(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態1を説明する。
図1は、本実施の形態に係る除湿機を示す外観斜視図を示す。
図2は、本実施の形態に係る除湿機の内部構造の概略構成図を示す。
図3は、風向可変手段の概略斜視図を示す。
図4は、本実施の形態に係る除湿機の制御ブロック図を示す。
図5は、本実施の形態に係る除湿機の衣類乾燥運転のときの動作を示すフローチャートを示す。
【0010】
図1を参照すると、除湿機Jの外殻は、自立可能に構成された除湿機筐体100(以下、筐体100)により構成されている。
この筐体100には、内部に室内空気Aを取り込むための吸込口101と、水分が除去された乾燥空気Bを筐体100から室内へ排出する排気口103が開口している。また、筐体100の内部には、吸込口101に取り込まれた空気から除去された水分を溜める貯水タンク102が設けられる。
【0011】
吸込口101は、筐体100の背面に開口しており、この開口には筐体100の内部に塵埃の侵入を防止するフィルターが設けられている。
排気口103には、乾燥空気Bの風向を可変可能な風向可変手段1が設けられている。この風向可変手段1は、鉛直方向の風向を可変する縦方向ルーバー1aと、水平方向の風向を可変する横方向ルーバー1bによって構成されている。
貯水タンク102は、筐体100の内部から着脱可能に取り付けられている。
【0012】
更に、
図2を参照すると、除湿機Jの内部には、吸込口101から室内空気Aを吸込み、排気口103から乾燥空気Bを排出する気流を発生させる送風ファン2と、この送風ファン2を回転させるファンモーター2aと、吸込口101から吸引された室内空気Aの温度を検出する温度センサー3(温度検出手段)と、室内空気Aの湿度を検出する湿度センサー4(湿度検出手段)と、室内空気Aに含まれる水分を除去して乾燥空気Bを生成する除湿
装置5と、縦方向ルーバー1aを鉛直方向に可変する縦方向可変モーター1cと、横方向ルーバー1bを水平方向に可変する横方向可変モーター1dと、表面温度検出手段である赤外線センサー6と、各部を制御する制御手段である制御回路7が備えられている。
【0013】
除湿
装置5は、吸込口101から排気口103に至る風路の中に位置し、空気中の水分を除去して凝縮するものである。この除湿
装置5に用いる方式の例として、ヒートポンプ回路を構成し蒸発器において空気中の水分を凝縮させる方式や、吸着剤によって除去された空気中の水分を熱交換器で凝縮させるデシカント方式などが用いられている。
除湿
装置5によって室内空気Aから除去された水分は、凝縮水Cとして貯水タンク102に貯留され、水分が取り除かれた空気は乾燥空気Bとなる。
【0014】
次に、
図3を参照すると、風向可変手段1を構成する縦方向ルーバー1aは、筐体100の幅方向に延びる長方形状の開口を有し、前述した縦方向可変モーター1cの回転軸をほぼ軸として鉛直方向に可変可能に構成されている。
これにより、縦方向(上下方向)に風向を可変可能に構成されている。
【0015】
また、横方向ルーバー1bは、縦方向ルーバー1a内に等間隔に配置され、縦方向ルーバー1aの開口の反対側の奧に水平方向に可変可能に軸支され、前述した横方向可変モーター1dの駆動に連動するように構成されている。
これにより、横方向(左右方向)に風向を可変可能に構成されている。
【0016】
赤外線センサー6は、縦方向ルーバー1a内に配置されたほぼ中央の横方向ルーバー1bの片面に取り付けられている。
これにより、赤外線センサー6による表面温度の検出範囲は、風向可変手段1によって可変される乾燥空気Bの方向とほぼ同一となる。つまり、赤外線センサー6は、風向可変手段1が送風可能な範囲内の全領域の表面温度を検出することができる。
【0017】
この赤外線センサー6は、例えば、熱起電力効果を利用したものが用いられており、所定領域の表面から発せられる熱放射(赤外線)を受ける赤外線吸収膜6aと、赤外線吸収膜6aの温度を検出するサーミスタ6bとで構成されている(
図3参照)。
この赤外線センサー6は、熱放射を吸収することによって昇温する赤外線吸収膜6aの感熱部分の温度(温接点)と、サーミスタ6bによって検出される赤外線吸収膜6aの温度(冷接点)との差を電圧等の電気信号に変換し、後述する制御回路7に入力する。この電気信号の大きさから所定領域の表面温度を判別できる。
【0018】
制御回路7は、操作部(図示せず)のスイッチ操作から除湿モードが選択されたことを検知した場合には、室内の湿度が最適湿度となるように、風向可変手段1を駆動して排気口103から送風可能にし、ファンモーター2aを駆動して送風ファン2を回転させ、除湿
装置5を駆動する。
【0019】
また、制御回路7は、室内の所望領域の方向に送風されるように、風向可変手段1の縦方向可変モーター1cと横方向可変モーター1dを駆動する。
これにより、室内空気Aは、吸込口101から除湿機筐体100内に取り込まれ、温度センサー3及び湿度センサー4によりそれぞれ室内の温度と湿度が検出された後、除湿
装置5により除湿されて乾燥空気Bとなり、排気口103から室内に吹き出される。
【0020】
次に、
図4を参照して、制御回路7とこの制御回路に接続される各種センサー及び電子部品について説明する。
制御回路7は、各種センサーや各種スイッチからの入力と所定のアルゴリズムにより、除湿機J全体の運転を制御するものであり、入力回路7a、出力回路7b、CPU7c、記憶部7d、運転開始からの運転時間を計測する運転時間計測手段であるタイマー部7eを有する。
【0021】
また、記憶部7dには除湿機Jの各部を制御するための上記のアルゴリズムが記憶されている。このアルゴリズムの中には、各種センサーやスイッチからの入力に基づき運転制御を決定する運転制御プログラムや、温度センサー9と湿度センサー10の検出信号およびタイマー部の出力に基づきその後の運転時間を決定する運転時間決定プログラムが含まれている。
【0022】
この様に構成された制御回路7には、入力回路7aを介して、除湿機Jの運転のON/OFFを行う運転スイッチ8、温度センサー9、湿度センサー10、赤外線センサー6、使用者が洗濯物の乾燥度の評価を入力する評価入力手段である乾燥度評価スイッチ11等の各種センサー及び各種スイッチが接続されている。
尚、乾燥度評価スイッチ11は、後述する動作の説明(ステップS11以降)で示すように、代わりに運転スイッチ8を用いてもよい。例えば、使用者が運転スイッチ8を操作するタイミングから、乾燥度の評価を推測するものでも良い。
更に、この制御回路7には、出力回路7bを介して、除湿機の状態を報知する表示部12、除湿装置5、ファンモーター2a、縦方向可変モーター1c、横方向可変モーター1dなどの電気部品が接続されている。
【0023】
次に、
図5を参照して、以上のように各部が構成された除湿機Jの衣類乾燥運転時の動作について説明する。
尚、以下の説明において、時間測定、湿度測定、温度測定は、それぞれ上述したタイマー部7e、湿度センサー10、温度センサー9により行われており、各種演算処理は、制御回路7により実行されるものである。
【0024】
除湿機の制御回路7は、ステップS1において、衣類乾燥運転が開始されたことを検知すると、除湿装置5やファンモーター2aなど除湿運転に必要な各部の駆動を開始して、ステップS2に移行する。そして、ステップS2において、運転時間tの計測を開始し、ステップS3に移行する。
ステップS3では、所定の設定された時間(コアタイム)の間、除湿運転を継続し、コアタイムに達すると、ステップS4に移行する。尚、本実施の形態では、コアタイムは70分に設定されている。ここで、コアタイムとは、次のステップに至る前に、ある程度衣類を乾燥させるための時間である。
【0025】
ステップS4では、コアタイムが経過した後、所定の時間(本実施の形態では、10分に設定)毎に湿度センサー10により検知される雰囲気相対湿度を判定し、あらかじめ設定された相対湿度(本例では50%以下)を検知するまで湿度検知が続けられる(ステップS5)。そして、予め設定された相対湿度に達すると、ステップS6に移行する。
ステップS6では、雰囲気相対湿度(室内空気の湿度)が50%を切ったときの運転開始からの運転時間t1と、温度センサー9が検知する雰囲気温度(室内空気の温度)である検出温度Tを得て、ステップS7に移行する。そして、ステップS7では、検出温度Tと運転時間t1の積を計算して、ステップS8に移行する。
【0026】
次に、ステップS8では、係数Dを算出してステップS9に移行する。
この係数Dとは、衣類乾燥運転の乾燥運転時間を変化させる変数の1つであり、実験により求められた次式により算出される。
『D=a×(T×t1)^b』(「^」は累乗を表す。)
【0027】
ここで、
図6を参照すると、係数aと係数bは適用ランクDx毎にそれぞれ設定された係数である。
この適用ランクDxは、目標とする乾燥度に応じてD1〜D5が設定されており、それぞれに対応する係数aと係数bを有し、前回までの運転で、後述するステップS11以降の処理により求められて適用されている。
尚、本実施の形態では、適用ランクDxは5段階に設定されているが、より細かく衣類乾燥運転の運転時間を変化させる必要があれば5段階以上に設定してもよく、また、細かく運転時間を変化させる必要がなければ5段階より少ない設定にして良い。
【0028】
尚、初めて運転する状態では、初期値D3が設定されている。また、目標乾燥度は、数値が高くなるほど、より乾燥の度合が高くなる。つまり、本例ではD5が最も運転時間が長くなるランクであり、D1が最も運転時間が短くなるランクとなっている。
また、適用ランクDxのランクごとの係数aおよびbは、制御回路7内の記憶部7dに記憶されており、後述の使用者による評価情報によりランクが上下した際に、適用となるランクでの係数aおよびbが読み込まれ計算に使用される。
【0029】
次に、ステップS9において、ステップS8で求めた係数Dを用いて、残りの除湿運転時間Yを実験により求められた式
『Y=t1×(D−T/100)』
により算出し、残りの除湿運転時間Yを決定して、ステップS10に移行する。
【0030】
以降、使用者が運転を停止しなければ、残りの除湿運転時間Yが経過するまで衣類乾燥運転を行うが、ステップS10では運転時間がZに到達したか否かを判定している。運転時間Zは洗濯物の乾燥がある程度すすむ時間で実験値により設定されており、運転時間Z以降、使用者による衣類の乾燥度の評価が有効となっている。(使用者の使用形態から衣類の乾燥度の評価を得る。)
ステップS10で運転時間がZに到達すると、ステップS11に移行する。
【0031】
ここで、所定の運転時間Zの経過を条件に、ステップS11以降の処理を有効にしているが、これは、衣類乾燥運転中の運転スイッチ8の誤操作などによる運転停止を、ステップS11以降で実行する適用ランクDxを変更する為に用いる衣類の乾燥度合いに対する評価から除外する為であり、本実施の形態ではY>Zとなるように設定されている。
例えば、ステップS10が構成されていることにより、衣類乾燥運転が開始されて間もなく、誤操作により運転を停止してしまった場合、衣類がほとんど乾いていない状態での乾燥度合いに対する評価を除外することができ、誤判定の防止や判定の精度向上をすることができる。
【0032】
次に、ステップS11以降は、使用者による衣類の乾燥度の評価を行うフローである。
尚、本実施の形態では、使用者が運転を停止したタイミング、つまり、使用者が運転スイッチ8を操作したタイミングを見て、使用者の衣類の乾燥度合いに対する評価を推測している。
【0033】
ステップS11では、使用者が運転スイッチを操作することにより、除湿運転時間Yが経過する前に運転停止されたか否かを判定する。
本来であれば、ステップS9にて算出されたのこりの除湿運転時間Yに到達したか否かを判定するステップS12を経て、ステップS13にて衣類乾燥運転終了となる。
しかし使用者が、除湿運転時間Yが経過する前に、洗濯物の乾燥度合いを確認し、以降の乾燥運転は不要と判断して、ステップS12に移行する前に運転を停止した場合には、ステップS21に移行する。
【0034】
ここで記憶部7dには、判定カウントを設けており、上記の通り推測する使用者の衣類の乾燥度合いに対する評価によりカウントの増減を行っている。尚、判定カウントの初期値は0としている。
ステップS21では、判定カウントの1ポイント減算を行い、その結果を記憶部7dに記憶して、ステップS22に移行する。
【0035】
ステップS22では、判定カウントの累積カウント数が所定数値(本実施の形態では「−2」)以下であるかどうかを判定している。
本実施の形態では、今回と過去の衣類乾燥運転において、使用者が残りの除湿時間Yが経過する前に、2度の運転停止を行ったかどうかを判定している。つまり、使用者が、除湿時間Yまでの運転を不要とする意思があるかどうかに加えて、誤入力や使用者以外のいたずらなどによる誤判定を防止している。
【0036】
その後、ステップS23に移行して、前述の適用ランクDxのランクを一つ下げ、次回の運転時に適用するランクを決定する。また同時に判定カウントをリセットする。
以上のように、使用者が残りの除湿運転時間Yが経過する前に運転停止を行うことにより、以降の運転時において、除湿運転時間Yは短縮される方向に補正されていく。
【0037】
尚、本実施の形態において、ステップS22にて、判定カウントの累積カウント数を「−2」としたが、係数Dランクを変化しやすく設定するのであれば累積カウント数を「−1」とすればよく、また、Dランクを変化し難く設定するのであれば累積カウント数を「−2」より小さい値に設定すればよい。
また、残りの除湿時間Yより前に停止した場合、判定カウントを1ポイント減算するとしたが、停止した時間のタイミングにより減算するポイントの大きさを変えても良い。例えば、より早く停止した場合、減算するポイントを大きくし、除湿時間Yに近いほど減算するポイントを小さくすると良い。
【0038】
次に、ステップS11において、使用者により、残りの除湿時間Yが経過する前に運転停止されなかった場合、ステップS9にて算出された時間Yに到達するか否かを、ステップS12にて判定する。
ステップS12において、運転終了条件に合致している場合(時間Yを経過した場合)、ステップS13に移行して一旦衣類乾燥運転は終了となる。その後、ステップS14において、内部的に待機状態へと移行する。尚、待機状態とは、除湿及び送風を停止した状態である。
ステップS12において、運転終了条件に合致していない場合(時間Yを経過していない場合)、ステップS11に移行する。
【0039】
この待機状態には、制限時間を設けてあり、ステップS16において所定時間を経過したかどうかを判定する。待機状態で所定時間を経過すると、ステップS17に移行して、運転を終了する。この制限時間は、本実施の形態では、5時間としている。
ここで、除湿機が待機状態であるときに、使用者が再度運転スイッチ8を押して衣類乾燥運転を開始したかどうかをステップS15において判定する。再度運転を開始したということは、使用者が洗濯物の乾燥度合いを確認し、再度乾燥運転が必要と判断したと推測でき、ステップS17に移行する前に運転を再開した場合には、ステップS31に移行する。
【0040】
ステップS31では、判定カウントを1ポイント積算して、ステップS32に移行する。尚、この結果は、記憶部7dに記憶される。
そして、ステップS32では、判定カウントの累積カウント数が所定数値(本実施の形態では「+2」)以上であるかどうかを判定している。
つまり、本実施の形態では、今回と過去の衣類乾燥運転において、使用者が残りの除湿時間Yが経過した後に、2度の運転再開を行ったか否かを判定している。つまり、使用者が、除湿時間Yまでの運転したのにもかかわらず、再度衣類を乾燥したいと意思があるか否かに加えて、誤入力や使用者以外のいたずらなどによる誤判定を防止している。
【0041】
その後S33に移行して、前述の適用ランクDxを1つ上げ、次回の運転時に適用するランクを決定する。また同時に判定カウントをリセットし、ステップS34に移行して、追加の衣類乾燥運転を行う。
以上のように、使用者が待機状態中に運転再開を行うことにより、運転時間は延長される方向に補正されていく。
【0042】
以上の制御フローを次の通りまとめる。
(1)使用者が残りの除湿運転時間Yが経過する前に運転をOFFした場合。
使用者が、設定した残りの除湿運転時間Yより早い段階で、除湿が十分と判断したと推測。次回の運転以降、今回より残りの除湿運転時間Yが短くなるようにする(適用ランクDxを下げて変化)。
(2)残りの除湿運転時間Yまで除湿を行った場合(追加運転は行わない場合)。
使用者が、設定した残りの除湿運転時間Yで除湿が十分と判断したと推測。つまり、設定通りの残りの除湿時間で問題なかったと判断。次回の運転以降も、今回設定した除湿運転時間Yを求めた係数で除湿運転時間Yを求める(適用ランクDxの変化無し)。
(3)残りの除湿運転時間Yまで除湿を行った後、使用者が追加して運転を行った場合。
使用者が、除湿が不十分と判断したと推測。次回の運転以降、今回より残りの除湿運転時間Yが長くなるようにする(適用ランクDxを上げて変化)。
【0043】
ここで、本実施の形態においては、使用者が運転を停止したタイミング、つまり、使用者が運転スイッチ8を操作したタイミングを見て、使用者の衣類の乾燥度合いに対する評価を推測して、これを評価情報の入力とみなし、通常動作を行う中で運転時間の補正につながる例を説明したが、この限りでなく、
図4に示すような乾燥度評価スイッチ11を設けて、使用者に積極的に評価情報を入力してもらっても良い。
尚、乾燥度評価スイッチ11で乾燥度の評価を使用者が入力する場合、上記の(1)〜(3)は、それぞれ評価「乾燥しすぎ」は(1)に相当し、評価「ちょうど良い」は(2)に相当し、評価「乾燥不足」は(3)に相当する。
【0044】
以上のように本実施の形態によれば、被乾燥物である洗濯物の乾燥度合いについて、使用者の衣類の乾燥度合いに対する評価により、制御回路7で決定された運転時間に対し補正をかけ、補正後の運転時間で運転を制御する。
また、評価情報入力手段から入力された使用者の評価情報を記憶部7dに記憶し、使用者が評価を重ねることにより、運転時間の補正量を変化させてもよい。これにより使用者の乾燥に対する満足度を評価情報として衣類乾燥運転の運転時間に反映し、個々の嗜好に適した洗濯物の乾燥運転を行うことが可能となる。