特許第5999446号(P5999446)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5999446
(24)【登録日】2016年9月9日
(45)【発行日】2016年9月28日
(54)【発明の名称】車両用照明装置
(51)【国際特許分類】
   B60Q 3/02 20060101AFI20160915BHJP
   B60Q 3/04 20060101ALI20160915BHJP
【FI】
   B60Q3/02 C
   B60Q3/02 D
   B60Q3/02 J
   B60Q3/04
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-128343(P2013-128343)
(22)【出願日】2013年6月19日
(65)【公開番号】特開2015-3538(P2015-3538A)
(43)【公開日】2015年1月8日
【審査請求日】2015年11月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田原 宏泰
(72)【発明者】
【氏名】清沢 賢司
【審査官】 竹中 辰利
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−73703(JP,A)
【文献】 特開2012−1190(JP,A)
【文献】 特開2007−230450(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 3/02
B60Q 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
前記光源が収容される光源収容部材と、
前記光源における光出射面を覆うとともに、前記光源からの出射光を透過可能なカバー部材と、
電極層を少なくとも含み、前記カバー部材における前記光源とは反対側の面を覆う透明なシート部材と、を備え、
前記カバー部材は、前記シート部材をインサート部材としたインサート成形によって、前記シート部材と一体的に成形されており、
さらに、前記カバー部材は、
当該カバー部材の主面を構成する主壁部と、
前記主壁部の周端部から前記光源側に立ち上がる側壁部と、を備え、
前記シート部材は、
前記主壁部を覆う第1シート部と、
前記側壁部を覆う第2シート部と、を備え、
前記電極層は、
前記第1シート部に含まれ、静電容量式のタッチスイッチを構成する透明な第1電極層と、
前記第2シート部に含まれ、前記主壁部の周端部に沿って延びる形状をなす第2電極層と、を備えている車両用照明装置。
【請求項2】
前記第1電極層の周端部は、前記主壁部の周端部に沿って延びている請求項1に記載の車両用照明装置。
【請求項3】
前記側壁部は、前記主壁部の周端部の全周に亘って設けられ、
前記第2電極層は、前記側壁部の全周に亘って設けられている請求項1又は請求項2に記載の車両用照明装置。
【請求項4】
前記シート部材は、
前記電極層における前記光源とは反対側の面を覆う基材層と、
前記電極層における前記光源側の面を覆い、前記電極層を保護する保護層と、
前記保護層と前記カバー部材の間に介在されるバインダー層と、を備える請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の車両用照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用照明装置として、下記特許文献1に記載のものが知られている。特許文献1に記載の車両用照明装置においては、光源(バルブ)を覆うカバー部材(照明レンズ)に電極が取り付けられている。この電極は、静電容量を検出するためのもので、乗員がカバー部材の表面に触れた際に生じる静電容量の変化を検出することで、光源の点灯を行うことができる。つまり、この電極は、タッチスイッチを構成する電極とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−105588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のカバー部材には、タッチスイッチを構成する電極(第1電極)以外の電極(第2電極)が設けられる場合がある。このような第2電極としては、例えば、電気的なノイズを吸収するための電極を例示することができる。このような電極を設けることで、タッチスイッチの動作安定性をより高くすることができる。
【0005】
また、上記第1電極及び第2電極をカバー部材に設けるための構成として、例えば、第1電極及び第2電極を含むシート部材を接着剤によってカバー部材の面に貼り付ける構成が考えられる。
【0006】
ここで、シート部材が貼り付けられるカバー部材は、一般的に、主面(車室内側の面)を構成する主壁部と、側面を構成する側壁部を有しており、シート部材は、主壁部に貼り付けられる。これにより、乗員は、カバー部材の主面に触れることで、光源の点灯を行うことができる。
【0007】
しかしながら、主壁部に2種類の電極(第1電極及び第2電極)が設けられていると、2種類の電極が模様として見えてしまう場合がある。これにより、主面の外観が雑然としたものとなり、意匠性が低下する事態が懸念される。
【0008】
また、静電容量を検出するための第1電極の面積が大きい程、タッチスイッチの操作性が良好なものとなる。ここで、主壁部に、第1電極及び第2電極の双方が設けられていると、第2電極の分だけ、第1電極の面積を小さく必要があり、この点においても改善の余地があった。
【0009】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、意匠性の低下を抑制するとともに、タッチスイッチを構成する電極をより広範囲に設けることが可能な車両用照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、光源と、前記光源が収容される光源収容部材と、前記光源における光出射面を覆うとともに、前記光源からの出射光を透過可能なカバー部材と、電極層を少なくとも含み、前記カバー部材における前記光源とは反対側の面を覆う透明なシート部材と、を備え、前記カバー部材は、前記シート部材をインサート部材としたインサート成形によって、前記シート部材と一体的に成形されており、さらに、前記カバー部材は、当該カバー部材の主面を構成する主壁部と、前記主壁部の周端部から前記光源側に立ち上がる側壁部と、を備え、前記シート部材は、前記主壁部を覆う第1シート部と、前記側壁部を覆う第2シート部と、を備え、前記電極層は、前記第1シート部に含まれ、静電容量式のタッチスイッチを構成する透明な第1電極層と、前記第2シート部に含まれ、前記主壁部の周端部に沿って延びる形状をなす第2電極層と、を備えていることに特徴を有する。
【0011】
本発明では、第1電極層以外の電極層である第2電極層が、カバー部材の側壁部を覆う第2シート部に配されている。これにより、第2電極層がない分だけ、主壁部において第1電極層(静電容量式のタッチスイッチを構成する電極)をより広範囲に設けることができる。この結果、乗員は第1電極層に対応する部分に確実に触れることができる。
【0012】
また、乗員の目に付き易い主壁部に、第1電極層及び第2電極層の双方を形成する構成と比べて、主壁部の外観がシンプルとなり、意匠性を高くすることができる。
【0013】
また、本発明では、シート部材は、主壁部と側壁部を覆う立体形状とされる。仮に、シート部材をカバー部材に対して接着剤で貼り付ける構成の場合には、シート部材が平面形状をなす場合と比べて貼り付けにくい。この点、本発明では、カバー部材は、インサート成形によって、シート部材と一体的に成形されている。これにより、カバー部材に対してシート部材を貼り付ける必要がなく好適である。
【0014】
上記構成において、前記第1電極層の周端部は、前記主壁部の周端部に沿って延びているものとすることができる。
【0015】
第1電極層の周端部を主壁部の周端部に沿って配することで、主壁部における第1電極層の形成範囲を広く取り易い。このため、乗員は第1電極層に対応する部分により確実に触れることができる。
【0016】
また、前記側壁部は、前記主壁部の周端部の全周に亘って設けられ、前記第2電極層は、前記側壁部の全周に亘って設けられているものとすることができる。
【0017】
また、前記シート部材は、前記電極層における前記光源とは反対側の面を覆う基材層と、前記電極層における前記光源側の面を覆い、前記電極層を保護する保護層と、前記保護層と前記カバー部材の間に介在されるバインダー層と、を備えるものとすることができる。
【0018】
基材層と保護層との間に電極層を配することで、電極層を確実に保護することができる。特に、電極層とカバー部材の間に保護層を介在させることで、インサート成形時における溶融状態のカバー部材が電極層に直接触れる事態を防ぐことができ、電極層を確実に保護することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、意匠性の低下を抑制するとともに、タッチスイッチを構成する電極をより広範囲に設けることが可能な車両用照明装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態における照明装置を示す断面図
図2図1の照明装置を示す分解斜視図
図3】シート部材を示す斜視図
図4】展開状態(立体形状に成形される前の状態)のシート部材を示す平面図
図5】カバー部材及びシート部材を示す断面図(図3のA−A線で切断した図に対応)
図6図5においてシート部材を拡大して示す拡大図
図7】カバー部材の裏面にシート部材が貼り付けられている比較例を示す断面図
図8】カバー部材の主壁部に第1電極層及び第2電極層が配されている比較例を示す断面図
図9】カバー部材の主壁部の全面に第1電極層が配されている変形例を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の一実施形態を図1ないし図8によって説明する。本実施形態の照明装置20(車両用照明装置)は、図1に示すように、例えば、車両の天井内装材10に設けられるものである。
【0022】
照明装置20は、図1及び図2に示すように、複数のLED21(光源)と、複数のLED21が実装された回路基板22と、LED21及び回路基板22が収容されるケース23(光源収容部材)と、カバー部材30と、シート部材60と、を備えている。
【0023】
ケース23は、図1に示すように、開口部23Aを有する箱形状をなしている。ケース23は、図2に示すように、平面視において、矩形状をなしている。LED21が実装された回路基板22は、ケース23の底面に配置されている。
【0024】
カバー部材30は、開口部23Aを塞ぐ矩形状をなしており、LED21における光出射面21Aを覆う形で配されている。カバー部材30は、例えば、爪嵌合やビス止めなどの取付手段(図示せず)によって、ケース23に取り付けられている。
【0025】
カバー部材30(レンズ部材)は、例えば、透光性の大きい(透明度の高い)合成樹脂(例えば、アクリル、PET、ポリカーボネートなど)によって形成されており、LED21からの出射光を透過可能な構成とされる。
【0026】
カバー部材30は、図1及び図2に示すように、矩形状をなす主壁部31と、主壁部31の周囲4辺(周端部)から、LED21側(図1の下側)に立ち上がる側壁部33と、を有している。つまり、側壁部33は、図2に示すように、主壁部31の周端部における全周に亘って設けられている。
【0027】
主壁部31は、カバー部材30の主面(意匠面、車室内側の面)を構成するものとされ、側壁部33は、カバー部材30の側面を構成するものとされる。
【0028】
主壁部31における裏面(カバー部材における光源側の面)には、図1に示すように、ダイヤカット状の微細な凹凸部34(凹凸模様)が形成されている。なお、このような凹凸部34は、例えば、主壁部31における裏面に表面加工を施すことで形成することができる。
【0029】
この凹凸部34は、LED21からの光を拡散させる機能を有している。つまり、主壁部31における裏面は、LED21からの出射光を拡散させることが可能な非平坦形状(非平坦面)とされる。また、凹凸部34を形成することで、車室内側(乗員側)からカバー部材30を通じてケース23内部の様子が見えてしまう事態を抑制でき、意匠性を高くすることができる。
【0030】
シート部材60は、図1に示すように、カバー部材30における表側の面(カバー部材における光源とは反対側の面、車室内側の面)を覆うものとされる。具体的には、シート部材60は、主壁部31の全面を覆う第1シート部61と、側壁部33の全面を覆う第2シート部62と、を備えている。つまり、第2シート部62は、第1シート部61の周端部からLED21側に立ち上がる形状をなしている。
【0031】
本実施形態においては、カバー部材30は、シート部材60をインサート部材としたインサート成形によって、シート部材60と一体的に成形されている。これにより、シート部材60とカバー部材30とが一体的に形成されている。なお、上述した凹凸部34は、カバー部材30をインサート成形する際に、成形型の凹凸模様を転写することで成形してもよい。
【0032】
シート部材60は、図4に示すように、インサート成形をする前の段階では、平面状をなしており、例えば、プレス加工によって、カバー部材30の外形に倣った立体形状に成形される。
【0033】
インサート成形を行う際には、カバー部材30を成形するためのキャビティ内にシート部材60が収容された状態で、キャビティ内にカバー部材30を構成する溶融樹脂を射出する。これにより、カバー部材30がシート部材60と一体的に成形される。
【0034】
次に、シート部材60の構成について説明を行う。シート部材60は、図5及び図6に示すように、表側(車室内側、図6の上側)から、基材層71、透明電極層74(電極層)、保護層77、バインダー層80の順に重ねることで構成されている。なお、基材層71及び保護層77は、電気絶縁性を有している。
【0035】
基材層71は、例えば、透光性を有する合成樹脂(例えば、PET、ポリカーボネートなど)のフィルムによって形成されており、LED21からの出射光を透過可能な構成とされる。
【0036】
透明電極層74は、基材層71の裏面にポリチオフェン系の導電性高分子(例えば、PEDOT)を含むインクを印刷することで形成されている。言い換えると、基材層71は、透明電極層74における表側(光源とは反対側)の面を覆う層とされる。
【0037】
透明電極層74は、図3及び図5に示すように、第1シート部61に含まれ、静電容量式のタッチスイッチを構成する第1電極層75と、第2シート部62に含まれる第2電極層76と、を備えている。つまり、第1電極層75は、主壁部31に設けられ、第2電極層76は、側壁部33に設けられている。
【0038】
第1電極層75は、図3及び図4に示すように、長手方向の中央部において分断されている。つまり、第1電極層75は、長手方向における一方の電極層75Aと、他方の電極層75Bとから構成されている。
【0039】
第1電極層75は、その中央部を除いて主壁部31のほぼ全面を覆うように配されている。言い換えると、第1電極層75の周端部(外周端)は、図3に示すように、主壁部31と側壁部33との境界部(主壁部31の周端部)に沿って延びている。
【0040】
第2電極層76は、図3及び図4に示すように、線状をなしており、第1電極層75を囲むように延びている。つまり、第2電極層76は、側壁部33の全周に亘って設けられている。
【0041】
また、基材層71の一部は、外側に突き出すように延びる帯状の延設部72とされる。第1電極層75の一部、及び第2電極層76の一部は、延設部72に延びている。延設部72の先端部は、例えば、回路基板22に設けられたコネクタ(図示せず)に接続される。これにより、第1電極層75及び第2電極層76が、回路基板22に実装された制御部(図示せず)に対して電気的に接続される構成となっている。
【0042】
回路基板22の制御部では、第1電極層75に人体(指)が近付くことで生じる静電容量(浮遊容量)の変化を検出し、基材層71の表面がタッチされたか否かの判定を行う構成となっている。基材層71の表面がタッチされたと判定された時には、制御部は、LED21を点灯(又は消灯)させる構成となっている。これにより、カバー部材30にタッチスイッチの機能を付加させることができる。つまり、第1電極層75は、タッチスイッチの検知部とされる。
【0043】
なお、本実施形態では、一方の電極層75Aと、他方の電極層75Bとは、それぞれ独立したタッチスイッチを構成している。具体的には、基材層71において、一方の電極層75Aに対応する箇所がタッチされた際には、例えば、一方の電極層75Aに対応する部分に配されたLED21が点灯される構成となっている。また、基材層71において、他方の電極層75Bに対応する箇所がタッチされた際には、例えば、他方の電極層75Aに対応する部分のLED21が点灯される構成となっている。なお、タッチスイッチによる動作は、LED21の点灯に限定されず適宜変更可能である。
【0044】
第2電極層76は、周囲の電気ノイズを吸収するための電極とされる。このような電極を設けることで、タッチスイッチの動作安定性を高くすることができる。第2電極層76は、例えば、回路基板22の制御部によって制御されることで、電気ノイズを吸収するように作用するものとされる。
【0045】
なお、第2電極層76の長さが大きい程、電気ノイズを吸収する効果は大きくなる。このため、図3及び図4に示すように、線状をなす第2電極層76は、一本の線が延設方向の途中で折り返されるように延びており、その全長がより大きくなるように形成されている。つまり、第2電極層76の全長は、側壁部33の周方向の長さの約2倍となっている。
【0046】
保護層77(レジスト層)は、透明電極層74における裏側(カバー部材30側)の面を覆う構成となっている。保護層77は、透光性を有し、透明電極層74を覆うことで、透明電極層74を保護する機能を担っている。カバー部材30をインサート成形する際には、溶融状態のカバー部材30は高温となるが、このような保護層77を設けることで、カバー部材30の熱によって、透明電極層74が溶解して流れる事態を防止することができる。
【0047】
このような保護層77は、例えば、熱硬化性樹脂を含むインキを透明電極層74の裏側に印刷することで形成することができるが、これに限定されない。保護層77は、インサート成形時の熱などから透明電極層74を保護できる材質のものであれば適宜変更可能である。
【0048】
バインダー層80(接着層)は、保護層77における裏側の面を覆う構成となっている。つまり、バインダー層80は、図6に示すように、保護層77とカバー部材30の間に介在されている。
【0049】
バインダー層80は、透光性を有し、保護層77とカバー部材30とを接着する機能を担っている。具体的には、バインダー層80は、カバー部材30のインサート成形時において、カバー部材30を構成する溶融樹脂の熱で溶解することで、保護層77とカバー部材30とを接着するものとされる。
【0050】
バインダー層80として、例えば、透光性を有し、保護層77及びカバー部材30の両方との相溶性が高い樹脂を用いることができる。なお、バインダー層80の材質は、保護層77及びカバー部材30の材質に応じて適宜選択可能である。
【0051】
次に、本実施形態の効果について説明する。図7の比較例に示すように、仮に、カバー部材30の裏面(凹凸部34が形成されている面)に対して、接着剤81を介して、透明電極層74を含むシート部材82を貼り付ける構成の場合には、接着剤81とカバー部材30との接触面積が小さくなり、接着力が低下する。
【0052】
また、図7に示す構成では、シート部材82と凹凸部34との間に空気が介在する箇所とそうでない箇所が生じる。これにより、空気が介在する箇所とそうでない箇所では静電容量に差が生じ、タッチスイッチの感度が異なるという問題点が生じる。
【0053】
このような事情から、シート部材60をカバー部材30における裏側の面に対して、接着剤で貼り付けることは困難である。そこで、シート部材60をカバー部材30における表側の面に対して、接着剤で貼り付ける構成が考えられる。
【0054】
しかしながら、シート部材60をカバー部材30における表側の面に対して、接着剤で貼り付けた場合には、表側に露出されているシート部材60は、裏面に配されているよりも外力を受け易く、剥がれる事態が懸念される。このため、接着剤を用いる構成では、シート部材60をカバー部材30における表側の面に設けることが困難となる。
【0055】
本実施形態では、インサート成形によって、透明電極層74を含むシート部材60とカバー部材30とが一体的に形成されている。このため、シート部材60がカバー部材30から剥がれるおそれがなく、シート部材60をカバー部材30における表側の面に配することができる。
【0056】
このように、本実施形態では、インサート成形を用いることで、シート部材60をカバー部材30における表側の面に配置することができる。このため、カバー部材30の裏面に透明電極を取り付ける必要がない。カバー部材30の裏面に凹凸部34が設けられている場合(平坦面でない場合)において、カバー部材30に透明電極層74(タッチスイッチ用の電極)を取り付けることが可能となる。
【0057】
また、シート部材60は、透明電極層74におけるLED21とは反対側の面を覆う基材層71と、透明電極層74におけるLED21側の面を覆い、透明電極層74を保護する保護層77と、保護層77とカバー部材30の間に介在されるバインダー層80と、を備える。
【0058】
基材層71と保護層77との間に透明電極層74を配することで、透明電極層74を確実に保護することができる。特に、透明電極層74とカバー部材30の間に保護層77を介在させることで、インサート成形時における溶融状態のカバー部材30が透明電極層74に直接触れる事態を防ぐことができ、透明電極層74を確実に保護することができる。
【0059】
また、本実施形態では、第1電極層75以外の電極層である第2電極層76が、カバー部材30の側壁部33を覆う第2シート部62に配されている。
【0060】
本実施形態のように、第2電極層76を電気ノイズ吸収用の電極とする場合、第1電極層75を囲むように第2電極層76を形成することが好ましい。ここで、図8の比較例に示すように、カバー部材1の主壁部2に、第1電極層75及び第2電極層76の双方を設ける構成とした場合、主壁部2の周端部(図8の左右両端部)には、第2電極層76が配される。このため、第1電極層75を主壁部2の周端部に設けることができない。つまり、第1電極層75の形成範囲を主壁部2の外周端まで広げることができない。
【0061】
本実施形態では、第2電極層76を第2シート部62(側壁部33側)に設けることで、第1電極層75の形成範囲を主壁部2の外周端まで広げることができる。つまり、主壁部31において第1電極層75(静電容量式のタッチスイッチを構成する電極)をより広範囲に設けることができる。この結果、乗員は第1電極層75に対応する部分に確実に触れることができ、タッチスイッチの操作性をより高くすることができる。
【0062】
また、乗員の目に付き易い主壁部31に、第1電極層75及び第2電極層76の双方を形成する構成と比べて、主壁部31の外観がシンプルとなり、意匠性を高くすることができる。
【0063】
また、本実施形態では、シート部材60は、主壁部31と側壁部33を覆う立体形状とされる。仮に、シート部材60をカバー部材30に対して接着剤で貼り付ける構成の場合には、シート部材が平面形状をなす場合と比べて貼り付けにくい。この点、本実施形態では、カバー部材30は、インサート成形によって、シート部材60と一体的に成形されている。これにより、カバー部材30に対してシート部材60を貼り付ける必要がなく好適である。
【0064】
また、第1電極層75の周端部(外周端)は、主壁部31の周端部(外周端)に沿って延びている。
【0065】
第1電極層75の周端部を主壁部31の周端部に沿って配することで、主壁部31における第1電極層75の形成範囲を広く取り易い。このため、乗員は第1電極層75(タッチスイッチの検知部)に対応する部分により確実に触れることができ、LED21の点灯(又は消灯)操作を確実に行うことができる。
【0066】
また、側壁部33は、主壁部31の周端部の全周に亘って設けられ、第2電極層76は、側壁部33の全周に亘って設けられている。これにより、主壁部31に設けられた第1電極層75を囲むように第2電極層76を設けることができ、ノイズをより効果的に低減することができる。
【0067】
また、シート部材60は、透明電極層74におけるLED21とは反対側の面を覆う基材層71と、透明電極層74におけるLED21側の面を覆い、透明電極層74を保護する保護層77と、保護層77とカバー部材30の間に介在されるバインダー層80と、を備えるものとすることができる。
【0068】
基材層71と保護層77との間に透明電極層74を配することで、透明電極層74を確実に保護することができる。特に、透明電極層74とカバー部材30の間に保護層77を介在させることで、インサート成形時における溶融状態のカバー部材30が透明電極層74に直接触れる事態を防ぐことができ、透明電極層74を確実に保護することができる。
【0069】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0070】
(1)上記実施形態では、光源としてLED21を例示したが、これに限定されない。例えば、光源は、LED(光源本体)と、LEDからの光を車室内側へ導光する導光体とから構成されていてもよい。なお、光源が導光体を備える場合には、光源の光出射面として、導光体における光出射面を例示することができる。
【0071】
(2)カバー部材30の形状は、平面視矩形状に限定されない。例えば、カバー部材30の主壁部31が円形状をなしており、主壁部31の周端部の全周に亘って円形状をなす側壁部33が設けられていてもよい。
【0072】
(3)上記実施形態では、主壁部31における裏面にダイヤカット状の凹凸部34が形成されている構成を例示した。凹凸部34の形状は、ダイヤカット状に限定されず適宜変更可能である。凹凸部は、例えば、シボ形状をなしていてもよい。
【0073】
(4)シート部材60を構成する各層71,74,77,80の材質は上記実施形態で例示したものに限定されず適宜変更可能である。例えば、透明電極層74を構成する材質は、PEDOTに限定されず、ITOなどでもよい。透明電極層74は、導電性と光透過性を有するものであればよい。また、透明電極層74は、無色透明であってもよいし、有色透明であってもよい。なお、側壁部33に配される第2電極層76は、透明でなくてもよい。
【0074】
(5)上記実施形態では、第1電極層75が、一方の電極層75A及び他方の電極層75Bから分割構成されているものを例示したが、これに限定されない。図9に示すように、シート部材160における第1電極層175が、第1シート部161の全範囲に配されていてもよい。つまり、第1電極層175は主壁部31の全面を覆う形で配されていてもよく、第1電極層175の周端部が主壁部31の周端部の全周に亘って配されていてもよい。
【0075】
(6)上記実施形態において、第1電極層75の一部が側壁部33を覆う形で延びている構成であってもよい。
【0076】
(7)上記実施形態では、照明装置20を天井内装材10に設ける構成を例示したが、照明装置20の設置個所は天井内装材に限定されず適宜変更可能である。例えば、照明装置20は、車両のドアトリムやインストルメントパネルなどに設けられていてもよい。
【0077】
(8)上記実施形態では、第2電極層76が周囲の電気ノイズを吸収する機能を有する場合を例示したが、これに限定されない。第2電極層76の用途は、適宜変更可能である。例えば、カバー部材30の側壁部33が外部に露出した構成の場合、第2電極層76をタッチスイッチ用の電極として用いてもよい。
【0078】
(9)上記実施形態において、凹凸部34を備えていない構成であってもよい。
【符号の説明】
【0079】
20…照明装置(車両用照明装置)、21…LED(光源)、21A…光出射面(光源における光出射面)、23…ケース(光源収容部材)、30…カバー部材、31…主壁部、33…側壁部、60…シート部材、61…第1シート部、62…第2シート部、71…基材層、74…透明電極層(電極層)、75…第1電極層、76…第2電極層、77…保護層、80…バインダー層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9