(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態である車両用灯具(自動二輪車用ヘッドランプ)について、図面を参照しながら説明する。
【0023】
図1は本発明の一実施形態である車両用灯具(自動二輪車用ヘッドランプ)が搭載された自動二輪車の側面図、
図2は自動二輪車用ヘッドランプが搭載された自動二輪車の正面図である。なお、本発明の車両用灯具は、自動二輪車用のヘッドランプに限定されず、例えば、自動車等の車両用ヘッドランプ(車両用前照灯)にも適用することができる。
【0024】
本実施形態の自動二輪車用ヘッドランプ10(以下単にヘッドランプ10と称す)は、自動二輪車の前方(進行方向)を照射するランプユニットで、
図1、
図2に示すように、自動二輪車の前部の左右にそれぞれ配置されている。
【0025】
左側に配置されたヘッドランプ10Lと右側に配置されたヘッドランプ10Rとは、左右対称で実質的に同一の構成である。このため、以下、左側に配置されたヘッドランプ10Lを中心に説明し、右側に配置されたヘッドランプ10Rの説明は省略する。
【0026】
図3はヘッドランプの正面図、
図4はヘッドランプの斜視図(アウターレンズ、ハウジング、エクステンション省略)、
図5はヘッドランプの斜視図(アウターレンズ、ハウジング省略)、
図6は
図3に示したヘッドランプのE−E断面図、
図7は
図3に示したヘッドランプのA−A断面図、
図8はヘッドランプの背面図である。
【0027】
図3、
図6等に示すように、ヘッドランプ10は、2灯式(ロービーム及びハイビーム)のヘッドランプで、アウターレンズ12、アウターレンズ12と組み合わされて灯室14を構成するハウジング16、灯室14内に配置されたロービーム用光学系18A及びハイビーム用光学系18B、ヒートシンク20、エイミング機構22等を備えている。
【0028】
アウターレンズ12は、全体が素通し状の透光カバーで、
図3、
図7に示すように、ロービーム用光学系18A及びハイビーム用光学系18Bからの光が透過する透明部12a及び透明部12aの上部から上方に向かうに従って車両後方側に向かって延びる延長部12b等を含んでいる。アウターレンズ12のうち透明部12a以外の部分(
図3中ハッチングが施された領域参照)は、黒塗装が施されて不透明部とされている。
【0029】
アウターレンズ12の延長部12bは、カウル24で覆われている(
図7参照)。カウル24は、透明部12aの上部近傍から上方に向かうに従ってアウターレンズ12の延長部12bに沿って車両後方側に向かって延びて、アウターレンズ12の延長部12bとの間に走行風(
図7中矢印参照)が流入する通路S1を構成している。
【0030】
図3、
図6に示すように、ロービーム用光学系18A及びハイビーム用光学系18Bは、左右に隣接し、ヒートシンク20に固定された状態で、灯室14内に配置されている。
【0031】
図9は、ヘッドランプの斜視図(アウターレンズ、ハウジング、エクステンション、第1レンズ、第2レンズ省略)である。
【0032】
図9に示すように、ヒートシンク20は、エイミング機構22を介して上下左右に傾動可能に、ハウジング16に支持されている。
【0033】
ロービーム用光学系18Aは、いわゆるダイレクトプロジェクション型(直射型とも称される)の光学系で、
図4、
図6に示すように、第1レンズ26A、第1レンズ26Aの後方に配置され、第1レンズ26A及びアウターレンズ12を透過して前方に照射される直射光を放出する第1光源28A等を備えている。
【0034】
図4、
図6に示すように、第1レンズ26Aは、透明樹脂製で、前方側表面が凸面(出射面)で後方側表面が凹面(入射面)のレンズ部26a(投影レンズ)、レンズ部26aの周囲に配置されたフランジ部26bを含んでいる。入射光を制御して色収差の発生を抑制する観点から、第1レンズ26Aの後方側表面(入射面)は、単純な球面ではなく、自由曲面とされている。第1レンズ26Aの焦点(光学設計上の基準点又は光学的中心とも称される)は、第1光源28A近傍(例えば、横長矩形の発光面32aの水平方向に延びる上端縁の中心近傍)に設定されている。
【0035】
図5に示すように、第1レンズ26Aは、そのフランジ部26bがヒートシンク20(台座部86)と当該ヒートシンク20にネジ止め固定された共通のエクステンション36との間に挟持された状態でヒートシンク20に固定されて、第1光源28Aの前方に配置されている。第1レンズ26Aのレンズ部26aは、エクステンション36に形成された開口36aから前方に突出している。
【0036】
図25は、ヒートシンクの正面図である。
【0037】
図25に示すように、第1レンズ26Aが当接する台座部86(86a〜86d)は、第1光源28Aが固定される第1ベース部38の前面38aの周囲4箇所に設けられている。
【0038】
図26(a)は台座部86aの拡大斜視図、
図26(b)は第1レンズ26Aと台座部86aとが当接した状態を描いてある。
【0039】
台座部86aは、第1レンズ26A(フランジ部26b)の背面が当接する突出部86a1、第1レンズ26A(フランジ部26b)の上面が当接する突出部86a2、第1レンズ26A(フランジ部26b)の側面が当接する突出部86a3等を備えている。
【0040】
台座部86b〜86dも、台座部86aと同様、第1レンズ26A(フランジ部26b)の背面が当接する突出部、第1レンズ26A(フランジ部26b)の上面又は下面が当接する突出部、第1レンズ26A(フランジ部26b)の側面が当接する突出部等を備えている。
【0041】
上記台座部86(86a〜86d)を設ける理由は、第1レンズ26Aの位置を微調整し、ロービーム用光学系18Aの配光の調整を行うためである。これにより、例えば、設計変更を行い、第1レンズ26Aの位置を微調整する際に、金型改修を行う範囲を小さくし、かつ、容易に調整することが可能となる。
【0042】
図10は、第1光源28Aの正面図である。
【0043】
図10に示すように、第1光源28Aは、基板30、基板30の表面に実装された複数の半導体発光素子32、半導体発光素子32に電気的に接続された複数の基板側端子34等を備えている。複数の基板側端子34は、基板30の上端縁に沿って基板30の表面に実装されている。
【0044】
複数の半導体発光素子32(例えば、1mm角の発光面×4)は、セラミック製(又は金属製)基板30の表面に一列に実装されて、横長矩形の発光面32aを構成している。車両前後方向に延びる光軸AX
1は、第1光源28A(横長矩形の発光面32a)を通り、かつ、発光面32aの法線方向に延びている。なお、半導体発光素子32は、発光色が青系のLEDチップ(又はレーザーダイオード)とこれを覆う黄色系の蛍光体(例えば、YAG蛍光体)とを組み合わせた構造の半導体発光素子であってもよいし、RGB三色のLEDチップ(又はレーザーダイオード)を組み合わせた構造の半導体発光素子であってもよいし、その他構造の半導体発光素子であってもよい。
【0045】
図9等に示すように、第1光源28Aは、横長矩形の発光面32aの長辺を水平とし、横長矩形の発光面32aを前方に向け、かつ、複数の基板側端子34を上に向けた状態で、ネジN、Nによって、ヒートシンク20にネジ止め固定されている。
【0046】
図28(a)は、ロービーム用光学系18Aが車両前面に正対した仮想鉛直スクリーン(車両前面から例えば約25m前方に配置されている)上に形成するロービーム用配光パターンP
Loの例である。
【0047】
上記構成のロービーム用光学系18Aは、第1レンズ26A及びアウターレンズ12を透過して前方に照射される第1光源28A(半導体発光素子32)からの直射光により、
図28(a)に示すような、ロービーム用配光パターンP
Loを形成する。
【0048】
ハイビーム用光学系18Bは、いわゆるダイレクトプロジェクション型(直射型とも称される)の光学系で、
図4、
図6に示すように、第2レンズ26B、第2レンズ26Bの後方に配置され、第2レンズ26B及びアウターレンズ12を透過して前方に照射される直射光を放出する第2光源28B等を備えている。
【0049】
第2レンズ26Bは、透明樹脂製で、第1レンズ26Aと同様、前方側表面(出射面)が凸面で後方側表面が凹面(入射面)のレンズ部26a(投影レンズ)、レンズ部26aの周囲に配置されたフランジ部26bを含んでいる。入射光を制御して色収差の発生を抑制する観点から、第2レンズ26Bの後方側表面(入射面)は、単純な球面ではなく、自由曲面とされている。第2レンズ26Bの焦点(光学設計上の基準点又は光学的中心とも称される)は、第2光源28B近傍(例えば、横長矩形の発光面32aの中心近傍)に設定されている。
【0050】
第2レンズ26Bは、そのフランジ部26bがヒートシンク20(台座部86)と当該ヒートシンク20にネジ止め固定された共通のエクステンション36との間に挟持された状態でヒートシンク20に固定されて、第2光源28Bの前方に配置されている。第2レンズ26Bのレンズ部26aは、エクステンション36に形成された開口36bから前方に突出している。
【0051】
図25に示すように、第2レンズ26Bが当接する台座部86(86e〜86g)は、第2光源28Bが固定される第2ベース部40の前面40aの周囲3箇所に設けられている。
【0052】
台座部86e〜86gも、台座部86aと同様、第2レンズ26B(フランジ部26b)の背面が当接する突出部、第2レンズ26B(フランジ部26b)の上面又は下面が当接する突出部、第2レンズ26B(フランジ部26b)の側面が当接する突出部等を備えている。
【0053】
上記台座部86(86e〜86g)を設ける理由は、第2レンズ26Bの位置を微調整し、ハイビーム用光学系18Bの配光の調整を行うためである。これにより、例えば、設計変更を行い、第2レンズ26Bの位置を微調整する際に、金型改修を行う範囲を小さくし、かつ、容易に調整することが可能となる。
【0054】
第2光源28Bも、第1光源28Aと同様、基板30、基板30の表面に実装された複数の半導体発光素子32(光束:750lm程度)、半導体発光素子32に電気的に接続された複数の基板側端子34等を備えている。複数の基板側端子34は、基板30の上端縁に沿って基板30の表面に実装されている。車両前後方向に延びる光軸AX
2は、第2光源28B(横長矩形の発光面32a)を通り、かつ、発光面32aの法線方向に延びている。第2光源28Bは、第1光源28Aと同様の構成であるため、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0055】
図28(b)は、ハイビーム用光学系18Bが車両前面に正対した仮想鉛直スクリーン(車両前面から例えば約25m前方に配置されている)上に形成するハイビーム用配光パターンP
Hiの例である。
【0056】
上記構成のハイビーム用光学系18Bは、第2レンズ26B及びアウターレンズ12を透過して前方に照射される第2光源28B(半導体発光素子32)からの直射光により、
図28(b)に示すような、ハイビーム用配光パターンP
Hiを形成する。中心最大光度は、25000〜30000cd程度である。
【0057】
なお、ハイビーム用光学系18B(第2光源28B)に加えて、ロービーム用光学系18A(第1光源28A)を同時点灯することで、
図28(c)に示すような、ロービーム用配光パターンP
Loとハイビーム用配光パターンP
Hiとが重畳された配光パターンを形成するようにしてもよい。
【0058】
図28(b)に示すように、ハイビーム用配光パターンP
Hiは、水平方向に長く鉛直方向に短い帯状の基本配光パターンP0と、水平線Hと鉛直線Vとの交点Oに対して斜め左下の位置(例えば、3Lかつ水平線Hより下の位置)に形成される第1付加配光パターンP1と、水平線Hと鉛直線Vとの交点Oに対して斜め左上の位置(例えば、3Lかつ水平線Hより上の位置)に形成される第2付加配光パターンP2と、水平線Hと鉛直線Vとの交点Oに対して斜め右下の位置(例えば、3Rかつ水平線Hより下の位置)に形成される第3付加配光パターンP3と、水平線Hと鉛直線Vとの交点Oに対して斜め右上の位置(例えば、3Rかつ水平線Hより上の位置)に配置される第4付加配光パターンP4と、を含んでいる。
【0059】
上記構成のハイビーム用配光パターンP
Hiは、第2レンズ26B(レンズ部26a)の前方側表面(出射面)を、次のように構成することで実現される。
【0060】
図29(a)は
図29(b)に示した第2レンズ26B(レンズ部26a)のA−A断面図、
図29(b)は第2レンズ26B(レンズ部26a)の正面図、
図29(c)は
図29(b)に示した第2レンズ26B(レンズ部26a)のB−B断面図である。
【0061】
図29(b)に示すように、第2レンズ26B(レンズ部26a)の前方側表面(出射面)は、第1屈折面S1と、第2屈折面S2と、第3屈折面S3と、第4屈折面S4と、第1屈折面S1、第2屈折面S2、第3屈折面S3及び第4屈折面S4以外の第5屈折面S5と、を含んでいる。
【0062】
図30は、ハイビーム用光学系18B及び当該ハイビーム用光学系18Bにより形成されるハイビーム用配光パターンP
Hiの斜視図である。
【0063】
図30に示すように、第1屈折面S1は、車両前方に向かって、第2レンズ26B(レンズ部26a)の前方側表面(出射面)の中心に対して斜め左上に位置する一部領域に設定されている。第2屈折面S2は、車両前方に向かって、第2レンズ26B(レンズ部26a)の前方側表面(出射面)の中心に対して斜め左下に位置する一部領域に設定されている。第3屈折面S3は、第2レンズ26B(レンズ部26a)の前方側表面(出射面)の中心に対して斜め右上に位置する一部領域に設定されている。第4屈折面S4は、第2レンズ26B(レンズ部26a)の前方側表面(出射面)の中心に対して斜め右下に位置する一部領域に設定されている。
【0064】
第1屈折面S1は、当該第1屈折面S1から出射する第2光源28Bからの光線Ray1が第1付加配光パターンP1を形成するように(
図30参照)、水平断面形状が、第1屈折面S1から出射する第2光源28Bからの光線Ray1が光軸AX
2寄りに集光する形状とされ(
図29(a)参照)、鉛直断面形状が、第1屈折面S1から出射する第2光源28Bからの光線Ray1が水平面に対して下向きの方向を照射する形状とされている(
図29(c)参照)。
【0065】
同様に、第2屈折面S2は、当該第2屈折面S2から出射する第2光源28Bからの光線Ray2が第2付加配光パターンP2を形成するように(
図30参照)、水平断面形状が、第2屈折面S2から出射する第2光源28Bからの光線Ray2が光軸AX
2寄りに集光する形状とされ、鉛直断面形状が、第2屈折面S2から出射する第2光源28Bからの光線Ray2が水平面に対して上向きの方向を照射する形状とされている(
図29(c)参照)。
【0066】
同様に、第3屈折面S3は、当該第3屈折面S3から出射する第2光源28Bからの光線Ray3が第3付加配光パターンP3を形成するように(
図30参照)、水平断面形状が、第3屈折面S3から出射する第2光源28Bからの光線Ray3が光軸AX
2寄りに集光する形状とされ(
図29(a)参照)、鉛直断面形状が、第3屈折面S3から出射する第2光源28Bからの光線Ray3が水平面に対して下向きの方向を照射する形状とされている。
【0067】
同様に、第4屈折面S4は、当該第4屈折面S4から出射する第2光源28Bからの光線Ray4が第4付加配光パターンP4を形成するように(
図30参照)、水平断面形状が、第4屈折面S4から出射する第2光源28Bからの光線Ray4が光軸AX
2寄りに集光する形状とされ、鉛直断面形状が、第4屈折面S4から出射する第2光源28Bからの光線Ray4が水平面に対して上向きの方向を照射する形状とされている。
【0068】
図31(a)は
図31(b)に示した第2レンズ26B(レンズ部26a)のC−C断面図、
図31(b)は第2レンズ26B(レンズ部26a)の正面図、
図31(c)は
図31(b)に示した第2レンズ26B(レンズ部26a)のD−D断面図である。
【0069】
第5屈折面S5は、当該第5屈折面S5から出射する第2光源28Bからの光線Ray5が、水平方向に長く鉛直方向に短い帯状の基本配光パターンP0を形成するように、水平断面形状が、第5屈折面S5から出射する第2光源28Bからの光線Ray5が水平方向に拡散する形状とされ(
図31(a)参照)、鉛直断面形状が、第5屈折面S5から出射する第2光源28Bからの光線Ray5が光軸AX
2に対して平行又は略平行な光線となる形状とされている(
図31(c)参照)。
【0070】
上記構成のハイビーム用光学系18Bによれば、路面上の車両前方手前近くの視認性を改善することが可能となる。これは、
図30に示すように、水平線Hと鉛直線Vとの交点Oに対して斜め左下の位置に第1付加配光パターンP1が形成され、水平線Hと鉛直線Vとの交点Oに対して斜め右下の位置に第3付加配光パターンP3が形成されて、路面上の車両前方手前近くを照明することによるものである。
【0071】
また、上記構成のハイビーム用光学系18Bによれば、基本配光パターンP0に、X字状の配光パターンが重畳された新規見栄えの配光パターンを形成することが可能となる。これは、
図30に示すように、第1付加配光パターンP1が水平線Hと鉛直線Vとの交点Oに対して斜め左下の位置に形成されるとともに、第4付加配光パターンP4が水平線Hと鉛直線Vとの交点Oに対して斜め右上の位置に形成されて、X字を構成する二本の斜めラインL1、L2のうち一方のラインL1を構成し、第2付加配光パターンP2が水平線Hと鉛直線Vとの交点Oに対して斜め左上の位置に形成されるとともに、第3付加配光パターンP3が水平線Hと鉛直線Vとの交点Oに対して斜め右下の位置に形成されて、X字を構成する二本の斜めラインL1、L2のうち他方のラインL2を構成することによるものである。
【0072】
X字状の配光パターンを形成する観点では、
図30に示すように、第1付加配光パターンP1及び第3付加配光パターンP3を、基本配光パターンP0の下端縁P0aよりも下方(例えば、斜め下方)に突出させ、第2付加配光パターンP2及び第4付加配光パターンP4を、基本配光パターンP0の上端縁P0bよりも上方(例えば、斜め上方)に突出させるのが望ましい。例えば、第1〜第4屈折面S1〜S4の面形状(例えば、水平断面形状及び/又は鉛直断面形状)を調整することで、このようなX字状の配光パターンを形成することが可能となる。
【0073】
また、上記構成のハイビーム用光学系18Bによれば、第1〜第4付加配光パターンP1〜P4が付加された基本配光パターンP0を、一つの第2レンズ26B(レンズ部26a)で実現することが可能となる。
【0074】
また、上記構成のハイビーム用光学系18Bによれば、第2レンズ26B(レンズ部26a)の前方側表面(出射面)を、第1屈折面S1(第2屈折面S2、第3屈折面S3及び第4屈折面S4)と第5屈折面S5とがなめらかに連続する一枚のレンズ面とすることが可能となる。これは、第1屈折面S1及び第2屈折面S2から出射した第2光源28Bからの光線Ray1、Ray2が鉛直方向に関して交差して(
図30参照)、当該第1屈折面S1及び第2屈折面S2と同一の側(左側)に位置する第1付加配光パターンP1及び第2付加配光パターンP2を形成するように第1屈折面S1及び第2屈折面S2の面形状が形成され、第3屈折面S3及び第4屈折面S4から出射した第2光源28Bからの光線Ray3、Ray4が鉛直方向に関して交差して(
図30参照)、当該第3屈折面S3及び第4屈折面S4と同一の側(右側)に位置する第3付加配光パターンP3及び第4付加配光パターンP4を形成するように第3屈折面S3及び第4屈折面S4の面形状が形成されていることによるものである。
【0075】
また、上記構成のハイビーム用光学系18Bによれば、基本配光パターンP0とロービーム用配光パターンP
Loとを重畳させてハイビーム用配光パターン(
図28(c)参照)を形成する場合、両者間の明るさの変化をなだらかに移行させることが可能となる。これは、第1付加配光パターンP1、第2付加配光パターンP2、第3付加配光パターンP3及び第4付加配光パターンP4がつなぎの配光パターン(例えば、基本配光パターンP0とロービーム用配光パターンP
Loの中間の明るさの配光パターン)として機能することによるものである。
【0076】
ロービーム用光学系18Aにおいても、第1レンズ26A(レンズ部26a)を、上記第2レンズ26B(レンズ部26a)と同様の構成とすることで、路面上の車両前方手前近くの視認性を改善することが可能となる。
【0077】
図32は、この改善された第1レンズ26A´(レンズ部26a´)を含むロービーム用光学系18A´及び当該ロービーム用光学系18A´により車両前面に正対した仮想鉛直スクリーン(車両前面から例えば約25m前方に配置されている)上に形成されるロービーム用配光パターンP
Lo´の斜視図である。
【0078】
図32に示すように、ロービーム用配光パターンP
Lo´は、水平線Hと鉛直線Vとの交点Oに対して斜め左下の位置に形成される第1付加配光パターンP1´と、水平線Hと鉛直線Vとの交点Oに対して斜め右下の位置に形成される第2付加配光パターンP2´と、を含んでいる。
【0079】
上記構成のロービーム用配光パターンP
Lo´は、第1レンズ26A´(レンズ部26a´)の前方側表面(出射面)を、次のように構成することで実現される。
【0080】
図32に示すように、第1レンズ26A´(レンズ部26a´)の前方側表面(出射面)は、第1屈折面S1´と、第2屈折面S2´と、第1屈折面S1´及び第2屈折面S2´以外の第3屈折面S3´と、を含んでいる。
【0081】
第1屈折面S1´は、車両前方に向かって、第1レンズ26A´(レンズ部26a´)の前方側表面(出射面)の中心に対して斜め左上に位置する一部領域に設定されている。第2屈折面S2´は、車両前方に向かって、第1レンズ26A´(レンズ部26a´)の前方側表面(出射面)の中心に対して斜め右上に位置する一部領域に設定されている。
【0082】
第1屈折面S1´は、当該第1屈折面S1´から出射する第1光源28Aからの光線Ray1´が第1付加配光パターンP1´を形成するように、水平断面形状が、第1屈折面S1´から出射する第1光源28Aからの光線Ray1´が光軸AX
1寄りに集光する形状とされ、鉛直断面形状が、第1屈折面S1´から出射する第1光源28Aからの光線Ray1´が水平面に対して下向きの方向を照射する形状とされている。
【0083】
同様に、第2屈折面S2´は、当該第2屈折面S2´から出射する第1光源28Aからの光線Ray2´が第2付加配光パターンP2´を形成するように、水平断面形状が、第2屈折面S2´から出射する第1光源28Aからの光線Ray2´が光軸AX
1寄りに集光する形状とされ、鉛直断面形状が、第2屈折面S2´から出射する第1光源28Aからの光線Ray2´が水平面に対して下向きの方向を照射する形状とされている。
【0084】
第3屈折面S3´は、当該第3屈折面S3´から出射する第1光源28Aからの光線が、ロービーム用配光パターンP
Lo´を形成するような面形状とされている。
【0085】
上記改善された第1レンズ26A´(レンズ部26a´)を含むロービーム用光学系18A´によれば、路面上の車両前方手前近くの視認性を改善することが可能となる。これは、水平線Hと鉛直線Vとの交点Oに対して斜め左下の位置に第1付加配光パターンP1´が形成され、水平線Hと鉛直線Vとの交点Oに対して斜め右下の位置に第2付加配光パターンP2´が形成されて、路面上の車両前方手前近くを照明することによるものである。
【0086】
また、上記改善された第1レンズ26A´(レンズ部26a´)を含むロービーム用光学系18A´によれば、第1及び第2付加配光パターンP1´、P2´が付加されたロービーム用配光パターンP
Lo´を、一つの第1レンズ26A´(レンズ部26a´)で実現することが可能となる。
【0087】
また、上記改善された第1レンズ26A´(レンズ部26a´)を含むロービーム用光学系18A´によれば、第1レンズ26A´(レンズ部26a´)の前方側表面(出射面)を、第1屈折面S1´(及び第2屈折面S2´)と第3屈折面S3´とがなめらかに連続する一枚のレンズ面とすることが可能となる。これは、第1屈折面S1´から出射した第1光源28Aからの光線Ray1´が当該第1屈折面S1´と同一の側(左側)に位置する第1付加配光パターンP1´を形成するように第1屈折面S1´の面形状が形成され、第2屈折面S2´から出射した第1光源28Aからの光線Ray2´が当該第2屈折面S2´と同一の側(右側)に位置する第2付加配光パターンP2´を形成するように第2屈折面S2の面形状が形成されていることによるものである。
【0088】
なお、上記例では、ハイビーム用配光パターンP
Hiにおいて斜めに形成される付加配光パターンP1、P2、P3、P4を、第2レンズ26Bの前方側表面(出射面)に形成した屈折部(すなわち、各屈折面S1、S2、S3、S4)により形成する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、屈折部(すなわち、各屈折面S1、S2、S3、S4)を、第2レンズ26Bの前方側表面(出射面)ではなく、第2レンズ26Bの後方側表面(入射面)に形成してもよい。
【0089】
例えば、前方側表面(出射面)に形成されている第1屈折面S1は、当該第1屈折面S1から出射する第2光源28Bからの光線Ray1が第1付加配光パターンP1を形成するように(
図30参照)、水平断面形状が、第1屈折面S1から出射する第2光源28Bからの光線Ray1が光軸Ax
2寄りに集光する形状とされ(
図29(a)参照)、鉛直断面形状が、第1屈折面S1から出射する第2光源28Bからの光線Ray1が水平面に対して下向きの方向を照射する形状とされている(
図29(c)参照)。
【0090】
これと対応するように第2レンズ26Bの後方側表面(入射面)に、前方側表面(出射面)から出射する第2光源28Bからの光線Ray1が第1付加配光パターンP1を形成するように(
図30参照)、入射光をRay1の方向となるように屈折させる第1屈折面S1に相当する屈折面を後方側表面(入射面)に形成する。この屈折面も、水平断面形状が、出射面から出射する第2光源28Bからの光線Ray1が光軸Ax
2寄りに集光する形状とされ(
図29(a)参照)、鉛直断面形状が、出射面から出射する第2光源28Bからの光線Ray1が水平面に対して下向きの方向を照射する形状とすればよい。
【0091】
なお、屈折面の形成は前方側表面(出射面)または後方側表面(入射面)に限るものではなく、両方の面(すなわち、前方側表面(出射面)及び後方側表面(入射面))に形成してもよい。
【0092】
同様に、ロービーム用配光パターンP
Lo´は、第1レンズ26A´(レンズ部26a´)の前方側表面(出射面)に形成した屈折部S1´、S2´、S3´により形成しているが、屈折部は第2レンズ26Bの後方側表面(入射面)、または前方側表面(出射面)と後方側表面(入射面)の両方に形成してもよい。
【0093】
図11はヒートシンクの斜視図、
図12(a)は上面図、
図12(b)は
図12(a)に示したヒートシンクのB−B断面図である。
【0094】
ヒートシンク20は、アルミダイカスト製で、
図11、
図12(a)、
図25に示すように、第1ベース部38、第2ベース部40、第3ベース部42、複数の放熱フィン44a〜44c、給電ケーブルC1、C2に取り付けられたカプラ56が挿入される第1開口部46A、第2開口部46B、正面視で左右両側に配置された一対のフランジ部48、50等を備えている。
【0095】
ヒートシンク20は、第1光源28A及び第2光源28B(半導体発光素子32)で発生する熱を放熱して冷却する共通のヒートシンクで、相対的に水平方向に移動する2つの金型(図示せず)、この2つの金型に対して相対的に鉛直方向に移動する1つの金型(図示せず)を組み合わせて構成されるキャビティ内に、アルミニウム合金の溶湯を供給することで、一体的に成形されている。
図12(a)中の矢印は相対的に水平方向に移動する2つの金型の移動方向(金型抜き方向)を表し、
図12(a)中の点線は当該2つの金型の接触面を表し、
図12(b)中の矢印は鉛直方向に移動する金型の移動方向(金型抜き方向)を表している。
【0096】
図12(a)に示すように、各ベース部38〜42は、車両前方側から車両後方側に向かって、第1ベース部38、第2ベース部40、第3ベース部42の順に配置されている。第2ベース部40は、第1ベース部38よりも車両側方寄りにシフトした位置に配置されている。
【0097】
図12(b)に示すように、第1ベース部38は、前面38a及びその反対側の後面38bを含んでいる。前面38a及び後面38bはいずれも、車両前後方向に延びる光軸AX
1に直交する鉛直面とされている。
【0098】
図9、
図11、
図12(a)、
図12(b)、
図13に示すように、第1ベース部38の前面38aには、第1開口部46Aが設けられている。
図13は、第1開口部46A近傍の拡大斜視図である。
【0099】
図12(b)、
図13等に示すように、第1開口部46Aは、ヘッドランプ10L、10Rの車幅方向寸法の小型化及び車両前後方向寸法の小型化の観点並びにカプラ56の脱落防止の観点から、給電ケーブルC1に取り付けられたカプラ56(
図15、
図16参照)が、側方、前方又は後方からではなく、上方から挿入される開口部とされている。
【0100】
第1開口部46Aは、第1ベース部38の前面38a(上領域38a1)、第1ベース部38の前面38aの左右両側から前方に延びる左右壁38c、38d、左右壁38c、38dの前端上部を連結するフレーム38eにより構成されている。
【0101】
これにより、半導体発光素子32に供給する駆動電流を供給するカプラ側端子60を含むカプラ56を、上方から挿入することで、カプラ側端子60と半導体発光素子32(基板側端子34)とを電気的に接続することが可能となる。これは、上方からカプラ56が挿入される第1開口部46Aが、当該第1開口部46Aに挿入されたカプラ56のカプラ側端子60が基板30の基板側端子34に電気的に接続される位置に設けられていることによるものである。
【0102】
また、ヘッドランプ10L、10Rの小型化(車幅方向寸法の小型化及び車両前後方向寸法の小型化)が可能となる。これは、カプラ56を、側方や後方からではなく、上方から挿入する第1開口部46Aとしたことによるものである。
【0103】
図12(b)に示すように、第1ベース部38の前面38aは、上領域38a1、上領域38a1よりも前方に突出した下領域38a2を含んでいる。
【0104】
図14(a)は
図12(a)に示したヒートシンクのB−B断面図(第1光源28Aを含む)、
図14(b)は
図12(a)に示したヒートシンクのB−B断面図(第1光源28A及びカプラ56を含む)である。
【0105】
下領域38a2は第1光源28Aが固定される面で、第1光源28Aは、
図14(a)に示すように、横長矩形の発光面32aの長辺が水平となり、横長矩形の発光面32aが前方を向き、基板30の裏面とヒートシンク20の第1ベース部38の前面38a(下領域38a2)とが面接触し、かつ、基板30の上部30aが下領域38a2の上端縁よりも上方に突出した状態で、ヒートシンク20の第1ベース部38の前面38a(下領域38a2)にネジ止め固定されている。
【0106】
図13に示すように、第1ベース部38の前面38aは車幅方向に関し基板30よりも幅広で、その左右両側は、前方に向かって延びて、左右壁38c、38dを構成している。左右壁38c、38dはいずれも、第1ベース部38の前面38aに直交する鉛直面とされている。左右壁38c、38dの前端上部は、車幅方向に延びるフレーム38eで連結されている。フレーム38eは、前面38e1及びその反対側の後面38e2を含んでいる。前面38e1及び後面38e2はいずれも、車両前後方向に延びる光軸AX
1に直交する鉛直面とされている。
【0107】
フレーム38eは、鉛直方向に細幅かつ車幅方向に横長の形状で、正面視で第1ベース部38の前面38a(上領域38a1)に重なる位置に配置されている(
図12(b)参照)。なお、基板30は、カプラ56の誤挿入を防ぐため、第1開口部46Aの中央ではなく、後方側にシフトした位置に配置されている(
図14(a)参照)。
【0108】
図12(b)、
図13に示すように、第1開口部46Aの周囲(例えば、第1ベース部38の上部及びフレーム38eの上部)には、上方から当該第1開口部46Aに挿入されるカプラ56が当接し、当該当接したカプラ56を第1開口部46Aに向けてガイド(スライド移動)するためのガイド部52、54が設けられている。ガイド部52、54は、上方から挿入されるカプラ56が当接する面52a、54aを含んでいる。
【0109】
図15は、ヘッドランプの斜視図(アウターレンズ、第1レンズ、第2レンズ、エクステンション省略)である。
【0110】
カプラ56は、
図15に示すように、給電ケーブルC1、C2の先端部に取り付けられている。給電ケーブルC1、C2の基端部はハウジング16に固定されたコネクタを介して、筐体84内に収容された電源回路(図示せず)に電気的に接続されている。
【0111】
図16は、カプラ56の斜視図である。
【0112】
図14(b)、
図16に示すように、カプラ56は基板30の上部30aが挿入される開口部58aを備えたカプラ本体58を備えており、カプラ本体58は、開口部58aに挿入された基板30の上部30aに実装された複数の基板側端子34に電気的に接触する複数のカプラ側端子60、開口部58aに挿入された基板30の上部30aの両側に形成された切欠部30b、30b(
図10参照)に係合する爪部62、62等を備えている。
【0113】
図17は、カプラと第1光源との係合関係を説明するための断面図である。
【0114】
上記構成のカプラ56を、第1開口部46Aにその上方から正しい向きで挿入すると、
図14(b)、
図17に示すように、基板30の上部30aがカプラ56の開口部58aに挿入されて、カプラ56内部に設けられた爪部62、62がカプラ56内部に挿入された基板30の上部30aの両側に形成された切欠部30b、30bに係合するとともに、カプラ側端子60が基板側端子34に電気的に接続する。これにより、上方から第1開口部46Aに挿入されて、カプラ側端子60が基板側端子34に電気的に接続された状態のカプラ56が、第1開口部46Aから脱落するのを防止することが可能となる(抜け止め防止手段)。
【0115】
図12(a)に示すように、第2ベース部40は、前面40a及びその反対側の後面40bを含んでいる。前面40a及び後面40bはいずれも、車両前後方向に延びる光軸AX
2に直交する鉛直面とされている。
【0116】
図11、
図12(a)に示すように、第2ベース部40の前面40aには、第2開口部46Bが設けられている。
【0117】
図12(b)等に示すように、第2開口部46Bは、ヘッドランプ10L、10Rの車幅方向寸法の小型化及び車両前後方向寸法の小型化の観点並びにカプラ56の脱落防止の観点から、給電ケーブルC2に取り付けられたカプラ56(
図15、
図16参照)が、側方、前方又は後方からではなく、上方から挿入される開口部とされている。
【0118】
第2開口部46Bは、第1開口部46Aと同様の構成であるため、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0119】
図12(a)に示すように、第3ベース部42は、前面42a及びその反対側の後面42bを含んでいる。前面42a及び後面42bはいずれも、車両前後方向に延びる光軸AX
1に直交する鉛直面とされている。前面42aは、第1ベース部38が対向した部分及び第2ベース部40が対向した部分を含んでいる。
【0120】
図11、
図12(a)に示すように、複数の放熱フィン44aは、車幅方向に所定間隔をおいて配置され、第1ベース部38(後面38b)及び第2ベース部40(後面40b)と第3ベース部42(前面42a)との間を連結している。これにより、第1ベース部38及び第2ベース部40、第3ベース部42及び複数の放熱フィン44aによって四方が囲われた複数の筒部64が構成されている。複数の筒部64それぞれの下端開口は、底面66で閉塞されている。
【0121】
これにより、複数の放熱フィン44aの強度を高めることが可能となる。これは、複数の放熱フィン44aが第1ベース部38及び/又は第2ベース部40と第3ベース部42に連結されて、四方が囲われた少なくとも1つの筒部64を構成するとともに、当該筒部64の下端開口を底面66で閉塞して、補強したことによるものである。
【0122】
また、半導体発光素子32で発生する熱を効率よく放熱して冷却することが可能となる。これは、少なくとも1つの筒部64の下端開口を底面66で閉塞して、熱の伝導路を増加させたことによるものである。
【0123】
また、金型を組み合わせて構成されるキャビティ内にアルミニウム合金の溶湯を供給して、ヒートシンク20を成形する場合、アルミニウム合金の溶湯をキャビティ(図示せず)内の隅々に行き渡らせることが可能となる。その結果、ヒートシンク20を設計通りの形状に成形することが可能となる。これは、少なくとも1つの筒部64の下端開口を底面66で閉塞することで、当該閉塞された底面66に対応するキャビティ部分(図示せず)が、アルミニウム合金の溶湯の通り道として機能することによるものである。本出願の発明者らは、このことを実験により確認した。
【0124】
第2ベース部40の後面40bには、車幅方向に所定間隔をおいて、車両後方に向かって延びる複数の放熱フィン44bが設けられている。第3ベース部42の後面42bには、車幅方向に所定間隔をおいて、車両後方に向かって延びる複数の放熱フィン44cが設けられている。
【0125】
上記構成のヒートシンク20によれば、半導体発光素子32で発生する熱を「さらに」効率よく放熱して冷却することが可能となる。これは、ヒートシンク20が、第1ベース部38、第2ベース部40、第3ベース部42及び複数の放熱フィン44a〜44cを含む一部品として一体成形されているため、従来(特開2010−125897号公報)のように、各部の間(例えば、ヒートシンク(放熱フィン)と台座部との間)に隙間が発生せず、当該隙間に起因する接触熱抵抗が発生しないことによるものである。
【0126】
また、上記構成のヒートシンク20によれば、部品点数の低減、組み立て工数の低減、組み付け精度の向上が可能となる。これは、ヒートシンク20が、複数部品ではなく、第1ベース部38、第2ベース部40、第3ベース部42、各開口部46A、46B及び複数の放熱フィン44a〜44cを含む一部品として一体成形されていることによるものである。
【0127】
上記構成のヒートシンク20は、
図6、
図7に示すように、少なくとも第1ベース部38及び第2ベース部40が灯室14内に配置され、第3ベース部42がハウジング16に形成された開口16aをカバーし、複数の放熱フィン44cがハウジング16に形成された開口16aから灯室14外に突出した状態で、
図9、
図18に示すように、エイミング機構22を介してハウジング16に対して傾動可能に支持されている。
図18は、
図3に示したヘッドランプのC−C断面図である。
【0128】
これにより、半導体発光素子32で発生する熱を効率よく放熱して冷却することが可能となる。これは、ヒートシンク20の少なくとも一部(複数の放熱フィン44c)がハウジング16に形成された開口16aから灯室14外に突出していることによるものである。
【0129】
図9、
図18等に示すように、エイミング機構22は、ヒートシンク20の上方において車幅方向に延びて、正面視で左右両側に配置された一対のフランジ部48、50を連結したフレーム70、フレーム70の一端側がヒートシンク20の傾動の際の支点となるように、フレーム70の一端側とハウジング16とを連結する連結部72(例えば、エイミングスクリュ72a及びナット72b)、第1エイミングスクリュ74(光軸調整ネジ)、第2エイミングスクリュ76(光軸調整ネジ)を含んでいる。
【0130】
第1エイミングスクリュ74は、ハウジング16に形成された第1貫通穴16bを介して、フレーム70の他端側に取り付けられた第1ナット78に螺合している。第2エイミングスクリュ76は、ハウジング16に形成された第2貫通穴16cを介して、連結部72の下方に位置するヒートシンク部分に取り付けられた第2ナット80に螺合している。
【0131】
これにより、自動二輪車用ヘッドランプの小型化が可能となる。これは、傾動の際の支点となる連結部72、第1エイミングスクリュ74が螺合する第1ナット78を、ヒートシンク20ではなく、フレーム70に取り付けたことによるものである。
【0132】
すなわち、抜き方向が鉛直方向(
図23(a)中の矢印参照)の金型を含む金型を組み合わせて構成されるキャビティ内にアルミニウム合金の溶湯を供給して、ヒートシンク20を成形する場合、金型の抜き方向との関係で、傾動の際の支点となる部分(
図23(a)中の符号A1参照)、エイミングスクリュが螺合するナットが取り付けられる部分(
図23(a)中の符号A2、A3参照)が、外側に突出する結果、自動二輪車用ヘッドランプを小型化できないとう問題がある。
【0133】
これに対して、本実施形態では、ヒートシンク20の上方においてヒートシンク20とは別部品のフレーム70が、車幅方向に延びて一対のフランジ部48、50を連結しており、
図9、
図23(b)に示すように、傾動の際の支点となる連結部72、第1エイミングスクリュ74が螺合する第1ナット78が、ヒートシンク20ではなく、当該フレーム70に取り付けられている。その結果、
図23(b)に示すように、傾動の際の支点となる連結部72、エイミングスクリュ74、76が螺合するナット78、80が取り付けられる部分が、外側に突出しないヒートシンク20を成形することが可能となる。その結果、小型の自動二輪車用ヘッドランプを実現することが可能となる。
【0134】
また、ヒートシンク20の強度を高めることが可能となる。これは、ヒートシンク20の一対のフランジ部48、50をフレーム70で連結して、補強したことによるものである。
【0135】
図6〜
図8に示すように、ハウジング16に形成された開口16aとハウジング16に形成された開口16aから突出した複数の放熱フィン44cとの間の隙間S2は、伸縮自在の1つのカバー68(防水ゴムカバー)で覆われている。カバー68は、その内周部が放熱フィン44c(及び/又は第3ベース部42)に嵌合し、その外周部がハウジング16の開口16aの周囲に嵌合している。
【0136】
各エイミングスクリュ74、76の各ナット78、80に対する螺合量を調整することで、灯室14内に収容されたロービーム用光学系18A及びハイビーム用光学系18Bの光軸調整を一括して行うことが可能となる。これは、ロービーム用光学系18A及びハイビーム用光学系18Bが共通のヒートシンク20に取り付けられており、当該ロービーム用光学系18A及びハイビーム用光学系18Bが取り付けられたヒートシンク20をハウジング16に対して傾動可能に支持するエイミング機構22を備えていることによるものである。
【0137】
また、ハウジング16に形成された開口16aと当該開口16aから灯室14外に突出しているヒートシンク20の少なくとも一部(複数の放熱フィン44c)との間の隙間S2から灯室14内へ水や塵埃等が侵入するのを防止することが可能となる。特に、ヒートシンク20の傾動に伴い、ハウジング16に形成された開口16aと当該開口16aから灯室14外に突出しているヒートシンク20の少なくとも一部(複数の放熱フィン44c)との間の隙間S2が変化しても、当該隙間S2から灯室14内へ水や塵埃等が侵入するのを防止することが可能となる。これは、ハウジング16に形成された開口16aと当該開口16aから突出したヒートシンク20の少なくとも一部(複数の放熱フィン44c)との間の隙間S2が、当該隙間S2の変化に対して追従可能な伸縮自在の1つのカバー68(例えば、ゴムカバー)で覆われていることによるものである。
【0138】
図19は、
図3に示したヘッドランプのD−D断面図である。
【0139】
図19に示すように、ハウジング16の背面には、灯室14内に連通する上下2つの通気穴16d、16eが形成されている。2つの通気穴16d、16eはそれぞれ、呼吸キャップ82により閉塞されている(
図8参照)。
【0140】
呼吸キャップ82は、通気穴16d、16eに連通する迷路状の空気通路及び/又は呼吸フィルタを含み、当該空気通路及び/又は呼吸フィルタによって灯室14内の呼吸作用を可能とするとともに、灯室14内への水の侵入を阻止するために用いられる。このような呼吸キャップ82としては、例えば、特開2010−170751号公報、特開2011−181220号公報に記載のものを用いることが可能である。2つの通気穴16d、16eのうち下の通気穴16eは、鉛直方向に関し、底面66よりも下方の位置に形成されている(
図19参照)。
【0141】
これにより、ロービーム用光学系18A及びハイビーム用光学系18B(特に、樹脂製の第1レンズ26A、第2レンズ26B)を冷却することが可能となる。これは、少なくとも1つの筒部64の下端開口を閉塞する底面66の作用により、
図19に示すように、下の通気穴16eから灯室14内に流入した外気の一部が、当該底面66に沿ってアウターレンズ12とロービーム用光学系18A(及びハイビーム用光学系18B)との間の空間S3に向かい、当該空間S3を通過して上昇して、上の通気穴16dから灯室14外に流出する対流が発生することによるものである。
【0142】
仮に、複数の筒部64それぞれの下端開口が底面66で閉塞されていないと、
図24に示すように、アウターレンズ12とロービーム用光学系18A(及びハイビーム用光学系18B)との間の空間S3に向かう対流が発生しないため、ロービーム用光学系18A及びハイビーム用光学系18B(特に、樹脂製の第1レンズ26A、第2レンズ26B)を効率的に冷却するのが困難となる。
【0143】
なお、底面66には、
図20、
図21に示すように、鉛直方向に貫通した少なくとも1つの通気穴66aが形成されていてもよい。
【0144】
これにより、半導体発光素子32で発生する熱を「さらに」効率よく放熱して冷却することが可能となる。これは、少なくとも1つの筒部64の下端開口を閉塞する底面66に形成された少なくとも1つの通気穴66aの作用により、
図21に示すように、下の通気穴16eから灯室14内に流入した外気の一部が、当該底面66に形成された通気穴66aから筒部64内を通過して上昇して(煙突効果)、上の通気穴16dから灯室14外に流出する対流が発生することによるものである。
【0145】
図22はヘッドランプ(ステー88無し)の背面斜視図、
図27はヘッドランプの背面図(ステー88有り)である。
【0146】
図6、
図7、
図22、
図27に示すように、ハウジング16の後方、かつ、左に配置されたヘッドランプ10Lと右に配置されたヘッドランプ10Rとの間には、電源回路(図示せず)を収容した筐体84が配置されている。筐体84は、左の灯室14内に配置された第1光源28A、第2光源28B(半導体発光素子)に電気的に接続されて当該第1光源28A、第2光源28B(半導体発光素子)に駆動電流を供給する電源回路、及び、右の灯室14内に配置された第1光源28A、第2光源28B(半導体発光素子)に電気的に接続されて当該第1光源28A、第2光源28B(半導体発光素子)に駆動電流を供給する電源回路の2つの電源回路を含む共通の筐体とされている。
【0147】
筐体84は、樹脂製で、アウターレンズ12の延長部12bとカウル24との間に形成される通路S1を通って流入する走行風(
図7中の矢印参照)が共通の筐体84に沿って複数の放熱フィン44cに向かうように、ハウジング16よりも車両後方側、かつ、左に配置されたヘッドランプ10Lと右に配置されたヘッドランプ10Rとの間に配置されている(
図6、
図22参照)。
【0148】
これにより、半導体発光素子32で発生する熱を「さらに」効率よく放熱して冷却することが可能となる。これは、アウターレンズ12の延長部12bとカウル24との間の通路S1を通って流入する走行風(
図7中の矢印参照)が、共通の筐体84によって制御されて、複数の放熱フィン44cを強制冷却することによるものである(
図7参照)。
【0149】
また、自動二輪車用ヘッドランプ10R、10Lの小型化が可能となる。これは、従来(例えば、特開2004−276739号公報参照)、左右の灯室ごとに設けられていた電源回路(左右合わせて2つ)を、1つの筐体84に収容したことによるものである。
【0150】
また、部品点数の低減、組み立て工数の低減が可能となる。これは、従来(例えば、特開2004−276739号公報参照)、左右の灯室ごとに設けられていた電源回路を収容した筐体(左右合わせて2つ。
図33参照)を、1つの筐体84としたことによるものである。
【0151】
なお、共通の筐体84は、例えば、
図27に示すように、ハウジング16等に固定されたステー88によりハウジング16等に保持されつつ、車体(車体フレームやフロントフォーク等)とハウジング16等との間に挟持されて固定されている。
【0152】
以上説明したように、本実施形態の車両用灯具(ヘッドランプ10L、10R)によれば、次の利点を生ずる。
【0153】
第1に、車両用灯具(ハイビーム用光学系18B)において、路面上の車両前方手前近くの視認性を改善することが可能となる。これは、
図30に示すように、水平線Hと鉛直線Vとの交点Oに対して斜め左下の位置に第1付加配光パターンP1が形成され、水平線Hと鉛直線Vとの交点Oに対して斜め右下の位置に第3付加配光パターンP3が形成されて、路面上の車両前方手前近くを照明することによるものである。
【0154】
第2に、車両用灯具(ハイビーム用光学系18B)において、基本配光パターンP0に、X字状の配光パターンが重畳された新規見栄えの配光パターンを形成することが可能となる。これは、
図30に示すように、第1付加配光パターンP1が水平線Hと鉛直線Vとの交点Oに対して斜め左下の位置に形成されるとともに、第4付加配光パターンP4が水平線Hと鉛直線Vとの交点Oに対して斜め右上の位置に形成されて、X字を構成する二本の斜めラインL1、L2のうち一方のラインL1を構成し、第2付加配光パターンP2が水平線Hと鉛直線Vとの交点Oに対して斜め左上の位置に形成されるとともに、第3付加配光パターンP3が水平線Hと鉛直線Vとの交点Oに対して斜め右下の位置に形成されて、X字を構成する二本の斜めラインL1、L2のうち他方のラインL2を構成することによるものである。
【0155】
第3に、車両用灯具(ハイビーム用光学系18B)において、第1〜第4付加配光パターンP1〜P4が付加された基本配光パターンP0を、一つの第2レンズ26B(レンズ部26a)で実現することが可能となる。
【0156】
第4に、車両用灯具(ハイビーム用光学系18B)において、第2レンズ26B(レンズ部26a)の前方側表面(出射面)を、第1屈折面S1(第2屈折面S2、第3屈折面S3及び第4屈折面S4)と第5屈折面S5とがなめらかに連続する一枚のレンズ面とすることが可能となる。これは、第1屈折面S1及び第2屈折面S2から出射した第2光源28Bからの光線Ray1、Ray2が鉛直方向に関して交差して(
図30参照)、当該第1屈折面S1及び第2屈折面S2と同一の側(左側)に位置する第1付加配光パターンP1及び第2付加配光パターンP2を形成するように第1屈折面S1及び第2屈折面S2の面形状が形成され、第3屈折面S3及び第4屈折面S4から出射した第2光源28Bからの光線Ray3、Ray4が鉛直方向に関して交差して(
図30参照)、当該第3屈折面S3及び第4屈折面S4と同一の側(右側)に位置する第3付加配光パターンP3及び第4付加配光パターンP4を形成するように第3屈折面S3及び第4屈折面S4の面形状が形成されていることによるものである。
【0157】
第5に、車両用灯具(ハイビーム用光学系18B)において、基本配光パターンP0とロービーム用配光パターンP
Loとを重畳させてハイビーム用配光パターン(
図28(c)参照)を形成する場合、両者間の明るさの変化をなだらかに移行させることが可能となる。これは、第1付加配光パターンP1、第2付加配光パターンP2、第3付加配光パターンP3及び第4付加配光パターンP4がつなぎの配光パターン(例えば、基本配光パターンP0とロービーム用配光パターンP
Loの中間の明るさの配光パターン)として機能することによるものである。
【0158】
第6に、車両用灯具(上記改善された第1レンズ26A´(レンズ部26a´)を含むロービーム用光学系18A´)において、路面上の車両前方手前近くの視認性を改善することが可能となる。これは、水平線Hと鉛直線Vとの交点Oに対して斜め左下の位置に第1付加配光パターンP1´が形成され、水平線Hと鉛直線Vとの交点Oに対して斜め右下の位置に第2付加配光パターンP2´が形成されて、路面上の車両前方手前近くを照明することによるものである。
【0159】
第7に、車両用灯具(上記改善された第1レンズ26A´(レンズ部26a´)を含むロービーム用光学系18A´)において、第1及び第2付加配光パターンP1´、P2´が付加されたロービーム用配光パターンP
Lo´を、一つの第1レンズ26A´(レンズ部26a´)で実現することが可能となる。
【0160】
第8に、車両用灯具)上記改善された第1レンズ26A´(レンズ部26a´)を含むロービーム用光学系18A´)において、第1レンズ26A´(レンズ部26a´)の前方側表面(出射面)を、第1屈折面S1´(及び第2屈折面S2´)と第3屈折面S3´とがなめらかに連続する一枚のレンズ面とすることが可能となる。これは、第1屈折面S1´から出射した第1光源28Aからの光線Ray1´が当該第1屈折面S1´と同一の側(左側)に位置する第1付加配光パターンP1´を形成するように第1屈折面S1´の面形状が形成され、第2屈折面S2´から出射した第1光源28Aからの光線Ray2´が当該第2屈折面S2´と同一の側(右側)に位置する第2付加配光パターンP2´を形成するように第2屈折面S2の面形状が形成されていることによるものである。
【0161】
上記実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎない。これらの記載によって本発明は限定的に解釈されるものではない。本発明はその精神または主要な特徴から逸脱することなく他の様々な形で実施することができる。