(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5999713
(24)【登録日】2016年9月9日
(45)【発行日】2016年9月28日
(54)【発明の名称】切開創を塞ぐためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
A61M 27/00 20060101AFI20160915BHJP
【FI】
A61M27/00
【請求項の数】58
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-508247(P2013-508247)
(86)(22)【出願日】2011年4月28日
(65)【公表番号】特表2013-525031(P2013-525031A)
(43)【公表日】2013年6月20日
(86)【国際出願番号】US2011034300
(87)【国際公開番号】WO2011137230
(87)【国際公開日】20111103
【審査請求日】2014年4月24日
(31)【優先権主張番号】61/329,764
(32)【優先日】2010年4月30日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/095,384
(32)【優先日】2011年4月27日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508268713
【氏名又は名称】ケーシーアイ ライセンシング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】コーネット,ダグラス,エイ.
(72)【発明者】
【氏名】マンウェアリング,マイケル
【審査官】
金丸 治之
(56)【参考文献】
【文献】
特表2009−509695(JP,A)
【文献】
特表2002−507142(JP,A)
【文献】
特表2009−529971(JP,A)
【文献】
国際公開第2009/049232(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
切開壁を有する切開創の治療用装置であって、
減圧を受ける第1の端部と、第2の端部とを有する導管;
前記切開壁に隣接して位置決めするための対向面を有し、かつ減圧を受けるために前記導管の前記第2の端部に流体結合されている足場において、前記足場が全体的に細長い形状であり、かつ前記対向面間の足場の厚さが、前記切開創内に位置決めされるのに十分な程度薄い、足場;および
前記足場内において前記対向面間で全体的に長手方向に延在する主流路を有し、かつ前記導管の前記第2の端部に流体結合されている内部マニホールド;
を含み、
それにより、前記足場および前記内部マニホールドを通して減圧を行うことによって、前記切開壁間に組織付着が誘発されることを特徴とする装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置において、前記内部マニホールドが、前記主流路に流体結合されかつ前記足場内において前記対向面間で延在する支流路をさらに含むことを特徴とする装置。
【請求項3】
請求項2に記載の装置において、前記支流路が前記主流路からほぼ垂直に延在することを特徴とする装置。
【請求項4】
請求項2に記載の装置において、前記支流路の1つ以上が、前記主流路内の単一の場所から生じていることを特徴とする装置。
【請求項5】
請求項1に記載の装置において、前記主流路が、前記足場の上縁部分と下縁部分との間で波状となっていることを特徴とする装置。
【請求項6】
請求項1に記載の装置において、前記主流路が前記足場の異方特性であることを特徴とする装置。
【請求項7】
請求項1に記載の装置において、前記主流路が生物再吸収性チューブによって形成されていることを特徴とする装置。
【請求項8】
請求項1に記載の装置において、前記主流路が、前記足場の相互につながれた細孔の整列によって形成されていることを特徴とする装置。
【請求項9】
請求項1に記載の装置において、前記足場の厚さが約3.0mm未満であることを特徴とする装置。
【請求項10】
請求項1に記載の装置において、前記足場の厚さが約0.25mm超であることを特徴とする装置。
【請求項11】
請求項1に記載の装置において、前記足場の長さ対厚さの比が約10を上回ることを特徴とする装置。
【請求項12】
請求項1に記載の装置において、前記導管の前記第2の端部及び前記足場に流体結合されている外部マニホールドをさらに含むことを特徴とする装置。
【請求項13】
請求項12に記載の装置において、前記外部マニホールドが、前記切開創の外側に位置決めされていることを特徴とする装置。
【請求項14】
請求項1に記載の装置において、前記足場が生物再吸収性であることを特徴とする装置。
【請求項15】
請求項1に記載の装置において、前記足場が、ポリラクチド−コ−グリコリドから形成されていることを特徴とする装置。
【請求項16】
請求項1に記載の装置において、前記足場が再吸収性ポリウレタンから形成されていることを特徴とする装置。
【請求項17】
請求項1に記載の装置において、前記足場が脱細胞化生物材料から形成されていることを特徴とする装置。
【請求項18】
請求項1に記載の装置において、前記足場がコラーゲンから形成されていることを特徴とする装置。
【請求項19】
請求項1に記載の装置において、前記足場が網状構造であることを特徴とする装置。
【請求項20】
請求項1に記載の装置において、
前記足場の一部分と流体結合している外部マニホールド;および
実質的に不浸透性材料から形成され、前記外部マニホールドおよび前記切開創内の前記足場を覆うドレープ
をさらに含むことを特徴とする装置。
【請求項21】
切開壁を有する切開創の治療用システムであって、
減圧を供給するための圧力源;
前記圧力源に流体結合され、減圧を受ける第1の端部と、第2の端部とを有する導管;
減圧を受けるために前記導管の前記第2の端部に流体結合され、かつ前記切開壁に隣接して前記切開創内に位置決めするための対向面を有する足場において、前記切開創内に位置決めするために、全体的に細長い形状の多孔質材料から形成される足場;および
前記足場内において前記対向面間で全体的に長手方向に延在しかつ前記導管の前記第2の端部に流体結合されている主流路を有する内部マニホールド;
を含み、
それにより、前記足場および前記内部マニホールドを通して減圧を行うことによって、前記切開壁間に組織付着を誘発することを特徴とするシステム。
【請求項22】
請求項21に記載のシステムにおいて、前記内部マニホールドが、前記主流路に流体結合されかつ前記足場内において前記対向面間で延在する支流路を含むことを特徴とするシステム。
【請求項23】
請求項22に記載のシステムにおいて、前記支流路が前記主流路からほぼ垂直に延在することを特徴とするシステム。
【請求項24】
請求項22に記載のシステムにおいて、前記支流路の1つ以上が、前記主流路内の単一の場所から生じることを特徴とするシステム。
【請求項25】
請求項21に記載のシステムにおいて、前記主流路が、前記足場の上縁部分と下縁部分との間で波状になっていることを特徴とするシステム。
【請求項26】
請求項21に記載のシステムにおいて、前記主流路が前記足場の異方特性であることを特徴とするシステム。
【請求項27】
請求項21に記載のシステムにおいて、前記主流路が生物再吸収性チューブによって形成されていることを特徴とするシステム。
【請求項28】
請求項21に記載のシステムにおいて、前記主流路が、前記足場の相互につながれた細孔の整列によって形成されていることを特徴とするシステム。
【請求項29】
請求項21に記載のシステムにおいて、前記導管の前記第2の端部及び前記足場に流体結合している外部マニホールド構造をさらに含むことを特徴とするシステム。
【請求項30】
請求項29に記載のシステムにおいて、前記切開創が、前記切開壁間に開口部を有し、かつ前記縁部分が前記開口部を通して露出されていることを特徴とするシステム。
【請求項31】
請求項30に記載のシステムにおいて、前記外部マニホールドが、前記切開創の外側に位置決めされていることを特徴とするシステム。
【請求項32】
請求項21に記載のシステムにおいて、前記切開創が、前記切開壁間に開口部を有し、かつ前記開口部を実質的に閉鎖する手段をさらに含むことを特徴とするシステム。
【請求項33】
請求項21に記載のシステムにおいて、
前記足場の一部分と流体結合している外部マニホールド;および
実質的に不浸透性材料で形成され、前記外部マニホールドおよび前記切開創内の前記足場を覆うドレープ
をさらに含むことを特徴とするシステム。
【請求項34】
請求項21に記載のシステムにおいて、前記足場に流体接続された流体源をさらに含むことを特徴とするシステム。
【請求項35】
切開壁を有する切開創の治療用システムであって、
減圧を供給するための圧力源;
前記圧力源に流体結合され、減圧を受ける第1の端部と、第2の端部とを有する導管;
減圧を受けるために前記導管の前記第2の端部に流体結合され、かつ前記切開創内で前記切開壁に隣接して位置決めするための対向面を有する足場において、前記足場は、前記切開創内に位置決めするために、全体的に細長い形状の多孔質材料から形成され、前記足場の厚さは約0.25mm超かつ約3.0mm未満である、足場;および
内部マニホールドであって:
前記足場内において前記対向面間で全体的に長手方向に延在し、かつ前記導管の前記第2の端部に流体結合されている主流路と;
前記主流路に流体結合され、かつ前記足場内において前記対向面間で延在する支流路において、前記主流路からほぼ垂直に延在している支流路と
を含む内部マニホールド
を含み、
それにより、前記足場および前記内部マニホールドを通して減圧を行うことによって、前記切開壁間に組織付着を誘発することを特徴とするシステム。
【請求項36】
請求項35に記載のシステムにおいて、
前記足場の一部分と流体結合している外部マニホールド;および
実質的に不浸透性材料で形成され、前記外部マニホールドおよび前記切開創内の前記足場を覆うドレープ
をさらに含むことを特徴とするシステム。
【請求項37】
切開壁を有する切開創の治療用装置であって、
前記切開壁に隣接して位置決めするための対向面を有する足場において、前記足場が全体的に細長い形状であり、および前記対向面間の足場の厚さが、前記切開創内に位置決めするために十分な程度薄い、足場;および
減圧源に流体結合するために、前記足場内において前記対向面間で全体的に長手方向に延在する主流路を有する内部マニホールド
を含むことを特徴とする装置。
【請求項38】
請求項37に記載の装置において、前記内部マニホールドが、前記主流路に流体結合されかつ前記足場内において前記対向面間で延在する支流路をさらに含むことを特徴とする装置。
【請求項39】
請求項38に記載の装置において、前記支流路が前記主流路からほぼ垂直に延在することを特徴とする装置。
【請求項40】
請求項38に記載の装置において、前記支流路の1つ以上が、前記主流路内の単一の場所から生じることを特徴とする装置。
【請求項41】
請求項37乃至40の何れか1項に記載の装置において、前記主流路が、前記足場の上縁部分と下縁部分との間で波状になっていることを特徴とする装置。
【請求項42】
請求項37乃至41の何れか1項に記載の装置において、前記主流路が前記足場の異方特性であることを特徴とする装置。
【請求項43】
請求項37乃至42の何れか1項に記載の装置において、前記主流路が生物再吸収性チューブによって形成されていることを特徴とする装置。
【請求項44】
請求項37乃至43の何れか1項に記載の装置において、前記主流路が、前記足場の相互につながれた細孔の整列によって形成されていることを特徴とする装置。
【請求項45】
請求項37乃至44の何れか1項に記載の装置において、前記足場の厚さが約3.0mm未満であることを特徴とする装置。
【請求項46】
請求項37乃至45の何れか1項に記載の装置において、前記足場の厚さが約0.25mm超であることを特徴とする装置。
【請求項47】
請求項37乃至46の何れか1項に記載の装置において、前記足場の長さ対厚さの比が約10を上回ることを特徴とする装置。
【請求項48】
請求項37乃至47の何れか1項に記載の装置において、前記導管の前記第2の端部及び前記足場に流体結合している外部マニホールドをさらに含むことを特徴とする装置。
【請求項49】
請求項48に記載の装置において、前記外部マニホールドが、前記切開創の外側に位置決めされていることを特徴とする装置。
【請求項50】
請求項37乃至49の何れか1項に記載の装置において、前記足場が生物再吸収性であることを特徴とする装置。
【請求項51】
請求項37乃至50の何れか1項に記載の装置において、前記足場が、ポリラクチド−コ−グリコリドから形成されていることを特徴とする装置。
【請求項52】
請求項51に記載の装置において、前記足場が再吸収性ポリウレタンから形成されていることを特徴とする装置。
【請求項53】
請求項52に記載の装置において、前記足場が脱細胞化生物材料から形成されていることを特徴とする装置。
【請求項54】
請求項37乃至53の何れか1項に記載の装置において、前記足場がコラーゲンから形成されていることを特徴とする装置。
【請求項55】
請求項37乃至54の何れか1項に記載の装置において、前記足場が網状構造であることを特徴とする装置。
【請求項56】
請求項37乃至55の何れか1項に記載の装置において、
前記足場の一部分と流体結合している外部マニホールド;および
実質的に不浸透性材料で形成され、前記外部マニホールドおよび前記切開創内の前記足場を覆うドレープ
をさらに含むことを特徴とする装置。
【請求項57】
請求項37乃至55の何れか1項に記載の装置において、前記主流路に流体結合されている導管をさらに含むことを特徴とする装置。
【請求項58】
請求項57に記載の装置において、前記導管に流体結合されている減圧源をさらに含むことを特徴とする装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2010年4月30日出願の米国仮特許出願61/329,764号の利益を主張し、これは、参照により本書に援用される。
【0002】
本開示は、概して治療システムに関し、特に、創傷治療の足場として使用するのに好適な装置およびシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
臨床試験および実習において、組織部位に近接して減圧をもたらすことによって、組織部位における新しい組織の生成を増強および加速することが示されている。この現象の適用は多数あるが、減圧を行うことは、創傷の治療においてかなり成功している。この治療(医学界では「陰圧閉鎖療法」、「減圧療法」または「真空療法」と呼ばれることが多い)は、いくつもの利点を提供し、それら利点には、迅速な治癒および肉芽組織の形成加速化が含まれる。一般に、減圧は、多孔質パッドまたは他のマニホールド装置を通して組織に加えられる。多孔質パッドは細孔を含み、それら細孔は、減圧を組織に分配し、および組織から引き出された流体を導く。多孔質パッドは、治療を促進する他の構成要素を含むドレッシングに組み込まれていることが多い。足場はまた、欠損に配置されて欠損への組織増殖を支援することができる。足場は通常生体吸収性であり、新しい組織をその適所に残したままにする。
【0004】
内因性の細胞の付着、移動、および集落形成を増強するための三次元構造を提供するために、合成足場および生物学的足場が使用されてきた。これまでに、生物学を扱うようにして作製できることを念頭に置いた、ほとんど全ての足場が設計されている。しかしながら、伝統的な足場の技術は、多孔質足場の間隙に内因性のタンパク質、サイトカイン、成長因子、および細胞が受動的に流入することに依存する。このように、脈管要素(組織型にかかわらず足場の拡散限界内での栄養をサポートする)から離れている距離により、足場への内因性の細胞の集落形成は制限を受ける。加えて、足場はまた、免疫原性反応または異物反応を引き起こすことがあり、これは修復過程を引き延ばす。総合すると、これらの複雑な要因は全て、損傷部位において望まれる機能性組織再生をもたらすことをできなくする。
【0005】
それゆえ、様々な組織部位における特定の損傷または切り口に起因する組織の修復または再生のための追加的なシステムおよび装置を提供することが有利である。本発明は、そのようなシステムおよび装置を提供する。
【発明の概要】
【0006】
本明細書で説明する説明に役立つ実施形態のシステム、装置、および方法は、切開壁(incisional wall)を有する切開創の治療用装置を含む。装置は、減圧を受ける第1の端部と、第2の端部とを有する導管を含む。装置は足場をさらに含む。足場は、切開壁に隣接して位置決めするための対向面を有し、かつ、減圧を受けるために、導管の第2の端部に流体結合されている。足場は全体的に細長い形状であり、および対向面間の足場の厚さは、切開創内で位置決めするために十分な程度薄い。装置は、足場内においてかつ足場の対向面間で全体的に長手方向に延在する主流路を有する内部マニホールドをさらに含む。内部マニホールドは、導管の第2の端部に流体結合されている。足場および内部マニホールドを通して減圧を行うことによって、切開壁間に組織付着(apposition)を誘発する。
【0007】
説明に役立つ別の実施形態によれば、切開壁を有する切開創の治療用システムは、減圧を供給するための圧力源と、圧力源に流体結合された、減圧を受ける第1の端部、および第2の端部を有する導管と、導管の第2の端部に流体結合された足場とを含む。足場は対向面を有し、多孔質材料から形成され、かつ全体的に細長い形状である。システムは、足場内において対向面間で全体的に長手方向に延在する主流路を有する内部マニホールドをさらに含む。内部マニホールドは、導管の第2の端部に流体結合される。足場および内部マニホールドを通して減圧を行うことにより、切開壁間に組織付着を誘発する。
【0008】
説明に役立つ別の実施形態によれば、切開壁を有する切開創の治療用システムは、減圧を供給するための圧力源と、圧力源に流体結合された、減圧を受ける第1の端部、および第2の端部を有する導管と、導管の第2の端部に流体結合された足場とを含む。足場は、対向面を有し、多孔質材料から形成され、および全体的に細長い形状である。システムは、足場内において対向面間で全体的に長手方向に延在する主流路を有する内部マニホールドをさらに含む。内部マニホールドは、導管の第2の端部に流体結合されている。内部マニホールドは、主流路に流体結合されかつ足場内において対向面間で全体的に横方向に延在する支流路をさらに含む。支流路は、主流路からほぼ垂直に延在する。足場および内部マニホールドを通して減圧を行うことにより、切開壁間に組織付着を誘発する。
【0009】
説明に役立つさらに別の実施形態によれば、切開壁を有する切開創の治療方法は、導管を減圧源に流体結合するステップにおいて、導管が、減圧を受ける第1の端部と、第2の端部とを有するステップを含む。足場は、減圧を受けるために、導管の第2の端部に流体結合されており、足場は、足場の対向面間で全体的に長手方向に延在する内部マニホールドを有する十分に薄い多孔質材料から形成されている。足場の対向面は、切開創の切開壁間に位置決めされ、および内部マニホールドは、導管の第2の端部に流体結合されている。切開創は手術で閉じられ、および減圧が、導管を通して、切開創上にある足場および内部マニホールドまでもたらされ、それにより、足場が切開壁間に組織付着を誘発する。
【0010】
説明に役立つ実施形態の他の目的、特徴、および利点は、以下の図面および詳細な説明を参照することにより明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、説明に役立つ一実施形態による足場を含む減圧治療システムの概略的な斜視図である。
【
図2】
図2は、切開創内に位置決めされた、
図1に示す切開創および足場の概略的な斜視断面図である。
【
図3】
図3は、切開創口の下側に位置決めされた、
図1に示す切開創および足場の概略的な斜視断面図である。
【
図4】
図4は、切開創を覆うドレープを含む、
図2に示す切開創および足場の概略的な斜視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の説明に役立つ実施形態の詳細な説明において、本明細書の一部をなす添付図面を参照する。これらの実施形態は、当業者が本発明を実施できるようにするのに十分な程度、詳細に説明し、および、他の実施形態を使用し得ること、および本発明の趣旨または範囲から逸脱せずに、論理的な構造、機械、電気および化学的な変更がなされ得ることが理解される。当業者が、本明細書で説明する実施形態を実施できるようにするのに必要ではない詳細を避けるために、説明では、当業者に公知の特定の情報を省略し得る。それゆえ、以下の詳細な説明は、限定的ととられるべきではなく、説明に役立つ実施形態の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ定義される。
【0013】
図1および2を参照すると、説明に役立つ実施形態による患者の組織部位102に減圧を加える減圧治療システム100が示されている。減圧治療システム100は、真皮106を通って組織部位102における筋膜層または皮下組織107まで延在する切開創104に、表皮105の切開口103を通して減圧を加える。用語「切開創」は、組織部位において切断された組織、例えば、外傷、手術、または変性を原因とし得る裂傷、切開、または穿刺などを指す。例えば、切開創は、外科医によって、本来健康な組織に行われる、長さが40cm以上まで延びる切開または穿刺とし得る。この意味では、切開創104は実質的に長くて狭い形状、細長い形状であり、その長さは、切開創104の長手方向軸を表す。切開創は、異なる深さで延びてもよいし(15cm以上まで延びる)、または組織型および切り口の原因に依存して皮下にあってもよい。深さは、切開創104の横軸を表す。切開創104は、組織部位102において切開口103に隣接した組織で取り囲まれ、かつ切開壁108および109によって形成される。切開創104を組織部位102における表皮の切り口として示すが、切開創104はまた、例えば、瘻孔に隣接した器官における切り口とし得る。1つ以上の筋膜層または皮下組織107に皮下用の吸収性縫合糸(図示せず)を配置してもよい。
【0014】
システム100は、フィルター(図示せず)を備えるキャニスター110と、第1の導管111を介してキャニスター110に流体連通して結合されている減圧源112とを含む。システム100は、切開創104内において切開壁108と109との間で位置決めされる足場114をさらに含む。足場114は、切開創104の切開口103に隣接して位置決めされる上縁部分124と、下縁部分125と、切開創104の切開壁109および108の面にそれぞれ隣接して位置決めされる、対向する境界面145および147とを含む。足場114は、第2の導管113を介して、キャニスター110を通して減圧源112と流体連通して結合され、第2の導管は、導管コネクタ115によって足場114に流体結合している。システム100はまた、第3の導管117を介して足場114に、直接(図示せず)または第2の導管113を通して間接的にのいずれかで、流体連通して結合された流体供給装置116を含んで、組織部位102における切開創104へ流体118を供給してもよい。
【0015】
減圧源112は電動真空ポンプである。別の実装例では、その代りに、減圧源112を、電力を必要としない、手動によって作動されるまたは手動で充電されるポンプとし得る。減圧源112を任意の他のタイプの減圧ポンプ、または、例えば病院や他の医療施設で利用可能なものなどの壁面吸い込みポートとし得る。減圧源112は、減圧治療ユニット120内に収容されても、またはそれと共に使用されてもよく、減圧治療ユニットはまた、処理装置、センサー、アラームインジケータ、メモリ、データベース、ソフトウェア、表示装置、およびユーザインターフェースを含んでもよく、それらは組織部位102へ減圧治療を行うことをさらに容易にする。一例では、減圧源112にまたはその付近にセンサーまたはスイッチ(図示せず)が配置されて、減圧源112によって生成される圧力を決定し得る。センサーは、減圧源112によって供給される減圧を監視して制御する処理装置(図示せず)と通信し得る。キャニスター110は、組織部位102から除去された滲出液および他の流体をフィルタリングまたは保持するための液溜め、または収集部材とし得る。一実施形態では、キャニスター110および減圧源112は、単一の収容構造に組み込まれる。
【0016】
流体供給装置116を使用して、切開創104用の足場114へ増殖剤および/または修復剤を供給してもよく、増殖剤および/または修復剤は、限定するものではないが、抗菌剤、抗ウィルス剤、細胞成長促進剤、潅注流体、または他の化学的活性剤を含む。システム100は、第3の導管117に位置決めされて足場114への流体118の流量を制御する第1の弁127、および、第2の導管113と第3の導管117との間の接合部と、減圧源112との間で第2の導管113に位置決めされて、減圧流を制御する第2の弁123をさらに含む。減圧治療ユニット120の処理装置は、第1および第2の弁127、123に動作可能に接続されて、患者に施されている特定の療法に必要とされる通り、流体供給装置116から足場114への減圧および/または流体の供給をそれぞれ制御する。流体供給装置116は、上述の通り流体を供給し得るが、同様に足場114に空気を供給して治癒を促し、かつ切開創104のドレナージを容易にする。流体118は気体でも液体でもよく、かつ、組織部位102における切開創104を治療するために成長因子、治癒促進因子(healing factor)、または他の物質を含有し得る。例えば、流体118は、水、生理食塩水、または着色生理食塩水(dye saline)とし得る。
【0017】
本明細書では、用語「足場」は、細胞増殖および/または組織形成のための構造マトリックスを提供する、創傷または欠損に適用または位置決めされる物体または構造を指す。足場は、特定の創傷欠損の形状にほぼ対応する寸法を有する三次元多孔質構造である。足場114は、細胞、成長因子、細胞外マトリックス成分、栄養素、タンパク質、または他の物質が注入され、それらで被覆され、またはそれらで構成されて、細胞増殖を促進し得る。足場114は、その構造マトリックスを流れるように流体を方向付けることによってマニホールドの特徴を有し得る。例えば、足場114は、組織部位へ減圧を方向付けることによって、または流体を供給する、または組織部位から流体を除去することによって、マニホールドの特徴を呈し得る。本明細書では、用語「マニホールド」は、組織部位に減圧を方向付ける、組織部位に流体を供給する、または組織部位から流体を除去するのを支援するために設けられる物体または構造を指す。マニホールドは、複数の流路または流れ経路を含み、それら流路または流れ経路は相互に接続されて、マニホールド周囲の組織部位への流体の提供およびその組織部位からの流体の除去の分配を改善することができる。マニホールドの例は、限定するものではないが、流路を形成するように配置された構造要素を有する装置、セル状発泡体、例えば、連続気泡発泡体、多孔性組織集合体、液体、ゲル、および流路を含むまたは硬化して流路を含む発泡体などを含み得る。足場114は、上述のようなマニホールドの特徴を有する。
【0018】
足場114は、組織の修復および再生のためのタンパク質付着および細胞内への成長を支援するのに使用される生物学的足場または合成足場とし得る。足場技術における当業界の現在の状態は、タンパク質吸着および細胞移動のための周囲組織空間の固有の特徴に依存している。本発明に従って用いるための足場114は、マニホールドとしての機能と併せて、切開創104内で流体の流れ経路を方向付けるための物理的な誘導を提供し、それぞれ接着タンパク質および細胞の動きおよび移動の道を形成する。これらは、組織空間内で予め定められたパターンの構成での仮マトリックスの確立に不可欠である。流体の流れによって誘発された組織の生成に関して説明した方法および装置は、足場114の設計に直接関係する。ある面において、足場114は、生物学的吸収特性を改善するために空隙比の高い網状構造、例えば、網状発泡体などとし得る。
【0019】
好適な足場材料の非限定的な例は、細胞外マトリックスタンパク質、例えばフィブリン、コラーゲンまたはフィブロネクチン、および合成高分子または天然高分子(生体吸収性または非生体吸収性高分子を含む)、例えばポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリラクチド−コ−グリコリド(polylactide−co−glycolide)(PLGA)、ポリビニルピロリドン、ポリカプロラクトン、ポリカーボネート、ポリフマレート、カプロラクトン、ポリアミド、多糖類(アルギン酸(例えば、アルギン酸カルシウム)およびキトサンを含む)、ヒアルロン酸、ポリヒドロキシ酪酸、ポリヒドロキシ吉草酸、ポリジオキサノン、ポリエチレングリコール、ポロキサマー、ポリホスファゼン(polyphosphazene)、ポリ無水物、ポリアミノ酸、ポリオルソエステル(polyortho ester)、ポリアセタール、ポリシアノアクリレート、ポリウレタン、ポリアクリレート、エチレン酢酸ビニルポリマーおよび他のアシル置換酢酸セルロースおよびその誘導体、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、ポリ(ビニルイミダゾール)、クロロスルホン化ボリオレフィン、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール、Teflon(登録商標)、およびナイロンを含む。足場114はまた、セラミクス、例えばヒドロキシアパタイト、珊瑚アパタイト(coralline apatite)、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウムまたは他のカーボネート、バイオガラス、同種移植片、自家移植片、異種移植片、脱細胞化(decellularized)組織、または上述のいずれかの複合材を含み得る。特定の実施形態では、足場114は、コラーゲン、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリラクチド−コ−グリコリド(PLGA)、ポリウレタン、多糖、ヒドロキシアパタイト、またはポリテリレングリコールを含む。加えて、足場114は、足場114の別個の部位に、任意の2種、3種またはそれ以上の物質の組み合わせ、または非共有または共有の組み合わせ(例えば、ポリエチレンオキシド−ポリプロピレングリコールブロック共重合体などの共重合体、または三元共重合体)、またはこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0020】
一実施形態では、足場114は、フェルト化プロセスによって形成されたPLGA繊維を含む足場材料から形成され、このPLGA繊維も、上述のようなマニホールドとして機能する。Scaftex(商標)として公知のそのような材料は、Biomedical Structures,Incから入手できる。網状でありかつ空隙比の高い(分解または吸収のための低質量)、上述の生物分解性または生物再吸収性材料のいずれかを使用し得る。切開創104などの軟組織応用に好ましい実施形態は、エラストマー材料、柔軟な材料、およびゲルである。足場114は、切開創104の切開壁109、108にそれぞれ隣接して位置決めされる対向する境界面145と147との間において比較的薄い。非限定的な一例では、足場114の対向する境界面145と147との間の厚みは、約0.25mm〜3.0mmとし得る。足場114の厚みを切開創104の長さおよび深さと比較すると、足場114を比較的薄いと説明し得る。一実施形態では、足場114の長さ対厚さの比は約10を上回る。好ましくは、足場114は、切開創104内に適合するために可能な限り薄くし、切開壁108と109との間の距離を最小にして組織付着を容易にする必要がある。足場114は十分に薄いが、足場114を形成する材料は、依然として経路のマトリックス(図示せず)を含み、切開壁108と109との間を容易に流体が流れるようにする。足場114のこれらの経路は、対向する境界面145と147との間で足場114に広がっており、切開創104内の境界面足場マトリックスとして切開壁108と109との間での組織の増殖を促進することにより、組織付着を誘発する。
【0021】
足場114は、例えば、切開創104のタイプおよびサイズ、および創傷を修復するために施されている治療のタイプなど、様々な要因に依存して任意のサイズまたは形状とし得る。例えば、足場114は実質的に矩形とし、長手方向軸に沿って切開創104の全長および横軸に沿って切開壁108、109の深さ全体に延在し得る。そのような寸法の足場114は、2つの切開壁108と109との間に全境界面足場マトリックスを形成し、それら2つの壁の間に組織付着を誘発する。しかしながら、治療に応じて、足場114は切開壁108、109に部分的にのみ接触する。例えば、足場114は、切開創104の底部まで延在せず、皮下組織107に及ばない可能性がある。足場114の上縁部分124は、表皮105に隣接する切開創104の切開口103と同一平面に位置決めされ、かつ、縫合時に切開創104を閉じる複数の縫合糸130によって切開創104内に固定される。
【0022】
足場114は、足場114内に既に存在する網状経路を通る流体の流れを補う内部マニホールド構造140をさらに含み得る。内部マニホールド構造140は、導管コネクタ115に流体結合された1つまたは複数の主流路141を含み、主流路は、切開壁108と109との間で足場114にわたって全体的に長手方向に延在し得る。内部マニホールド構造140はまた、主流路141の1つ以上に流体結合された追加的な支流路143を含み得る。支流路143は、対向する境界面145と147との間で足場114内を全体的に横方向に延在して、切開創104内の境界面足場マトリックスの大きな領域にわたる流体の流れをさらに促進する。支流路143は、主流路141から、主流路141に対して任意の方向で延在し、かつ境界面145、147を含む足場114の領域を強化するように任意の形状を形成し得る。例えば、特定の非限定的な実施形態で示すように、支流路143は、湾曲形状を有するのとは対照的に、主流路141からほぼ垂直な方向に、直線方向に延在する。それゆえ、内部マニホールド構造140は、複数の主流路141、または複数の支流路143を含み得る単一の主流路、またはそれら双方の組み合わせを使用することにより、足場114の網状経路と同一の広がりを有する流体の流れ用の補足マトリックスを提供する。内部マニホールド構造140のこの補足マトリックスは、切開壁108、109の付着をさらに誘発するパターンで形成され得る。
【0023】
主流路141は、図面ではほぼチューブ状形状であるとして示すが、そのような流路が切開壁108と109との間で足場114全体に全体的に長手方向に延在する限り、主流路141は様々な異なる形状とし得る。主流路141は直線である必要はなく、足場114内において上縁部分124と下縁部分125との間で長手方向に波状であってもよい。主流路141はまた、切開壁108と109との間で全体的に長手方向に延在する、足場114自体の異方性の材料特性とし得る。例えば、異方特性は、足場114の全体的に長手方向軸に沿って延在する、足場114内の互いにつながった細孔を通る流体の流れに対する差動抵抗(differential resistance)とし得る。異方特性はまた、足場114内の細孔の整列および細孔の相互接続性、または足場114の長手方向軸に沿った流体の流れを可能にまたは容易にする足場114内での細孔の大きさの変動とし得る。別の実施形態では、主流路141は、生物再吸収性チューブによって形成し得る。
【0024】
支流路143は、形状が非対称的であり、かつ足場114の異方特性によって形成し得る。別の実施形態では、支流路143は、生物再吸収性チューブによって形成し得る。支流路143の入口は、主流路141の表面から延在しているように示しているが、支流路143はまた、主流路141内部の各場所から延在して、非平行の非対称的な流路として足場114内で分岐し得る。そのような支流路143の入口は、主流路141と流体連通して、切開壁108と109との間の流体の流れを促進する。いくつかの支流路143の入口はまた、主流路141内の単一の場所から生じ、例えば、切開壁108と109との間で、切開壁に全体的に平行に星型パターンに分岐する。
【0025】
図3を参照すると、足場114は、足場114の上縁部分124が表皮105の下側に置かれるように切開創104内に位置決めされ、縫合糸230を使用して、切開創104内に足場114全体を閉じ込めるようにし得る。足場114の上縁部分124を切開創104の表皮105の下側に置くことによって、切開創104の切開口103の閉鎖を容易にし、かつ、切開創104内に、より長時間減圧を維持することを助け得る。
図2に戻ると、代替的な実施形態(図示せず)では、足場114の上縁部分124は、表皮105の上方に切開口103から突出しているので、縫合糸130で、足場114の上部を通して縫い、切開創104内の適所に足場をしっかりと保持するようにする。この実施形態では、縫合糸130でまた、創傷の切開口103を実質的に閉鎖するように十分に密に縫われ、上述の治癒をさらに促進し得る。
【0026】
図4に示す別の実施形態では、足場114は、切開創104内に閉じ込められているのとは対照的に、表皮105の切開口103から露出され得る。この実施形態では、システム100は、足場114と流体連通する外部マニホールド150と、外部マニホールド150を覆うドレープ152とをさらに含み、ドレープは、切開創104内のドレープ152の下側における減圧を維持し得る。ドレープ152はアパーチャ153を含み、そのアパーチャを通って導管コネクタ115が延在し、第2の導管113と外部マニホールド150との間を流体連通させる。ドレープ152はまた、切開口103を越えて延在する周囲部分154も含み、周囲部分は接着剤または結合剤(図示せず)を含んで、切開口103に隣接する健康な組織にドレープ152を固定し得る。接着剤は、ドレープ152と表皮105との間にシールを提供し、切開創104内の減圧をより良好に維持する。別の実施形態では、例えば、ヒドロゲルまたは他の材料などのシール層(図示せず)を、ドレープ152と表皮105との間に配置して、接着剤のシール性を増強する、またはその代わりとする。ドレープ152はまた、上述の
図2および
図3に示す実施形態と併せて使用し得る。
【0027】
ドレープ152は、空気シールまたは流体シールをもたらす任意の材料とし得る。ドレープ152は、例えば、不浸透性または半透過性のエラストマー材料とし得る。上述の通り、ドレープ152は、周囲部分154に接着剤層を含み得る。
【0028】
上記を考慮して、本発明の利点を達成しかつ他の利点を得られることが分かる。本発明の範囲から逸脱せずに、上述の方法および構成に様々な変更をなすことができるため、上記の説明に含まれ、かつ添付図面に示される全ての事柄は、限定ではなく、例示であると解釈されるものとする。
【0029】
上述の利益および利点は、一実施形態に関係し得ること、またはいくつかの実施形態に関係し得ることを理解されたい。「1つの」品目への言及は、それら品目の1つ以上を指すことをさらに理解されたい。
【0030】
適切な場合には、上述のいずれかの例および実施形態の態様を、上述の他のいずれかの例の態様と組み合わせて、類似のまたは異なる特性を有しかつ同じまたは異なる問題に対処する別の例を形成する。
【0031】
好ましい実施形態の上述の説明は、一例としてのみ与えられること、および、様々な修正を当業者がなし得ることを理解されたい。上記の明細書、例およびデータは、本発明の例示的な実施形態の構造および使用の完全な説明を提供する。本発明の様々な実施形態をある程度詳細に、または1つ以上の個別の実施形態を参照して上記で説明したが、当業者は、特許請求の範囲から逸脱せずに、開示の実施形態に多数の修正をなし得る。