特許第5999600号(P5999600)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5999600光学活性テトラヒドロフラン−2−カルボン酸の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5999600
(24)【登録日】2016年9月9日
(45)【発行日】2016年9月28日
(54)【発明の名称】光学活性テトラヒドロフラン−2−カルボン酸の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 307/24 20060101AFI20160915BHJP
   C07B 57/00 20060101ALN20160915BHJP
【FI】
   C07D307/24
   !C07B57/00 346
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-46400(P2013-46400)
(22)【出願日】2013年3月8日
(65)【公開番号】特開2014-172856(P2014-172856A)
(43)【公開日】2014年9月22日
【審査請求日】2015年12月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000187046
【氏名又は名称】東レ・ファインケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100182785
【弁理士】
【氏名又は名称】一條 力
(72)【発明者】
【氏名】平賀 悠文
(72)【発明者】
【氏名】森本 正雄
(72)【発明者】
【氏名】西村 朋晃
【審査官】 伊藤 幸司
(56)【参考文献】
【文献】 特開平1−216983(JP,A)
【文献】 特開平3−7272(JP,A)
【文献】 特開平9−71576(JP,A)
【文献】 特開平8−59517(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第101429180(CN,A)
【文献】 特開2002−171994(JP,A)
【文献】 特開平9−143101(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
C07B
CAPLUS/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の3工程、
(第一工程)一般式
【化1】
(式中、R1は水素原子あるいはハロゲノ基を示し、R2は水素原子あるいはメチル基を示し、*は当該炭素原子が光学活性中心であることを示す)で表される(R)−または(S)−テトラヒドロフラン−2−カルボン酸と芳香族アミンとの塩を水中にて無機金属塩基で塩交換したのち、炭化水素系溶媒及び/またはエーテル系溶媒で芳香族アミンを除去して、(R)−または(S)−テトラヒドロフラン−2−カルボン酸を含有する水層を得る工程、
(第二工程)第一工程で得た水層に無機酸を添加してpHを酸性にしてから、テトラヒドロフランで抽出する工程、
(第三工程)第二工程で得た抽出液を濃縮、及び蒸留する工程、
を含む、一般式
【化2】
(式中、*は当該炭素原子が光学活性中心であることを示す)で表される高純度(R)−または(S)−テトラヒドロフラン−2−カルボン酸の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の芳香族アミンがベンジルアミンである高純度(R)−または(S)−テトラヒドロフラン−2−カルボン酸の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の高純度(R)−または(S)−テトラヒドロフラン−2−カルボン酸の化学純度が99.0%以上である(R)−または(S)−テトラヒドロフラン−2−カルボン酸の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医薬中間体原料として重要な光学活性テトラヒドロフラン−2−カルボン酸の工業的製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光学活性テトラヒドロフラン−2−カルボン酸は、医薬等産業上有用な化合物として知られており、例えば、β−ラクタム抗生物質の中間体原料として使用されていることが報告されている(特許文献1参照)。
【0003】
光学活性テトラヒドロフラン−2−カルボン酸を製造する方法としては、例えば、
(1)ラセミ体のテトラヒドロフラン−2−カルボン酸を光学活性芳香族アミンまたは光学活性アミノ酸アミドを用いて光学分割して光学活性テトラヒドロフラン−2−カルボン酸を製造する方法(特許文献2参照)、
(2)ラセミ体のテトラヒドロフラン−2−カルボン酸を(R)−フェニルエチルアミンで光学分割して(S)−テトラヒドロフラン−2−カルボン酸を製造する方法(特許文献3参照)、
(3)低純度の光学活性を有する(R)−テトラヒドロフラン−2−カルボン酸をアキラルアミンであるジシクロヘキシルアミンを用いて光学精製して高純度の光学活性を有するテトラヒドロフラン−2−カルボン酸を製造する方法(特許文献4参照)などが知られている。
【0004】
しかしながら、上記(1)の方法は、高価な光学分割剤を使用している点、その光学分割剤が不安定なため、回収利用時に光学純度低下を避けるのに煩雑な精製工程を必要とする点、光学分割後に解塩処理し、目的物を抽出する際、環境負荷の大きいジクロロメタンを使用する点、また上記(2)の方法は、工程中に光学分割剤である(R)−フェニルエチルアミンを由来とする不純物としてアセトフェノンを副生し、これが製品中に残存してしまう点、また上記(3)の方法は、高価な光学精製剤を使用しているにもかかわらず、光学精製工程の収率が非常に低い点、光学分割後に解塩処理し、目的物を抽出する際に使用するメチルエチルケトン由来で蒸留でも除去しきれない%オーダーの不純物が副生してしまう点とそれぞれ問題を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭61−207387号公報
【特許文献2】特開平9−143101号公報
【特許文献3】中国公開101429180号
【特許文献4】特開2002−171994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
光学活性テトラヒドロフラン−2−カルボン酸を医薬原料として用いる場合、高純度の光学活性を有することが強く求められている。高い生産性で効率的な高光学活性テトラヒドロフラン−2−カルボン酸の製造法の創出が望まれてきた。
【0007】
本発明の目的は、医薬原料として重要な高光学活性テトラヒドロフラン−2−カルボン酸を、安価で入手容易な原料を使用して工業的に適した製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、前記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、本発明を見出すに至った。即ち、本発明は、次の3工程、
(第一工程)一般式
【0009】
【化1】
【0010】
(式中、R1は水素原子あるいはハロゲノ基を示し、R2は水素原子あるいはメチル基を示し、*は当該炭素原子が光学活性中心であることを示す)で表される(R)−または(S)−テトラヒドロフラン−2−カルボン酸と芳香族アミンとの塩を水中にて無機金属塩基で塩交換したのち、炭化水素系溶媒及び/またはエーテル系溶媒で芳香族アミンを除去して、(R)−または(S)−テトラヒドロフラン−2−カルボン酸を含有する水層を得る工程、
(第二工程)第一工程で得た水層に無機酸を添加してpHを酸性にしてから、テトラヒドロフランで抽出する工程、
(第三工程)第二工程で得た抽出液を濃縮、及び蒸留する工程、
を含む、一般式
【0011】
【化2】
【0012】
(式中、*は当該炭素原子が光学活性中心であることを示す)で表される高純度(R)−または(S)−テトラヒドロフラン−2−カルボン酸の製造方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、医薬原料として重要な高純度テトラヒドロフラン−2−カルボン酸を安価で入手容易な原料から、高い生産性で効率的な工業的に適した方法で製造することが可能である。
【0014】
本発明により製造された光学活性テトラヒドロフラン−2−カルボン酸は、化学純度や光学純度が高く、医薬原料として用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0016】
本発明は、次の3工程、
(第一工程)一般式
【0017】
【化3】
【0018】
(式中、R1は水素原子あるいはハロゲノ基を示し、R2は水素原子あるいはメチル基を示し、*は当該炭素原子が光学活性中心であることを示す)で表される(R)−または(S)−テトラヒドロフラン−2−カルボン酸と芳香族アミンとの塩を水中にて無機金属塩基で塩交換したのち、炭化水素系溶媒及び/またはエーテル系溶媒で芳香族アミンを除去して、(R)−または(S)−テトラヒドロフラン−2−カルボン酸を含有する水層を得る工程、
(第二工程)第一工程で得た水層に無機酸を添加してpHを酸性にしてから、テトラヒドロフランで抽出する工程、
(第三工程)第一工程で得た抽出液を濃縮、及び蒸留する工程、
を含む、一般式
【0019】
【化4】
【0020】
(式中、*は当該炭素原子が光学活性中心であることを示す)で表される高純度(R)−または(S)−テトラヒドロフラン−2−カルボン酸の製造方法である。
【0021】
第一工程は、一般式
【0022】
【化5】
【0023】
表される光学活性テトラヒドロフラン−2−カルボン酸と芳香族アミンとの塩を使用する。R1は水素原子あるいはハロゲノ基を示し、好ましくは、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基、より好ましくは、クロロ基、ブロモ基である。R2は水素原子あるいはメチル基を示し、*は当該炭素原子が光学活性中心であることを示す。
【0024】
本発明で使用される芳香族アミンは、例えば、ベンジルアミン、(R)−(+)−1−フェニルエチルアミン、(S)−(−)−1−フェニルエチルアミン、(R)−(+)−1−(4−フルオロフェニル)エチルアミン、(S)−(−)−1−(4−フルオロフェニル)エチルアミン、(R)−(+)−1−(4−クロロフェニル)エチルアミン、(S)−(−)−1−(4−クロロロフェニル)エチルアミン、(R)−(+)−1−(4−ブロモフェニル)エチルアミン、(S)−(−)−1−(4−ブロモフェニル)エチルアミン、(R)−(+)−1−(4−ヨードフェニル)エチルアミン、(S)−(−)−1−(4−ヨードフェニル)エチルアミンなどが挙げられるが、好ましくは、ベンジルアミン、(R)−(+)−1−フェニルエチルアミン、(S)−(−)−1−フェニルエチルアミン、さらに好ましくはベンジルアミンである。
【0025】
第一工程で使用する無機金属塩基は、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の金属水酸化物、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等の金属炭酸水素塩、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の金属炭酸塩等が挙げられるが、好ましくは水酸化ナトリウム、水酸化カリウムである。これら無機金属塩基は単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。無機金属塩基の使用量は、光学活性テトラヒドロフラン−2−カルボン酸に対して、好ましくは0.8〜1.2モル倍、さらに好ましくは1.0〜1.1モル倍である。
【0026】
第一工程では、炭化水素系溶媒及び/またはエーテル系溶媒で芳香族アミンを除去する。炭化水素系溶媒及び/またはエーテル系溶媒により、芳香族アミンを洗浄除去することが好ましい。
【0027】
第一工程で使用する炭化水素系溶媒は、例えば、トルエン、ベンゼン、p−キシレン、ヘキサン、ヘプタン等が挙げられるが、芳香族アミンの除去効率が高い点からトルエン、p−キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒が好ましく、より好ましくはトルエンである。炭化水素系溶媒の使用量や洗浄回数は特に制限されない。
【0028】
第一工程で使用するエーテル系溶媒は、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、メチルtert−ブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル等が挙げられるが、芳香族アミンの除去効率が高い点から、テトラヒドロフラン、メチルtert−ブチルエーテルが好ましく、より好ましくはテトラヒドロフランである。エーテル系溶媒の使用量や洗浄回数は特に制限されない。
【0029】
本発明の第一工程では、炭化水素系溶媒中の微量不純物を洗浄除去することを目的として、炭化水素系溶媒での洗浄後に、エーテル系溶媒で洗浄することもできる。エーテル系溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、メチルtert−ブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル等が挙げられるが、好ましくはテトラヒドロフランである。エーテル系溶媒の使用量や洗浄回数は特に制限されない。
【0030】
塩交換の温度は、好ましくは、20〜40℃であり、反応時間は、好ましくは、1時間以上である。
【0031】
第一工程における芳香族アミンの除去率は、好ましくは、99%以上であり、より好ましくは、99.5%以上である。
【0032】
第二工程では、第一工程で得た水層に無機酸を添加してpHを酸性にしてから、テトラヒドロフランで抽出する。第二工程は、第一工程で得た水層に無機酸を添加し、解塩してからテトラヒドロフランで光学活性テトラヒドロフラン−2−カルボン酸を抽出することを主たる目的としている。
【0033】
第二工程で使用する無機酸は、例えば、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸等が挙げられるが、好ましくは硫酸である。これら無機酸は単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。無機酸の使用量は、光学活性テトラヒドロフラン−2−カルボン酸に対して、好ましくは0.8〜1.2モル倍、さらに好ましくは0.9〜1.1モル倍である。
【0034】
第二工程におけるpHは、好ましくは、1.8〜2.5であり、より好ましくは、1.9〜2.1である。
【0035】
第二工程で使用する抽出溶媒は、テトラヒドロフランである。公知例(特開平9−143101)ではジクロロメタンを使用しているが、本溶媒は環境への負荷が大きいため工業的に適した溶媒とは言えない。また、公知例(特開2002−171994)ではメチルエチルケトンを使用しているが、本溶媒は濃縮中に分子間アルドール縮合反応が併発し、副生するメチルエチルケトンの二量体(5−メチル−5−ヘプテン−3−オン、及び5−メチル−4−ヘプテン−3−オン)が蒸留操作でも除去されず、不純物として製品中に1〜2%程度残存してしまう。さらに、本発明の特徴であるベンジルアミンを使用する場合、ベンジルアミン由来の不純物であるベンズアルデヒドが濃縮中にメチルエチルケトンとClaisen−Schmidt縮合反応が併発し、縮合体が副生してしまうおそれがあるので、本発明で使用する抽出溶媒としては適していない。一方、テトラヒドロフランを使用した場合、製品中に残存するような不純物の副生は見られず、高純度の光学活性テトラヒドロフラン−2−カルボン酸の製造に適している。
【0036】
第二工程で使用するテトラヒドロフランの使用量は、光学活性テトラヒドロフラン−2−カルボン酸に対して0.5〜2.0重量倍あり、より好ましくは、0.5〜1.0重量倍である。
【0037】
第三工程では、第二工程で得た抽出液を濃縮、及び蒸留する。第三工程は、好ましくは、第二工程で得た抽出液を濃縮してテトラヒドロフランを留去し、さらに蒸留することで高純度の光学活性を有するテトラヒドロフラン−2−カルボン酸を得る。第三工程により得られたテトラヒドロフラン−2−カルボン酸は、高純度であり、そのまま、製品化することができる。
【0038】
蒸留の方法は、熱による光学純度の低下を抑制するため、薄膜蒸留が好ましく用いられる。蒸留温度は、低温の方が好ましく、通常、減圧下で実施される。
【0039】
第三工程により得られたテトラヒドロフラン−2−カルボン酸の化学純度は、通例、99.0%以上であり、好ましくは、99.2〜100%である。また、第三工程により得られたテトラヒドロフラン−2−カルボン酸の光学純度は、通例、99.0%e.e以上であり、好ましくは、99.2〜100%e.eである。
【実施例】
【0040】
以下実施例により本発明を説明する。
【0041】
実施例中の化学純度、光学純度は以下に示す方法で測定した。
【0042】
<化学純度分析法>
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析条件
カラム:Inertsil ODS−3 4.6mmφ×150mm,0.25μm(GL Sciences)
移動相: A液:20mMリン酸緩衝液(pH2.1)、B液:アセトニトリル
グラジエント:A/B=80/20(3分)→25分→50/50(10分)→2分→80/20(5分)
流速: 1mL/分
カラム温度:40℃
検出器:UV(230nm)
保持時間:3.1分(テトラヒドロフラン−2−カルボン酸) 。
【0043】
<光学純度分析法>
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析条件
カラム:SUMICHIRAL OA−6000 4.6mmφ×250mm,5μm(住化分析センター)
移動相:2mM硫酸銅(II)水溶液/アセトニトリル=90/10(v/v)
流速:1.0mL/分
カラム温度:40℃
検出器:UV(254nm)
保持時間:5.4分((R)−テトラヒドロフラン−2−カルボン酸)
7.9分((S)−テトラヒドロフラン−2−カルボン酸)。
【0044】
参考例1 (R)−テトラヒドロフラン−2−カルボン酸・ベンジルアミン塩の製造
温度計、コンデンサー及び撹拌機の付いた2L四つ口フラスコに、(R)−および(S)−テトラヒドロフラン−2−カルボン酸の混合物200g(1.72モル,96.2%e.e.(R))、2−プロパノール700gを加え、65℃まで昇温した。60〜70℃でベンジルアミン203g(1.90モル)を滴下し、完溶後、65℃まで降温してから種晶を添加し、同温度付近で1時間熟成した。その後、20℃まで緩やかに冷却し、同温度付近で1時間熟成してから析出結晶をろ過し、減圧乾燥後、(R)−テトラヒドロフラン−2−カルボン酸・ベンジルアミン塩337.2gを得た。その塩の光学純度は、99.5%e.e.であり、仕込みテトラヒドロフラン−2−カルボン酸のR体に対する取得塩中のR体収率は、89.6%であった。
H−NMR(DMSO−d,400MHz)δppm: 7.43−7.27(m,5H),4.02(m,1H),3.89(s,2H),3.75(m,1H),3.64(m,1H),1.98(m,1H),1.73(m,3H)
13C−NMR(DMSO−d,400MHz)δppm:176.4,137.1,128.4,127.7,78.3,67.5,42.9,30.0,25.0
m.p.:134−135℃。
【0045】
実施例1
(第一工程)
温度計、コンデンサー及び撹拌機の付いた2L四つ口フラスコに、参考例1で得た(R)−テトラヒドロフラン−2−カルボン酸・ベンジルアミン塩337.2g、水272.6g、32%苛性ソーダ水192.5g(1.54モル)を加え、完溶させた。次いでトルエン175gを加え、ベンジルアミンをトルエン層側に抽出除去した。ベンジルアミンが除去されたことを確認した後、テトラヒドロフラン175gを加え、静置後、テトラヒドロフラン層を分液除去し、洗浄後水層688.8gを得た。
【0046】
(第二工程)
温度計、コンデンサー及び撹拌機の付いた2L四つ口フラスコに、第一工程で得られた洗浄後水層688.8gを加え、35℃〜45℃で98%硫酸75.5gを滴下し、同温度範囲で1時間熟成してから分液した。水層にさらにテトラヒドロフラン各87.7gを加え、二次、三次抽出をおこなった。抽出率は、87.7%であった。
【0047】
(第三工程)
温度計、コンデンサー及び撹拌機の付いた2L四つ口フラスコに、抽出後のテトラヒドロフラン層を合わせた液570.8gを加え、溶媒を濃縮留去し、析出した無機塩を除くため濾過を実施した。最後に、減圧下、薄膜蒸留(熱媒温度:130℃)により(R)−テトラヒドロフラン−2−カルボン酸154.8gを得た。化学純度:99.3%、光学純度:99.5%e.e.であり、総合収率:77.4%であった。
【0048】
参考例2 (S)−テトラヒドロフラン−2−カルボン酸・ベンジルアミン塩の製造
温度計、コンデンサー及び撹拌機の付いた2L四つ口フラスコに、(R)−および(S)−テトラヒドロフラン−2−カルボン酸の混合物200g(1.72モル,95.7%e.e.(S))、2−プロパノール700gを加え、65℃まで昇温した。60〜70℃でベンジルアミン203g(1.90モル)を滴下し、完溶後、65℃まで降温してから種晶を添加し、同温度付近で1時間熟成した。その後、20℃まで緩やかに冷却し、同温度付近で1時間熟成してから析出結晶をろ過し、減圧乾燥後、(S)−テトラヒドロフラン−2−カルボン酸・ベンジルアミン塩332.2gを得た。その塩の光学純度は、99.5%e.e.であり、仕込みテトラヒドロフラン−2−カルボン酸のS体に対する取得塩中のS体収率は、88.3%であった。
H−NMR(DMSO−d,400MHz)δppm: 7.43−7.27(m,5H),4.02(m,1H),3.89(s,2H),3.75(m,1H),3.64(m,1H),1.98(m,1H),1.73(m,3H)
13C−NMR(DMSO−d,400MHz)δppm:176.4,137.1,128.4,127.7,78.3,67.5,42.9,30.0,25.0
m.p.:134−135℃。
【0049】
実施例2
(第一工程)
温度計、コンデンサー及び撹拌機の付いた2L四つ口フラスコに、参考例2で得た(S)−テトラヒドロフラン−2−カルボン酸・ベンジルアミン塩332.2g、水268.6g、32%苛性ソーダ水189.7g(1.52モル)を加え、完溶させた。次いでトルエン173gを加え、ベンジルアミンをトルエン層側に抽出除去した。ベンジルアミンが除去されたことを確認した後、テトラヒドロフラン173gを加え、静置後、テトラヒドロフラン層を分液除去し、洗浄後水層678.7gを得た。
【0050】
(第二工程)
温度計、コンデンサー及び撹拌機の付いた2L四つ口フラスコに、第一工程で得られた洗浄後水層678.7gを加え、35℃〜45℃で98%硫酸74.4gを滴下し、同温度範囲で1時間熟成してから分液した。水層にさらにテトラヒドロフラン各86.4gを加え、二次、三次抽出をおこなった。抽出率は、87.7%であった。
【0051】
(第三工程)
温度計、コンデンサー及び撹拌機の付いた2L四つ口フラスコに、抽出後のテトラヒドロフラン層を合わせた液517.5gを加え、溶媒を濃縮留去し、析出した無機塩を除くため濾過を実施した。最後に、減圧下、薄膜蒸留(熱媒温度:130℃)により(S)−テトラヒドロフラン−2−カルボン酸152.5gを得た。化学純度:99.4%、光学純度:99.5%e.e.であり、総合収率:76.3%であった。
【0052】
実施例3
実施例1の第一工程において、洗浄溶媒をトルエンからp−キシレンに変えた以外は実施例1と同様の操作をおこなった。得られた(R)−テトラヒドロフラン−2−カルボン酸153.6gは、化学純度:99.2%、光学純度:99.5%e.e.であり、総合収率:76.8%であった。
【0053】
比較例1
実施例1の第三工程において、抽出溶媒をテトラヒドロフランからメチルエチルケトンに変えた以外は実施例1と同様の操作をおこなった。得られた(R)−テトラヒドロフラン−2−カルボン酸155.2gは、化学純度:96.3%(5−メチル−5−ヘプテン−3−オン:1.5%、5−メチル−4−ヘプテン−3−オン:0.5%を含む)、光学純度:99.5%e.e.であり、総合収率:77.6%であった。実施例1〜3の場合、化学純度が99.2%以上であったが、比較例1では、化学純度が96.3%であり、低かった。
【0054】
比較例2
実施例1の第二工程において、抽出溶媒をテトラヒドロフランからメチルtert−ブチルエーテルに変えた。抽出率は、59.8%であり、低かった。
【0055】
比較例3
実施例1の第二工程において、抽出溶媒をテトラヒドロフランからシクロペンチルメチルエーテルに変えた。抽出率は、27.3%であり、かなり低かった。
【0056】
比較例4
実施例1の第二工程において、抽出溶媒をテトラヒドロフランからトルエンに変えた。抽出率は、1.7%であり、著しく低かった。