特許第5999124号(P5999124)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5999124制御装置、ヘッドマウントディスプレイ、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5999124
(24)【登録日】2016年9月9日
(45)【発行日】2016年9月28日
(54)【発明の名称】制御装置、ヘッドマウントディスプレイ、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/14 20060101AFI20160915BHJP
   G02B 27/02 20060101ALI20160915BHJP
   H04N 5/64 20060101ALI20160915BHJP
【FI】
   A61B8/14
   G02B27/02 Z
   H04N5/64 511A
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-36370(P2014-36370)
(22)【出願日】2014年2月27日
(65)【公開番号】特開2015-159929(P2015-159929A)
(43)【公開日】2015年9月7日
【審査請求日】2015年3月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104178
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100152515
【弁理士】
【氏名又は名称】稲山 朋宏
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 邦宏
【審査官】 右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭57−160446(JP,A)
【文献】 特開2001−187057(JP,A)
【文献】 特開2008−070684(JP,A)
【文献】 特開2007−097902(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/14
G02B 27/02
H04N 5/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エコー信号を受信する受信手段と、
受信された前記エコー信号の振幅の中で、所定値以上の第1振幅に対応する色、及び、振幅0である第2振幅に対応する色のうち、前記第2振幅に対応する色を、第1明度、所定の彩度、及び、所定の色相から特定されるRGB値を有する第1色に決定し、前記第1振幅に対応する色を、前記第1明度よりも小さく且つ50%以上の第2明度、所定の彩度、及び所定の色相から特定されるRGB値を有する第2色に決定する決定手段と、
前記決定手段により決定された色により前記エコー信号を表示するための映像情報を生成する生成手段と、
前記生成手段により生成した映像情報を、シースルータイプの表示装置に出力する制御手段と
を備えることを特徴とする制御装置。
【請求項2】
前記決定手段は、前記第1振幅から前記第2振幅までの間の振幅に対応する色を、前記第1明度から前記第2明度までの間の何れかの明度である第3明度から特定されるRGB値を有する第3色に決定することを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記第1振幅は、前記エコー信号の最大振幅であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記決定手段は、前記第1振幅から前記第振幅までの振幅について、前記第1明度から前記第明度までの明度と、所定の彩度、及び所定の色相から特定されるRGB値を有する第色を決定することを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一項に記載の制御装置。
【請求項5】
前記決定手段は、
前記第1振幅から前記第振幅までN等分(Nは整数)した複数の振幅のうち大きい順でn(nはN以下の整数)番目の振幅に対応する色を、前記第1明度から前記第明度までN等分した複数の明度のうち前記第1明度に近い順にn番目の明度、所定の彩度、及び所定の色相から特定されるRGB値を有する前記第色に決定することを特徴とする請求項に記載の制御装置。
【請求項6】
前記決定手段は、
前記第2振幅に対応する前記第1色を、100%の前記第1明度を有する白色に決定することを特徴とする請求項1から請求項5の何れか一項に記載の制御装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6の何れか一項に記載の前記制御装置と前記表示装置とを備えたことを特徴とするヘッドマウントディスプレイ。
【請求項8】
エコー信号を受信する第1受信ステップと、
受信された前記エコー信号の振幅の中で、所定値以上の第1振幅に対応する色、及び、振幅0である第2振幅に対応する色のうち、前記第2振幅に対応する色を、第1明度、所定の彩度、及び、所定の色相から特定されるRGB値を有する第1色に決定し、前記第1振幅に対応する色を、前記第1明度よりも小さく且つ50%以上の第2明度、所定の彩度、及び所定の色相から特定されるRGB値を有する第2色に決定する決定ステップと、
前記決定ステップにより決定された色により前記エコー信号を表示するための映像情報を生成する生成ステップと、
前記生成ステップにより生成した映像情報を、シースルータイプの表示装置に出力する制御ステップと
をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、頭部に装着可能なヘッドディスプレイを制御する制御装置、ヘッドディスプレイ及び制御装置を備えたヘッドマウントディスプレイ、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
医療用の診断装置を用いて診断映像を表示する技術が知られている。診断映像は、例えば、超音波診断装置の探触子から外部に出力されるエコー信号に応じた映像である。診断装置の具体例として、超音波診断装置、Magnetic Resonance Imaging (MRI)装置、X線Computed Tomography (CT)装置等がある。特許文献1には、エコー信号に応じた映像から対象体の境界を検出する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−81824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
医療用の診断装置から外部に出力される診断映像をユーザに見せるために、光学シースルー型のヘッドマウントディスプレイ(Head Mounted Display、HMD)が使用される場合がある。HMDの表示部に直接診断映像を表示させ、ユーザに診断映像を認識させたいというニーズがある。しかしながら上記技術では、自動で診断映像を抽出して、光学シースルー型のHMDの表示部に表示させることができなかった。
【0005】
本発明の目的は、ユーザが診断対象物を容易に認識できる映像を、ヘッドディスプレイの表示部に自動で表示させることが可能な制御装置、ヘッドディスプレイ及び制御装置を備えたヘッドマウントディスプレイ、及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様に係る制御装置は、エコー信号を受信する受信手段と、受信された前記エコー信号の振幅の中で、所定値以上の第1振幅に対応する色、及び、振幅0である第2振幅に対応する色のうち、前記第2振幅に対応する色を、第1明度、所定の彩度、及び、所定の色相から特定されるRGB値を有する第1色に決定し、前記第1振幅に対応する色を、前記第1明度よりも小さく且つ50%以上の第2明度、所定の彩度、及び所定の色相から特定されるRGB値を有する第2色に決定する決定手段と、前記決定手段により決定された色により前記エコー信号を表示するための映像情報を生成する生成手段と、前記生成手段により生成した映像情報を、シースルータイプの表示装置に出力する制御手段とを備えることを特徴とする。
【0007】
第1態様によれば、制御装置は、エコー信号の第1振幅及び第2振幅の夫々に対応する色を決定し、映像情報を自動的に生成して表示装置に出力できる。この場合、制御装置は、エコー信号の振幅に応じて映像を区別し、表示装置に出力できる。従ってユーザは、エコー信号の振幅に応じた映像を容易に認識できる。
又、第2振幅が振幅0であるので、制御装置は、エコー信号の振幅0に対応する部分の映像を区別して表示装置に出力できる。
又、第2色は、第1明度よりも小さく且つ50%以上の第2明度から特定されるRGB値を有するので、制御装置は、第2明度に応じて特定されるRGB値を有する第2色が黒色に近づくことを抑制できる。このため、表示装置を装着したユーザに外界の実像を見せることを適切に抑制できる。
又、決定手段は、第2振幅に対応する色を第1色に決定し、第1振幅に対応する色を第2色に決定する。この場合、制御装置は、第2振幅に対応する色を第1振幅に対応する色よりも明るくした映像を、表示装置に出力できる。
【0008】
第1態様において、前記決定手段は、前記第1振幅から前記第2振幅までの間の振幅に対応する色を、前記第1明度から前記第2明度までの間の何れかの明度である第3明度から特定されるRGB値を有する第3色に決定してもよい。この場合、制御装置は、エコー信号の第1振幅から第2振幅までの間の振幅に応じて映像を区別し、表示装置に出力できる。
【0009】
第1態様において、前記第1振幅は、前記エコー信号の最大振幅であってもよい。この場合、制御装置は、受信したエコー信号に応じて第1振幅を決定できる。
【0013】
第1態様において、前記決定手段は、前記第1振幅から前記第振幅までの振幅について、前記第1明度から前記第明度までの明度と、所定の彩度、及び所定の色相から特定されるRGB値を有する第色を決定してもよい。この場合制御装置は、エコー信号の第1振幅から第振幅までの間の振幅に対応する部分の映像を区別して表示装置に出力できる。
【0014】
第1態様において、前記決定手段は、前記第1振幅から前記第振幅までN等分(Nは整数)した複数の振幅のうち大きい順でn(nはN以下の整数)番目の振幅に対応する色を、前記第1明度から前記第明度までN等分した複数の明度のうち前記第1明度に近い順にn番目の明度、所定の彩度、及び所定の色相から特定されるRGB値を有する前記第色に決定してもよい。この場合、制御装置は、第1振幅から第振幅までの間の振幅に対応する第色を、第1色から第色まで変化させることができる。このため、制御装置は、エコー信号の第1振幅から第振幅までの振幅に対応する部分の映像を、振幅毎に区別して表示装置に出力できる。
第1態様において、前記決定手段は、前記第2振幅に対応する前記第1色を、100%の前記第1明度を有する白色に決定してもよい。
【0017】
本発明の第2態様に係るヘッドマウントディスプレイは、第1態様に係る前記制御装置と前記表示装置とを備えたことを特徴とする。第2態様によれば、第1態様と同様の効果を奏することができる。
【0018】
本発明の第3態様に係るプログラムは、エコー信号を受信する第1受信ステップと、受信された前記エコー信号の振幅の中で、所定値以上の第1振幅に対応する色、及び、振幅0である第2振幅に対応する色のうち、前記第2振幅に対応する色を、第1明度、所定の彩度、及び、所定の色相から特定されるRGB値を有する第1色に決定し、前記第1振幅に対応する色を、前記第1明度よりも小さく且つ50%以上の第2明度、所定の彩度、及び所定の色相から特定されるRGB値を有する第2色に決定する決定ステップと、前記決定ステップにより決定された色により前記エコー信号を表示するための映像情報を生成する生成ステップと、前記生成ステップにより生成した映像情報を、シースルータイプの表示装置に出力する制御ステップとをコンピュータに実行させる。第3態様によれば、第1態様と同様の効果を奏することができる。


【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】HMD1の斜視図である。
図2】エコー信号76及び診断映像77を示す図である。
図3】HMD1の電気的構成を示すブロック図である。
図4】メイン処理のフローチャートである。
図5】エコー信号76及び診断映像78を示す図である。
図6】エコー信号76及び診断映像79を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明を具体化した実施形態について、図面を参照して説明する。図1を参照し、ヘッドマウントディスプレイ(以下、HMDという。)1の概要を説明する。なお、本実施形態では、HMD1は、表示装置(以下、ヘッドディスプレイ又はHDという。)10及び制御装置(以下、コントロールボックス又はCBという。)50を備える。以下の説明において、図1の上方、下方、右斜め下方、左斜め上方、右斜め上方及び左斜め下方が、夫々、HMD1の上方、下方、前方、後方、右方及び左方である。なお、表示装置10は、本実施形態では、シースルータイプの頭部装着可能な表示装置である。
【0021】
HD10の概要を説明する。HD10は、専用の装着具である眼鏡5に取り付けられる。ユーザは、HD10が取り付けられた眼鏡5をかけることにより、HD10を頭部に装着して使用する。眼鏡5以外に、HD10は取り付けられても良い。HD10は、映像光を後方に向けて照射できる。映像光は、HD10を装着したユーザの左眼に入射する。HD10は、ハーネス7を介してCB50と着脱可能に接続する。HD10は、筐体2、ハーフミラー3、表示部15(図3参照)、接眼光学系(図示略)等を主な構成要素とする。
【0022】
筐体2は、眼鏡5の右端部に設けられる。筐体2の左端側に、ハーフミラー3が設けられる。ハーフミラー3は、ユーザがHD10を頭部に装着した状態で、ユーザの左眼の前方に配置される。筐体2の内部に、表示部15及び接眼光学系が右側から左側に順番に並んで配置される。表示部15は液晶素子である。表示部15には、CB50からハーネス7を介して受信した映像信号に応じた映像が表示される。表示部15の表示面は左方向を向く。表示部15に表示された映像を示す映像光は、接眼光学系に右側から入射し、左側からハーフミラー3に向けて出射する。ハーフミラー3は、接眼光学系から出射された映像光を後方に反射する。HMD1がユーザに装着されている状態で、映像光は、ユーザの左眼の眼球に入射する。又、ハーフミラー3は、外界の実像からの光を、ユーザの左眼に向けて透過する。HMD1は、ユーザの視野範囲内の実像(例えば、外界の風景等)に、表示部15に表示された映像を重ねた状態の光景を、ユーザに視認させる。
【0023】
眼鏡5は、ユーザの頭部に装着されることで、HD10をユーザの頭部に保持可能である。眼鏡5は、フレーム6及び支持部4を備える。フレーム6の形状は、通常の眼鏡と略同一であるので、詳細な説明は省略する。フレーム6のうち、左眼用レンズを支えるリム部の上面右端に、支持部4が設けられる。支持部4は、HD10の筐体2を保持する。支持部4は、筐体2の保持位置を上下方向及び左右方向に移動できる。ユーザは、筐体2を上下方向及び左右方向に移動させることにより、左眼の眼球の位置とハーフミラー3の位置とが前後方向に並ぶように位置を調整できる。
【0024】
なお、HD10は、ユーザが日常的に使用する眼鏡、ヘルメット、ヘッドホンなど、他の装着具に取り付けられてもよい。表示部15は、他の空間変調素子であってもよい。例えば表示部15は、映像信号に応じた強度のレーザ光を2次元走査して表示を行う網膜走査型表示部、及び有機EL(Organic Electro-luminescence)ディスプレイであってもよい。また、図1では支持部4及びHD10がフレーム6の右側に設けられるが、支持部4及びHD10は、フレーム6の右側に設けられてもよい。この場合、HMD1がユーザに装着されている状態で、映像光は、ユーザの右眼の眼球に入射する。
【0025】
CB50の概要を説明する。CB50は、例えばユーザの腰ベルトや腕等に取り付けられる。CB50はHD10を制御する。CB50は、ハーネス7を介してHD10と着脱可能に接続する。CB50は、筐体63、スイッチ61、LED62、入力端子72等を主な構成要素とする。筐体63の形状は、縁部の丸い略直方体である。スイッチ61は、HD10における各種設定、使用時における各種操作、電源のオンオフを行うためのスイッチである。LED62は、HMD1の状態をユーザに通知するための発光素子である。入力端子72は、エコー信号又は映像信号を受信するための端子である。入力端子72には、エコー信号又は映像信号の通信を行うためのケーブル71が、着脱可能に接続される。エコー信号は探触子から出力され、映像信号は映像装置から出力される。
【0026】
エコー信号及び探触子の概要を説明する。探触子は、超音波を診断対象物に照射し、診断対象物によって反射された超音波(以下、反射波という。)を検出する周知のプローブである。探触子は、検出した反射波の強度の時間変化を示すエコー信号を、ケーブル71に出力可能である。なお、探触子は、複数の超音波信号を対象物に発射し、跳ね返りを検出する。エコー信号は、複数のピークが時系列に並んだ波形を示す。なお、通常、探触子は周知の超音波診断装置に接続される。この場合、超音波診断装置は、探触子から受信した複数のエコー信号のピークの位置及び振幅を可視化した映像(以下、診断映像という。)を作成し、モニタ等に出力する。複数のピークの夫々の位置は、探触子から診断対象物までの距離を示す。
【0027】
図2を参照し、超音波診断装置がエコー信号76を受信してモニタに表示させる診断映像77について説明する。診断映像77は白黒映像である。診断映像77では、エコー信号76の夫々のピークが、振幅に応じた明度により特定されるRGB値を有する無彩色(灰色)によって示される。エコー信号76の振幅「0」の部分は、「0%」の明度により特定されるRGB値を有する無彩色(黒色)によって示される。なお、本実施形態では、振幅「0」の部分について、「0%」の明度により特定されるRGB値を有する無彩色(黒色)によって示されるが、振幅「0」から所定範囲以内の振幅について、「0%」の明度により特定されるRGB値を有する無彩色(黒色)によって示されても良い。一方、エコー信号76の最大のピークの部分は、「100%」の明度により特定されるRGB値を有する無彩色(白色)によって示される。従って診断映像77では、探触子によって反射波が検出されない部分、即ち、診断対象物のない部分を示す背景77Aは黒色で示され、探触子によって反射波が検出された部分、即ち診断対象物77Bは、明るさの異なる無彩色によって示される。
【0028】
探触子は、超音波の照射と反射波の検出とを繰り返しながら、超音波を照射する第1走査方向を走査する。探触子は、1回の超音波の照射毎に、1つのエコー信号を出力する。超音波診断装置は、1つのエコー信号に応じた探触子から診断対象物までの距離を表す映像77Cを、上記の方法によって生成する。探触子は、1走査分に対応する複数のエコー信号を生成する。超音波診断装置は、生成された複数のエコー信号の夫々に基づいて生成された探触子から診断対象物までの距離を表す複数の映像77Cを、第1走査方向に並べることによって、1走査分に対応する診断映像77を生成する。
【0029】
一方、本実施形態では、探触子は、ケーブル71を介してCB50に直接接続される。CB50は、受信したエコー信号76に応じて、診断映像77とは異なる診断映像78(図5参照、後述)を生成し、HD10の表示部15に表示させる。CB50が診断映像77と異なる診断映像78を生成する理由は、次の通りである。HD10の表示部15に診断映像77が表示された場合、黒色によって示される背景77Aの部分は、完全なシースルー状態となる。この場合、診断映像77のうち背景77Aの部分に外界の実像が見えてしまうため、ユーザは診断映像77を認識し難くなる場合がある。このためCB50は、ユーザ認識し易いように、診断映像78を生成して表示部15に表示させる。診断映像78の詳細は後述する。
【0030】
映像信号及び映像装置の詳細を説明する。映像装置は、映像信号を出力可能な周知のAV機器である。映像信号は、画像フレームの夫々に含まれる複数の画素の夫々のRGB値を示す、周知のデジタル信号である。映像装置の具体例として、PC、ビデオ受像機、ビデオカメラ等が挙げられる。以下、映像装置から出力された映像信号に応じて表示される映像を、ビデオ映像という。
【0031】
図3を参照し、HMD1の電気的構成を説明する。はじめに、HD10の電気的構成を説明する。HD10は、HD10全体の制御を行うCPU11を備える。CPU11は、フラッシュROM12、RAM13、入力制御部14、及び表示部15に電気的に接続される。フラッシュROM12は、CPU11が実行するプログラムを記憶する。プログラムは、HMD1の出荷時にフラッシュROM12に記憶される。RAM13は、各種データを一時的に記憶する。入力制御部14は、ハーネス7(図1参照)を介してCB50の出力制御部59に接続する。入力制御部14は、映像信号を出力制御部59から受信する。表示部15は、受信された映像信号に応じた映像を表示できる。
【0032】
なお、HMD1は、図示外の無線通信部を更に備えてもよい。CPU11は、無線通信部を介してプログラムダウンロード用のサーバからプログラムをダウンロードし、フラッシュROM12に記憶してもよい。フラッシュROM12には、CB50のCPU51が実行するプログラムが記憶されてもよい。CPU11は、CB50のCPU51が実行する処理と同じ処理を、CPU51の代わりに実行してもよい。
【0033】
CB50の電気的構成を説明する。CB50は、CB50全体の制御を行うCPU51を備える。CPU51は、フラッシュROM52、RAM53、ASIC55、周辺インターフェイス(以下、周辺I/Fという。)58、及び出力制御部59に電気的に接続される。フラッシュROM52は、CPU51が実行するプログラムを記憶する。又、フラッシュROM52は、色相の設定値を記憶する。以下、色相の設定値を、「設定色相」という。プログラム及び色相の設定値は、HMD1の出荷時にフラッシュROM52に記憶される。RAM53は、各種データを一時的に記憶する。ASIC55は、入力端子72を介してエコー信号を受信した場合、エコー信号に応じて診断映像78(図5参照)を生成することが可能なASICである。周辺I/F58は、入力端子72、スイッチ61及びLED62に接続し、信号の入出力を制御する。出力制御部59は、ハーネス7を介してHD10の入力制御部14に接続する。出力制御部59は、ハーネス7を介して映像信号をHD10の入力制御部14に出力する。ASIC55で処理される診断映像78の生成処理は、フラッシュROM52に記憶されたプログラムが実行されることで、CPU51により実行されても良い。
【0034】
なお、HMD1は、図示外の無線通信部を更に備えてもよい。CPU51は、無線通信部を介してプログラムダウンロード用のサーバからプログラムをダウンロードし、フラッシュROM52に記憶してもよい。フラッシュROM52には、HD10のCPU11が実行するプログラムが記憶されてもよい。CPU51は、HD10のCPU11が実行する処理と同じ処理を、CPU11の代わりに実行してもよい。HMD1は、図示外の無線通信部を介してプログラムダウンロード用のサーバからダウンロードし、インストールしてもよい。
【0035】
図4を参照し、CB50のCPU51によって実行されるメイン処理を説明する。CPU51は、CB50の電源をONする操作を、スイッチ61を介して検出した場合、フラッシュROM52に記憶されたプログラムに基づいて処理を開始することによって、メイン処理を開始する。
【0036】
CPU51は、1走査分に対応する複数のエコー信号を受信したか判断する(S11)。CPU51は、1走査分に対応する複数のエコー信号を受信したと判断した場合(S11:YES)、受信した複数のエコー信号のデータを、フラッシュROM52に記憶する(S13)。CPU51は、複数のエコー信号の夫々に含まれるピークの振幅のうち、最大の振幅を第1振幅として決定し、最小の振幅を第2振幅として決定する(S15)。CPU51は、決定した第1振幅及び第2振幅を、フラッシュROM52に記憶する(S15)。CPU51は、ASIC55に指示信号を出力する(S19)。
【0037】
ASIC55は、CPU51から出力された指示信号を検出した場合、フラッシュROM52に記憶された複数のエコー信号のデータ、設定色相、第1振幅、及び第2振幅に基づいて、診断映像を生成する。診断映像の生成方法の詳細は後述する。ASIC55は、診断映像を生成した後、生成した診断映像のデータをフラッシュROM52に記憶する。ASIC55は、CPU51に対して通知信号を出力する。
【0038】
図5を参照し、診断映像78の生成方法の詳細を説明する。ASIC55は、エコー信号76の振幅に対応する色を次のようにして特定する。ASIC55は、第1振幅に対応する色を、最大彩度「1」、設定色相、及び、「50%」の明度により特定されるRGB値を有する有彩色に決定する。ASIC55は、振幅「0」及び第2振幅に対応する色を、最大彩度「1」、設定色相、及び、「100%」の明度により特定されるRGB値を有する無彩色(白色)に決定する。なお、明度を「100%」とした場合、彩度及び色相の値に関わらず、特定されるRGB値を有する色は、無彩色(白色)になる。ASIC55は、第1振幅から第2振幅までの間の振幅に対応する色を、最大彩度「1」、設定色相、及び、「50%〜100%」の明度により特定されるRGB値を有する色に決定する。具体的には次の通りである。ASIC55は、第1振幅から第2振幅までの値を51等分した複数の振幅を算出する。ASIC55は、算出した複数の振幅の夫々に対応する明度を、大きい振幅から順に「50%」「51%」「52%」・・・「100%」に決定する。即ち、ASIC55は、第1振幅から第2振幅までの値を51等分した複数の振幅のうち大きい順でn番目の振幅に対応する明度を、「50+n」%に決定する。
【0039】
ASIC55は、彩度、色相、及び明度により特定されるRGB値を、次のように算出する。色相をH(0〜360)、彩度をS(0〜1)、明度をL(0〜1)と表記し、R値(0〜1)、G値(0〜1)、及びB値(0〜1)のうち最大値をM、最小値をmと表記した場合、H、S、及びLと、R値、G値、及びB値とが次の関係式を満たすことが一般的に知られている。
H=60×((G−B)/(R−m))(M=Rの場合)
H=60×(2+(B−R)/(G−m))(M=Gの場合)
H=60×(4+(R−G)/(B−m))(M=Bの場合)
S=0(M=m=0、又は、M=m=1の場合)
S=(M−m)/(1−|M+m−1|)(M=m=0、及び、M=m=1を除く場合)
L=(M+m)/2
ASIC55は、最大彩度「1」、設定色相、及び、明度「0.5〜1」である場合に上記関係式を満たすR値、G値、及びB値を算出し、対応する色を特定する。
【0040】
ASIC55は、振幅毎に決定した色の画素に基づき1つのエコー信号に応じた探触子から診断対象物までの距離を表す映像78Cを生成する。CPU51は、1走査分に対応する複数のエコー信号76の夫々に基づいて作成された、探触子から診断対象物までの距離を表す複数の映像78Cを、第1走査方向に並べる。以上により、ASIC55は、1走査分に対応する診断映像78を生成する。
【0041】
なお、エコー信号76の振幅「0」の部分は、診断映像78のうち診断対象物のない背景78Aに対応する。又、エコー信号76の第1振幅から第2振幅までの間の部分は、診断映像78のうち診断対象物78Bに対応する。なお図5では、診断映像78は白黒で示されているが、白色以外の色の彩度は最大となるので、実際の診断映像78ではカラーで示される。
【0042】
なお、上記において、振幅に対応する色を決定する場合の明度は、他の値であってもよい。例えば、第1振幅に対応する色を決定する場合の明度を「50%」よりも大きい値としてもよいし、第2振幅及び振幅「0」に対応する色を決定する場合の明度を、第1振幅に対応する色を決定する場合の明度よりも大きい値としてもよい。
【0043】
又、上記において、第1振幅から第2振幅までの間の振幅に対応する色を決定する場合の明度を、他の方法によって特定してもよい。例えば、第1振幅から第2振幅までの間の振幅と、夫々に対応する明度とを関連付けたテーブルが、フラッシュROM52に記憶されていてもよい。ASIC55は、テーブルを用いることによって、第1振幅から第2振幅までの間の振幅に対応する色を決定する場合の明度を特定してもよい。
【0044】
図4に示すように、CPU51は、ASIC55に指示信号を出力した後、ASIC55から出力される通知信号を検出する(S21)。CPU51は、フラッシュROM52に記憶された診断映像のデータに基づき、HD10の表示部15に診断映像を表示させることが可能な映像信号を生成する(S23)。映像信号は、診断映像に含まれる複数の画素の夫々のR値、G値、B値を示すデジタル信号である。CPU51は、生成した映像信号を、HD10の入力制御部14に出力する(S25)。HD10のCPU11は、入力制御部14を介してCB50のCPU51から受信した映像信号に応じて、診断映像を表示部15に表示させる。
【0045】
CPU51は、HD10による表示を終了させるための操作を、スイッチ61を介して検出したか判断する(S27)。CPU51は、表示を終了させるための操作を検出しないと判断した場合(S27:NO)、S11の処理を再度する。CPU51は、HD10による表示を終了させるための操作を検出したと判断した場合(S27:YES)、メイン処理を終了させる。
【0046】
CPU51は、1走査分に対応する複数のエコー信号を受信しないと判断した場合(S11:NO)、1フレーム分の映像信号を受信したか判断する(S29)。CPU51は、1フレーム分の映像信号を受信したと判断した場合(S29:YES)、受信した映像信号を、HD10の入力制御部14に出力する(S31)。HD10のCPU11は、入力制御部14を介してCB50のCPU51から受信した映像信号に応じて、ビデオ映像を表示部15に表示させる。CPU51は、1フレーム分の映像信号を受信しないと判断した場合(S29:NO)、S11の処理を再度実行する。
【0047】
以上説明したように、ASIC55は、エコー信号76のうち第1振幅に対応する色を、「50%」の明度により特定されるRGB値を有する有彩色に決定する。ASIC55は、エコー信号76のうち、振幅「0」及び第2振幅に対応する色を、「100%」の明度により特定されるRGB値を有する無彩色(白色)に決定する。ASIC55は、エコー信号76のうち第1振幅から第2振幅までの間の振幅に対応する色を、「50〜100%」の明度により特定されるRGB値を有する色に決定する。ASIC55は、以上のように決定された色でエコー信号76を示した診断映像78を生成する。CPU51は、ASIC55によって生成された診断映像78の映像信号を、HD10に出力し、診断映像78を表示部15に表示させることができる。この場合、振幅「0」に対応する色は白色になるので、診断映像78のうち振幅「0」に対応する背景78Aはシースルー状態とならない。このため、HD10を介して外界の実像が見えてしまうことを抑制できる。従って、CPU51は、ユーザによる診断対象物78Bの認識を、外界の実像が邪魔することを抑制できる。このためユーザは、背景78Aと診断対象物78Bとを明確に区別できるので、診断対象物78Bを良好に認識できる。
【0048】
ASIC55は、第1振幅から第2振幅までの値を51等分した複数の振幅の小さい方から順にn番目の振幅に対応する明度として、「50+n」%を対応付ける。この場合、CPU51は、第1振幅から第2振幅までの間の振幅に対応する色を、第1色から第2色まで順に変化させることができる。このため、HD10を装着したユーザは、エコー信号76の第1振幅から第2振幅までの振幅に対応する診断対象物78Bを明確に区別して認識できる。
【0049】
CPU51は、1走査分に対応する複数のエコー信号の夫々に含まれるピークの振幅のうち、最大の振幅を第1振幅として決定し、最小の振幅を第2振幅として決定する(S15)。この場合、CPU51は、エコー信号76に応じて第1振幅値及び第2振幅を容易に決定できる。
【0050】
なお、本発明は上記実施形態に限定されず、種々の変更が可能である。ASIC55は、上記とは別の方法で、診断映像を生成してもよい。図6を参照して詳細を説明する。ASIC55は、エコー信号76の振幅に対応する色を次のようにして特定する。ASIC55は、第1振幅に対応する色を、最大彩度「1」、設定色相、及び、「100%」の明度により特定されるRGB値を有する無彩色(白色)に決定する。ASIC55は、振幅「0」及び第2振幅に対応する色を、最大彩度「1」、設定色相、及び、「50%」の明度により特定されるRGB値を有する有彩色に決定する。ASIC55は、第1振幅から第2振幅までの間の振幅に対応する色を、最大彩度、設定色相、及び、「100〜50%」の明度により特定されるRGB値を有する色に決定する。具体的には次の通りである。ASIC55は、第1振幅から第2振幅までの値を、例えば、51等分した複数の振幅を算出する。本実施形態では51等分を用いたが、51等分以外に分割されても良い。ASIC55は、算出した複数の振幅の夫々に対応する明度を、大きい振幅から順に「100%」、「99%」、「98%」、・・・「50%」に決定する。即ち、ASIC55は、第1振幅から第2振幅までの値を51等分した複数の振幅のうち大きい順でn番目の振幅に対応する明度を、「100−n」%に決定する。ASIC55は、複数の振幅の夫々に対応する色を、最大彩度「1」、設定色相、及び、上記の方法により決定した明度により特定されるRGB値を有する色に決定する。ASIC55は、振幅毎に決定した色の画素を、エコー信号76の時間軸方向に沿って並べることにより、ライン状の映像79Cを生成する。CPU51は、1走査分に対応する複数のエコー信号76の夫々から生成したライン状の映像信号を、ラインと直交する方向に並べる。以上により、ASIC55は診断映像79を生成する。
【0051】
以上の場合、第1振幅に対応する色は白色になり、振幅「0」に対応する色は、第1振幅に対応する色よりも暗くなる。診断映像79のうち第1振幅に対応する部分はシースルー状態とならない。このためユーザは、第1振幅に対応する部分に対応する診断対象物79Bをより明確に認識できる。
【0052】
なお、上記において、振幅に対応する色を決定する場合の明度は、他の値であってもよい。例えば、第2振幅及び振幅「0」に対応する色を決定する場合の明度を、「50%」よりも大きい値としてもよいし、第1振幅に対応する色を決定する場合の明度を、第2振幅に対応する色を決定する場合の明度よりも大きい値としてもよい。
【0053】
上記実施形態において、エコー信号の振幅に応じた色のRGB値を決定する場合の彩度を最大としたが、彩度は別の値(例えば、0.5以上の何れかの値)であってもよい。又、エコー信号の振幅に応じた色のRGB値を決定する場合に使用する色相を設定色相としたが、色相は別の方法によって特定されてもよい。例えばCPU51は、スイッチ61を介して色相を入力する操作を検出した場合、検出した色相を設定色相としてフラッシュROM52に記憶してもよい。又、例えば、IDと色相とが関連付けられたテーブルがフラッシュROM52に記憶されていてもよい。CPU51は、スイッチ61を介してIDを入力する操作を検出した場合、検出したIDに関連付けられた色相をテーブルにより特定してもよい。CPU51は、特定した色相を設定色相としてフラッシュROM52に記憶してもよい。
【0054】
上記実施形態において、CPU51は、受信した1走査分のエコー信号の振幅の最大値を第1振幅に決定し、振幅の最小値を第2振幅に決定した。CPU51は、別の方法で第1振幅及び第2振幅を決定してもよい。例えばCPU51は、スイッチ61を介して振幅を入力する操作を検出した場合、検出した振幅に応じて、第1振幅及び第2振幅を決定してもよい。
【0055】
探触子は、CB50に接続された場合、ケーブル71の特定の端子の電気状態をHiとしてもよい。一方、映像装置は、CB50に接続された場合、ケーブル71の特定の端子の電気状態をLowとしてもよい。CPU51は、S11の処理で、特定の端子がHiの電気状態で信号を受信した場合、エコー信号を受信したと判断し、Lowの電気状態で信号を受信した場合、映像信号を受信したと判断してもよい。
【0056】
なお、S11の処理を行うCPU51は本発明の「受信手段」の一例である。ASIC55が本発明の「決定手段」「生成手段」の一例である。S25の処理を行うCPU51が本発明の「制御手段」の一例である。
図1
図3
図4
図2
図5
図6