(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記保持機構体の前記近位端部は、前記カニューレにくっつけられ、かつ、前記保持機構体の前記遠位端部は、前記カニューレにくっつけられる、請求項1記載のカニューレ組立体。
前記第1のインフレート可能なバルーンは、前記第2のインフレート可能なバルーンと実質的に同一のインフレート後の体積を有する、請求項4記載のカニューレ組立体。
前記カニューレは、前記近位端部に形成されたインフレーションポートを有し、このインフレーションポートは、前記保持機構体に流体結合される、請求項1記載のカニューレ組立体。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1及び
図2を参照すると、複数のトロカール100が体壁50、例えば腹壁を貫通し、体腔52、例えば腹腔内に配置された代表的な腹腔鏡下手技が示されている。体壁50を膨らませて腹腔鏡下手技のための作業空間を提供するよう体腔52にはガスが注入され又は体腔52はガスでインフレートされている。トロカール100は各々、カニューレ110及びシール150を有している。正圧がカニューレ110と関連したシール150によって体腔52内に維持されている。加うるに、カニューレ110は、隣接の組織に対してガス密シールを形成しなければならない。正圧がカニューレ110と関連したシール150かカニューレと隣接の組織との間のシールかのいずれから失われた場合、手技が損なわれる場合がある。
【0020】
体腔52をインフレートさせると、体壁50が大幅に膨らまされる場合がある。接近部位は、体壁50の膨隆下で拡大してカニューレ110の位置決め及び密封具合を損ねがちな場合がある。上述したように、トロカール100を介して用いられた器具190の操作の結果として、カニューレ110が体壁50を通って接近部位内において近位側の方向か遠位側の方向かのいずれかに動く場合がある。これが起こると、或る程度の液状化が起こる場合があり、カニューレ110と体組織との間の好ましい関係が損なわれる場合がある。
【0021】
次に
図3〜
図6を参照すると、カニューレ110、シールハウジング150及び栓子160を有する代表的な組み立て状態のトロカール100が示されている。カニューレ110は、体壁50を通ってこれを容易に挿入することができるよう滑らかな外面102を有している。シールハウジング150は、逆行性ガス流を阻止するシールシステムを収容している。栓子160は、カニューレ110を通す経路を体壁50を貫通して作る切断又は穿通器具である。外科用栓子160は、一般に、関連のカニューレ110に適した欠損部を組織に作るような寸法形状のものである。しかしながら、欠損部は、トロカール100又はカニューレ110を操作しているときの手術手技中、拡大する傾向をもつ場合がある。器具190を遠位側に押したり近位側に押したりし又は挿入したり引き抜いたりしているときに、カニューレ110は、器具190とトロカールハウジングのシール150との間の摩擦に起因して動く場合があり又は偶発的に抜ける場合がある。
【0022】
特に
図6〜
図8を参照すると、カニューレ110の外面102が複数の隆起特徴部115を有するトロカール100又は接近器具が示されている。これら隆起特徴部115は、トロカール100を介して器具190を操作しているとき、特に検体を取り出しているときに近位側への運動及び遠位側への運動に対する抵抗を増大させるような寸法形状のものである。先行技術は、順次隆起したリング又は隆起した並目ねじ115を有している。先行技術のリング又はねじ山115は、カニューレ110を或る程度まで安定化することができるが、これらリング又はねじ山は、必ずしも、カニューレ110を体壁50の隣接の組織に密着させるわけではない。これらシステムの使用と関連してガスの損失が生じる場合がある。隆起リング又はねじ山115は又、体壁50を貫通するのに必要な挿入力を増大させる。挿入力は、連続して位置した別々の隆起リング又は特徴部と比較して、連続並目ねじ115の場合に減少する場合がある。というのは、ねじ山付きカニューレ110は、実際には、適当な回転なしに押し通すのではなく、ねじ山方向及びピッチに従って組織欠損部中に「ねじ込まれる」からである。
【0023】
図9〜
図12を参照すると、先行技術の外科用接近器具100が、カニューレ110を有し、このカニューレは、その遠位端部側部分122と関連したインフレート可能なバルーン120を有している。バルーン120は、未インフレート状態においてカニューレ110にぴったりと嵌まるような寸法形状のものである。カニューレ110を体壁50を貫通して体腔52内に正しく配置した後バルーン120をインフレートさせる。バルーン120は、一般に、滑り反力部材、例えばフォームボルスタ180と関連している反力によって体壁50の内面54に当てて保持される。ボルスタ180は、カニューレ110の近位部分と関連している。先行技術の器具と関連したバルーン120は、代表的には、カニューレ110の一部として構成された「厚肉(厚壁)」構造体である。バルーン120は、一般に、カニューレ110の遠位端部側部分122に結合され、インフレーションチャネル又はルーメンがカニューレ110の壁内に設けられる。
【0024】
図13を参照すると、バルーントロカール200の一観点は、カニューレ組立体210、トロカールシール220及び栓子230を有している。カニューレ組立体210は、カニューレ250及び外側スリーブ300を有している。
【0025】
図14を参照すると、カニューレ250は、近位端部254、遠位端部256及びこれら端部相互間に設けられたルーメン258を備えた実質的に長手方向管252を有している。カニューレ250は、少なくとも、第1の大きな周長を備えた近位部分260及び第2の小さな周長を備えた遠位部分262を有するのが良い。一観点では、カニューレ250の近位部分260及び遠位部分262は各々、実質的に円筒形の部分を含み、近位部分260は、第1の大きな周長を有し、遠位部分262は、第2の小さな周長を有する。カニューレ250は、近位部分260と遠位部分262との間に移行領域264を更に有するのが良い。カニューレ250のルーメン258は、実質的に滑らかであり、栓子230(
図13参照)を受け入れるように形作られているのが良い。カニューレ250の近位部分260は、トロカールシール220(
図13参照)を受け入れるよう形作られているのが良い。カニューレ250の遠位部分262の外面は、カニューレの遠位部分の遠位端部256よりに環状溝266を有している。環状溝266は、カニューレ250の長手方向軸線272に実質的に垂直な平面内に位置するのが良い。加うるに、カニューレ250の遠位部分262の外面は、実質的にカニューレの遠位部分の近位端部からカニューレの遠位部分の遠位端部256の近くの環状溝266まで遠位側にカニューレの長さに沿って延びる複数のチャネル268を有している。複数のチャネル268は、これを通るガス又は流体の流れを容易にするようになっている。一観点では、複数のチャネル268は、カニューレ250の長手方向軸線272に実質的に平行な複数の実質的に長手方向の溝270を有するのが良い。一観点では、カニューレ250は、ポリマー材料、例えばポリカーボネート材料で作られるのが良い。
【0026】
図15を参照すると、カニューレ組立体210の外側スリーブ300は、近位端部300、遠位端部306及びこれら端部相互間に位置するルーメン308を備えた実質的に長手方向の管302を有している。スリーブ300は、少なくとも、第1の大きな周長を備えた近位部分310及び第2の小さな周長を備えた遠位部分312を有するのが良い。一観点では、スリーブ300の近位部分310及び遠位部分312は各々、実質的に円筒形の部分を含み、近位部分310は、第1の大きな周長を有し、遠位部分312は、第2の小さな周長を有する。スリーブ300は、近位部分310と遠位部分312との間に移行領域314を更に有するのが良い。スリーブ300のルーメン308は、カニューレ250(
図13参照)を受け入れるように形作られていて、実質的に滑らかであるのが良い。スリーブ300の遠位部分312の外面322は、スリーブの遠位部分の遠位端部306よりに環状溝316を有している。環状溝316は、スリーブ300の長手方向軸線320に実質的に垂直な平面内に位置するのが良い。一観点では、スリーブ300は、ポリマー材料、例えばポリカーボネート材料で作られるのが良い。
【0027】
再び
図13を参照すると、スリーブ300がカニューレ250に嵌められた状態では、スリーブ300の近位部分310は、少なくともカニューレの近位部分260の遠位領域に被さり、スリーブの遠位部分312は、カニューレの遠位部分262の少なくとも一部分に被さっている。加うるに、スリーブ300がカニューレ250に嵌められた状態では、スリーブ300の遠位端部306は、カニューレ250の外面の複数のチャネル268の遠位端部の近位側に位置決めされる。
【0028】
上述したように、カニューレ組立体210は、カニューレ250及びスリーブ300を有している。次に
図16を参照すると、ガス又は流体がスリーブ300の近位端部304とカニューレ250の近位部分260との間から漏れるのを実質的に阻止するために、カニューレとスリーブとの間にシール、例えばOリング350を設けるのが良い。一観点では、シール、例えばOリング350は、カニューレ250の外面とスリーブ300の内面との間に位置決めされる。別の観点では、カニューレ250の近位部分260の遠位領域の外面は、カニューレの近位部分260とカニューレの移行領域264か遠位部分262かのいずれとを連絡させる実質的に平らな表面、例えば平坦面又は斜切面を有するのが良い。この観点では、シール、例えばOリング350は、カニューレ250の近位部分260の遠位領域の外面上の平坦面とスリーブ300の近位部分310の遠位領域の内面上の平坦面との間に位置決めされる。
【0029】
図13〜
図17を参照すると、カニューレ250とスリーブ300は、シール、例えばOリング350の近位側の位置でカニューレの近位部分260とスリーブの近位部分310のところで互いに結合されている。一観点では、カニューレ250の近位部分260とスリーブ300の近位部分310を結合する手段は、カニューレの外面に設けられた少なくとも1つの突出部362及びスリーブの内面に設けられた少なくとも1つの切欠き364を有するスナップ嵌め部360を含む。変形例として、突出部は、スリーブの内面に設けられ、切欠きは、カニューレの外面に設けられても良い。少なくとも1つの突出部362及び少なくとも1つの切欠き364は、突出部を切欠き内に位置決めすると、シール、例えばOリング350がカニューレ250とスリーブ300との間にシールを形成するのに十分圧縮されるよう位置決めされる。一観点では、シール、例えばOリング350は、軟質圧縮性材料で作られる。一観点では、Oリング350は、ショアAスケール硬度が約40のシリコーンで作られる。一観点では、スナップ嵌め部360は、カニューレの外面に実質的に互いに円周方向反対側に設けられた2つの突出部362及びスリーブ300の内面に互いに実質的に半径方向反対側に設けられた2つの切欠き364を有している。スリーブ300をカニューレ250に結合する当該技術分野において周知の他の手段、例えば他の機械的手段又は接着も又利用できる。
【0030】
図14,
図15及び
図18を参照すると、カニューレ組立体210は、カニューレとスリーブが互いに結合した状態で、カニューレ250及びスリーブ300が長手方向軸線272,320回りに互いに対して回転するのを実質的に阻止し又は最小限に抑えるロック手段370を更に有している。一観点では、ロック手段370は、カニューレ250の外面に設けられた突出部372及びスリーブ300の内面に設けられたチャネル374を有する。一観点では、突出部372は、カニューレ250の近位部分260の外面に設けられ、チャネル374は、スリーブの近位部分310の内面に設けられた状態でスリーブの近位端部304まで延びている。変形例として、突出部372は、スリーブ300の近位部分310の内面に設けられ、チャネル374は、カニューレ250の近位部分260の外面に設けられても良い。チャネル374がスリーブ300に設けられる場合、チャネルは、スリーブの壁の全厚を貫通するかスリーブの壁の厚さのほんの一部分を貫通するかのいずれであっても良い。カニューレ250とスリーブ300の相対回転を実質的に阻止し又は最小限に抑えるため、チャネル374は、実質的に長手方向であり且つスリーブ300の軸線320に実質的に水平である。突出部372は、チャネル374の壁に嵌まり込んでカニューレ250とスリーブ300の相対回転を容易に阻止し又は最小限に抑える形状であればどのような形状のものであっても良い。一観点では、突出部372は、実質的に円筒形であり、別の観点では、突出部は、実質的に長方形である。
【0031】
図19を参照すると、カニューレ組立体310は、バルーン400を更に有している。一観点では、バルーンは、管状スリーブ402を有する。管状スリーブ402は、エラストマー材料から成るのが良い。バルーン400を構成するために用いることができるエラストマー材料としては、シリコーン、ポリイソプレン及びウレタンが挙げられる。他の観点では、バルーン400は、カニューレ250及びスリーブ300上に折り畳み可能であり、そして大きな輪郭の状態にインフレートさせることができる他の材料、例えばMYLARで作られても良い。バルーン400は、カニューレ250及びスリーブ300への取り付けに先立って、バルーンが環状溝266,316相互間に延びると共にこれら溝をカニューレ及びスリーブの遠位部分262,312のところで覆うのに十分長いものであるよう所定長さに切断されるのが良い。バルーン400をカニューレ250の遠位端部256及びスリーブ300の遠位端部306上でこれに沿って滑らせてついにはこれがカニューレ及びスリーブの環状溝266,316を覆うようにする。
【0032】
一観点では、バルーン400は、カニューレ250及びスリーブ300の遠位部分262,312のところで環状溝266,316とオーバーラップする領域で糸404をバルーンに巻き付けることによって定位置に固定される。バルーン400に糸404を巻き付けることにより、環状溝266,316とオーバーラップしているバルーンの部分が環状溝内に押し込まれてバルーンが定位置に保持され、それによりカニューレ組立体に沿うバルーンの長手方向軸方向運動が実質的に阻止される。溝266,316は、バルーン400を環状溝266,316内に押し込むと、バルーンと巻き糸404が巻回部のところでカニューレ250及びスリーブ300と実質的に面一をなし、それによりカニューレ組立体210が実質的に滑らかになるようにするのに十分な深さのものである。さらに又、バルーン400を巻き糸404により環状溝266,316内に押し込むと、バルーンとカニューレ250との間及びバルーンとスリーブ300との間にシールが形成される。
【0033】
図20を参照すると、チャネル268(
図14参照)を備えたカニューレ250の外面、スリーブ300の内面、Oリング350及び巻き糸404を備えたバルーン400の間の空間は、実質的に閉鎖されたチャンバ408を形成する。一観点では、カニューレ250の外面のチャネル268は、標準型カニューレの壁の全厚を増大させないようカニューレの壁の中に形成される。スリーブ300のルーメン308は、スリーブの遠位部分312とカニューレ250の遠位部分262との間に最小限の空間を提供し、それによりカニューレ組立体210の全体的輪郭を最小限に抑えるよう構成されているのが良い。カニューレ250及びスリーブ300の移行領域264,314相互間の隙間は、バルーンのインフレーション及びデフレーション中、チャネル268を通ってガス又は流体をカニューレ250の外面上に均等に分布させるために遠位部分262,312相互間の隙間よりも大きいのが良い。
【0034】
バルーン400は、バルーンのインフレーション時に多種多様な形状のうちの1つを取るよう構成されるのが良い。一観点では、バルーン400は、インフレーション時に実質的にトロイド形を取ることができる。別の観点では、バルーンは、インフレーション時に円板の形を取ることができる。別の観点では、バルーン400は、ひだ又は溝付きバルーンであっても良い。一観点では、バルーン400に関する種々の形状は、バルーンを形成する管状スリーブ402に関する厚さを変化させることにより又はバルーンについて異なる形状をあらかじめ成形することにより達成できる。
【0035】
バルーン400は、ガス又は流体がバルーンの壁を通って透過するのを実質的に阻止するのに十分な不透過性を有するべきである。加うるに、バルーンは、バルーンのデフレーション中、デフレート状態に向かって動作すべきである。
図21を参照すると、外側層406がバルーンをデフレーションに向かって付勢するのに適した性質を備えていないバルーン材料を用いた場合にバルーンに被着されて固定されるのが良い。外側層406は、シリコーン、ラテックス、ポリイソプレン、ゴム又は当該技術分野において周知である他の生体適合性エラストマー材料から成るのが良い。外側層406を上述したようにカニューレ250及びスリーブ300にバルーン400と一緒に巻き付けるのが良い。
【0036】
バルーン400用のエラストマー材料の中には、先ず最初にバルーン材料に存在する細孔を密封しないでかかる材料で作られたバルーンを用いることができるが、不適切な不透過性を備えているものがある。例えば、シリコーン製のバルーン400は、バルーンをデフレーションに向かって付勢するのに適した性質を有するが、多孔性が高すぎるので手術手技の観点からは適当なインフレーションを維持することができない場合がある。幾つかの実施形態では、バルーンの内面は、バルーンに存在する細孔を密封するようグリースで被覆されるのが良い。一観点では、バルーンは、多孔性材料、例えばシリコーンで作られるのが良く、グリースは、シリコーングリースであるのが良い。シリコーンは、バルーンをデフレーションに向かって付勢するのに適した性質を有するのが良いが、多孔性が高すぎるので追加の密封手段とは独立して用いることができない場合がある。シリコーングリースは、バルーンの細孔を密封するのに役立ち、それによりバルーンのインフレーション時間が長くなる。
【0037】
バルーン400の端部に巻き糸404を巻き付けたときに、折り目形成及び漏れ経路の形成の恐れを阻止し又は最小限に抑えるために、バルーンの内面の周囲は、カニューレ250の環状溝266の周囲にほぼ等しく又はこれよりも小さいことが必要である。このように、バルーンは、カニューレ250及びスリーブ300上に引き伸ばされ、バルーン400の端部は、カニューレ及びスリーブの環状溝266,316内にぴったりと嵌まり込む。バルーンが環状溝266,316の領域で引き伸ばされた状態では、巻き糸404をバルーンに取り付けたときにバルーン400に折り目がつく恐れはない。しかしながら、バルーン400をカニューレ250及びスリーブ300上に配置するための引き伸ばし作用により、バルーンの周囲回りに不均一な引き伸ばしが生じる場合があり、その結果、バルーンのインフレーションが非対称になる場合がある。グリースをカニューレ250及びスリーブ300上へのバルーンの配置に先立ってバルーン400の内面に塗布することにより、グリースは、潤滑剤として働き、それにより、バルーンは、カニューレ及びスリーブ上でこれに沿って容易に滑ることができ、それにより組み立て具合が向上し、しかも、バルーンの周囲回りの自然な位置に向かって回転して戻ることができ、それによりバルーンの実質的に対称のインフレーションが得られる。換言すると、グリースにより、バルーンは、実質的に自動調心することができ、それにより、バルーン材料内の応力を実質的に等しくすると共にバルーンの実質的に対称なインフレーションを可能にする。
【0038】
追加の層をバルーンに追加するのではなく、グリースをバルーン400の内面に塗布することにより、バルーンの外側輪郭の増大が最小限に抑えられる。シリコーングリース付きのシリコーンバルーン400を用いることにより、潜在的にアレルギー性の材料、例えばラテックスの導入が制限される。
【0039】
再び
図18を参照すると、スリーブ300は、シール、例えばOリング350の遠位側に位置するよう設けられたインフレーションポート380を有する。インフレーションポート380は、ガス又は流体をチャンバ408に導入したりこれから抜き出したりするための経路となる。一観点では、インフレーションポート380は、ばね押しプランジャ384を備えた常閉逆止弁382を有するのが良い。別の観点では、逆止弁380は、ルアー(Luer)ロック386を有するのが良い。当該技術分野において周知である他のインフレーションポートを使用できることが想定される。
【0040】
図13を再び参照すると、トロカールシール220は、器具、例えば栓子230が設けられている状態で器具シールを提供し、器具が設けられていない状態でゼロシールを提供する弁を有するのが良い。また、トロカールシール220は、カニューレ組立体210から取り外し可能であるのが良い。トロカールシール220の取り外しは、カニューレ組立体210を通る組織取り出し及び注入ガスの迅速な放出に有用である。
【0041】
図22を参照すると、栓子230は、近位端部236と遠位端部238との間で実質的に長手方向軸線234に沿って延びる細長いシャフト232を有している。細長いシャフト232の遠位先端部240は、長球面形のものであるのが良い。遠位先端部240を含む細長いシャフト232は、カニューレ250のルーメン258(
図16及び
図19参照)内で摺動するような寸法形状のものである。栓子230の近位部分242は、カニューレ250のルーメン258内での栓子の前進と引っ込みを容易にするよう細長いシャフト232よりも大きな周長を備えた取っ手部分244を有するのが良い。作動位置では、栓子230の遠位先端部240は、カニューレ250の遠位端部256の遠位側に位置決めされ、栓子の取っ手部分244は、カニューレの近位端部254の近位側に位置決めされる。
【0042】
栓子230は、ポリマー材料、例えばポリカーボネートで作られているのが良い。当業者であれば認識されるように、栓子230は、当該技術分野において周知であり、本発明の範囲内にあると考えられる他の材料で作られても良い。球状の遠位先端部を有する栓子と比較して、長球面形の栓子230の遠位先端部240は、体壁に設けられた切開創を通ってトロカールを体内に挿入するのに必要な挿入力が小さい。また、栓子230の遠位先端部240の長球面形状により、尖った形状の遠位先端部を備えた栓子と比較して、体腔内における組織又は器官の外傷の恐れが軽減される。長球面形の遠位先端部240を備えた栓子230を用いると、外科医は、腹膜に切れ目を入れるだけで良く、栓子の遠位先端部を用いて切開創を拡張し又は引き伸ばして開くことができる。
【0043】
図13を再び参照すると、バルーンが体壁50に設けられていて、バルーントロカールを挿入させる切開創の周りを密封するのを助けるようボルスタ410がバルーントロカール200と関連して用いられるのが良く、バルーンは、この切開創を体腔52の中から密封する。ボルスタ410は、体の外部に位置するカニューレ固定器具として働くよう構成され、バルーン400は、体の内部に位置するカニューレ固定器具として働く。ボルスタ410は、バルーン400の近位側のカニューレ組立体210の長さに沿って摺動可能に調節可能であり、このボルスタは、ボルスタをカニューレ組立体の長さに沿う定位置にロックするクランプ装置を有する。他方、バルーン400は、カニューレ組立体210の長さに沿う場所で固定され、このバルーンは、腹壁の内面に密着する。
【0044】
ボルスタ410のクランプ特徴の発揮を容易にするため、ボルスタは、ベース420及びクランプ機構体415を有している。クランプ機構体415は、調節可能なカラー460及びレバー500を有している。ボルスタは、実質的に非圧縮性ゲル材料から成るパッド530を更に有する。クランプ特徴部は、ボルスタ410をカニューレ組立体210の長さに沿う固定された位置に維持するためのオーバーセンタロック設計を利用している。
【0045】
図23を参照すると、ベース420は、フランジ424から遠位側に突き出たスリーブ422を有している。フランジ424は、近位表面428及び遠位表面430を有している。フランジ424の近位表面428と遠位表面430は、互いに実質的に平行であり且つベース420の軸線432に実質的に垂直である。フランジ424は、平べったいものとして図示されているが、他の形状、例えば丸形形状を使用することができ、これら他の形状は、本発明の範囲に含まれるものと想定される。ベース420のスリーブ422の一部分は、近位端部434、遠位端部436及びこれら端部相互間のルーメン438を有する。ルーメン438は、カニューレ組立体210のスリーブ300を受け入れてこれと摺動可能に係合するよう寸法決めされている。ベース420のスリーブ422の一部分の外面440は、実質的に円筒形の形をしているのが良い。ベース420のスリーブ422の一部分のルーメン438は、フランジ424を貫通して延び、それによりフランジに孔442が形成されている。
【0046】
クランプ受け具444が、フランジ424の近位表面428から近位側に延びている。クランプ受け具444は、フランジ424の近位表面428から延びる少なくとも1つのライザ446及び少なくとも1つのライザ446から延びるプラットホーム448を有している。一観点では、クランプ受け具444は、第1のライザ450及び第2のライザ452を有し、プラットホーム448は、第1のライザと第2のライザとの間に延びている。プラットホーム448は、フランジ424の孔442上に延びることはないよう形作られている。換言すると、プラットホーム448は、カニューレ組立体210のための隙間を提供し、その結果、ボルスタ410は、カニューレ組立体に摺動可能に係合することができ、プラットホームは、かかる係合を邪魔することがないようになっている。プラットホーム448は、フランジ424の近位表面428に実質的に平行な遠位表面454を有している。以下に説明するように、プラットホーム448の遠位表面454とフランジ424の近位表面428との間の距離は、ボルスタ410のクランプ機構体415の一部分を受け入れるのに十分である。プラットホームの遠位表面454を貫通して実質的に直線スロット456が半径方向に延びている。一観点では、ベースは、ポリマー材料、例えばポリカーボネートで作られるのが良い。しかしながら、他の材料、例えば金属及び複合材を用いることができるということが想定されている。
【0047】
図24を参照すると、ボルスタ410のクランプ機構体415のカラー460の一部分は、割り部又はスプリット464を備えた実質的に円周方向のリング462を有している。カラー460は、近位端部466、遠位端部468及び内面470を更に有している。カラー460の内面470は、棚部472を内部に形成するカウンタボア(端ぐり部)を有するのが良い。カラー460の割り部464は、カラー460の第1の端474及びカラーの第2の端476を形成している。カラー460は、カニューレ組立体210へのカラーの嵌まり具合を調節するために可撓性である。具体的に説明すると、カラーの第1の端474と第2の端476は、ボルスタ410とカニューレ組立体210との間に十分な摩擦力を生じさせてボルスタをカニューレ組立体の長さに沿う定位置に実質的に固定するよう互いに密接して結合されるのが良い。また、カラーの第1の端474と第2の端476は、ボルスタ410とカニューレ組立体210との間に働く摩擦力を減少させ又は実質的になくしてボルスタがカニューレ組立体の長さに沿って摺動することができるよう互いに離隔されるのが良い。
【0048】
カラー460の第1の端474と第2の端476との間の距離の制御を容易にするため、第1のタブ478がカラーの第1の端474から延び、第2のタブ480がカラーの第2の端476から延びている。一観点では、第1のタブ478及び第2のタブ480は、それぞれ、第1の端474及び第2の端476から円周方向に延びるのが良い。他の観点では、第1のタブ478及び第2のタブ480は、それぞれ、第1の端474及び第2の端476から接線方向に又は半径方向に或いは当該技術分野において周知の任意他の仕方で延びても良い。第1のタブ478を貫通して第1の孔482が長手方向に延び、第2のタブ480を貫通して第2の孔484が長手方向に延びている。以下において説明するように、レバー500は、カラー460の第1の端474と第2の端476との間の距離を制御するようタブ478,480と相互作用する。カラーは、ポリマー材料、例えばポリカーボネートで作られるのが良い。しかしながら、他の材料、例えば金属及び複合材を用いることができるということが想定されている。
【0049】
図25を参照すると、レバー500は、第1の近位側の表面504、第2の遠位側の表面506、第1の端508及び第2の端510を備えたアーム502を有している。アーム502の近位表面504と遠位表面506は、互いに実質的に平行である。実質的に円筒形の第1のピン512が第1の端508の近くでアーム502の近位表面504から近位側に延び、実質的に円筒形の第2のピン514が第1の端の近くで遠位表面506から遠位側に延びている。第1のピン512及び第2のピン514は各々、アーム502のそれぞれの近位表面504及び遠位表面506から実質的に垂直に延びている。第1のピン512の軸線516と第2のピン514の軸線518は、互いに実質的に平行であるが、互いにオフセットしている。一観点では、第1のピン512は、第2のピン514よりもアーム502の第1の端508の近くに位置する。第1のピン512及び第2のピン514の周長は、カラー460のタブ478,480のそれぞれの第1の孔482及び第2の孔484内に嵌まり込むよう寸法決めされている。一観点では、レバー500をボルスタ410内に組み込むと、レバー500の回転を容易にするようタブ520がアーム502の第2の端のところに位置決めされた状態で設けられるのが良い。
図26を参照すると、カラー460の第1のタブ478の遠位表面とカラーの第2のタブ480の近位表面との間には空間488が設けられている。一観点では、第1のタブ478の遠位表面と第2のタブ480の近位表面は、実質的に平らであり、互いに実質的に平行であり且つカラー460の軸線486に実質的に垂直である。空間488は、レバー500のアーム502を受け入れるよう寸法決めされている。レバー500は、カラーのアーム502を操作してこれをカラーの第1のタブ478と第2のタブ480との間の空間488内に入れてレバーの第1のピン512をカラー460の第1のタブ478に設けられた第1の孔482(
図24参照)内に挿入し、そしてレバーの第2のピン514(
図25参照)をカラーの第2のタブ480に設けられている第2の孔484(
図24参照)内に挿入することによりカラー460に結合されている。このように、レバー500は、カラー460に回動可能に結合されている。一観点では、レバーの第1のピン512は、カラー460の第1のタブ478の近位表面を越えて延びるほど十分長く、第2のピン514は、カラーの第2のタブ480の遠位表面と実質的に面一をなし又はこれと面一をなす位置の下に位置している。
【0050】
図27を参照すると共に引き続き
図26を参照すると、カラー460及びレバー500を含むクランプ機構体415をベース420に結合するため、カラー及びレバーは、ベースのクランプ受け具444の一部分内に挿入されている。具体的に説明すると、クランプ機構体415は、ベース420のフランジ424の一部分の近位表面428とベースのクランプ受け具444の一部分のプラットホーム448の遠位表面454との間に挿入され、その結果、カラー460は、フランジ424とプラットホーム448とクランプ受け具444の少なくとも1つのライザ446の一部分との間に嵌め込まれるようになっている。さらに、カラー460の第1のタブ478及び第2のタブ480並びにレバー500の第1のピン512及び第2のピン514(
図24及び
図25参照)は、ベース420のフランジ424の一部分の近位表面428とプラットホーム448の遠位表面454との間に位置決めされている。ベース420のフランジ424の一部分の近位表面428とプラットホーム448の遠位表面454との間の距離は、クランプ機構体415がクランプ受け具444内に摺動可能に嵌まり込むのに十分であるが、更に、クランプ機構体415のレバー500とカラー460をレバーの作動中、互いに係合関係に維持してカニューレ組立体210に対するカラーのクランプ力を維持するほど十分小さい。一観点では、第1のタブ478の近位表面を越えて近位側に延びるレバー500の第1のピン512は、カラー460の第1及び第2のタブ478,480及びレバー500の第1及び第2のピン512,514の位置をベース420のフランジ424の一部分の近位表面428とプラットホーム448の遠位表面454との間に維持するのを容易にするためにプラットホーム448の遠位表面454に設けられているスロット456内に位置決めされる。
【0051】
図13及び
図27を参照すると、ボルスタ410は、カニューレの遠位端部256をカラー460の近位端部466中に遠位側に挿入し、ベース420のフランジ424の孔442(
図23参照)中に挿入し、そしてベースのスリーブ422(
図23参照)中に挿入することによりカニューレ組立体210に摺動可能に取り付けられている。ボルスタ410とカニューレ組立体210をベース420のスリーブ422(
図23参照)の遠位端部436がバルーン400(
図19参照)の近位側に位置するまで互いに対して摺動させる。
【0052】
図28を参照すると、カラー460の近位端部466及びレバー500を見た場合(遠位側に見た場合)、カラーの第1の端474と第2の端476との間の距離は、レバーが第1の時計回りの位置にあるとき、その最大値となる。レバー500を反時計回りの方向に回転させると、カラー460の第1の端474と第2の端476は、互いに近づき、カラーの周長を減少させると共にカラーをカニューレ組立体210(
図13参照)に締め付ける。レバー500を回転させているときのカラー460の周長の変化は、レバー(
図25参照)の第1のピン512と第2のピン514との間のオフセットによって引き起こされる。カラー460の周長は、レバーを第1の位置から約180°回転させたときにその最小値となる。クランプ機構体415のオーバーセンタロック設計特徴部の実現を容易にするため、レバー500を第1の位置から約180°を超えて回転させて第2の位置に動かす。このように、レバー500が第1の位置から回転しているとき、カラー460の周長は、レバーが約180°回転するまで減少し、次にレバーが第2の位置に位置決めされるまで僅かに増大する。レバー500が第2の位置にある状態で、レバーを第2の位置から時計回りの方向に第1の位置まで回転させるには先ず最初に高い圧力が必要である。というのは、カラー460の周長は、レバーが第1の位置から約180°のところにある位置に達するまで減少するからである。必要とされる高い圧力は、クランプ機構体415の偶発的な解除を防止する。クランプ機構体415を詳細に説明したが、当業者であれば認識されるように、当該技術分野において周知である他のクランプ機構体を満足のゆく結果が得られるよう用いることができる。一観点では、カラーの内面470は、カニューレ組立体210のスリーブ300の一部分の外面322に直接圧着する。別の観点では、ボルスタ410は、カラー460の内部に位置決めされた圧縮性リング490を有する。リング490をカラー460の内面470に設けられている棚部472に密着させるのが良い。リング490の内面492は、レバー500が第1の位置にあるとき、ボルスタ410をカニューレ組立体210に沿って摺動させることができ、レバーが第2の位置にあるとき、カニューレ組立体のスリーブ300の一部分の外面322に押し付けることができるよう寸法決めされている。このように、リング490の圧縮により、レバーが第2の位置にあるとき、カニューレ組立体に沿うボルスタの位置を維持するのに十分な摩擦力がボルスタ410とカニューレ組立体210との間に働くようになる。一観点では、リング490は、非圧縮性エラストマー材料、例えばシリコーンで作られる。一観点では、リング490は、軟質エラストマー材料、例えばショアAスケールジュロメータ硬度が約40のシリコーンから成形される。当業者であれば認識されるように、当該技術分野において周知である他の材料を用いることができ、かかる他の材料は、本発明の範囲に含まれるものと想定される。
【0053】
ボルスタ410がカニューレ組立体に取り付けられた状態では、リング490は、カラー460をカニューレ組立体210回りに実質的に自動調心させる。レバー500の第1のピン512がプラットホーム448の遠位表面454に設けられているスロット456内に延びるようにすることにより、ボルスタがカニューレ組立体210上に位置決めされると共にレバー500が第2の位置にあるとき、クランプ機構体415がベース420回りに回転するのが実質的に阻止される。これにより、ボルスタ410がカニューレ組立体210回りに回転するのが実質的に阻止される。
【0054】
再び
図13及び
図26を参照すると、バルーン400を体壁の切開創の周りに密着させるのを助けるのを容易にするため、ボルスタ410は、ベース420のフランジ424の一部分の遠位表面430に且つベースのスリーブ422(
図23参照)の一部分の外面440回りに結合された実質的に環状のゲルパッド530を有する。一観点では、ゲル530は、実質的に非圧縮性である。ゲルパッド530が実質的に非圧縮性なので、ゲルパッドは、先行技術のフォームパッド180と同じほど厚いものである必要はない。薄いパッドを設けることにより、カニューレ組立体210により使いやすい長さが与えられる。ゲルパッド530は、バルーンと体壁の内面との間に生じる恐れのある漏れを防止するのを助けるよう切開創のためのバックアップシールとして働くことができる。一観点では、ゲルパッド530は、厚さが約3.0〜20.0mmであるのが良い。しかしながら、別の観点では、ゲルパッド530は、ゲルパッドの密封特徴を促進するよう厚手のものであっても良い。
【0055】
ゲルパッド530は、ゲルで作られると共にベース420に取り付けられても良く、これに形成されても良く、或いはこれと一体であっても良い。一観点では、ゲルは、エラストマーゲルである。一観点では、ゲルは、トリブロック(triblock)コポリマーと中間ブロックのための溶剤を混合することにより調製可能である。端ブロックは、典型的には、熱可塑性材料、例えばスチレンであり、中間ブロックは、熱硬化エラストマー、例えばイソプレン又はブタジエン、例えばスチレン‐エチレン‐ブチレン‐スチレン(SEBS)である。一観点では、用いられる溶剤は、鉱油である。この混合物又はスラリーを加熱す
ると、中間ブロックは、鉱油中に溶け、不溶性端ブロックの網状構造が生じる。結果的に生じる網状構造は、親子ポリマーと比較して向上したゴム状弾性(エラストマー性)を有する。一観点では、用いられるトリブロックコポリマーは、KRATON G1651である。ゲルは、いったん形成されると、実質的に永続的であり、端ブロックの性状により、混合熱可塑性エラストマーとして処理可能である。混合物又はスラリーは、これがゲルになる最低温度、即ち、最低ゲル化温度(MGT)を有する。この温度は、一観点では、熱可塑性端ブロックのガラス転移温度に数度加えた温度に一致している。例えば、KRATON G1651及び鉱油の混合物のMGTは、約120℃である。スラリーがMGTに達し、ゲル状態への転移が起こると、ゲルは、透明になり、それによりゲル状態へのスラリーの転移が実質的に完了した時期及びゲルを冷却させることができる時期を目で見て確認するための手段が得られる。トリブロックに加えて、スチレンが化学式の一端にのみ存在している場合に用いることができる物質のジブロック(diblock)変形例、例えばスチレン‐エチレン/ブチレン(SEB)も存在する。
【0056】
完成状態のゲルの状態になるようにするために、スラリーの塊全体をMGTまで加熱し、端ブロックが相互連結部のマトリックスを形成するのに十分な時間、このスラリーがMGTの温度に加熱状態のままであるようにする。スラリーは、MGTを超える温度でゲルの状態になり続け、ついには、スラリー/ゲルは、スラリー/ゲル中の成分が分解又は酸化し始める温度に達するようにする。例えば、スラリー/ゲルを250℃を超える温度に加熱すると、スラリー/ゲル中の鉱油は、揮発状態になり始め、そして酸化する。酸化により、ゲルは、茶色になって油状になる場合がある。
【0057】
所与の量のスラリーがゲルを形成する速度は、スラリーの塊全体がMGTに達する速度で決まる。また、MGTよりも高い温度が適用された場合、この速度は、端ブロック網状構造がより迅速に分布すると共に生じるようになるので一段と高められる。
【0058】
また、種々の基本化学式物質を互いにアロイ化すると、種々の中間特性を達成することができる。例えば、KRATON G1701Xは、全体的なスチレンとゴムの比が28/72の70%SEB30%SEBS混合物である。理解できるように、ほぼ無限の数の組み合わせ、アロイ及びスチレンとゴムの比を処方することができ、これらは各々、低いジュロメータ、高い伸び率及び良好な引き裂き強度を提供することができる。
【0059】
ゲル材料は、シリコーン、軟質ウレタン及び更により硬質のプラスチックを更に含むのが良く、バルーン400が体壁52の内面に密着するのを助けるようボルスタについて所望の量を提供する発泡剤が追加されることが想定されている。シリコーン材料は、現在電子キャプシュレーションに用いられている形式のものであるのが良い。硬質のプラスチックとしては、PVC、イソプレンKRATONニート及び他のKRATON/油混合物が挙げられる。KRATON/油混合物に関し、鉱油に代えて例えば植物油、石油及びシリコーン油のような油を用いても良い。想定されるゲル材料はどれも、種々の特性、例えば向上した潤滑度、外観及び創傷保護を達成するよう改質可能である。添加剤を直接ゲル中に混ぜ込んでも良く又は表面活性剤として用いても良い。ゲルの物理的性質を改質するため又は結合部位若しくは表面電荷を提供することにより表面の次の改質を助けるために他の化合物をゲルに添加しても良い。加うるに、種々の色のゲルを作るために油性着色剤をスラリーに添加しても良い。
【0060】
一観点では、本明細書において説明するベース420の種々の観点に用いられる混合物/スラリーは、90重量%の鉱油及び10重量%のKRATON G1651で構成される。熱力学的観点から、この混合物は、鉱油とほぼ同じように挙動する。鉱油は、相当大きな熱容量を有し、従って、約130℃では、均一のゲルを形成するのにスラリー1ポンドを加熱するのに3時間又は4時間かかる。いったん形成されると、ゲルをできるだけ迅速に冷却するのが良く、その結果ゲルに対して見かけの有害な影響は生じない。この冷却は、一観点では、冷水浸漬で達成される。別の観点では、ゲルを空冷しても良い。当業者であれば認識されるように、当該技術分野において周知である他の冷却法を用いることができ、かかる他の冷却法は、本発明の範囲に含まれるものとして想定されている。
【0061】
KRATON/油混合物の特性の多くは、成分の重量比の調節で様々であろう。一般に、鉱油の割合が多ければ多いほど、混合物の硬さはそれだけ一層小さくなり、KRATONの割合が多ければ多いほど、混合物の硬さはそれだけ一層高くなる。
【0062】
スラリーが長期間にわたって放置される場合、コポリマー、例えばKRATON及び溶剤、例えば鉱油は、分離する場合がある。スラリーを例えば高剪断ブレードで混合すると、スラリーをより均質にすることができる。しかしながら、スラリーを混合すると、空気がスラリーに導入され又は追加される場合がある。空気をスラリーから除去するため、スラリーを脱気するのが良い。一観点では、スラリーを真空中で、例えば真空チャンバ内で脱気するのが良い。一観点では、適用される真空は、水銀柱で0.79メートル(29.9インチ)又は約1.0気圧であるのが良い。スラリーが真空化にある状態でスラリーを攪拌するのが良く、それにより空気の除去が容易になる。真空内における脱気中、スラリーは、代表的には、膨張し、次に泡立ち、次に減容する。泡立ちが実質的に止まると、真空を中断するのが良い。スラリーを真空チャンバ内で脱気することにより、スラリーの体積が約10%減少する。スラリーを脱気することは、完成状態のゲルが酸化する恐れを減少させるのに役立つ。
【0063】
スラリーを脱気することは、結果として得られるゲルを硬くする傾向がある。約91.6重量%の鉱油及び8.4重量%のKRATON G1651、即ち11:1の比で構成された脱気スラリーの結果として、90重量%の鉱油及び10重量%のKRATON G1651、即ち9:1の比で構成された脱気されないスラリーで作られているゲルとほぼ同一の硬さを備えたゲルが得られる。
【0064】
ゲルは種々の観点においてガンマ線滅菌されるのが良い。したがって、滅菌プロセスを性格づけするうえでの相対的又は比較による単純さ、例えばガンマ線と酸化エチレンとの関係及びゲルとゲル付き器具の相対的又は比較による単純さが望ましい。しかしながら、ガンマ線滅菌下において、大きな泡がゲル中に生じる場合があり、それにより、滅菌器具に潜在的な見かけ上又は美観的問題が生じる。泡は、99%を超える室内空気であり、従って、スラリーをゲルの状態にするのに先立つスラリー中の溶解空気の除去が実施される。例えば、上述したように真空を介してスラリーを脱気し、そして熱によりゲルにするのが良い。泡は、ガンマ線滅菌中、ゲル中に依然として生じるが、約24〜72時間の間に消える。一観点では、室温での鉱油中の溶解ガスの割合は、約10%である。ゲル中の空気の除去は、ゲルを硬くするという追加の作用効果を有する。しかしながら、これは、ガンマ線滅菌中、ゲルに対するガンマ線の軟化効果によって相殺される。
【0065】
一観点では、ゲルがガンマ線滅菌される場合、ゲルは、約90重量%の鉱油及び約10重量%のKRATONを含むのが良い。上述したように、スラリーを脱気することは、ゲルを硬くする作用効果を有するが、ガンマ線は、このゲルを、脱気されず又はガンマ線滅菌されない約90重量%の鉱油及び約10重量%のKRATONを含むゲルと実質的に同一の硬さまで軟化させる。
【0066】
一観点では、ゲルパッド530をベース420に結合し又は違ったやり方で取り付けるのにシアノアクリレート、例えばSUPERGLUE又はKRAZY GLUEを用いるのが良い。かかるグルーは、トリブロックのゴム成分かスチレン成分かのいずれかに結合する場合があり、この結合は、ゲル材料それ自体よりも強固である場合が多い。
【0067】
別の観点では、プラスチックをベース420内で溶解させ、ポリスチレンをゲル中で溶解させるのに溶剤が用いられる。溶剤溶液は、スプレーか浸液かのいずれかの形態でゲル及びベース420に塗布される。実際には、溶液は、ベースのプラスチック及びゲル中のポリスチレンを溶解させ、それにより化学結合がこれら2つの間に生じるようにすることができ、かかる化学結合は、溶剤が蒸発する際に残る。
【0068】
ポリエチレンを鉱油中に溶解させ、次にゲルに塗布するのが良い。鉱油は、蒸発しないが、時間の経過につれてゲル中に吸収され、そして有益な性質を持つ場合のあるポリエチレン層をゲルに与える。
【0069】
一観点では、ゲルは、ベース420を収容した金型内に流し込まれる。ゲルパッド530とベース420の接着は、ベース中にKRATONポリマー又はこれに類似した材料を用いることにより達成できる。ゲル中のポリスチレンは、酸化ポリフェニレン(PPO)、ポリスチレン等との接着を達成するものとして認められている。
【0070】
注型プロセス中、ゲルパッド530及びベース420を約130℃を超える温度まで加熱し、そして数時間、例えば約3時間〜4時間その温度状態に保つ。用いられる温度は、ベース420を変形させるほどではない。
【0071】
一観点では、ベース420は、ポリマー、例えばポリエチレン(PE)から成る。一観点では、ポリマーは、低密度ポリエチレン(LDPE)若しくは高密度ポリエチレン(HDPE)又は超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)である。一観点では、ベースは、ポリマー、例えばポリカーボネートで作られても良く、かかるベースは、射出成形法を含む方法によって製作できる。ゲルは、鉱油を含む。PEは、鉱油よりも高い分子量を有する。PEは、高温で鉱油によって溶解する。したがって、PE及びゲル中の鉱油が両方とも約130℃を超える温度まで加熱されてかかる温度状態に保持されているときにかかるPEと鉱油が互いに混ざり合うと、PEとゲルとの間に結合部が生じる。
【0072】
一観点では、ベース420は、ポリカーボネートで作られる。ベースのポリカーボネートは、130℃ではゲルと結合部を形成しない。しかしながら、注型中、温度を数分間約150℃まで上昇させることにより、ゲルパッド530とベースとの間に結合が起こる。したがって、ゲル及びベースをゲルのポリスチレンとポリカーボネートの両方が同時にこれらの融点を超える温度まで加熱することにより、ゲルパッド530とベース420との間に結合部が生じることができる。変形例として、ゲルとベースをポリカーボネートベース420のガラス転移温度に近い温度又はかかるガラス転移温度に加熱してゲルパッド530とベースとの間に結合部を生じさせても良い。
【0073】
一観点では、ゲルパッド530をベース420と共に注型してボルスタ410を形成するには、ベースを注型用金型内に配置する。金型は、アルミニウム、銅、真鍮又は良好な熱放散特性を備えた他の金型材料で作られるのが良い。しかしながら、当業者には認識されているように、低い熱消散特性を備えた他の金型材料は合格レベルの部品を生じさせ、これらは、本発明の範囲内に含まれるものとして想定されている。
【0074】
ベース420を収容した金型にスラリーを充填する。金型内のボイド又は空所をスラリーで充填しやすいようにするため、スラリーを例えば約52℃(125°F)まで予熱するのが良い。スラリーをMGTよりも低い温度に予熱することにより、スラリーの粘度が減少し、スラリーは、容易に流動することができる。上述したように、スラリーは、真空中で脱気されているのが良い。金型の充填後、スラリーを金型内で再び脱気して金型の充填中に導入されている場合のある空気を除去すると共に金型内のボイド内へのスラリーの流動を容易にするのが良い。ベース420及びスラリーを収容した金型に例えばオーブン内で熱を加え、ついには、スラリーが約150℃の温度を達成するようにする。上述したように、スラリーは、約120℃でゲルになるが、約150℃では、ゲルは、ポリカーボネートベース420に結合可能である。ベース420を製作するために用いられる材料に応じて、結合は、約150℃以外の温度状態で行われても良い。ベース420が120℃よりも低い融点をもつ材料で作られる場合、ゲルパッド530を別個に成形し、次にベース420に結合するのが良い。
【0075】
ゲルの温度がいったん約150℃に達すると、ボルスタ410を例えば空冷、冷水浸漬又は当該技術分野において周知である他の冷却手段により冷却するのが良い。150℃では、ゲルは、軟らかく、ゲルが冷却中に変形した場合、変形が生じた状態でゲルは固まる。ゲルパッド530を変形させる恐れを減少させるため、ボルスタ410を金型内で冷却するのが良い。冷却時間は、金型の寸法形状、ゲルの量、冷却媒体の温度及び量、冷却媒体の特性及び金型材料を含む種々のパラメータに応じて様々である場合がある。冷却を空気で行うにせよ水で行うにせよ、いずれにせよ、ゲルの最終的な特性は、実質的に同一である。ボルスタ410は、代表的には、ほぼ周囲室温まで冷却されるが、これよりも低い温度に冷却されても良い。ボルスタ410をゲルの硬化後いつでも金型から取り出すことができる。
【0076】
金型から取り出されると、ゲルは、代表的には、粘着性の表面を有する。ゲルパッド530を粉末、例えばコーンスターチで被覆し、硬化ゲルの粘着性を実質的に減少させ又はなくすのが良い。
【0077】
上述したように、別の観点では、ゲルパッド530は、ベース420とは別個に成形され、次にベースに結合されるのが良い。一観点では、ゲルパッド530は、スラグの状態に成形されるのが良い。ゲル530がベース420とは別個に成形されているので、スラリーは、これが約120℃に達するまで加熱される必要があるだけであり、それによりスラリーからゲルへの変換が完了し、ゲルは、実質的に透明な状態になる。次に、ゲルパッド530をベース420上に配置するのが良い。ゲルパッド530及びベース420をゲルのポリスチレン及びベース420のポリマーがゲルパッド530とベースとの間に結合部を形成するのに十分な温度まで加熱する。ゲルパッド530をベース420とは別個に成形すると共にゲルパッドを後の時点でベースに熱接着することは、ベースがMGTよりも低い融点をもつ材料で作られている場合に特に有用である。かかる状況では、ゲルパッド530を先ず最初に成形し、そしてベースを溶融させないでベース420に熱接着するのが良い。
【0078】
バルーントロカール200を用いるのが良い手術手技中、外科医は、「ハッサン」又は「カットダウン」法を用いることにより腹壁50を介して腹腔52に接近することができる。しかしながら、ハッサン又は切断法の使用により、切開創を通って配置されるトロカールよりも大きな欠損部が後に残る場合が多い。したがって、トロカールを挿入した後に切開創を密封する手段を提供することが望ましく、その目的は、患者の腹腔にガス注入することにある。バルーントロカール200は、かかるシールとなる。
【0079】
図17を参照すると、体腔52、例えば腹腔の入口を得るために切開創が腹壁50にいったん作られると、バルーントロカール200の遠位端部を切開創中に挿入し、ついには、カニューレ組立体210の遠位部分のところのバルーン400が体腔内に位置するようにする。注射器540をポート380内に挿入するのが良く、そして注射器を用いてガス又は流体をチャンバ408内に注入してバルーン400をインフレートさせるのが良い。バルーン400を体壁50の内面に密着させるため、バルーントロカール200を近位側に引っ張りながらボルスタ410をカニューレに沿って遠位側に前進させるのが良く、ついには、インフレート状態のバルーンが体壁50の内面に押し付けられると共にゲルパッド530が体壁の外面に押し付けられるようにする。レバー500を回してクランプ力をクランプ機構体415から外側スリーブ300に加えてカニューレ組立体210上におけるボルスタの位置を維持し、それによりバルーン400を体壁50の内面に押し付けた状態を保つと共にゲルパッド530を体壁の外面に押し付けた状態を保つ。切開創を密封した状態で、体腔52、例えば腹腔にCO2又はこれに類似したガスを注入するのが良い。体腔52からのバルーントロカール200の取り出しのためにバルーン400をデフレートさせるため、ポート380内のプランジャ384(
図18参照)を押し下げてガス又は流体をバルーンから放出するのが良い。注射器540を用いてポート380内のプランジャ384を押し下げると共に注射器を用いてガス又は流体をチャンバ408から引き出し、それによりバルーン400をデフレートさせるのが良い。
【0080】
図29を参照すると、外側スリーブ300の内面330は、実質的に外側スリーブの遠位部分312の近位端から外側スリーブの遠位端306まで遠位側に外側スリーブの長さに沿って延びる複数のチャネル332を有するのが良い。チャネル332は、カニューレ250の外面について説明したチャネル268とほぼ同じである。外側スリーブ300の内面330の複数のチャネル332は、これを通るガス又は流体の流れを容易にするようになっている。一観点では、外側スリーブ300の内面330の複数のチャネル332は、外側スリーブの長手方向軸線320に実質的に平行な複数の実質的に長手方向の溝334を有するのが良い。複数のチャネル332がスリーブ300の内面330に設けられている状態で、スリーブ300とカニューレとの間におけるガス又は流体の流れを一段と増大させるようカニューレの外面に設けられた複数のチャネル268を有するカニューレ250か実質的に滑らかな外面をもつカニューレかのいずれにもスリーブ300を用いることができる。
【0081】
図30〜
図41には、新固定方式のバルーントロカールの種々の実施形態が示されている。
図30〜
図33は、バルーントロカール保持機構体と一体のカニューレ組立体を備えた新固定方式のバルーントロカールの或る特定の実施形態に関する。
図34〜
図41は、トロカールカニューレに選択的に係合可能な保持機構体を備えた新固定方式のバルーントロカールの或る特定の実施形態に関する。
【0082】
引き続き
図30〜
図41を参照すると、図示の実施形態のトロカールは、入口経路を確立し又は内視鏡器具のための組織平面及び/又は潜在的な空間を通る接近を可能にする一般的、腹部、婦人科及び胸部低侵襲手術手技に使用できる。幾つかの実施形態では、トロカールは、カニューレ組立体600,600′に取り外し可能に結合されたトロカール弁ハウジングを有するのが良い。弁ハウジングは、一観点では、注入ガスを腹腔内に供給するための入口を有する。図示の実施形態では、弁ハウジングは、器具シール及びゼロシールを包囲し、弁ハウジングを通ってカニューレのルーメン内に至る器具チャネル経路を密封する。或る特定のトロカール組立体が本明細書において説明すると共に図示された保持機構体と関連して示されているが、本明細書において説明する保持機構体の観点のうちの幾つか又は全てを他のトロカール組立体と関連して使用できることが想定されている。
【0083】
カニューレ組立体600,600′は、カニューレ610,610′と一体化された(
図30〜
図33)又は取り外し可能に取り付けられた(
図34〜
図41)保持機構体620,620′を更に有している。保持機構体620,620′は、近位端及び遠位端を備えている。保持機構体620,620′は、2つのインフレート可能なバルーン、即ち、近位端の近くに設けられた第1のインフレート可能なバルーン624,624′及び近位端と遠位端との間に設けられた第2のインフレート可能なバルーン622,622′を有している。第1及び第2のインフレート可能なバルーン624,624′,622,622′は、患者(
図36)の体壁50とインターフェイスするよう構成されたカニューレ610,610′の外面の中間区分626,626′によって互いに間隔を置いて配置されるのが良い。
【0084】
図30〜
図33を参照すると、一観点において、保持機構体620は、トロカールカニューレ610と一体であり又は違ったやり方でこれに取り付けられている。例えば、保持機構体620の近位端及び遠位端は、トロカールカニューレにくっつけられると共に/或いは固定部材、例えば巻き糸、ベルト、バンド、クリップ又は他の適当な固定部材で固定されるのが良い。図示の実施形態では、巻き糸は、各端がバルーンを固定するよう巻かれる。図示のように、カニューレ610には、近位巻回用凹部又は溝642及び遠位巻回用凹部又は溝が形成されている。近位巻き糸640が保持機構体620の近位端部を包囲するのが良く、この近位巻き糸は、保持機構体620を近位溝642内に押し込んで保持機構体620をカニューレ610に取り付けた状態に維持する。遠位巻き糸644が保持機構体620の遠位端部を包囲するのが良く、この遠位巻き糸は、保持機構体620を遠位溝内に押し込んで保持機構体620をカニューレ610に取り付けた状態に維持する。バルーントロカールの他の実施形態に関して本明細書において説明する巻き糸固定方式の或る特定の観点及び利点は、
図30〜
図33の保持機構体620の巻き糸固定方式に同様に当てはまる。
【0085】
引き続き
図30〜
図33を参照すると、保持機構体620の近位端のところの入口630は、導管を介して2つのバルーン622,624と流体連通状態にある。幾つかの実施形態では、入口630内に設けられた逆止弁が、インフレーション流体源、例えば空気入り注射器からインフレーション流体を導入するポートとなる。他の実施形態では、流体源とインターフェイスを取るための他の弁又は他の形態のポートを用いるのが良い。幾つかの実施形態では、カニューレ610は、入口ドーム632を備えるのが良く、この入口ドームは、カニューレ610の外面と入口ドーム632との間に入口キャビティ634を形成する。有利には、入口キャビティ634は、入口630を通って流入するインフレーション流体が入口キャビティ634を通る際に受ける抵抗が比較的少ないように寸法決めされているのが良い。入口キャビティ634は、カニューレの外面に形成された1本又は2本以上のチャネル636又は溝に流体結合されるのが良い。図示のように、チャネル636は、流体が2つのバルーン622,624に流れるようにするための導管となるようカニューレの長手方向軸線に全体として平行に延びている。図示の実施形態では、インフレーション流体は、カニューレ610の外面と保持部材620の内面628との間でチャネル636を通って流れることができる。他の実施形態では、カニューレ610に形成されたチャネルが異なる向きに、例えば、カニューレの長手方向軸線に対して横方向に、曲線状に又は螺旋状に延びても良い。
【0086】
一観点では、保持機構体620の非バルーン部分、例えば保持機構体620の中間区分626及び第2のバルーン622の近くに位置する保持機構体620の区分は、インフレーション流体からの圧力に耐えて非バルーン部分の引き伸ばしを阻止するのを助けるよう強化され又は補強される。例えば、保持機構体620が単一の材料で形成される実施形態では、保持機構体620の非バルーン部分は、2つのバルーン622,624よりも厚いものであるのが良い。他の実施形態では、保持機構体620は、非バルーン部分について比較的インフレートさせることができない材料及び2つのバルーン622,624については比較的インフレートさせることができる材料で形成されるのが良い。かくして、インフレーション流体が保持機構体に供給されたときに、2つのバルーン622,624は、インフレート可能であり、これに対し、非バルーン部分は、実質的に非インフレート状態のままである。
【0087】
図34〜
図41を参照すると、或る特定の実施形態では、保持機構体620′は、カニューレ組立体600′を形成するようトロカールカニューレ610′に取り外し可能に取り付けられるようになった二重層形インフレート可能部材又はバルーンを有する。図示のように、入口ハウジング650′がインフレート可能部材の近位端に取り付けられている。幾つかの実施形態では、入口ハウジング650′は、環状部材に結合された入口630′を有する。環状部材は、カニューレ610′を挿通状態で受け入れるよう構成された中央開口部を有する。幾つかの実施形態では、入口630′は、インフレーション流体の供給、例えば、流体源、例えば注射器からの空気を受け入れる逆止弁を有する。他の実施形態では、流体源とインターフェイスを取るために他の弁又は他の形態のポートを用いることができる。
【0088】
引き続き
図34〜
図41を参照すると、保持機構体620′は、入口630′をインフレート可能な部材に流体結合する流体導管を有する。幾つかの実施形態では、入口ハウジング650′は、これに形成されていて、入口630′をインフレート可能部材に流体結合する1本又は2本以上の流体チャネル636′(
図37)を有するのが良い。
【0089】
引き続き
図34〜
図41を参照すると、インフレート可能部材は、内側層、外側層及び内側層と外側層との間に形成された流体チャンバを有するのが良い。幾つかの実施形態では、内側層は、全体として円筒形であり、カニューレ610′を受け入れるようになっているのが良い。外側層には、第1のインフレート可能なバルーン624′及び第2のインフレート可能なバルーン622′が形成されるのが良い。上述したように、流体チャンバは、入口ハウジング650′に設けられた1本又は2本以上の流体チャネル636′を介して入口630′に流体結合されるのが良い。
【0090】
保持機構体620′は、カニューレ610′上における保持機構体620′の位置を選択的に維持するよう構成されているのが良い。インフレーション流体が二重層形バルーンの層相互間に導入されるのが良く、その結果、内側層、即ち、カニューレの外面に当てて又はこれに隣接して配置されるべき層が注入された流体からの圧力によってカニューレに押し付け状態に固定されるようになる。一観点では、凹部、突出部、キャッチ又は別の適当なインターフェイス特徴部がカニューレ610′の外壁又は外面に設けられる。したがって、インフレーション流体が注入されたインフレート可能部材の内側層は、保持機構体620′をカニューレに一段と固定するインターフェイス特徴部に当接した形態を取る。一観点では、保持機構体620′をカニューレ610′に対して位置決めし、保持機構体620′とカニューレ610′との間にシールをもたらすと共に/或いは保持機構体620′をカニューレ610′の外面に固定するキーとして働くようインフレート可能部材の内側層に形成された戻り止め、突出部、微小内側バルーン652′又は別の適当なカニューレ保持特徴部が設けられるのが良い。一観点では、突出部又は内側バルーン652′は、インフレート可能な部材にインフレーション流体が注入されたときにカニューレ610′の外面に設けられた対応のインターフェイス特徴部、例えば空間又は凹みを充填して保持機構体620′をカニューレ610′に対して密封すると共に/或いは固定するような寸法形状のものである。
図40及び
図41は、保持機構体620′の内側バルーン652′によるカニューレ610の保持状態を示している。
【0091】
或る特定の実施形態では、患者の腹壁厚さ及び解剖学的構造のばらつきを考慮に入れるために追加のバルーンを保持機構体に設けるのが良い。或る特定の実施形態では、バルーン622,622′,624,624′は、伸展可能又は非伸展可能であって良く或いはこれらの両方の組み合わせであって良い。或る特定の実施形態では、バルーン622,622′,624,624′は、環状であると共にトロイド形又はドーナツ形(
図35及び
図36)であるのが良く、或いは、或る特定の他の実施形態では、円板状(
図38及び
図39)であるのが良い。他の実施形態では、バルーンは、他の幾何学的形状を有することができる。或る特定の実施形態では、近位バルーン622,622′は、遠位バルーン624,624′と比較して、サイズが異なっていても良く、例えば、インフレート状態の体積が小さくても良く且つ/或いは形状が異なっていても良く、例えばより扁平であって良い。他の実施形態では、バルーン622,622′,624,624′は、実質的に同一の寸法形状のものであるのが良い。バルーン622,622′,624,624′の寸法及び/又は配置場所は、患者の体に対応するようカニューレ組立体600,600′の所望の保持特性を変化させるよう図示の実施形態の寸法及び/又は配置場所とは異なっていても良い。例えば、或る特定の実施形態では、遠位バルーン624,624′及び/又は近位又は中間バルーン622,622′は、腹壁のところどころの中でインフレートされるよう位置決めされるのが良い。或る特定の実施形態では、バルーン622,622′,624,624′は、シリコーン、ポリイソプレン、ウレタン、ポリオレフィン及びマイラ(Mylar)又はこれらのうちの2つ以上の組み合わせで構成されるのが良い。幾つかの実施形態では、バルーン622,622′,624,624′は、バルーンの或る特定の実施形態に関して上述したようにこの中に配置されたグリース又は別の密封要素の層を有するのが良い。幾つかの実施形態では、第1のバルーン624,624′は、第2のバルーン622,622′とは異なる材料から成るのが良い。
【0092】
或る特定の実施形態では、保持機構体620,620′を有するカニューレ組立体、例えば腹腔鏡下手技に関して上述した種々の実施形態のうちの1つを固定する方法が提供される。外科医は、腹腔又は胸腔への入口を得るために切開創を作るのが良い。例えば
図34〜
図41の取り外し可能に取り付け可能な保持機構体を有する実施形態では、外科医は、保持機構体620′をカニューレ610′回りに摺動可能に前進させてカニューレ組立体600′を形成することができる。次に、外科医は、切開創を通ってカニューレ組立体600,600′を挿入するのが良く、ついには、カニューレの遠位先端部に取り付けられているバルーン624,624′が腔内に位置すると共にカニューレの中間部のところ又はその近くに位置する第2のバルーン622,622′が腹膜内層の外部に位置するようにする。この時点で、バルーンをインフレートさせる。或る特定の実施形態では、外科医は、カニューレ組立体600,600′に取り付けられた入口630,630′に取り外し可能に結合されている注射器を用いてインフレーション流体、例えば空気をバルーン622,622′,624,624′内に供給するのが良い。バルーン622,622′,624,624′のこのインフレーションにより、カニューレ組立体600,600′は腹壁又は胸壁に固定され、手術及び/又は器具の取り外し中におけるカニューレ組立体600,600′の変位を減少させる。
【0093】
保持機構体620,620′の遠位端部のところに設けられているインフレート状態のバルーン624,624′は、器具をカニューレ610,610′から取り外したときにカニューレ組立体600,600′が引き出される恐れを減少させる。インフレート状態の第2のバルーン622,622′は、カニューレ組立体600,600′が手術中に患者の体内に更に押し込まれる恐れを減少させる。これら2種類のバルーン622,622′,624,624′は協働して、手術中におけるカニューレ組立体600,600′の離脱動作の恐れを減少させる。或る特定の実施形態では、バルーンをデフレートさせるため、注射器を逆止弁中に押し込む。バルーン内部のインフレーション圧力は、この場合、注射器のピストンを押し戻すことができる。追加のユーザによる操作により、例えば、ピストンを引き戻すことにより、バルーン622,622′,624,624′を完全にデフレートさせることができる。
【0094】
本発明を或る特定の観点について説明したが、当業者には多くの追加の改造例及び変形例が明らかであろう。したがって、本発明は、本発明の範囲及び精神から逸脱することなく、寸法、形状及び材料の種々の変更を含む、具体的に説明した形態以外の形態で実施できることは理解されるべきである。かくして、本発明の実施形態は、あらゆる点において例示として解釈されるべきであり、本発明を限定するものと解釈されてはならない。