(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記貯槽で生じさせた水蒸気を凝縮して凝集水を生成する凝縮器と、該凝集水を濃縮して濃縮水を生成するする濃縮器と、該濃縮水を前記貯槽に還流させる還流配管と、を更に備えたことを特徴とする請求項1または2記載の放射性廃液処理装置。
前記貯槽で生じさせた水蒸気に含まれている水素を、触媒を介して酸素と反応させる反応手段を更に備えたことを特徴とする請求項1ないし3いずれか1項記載の放射性廃液処理装置。
前記蒸発工程によって得られた放射性廃液の濃縮物及び前記使用済み濾材に対して凝固材を添加し、固化体を得る凝固工程を更に備えたことを特徴とする請求項6記載の放射性廃液処理方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1に開示された放射性廃液の処理方法では、マイクロ波加熱により濃縮液を熱分解,溶融固化処理することが記載されているが、このような方法では、濃縮液を熱分解,溶融固化処理する際に外部から大きな熱エネルギーを加える必要があり、廃液量の増加に比例して廃液の加熱に要するコストも大きくなるという課題があった。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、簡易な構成で放射性廃液を濃縮することが可能であり、かつ、濃縮に掛かるコストを低減することが可能な放射性廃液処理装置および放射性廃液処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のいくつかの態様は、次のような放射性廃液処理装置を提供した。すなわち、本発明の放射性廃液処理装置は、原子力プラントから排出される放射性物質を含む放射性廃液を処理するための放射性廃液処理装置であって、前記放射性廃液を貯留する貯槽と、該貯槽内で前記放射性物質を均一に撹拌する撹拌手段と、前記
放射性物質の原子核崩壊によって生じる崩壊熱を利用して、前記放射性廃液の水分を水蒸気として蒸発させ、前記放射性廃液を減容する蒸発手段と、前記貯槽で生じさせた水蒸気を凝縮した凝集水に含まれる放射性物質を除去する濾過手段と、
前記濾過手段で使用された使用済み濾材を
前記貯槽に集約する使用済み濾材導入手段と、前記貯槽に凝固材を注入するための凝固材注入手段と、を更に備えたことを特徴とする。
【0007】
このような構成の放射性廃液処理装置によれば、貯槽内に貯留された放射性廃液に対して、放射性廃液の撹拌手段によって原子核崩壊により発生した熱を貯槽内の放射性廃液全体に効率良く伝熱することを促す。これにより、放射性廃液の濃縮のために放射性廃液を加熱して水蒸気を発生させる従来の放射性廃液処理装置と比較して、外部から熱エネルギーを加えるなど大きなエネルギーを必要とせず、より小さなエネルギーで放射性廃液の脱水を行うことが可能になる。よって、簡易な構成で放射性廃液を濃縮することが可能であり、かつ、濃縮に掛かるコストを低減することが可能となる。
【0009】
前記
撹拌手段は、前記貯槽内の前記放射性廃液に対して
撹拌用ガスを吹き込むガス噴射機構であることを特徴とする。
このような構成の放射性廃液処理装置によれば、放射性廃液にガスを吹き込むだけで、放射性廃液を
撹拌して放射性廃液を濃縮させるための崩壊熱の有効利用を促すことができる。
【0010】
前記貯槽で生じさせた水蒸気を凝縮して凝集水を生成する凝縮器と、該凝集水を濃縮して濃縮水を生成するする濃縮器と、該濃縮水を前記貯槽に還流させる還流配管と、を更に備えたことを特徴とする。
このような構成の放射性廃液処理装置によれば、濃縮器で生成された濃縮水を貯槽に還流して原子核崩壊に利用することで、より一層崩壊熱を効率的に発生させることができる。
【0011】
前記凝集水に含まれる放射性物質を除去する濾過手段
及び使用済み濾材導入手段を更に備えたことを特徴とする。
このような構成の放射性廃液処理装置によれば、放射性物質を除去した安全な放流水を得ることができる。
【0012】
前記貯槽で生じさせた水蒸気に含まれている水素を、触媒を介して酸素と反応させる反応手段を更に備えたことを特徴とする。
このような構成の放射性廃液処理装置によれば、水蒸気に含まれている水素から熱エネルギーを回収して利用することができる。
【0013】
前記反応手段で生じた反応熱を前記貯槽内の前記放射性廃液に伝播させる熱伝導手段を更に備えたことを特徴とする。
このような構成の放射性廃液処理装置によれば、水蒸気に含まれている水素から熱エネルギーを回収して放射性廃液の濃縮に用いることで、より一層効率的に放射性廃液の濃縮を行うことができる。
【0014】
前記貯槽に凝固材を注入する凝固材注入
手段を形成したことを特徴とする。
このような構成の放射性廃液処理装置によれば、濃縮後の放射性廃液の残留物から、容易に処分用の固化物を形成することができる。
【0015】
本発明の放射性廃液処理方法は、原子力プラントから排出される放射性物質を含む放射性廃液を処理するための放射性廃液処理方法であって、前記放射性廃液を貯留する貯槽内で、前記放射性物質の原子核崩壊から発生する熱を効率良く利用し、
前記原子核崩壊から発生する熱を利用して、前記放射性廃液の水分を水蒸気として蒸発させる蒸発工程と、前記貯槽で生じさせた水蒸気を凝縮した凝集水に含まれる放射性物質を除去する濾過工程と、前記該濾過
工程で使用された使用済み濾材を
前記貯槽に集約する使用済み濾材導入工程と、前記貯槽に凝固材を注入するための凝固材注入工程と、を更に備えたことを特徴とする。
【0016】
このような構成の放射性廃液処理方法によれば、槽内に貯留された放射性廃液から発生する崩壊熱を利用し、放射性廃液中の水分の蒸発を効率良く促す。これにより、放射性廃液の濃縮のために放射性廃液を加熱して水蒸気を発生させる従来の放射性廃液処理
方法と比較して、外部から熱エネルギーを加えるなど大きなエネルギーを必要とせず、より小さなエネルギーで放射性廃液の脱水を行うことが可能になる。よって、簡易な
方法で放射性廃液を濃縮することが可能であり、かつ、濃縮に掛かるコストを低減することが可能となる。
【0018】
前記蒸発工程によって得られた放射性廃液の濃縮物
及び濾過工程で生じた使用済み濾材に対して凝固材を添加し、固化体を得る凝固工程を更に備えたことを特徴とする。
このような構成の放射性廃液処理方法によれば、濃縮後の放射性廃液の残留物
や濾過工程で生じた使用済み濾材から、容易に処分用の固化物を形成することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の放射性廃液処理装置によれば、貯槽内に貯留された放射性廃液から発生する崩壊熱を利用し、放射性廃液中の水分の蒸発を効率良く促す。これにより、放射性廃液の濃縮のために放射性廃液を加熱して水蒸気を発生させる従来の放射性廃液処理装置と比較して、外部から熱エネルギーを加えるなど大きなエネルギーを必要とせず、より小さなエネルギーで放射性廃液の脱水を行うことが可能になる。よって、簡易な構成で放射性廃液を濃縮することが可能であり、かつ、濃縮に掛かるコストを低減することが可能となる。
【0020】
また、放射性廃液の濃縮にあたって、崩壊熱による水分の蒸発を用いることによっ
て、放射性廃液の濃縮を低コストで行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明に係る放射性廃液処理装置、放射性廃液処理方法の一実施形態について説明する。なお、本実施形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。また、以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0023】
[第一実施形態]
図1は、本発明の放射性廃液処理装置の第一実施形態に係る概略構成図である。
本実施形態に係る放射性廃液処理装置10は、放射性廃液の水分を水蒸気として蒸発させることによって、放射性廃液に含まれる放射性物質の含有濃度を高める(濃縮する)装置である。放射性廃液処理装置10は、放射性廃液Aを貯留する貯槽11と、この貯槽11に設けられ、放射性廃液の崩壊を促進させるガス噴射機構(
撹拌手段)12とを備えている。
【0024】
貯槽11は、例えば、原子炉を中心とした原子力プラントにおいて、使用済み核燃料を再処理した際に生じる高レベル放射性廃液を貯留するための水槽である。貯槽11に貯留される高レベル放射性廃液(以下、単に放射性廃液と称する場合がある)は、核分裂生成物(FP)や超ウラン核種(TRU/MA)を含んでおり、強い放射線を長期間に渡って放出する。こうした放射性廃液に含まれる放射性物質は、強い放射線を放出する際に原子核崩壊を起こしており、原子核崩壊の過程で崩壊熱が発生している。
【0025】
原子核崩壊は、不安定な原子核(放射性同位体)が放射性壊変する現象であり、例えば、
アルファ粒子を放出して陽子2個および中性子2個を減じた核種に変わるアルファ崩壊、質量数を変えることなく、陽子および中性子の変換が行われるベータ崩壊、これらアルファ崩壊やベータ崩壊の後に原子核に残存する過剰なエネルギーによってガンマ線を放出するガンマ崩壊、重く不安定な原子核がより質量の小さな原子核に分裂して安定な核種へと変化する核分裂反応などが知られている。
【0026】
崩壊熱(Decay heat)は、こうした原子核崩壊の過程で放出される放射線エネルギーが周囲の物質を加熱するために生じる。時間当たりに放出される崩壊熱のエネルギーは、不安定な核種であるほど大きく、その大きさは元の放射性物質がしだいに放射線を放って比較的安定な核種や安定核種へと変化するに従って減少する。
【0027】
ガス噴射機構(
撹拌手段)12は、放射性廃液Aに含まれる放射性物質の原子核崩壊によって発生する熱エネルギーを効率良く放射性廃液Aに伝える手段である。ガス噴射機構(
撹拌手段)12は、例えば、貯槽11に貯留される放射性廃液Aに対してガスを吹き込み、放射性廃液Aに対流を生じさせ、放射性廃液Aを
撹拌させる。こうしたガス噴射機構(
撹拌手段)12としては、例えば、ガスを送出するコンプレッサー(図示略)と、送出されたガスを貯槽11内に
撹拌用ガスGとして放出させるガス放出部14とから構成されている。
【0028】
貯槽11内に放出させる
撹拌用ガスGは、特に限定されるものではないが、例えば、空気、窒素、希ガスなどが挙げられる。窒素や希ガスなどを
撹拌用ガスGとして用いる場合、コンプレッサーにこれらガスを供給するガスボンベなどが接続されていれば良い。
【0029】
以上のような構成の放射性廃液処理装置10を用いた、本発明の放射性廃液処理方法を説明する。本発明の放射性廃液処理方法によって、放射性廃液処理の1つである、放射性廃液の濃縮を行う際には、まず、原子力プラントなど使用済み核燃料を再処理した際に生じる高レベル放射性廃液を貯槽11に導入し、貯留する。
【0030】
放射性廃液中に含まれる放射性物質はその多くが微粒子状の形態として存在しており、長時間静置される状態が続くと、放射性物質は貯槽11の底に沈殿する。原子核崩壊による熱エネルギーは、貯槽11の底部側に偏って発生するため、貯槽11内に導入された高レベル放射性廃液を効率良く加熱することが出来ない。
次に、ガス噴射機構(
撹拌手段)12を動作させ、ガス放出部14から
撹拌用ガスGを放射性廃液A内に放出(噴射)させる(蒸発工程)。放射性廃液A内に
撹拌用ガスGが送り込まれると、その気泡の上昇によって放射性廃液Aに対流が生じ、放射性廃液Aが
撹拌される。
【0031】
撹拌用ガスGによる放射性廃液Aの撹拌によって、貯槽11内に均一に放射性物質が分布することにより、原子核崩壊により発生する熱エネルギーを放射性廃液Aに均一に伝えることが可能となる。
これによって放射性廃液Aは効率良く加熱され、水分が水蒸気Hとして貯槽11から放出される。この結果、放射性廃液Aから水分が迅速に除去され、放射性廃液Aの濃縮(脱水)が行われる。この放射性廃液Aの濃縮は、例えば、放射性廃液Aから水分が完全に除去され、放射性物質の残留物が固化して残る程度にまで行うことが好ましい。
【0032】
以上のような構成の本発明の放射性廃液処理装置、放射性廃液処理方法によれば、貯槽11内に貯留された放射性廃液Aに対して、
撹拌手段であるガス噴射機構(
撹拌手段)12によって原子核崩壊から発生する崩壊熱を効率良く利用し、放射性廃液中の水分の蒸発を効率良く促す。これにより、放射性廃液Aの濃縮のために放射性廃液Aを加熱して水蒸気を発生させる従来の放射性廃液処理装置と比較して、外部から熱エネルギーを加えるなど大きなエネルギーを必要とせず、空気などガスを送り込むなど、より小さなエネルギーで放射性廃液Aの脱水を行うことが可能になる。これによって、簡易な構成で放射性廃液を濃縮することが可能であり、かつ、濃縮に掛かるコストを低減することが可能となる。
【0035】
なお、上述した実施形態では、崩壊熱を効率良く利用するため放射性廃液の
撹拌を行っているが、これ以外にも、スクリューなどを用いて機械的に放射性廃液の
撹拌を行ったり、放射性廃液に超音波を印加するなど、他の方法によって放射性廃液に含まれる放射性物質の原子核崩壊を促進させる構成であってもよい。
【0036】
また、崩壊熱だけでは放射性廃液の濃縮に必要な熱量が得られない場合は、補助的にボイラー等から高温蒸気を導入して放射性廃液の加熱を促進させることも好ましい。
【0037】
図2は、本発明の放射性廃液処理装置の第一実施形態の濾材導入手段を除く全体概要を示す概略構成図である。
この本実施形態に係る放射性廃液処理装置20は、前述した
図1に示した放射性廃液処理装置に、崩壊熱によって発生させた水蒸気の処理機構を付加したものである。
放射性廃液処理装置20は、放射性廃液Aを貯留する貯槽21と、この貯槽21に設けられ、放射性廃液の崩壊を促進させる撹拌手段であるガス噴射機構(
撹拌手段)22と、水蒸気処理機構25とを備えてなる。ガス噴射機構(
撹拌手段)22は、ガスを送出するコンプレッサー(図示略)と、送出されたガスを貯槽21内に
撹拌用ガスGとして放出させるガス放出部24とから構成されている。
【0038】
水蒸気処理機構25は、凝縮器31、凝縮水槽32、濃縮器(濃縮工程)33、核種除去装置(濾過手段)34、処理水槽35などから構成されている。
ガス噴射機構(
撹拌手段)22によって
撹拌された放射性廃液Aの崩壊熱によって生じた水蒸気Hは、微量の放射性核種を含んでいることがある。このため、この水蒸気Hを水蒸気処理機構25によって処理する。
【0039】
凝縮器31は、例えば熱交換器であって、水蒸気Hを冷却することにより液化させて液滴とする。そして、凝縮水槽32に凝縮水として蓄えられる。濃縮器(濃縮工程)33は、凝縮水に含まれる放射性核種の含有量を濃縮させて、核種除去装置34による放射性核種除去効率を高める。こうした濃縮器(濃縮工程)33は、例えば蒸留装置が用いられる。
【0040】
また、この濃縮器(濃縮工程)33によって生じた濃縮水の一部を貯槽21に還流させる還流配管36が設けられている。還流配管36によって還流された濃縮水は、貯槽21で崩壊熱の発生に用いることができ、より一層効率的に貯槽21における崩壊熱の発生を促進することができる。
【0041】
核種除去装置(濾過手段)34は、濃縮器(濃縮工程)33によって生じた処理水に含まれる微量の放射性核種を除去するものであり、濾材、例えば活性炭による放射性核種の吸着を行う。なお、ここで生じる吸着済みの活性炭は二次廃棄物となるが、処理水に含まれる放射性核種は微量であり、放射性廃液Aの処理量と比較するとその発生量は僅かである。
そして、核種除去装置(濾過手段)34で放射性核種が吸着された後の処理水は、処理水槽35に一旦、貯留された後、放流される。この放流される時点での処理水は、各種放流基準内の水質の水である。
【0042】
このような構成の放射性廃液処理装置20によれば、放射性廃液Aの崩壊熱によって発生させた水蒸気Hを濃縮し、濃縮水の一部を還流配管36を介して貯槽21に還流させることにより、放射性廃液Aの崩壊熱の発生をより一層促進させることができる。また、濃縮器(濃縮工程)33によって生じた処理水に含まれる放射性核種を核種除去装置(濾過手段)34によって取り除くことにより、安全に処理水を放流することができる。
【0043】
また、放射性廃液Aの崩壊熱によって発生させた水蒸気Hから得られた濃縮水の一部を貯槽21に還流させることにより、
撹拌用ガスGを外部から導入するプロセスの一部を省略することも可能となり、放射性廃液の濃縮プロセスの更なる簡略化を実現することが可能になる。
【0044】
さらに、
図3に示すように、放射性廃液処理装置20の核種除去装置(濾過手段)34で用いられた濾材、例えば活性炭を貯槽21内に導入する使用済み濾材導入工程Pを更に備え
る。処理水に含まれる放射性核種を吸着した後の活性炭(濾材)を、この使用済み濾材導入工程Pによって貯槽21に導入することで、放射性物質を含む廃棄物を貯槽21に集約することができる。これによって、貯槽21内の放射性廃液Aの濃縮(脱水)後に残った固形物(放射性物質)と、導入した使用済み濾材とを一括して固化体にするなど、効率的に二次廃棄物の処理を行うことができる。
【0045】
[第二実施形態]
図4は、本発明の放射性廃液処理装置の第二実施形態に係る概略構成図である。
この本実施形態に係る放射性廃液処理装置40は、前述した第一実施形態の放射性廃液処理装置に対して、崩壊熱によって発生させた水蒸気に含まれる水素から更にエネルギーを取り出す反応機構を更に付加したものである。
放射性廃液処理装置40は、放射性廃液Aを貯留する貯槽41と、この貯槽41に設けられ、ガス噴射機構(
撹拌手段)42と、反応機構45とを備えてなる。ガス噴射機構(
撹拌手段)42は、ガスを送出するコンプレッサー(図示略)と、送出されたガスを貯槽41内に
撹拌用ガスGとして放出させるガス放出部44とから構成されている。
【0046】
反応機構45は、反応器(反応手段)51、熱交換器(熱伝導手段)52、排ガス還流配管53などから構成されている。
ガス噴射機構(
撹拌手段)22によって
撹拌された放射性廃液Aの崩壊熱によって生じた水蒸気(水素を含む蒸気)Hは、遊離した水素を含んでいる。反応器(反応手段)51は、この水素と空気ないし酸素とを反応させる(酸水素反応)触媒を備えている。この触媒としては、例えば、白金、パラジウムなどを含む材料を用いることができる。このような水素と空気ないし酸素との反応によって、水蒸気が発生するとともに、反応熱が生じる。この反応熱は、貯槽41内に形成された熱交換器(熱伝導手段)52に伝播され、貯槽41に貯留された放射性廃液Aの加熱に用いられる。
【0047】
一方、反応器51の酸水素反応によって生じた水蒸気からなる排ガスは、排ガス還流配管53を介してガス噴射機構(
撹拌手段)42に還流させる。そして、この排ガスをガス放出部44から
撹拌用ガスGとして放出させることによって、排ガス中に含まれる熱エネルギーを放射性廃液Aの蒸発に利用することが出来る。
【0048】
このような構成の放射性廃液処理装置40によれば、
撹拌用ガスGによって放射性廃液Aを
撹拌して崩壊熱の発生を促進させるとともに、放射性廃液Aから発生した水蒸気に含まれる水素と空気とを反応器51で反応させ、生じた反応熱を放射性廃液Aの加熱に用いることによって、少ないエネルギー消費で更に一層効率的に放射性廃液Aの濃縮を行うことが可能となる。また、反応器51で生じた排ガスをガス噴射機構(
撹拌手段)42に還流させることによって、
撹拌用ガスGを容易に発生させることが可能になる。
【0049】
そして、反応器51で生じた排ガスを
撹拌用ガスGとして用いることによって、
撹拌用ガスGを外部から導入するプロセスを省略することも可能となり、放射性廃液の濃縮プロセスの更なる簡略化を実現することが可能になる。
【0050】
[第三実施形態]
図5は、本発明の放射性廃液処理装置の第三実施形態に係る概略構成図である。
この本実施形態に係る放射性廃液処理装置60は、前述した第一実施形態の放射性廃液処理装置に対して、固化体の製造を容易にする構成を加えたものである。
放射性廃液処理装置60は、放射性廃液Aを貯留する貯槽61と、この貯槽61に設けられ、ガス噴射機構(
撹拌手段)62とを備えてなる。ガス噴射機構(
撹拌手段)62は、ガスを送出するコンプレッサー(図示略)と、送出されたガスを貯槽61内に
撹拌用ガスGとして放出させるガス放出部64とから構成されている。
【0051】
また、貯槽61には、この貯槽61内に凝固材を注入するための凝固材注入孔69が形成されている。凝固材は、放射性廃液Aの濃縮、乾燥後に生じた高レベルの放射性物質を固めて、地層処分とするための固化体を得るものであり、例えば、セメント、ガラス体などが用いられる。
【0052】
凝固材注入孔69は、凝固材を貯槽61内に均一に偏りなく注入するために、例えば、貯槽61の上面61a全体に、等間隔で多数形成されている。こうした凝固材注入孔69から、濃縮後に残った放射性物質に対して凝固材、例えばセメントを均一に注入して凝固させる(凝固工程)ことにより、地層処分用の固化体を得ることができる。