 受動Qスイッチ
51 CPU
52 RAM
53 ROM
54 タイマ
図1
図2
図3
図4
図5
図6