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特許5999900HR−Siシリコン技術におけるフィルタリング回路
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5999900
(24)【登録日】2016年9月9日
(45)【発行日】2016年9月28日
(54)【発明の名称】HR−Siシリコン技術におけるフィルタリング回路
(51)【国際特許分類】
   H03H 7/075 20060101AFI20160915BHJP
【FI】
   H03H7/075 Z
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-549646(P2011-549646)
(86)(22)【出願日】2010年2月12日
(65)【公表番号】特表2012-517758(P2012-517758A)
(43)【公表日】2012年8月2日
(86)【国際出願番号】FR2010050244
(87)【国際公開番号】WO2010092308
(87)【国際公開日】20100819
【審査請求日】2013年2月1日
【審判番号】不服2015-18926(P2015-18926/J1)
【審判請求日】2015年10月21日
(31)【優先権主張番号】0950904
(32)【優先日】2009年2月12日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】501263810
【氏名又は名称】トムソン ライセンシング
【氏名又は名称原語表記】Thomson Licensing
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】ロ,イン,トン,ドミニク
(72)【発明者】
【氏名】ラバビディ,ラーファット
(72)【発明者】
【氏名】バロン,フランソワ
(72)【発明者】
【氏名】ルジール,アリ
(72)【発明者】
【氏名】ジェリー,バーナード
(72)【発明者】
【氏名】ベアラウド,ブルーノ
(72)【発明者】
【氏名】リンティグナット,ジュリアン
【合議体】
【審判長】 佐藤 智康
【審判官】 古市 徹
【審判官】 山本 章裕
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/065009号(WO,A1)
【文献】 特開平11−176989号公報(JP,A)
【文献】 特表2006−527499号公報(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H1/00-3/00,H03H5/00-7/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのカットオフ周波数によって定義されるHR−Siシリコン技術におけるフィルタリング回路であって、
フィルタ処理される信号を受信する入力端子と、
フィルタ処理された信号を供給する出力端子と、
前記入力端子と前記出力端子との間にある複数の結合インダクタの直列接続と、
第1の接地点へ接続される第1の端部及び第2の接地点へ接続される第2の端部を有する第1の接地ラインと、
第3の接地点へ接続される第1の端部を有する第3の接地ラインと、該第3の接地ラインから分断された、第4の接地点へ接続される第1の端部を有する第4の接地ラインとを有する第2の接地ラインと
を有し、
前記第1の接地ラインは、1以上のL/C共振素子によって前記複数の結合インダクタの直列接続の間の1以上の第1の接続点へ接続され、前記第2の接地ラインは、前記第3の接地ラインの第2の端部及び前記第4の接地ラインの第2の端部の夫々を1以上の更なるL/C共振素子によって前記複数の結合インダクタの直列接続の間の1以上の第2の接続点へ接続され、
前記第1の接地点と前記第2の接地点との間において直列に、前記第1の接続点へ接続される前記第1の接地ライン上の点によって分けられる区間ごとに誘導素子が形成され、前記第3の接地点と前記第3の接地ラインの第2の端部との間において前記第3の接地ライン上に誘導素子が形成され、前記第4の接地点と前記第4の接地ラインの第2の端部との間において前記第4の接地ライン上に誘導素子が形成され、
前記第1の接地点と前記第1の接続点へ接続される前記第1の接地ライン上の点との間、及び前記第2の接地点と前記第1の接続点へ接続される前記第1の接地ライン上の点との間の夫々の区間に形成される誘導素子と直列に、該誘導素子とともに、前記フィルタリング回路によって拒絶されるべきバンドの可能な限り近くにある周波数で共振する容量素子が挿入され、前記第3の接地ラインの第2の端部に接続されるL/C共振素子の容量及び前記第4の接地ラインの第2の端部に接続されるL/C共振素子の容量は、前記第3の接地ライン上及び前記第4の接地ライン上に形成される夫々の誘導素子とともに、拒絶されるべきバンドの可能な限り近くにある周波数で共振するよう選択される、フィルタリング回路。
【請求項2】
前記容量素子は、前記第1の接地点、前記第2の接地点、前記第3の接地点及び前記第4の接地点の夫々に接続される容量である、
請求項1に記載のフィルタリング回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、HR−Si(高抵抗シリコン(High Resistance Silicon))技術等の技術におけるフィルタリング回路の実装に関する。それは、特に、例えば、携帯電話機のためのGSM及びUMTS規格並びにTV受信のためのDVB−HT規格に適用するマルチスタンダード端末に関連する。
【背景技術】
【0002】
そのようなフィルタリング回路の一例は、11個の極と5個の伝達零点とを有する疑似楕円型の基本ローパスフィルタである。かかる回路は、バンド[462〜862]MHzに位置しているDVB−T信号が通過すること可能にするとともに、バンド[890〜915]MHzに分布するGSM伝送バンドを拒絶することができる。
【0003】
このようなフィルタリング回路が図1に示されている。回路は対称である。結果として、対称に位置する素子は同じ値を有する。回路は:
・ 入力ポートP1と出力ポートP2との間に直列に接続されている値Ls1、Ls2、Ls3の結合インダクタンスL1〜L6と、
・ 結合インダクタンスL1〜L6の接続点A1〜A5と接地との間に並列接続されている値Lr1/Cr1、Lr2/Cr2、Lr3/Cr3のL/C直列共振素子と
を有する。インダクタンスL1及びL2の接続点A1と接地との間には、第1の共振素子Lr1/Cr1が接続されている。点A2と接地との間には、第2の共振素子Lr2/Cr2が接続されており、点A3と接地との間には、第3の共振素子Lr3/Cr3が接続されている。対称的に、点A4と接地との間には、共振素子Lr2/Cr2が接続されており、点A5と接地との間には、共振素子Lr1/Cr1が接続されている。これらのL/C直列素子は、フィルタの選択性を高めるようカットオフ周波数の直ぐ隣において伝達零点を作り出す。
【0004】
しかし、典型的な実施形態に従って、フィルタを構成するよう、ディスクリートLC部品が使用され、FR−4型の安価な基板上に載置され、この基板の下側は接地面の役割を果たし、それらの部品の接地は金属ホールを用いてなされる。
【0005】
RF素子の接地は決して完全ではなく、このような不完全さは寄生インダクタンスによるファーストオーダー(first order)にモデル化され得ることが当業者に知られている。金属ホールを介した接地に関連して、このインダクタンスの値は、特に、ホールの直径及びその深さに依存する。このような接地寄生インダクタンスは機能の性能を著しく劣化させることがあり、その場合に、それらを考慮して、設計を再最適化することによってそれらを補償することが必要である。従って、図1のフィルタリング回路の場合においては、接地寄生インダクタンスの最小化は、金属ホールを介して回路の下側接地面にL/C直列共振素子を直接接続することで得られる。
【0006】
HR−Si技術は、今日、自己インダクタンス等の受動機能の組み込みのために幅広く用いられており、容量及び抵抗は、費用の段階で顕著な性能を有して、例えばフィルタ、バラン、ミキサ及びインピーダンス変圧器等の設計されるべき完全な機能を可能にする。また、それは、SIP(システム・イン・パッケージ(System-In-Package))として知られる技術においてシステムの統合を可能にする。その場合に、HR−Si技術は、RLC素子を組み込む働きのみならず、システムを構成する様々な集積回路をサポートしてインターフェースをとる働きもする。
【0007】
そのような性能は、通常1000Ω・cmの高抵抗シリコン(HR−Si)の使用により可能にされる。このような構成は、下側に相当する一方の側において金属化されている、通常厚さが300μmあり且つ誘電率が約11.7である基板HR−Siの第1層を有する。上側に相当する他方の側の上には、金属導体の2つの層が重ねられている。第1の金属層と第2の上位層との間には、例えばSiOに基づく絶縁層が配置されている。この構成は、第2の上位層においてMIM(金属−絶縁−金属(Metal-Isolation-Metal))容量及びコイルインダクタンスが実装されることを可能にする。2つの層は金属交差により接続されている。第2の金属層の上側には、不動態化層(例えば、有機ポリマーBCB(ベンゾシクロブテン)の層)が配置されている。
【0008】
しかし、現在の技術では、金属交差が第1の金属層と接地面を構成するHRシリコンの下側との間に生成されることは可能でない。従って、LC素子が直接に、すなわち、短絡経路によって、接地へ接続されることはできない。
【0009】
この制限は、寄生素子が何ら解決手段なしにフィルタに対する理想的な応答を完全に悪化させ変性させうるために、複雑な機能、例えば、接地されるべき複数の素子を含む高次フィルタの場合に、設計上の問題をもたらす。
【0010】
図2は、上述される先行技術に従う、HR−Si技術における高抵抗シリコンでの受動フィルタの実施形態の断面図を示し、図3は、そのような低域通過フィルタの回路図を示す。この標準的なフィルタは、入力ポートP1と出力ポートP2との間に、容量Cr1、Cr2、Cr3及びインダクタンスLr1、Lr2、Lr3によって表され且つ値Ls1、Ls2、Ls3の結合インダクタンスと寄生接地ラインM1、M2との間に並列に挿入されているL/C直列部品を有する。夫々接地点Gr1、Gr2及びGr3、Gr4の間にある寄生接地ラインM1、M2は、インダクタンスLm1、Lm2、Lm3、Lm4によってモデル化されている。
【0011】
従って、図4に表されている当該フィルタからの伝達における応答は、カットオフ周波数のシフトのみならず、伝達零点も示す。カットオフ周波数を越えた減衰は、他方では、理想的なフィルタと比べて大幅に低い。そのような低下は、それらの接地寄生インダクタンスの存在に起因する。
【0012】
測定の場合には、テスト点が使用される。それらの点は、図2に示される回路上で、入力又は出力ライン上のセントラルコア及び接地ラインの端部における関連する接地点とされる。
【0013】
このようにして、共振素子Lr1/Cr1、Lr2/Cr2及び特にLr3/Cr3は、もはや最短の接地点へと調整され得ない。従って、図2に示される、無視できない長さの、それらの寄生接地ラインLm1、Lm2、Lm3、Lm4は、フィルタの応答を大いに変更し、補償するのが困難である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】M.L.GRIMA、「Conception d’un recepteur radiofrequence en technologie integree pour les systemes de radioastronomie du futur」(将来の電波天文システムのための集積技術における無線周波数受信器の設計)、2007年12月、オルレアン大学(仏)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、鉛直方向の接地交差が発生されないHR−Si技術又はその他技術において設計される場合に上記のような構成要素の接地の問題に対処する。
【0016】
先行技術において知られている様々な解決法が、上記問題を解消すべく提案されている。一般的な解決法は、伝達基板の接地面上にHR−Si技術における回路を載置し、複数の点において寄生接地ラインをこの面に接続することである。この解決法は、図5に表される回路によって例示される。図5は、接地寄生インダクタンスの影響が制限されることを可能にする接地面へ接地ラインを接続する、接地配線として知られる複数の配線を示す。HR−Si技術における回路は、フリップチップモードにおいて実装されてもよい。その場合に、回路は、伝達回路上に戻され、ボールにより回路に接続される。フィルタの的確な接地を確かにするよう、多数のボールがここでも必要とされる。
【0017】
先行技術で知られる他の解決法は、差動モードにおいてフィルタを設計することである。この解決法は、接地を基準としたフィルタを差動モードにおける回路に変形することから成る。差動フィルタは、この場合に、全体的な接地ラインより成る対称軸に従う非差動フィルタの複製から得られる。その一例は、M.L.GRIMA、「Conception d’un recepteur radiofrequence en technologie integree pour les systemes de radioastronomie du futur」(将来の電波天文システムのための集積技術における無線周波数受信器の設計)、2007年12月、オルレアン大学(仏)で与えられている。この解決法は、構成要素、ひいてはシリコン表面が2倍になるという大きな欠点を提示することは、明らかである。更に、それは、差動モードからの信号を非差動モードに変換するために変圧器の使用を必要とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、上記の問題に対する他の解決法を提案する。
【0019】
それは、少なくとも1つのカットオフ周波数によって定義されるHR−Siシリコン技術におけるフィルタリング回路であって、フィルタ処理される信号を受信する入力端子と、フィルタ処理された信号を供給する出力端子と、端部が第1の接地点及び第2の接地点に接続されている第1の接地ラインと、端部が第3の接地点及び第4の接地点に接続されている第2の接地ラインと、前記入力端子と前記出力端子との間に直列に接続されている複数の結合インダクタンスとを有するフィルタリング回路より成る。並列に接続された複数のL/C共振素子は、結合インダクタの介在を介して、一方の端部を介して前記第1の接地ライン及び前記第2の接地ラインの一方へ結合され、他方の端部を介して前記第1の接地ラインと前記第2の接地ラインとの間に接続されて、伝達零点を生じさせる。
【0020】
前記第1の接地ライン及び前記第2の接地ラインの夫々は誘導素子を形成し、当該回路は、前記誘導素子の少なくとも一部と直列な容量素子を有し、該容量素子の値は、直列な前記誘導素子及び前記容量素子の共振周波数がバンド幅の外にある周波数に対応するように選択される。
【0021】
望ましくは、前記容量素子は前記第1の接地ライン及び前記第2の接地ラインに接続される容量である。
【0022】
本発明の変形例に従って、LC共振回路は、前記第1の接地ライン及び前記第2の接地ラインの一方又は他方に公平に接続可能であり、前記容量素子は、誘導素子を形成する接地ラインの値に適応する。
【0023】
望ましくは、フィルタリング回路は、HR−Si技術において製造される。
【0024】
本発明は、接地ラインの悪影響を無効にすることができる回路を提供するという利点を有し、結果として、理想的なフィルタの応答が保たれることを可能にする。本発明に従うフィルタ回路は接地点をほんの4つしか有さず、結果として、他の簡易化された機能への相互接続と、組み立て及び集積の費用の削減とを可能にする。接地ラインの配置が削減されると、他の機能の集積のためのHR−Si回路上の余地を解放することができる。本発明は、センサによるウェハー上のフィルタの直接的な試験と、フィルタの最終のサイズに対する性能の確認とを可能にする。本発明に従う回路の費用及びサイズは著しく低減される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】11個の極を備えた疑似楕円型のローパスフィルタを示す。
図2】HR−Si高抵抗シリコン技術におけるフィルタの実施形態の上面図を示す。
図3】接地寄生インダクタンスを含むローパスフィルタ回路を示す。
図4】接地寄生インダクタンスを有するフィルタの伝達における応答を、理想的なフィルタの応答と比較して示す。
図5】接地配線を含むHR−Si高抵抗シリコン技術におけるフィルタの実施形態の上面図を示す。
図6】本発明に従うローパスフィルタの回路を示す。
図7図6のフィルタの伝達dB(S(3,4))及び反射dB(S(4,4))における応答を、理想的なフィルタの伝達における応答と比較して示す。
図8】HR−Si高抵抗シリコンにおける本発明に従うフィルタ実施形態の上面図を示す。
図9】接地配線を含むHR−Si高抵抗シリコン技術における本発明に従うフィルタの実施形態の上面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
上記の特徴及び利点並びにその他は、添付の図面を参照して以下の記載を読むことで、より明らかになるであろう。
【0027】
記載を簡単にするために、同じ参照符号は、同じ機能を果たす要素を示すよう以降の図面においても使用される。
【0028】
このように、本発明の考えは、接地ラインとともに共振に関与する容量を導入することによって接地ラインの悪影響を補償して、電気的な視点からそれらを透明化することである。同じ目的のために、シリコン回路の抵抗を接地する他の方法も提案される。提案される新しいフィルタリング回路、及び関連するシリコン回路は、以下で詳細に記載される。シミュレーションされた性能は、同じように、当該コンセプトの証明として示される。
【0029】
図5は、本発明に従う、次数11のローパスフィルタ回路を示す。それは、上述されたローパスフィルタに関連するが、本発明の原理は、シリコン回路上に設計される全ての他のフィルタ又は受動回路に当てはまる。
【0030】
このフィルタは対称であり、対称に位置する素子は同じ値を有する。フィルタは、図1に関して記載されたフィルタと同じく、入力ポートP1と出力ポートP2との間に直列に接続されている結合インダクタンスL1〜L6と、結合インダクタンスの接続点A1〜A5と接地ラインM1及びM2との間に適用されるLC直列共振素子とを有する。しかし、図3の回路に関して、共振素子Lr3/Cr3は目下同じ接地ラインと2つの共振素子Lr2/Cr2とに接続されることが知られている。この配置は、接地寄生インダクタンスの値を小さくすることができる。
【0031】
第1の接地ラインM1は、接地配線の介在によって接地面に接続される2つの接地点Gr1、Gr2に接続されている。同様に、第2の接地ラインM2は、接地配線の介在によって接地面に接続される2つの接地点Gr3、Gr4に接続されている。接地ライン区間は、インダクタンスLm1、Lm2、Lm3によって表される寄生誘導素子を形成する。
【0032】
本発明に従って、容量Cm1は、フィルタの全ての素子を接地に戻す寄生インダクタンスLm2の夫々と直列に挿入された。この容量の値は、拒絶されるべきGSMバンドの可能な限り近くにある周波数でLm2と共振するように、計算される。例えば、例として、以下の誘導及び容量素子の値:
結合インダクタンス:Ls1=2.7nH、Ls2=10nH、Ls3=9.1nH
L/C直列素子:Lr1=12nH、Lr2=7.5nH、Lr3=7.5nH、Cr’1=2.1pF、Cr2=3.4pF、Cr3=3.5pF
によれば、寄生インダクタンスLm2が1nHであるとして、Cm1は、1.01GHzで共振を有するように25pFで固定される。従って、フィルタの選択にとって重要である当該周波数では、Cm1と直列なLm2の等価インピーダンスは零であり、入力/出力接地は共振器Lr2/Cr2の端部で返される。ラインLm2の悪影響はこのようにして無効にされる。
【0033】
本発明の変形例に従って、容量は、フィルタの素子を接地に戻す寄生インダクタンスLm1の夫々と直列に挿入された。この容量の値は、第1の共振器の容量Cr1の値と一体化され、第1の素子の容量は、この等価なものCr’1によって置換される。例えば、寄生インダクタンスLm1が0.3nHであるとすると、2.1pFのCr’1の値が許容可能である。
【0034】
有利に、第3の共振器Lr3/Cr3は第2の共振器Lr2/Cr2と同じ接地ラインM2に接続されることが分かる。この性質は、接地寄生インダクタンスの値Lm3が容量Cm1によって補償されることも可能にする。例えば、回路は、0.5nHの等価な寄生インダクタンスLm3との1.01GHzでの共振を有するよう平衡状態とされる。
【0035】
次いで、本発明は、寄生インダクタンスLm2と直列に、対応する接地点に接続される容量Cm1を導入することから成り、これにより、それらの素子の組は接地に戻される。
【0036】
本発明の変形例は、2つのインダクタンスLm3の値を考慮することによって、Lr3/Cr3の値を再最適化することから成り、それにより、共振器は最初に望まれる周波数で共振する。
【0037】
図7に示されるように、理想的な解決法の応答と比較される伝達における応答は、新しい回路が寄生接地ラインの影響を無効にすることをうまく成し遂げることを示すことが分かる。反射における応答は、更に、フィルタが適切に適応されたままであることを示す。
【0038】
図8及び図9は、HR−Siシリコンにおける回路の可能な設計を示す。図8において、図2と比較して、容量Cm1及びCm2は、値がLm2である接地寄生インダクタンスの端部に加えられ、接地点G1、Gr2と接続されている。接地寄生インダクタンスLm1と直列に等価容量Cr’1が接続されている。値がLm3である接地寄生インダクタンスは、第3の共振器の容量Cr3と、第2の共振器を夫々形成する2つの容量Cr2の夫々とに接続されて示されている。この回路の他の設計が考えられてよく、該回路に関し、接地寄生インダクタンスが容量素子によって補償される。図8から分かるように、フィルタは、図4によって表される従来の解決法によって必要とされる数の多さに代えて、接地配線を介して4つの接地点Gr1、Gr2、Gr3及びGr4から接地面への接続(すなわち、入力アクセスで2つ及び出力アクセスで2つ)しか必要としない。
【0039】
本発明の第2の実施形態は図10及び図11に示されている。図10は、入力ポートTerm1と出力ポートTerm2との間に直列に接続されている結合素子Ls1、Cs1、Ls2、Cs2を有する次数7のローパスフィルタを示す。値Lp1/Cp1、Lp2/Lp2に並列な共振素子は、接地ラインの結合素子の接続点の間に並列に接続されている。上述されたように、接地ラインは、インダクタンスLm1、Lm2、Lm3によって表される寄生誘導素子を形成する。本発明に従って、容量Cm1は、誘導素子Lm1と直列に接続され(Cm2はLm2に直列に接続される。)、素子の組を接地に戻す。容量Cm1及びCm2の値は、夫々の容量が、拒絶されるべき周波数に最も近い周波数で、その容量と接続されている接地直列インダクタンスと共振するように計算される。ここでLm1及びLm2と比較して低い値は、フィルタの応答に対してほとんど現れない。
【0040】
図10のフィルタにより得られる伝達及び反射における応答は、図11に表されている。伝達における応答は、明らかに、2つの容量Cm1及びCm2の付加によりバンド幅の一部分及び他の部分において生じる伝達零点を示す。ここで、その場合に、容量の付加による接地ラインの悪影響の補償が実証される。このことは、非常に低い挿入損失がフィルタのバンド幅において保たれることを可能にするのみならず、増大された周波数選択性が得られることも可能にする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11